天地無用!~いつまでも少年の物語~。   作:かずき屋

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もうチョイあとで登場させようと思ったんですけど・・・。

元々がこの作品の「ぽやぽや~~。」をもっとたくさん感じたい!と言うコンセプトなので暴走することにしました(^^;;;。




日常への帰還4

「ええ、以前同じ名字の人も居たので、まあ、そのままです。」

なんだかちょっと照れる。

 「そう言えばお買い物にいらっしゃるんでしょう?森元女史にも行ってきたらと言われましたし、ご一緒させてもらいますわ。」

 「・・・・・・、じゃあ、お願いします。」

 「なんですか、その間は?。」

 「いえ、女性と一緒に買い物なんて、いままであんまりなかったものですから。」

ぽ、と少し頬を赤らめる水穂さん。夕日のせいかもしれないけど。

 「じゃあ、8時に天地君の家で、剣術の練習の約束したので、あまり時間はないんですが行きましょう。」

ぶいいんと県道を走って、国道に出て国道沿いにある洋服の緑山に入る。光学迷彩は柚樹に言って解いてもらっていた。田本さんのままだと逆に都合が悪かったりもするし。

ワイシャツ三枚で6980円のものとスラックス二本で4980円ってのを買って、と見ていたら、水穂さんがちょっとお高めコーナーに行って、そっちで手招きしている。

 「安物買いの銭失いって言うでしょ?」

 「仕事着だから良いんですってば。今日みたいなゴミ屋敷行くことも多いし、ペットのネコや犬の毛だらけのところで座って話すことも多いし・・・。」

というわけで、元のセールコーナーで試着する。裾上げは?と聞く女性職員がちょっと顔を赤らめている。う、何か変なのかなぁ。

 「お客様、恵まれた体型なんですから、こちらのドレスシャツなどのほうがお似合いだと思いますわ。」

ああ、今はやりの胸からウエストにかけて絞ったようなシャツね。これダメなのだ。大きなサイズでも腹回りが合わない。って、そうか今は合うのか。

 「まあ、今回は良いです。」

だって、役場で見せないし。一般的なデザインの服の方が匿名性が高くてイイのだ。

 ささっと会計済ませて、緑山を出ると午後7時前だった。

 「すみません、お付き合いありがとうございます。そういえば水穂さんはどちらにお住まいですか?お送りしますけど。」

 「柾木家でご厄介になってますのよ。今、美星さんも出張だそうでお部屋が空いてるそうですわ。」

にっこり笑う顔が、例の関わってはいけない系である。誰かに似てる気がする・・・。

 「どうかなさいましたか?」

 「そういえば、水穂さんって瀬戸様に似てますよね。」

後ろに引いて、取り乱したような表情になる水穂さん。

 「ひいいいい~、それだけは言わないで~。どうせ、だから行き遅れてるとか言うんでしょ?」

あれ、なんかツボ踏んだかな?

 「いやいや、なんとなく、ですよ。なんとなく。」

 「そんなぁ、雰囲気まで似てるって言うのぉ~~~。」

頭抱えて、わなわなと震え出す水穂さん。トラウマだったのかなぁ。

 「いえいえ、あくまでも僕の主観ですから。」

 「やめてぇ~~、初対面に近い人までそう思うなんてぇ。」

 「う~。とりあえず、柾木家までお送りします。」

ガクブルしている水穂さんがちょっとかわいそうでスーパー山田に寄る。ちょうど良かった霧恋さんがいる。ちょうどレジには立っていない。

 「お仕事中すいません。霧恋さんちょっと・・・。」

一瞬誰か分からない、表情の後、ああそうだったという表情になる霧恋さん。

 「田本さん、どうなさったのですか?」

 「水穂さんに、瀬戸様に似てますねって言ったら、あの様子で・・・。」

 「あらら、田本さん、それは禁句ですのよ。」

まかしといて、とクルマに行って水穂さんを連れ出してくれる。なだめてすかして両手で目をぬぐっている水穂さんをお手洗いに連れて行って数分後店の休憩コーナーに連れてきてくれた。

 「どうもすみません。まさかあそこまで取り乱されるとは。」

 「ダメですよ、田本さん。以後気をつけるように!」

右手人差し指で胸をつんつんされて、ちょっとどっきりだったりもする。

 「はい、すみません。水穂さんごめんなさい。」

すんすんと鼻をすすりながら、こっくり頷く水穂さん。何かかわいい。

 「おー。霧恋どうした?」

 「霧恋さん、どうなさいましたの?」

ひとりは、短め金髪、碧眼小顔の超美形、でもちょっとおっさんな口調の女性。もうひとりは、黒髪と言うより少し青みがかった髪で、多い髪をヘアバンドでとめ、長い前髪を左右に垂らしている女性だった。この女性も美形である。二人ともスーパー山田の店員用の制服を着ていた。

 「この人が、水穂様を泣かしたの。」

 「うう、何かどうもすみません。」

へええ、とふたりとも値踏みするように僕を眺め回して、

 「もしかして、霧恋が言ってた、あの人?」

 「地球に根付いた皇家の樹、船穂の子どもに選ばれた上に、皇家の樹と亜空間生命体との融合体にも選ばれたってゆー。」

 「そうじゃ。このワシが付いていないとのぉ。」

銀毛柚樹ネコが姿を現す。二本の尾がふるふると揺れている。

 「そりゃ、また難儀なことだな。」

くっくっくとちょっと嬉しそうな金髪の女性。

 「ですね~。ウワサでは西南様の向こうを張れそうだとか。」

 「もしかして、皆さん西南君のお知り合いなんですか?」

ええ、まあ。と二人ともほほを赤らめている。

 「あ、すみません。天地君と約束があるんだった。とりあえず急ぐんで柾木家に行きます。また、このお礼はいつか。さあ、水穂さん行きましょう。」

やはり関わってはいけない系の香りがするのと、さすがに約束の8時に近づいているのでこの場は離れることにする。

 何とか柾木家に到着し、水穂さんを送り届けて、と思っていたけど結局夕食をごちそうになってしまった。

 「ごちそうさまでした。毎晩毎晩、お騒がせしてどうもすみません。」

昨日と違って、リビングルームの対面式のキッチン部分にスペースがあり、そこが畳敷きになっている。そこの大きめの座卓を出して食事をしていた。ノイケさんと砂沙美ちゃんが、洗い物を片付け、阿重霞さんが台拭きでさっさと座卓を拭いている。

 「水穂様、泣かせちゃったらしいですわね。」

阿重霞さんが問い詰めるような口調で重々しく言う。水穂さんはお風呂に行かれている。

 「ええ、瀬戸様に何となく似てるな~~と思って、そのまま言ったら取り乱してしまわれて・・・・・・。」

 「水穂様も、お婆さま付きの女官として抜擢されてすでに300年くらい経ってますし・・・いろいろ陰口を言われて気苦労なさっていらっしゃると伺ってますわ。お婆さまもあの調子だし・・・。瀬戸被害者の会なんてのがあるということで何となくお分かりでしょう。」

そういえば、樹雷皇直々に瀬戸被害者の会会員カードと申込書を頂いたんだった。

 「水穂様、いろいろ婚活されていらっしゃったようですが、瀬戸様付きの女官と知れただけで破談の憂き目に遭うこと数限りなし、だそうですわ。」

 「さらに、田本様は、まだお会いになってらっしゃいませんが、お母様も哲学師で、有名な方ですし・・・・・・。」

う、このなに?微妙な言い回し・・・。

 「田本さん、それでは社務所に行きましょう。じっちゃんが見てくれますって」

 「あ、天地君。阿重霞さんすみません、また教えてください。」

とりあえず、女性関連の重い話題は横に置き、天地君と社務所に向かった。柾木剣士君もいる。今度は木刀を持ち、社務所横のスペースで夜間照明を点け、打ち合う。

 「うむ、見事じゃ。じゃが、さすがに型が古いのかのぉ。こうやればもっと速く打ち込めるぞ。」

勝仁さんに直々にお教えを請い、そんなこんなで、約1時間。ありがとうございました、と礼をする頃には汗だくになっていた。剣士君とも手合わせを願ったが、今のところ小柄な少年の体格なので力はともかく、天地君よりも一段速い動きである。しかも隙が無く余分な動きがない。勝仁さん=遥照様との手合わせは、凄く気持ちが良い上に、とても勉強になる。

 「樹雷皇や瀬戸様にも頼んでおくが、今後のことを考えると、田本殿は樹雷に行って、生体強化や延命処置も受けておくべきだろうな。船穂もそう言っておるしな。」

 「え、まさかあのぬるぬる君とか、来るんですか?」

 「あれは、鷲羽ちゃんの特製だからのぉ、普通はもうちょっとシステマティックなのじゃが・・・・・・。」

 と話していると、背後に得体の知れない気配を感じた。

 「はああい、鷲羽ちゃんどえええす。」

この人なんで、こうタイムリーなんだろうか。

 「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャ~~ンの方が良いかしらねぇ。ご期待にお応えして、かかれっ!精密スキャン&生体強化(樹雷特化型)モンスターぬるぬる君4号!」

社務所横に緑色をした例のスキャンモンスターが転送された。逃げようにも背後は鷲羽ちゃんだし、左右にもご神木やら何やらで逃げられない。社務所と言えば金曜日の例もあるのに学習しないなぁとか思う間に・・・。

 「うわああああ~~~~~。」

背後から、これぞマッドサイエンティスト!と言う高笑いを聞くと同時に意識は消えていった。

 

 「天地兄ちゃん、先に出るよ。」

 「おう、早く寝るんだぞ。」

うう、暖かい。また風呂落ち?

 「もしかして、また天地君ちのお風呂?」

 「田本さんも難儀ですねぇ。まあ鷲羽ちゃんは、ほくほく顔だったですけど。」

すっかり忘れていたが、そういやアストラルがあーだこーだな状態だったのだ。あのまま大変な酒宴に突入したし。鷲羽ちゃんにとってはまたとないモルモット様だろうなぁ。

 「ごめんなさいね、天地君。またお風呂を頂いてしまいました。」

鼻まで湯に浸かって、ホッとする。ここのお風呂はホント広くて極上だな。

 


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