福ちゃんは、魎皇鬼みたいに成長させようかと思ったんですが、GXP小説版のイメージがかわいらしすぎて、結局ビースト状態のままです。
一階に帰ってくると、まだまだ酒宴は続いている。ついでにトイレによって(おっさんトイレ近いのだ)、今度は西南君のところに行く。霧恋さんと言われた女性とノイケさんが話し込んでいて、お茶をすすりながら気まずそうに座っている。
魎呼さんが、「なあぁ天地ぃ」と天地君にしなだれかかって、お酒を差しつ差されつ飲んでいる。柾木天地君も顔色一つ変えないところを見ると結構酒は強そうである。
コップ酒持って西南君の隣に座って、
「こんばんは、さっきは助けてもらったようでありがとうございます。」
「いえいえ、まさかこの土地であんな力を感じるとは思いもしませんでした。」
言葉を選びながら慎重に会話する、そんな雰囲気。
「地鎮祭だったっけ、そのまま慌てて出てきたんだね。」
「ええ、そうなんですが、地鎮祭も終わって、実家の自分の部屋にいたところだったんです。俺、ここにいても何もさせてもらえないし・・・。」
「は?。だって、自宅だし、その施工主だったよね?。」
「ええ、そうなんですが・・・。俺が何かしようとするとうまくいかないことが多いし、月湖さんもとても張り切っちゃってるし・・・。」
また、「ぽ」と顔を赤らめる。素の表情が垣間見える気がしてちょっとかわいらしい。
正直、なんだか予想も付かないような苛烈な時間を過ごしてきたそんな雰囲気の山田西南君である。どちらかというと、以前仕事で自衛隊父兄会という事務局の経験があるが、その自衛隊側の人に雰囲気が似ている。スーパー山田の御曹司と言う言葉の方が逆に嘘くさいし、ひどく薄っぺらい気がする。
「ところで、山田西南君、あの一瞬見えた人型決戦兵器はなあに?。」
ちょいと意地悪に聞いてみた。びびくぅ、と正直に驚いた顔をしている。
「やっぱり話すとまずいこと??。」
「まあ、まずいことなんですけれど・・・。ここだけにしてくださいね。あの機体は、某国の最新機密人型兵器なんです。」
口に手を当てて、こっそりあなただけ、みたいな感じ。
西南君の話では、重要海上輸送・護衛を任務とする職場におり、その職場の最新技術で開発されたものらしい。極秘裏にテスト中の機体だそうである。ああ、それで光学迷彩みたいなの使えるのね。最新自動車技術でも、周りの景色をボディに映しこんでうまく見えなくするような技術が開発中と何かのネット配信ニュースで見たことがある。
「やっぱり、男の子はロボットだよね!。」
「そうですよね!。モビルスーツとか言うと、心に熱いものを感じます!」と盛り上がる。
この辺でガマン出来なくなってきたのか、霧恋さんに西南君、お伺いを立てている。
「そうね、私もいるし、少しだけなら・・・。」
お、あっちこっちでとっくりが寝ている。また2,3本持って台所に行き、しばらく暖めて、またテーブルのあちらこちらへとっくりをばらまく。一本もって西南君の近くに座る。コップを持ってくることも忘れない。
「ちょっとだけなら良いんでしょ?」
と、西南君に注ぐ。す~~っと半分くらい開け、ホッとした表情をする。
「このお酒美味しいよね。どこのお酒なんだろう。」
「ああ、瀬戸様からの贈り物のお酒を割ったものでしょう。」
ああなるほど、やっぱり知り合いのコネクションがあってと言うものか。これは正直うらやましい。お金で買えるたぐいのものではないと言うことだな。
「新酒の時期なんか、美味いんだろうねぇ。皆さんうらやましい。」
「え?、これから飲めるようになるんじゃないかな。あの人絶対放っておかないし。」
またまた含みのある発言。こんなんばっかり聞いているとあとで痛い目に遭いそうなので話題切り替え。
「ああ、そうなの?。それはうれしいな。」
また、あーあ、って感じの気の毒そうな顔。え、なんでなんで???
「ねえねえ、なんで、天地君もそうだけど、西南君もそんな気の毒そうな顔するの?」
はああ、と大げさにため息をつきながら、
「控えめに言っても前途多難、でしょうねぇ(笑)。まあ、おかげさまで矛先がこっちに向かってくることが少なくなりそうなのは、ちょっと嬉しいですけど。」
「にや」とまた関わってはいけない系の笑みが怖い。
「ううう、何が起こるのでしょう???。」
「大丈夫ですって、ひょっとすると死ぬことよりも辛いことかも知れませんけど、それ以上に楽しいかも知れませんから。」
なんちゅう発言だか・・・。いたたまれず、自分のコップに酒を注いでグッと飲み干した。
「じ、自分、おっさんだから、人型兵器も好きなんだけど、でかいフライホイール回してエンジン始動するような宇宙戦艦みたいなのが好きだったりするんだな。全長300mとかってゆー。」
西南君の雰囲気に圧倒されかけて、慌てて話題転換(笑)。
そう、回転式三連主砲からビーム兵器を発射したり、最新設定では砲弾まで発射出来るあのアニメである。
「え~~、でも明らかに艦橋があるなんて撃ってくださいと言わんばかりじゃないですか。」
ぐ、痛いところを突く(笑)。西南君も話を合わせるのがうまい。
「それに銀河水平面って何なのよ、と言いたいんですよね俺は。それに喫水線で上下塗り分ける意味がわかりません。」
ぬおお、結構詳しい(爆)。
「一度、惑星から格落ちした某星で潜水艦行動したじゃん。赤い方上に向けて。」
半分空けたコップをさらにあおって飲み干す西南君。ささ、まあ一杯と注ぐと、ぐっと飲んでテーブルに置く。
「それはそうなんですけど。」
「それに、発掘戦艦とか、先の大戦中の沈没戦艦に偽装したとか言うと、萌えない?。」
「う、ちょっと来ますよね、そういうキーワード。」
「一度、艦長!って言われてみたいなぁとか思うもの。」
艦長の言葉に一瞬びくっとなる西南君。
「あんまり、良いものでもないですよぉ」
「は?。」
言われ慣れてるのか???
僕も西南君に注いでもらってコップ半分くらいまで開ける。
「単騎対複数の圧倒的不利の中を敵中突破、理論的には無理があっても、単純にスゴイよね~~。」
「強力なシールドと、こちらが十分に小さく運動性が高いこと、さらに強力な武器と、それらを支えるエネルギージェネレーター、そしてほとんど神がかり的な射撃と操船があればなんの問題なかったですね。な~、福。」
うわ、なんだか知らないけど一度経験済みみたいな言い方がスゴイし、納得させられるすごみもある。みゃあと鳴き、ととと、と膝の上に乗ってくる、耳が大きい猫のような焦げ茶色の動物。膝の上で気持ちよさそうになでてもらっている。
「へえ、かわいいねぇ、福って言うの?。ちょっと抱かせてもらって良い?」
「福、ごめんよ。」
抱き上げて、僕に渡してくれる。ちょっと不思議そうな表情で僕の顔をしばらく見ている。しばらくは撫でられていたが、そのうち飽きたのか西南君の方を見てジタバタし始めて、西南君のお膝の上に戻る。
「あーあ、西南君の方が良いんだねぇ。ご主人様はよくわかるんだね。」
「小さい頃は俺の姿が見えないと、パニックになって探し回っていたんですよ。今はお友達も出来たし、一人でもお留守番出来るよな?。」
みゃ!と手を上げる仕草が本当にかわいらしい。
「ほんと、賢そうな動物だねぇ。」
みぎゃっっと何かショックを受けたみたいなリアクションをする。
「福ちゃんは私たちのパートナーですから、ほかの方から見ると不思議でしょうけど家族と同じなんです。動物って言うと怒るんですよ。」
ノイケさんと話していた霧恋さんが解説してくれる。
「これはこれは失礼しました。どうもすみません。」
ペットという扱いと、家族という扱いで人によっていろいろあることを忘れていた。
またコップを取ろうとした西南君、コップを取り損ねて落としてしまう。
「もう、西南ちゃん飲み過ぎよ・・・。」
かいがいしく、こぼれたものを拭き取ってコップを元に戻す霧恋さん。ついっついっと肩を西南君の胸に当てている。この人結構やるじゃん(笑)。なんだかいろいろあったと聞くけれど、幸せそうにしている今があればそれで良いじゃないかと思う。