原作を放って置くとバッドエンドになるんですが、どうしたら良いですか?   作:月の光

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05_ミスト『マスター、空気ですね』零冶『うるさい、はっきり言うな!』

零冶 サイド

 

 

 リニスに会ってから5ヶ月が経ち、原作開始まで後1ヶ月を切った。ここからが正念場だ。あれから、リニスの戸籍を作り、認識阻害機能付きデバイスをリニスに渡した。さすがに転生者にリニスが海鳴市にいることがばれる訳にはいかなかったからだ。

 

 リニスには、猫耳や尻尾を隠すためとどこから管理局にばれるか分からないからと説明し、常に持っているように言ってある。戸籍はリニス・ランスターだ。え? Strikers のティアナやティーダと同じだって? 世の中同じ苗字の人間なんてごまんといるよ。ちなみに元ネタはINNOCENTだ。考えるのがめんどくs……ごほん、いろいろ考えた結果だ(キリッ

 

『言い訳乙です。マスター』

 

『うるさい、良い名前が思い付かなかったんだよ』

 

 リニスは今、翠屋でウェイトレスをやっている。デバイスを作っておいて本当に良かったよ。桜羽が名前を聞いたときに驚いていたが、認識阻害で別人に見えたらしく、それ以上は気にしなかった。

 

 神宮寺は関係なく口説いていたがバッサリ切られた。まあそれは置いといて良い情報が手に入ったんだ。実は4月から転校生が来ることが分かった。おそらく2人目の転生者でオリ主だろう。

 

 これで俺の役目は終わるはずだ、後はオリ主君に任せる。原作ブレイクなり、ハーレム王国なり、好きにしてくれ。そして俺は自由に過ごす。

 

さ~て、帰って家の片付けでもしようかな。

 

 

ピキィーーーーン

 

 

「…………」

 

[どうしました? マスター?]

 

虫の知らせ(シックスセンス)が発動した……」

 

[このタイミングでですか……]

 

「ああ、そしてそこの曲がり角を曲がったら答えが直ぐ分かる気がする」

 

 俺は曲がり角から顔だけを出し、様子を見る。

 

「ちょっと! 何よあんた達! すずかを離しなさい!」

 

「アリサちゃん!」

 

「静かにしろ! おい! サッサと車に押し込め!」

 

 お分かりの通り、バニングスと月村が黒服たちに誘拐されてます。はあ~、後一ヶ月待ってくれればオリ主が何とかしたのに……さっき円を広げて見たが案の定目撃者は俺だけだった。

 

「ミスト、追跡は?」

 

[サーチャーを付けてあります]

 

「流石だな。助けに行くぞ」

 

[了解です]

 

 

 俺はバリアジャケットを纏い、神の不在証明(パーフェクトプラン)を発動させ、車を追跡する。

 

『町外れの廃ビルか、ベタだな』

 

『そうですね。2人は2階に居るようです。2人の見張りが付いてます。

 入り口にさらに2人の見張り、1階に5人の誘拐犯が居ます。』

 

『了解。では早速救出しますか』

 

 俺は神の不在証明(パーフェクトプラン)を解除し、オーラを足の裏に集中させ、放出する。そして、一瞬で入り口付近の2人の後ろに回り、気絶させる。

 

「ガッ!」

 

「グヘッ!」

 

『もうそれはひとつの発でも良いですよね』

 

『そうだな、名前を付けるとしたら、瞬歩(しゅんぽ)か』

 

 ミストとのん気なやり取りをしながら、ビル内に入っていく。

 

「な、誰だテメェは! 外の見張りは何やってやがる」

 

「そいつ等なら、お寝んねしているぞ。俺は誘拐現場を目撃した一般人だ」

 

「テメェ! 生きて帰れると思うなよ! 変な仮面しやがって!」

 

 仮面は関係ないだろ……誘拐犯A・Bがそう言うと残りの誘拐犯たちが一斉に拳銃を構え、撃ってくる。俺はそれを動体視力のみで見切り、紙一重でかわし、一人目を気絶させる。

 

「まず、一人」

 

「な! ひ、怯むな! 撃て!」

 

 俺は銃弾を全て紙一重でかわし、誘拐犯に接近する。

 

「ど、どうなってやがる! なぜ当たらない!」

 

「こ、こいつ人間じゃねー!」

 

「ぼ、亡霊だ……」

 

 誘拐犯たちが驚くのも無理はない。俺は銃弾を最小限の動きでかわしているため、銃弾が俺をすり抜けている様に見えるのだ。

 

 そして……

 

「お前で最後だ」

 

「ひぃ~」

 

「だが、その前に……」

 

 俺は絶対遵守(ギアス)を発動する。

 

 

零冶 サイドアウト

 

 

 

アリサ サイド

 

 

 私は、いや私達は今知らない部屋で手足を縛られている。私は直ぐに誘拐されたんだと理解した。たぶん、私の家は裕福だから身代金目当てなんだと思う。すずかの家もかなり裕福だけと、私の家ほどでは無い。巻き込んでしまったすずかには申し訳ないことをしたわ。

 

「あんた達! こんなことしてただで済むと思っているの! 私達を解放しなさい!」

 

「ア、アリサちゃん、あまり刺激しちゃダメだよ」

 

「はっ、元気のいいお嬢ちゃんだ。だが、自分の立場が分かっていないようだな……

 そっちの紫髪のお嬢ちゃんの言う通りにしておくんだな。さもないと」

 

 ポケットからナイフを取り出す誘拐犯。

 

「そのきれいな顔に一生消えない、傷を残すことになるぜ」

 

 そう言って不気味に笑う。

 

「ひっ!」

 

 私は悲鳴にならない声を上げる。

 

「ごめんなさい! 私が謝るからアリサちゃんを許してください!」

 

 私の代わりに謝るすずか。

 

「すずか……」

 

「まあ良いだろ……おい金髪のお嬢ちゃん、そっちのお嬢ちゃんに感謝するんだな」

 

「あ、ありがとう……ごさいます」

 

 誘拐犯にお礼を言うすずか。

 

「すずか、ありがとう。それとごめんなさい。関係のないすずかまで巻き込んでしまったわ」

 

「気にしないでアリサちゃん、友達でしょ。それに巻き込んだのはきっと私の方だよ。

 大丈夫、きっとお姉ちゃん達が直ぐ助けに来てくれるよ」

 

「すずか……そうね。きっと直ぐに助けは来るわ」

 

 私はすずかに感謝した。本当に友達になれてよかったと……最初の出会いでは私は素直になれなくて酷いことをしてしまった。それにも係わらず、許してくれた。

 

 そういえばあの時なのはに頬をぶたれたのよね。あれは痛かったわ……頬もそうだけど、なのはの言葉を聞いて、すずかが涙目になっている姿を見て心が痛かった。あの日以来の付き合いで私の親友達。何があっても私は親友を守って見せるわ。

 

「ふん、化け物が友情ごっこか、滑稽だな」

 

「ッ!?」

 

「何よ、化け物って」

 

「んっ? ああ失礼、知らないのか。すまんがクライアントからは一応黙っておくように

 言われているのでな」

 

「クライアントって、あんた達は私の身代金目当てで誘拐したんじゃないの?」

 

「ん~、まあそれくらいならいいだろ。我々の目的はそっちの紫髪のお嬢ちゃんの方さ、

 君は巻き込まれたんだよ。」

 

「すずかが? 何でよ。言っておくけど私の家のほうが裕福なのよ」

 

 私は疑問に思ったことを聞いていると、すずかが青い顔をしているのに気が付いた。

 

「すずか、大丈夫? 顔色が悪いわよ?」

 

「う、うん、大丈夫。アリサちゃんこれ以上聞くのはやめよう? 私怖いの……」

 

「……分かったわ」

 

 すずかが脅えたように言って来たので、私は了承した。きっとすずかは何かを隠している……それが誘拐犯の口から出てしまうことが怖いんだわ。

 

「でもすずか、これだけは言わせて……」

 

 そう言うと私を見つめてくるすずか。

 

「何があっても私達は親友よ」

 

 すずかが驚いた顔で私を見る。

 

「うん! ありがとう。アリサちゃん」

 

 私達は笑顔で見つめ合う。するとずっと黙っていたほうの誘拐犯が

 

「な、なあ、こっちの金髪の子は犯っちまっていいか?」

 

「あ? お前ロリコンかよ。こんなガキの何処が良いんだか……まあクライアントに会うまで

 まだ少し時間があるから良いけどよ。あまり犯り過ぎるなよ。商品価値が下がるからな」

 

 私は誘拐犯の言っていることを理解できなかった。

 

「へへ、サンキュー。さあお嬢ちゃん、お兄さんと楽しいことしようか……」

 

「ひぃ!」

 

 私は理解してしまった。私はこの男に犯される。

 

「いや! 来ないで! 変態!」

 

「やめて! アリサちゃんに酷い事しないで!」

 

「だ、大丈夫だよ、最初は痛いけど、直ぐに気持ち良くなる」

 

 息を荒くして、私に近づいてくる。変態の手が私に伸びてきたが、

 

「待て」

 

 もう一人の誘拐犯が止めた。た、助けてくれるのかな?

 

「おい、ここまで来てお預けはないだろ」

 

「下のほうが騒がしい。何かあったのかもしれん」

 

「マジかよ! 警察が来るには早くねーか?」

 

「取り合えず、何があっても良いように警戒しておけ」

 

「ちっ、分かったよ」

 

 変態が私から離れていく。助かった……

 

「アリサちゃん、大丈夫?」

 

「うん、大丈夫よ。助けが来たのかな?」

 

「きっとお姉ちゃん達だよ」

 

 すずかはそう言うけど私は違うと思っていた。私達が誘拐されてからそんなに時間が経っていない。だから、忍さんたちが来るには早すぎるのだ。だとしたら、誰? 私は思いつく限り考えてみるが

 

「静かになったな。片付けたか?」

 

「だったらもう良いよな?」

 

「待て、確認するのが先だ、『こちらコードA、何があった?』」

 

「『コードDだ、正義の味方ぶったバカが乗り込んできやがった。どうやら、

  誘拐現場を目撃したらしい』」

 

「『で、そいつはどうなった?』」

 

「『安心しろ、ちゃんと始末した。まだ息があるが、ここじゃ邪魔になるから、

  今そっちに持っていく』」

 

「『分かった。サッサと持って来い。コードBがガキと遊びたくてうずうずしてっからよ』」

 

「『おいおい、何一人で楽しもうとしてんだ。俺も混ぜろ』」

 

「『お前もロリコンかよ』」

 

「『ちげーよ。俺も溜まってんだよ。最近やってねーからな。穴がありゃ何でもいい。

  取りあえず、俺が行くまで待ってろって伝えろ』」

 

「『了解』……だとさ、残念だったな。お嬢ちゃんたち、折角のナイト様は

 くたばっちまったってよ。」

 

「へへ、楽しみだぜ。あの可愛い顔が苦痛にゆがむのを考えるだけでな」

 

 私は絶望した。きっと顔は青ざめているだろう。もう一人の男が来たら私はおもちゃにされる。

 

「誰かぁ~、助けてよぉ」

 

 私は怖くて泣いてしまった。

 

「アリサちゃん……お願いです。私が何でもするから、アリサちゃんに酷い事しないでください」

 

「悪いがクライアントからは無傷で連れて来いってことなんでな。諦めろ」

 

「そ、そんな……」

 

 私は誘拐犯がこの部屋に来ないことを祈った。しかし、無常にも部屋の扉が開き、誘拐犯が顔を出した。

 

「ひっ!」

 

 だが、顔を出した誘拐犯がいきなり、前のめりに倒れた。

 

「「えっ?」」

 

「お、おいどうしt」

 

 倒れた誘拐犯の影から、誰かが飛び出し、部屋にものすごい速さで入ってきた。そして、私に近づいていた誘拐犯(変態)に一瞬で近づき

 

「ぐえっ」

 

 もう一人の誘拐犯のほうへ蹴り飛ばした。

 

「な! テメェ何者だ」

 

 誘拐犯が懐に手を入れ銃を取り出したが、入ってきた人は誘拐犯に何かを投げ付け

 

 

キィーーン

 

 

 と音を立て、銃を弾き飛ばした。

 

「な!」

 

 そして、誘拐犯を取り押さえた。

 

「チェックメイトだ」

 

 そう言って、持っていた刀を誘拐犯の首に当てる仮面の人。私はピンチの時に現れた王子様みたいだと、その姿に見惚れていた。

 

 

アリサ サイドアウト

 

 

 

零冶 サイド

 

 

~2階の部屋に突入する少し前~

 

 

 俺は絶対遵守(ギアス)を発動し、

 

「《上のやつらに連絡を取る方法を教えろ》」

 

 と、誘拐犯に命令する。

 

「《分かった。上のやつらにはこのトランシーバで連絡を取る。俺のコードはD、

 上のやつらはAとBだ。コードAがトランシーバを持っている》」

 

「分かった。それじゃあ眠れ」

 

「うっ!」

 

 最後に残った誘拐犯を気絶させる。するとトランシーバから

 

「『こちらコードA、何があった?』」

 

 と聞こえてきた。俺は早速、七色の声帯(ウグイスボイス)を発動させる。七色の声帯(ウグイスボイス)はありとあらゆる声を出すことができるレアスキルだ。

 

「『コードDだ、正義の味方ぶったバカが乗り込んできやがった。どうやら、

  誘拐現場を目撃したらしい』」

 

「『で、そいつはどうなった?』」

 

「『安心しろ、ちゃんと始末した。まだ息があるが、ここじゃ邪魔になるから、

  今そっちに持っていく』」

 

「『分かった。サッサと持って来い。コードBがガキと遊びたくてうずうずしてっからよ』」

 

 マジかよ、なんでロリコンが居るんだよ。まったく……。

 

「『おいおい、何一人で楽しもうとしてんだ。俺も混ぜろ』」

 

「『お前もロリコンかよ』」

 

「『ちげーよ。俺も溜まってんだよ。最近やってねーからな。穴がありゃ何でもいい。

  取りあえず、俺が行くまで待ってろって伝えろ』」

 

「『了解』」

 

 さて、これでよし、俺はさっき気絶させた誘拐犯を担いで2階へ上がる。

 

――あの部屋か……

 

 俺は担いでいる誘拐犯のポケットからナイフを拝借し、誘拐犯を前にして扉を開ける。

 

「ひっ!」

 

 そして、誘拐犯を離し、部屋の中に倒れさせる。

 

「「えっ?」」

 

「お、おいどうしt」

 

 中のやつらが仲間に気を取られている隙に、瞬歩でバニングスと月村に近いやつに近づき、もう一人の誘拐犯のほうへ蹴り飛ばす。

 

「な!テメェ何者だ」

 

 誘拐犯は飛んできた仲間を何とかかわし、懐から銃を取り出したが、さっき拝借したナイフを投げ付け、銃を弾き飛ばす。

 

「な!」

 

 そして、誘拐犯に接近し、床に投げ飛ばし、首に刀を当てる。

 

「チェックメイトだ」

 

「テ、テメェ……いったい何者だ。下の連中は何やってんだ!」

 

「下の連中は全員気絶させた。後はお前だけだ」

 

「バカな、さっきお前を捕らえたと連絡が」

 

「それは《この声のこと言っているのか》」

 

 俺は七色の声帯(ウグイスボイス)を発動し、言った。

 

「な! さっきのはテメェだったのか!」

 

「その通り、2人を助けるために油断して貰おうと思ってな。案の定油断してくれた」

 

「くそ!」

 

「さて、おしゃべりはお仕舞いだ」

 

 俺は気絶させようとしたが、

 

「ま、待て! 良い話ことを教えてやる。そこの紫髪の女はな」

 

「やめて! 言わないで!」

 

「夜の一族っていう! 吸血鬼なんだよ!」

 

「あぁぁ……いやぁ」

 

「分かっただろ。そいつを助ける意味なんて無いんだ。金髪のほうは開放するから、

 俺達を見逃してくれ。」

 

「すずか、嘘よね。あいつの言っていることなんて」

 

「…………」

 

 バニングスの質問に対して、沈黙する月村。おいおい、それは肯定しているのと代わらないぞ。

 

「ほう、吸血鬼か……だがお前はそれを証明できるのか? 見た目は普通の人間と

 変わらないが?」

 

「確かに見た目は普通の人間だけどな。だが、やつ等は人間の血を吸う。

 それにやたら身体能力が高く、再生速度が速いって話だ。

 そっちの金髪の嬢ちゃんなら心当たりがあるんじゃねーか?」

 

「確かにすずかは体育でも運動神経が良いけど……」

 

「それに再生速度だってその刀で切りつけりゃ一発で分かるぜ。なあ、分かっただろ。

 そうだ! あんた俺達と手を組まねぇか? クライアントから受け取る金をあんたにも

 分けてやっからよ。悪い話じゃねーだろ」

 

 そう言って、俺に見逃すように交渉してして来る誘拐犯。ここまで、無償で助けに来た相手がそれに乗ると本気で持っているのか? だとしたら、バカだな……

 

「アリサちゃん、ごめんね。今まで騙してて、今日だって私のせいで怖い目に合わせちゃった。

 私……友達失格だよね。」

 

「……本当ね。こんな大事な事を隠しているなんて、友達のする事じゃないわ」

 

「本当にごめんなさい……」

 

「でも! これで隠し事は無くなったわ! それにさっきも言ったでしょ!

 何があっても私たちは親友よ! すずか!」

 

「ッ! あ、ありがとうぅ……ありがとう! アリサちゃん。うん! 私たちずっと親友だよ!」

 

 何か俺空気だな~

 

『マスター、空気ですね』

 

『うるさい、はっきり言うな!』

 

「あのガキは手遅れみてーだな。なぁあんた、今ので分かったろ。あの紫髪のガキは人間じゃねー。

 助ける価値の無い化け物なんだよ」

 

「あんた! いい加減にしなさいよ! これ以上すずかのこと悪く言ったら許さないわよ!」

 

「ちっガキが、いい気になりやがって……なぁ、あんたからも何か言ってやってくれよ」

 

 誘拐犯が俺に言ってくる。

 

「そうだな……確かに化け物なら助ける義理はないな」

 

「「え!?」」

 

「へへ、分かってくれてうれしいぜ。じゃこの刀を退かしてくれ」

 

 俺の言葉に驚愕するバニングスと月村と安堵して言ってくる誘拐犯。

 

「何、勘違いしているんだ」

 

「ひょ?」

 

 まだ俺のバトルフェイズはsyって違う違う。

 

「俺は化け物なら助けないといったんだ」

 

「だ、だからそこの紫髪の女は……」

 

「吸血鬼だから何だ? お前は何をもってその子を化け物だと言う? 血を吸うからか?

 お前は蚊や蝙蝠を化け物と言うのか? 身体能力が高い? そんな人間ごまんと居るぞ?

 再生速度が速い? それの何がいけない? 怪我が早く治って良いじゃないか」

 

「だ、だが! そいつらは人間の姿で人間を騙してるんだ! いつか、人間を絶滅させる

 気なんだよ!」

 

「バカかお前は? まず、今の言葉に根拠が無い。それに人間を絶滅させたら、

 吸血鬼だって生きていけないだろうが」

 

「そ、そいつは人間の血を吸うんだぞ! 怖くないのか!」

 

「まったく怖くないな。化け物っていうのはな。どれだけ自分達に恐怖を与えるものかで

 決まるんだよ。あの子がお前達に何をした? 何もしていないな。ただクライアントに

 誘拐するように依頼されただけだ。寧ろお前達のほうが人間社会に恐怖を与える存在だ。

 女児誘拐……立派な犯罪だよ。化け物」

 

「うっ!」

 

 俺はそう言って誘拐犯を気絶させた。さてと

 

「すまない、待たせたな。直ぐ縄を解いてやる」

 

 俺が2人の縄を解くとバニングスが

 

「ありがとうございます。おかげで助かりました。何かお礼をさせてください」

 

「礼はいい。たまたま誘拐現場を目撃しただけだからな」

 

「でも、貴方が来てくれなければ、私はあの誘拐犯に乱暴されていました」

 

「私からもお礼をさせてください。貴方のおかげでアリサちゃん……私の親友が助かりました。

 本当にありがとうございます」

 

「気持ちだけで十分だ。ご家族に連絡をしたらどうだ?」

 

「あっはい、お姉ちゃんに連絡します」

 

 

~すずかの連絡後~

 

 

「「「「「すずか《お嬢様》《ちゃん》!アリサ《ちゃん》《様》!

     無事《ですか》《か》!」」」」」

 

「「お姉ちゃん《忍さん》! ノエル《さん》! ファリン《さん》!

  恭也さん! 士郎さん!」」

 

 お迎えが来たか……しかし早いな。連絡してから、5分も経ってないぞ。

 

『おそらく、既にこちらに向かっていたのでは?』

 

『まあ、そうだろうな。しかし、待っている間やたらバニングスと月村がこっちを

 見てきたんだが、何だったんだ?』

 

『さあ、私には分かりかねます(まったく鈍感なマスターですね)』

 

 ミストでも分からないのか、仮面か? 仮面なのか? 俺だって好きで仮面をしている訳じゃないんだぞ。

 

「ッ! 貴様! 何者だ!」

 

 高町恭也が俺に言ってくる。殺気を出すな殺気を。

 

「落ち着け、俺は2人の誘拐現場を目撃した一般人だ。聞いていないのか?」

 

「そうか、すまない。少し敏感になっていた」

 

「気にするな。得体の知れない仮面の男が居れば、警戒もするだろう」

 

(((((((自覚はあったんだ)))))))

 

「先に言っておくがこの仮面は趣味ではないぞ。顔を明かせない事情があるだけだ」

 

(((((((趣味かと思った)))))))

 

「ま、まあいいわ、2人とも無事で本当に良かったわ。2人を助けてくれて本当にありがとう」

 

「気にするな」

 

「お姉ちゃん……実は」

 

 月村すずかが姉に耳打ちをする。

 

「ッ! ……そう、分かったわ。恭也、それと士郎さん。ちょっと良いかしら?」

 

 次は月村忍が高町恭也・高町士郎と話をしている。たぶん、夜の一族関係だろうな~。おっ、終わったみたいだ。

 

「悪いけど、アリサちゃんと、えーっと」

 

「そういえばまだ名乗っていなかったな……俺はライだ」

 

「そうラ「「ライだって!」」 え? どうしたの恭也? 士郎さん?」

 

「いやすまない、なんでもない」

 

「そう? アリサちゃんとライさんには私の家に来て話を聞いて貰いたいの。私達、

 夜の一族について……」

 

「わかりました」

 

「ライさんも良いかしら?」

 

 いやです! とは言えない雰囲気だ。

 

「……良いだろう」

 

 

~月村邸にて~

 

 

「――と言うことなのよ」

 

 俺とバニングスは月村忍から夜の一族についての説明を受けていた。

 

「それで私達、夜の一族にはある決まりがあるの」

 

「決まりですか?」

 

 バニングスが月村姉に聞き返す。

 

「ええ、私達一族の秘密を知ってしまった人には、私達と契約を交わし盟友として共に歩むか……

 私達の事を全て忘れるかを選択してもらわなくてはならないの……」

 

「要するに秘密を誰にも言わないようにするか、秘密そのものを忘れるかと言うことだな?」

 

 俺はそう確認すると。

 

「簡単に言うとそうよ」

 

「私は……忘れたくありません。すずかのことも夜の一族のことも」

 

「私達は普通の人間とは違うわ。それでも良いのね?」

 

「はい、すずかは私の親友です。親友のことは忘れたくありません」

 

「アリサちゃん……」

 

「そう、ありがとうアリサちゃん。すずか、良い友達を持ったわね」

 

「うん!」

 

「ふふ、それでライさんは如何しますか?」

 

 月村姉の言葉でその場の全員が一斉に俺を見てくる。

 

「その前に聞きたいことがある」

 

「何でしょうか?」

 

「盟友となった場合、俺の正体は明かさなければいけないのか? さっきも言ったが、

 俺は素顔を明かす訳にはいかないので仮面を外せないし、ライというのも偽名だ」

 

「それは……申し訳ないのですが、流石にどこの誰というのが不明というままには出来ません」

 

「そうか……まいったな。俺には君達の魔眼も通じないから、選択肢は一つしかないんだよ」

 

「「「「「「え!?」」」」」」

 

「それは本当ですか?」

 

「ああ、試しに何か命令してみると良い」

 

「……分かったわ。《その仮面を外しなさい》」

 

 そう俺に魔眼を使用してくる月村姉。

 

「断る」

 

「ッ! ……本当に効かないわね」

 

 そりゃ魔力耐性も催眠耐性もEXですから

 

「そういうことだ。つまり盟友になる以外の選択肢がなく、俺の正体は明かせない。

 だから、困ったことになっているんだよ」

 

 さて、如何するかな

 

「……仕方ない。これは交渉だが」

 

「交渉ですか?」

 

「ああ、俺の素顔と本名以外の秘密を一つ明かす。それで盟友として認めて貰いたい」

 

「それは……内容によります」

 

「もちろん分かっている。だから交渉だ。先に盟友として認めて貰えるならその秘密を明かす。

 だが、認めて貰えないなら、俺が君達から俺の存在を忘れさせる」

 

「「「「「「「え!?」」」」」」」

 

「俺には君達と同じように相手に命令を強要させる能力がある。よく考えて欲しい」

 

「……分かったわ。その秘密で盟友として認めます」

 

「忍! 良いのか! こんな出鱈目な交渉で!」

 

「仕方ないわ、こちらの記憶を消す方法が通じなくて、そちらにその方法がある以上

 こちらが不利だもの。だったら、少しでも有利に進めなくては」

 

「懸命な判断だ。若輩とは言え、流石は一族の当主を務めるだけはある。だが、力づくで聞くと

 いう手段もあったのでは? 数はそちらが優勢だが?」

 

「ええ、でも妹とその友人を助けてくれた恩人にそんな真似は出来ないわ」

 

「ふむ、そうか。その心遣いに感謝する。安心しろ。今から明かす秘密は俺の中でも3番目に

 重要な秘密だ。決して損はさせない」

 

「ふふ、期待しているわ」

 

「では……俺は君達夜の一族と同じように普通の人間ではない」

 

「ッ! というと?」

 

「俺は……魔法使いなんだよ」

 

「「「「「「「は?」」」」」」」

 

「そう驚くのも無理はないが、事実だ。証明してやろう」

 

 そう言って、俺は手のひらを上に向けて魔力弾を作り出す。

 

「「「「「「「ッ!?」」」」」」」

 

「これが魔力で作った弾だ」

 

 俺は魔力弾を自由に動かす。さらに6つの魔力弾を作りだし、俺の真上で横一列に並べ、魔力変換資質で変換する。そして右から炎・氷・雷・風・地・闇・光と作り出す。

 

 しばらくしてから指をパチンと鳴らし、全て消す。

 

「これで分かってもらえたかな?」

 

「え、ええ分かったわ」

 

「すごい綺麗だったね! アリサちゃん!」

 

「そうね。幻想的だったわ」

 

「はぁ~不思議です~」

 

「いったいどんな原理なんでしょう?」

 

「「魔法……」」

 

 少し驚いている月村姉、はしゃいでいる月村とバニングス、不思議そうにしているファリンさんとノエルさん、何か考え事をしている士郎さんと恭也さん。

 

「俺が素顔と本名を隠しているのはこの魔法のせいだ。最悪魔法がばれたとしても

 顔と名前さえ知られていなければ、まだ何とでもなるからな」

 

「なるほど、分かったわ」

 

「それと俺は傭兵をやっていてな。これも何かの縁だ。何かあったらいつでも

 依頼してくると良い」

 

 俺は王の財宝(ゲートオブバビロン)から通信機を取り出す。

 

「ッ! それも魔法なのかしら」

 

「まあ、少し違うが同じ様なものだ。これは俺に直通の通信機だ。人数分用意してある。

 何かあったら、連絡すると良い。もちろん依頼も引き受ける。有料だがね」

 

「ありがとう。有効的に使わせてもらうわ」

 

「では、話は以上かな?」

 

「ええ、これd「忍ちゃん、少し良いかな」何でしょう? 士郎さん」

 

「ああ、ちょっとライ君に聞きたいことがあってね」

 

「何でしょうか?」

 

 大体の察しは付くけどね。

 

「君はなのはと言う女の子に会ったことはないかい?」

 

 ですよね~。如何しようかな……

 

『正直に言ったらどうですか? 別に悪いことしたわけではないんですし』

 

『急に出てくるなよ、ミスト。そうだな。まあいいか』

 

「……5年くらい前に車に轢かれそうになっていたなのはと言う少女を助けたことはありますね」

 

「そうか、やはり君だったのか……私はなのはの父親なんだ。君のおかげでなのはは助かった。

 お礼を言わせて欲しい。本当にありがとう」

 

「礼を言われるほどのことではありませんよ」

 

「謙遜することはないさ、こちらは娘の命を救ってもらったんだ。それともう一つ、なのはから

 聞いていたと思うが、その時私は意識不明の重体だった。だが、その日に暖かい何かを

 感じてね。怪我が治り、意識が戻ったんだ。君は何か知らないかい?」

 

「さあ? 知りませんね。もしかしたらどこかのお節介が何かしたんじゃないんですか?

 夢は叶うなんて言ってしまったことを現実にするためにね」

 

「そうかい。分かったよ。それじゃあ、お節介ついでに明日なのはに会ってくれないかな?

 あの日以来ずっと君にまた会いたいと言っていてね」

 

「それは俺が仮面を外せないのを分かって言っているのか?」

 

「もちろん」

 

「高町なのはに魔法使いだとばらせと言っているのか?」

 

「そうは言っていないよ。別に魔法使いであることは明かさなくてもなんとかなるじゃないかな?

 たとえば、仮面は趣味だとか」

 

「この仮面は趣味じゃないと言っただろ。それと俺は人前にはなるべく姿を晒したくない」

 

「それは考慮するよ。場所は私が経営している喫茶店で明日は臨時休業にするからお客はいない。

 もちろん、ご馳走する。自慢じゃないけど、私の妻のシュークリームは中々なものだよ?」

 

 知ってます。零冶として何度も行ってますから……菓子作り技能EXでもあの味が出せないくらいだからな。

 

「……分かった。魔法使いであることも明かす。ただし、それは貴方から伝えておいてくれ。

 同じ話をするのは面倒だ。準備が出来たらさっき渡した通信機で連絡してくれ」

 

「良いのかい?」

 

「良いと言うまで、帰す気が無かったくせに何を言う」

 

「ばれたか、流石だね」

 

「あ、あの」

 

「なんだい? すずかちゃん」

 

「明日私も良いですか?」

 

「あっ! わ、私も!」

 

「あら、すずかったら積極的ね」

 

「私は構わないよ」

 

 なんで、月村とバニングスまで来るんだ? そして、俺をそっちのけで話が進んでいる件……寂しくなんか無いだからね。

 

「来るのは構わないが……別に楽しいことなどないぞ?」

 

「えっとそのぉ……別に楽しいからとかじゃなくて……これで終わりにしたくなかったというか」

 

 月村が顔を赤くして言ったが、後半部分はよく聞こえなかった。今のやり取りで赤くなる要素がまったく分からない。

 

「まあいい。では、俺はこれで失礼する」

 

 俺は飛雷神の術(ひらいしんのじゅつ)でその場を後にする。あ~、明日めんどくさいな~

 

 

零冶 サイドアウト


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