天地無用!~いつまでも少年の物語~。   作:かずき屋

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ちょっとだけ答え合わせです。


続いての章4

マイパソコン君、なんとかその「JYURAIOS_Ver.3.47」の起動に成功した。この「JYURAI」って、鷲羽ちゃんが言っていた樹雷のことだろうか?。画面は、薄く緑系の色使いで左隅と右隅には蔓と葉のデザインが配されている。今風の「エコ」を前面に押し出しようなメーカーデザインの感じに近い。タッチパッドを触ると軽快に動く様である。

右端のネットワークプロトコルらしきアイコンをクリックすると(WASYU_LAN_Tera1)に接続しているっぽい。うわぁ、やっぱりあのおねいさんがらみなのね。どんなルートで繋がっているのか知るよしもないが、柾木天地君ちをアクセスポイントだとすると優に直線距離で15,6kmは離れている。おお、なんとなく電子レンジの中に居るみたいに身体が熱くなってきた様な気がする(爆)。って、繋がってるってことは、向こうにもアクセスしているのがモロバレってことね。

 画面はシンプルにJYURAI_NETのアイコンとメールソフトらしきアイコンのみである。

ま、どうせバレてるんだったら、見せたいもの、見せたくないもののフィルターもかかっているだろうから適当に遊んでみよう。まずは、何も来ていないだろうけど、メールソフトを起動してみる。

 (メールアドレス、パスワードを設定してください)と出る。うん、普通だ(笑)。うふふ、面白いことを思いついた。今使っている自分のメールアドレス、十数年前にインターネットの黎明期に取得したアドレスをそのまま使っている。そのため、某ショッピングサイト系のメールやら、怪しいスパムメールに出会い系メールに、海外の薬品買いませんかメール(ほら、あそこが何cmか伸びるってゆー)が一日数百通来ている。面白いのでそのままにしていて、昼間はスマホでメールを見て必要なものだけ残すようにしている。パソコンの方では、メールソフトでスパムメールを振り分けてまとめてポイしている。

 ぬるぬる君だのべとべと君だののお返しではないが、このネットワーク経由でメールを取る設定にしてみよう・・・・・。まてよ、ネットワークの接続料とかとられるんじゃないだろうな・・・。(不安)

 うん、今日のところはやめとこ(笑)。シャットダウンボタン探して、適当にクリック、終了する。いつものウインドウズを起動し直して普通にネットサーフィンし、クルマ系のWEBサイトに書き込みしたり、記事を読んだり。電子書籍の漫画をネットで買ってiPadで読む。全巻を一度に買えたりして結構のめり込んでいる。

 うんうんそうそう、ようやく普通の休日の様な気がしてきた。そう、普通。この言葉にどれほどあこがれてきたか(笑)。田舎に帰ってきてから、役場に就職するまで何種類かの仕事はしてきた。ガソリンスタンドのバイトも長かった。土日に、幸せそうに遊びに行く家族連れのクルマが給油に来て、外面は笑顔で対応しているのだけれども内心はとてもうらやましかったし、なんでこんなにエライ思いをしなくてはならないか不合理も感じていた。ガソリンや軽油、はたまたワックスですぐに手は汚れ、工業用石鹸で洗うと冬場はひび割れがひどかった。「普通」の事務仕事にあこがれたあの頃、だがその事務仕事も結構楽じゃない今日この頃だなあとネットしながら回想する。気がつくと午後9時40分過ぎになっている。姪っ子のところに遊びに行っていた両親も帰ってきた気配がする。

 ふとん敷いて、寝っ転がって枕元のLEDスタンドだけにする。今日もまたSFの世界に旅立とうと小説を物色する。そうだ、iPadに確か高校生の時にはまっていたスペースオペラの電子書籍版をダウンロードしていたんだっけ。今日はこれにしよう。久しぶりに宇宙空間所狭しと暴れ回る、お気楽SFが良い。昨日とか昼間の出来事は、やっぱりお得意棚上げで頭の隅っこに積み上げておくことにする。明日だって特に何か指示されているわけでもないし、仕事でもない。

 あれ、スマホが鳴動している。夜間お休みモードなので自動的に音は出ない。あらら、天地君じゃん。おじさんちょっとウキウキしちゃうぞ。

 この年になると、職場の若者系からは仕事のことしか電話はかかってこないし、まず休みに電話がかかってくると、課長から「お年寄りがひとり泣きながら歩いているという通報があった。」とか、「となりの○○さんが朝出てこないと連絡が・・・。」とか。職場に出動して、情報収集し、現場に行って救急車だの警察対応だのということになる。

 「はい。どうしたの?。」

 「いえ、なんかいろいろあったから話したくて・・・。」

はい、そこ!過度な期待通りです(笑)。昔っから女の人が苦手です、自分。と言うか人付き合いが苦手です。職場では必要もあるので何でも話すけど、プライベートでお食事なんて、絶対無理(爆)。そんなこともあって、「寿」な話にも結びついてないし、その気も全くない。かといって、気に入った容姿の男の子と何か、と言うのもあまりにも生きている世界が違いすぎて理解不能。はいはい、ここで白状しますが、学生時代は好きな人いました。男だけど。肉体関係もないまま終わってます(恥)。カミングアウトなんてカッコいいこともしました。結局良いお友達で終わったんだけど、自分のあまりの憔悴ぶりにそういう世界(新宿二丁目とか)いってみれば?とまで言われました。だって、あの娘と今度温泉旅行約束しちゃったとか、仕草がかわいくてたまらない、とかそういう話題を振ってくるのだ。こっちは心に会心の一撃受けてるのにね。もうあんな痛い思いは絶対にイヤである。

 そういうことで、その世界のことは20年以上完璧に封印。ま、職場ではうすうす気がついてるんでしょうね・・・。田舎で四十半ばになっても結婚しないなんて、そういうことを疑われるし。あ、鷲羽ちゃんにもばれてるかも。パソコンおもちゃにされてるし。変なスキャンモンスターにたかられたし・・・。

 「パソコンはちゃんと動いてる?。」

 「ええ、無事資料を作り終えました。本当にありがとうございます。」

 「えっと、鷲羽ちゃんからいろいろ聞いていない?。」

 「いいえ。でもなんでですか?。」

 「精密スキャンモンスターがどうこう言ってたし。」

女好きな普通の男は、こういう種類の人間を毛虫のように嫌うものである。

 「あの人は昔からあーゆーもんなんで許してください。霧恋さんたちもやられていたようだし。」あらら、それはお気の毒。

 「でもねえ、接点すらなかったのに、急転直下を絵に描いたような出来事には正直驚いてるのね。天地君とだって、こうやって話するまでは総務課にそういう人が居る程度しか認識はなかったし。」

 「ああ、俺の場合は意図的ですが、本当に昨日のは想定外でした。明日たぶん、じっちゃんか、鷲羽ちゃんから話はあると思いますが・・・。」

 「意図的って・・・?。」

 「ええ、実は、俺たちの家に入られたことから、だいぶ通常の家庭と違うことは理解されたと思います。」

 「俺は、この町で生まれました。じっちゃんは事情があって外から来ています。この町で人が生きていく上で医療やら、教育、そのほかにも関わらないと行けないものがたくさんあります。その辺は田本さんもよくご存じでしょう。」

 「実は、俺たちの住む場所はある意味隠れ里になっています。行政にかかわらずとも全く問題なく生きていける。でも、全く関わらずにひとりの人間が生きていると言うことがどういう意味を持つか、金曜日の出来事でこれも良くおわかりでしょう。」

百歳になって医療レセプトの一つもない現況はどう考えてもおかしい。介護保険を使っていないことも非常におかしいことになる。

 「そう、だね。あまりにも不自然だね。マジにミイラ化した柾木勝仁さんを隠蔽する様子が目に浮かんだし。」

 「詳しくは、明日明らかにされますが、じっちゃんは今年900歳を越えます。これだけでも真実が外に出ると非常にまずい。まあ、そういったことが外に出ないように隠蔽する役目と、自分自身の情報の摺り合わせをするために俺は役場に勤めています。普通に生まれ、小学校、中学校、高校と行き、まあ高校は入り直して出たけど、役場に試験受けて入った男が勤めている。そういったことになっています。表側の情報は。そんなわけで、なるべく他人の印象に残らないようなフィールドのようなものを張っています。」

 「やっぱり、なんか変だと思ったら・・・。柾木天地君の顔を詳細に思い出せないし、昨日も柾木勝仁さんと、繋がるようなことは思いつきもしなかったなぁ。同じ名字なのに。確かに外に言える内容ではないわな。なんだかまじめにSFしてきたじゃない(笑)。」

 「俺の言うことは、すでにフィクションではありません。今日言って良いことの一つですが、神社を中心とした集落は、通称正木の村と言われてますが、半分くらいの人が戸籍を持っていません。」

 「え?外国籍の人ってこと?。」

現在では、戸籍を持たないと言うことは日本以外の外国籍の人となる。明治時代以降日本では戸籍の整備を重ね、概ね日本に長く住んでいる人は天皇家以外、必ず戸籍を持っているはずである。

 「ある意味そうです。しかも・・・これは明日言いましょう。」


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