天地無用!~いつまでも少年の物語~。   作:かずき屋

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やっぱり出ました、確率の偏り?


続いての章7

 

 「鷲羽お姉ちゃん、魎皇鬼ちゃん帰ってきたよー!。」

ゆっくりと柾木家の池から亜空間ドックに進入し、駐機スペースに駐めた魎皇鬼は、転送ポッドから勢いよく走り出てきました。

 「みゃあ、みゃあ~~。」

 「砂沙美ちゃんおはよう。そうかい、そうかい無事戻ってきたんだね。」

ひし、と砂沙美ちゃんに抱きついて、そのあと鷲羽ちゃんに抱きつきます。

 「みゃあみゅ、みゃあみゃあ。」

お得意の高速言語で話し始める魎皇鬼ちゃん。

 「うんうん、へええ、そうなのかい。良かった良かった。・・・・・、で、このクリスタルのコアユニットはなあに?。」

鷲羽ちゃんのおでこに、ひくくっと青筋がたったように見えました。魎皇鬼ちゃん、ちょっとだけびくっとしましたが、人差し指をつんつんしながら上目がちに話そうとしました。

今度はそばに居た、赤い楕円形のコアユニットから声がします。

 「魎皇鬼ちゃんは悪くないんだよ、僕、また田本さんの夢を見てアトランティス大陸に行ってみたくなったんだ。」

 「ちょうど地球の裏側かなぁ、そこを探しているとこの人に会ったの。とても寂しそうだし、津名魅様に会ってもらいたくて一緒に来てもらったの。」

 「わかったよ。一緒に来ちゃったものはしょうがないね。砂沙美ちゃん、ちょっと津名魅に代わってもらえる?。」

 「鷲羽姉様。」

ふっと周りの明るさが減ったような、そんな深く低い女性の声がします。

 「津名魅、このコアユニットの素性はわかるかい?。」

 「ええ、姉様。この子は樹雷皇家初代総帥の妹君である、真砂希姫君とともに辺境宇宙探査の旅に出た、柚樹です。」

 「真砂希姫君は、この地に自分の樹を植え、寿命を全うし、いま、地球の衛星の月に自らの樹の挿し木とアストラルコピーを置いてますわ。柚樹はそのおり、真砂希姫君の天寿を全うされたのを見届けたこの子のマスターの天木日亜とともに、地球で言うところの大西洋上の今は無い大陸に降り立ったようです。その後、一万二千年前の大変動のおりにマスター共々海に飲み込まれ、あまりの悲しさに自らを封印していたようですわ。」

 「で、この情報はもちろん樹雷に伝えているね。」

 「ええ、もちろん。今、樹雷皇家は上を下への大騒動になってますわ。」

二人して、若干してやったりという表情で、くくくと笑っています。

 「まあ、大変なのはあっちだからさ、どうつじつま会わせてくるか見ていようか。」

 「そうですわね、姉様。」

 「瀬戸殿の様子はあとで見てみよう。」

ちょっとした妖怪のような笑顔は、よい子は決してまねをしてはいけませんよ(笑)。

 

 

 午前4時過ぎに1回トイレに起きて(おっさんはトイレが近いのだ)、また寝て起きると九時を過ぎていた。ああ、幸せな日曜日(笑)。でも明日は仕事の月曜日(泣)。

 朝ご飯食べて、洗い物を片付けると、父母は畑に行ってるようである。今は夏野菜の時期で、うちの家庭菜園でもなすびやキュウリは結構たくさん採れているようである。さらにざっとシャワー浴びて、若干怪しい(笑)パソコンを起動する。某ショッピングサイト系のメールがいつものように大量に来ていて、めぼしいものだけチェックする。

 お、最近SSDがやすくなってるなぁと、みていると、以前は5万円以上していた512GBもののSSDが27000円を切っている。こりゃぁ、買いだなポチッとな。コンビニ決済でいいや。購入ボタンを押して決済番号が出たところで、ばしゅんと、見慣れた画面は強制終了して、JYURAIOS_ver.3.47の文字が明滅する。何となく嫌な予感がする(笑)。

 「はあい、鷲羽ちゃんどえええす。」

う、出たな妖怪(笑)。画面一杯に鷲羽ちゃん出現。

 「あなたが、私を妖怪扱いしてようと、心の広いわたしは何ともおもっていないわ。」

お約束な反応を返すのがやはり一般的な常識かなぁと思い、

 「なんでわかったんですか?。」

 「え、ホントに思ってたの・・・・。」

画面に映っている研究室の隅っこに行って、どんより落ち込むふりをする鷲羽ちゃん。話が進まないので、

 「はいはい、わかりました。誰も妖怪扱いしていません。子泣きじじいの親戚だろうとか思っていませんってば。」

 「う、やっぱりそう思ってたんだ。・・・・・でもねえ、これから、もっと妖怪めいた人と会うんだけどねぇ。」

ひっひっひ、と妖怪砂かけおババのような声音で言う。

 「はいはい、僕が悪うございました。で、ご用件はなんですか?。」

 「・・・そうだった、昨夜、天地殿が魎皇鬼が困るから変な夢見ないようにって言ってきたのは覚えてるね。」

 「ああ、スタートレックみたいな退場した、あれ。」

 「SF好きな田本殿に釘を刺しておくべきと思ったのも遅かったんだけど、本気で光速の95%まで加速していたんだな、あの子。」

 「だって、見えるか見えないかわかんないんだけど、光速の90%越えの速度でスターボウが見えるなんてゆー、まあ、そういう本が昔あったし、BASICでそんなプログラムを入れて走らせたりして遊んだもんで・・・。」

 「あの子の能力だと問題なく出来てしまうから今後は気をつけて欲しいのさ。本題は、これからなんだけど、実はそのあと、魎皇鬼とあの子、また田本殿の夢に引きずられて大西洋に潜ったんだよ。」

 あ、そういえば、二度寝する前にアトランティス帝国だの1万二千年前だの想像していたような・・・。

 「もうほとんど戻ってきていたし、1万5千m程度の深さの海溝程度の水圧でどうこうなるような二人じゃ無いから良いんだけどさ。」

 「ちょっと待ってください、光速の95%まで加速していたって、そんなこと問題なく出来るって、どんな性能なんですか、しかも1万5千mの水圧に耐えられるって・・・・。」

 「あははは、今日来たときに会わせてあげるんだけど、皇家の樹ってのはそんなとんでもないものなのさ。」

 「で、だ、その海溝に、ちょっととんでもないものが眠っていて、二人が起こして連れてきちゃったんだな・・・。」

と、背後のクリスタルに見えるものを指さす。

 「ええっと、でっかい水晶のように見えますけど・・・。」

 「よく見てごらん・・・。」

巨大な楕円形にクリスタルを削って(そんな大きな結晶があるのかどうか知らないが)、その中を透明にして、そこにうっすら白く輝く樹のようなものが見える。

 「なんだか樹のようなものが見えますけど。」

 「あんたも、もしかしたら何らかの偏りがあるのかもしれないね、やっかい事を引きずり込むような。ちなみに、数万年前に樹雷を出た、初代樹雷総帥の妹君が指揮する辺境探査船団のうちの一つ、柚樹と言う樹だそうだ。それからいろいろあって、ちょうど、一万二千年前の大異変で樹のマスターごと海に飲み込まれ、たくさんの人が死んだことを目の当たりにしたその樹は、悲しさのあまり自分を封印していたようだね。」

 「ええと、若干どころかほとんど何事が起きているのか飲み込めてませんが・・・。」

 「まあ、そうだろうねえ・・・。この樹があんたの立場をどういうものにするのか、はっきり言ってわたしゃ想像も付かないのさ・・・。しかも、あんたの樹もあるし、これも樹雷での樹選びの結果じゃないし・・・。」

 「ちなみに、元の持ち主さんは・・・?。拾得物でしょうし。」

間抜けなことしか口に出ない。

 「一万二千年前の大異変で、大陸ごと、この樹と共に沈んだそうだよ。樹のマスターはもう居ないってことだね。」

 「ま、そんなこんなで、いろいろあるし、柚樹殿と話して欲しいようなこともあって、ちょっと早いけど柾木家においで。待ってるよ。」

ちゅっ、と投げキッスしながら画面は消える、下半身に直撃するようなかなり色っぽく感じる投げキッスだが、下半身に行く前に止まってしまう自分はやはり変わっているなぁと思う。


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