やっと出せました。某理事長(笑)。
う~ん、小説版の方で行こうか、OVA版の理知的な方で行こうか考え中(^^;;;。
「そうだ、こないだのお礼に、良い居酒屋があるんですがどうですか?」
ぱあっと明るい顔をする雨音さん。でもすぐに複雑な表情になる。他の3人も同じである。
「あ、いいですねぇ、と言いたいところなんですが、さすがに私たち、目立つので・・・。」
霧恋さんが申し訳なさそうに言う。
「そうか、スーパー山田開店の時みたくなるかも・・・。」
「じゃあ、また上に上がったときにご馳走させてもらいます。良いお店紹介してください。」
右手の人差し指で上方向を指さして左手で拝むようなジェスチャーをする。ふわっと暖かい表情をみんなしてくれた。
「あれえ?田本さん聞いてなかったの?今日は天地兄ちゃん鶏鍋するって張り切ってたよ。」
砂沙美ちゃんが、ととと、と駆けてくる。
「ええ、材料も手配しましたし・・・。雨音さんや、リョーコさんも皆さん呼ぼうって」
ノイケさんもあごに左人差し指をあてて思い出すように言っている。
「と、鶏鍋、俺の、俺の、鶏鍋~~~!」
西南君は絶叫している。凄い好物らしい。
「ああ、今日は朝から38度くらい熱があってちょっと寝込んでたんで、役場は休んだんですよ。土日からいろいろあったし・・・。」
「まあ、大丈夫なんですか?」
つかつかつか、と歩いてきてスッと右手を僕のおでこに当てて熱をみてくれる。余計熱が出そうなくらい照れてしまう。
「ノイケ殿は看護師の資格も持っているからねぇ。」
「・・・朝から昼過ぎまで寝ていたので、だいぶ良くなりました。」
間近で見るノイケさんは、息が止まりそうなほど美しい。鷲羽ちゃんが軽くウインクしてくれる。密約成立である。
「それに、天地様のお婆さまの、アイリ様もいらっしゃるそうですわ。」
「アイリ様とおっしゃるんですか。天地君のお婆ちゃん・・・、もしかして勝仁さんの奥様ですか?」
この会話を聞いている何人かは気の毒そうな顔をしている。特に西南君は見事に嫌悪に近い表情である。
「そうです。水穂様のお母様ですわ。」
例の関わってはいけない系の笑顔である。
「きょ、今日は熱もあるので、家帰って、ね、寝てます。さあ、一樹帰るぞぉっと。」
裏返った声で皆さんに別れを告げ、抜き足差し足後ずさりしながら、クルマに乗り込もうとする。鷲羽ちゃんがなぜか黒いタキシードに着替えていた。もちろん両肩にはモルモットご一行様いらっしゃ~~いの小さなのぼりも立っている。
「れでぃ~~すあんどじぇんとるめ~~ん。それでは~、ご期待にお応えして、生体強化(樹雷特化型)あ~んどお仕置きかねて精密スキャンモンスターぬるぬる君5号である!皆さん拍手~~~~!」
目の前に、漆黒のスライム君が転送されてくる。女性陣は遠巻きに眺め、ぱらぱらと拍手が聞こえてくる。
「どうわあああああ~~~~~~~~~!」
背後で、一樹と柚樹はみんなのあと付いておいでね~と言う鷲羽ちゃんの声を聞きながら例によって意識喪失・・・。
ちゃぽ~~ん。さららら。水の音がして暖かい。結局何となく恒例化した風呂オチであった。ああ、そうか、まだ時間が早いのかな。誰も入っていない。それでも3時半くらいだったか、あの湧き水のところで。
「一樹近くにいるかい?」
「うん、いるよ。」
答えが返ってくる。柚樹は、またぷかぷか浮いている。
「この場所は、柾木家かな?」
自分たちがいる周辺マップが、眼前に転送されてくる。うん間違いない。柾木家である。ぼ~っとそのマップを眺めている。周辺地図が三次元化され、リアルタイムで映し出されている。近所を通るクルマ、わんこを連れた散歩のおばさん。おお、この風呂場は柾木家上空に亜空間固定されてるんだな。鷲羽ちゃんの技術でしょうなたぶん。パソコンのグーグルマップみたいに縮尺をあげていく。グーグルマップだと日本列島くらいで止まるけど、さすが樹雷の技術。地球を飛び越え、太陽系俯瞰図になる。
「柚樹、そういえば、天木日亜さんと軌道をずらした、あの火の玉惑星はどうなったんだろう?」
「そうじゃな、あの軌道だと、どの惑星にもぶつからずに何回かの周回の後、安定するはずじゃったが・・・。」
目の前の太陽系俯瞰図を柚樹が見ている。
「おお、これかもしれんな。」
柚樹が示した、位置には確かに惑星があった。でもいまのところ地球の知識では知られていない。ちょうど地球軌道と重なっている。地球から言うと太陽の裏側にいる状態で、点対象位置にいる。シンクロしているように必ず地球からの死角にいるようだ。
「いまはもう、普通に冷えて固まって岩石主体の惑星じゃな。」
「へええ、結構惑星系もダイナミックに変化するもんだねえ。」
おもしろいので、銀河系のオリオン腕中心で超空間航路なんかも表示してみる。そりゃSF好きだったら見てみたいじゃん。銀河系中心に近い部分はさすがに密なネットワークがあるようである。ただ、やはり各居住可能惑星系を中心とするので細い網の目のような絵になるのは致し方ないのだろう。樹雷から数千光年レベルで離れた位置に、巨大な光点として描かれている部分がった。銀河アカデミーとある。大きさは・・・。ほとんど太陽系と同じくらいの外周で、リングワールド(byラリイ・ニーブン)をいくつも重ね、ダイソンソフィアのような巨大なお椀状の構造物(これだってほとんど太陽系内惑星系の軌道直径くらいある)もいくつもへばりつけている。なんだか増築を重ねて混沌としている家みたいだと思う。銀河はでかいな大きいなぁ。
さっきの超空間航路図にもどって、今度は倍率を上げてみる。この航路も何千年もかかって構築されたんだろうなぁ。さらにおもしろいので亜空間生命体の目線で見てみる。
あらら、結構この生命体達の生息域と重なって存在してるんだな。
「柚樹さん、今僕が見ている亜空間生命体生息図みたいなのを逆リンクして一樹が持っている超空間航路図に重ねられる?」
「おお、お安いご用じゃ。」
なるほど、これじゃまるで小魚の群れに突っ込みながら航行する潜水艦だな。何か抵抗が多そうだなぁと思う。もうちょっと「深い」ところを行けばこの子達とぶつからないんだけどな。ああ、なるほど樹雷の皇家の樹はこのちょっと「深い」ところをいけるのか。なになに、上位超空間航行でトップシークレットだよと。
亜空間生命体目線だと、超空間もわずかにブレながらいくつか存在している。わずかにこのブレを利用して、いまよりほんのちょっと隣にある超空間を利用するとさらに効率的に超光速ドライブが可能に見える。柚樹にそのブレを可視化してもらって新しい超空間航路を書く。突入エネルギーはほとんど変わらない。おお、航行エネルギーも20%減で速度は25%増か・・・。おもしろいなぁ。
「ひとんちのお風呂で何やってんだか、このひとは。」
みると、緑の髪を頭の上でまとめた赤いルージュがきつい女性がバスタオル巻いて仁王立ちしている。そう言うと座って僕の隣に来る。
「ちょっと、田本殿この航路図は?」
気付くと反対側には裸の鷲羽ちゃん。
「ええっと、ここ男湯でしょ?」
語尾が小さくなる。
「はああ!、アカデミーの哲学師が数千年かかって構築した航路図の他にまだあった?」
なんだかとても驚いている。
「・・・ええ、今よりもわずかにずれたこの超空間を使えば航行エネルギーも少なく済んで、速度は25%ほど上がる計算になりました。一樹と柚樹のおかげですけど。・・・ここ男湯ですよね?」
いちおう確認。
「なんと言うこと!GP始まって以来の物流革命だわ!」
緑の髪の綺麗な女性も肩を擦りつけんばかりに寄ってくる。だからここ男湯・・・。
鷲羽ちゃん血相変えて、ディスプレイ起動。
「緊急用件だよ、立木林檎殿に繋いで!。」
このあいだ、紹介してもらった女性である。確かハイエナ部隊・・・?
「まあ、鷲羽様、この間はお世話になりました。」
深々とお辞儀して上げた顔の、ふんわりした笑顔が凄くかわいらしい。たしか、ハイエナ部隊って・・・。
「緊急なので失礼するよ。今から送るデータの資産価値を計算して、田本一樹殿の名前でパテント取ってくれるかい?」
資産価値の言葉に顔色と表情が鋭く締まる。まるで別人のそれである。なるほどハイエナ部隊だ。
「資産価値は・・・・・・、計算不能です。計り知れませんわ。パテントは今取れました。」
「だからここ男湯・・・。」
胸の谷間が、左右に二つ~~。
「そうだ、MMDに連絡して口座も作らないと。身元保証人は、私と・・・。」
「あ~~、はいはいはい!」
横の、緑の髪の女性が元気よく手を上げている。
「GP理事長の柾木・アイリ・樹雷。もう一人つけとこうか。」
「じゃあ、僕でお願いします。」
ようやく知った声が聞こえる。この声は西南君か。
「・・・西南君、ここ男湯だよね。」
にこにこと例の関わってはいけない笑顔。
「GXP囮部隊所属、囮戦闘艦守蛇怪艦長山田西南と。田本殿、これでパテントとMMDの口座登録は終わりだ。このディスプレイに右手を押しつけて。」
はいはい、と右手をあげてペタッとな。
ぴんぽ~~んとなんだか軽い電子音がして、登録完了と出た。