天地無用!~いつまでも少年の物語~。   作:かずき屋

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すみません、暴走が止まりません・・・。

どうなるんでしょう?田本さん。


柚樹との対話12

まあ、とりあえず、二度目の自己紹介。

 「あの、すみません、ええっと、柚樹殿と話していたら、いろいろあってこんなになってしまいました。田本一樹です。再びよろしくお願いします。」

スッと立った柾木天地君が歩いてきて、手を引っ張ってリビング角に連れて行く。

 「どうするんですか、明日。」

 「どうするったって、どうもこうも・・・。いちおう、鷲羽ちゃんが例の変身眼鏡作ってくれるとは言うけれど・・・。」

天地君が、僕の頭から足まで眺めて、

 「それに、俺より拳一個くらいもでかいじゃないですか。そのままだと今夜家に入れてくれませんよ。」

 「あ~~~。ちょっと遅くに帰ると親は寝てるから・・・って、明日どうしよ・・・。」

 「しばらく一樹(いつき)に引きこもりますか?」

ととと、と銀毛の柚樹ネコが歩いてきて、左足(手?)で僕の足を触る。

 「これで問題なかろう?」

視界が一瞬ぼやけると、また戻る。近くの食器棚のガラスを見ると見慣れたおっさん公務員がそこに居た。

 「ワシだって皇家の樹だぞ。一樹もおるし。おぬしの周りに不可視フィールドや光應翼、光学迷彩などを張るのは造作もないわい。」

 「ナイスです!柚樹さんと一樹!。」

若干死語に近い言葉のような気がするが、あ~よかったと胸をなで下ろす。天地君もホッとした様子である。

 「ちなみに、ワシは見た目的に消えることもできるし。」

ふっと視界から消える。そして、また戻る。

 「さあさ、とりあえず解決したようだからご飯にしよう。」

 「おおそうだ、その前に紹介しておかねばな。」

樹雷王の言葉とともに、瀬戸様と呼ばれた女性が、もうひとり紹介してくれる。

 「こちらが、現天木家当主、天木舟参殿です。」

また身体が自動反応した。紹介された人物の前に跪き、右拳を左手で包み一礼する。

 「天木舟参殿、永らく天木家に帰属することができず申し訳ありませぬ。」

舟参と呼ばれたその人物は驚いた様子だったが、またも鷲羽ちゃんの耳打ちで、気を取り直したように話し出してくれた。

 「こほん。えー、このたびはワシの方から礼を言わねばならん。天木家に連なる者として、祖先天木日亜の消息が分かり、しかもこのように帰ってきてくれたというのは、誠に慶賀の至り。お顔をあげてくだされ。」

ちょっと権威主義的な様子のある人だが、皇家と言われる皆様方である。逆にこういう感じが当たり前なんだろうと思う。

 「は、ありがとうございます。」

地球の典型的な公務員姿で言うのも可笑しいなぁと思っていたら、柚樹がきっちり光学迷彩を解いてくれている。天木舟参殿の一言で日亜の呪縛も解ける。

 「それじゃあ、田本殿も席について。夕食にしよう。」

鷲羽ちゃんの声かけで、勧めてくれた席についた。樹雷皇、阿主沙様が立ち上がる。

 「みなの者、今日は我が子の住まうこの家にお集まり頂き、また、皇家の樹の新しい仲間と、古き仲間ができ本当に喜ばしい。さらに、かなりややこしい立場であるが、樹雷に連なる者の記憶を受け継いだ皇家の樹のマスターも生まれた。これを慶賀と言わずしてなんと言おう。今日は、思う存分楽しんで頂きたい。無礼講で行こう。乾杯!」

 「乾杯!、いただきま~~す。」

今更気がついたが、今夜の食事はなんともきらびやかかつ、美味しそうなものがたくさん並んでいた。

 「皆様、本日は、阿主沙様と瀬戸様から神寿の酒を頂いております。ありがとうございます。そして、立木林檎様から専用畑の食材、天木舟参様から、ご自身の農業惑星から海の幸とお肉を頂きました。」

その場がどよめく。おお~~と拍手があがる。

台所を見ると、でかい樽が二つ並んでいた。そして、たくさんの食材。

ノイケさんが、取り皿に取り分けてくれた料理を受け取り、真っ白なご飯と共にいただく。

 「・・・・!」

力がわき上がってくるような旨さと言おうか。食材を生かし切り、その持ち味を究極まで高めた味わい。鮮烈、そして大胆。さらに優しい。相反する単語のみが浮かぶ。

 「ああ、幸せ。ありがたいありがたい。」

思わず声に出して言ってしまっていた。つ~~っと涙もほほを伝っている。

 「田本さん、年の割におじいちゃんだよ。」

砂沙美ちゃんが微笑んで言う。ノイケさんも口に手を当て軽く笑っていた。

 「いやいや、本当に美味しいですから。」

 「そんなに美味いか。こちらも食材提供の意義があろうというもの。」

 「ノイケ、腕を上げたわね。砂沙美ちゃんも、美味しいわよ。」

 「今回は考え得る限りの最高の食材だからねぇ・・・。そうだ、食事のうちに、さっきの編集したビデオ上映会をしておこう。」

みんなが見える位置にいくつか半透明の大画面が現れる。そして、そのビデオの題名は、

 「題して、真砂希姫と天木日亜殿、愛とさすらいの第三惑星。」

その大画面には、柚樹から聞き取った内容がダイジェスト版になり映し出された。初代樹雷皇とのやりとりから始まり、真砂希姫の死、そして天木日亜とかつてこの地にあった国、アトランティスとムー。天木日亜とキヌエラ王妃のキスののち水没。場面変わって、ちょっと恥ずかしいが自分が柚樹を抱きしめ、天木日亜の不完全なアストラルを取り込み再構築、柚樹がネコに変わって、見た目変わって慌てる田本さんのシーンで終わった。

 「今日一日でこれだけの出来事が起こったのか?」

樹雷王もあきれている。

 「ちなみに、金曜日からの出来事は、まとめて樹雷に送っているから。」

鷲羽ちゃん、仕事が早い。

 「そういえば、一樹ちゃん、第二世代の皇家の樹としてはかなり強力ですわ。さらに柚樹ちゃんもいるし。」

瀬戸様と言われた女性が、お箸もって、ん~と、と考える仕草をする。

 「うむ、これからの検討課題だな。とりあえず、瀬戸殿には迷惑をかけるが、水穂でも付けておくか。なし崩し的に、ひ孫の顔が見られてもいいし。」

 「そうですわね。わたくしもそれが良いと思いますわ。」

船穂様と言われた女性が相づちを打つ。美沙希様は、柚樹が気に入ったらしくだっこして撫でている。

 「父上、私の意見はなしですか。いちおう娘なんですが・・・。」

勝仁さんが笑って言っている。

 「遥照よ、良いではないか。そろそろ、水穂の子どもも見たいだろう?」

 「そうですね、いつまでも瀬戸様の下士官ではいけませんしね。」

 「まあ、遥照殿。失礼だわ。」

ぷ~とふくれる仕草をする瀬戸様。そして、僕を見る気の毒そうな視線が多数。

 「え、僕?ですか。」

うんうん、とそこに居るみんなが頷いている。

 「え~っと、あと15年くらいで、花束もらって役場を円満退職して、血圧の薬や糖尿病の薬を飲みながら農業やって、さらに15ねんくらいでヘルパーさんのお尻触って叱られながら、ぽっくり逝きたいなぁって・・・。」

またささやかな想いを言葉にしてみる。

 「無理!」

全員の声がハモった。

ううう、とまた涙が頬を伝う。地球人としての日常よさようなら。

 「だって、ねえ、柚樹と一樹だけでも想定外なのに、アストラル融合までしちゃう人を私たちが、ほっとくわけないでしょう?さらに皇家の樹とのリンクも強力だと言うし。」


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