唯一のまともに思える助け船のノイケさんを見ると、ひたすら気の毒そうな目線で見ている。おや、膝の緑色の丸いのは何だろう?
そう思ったとたんに、一樹から光が伸びて緑の丸いものに当たる。ノイケさんの膝の上で緑の丸いものがぽよんぽよんと跳ねる。
「あ、ごめんなさい。この子は鏡子って言うんです。本当はトップシークレット扱いで外に連れ出さないんですが鷲羽様の許可も出ましたし、ご挨拶をと思いまして。・・・鏡子、一樹さんにご挨拶なさい。」
魎皇鬼ちゃんと一樹、そして鏡子ちゃんと言われた丸くて緑色のものが光を当てっこして遊んでいるように見える。
「いえ、あの、喜んでいただけるのはうれしいのですが、あの、やっぱりなにがなにやら・・・。おっさんにもわかるように説明してください。」
「そうだねぇ、まずはじゃあこれを見てくれるかい。」
鷲羽ちゃん、またどこかから取り出したでかい紙を広げる。特にテーブルなんかも無いので地べたにみんな座った。
「これが樹雷の、ここ柾木家と関係のある簡単な家系図だ。」
と紙を元に説明を始める。それによると、現樹雷皇、柾木・阿主沙・樹雷の子どもが遥照と阿重霞とあり、柾木・阿主沙・樹雷の妻が船穂と美砂樹とある。
「ちなみに、遥照というのは、うちのじっちゃん。」
にぱっと笑う笑顔は微妙に怖い。
「は?。今年百歳じゃなかったっけ?」
「たぶん、その百歳のデータは、遥照殿がマスターの船穂が、我が子と田本殿を引き合わせたいために偽造したデータだねぇ・・・。」
鷲羽ちゃんが頭を掻きながらあきれ顔で言う。
「あ、それで、金曜日の出来事に繋がると・・・。」
ぽんと手を打つ。なるほど。
「え、阿重霞さんと遥照さん=勝仁さんは兄妹???。」
「追々わかると思うけど、魎呼が樹雷本星を襲ったのを、じっちゃんが追って地球まで来て、それが750年前で、それを追って阿重霞さんと砂沙美ちゃんが来ちゃって、みたいな感じですよ。」
あ、なんかはしょっただろ、天地君。
「あ。じっちゃんと魎呼と阿重霞さんも来たようだよ、入れてあげてよ田本さん。」
外を見て天地君が言う。
一樹、お友達だよ。いれてあげて。と思うと、すぐに転送されてきた。
「これで、田本も皇家の仲間入りだな。肩凝るようなことばっかだぞ、がんばれよぉ~~。今日はうまい酒飲もうぜい!。」がっしと肩に手を回して魎呼さんが言う。
「痛いですって、魎呼さん。・・・あれ、阿重霞さんどうしたんですか?。」
目が合うと真っ赤な顔してうつむく阿重霞さん。
「金曜日に、酔いつぶれて、おまえに寝床まで運んでもらっただろ、あれからこの調子だぜ。」
魎呼さん、にかかっっと意地の悪い笑顔。
「お兄様は何度も結婚しているし、天地様もはっきりなさらない~~とかなんとか?って言っていたやつ?。」
今度は天地君と阿重霞さんが両方真っ赤っか。おお、図星かい(笑)。
小声でノイケさんに問いかけてみる。
「ノイケさん、なんだかすごく複雑そうなんですけど・・・。」
「ええ、まあ、わたしも若干そういう思いはありますが・・・。」
と言って顔を赤らめ、うつむくノイケさん。ちょっと回答の視点がずれているような気もするが、まあ、天地君が罪作りな人なことはよくわかった。
「天地君、みんな平等に、ね。あ、だからか。・・・。大変だねぇ。」
おっさんはこういう立場になったことが無いので気楽なものである。ちょっと寂しいけど(自爆)。話題の勝仁さんは出来るだけ関わり合いたくないのか、お茶セットを出してお茶をすすっている
それに、天地君、微妙に理解不能みたいな顔をする。もしかして気づいていない??。
「ちなみに、ノイケ殿は、今夜来る、阿重霞殿や砂沙美ちゃんのお婆さんの神木・瀬戸・樹雷殿の養女で、天地殿の正式な許嫁だよ。」
「おお~~~、どんどんどんぱふぱふぱふ。なんだか知りませんが、天地君は大変なんだねぇ。」
紙吹雪があれば、ぱっと散らせたいような気分である。
鷲羽ちゃんは頭抱えてるし、砂沙美ちゃんはあきれた笑顔が硬直気味だし、魎呼さんはかまわず天地君の首根っこに手を回してうるさがられているし・・・。
「ええっと、田本さん、今のご自分の状況は、理解出来てますか??。」
ぴきっと額に青筋立てた天地君が一言一言かみしめるように言う。
「田本さんは、イレギュラーですが、第二世代皇家の樹に選ばれたと言うことで必然的に樹雷皇家の一員として迎えられます。しかも第一世代の船穂とその子どもに選ばれた、と言う特典(?)付き。さらに、鷲羽ちゃんの(ぬるぬる君3号)による調査の結果、初代樹雷総帥の妹君、真砂希様の子孫であると言うことがDNAレベルで判明しているという鉄板ぶり。さらに加えて、地球産の第二世代皇家の樹がかなり強力であることまでわかっています。」
「今までの常識や想定といったものが吹き飛んだのぉ。田本殿が来てから。」
かこ~んっと鹿威しが鳴り響くような空白。
「ん~~、でも自分は何も変わってませんし、なんぼ皇族って言われても・・・想像すら出来ません。」
「そりゃそうだろうねぇ・・・。ま、あんなエネルギーバーストを簡単に起こす、意思を持った皇家の樹だ。何らかの管理というものは必要さね。それに、皇家の樹に選ばれるというのは、血のつながりのある皇族でもなかなか無いことなんだよ。何せ、第一世代皇家の樹と第二世代皇家の樹は自らの意志でマスターを選ぶからね。」
「第一世代皇家の樹のマスターになった皇族の子息だからって、必ずしも皇家の樹には選ばれないのじゃ。」
「でも、皇家の血のつながりがあるわけだから、第一世代の樹にも第二世代の樹にも選ばれなかった場合はどうなるんですか?。」
「第三世代の皇家の樹が支給されておるの。ちなみに、世代を進むごとに力は弱くなっていくのじゃよ。」
柾木勝仁さん、ちょっと眼鏡を直す仕草をする。ふっと映像がぶれるような感じのあと、30歳前後の若者の姿に変わった。
「さらに、皇家の樹の力のバックアップを受けているので、身体機能の向上や寿命も延びる。われらは、元々、生体強化という技術もあって寿命は二千歳程度は普通に生きることが出来る。ここからはトップシークレットだが皇家の樹のバックアップがあれば、望めば一万歳を超えることも可能だ。見た目はどうにでもなるしね。」
なるほど、そういうことなのね。地球側からすれば想像も出来ないオーバーテクノロジーをもつ宇宙からの来訪者である、でもメンタル的なところはそう変わらないらしい。
「ってことは、僕が皇家の一員で皇家の樹のマスターってことは・・・・・。」
「これから、そういう世界に否応なく引きずり込まれていくということだね。しかも寿命はほとんど望むだけ。勉強しなくてはならないことも本当にたくさんあるけれど、それ相応に時間も出来た。」
「ええっとぉ、あと十五年ぐらいで地方公務員を花束もらって退職、高血圧の薬や糖尿病の薬を飲みながらさらに十五年くらいで、いろんなことを忘れながらぽっくり逝くってゆー、地球人としてのささやかな夢は・・・?。」
「あきらめてください。」
「ま、むりじゃの。」
「なんなら、あたしと一緒に住むか~~い。」
「魎呼さん、田本さんは樹雷本星にいくんですよっっ。」
「なんなら、ギャラクシーポリス,GPと言うのもありますから・・・。」
「砂沙美、うんと美味しいもの作るね!。」
そこまで全否定しないでもいいじゃん・・・(TT)。砂沙美ちゃんだけだよ応援してくれてるの