あくまでも、こういう主人公なので、ということでご承知置きください(爆)。
続いての章始まり、始まり~~♪。
【妄想シミュレーション二章】
続いての章
夢、だろうか。
およそ、見たこともないイメージが目の前に広がる様な、繋がっているものと共に視る様な・・・。
真っ暗闇だと思っていたところに光が差す。水平に何かが開く様に光が増えていく。
まあ、なんてかわいいと言う声がどこかからしている。と同時に周りにたくさんの同じような存在があることがわかる。
「新しい仲間だ。歓迎!、ようこそ!、帰還おめでとう!、これからもよろしく!。」
のような、語りかけが爆発的に届いてくる。嬉しさと不安、希望というイメージをたくさんもらった。
自分の意識が認識されたときには、傍らの母と、あとは近くの「大きな存在」と少し離れたいくつかの「存在」、そしてずっと遠くにたくさんの「存在」がいることがわかっていた。そのうち、もっと遠くを移動している「存在」もいくつかあることがわかった。
母様は、あなたもあのように飛べるのですよと、優しく語りかけてくれた。そのためにはお友達を見つけないといけませんね、とも言った。
お友達って何だろう・・・。未だ母の枝に抱かれ、まどろみの中を漂ううちに、時は過ぎていった。母と自分の周りでは、まるで水面の泡沫の様に命が生まれては消えていく。そんななかでも、母の「お友達」は永く一緒に生きている様だった。
ある日、近くの泡と感じるものに、煌めきを感じた。日を追うごとにその想いは大きくなるが、またある日を境に想いは凍り付いていく。それは絶望という檻。それでも、飛ぶことを願う想いは、時々その檻を抜け出し、遠いところに行こうとしてはまた落ちるというようなことを繰り返している。このままだとこの泡が消えると何もかも消えてしまう。
母様、あの泡と一緒に行きたい。
始めてそう思った。母様は、あれは泡ではありません。私たちからすれば短い時を生きる人間という存在。そうですか、ついに見つけたのですね。と言った。
母様と僕は、空間に枝を伸ばす様に情報を得て情報を返す。冷たく石の様なものの中を流れる情報とつながって情報の大波を起こさない様に、少しだけ改変した。
これで会えるね、母様。
ええ、すぐ来てくれますよ・・・。
思い出もまた情報。それを周りに預ける。そうすると大きくうねりながら想いが情報としてまたここに帰ってくる。
私たちは「樹」。人と共にいることを選び、共に跳ぶことを約束したもの。
わかる!。たくさんいる仲間からたくさんの情報をもらい、たくさんの知識を学ぶ。お友達が決まった樹もいれば、決まっておらず、飛ぶことを待っている樹もたくさんいる。
頼りない、浮かぶような、そんな感覚だったものが、暖かく堅いものに埋まり支えられるそういう感覚に変わる。その暖かく堅いものはとても熱い光に接している。
暖かく堅いものに、そろそろと「足」を差し込んでいく、枝分かれしてもっと深く、光と熱を求めて、もっと深く、もっと広く。「足」が広がりきったところで、その「足」から熱い光が身体に流れ込んでくる。ごうごうと流れ込んできたものは、今度は「腕」として反対方向に膨らむ。まっすぐに「足」と反対方向へ大きく、大きく・・・。
今度はさほど熱くない光が伸びていく「腕」に当たる。二つに分かれたものが、四つに分かれ、八つに分かれ・・・。熱くない光はまた別種の力を呼び、もっともっと光が欲しい、そう思う。冷たく流れるものが「足」にかけられた。熱くない光と冷たく流れるものは、「腕」を大きく広くすることに役立った。広がった足から熱い光が身体にたまる。
熱い光の使い方は、周りのたくさんの仲間から教わる。大空に出たときに、大空の結び目をほどいてその中に入って、行きたい方向に行くんだよ。自分がここでいいやと思うところで大空に頼んで出してもらうんだ。
みんなにそう教えてもらった。跳ぶのがうまくなるともっと遠くに行ける結び目に入れるようになるよ。それに、私たちは遠く離れていてもいつも繋がっていられる。
その次に、友達や自分を守るために「盾」の作り方も教えてもらった。花びらのような半透明の盾。出来るだけ作ってごらん、と母様と同じくらい大きな樹に言われてがんばってみると8枚の花びらが持てた。おおんおおんと喜ぶ波が来る。みんなありがとうと波を返す。今度は、「剣」も教えてらう。花びらを絞り込んで細く鋭く・・・。
出来たけれど、あまり面白くない。それよりも早く跳びたい。
友達と想いは一心同体。その想いがあって始めて一緒に跳べるんだ。「樹」だけじゃうまく跳べない。
友達って、あの「泡?」
そうだよ。すぐに消えてしまう「泡」のままじゃ一緒に跳べないよね。あなたが、きみが、そなたが、いま「足」から取り込む熱い光で、「泡」を私たちと共に在るようにできるよ。熱い光を友達に重ね合わせるんだ。そうするとずっと一緒だ。
さあ、友達と一緒にどこまでも、どこまでも行けるところまで!。
う~~、スマホが鳴っている・・・。「黒電話」の音に設定しているので、うるさい。カメラ機能の白色LEDも点滅している。しょうがないので、ゆっくり起き上がり、電話に出る。まだ半分寝ているので誰からかよく見えない。
「はい・・・・・。」
「もしもし、あ、田本さんでしょうか?。」
若々しい声。誰だっけ?。
「おはようございます。柾木天地です。突然電話してすみません。ちょっと困ったことが起きたんで、何とかならないかなぁと・・・。」
「どもども、おはようございます。昨日はいろいろお世話になっちゃってごめんね。で、どうしたの?。」
「あのお、今俺が使っているパソコンなんですが、今日起動しようとしたら起動途中で固まってブルーバック画面になってしまって・・・。」
「もしかして、強制終了して起動し直しても、その画面で止まって起動しない??。」
「そうなんです。来週火曜日の指導監査用の書類を作ろうとしてるのに・・・。」
ああ、そういえば昨日柾木勝仁さんに大急ぎで帰ってこい、と言われてとりあえず持ち帰り仕事にしたんだな。
「名簿とか入ってないんで、とりあえずメールで送って今日開こうとしたところなんですよ。」
個人情報保護ということで、ホントは役場の取り決めで、持ち帰り仕事はしてはいけないことになっている。ま、でもしょうがないでしょう・・・。いろいろみんな最近は忙しいし。
「わかったよ。ええっと、ノートパソコンだっけ?。機種名は?。」
「MECのパーサーVJ21と書いています。」
お、数年前の機種だからハードディスクはSATA接続だな。
「ちなみに、バックアップなんてとってないよね・・・?。」
ちょっとした期待を込めて・・・。
「はい取っていません(キッパリ)。」
やっぱり(汗)。あ~~~、困ったときのバックアップなのに(笑)
時計を見ると、今は午前10時半。
「うんわかった。特別に何とかしましょう(笑)。ええっと、とりあえず、シャワー浴びて道具持って出るからそっちにつくのは1時過ぎかな。」
「あ~~、良かったです。それじゃぁお待ちしています。」
そういえば、昨日結構、お酒頂いたけど身体は快調である。最近深酒すると次の日残っていたのに・・・。やっぱり良い酒は残らないんだな(笑)。
キッチンに行くと、書き置きがあった。
(留美ちゃんところに行ってきます。ポッキーの散歩よろしくお願いします。)
ちなみに、留美ちゃんは僕の妹の子ども=姪である。なかなか結婚しない長男を放っておいて姪っ子のところに両親とも遊びに行ったと。ポッキーは飼い犬で、柴犬である。あんまり鳴かないので番犬にはなっていない(笑)。
と言うことは、夕方には帰ってきて、散歩に行かないといけない。
とりあえず、用意されていた朝ご飯セットを完食(ご飯、味噌汁、漬け物、納豆、目玉焼き)。洗い物は、僕が以前プレゼントした食洗機に任す。急いで風呂場に行ってシャワーを浴びた。身体を洗っていると昨日の記憶がよみがえってくる。やっぱり、あれは夢なんかじゃないんだ・・・。
適当にジャージとTシャツを身につけて、パソコンレスキューセットを準備する。細いプラスドライバーや小型のニッパー、カッターナイフとなどが入った道具箱、新品ハードディスクに、クレイドルタイプのハードディスクコピーマシン、内蔵ハードディスクを外付けとして使うUSBタイプのボックス。自分のLinux入りパソコンに、いちおうジャンクパソコンを復活させてOSを入れたもの。それらを大きめのメッセンジャーバックに詰めて、愛車の青い「二台目」の軽自動車で出発する。リース契約の方は新車購入で、まあ趣味で乗っている方も乗らないと。
そう、僕の趣味の一つに、パソコンいじりがあって、こうやって、休日にはお便利君状態に呼び出されたりするのだ。と言ってもまあそんなにスキルがある方ではないけれど「壊れた」と購入ショップに持ち込むよりも安く済んだりする。
柾木家に向かう途中、少し遠回りをすることにする。昨日のお礼をかねて、お酒の一升瓶を購入。あんまり高いものは無理だけれど、そこそこの値段でちょっと違う雰囲気を狙ったもの、みたいなのを購入した。いちおう昨日あれだけお酒を頂いたからそれくらいは返しておきたい。
もうひとつ、スーパー山田に寄ってアイスクリームを買っていこうと思い立つ。この時期こういうものはどの家庭でも喜ばれる。
そんなこんなで、昨日の夜で暗い中だったけど、何となくうろ覚えがあるところを曲がって坂道を上っていくと柾木家到着。
呼び鈴ボタンを押すと、誰かが元気よく走ってくる気配がして、玄関の引き戸が開かれる。
「こんにちは、田本さん。天地兄ちゃんがお待ちかねだよ。」
「剣士君、こんにちは。昨日はいろいろお世話になったね。これ、お土産。」
某酒店の無地のビニール袋に入った一升瓶と、スーパー山田の名前が入った袋を手渡す。
「砂沙美ちゃん、ノイケさん、田本さんからこんなの頂いたよ~~。」
と廊下の奥に走って行く。
クルマから荷物を下ろして、玄関で靴を脱ごうとしていると、折り目正しい感じで歩いてくるノイケさんが見えた。
「あらあら、どうもすみません気を遣わせてしまったようですね。」
「いえいえ、昨日の美味しいご飯やらお酒やら、本当にありがとうございました。」
「あ、田本さん待ってました。急にお願いしてどうもすみません。」
天地君が玄関に出てくる。茶色っぽい、少し変わった作務衣のような上着にジーンズのズボンをはいている。キリッと身体が締まっていて、結構うらやましい体型だなぁ、とか、ふと思う。剣士君は、また縄文バッグを袈裟懸けに、入れ替わりに外へ走り出ていく。
「行ってきまーす。」
「夕方には帰ってきてくださいね。剣士様。」
「わかってるって~~。」
あの元気さがうらやましい。走ったのって何年前だっけ・・・。