原作を放って置くとバッドエンドになるんですが、どうしたら良いですか?   作:月の光

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更新が遅くなり申し訳ありません。

没ネタはあるんですが、夜遅いので、また今度書きます。
また、誤字チェックをしてないので、そちらも合わせてやります。


2016/1/24 追記
 誤字チェックしました。
 没ネタも書きました。
 よかったたら読んで下さい。


51_零冶『え? なんだって?』ミスト『いきなり難聴系主人公にならないで下さい』

 砕け得ぬ闇事件が終結し、ライはなのは達や未来人組を連れて、地球に転移した。

 

「「「「「「え?」」」」」」

 

 ライの飛雷神の術(ひらいしんのじゅつ)を経験したことが無い紫天一家とフローリアン姉妹が呆然とする。

 

「ここは……家の中?」

 

 逆に経験した事があるなのはは何事もなかったかのようにライに聞いた。

 

「正確には俺が拠点として使っているマンションの部屋だ」

 

『もっと正確に言うと使う予定だった部屋ですね』

 

『俺はまた、一度も使っていない部屋を手放すのか……』

 

『災難ですね。既存のマンションじゃまた原作キャラに巻き込まれる可能性を危惧して、

 マンションそのものを立てたのに』

 

『まあ、人件費は俺の影分身だから、掛かったのは資材と土地代くらいだけどな』

 

『影分身マジ便利』

 

『駅から徒歩三分、近くに活気のある商店街、オートロック及び虹彩認証付き、全部屋に

 床暖房とエアコン付き、オール電化、太陽光発電と一週間の電力を賄う充電設備の6LDK、

 広いバルコニー付き、更に核ミサイルであろうと傷一つ付かない耐久力を実現しております』

 

『ああ……ホントに』

 

『『もったいね~~~~~!!』』

 

「ちょっ、ちょっと! 何で皆そんなに冷静なの! いきなり光景が変わったのよ!」

 

「まあ、ライのする事だし」

 

「えっと……なんや、もうなれてもうたわ」

 

「もっと凄いこと見せてもらってるしね!」

 

 飛雷神の術(ひらいしんのじゅつ)になれていないキリエは声を荒げたが、フェイト、はやて、アリシアが普通に答えた。

 

「すっごいね~! いきなり部屋が転移してきたよ!」

 

「レヴィ、逆だ。我等がこの部屋に転移したのだ」

 

「え? でも魔力反応無かったよ?」

 

「おそらくお父様のレアスキルでは無いでしょうか」

 

「なるほど! 流石ボクらのお父さんだね!」

 

「シュ、シュテル。レヴィも。おと、ライがお父さんって呼ぶなって目線を送ってますよ?」

 

「何で? お父さんはお父さんでしょ?」

 

「外でその呼び方をしなければ問題無いんでしょう?」

 

 レヴィとシュテルは悪びれた様子も無く首を傾げてライに聞いた。

 

「……外では気を付けてくれよ。特にレヴィ」

 

 ライは諦めたように言った。

 

「なら外では何と呼べば良いのだ? 父上」

 

 今度はディアーチェがライに聞いた。

 

「それについては後で話をする。さて、早速だが、未来組を帰すとしよう。アミティエ、キリエ。

 なのは達の記憶処理を頼む」

 

「「分かりました〈りょうかい~〉」」

 

 その後、アミタ達によってなのは達の記憶からアミタやヴィヴィオ達が未来から来たと言う情報のみ記憶処理が施された。

 

「そういえば、貴方の記憶は何時処理すれば良いでしょうか?」

 

「俺は自分でやるから大丈夫だ」

 

「自分で自分の記憶操作なんて出来るの?」

 

「ああ、問題無く出来るから安心していい。それじゃ、行くぞ」

 

 ライが声を掛けるとユーリがライの傍にやって来た。

 

「あの……行ってらっしゃい。お父さん」

 

 ユーリは顔を赤くして、ライに言った。

 

「……ああ、行ってくるよ。ユーリ」

 

 ライはそんなユーリの頭をポンポンと軽く叩き、優しく言った。

 

「行ってらっしゃ~い! お父さん!」

 

「帰りをお待ちしております。お父様」

 

「無事帰って来るのだぞ。父上」

 

「ああ、直ぐに帰って来る」

 

 レヴィ達に見送られたライは未来へのゲートを開くため、ヴィヴィオ達やアミタ達を連れて無人世界に転移した。

 

 そして、ほんの数分が経過した後

 

「ただいま」

 

≪早!?≫

 

 ライは直ぐに帰ってきた。それもそのはず、未来に行ったからと言ってもこの時代に戻ってくる時間は同じ時間なのだから、ユーリ達に取ってはほんの数分の出来事なのだ。

 

 そして、ライがすぐに帰ってきたことに驚いたのも束の間、なのは達は再び驚愕することになる。

 

≪その女の人誰?≫

 

 なのは達の冷たい声がマンションの部屋に木霊する。

 

 

 

 

 

 

 ライがフローリアン姉妹とヴィヴィオ達を連れて飛雷神の術(ひらいしんのじゅつ)で転移した頃まで時間を遡る。

 

 ライ達は辺り一面が荒野の場所に姿を現した。

 

「景色が変わった……また転移したという事ですか」

 

「でもやっぱり何のエネルギー反応も無いわね」

 

「そういう能力(レアスキル)なんでな」

 

「一体どういう原理なんですか?」

 

 アミタに聞かれたライは考えた素振りを見せた。

 

――まあ、用事が済めば会うことは無いんだ、大丈夫だろう。

 

 そう考えたライは歩き出し、地面に突き刺さっているクナイを広い上げた。

 

「俺の転移の仕組みはこのクナイに秘密がある」

 

「クナイ? 確かに普通のナイフとは形が異なり少し歪ですが……」

 

「何の変哲も無いナイフじゃない」

 

「重要なのはこのクナイの形状ではなく、この持ち手に書かれている文字だ」

 

「文字? あっ!」

 

 ライの言葉にヴィヴィオが無意識に反応してしまい、口を押さえた。

 

「ヴィヴィオ、もう話しても大丈夫だ。気を使わせて悪かったな」

 

「あっそうなんですか? 良かった~」

 

「これで一安心ですね」

 

「うわぁ~無駄に緊張したな~」

 

「うん、肩こっちゃった」

 

 ライの言葉を皮切りに喋り出すアインハルト達。

 

「本当にすみません。私達姉妹がご迷惑を……」

 

「あっ! 気にしないで下さい」

 

「ええ、貴重な体験が出来たと思っていますから」

 

「二度とこりごりだけどな」

 

「そうだね」

 

 アミタはヴィヴィオ達の言葉を聞き、安堵した顔になる。

 

「で? その文字が何なの? そもそも読めないんだけど?」

 

 キリエはそんなことをお構いしにライに質問する。

 

「何て書いてあるかは重要じゃないんだが、ここには《飛雷神十五式》と書いてある」

 

「飛雷神? 十五式?」

 

「ああ、さっきも言ったが何て書いてあるかは関係なく、この文字を刻む時に念を込めることで

 この文字が書かれた場所に瞬時に転移出来る能力なんだ。こんな風に!」

 

 ライはクナイをクルクルと回した後、クナイを持ち直し、誰も居ない方向へ投げた。六人は投げられたクナイを目で追っていると

 

 

≪ッ!≫

 

 

 ライがクナイの傍に突然現れ、クナイを掴んだ。

 

「という訳だ。このマーキングが消えない限りどれだけ距離が離れていても瞬時に転移できるのが

 この飛雷神の術(ひらいしんのじゅつ)の能力だ」

 

「な、なるほど。それは便利ですね」

 

「ああ、俺も主要な場所にこのマーキングを付けているし、こういった飛び道具に付けることで

 敵の不意を突けるからな。かなり重宝している」

 

「それじゃ、貴方が私の傍に現れたのもそれな訳?」

 

「いや、あれとは違う。悪いがそっちについては話す訳には行かないな」

 

「あら残念ね。そういえば今気付いたけどここって私達が時空移動した場所じゃない?」

 

「ああそうだ。時空移動をより安定させるためには同じ場所の方が良いからな」

 

「詳しいんですね。私から進言しようと思っていたのですが」

 

「さっき装置を見せてもらったからな。大体は把握しているつもりだ」

 

「あの短い時間で良く……」

 

「流石はライさんですね」

 

「それでは早速ゲートを開きますね」

 

「ちょっと待ってくれ、アミティエ」

 

「どうかしましたか?」

 

「こちらの四人と話しがしたくてな。少し待ってくれ」

 

「分かりました。ではいつでもゲートを開けるよう準備しておきます」

 

「頼んだ」

 

 ライは再びヴィヴィオ達を連れ、飛雷神の術(ひらいしんのじゅつ)で転移した。

 

「さて! 準備しますか!」

 

「頑張ってね~」

 

「貴方も手伝いなさい!」

 

「ええ~めんどくさいからパス」

 

「て・つ・だ・い・な・さ・い!」

 

「もう~仕方の無いお姉ちゃんね。ほらサッサとやるわよ」

 

 キリエは悪態を付きながらアミタの作業を手伝い出した瞬間。

 

「何だ? まだ終わってなかったのか?」

 

 ライはヴィヴィオ達と姿を現し、二人に声を掛けた。

 

「「早すぎでしょ〈早すぎです〉!」」

 

「仲が良いのは分かったから、早くしてくれよ」

 

 二人はそんなに早くは無理だと思いながらも手を止めず、作業してゲートを開いた。ライ達はヴィヴィオ達をそれぞれの時代に送り届け、エルトリアへ戻っていった。

 

 

 

 

 

 再び時は遡り、ライとヴィヴィオ達がゲートを潜る少し前。ライはヴィヴィオ達を連れて、飛雷神の術(ひらいしんのじゅつ)で転移した。

 

「あれ? ここは」

 

「また建物の中みたいですね」

 

 ヴィヴィオとアインハルトは転移した場所を見て言った。

 

「ここは俺が住んでいる家だよ」

 

「へぇ~ライさんはここに住んでるんですか」

 

「なんだが落ち着く雰囲気ですね」

 

「そうかい? ありがとう」

 

 ライはそう言いながらヴィヴィオ達はオーラで包み周をして栄光の手袋(グロリアスハンド)時の支配者(クロックマスター)を発動し、世界の時間を止めた。

 

「あれ? でもライさんあの時計電池が切れてますよ?」

 

 異変に気付いたヴィヴィオがライに聞いた。するとライはバリアジャケットと変身魔法を解き、零冶の姿に戻った

 

「大丈夫切れてはいないよ。今本当に時間が止まってるんだ」

 

≪へ?≫

 

「と言っても信じられないよね。ほら証拠」

 

 零冶はいつの間にか手に持っていた水の入ったコップを落とした。

 

「わ!」

 

 その行動に驚いたヴィヴィオは思わず声を上げるが、コップは空中でピタリと止まった。

 

「え? ど、どう言う事?」

 

「これは一体……」

 

「ははは、流石だ。零冶さん何でもありだな」

 

「すごい! すごい! どうなってるのこれ!」

 

 興奮が隠し切れないリリィは空中に止まっているコップに触れるとコップは再び動き出した。

 

「え! わっ! わっ!」

 

 急に動き出したコップに驚き、コップを取り損ねたリリィにコップの水が迫り、リリィは水を被りそうになった。

 

「おっと」

 

 零冶はすかさずリリィの手を掴み、自分の傍に引き寄せ、コップを回避させた。そして再びコップは空中で水をぶちまけた状態で再びピタリと止まった。

 

「大丈夫?」

 

「あっうん、ありがとう」

 

「どう致しまして」

 

 零冶はリリィの手を離し、コップを掴みこぼれ掛けている水を器用に再びコップの中に戻した。

 

「と言う訳で今は本当に時間を止めているんだ」

 

「もう言葉もでません」

 

「良くなのはママ達が〈零冶君だからしょうがない〉って言ってた意味が分かりました」

 

「時間を止めているのは分かったけど、どうしてこんな事を? それに話があるって……」

 

「別に大した意味は無いよ。ただ、本当はなのは達と話したかったところなのに、僕の言った

 ことを気にして我慢してくれていたみたいだからそのお詫びにお茶でもどうかなと思ってね」

 

 零冶は王の財宝(ゲートオブバビロン)から紅茶セットとお茶菓子をテーブルに並べた。

 

「それに折角未来から来たんだ。もっと話がしたいと思ったんだ。ダメかな?」

 

「えっと、でも……」

 

 ヴィヴィオはこれが原因で未来が変わってしまうことを危惧して難色を示した。

 

「大丈夫だよ。何も詳しい話を聞きたいんじゃ無い。ただ世間話をしたいだけだから、

 それにここでの記憶もちゃんと処理するから未来は変わらない」

 

「そう言うことなら」

 

「ええ、ご相伴に預かりましょう」

 

「俺もそうするよ。腹減っちゃって」

 

「いただきま~す」

 

 それから零冶は紅茶を淹れて四人の前に並べる。ヴィヴィオとアインハルトは変身を解き、子供の姿に戻った。そして、四人はティーカップを持ち上げる。

 

「ん~、良い匂い」

 

「ええ、上品な香りがします」

 

「そうだね~」

 

「俺にはまったく分からない」

 

「気に入ってくれた? これはね。ベルカの茶葉でセイントオリーヴァって言うんだ。

 古代ベルカ時代に聖王オリヴィエが好んで飲んだと言われているらしいよ」

 

「へ、へぇ~そうなんですか~」

 

「た、確か結構高い紅茶でしたね。余り市場に出回らないとか」

 

「そうなんだ~」

 

――リリィのやつ分かってないな

 

「大丈夫だよ。君が聖王オリヴィエに縁があるってこともちゃんと記憶処理するからね」

 

「気付いてたんですか?」

 

「寧ろ気付かないほうがおかしいよ。瞳や虹色の魔力光を見れば誰でも分かる」

 

「そうですか……」

 

 ライに言われたヴィヴィオは少し顔を暗くする。

 

「でも僕の調べでは聖王オリヴィエの血縁は残念ながら途絶えている。それでも君がいるって

 ことはそう言う事なんだね」

 

「……何でもお見通しなんですね」

 

 ヴィヴィオは苦笑いをして零冶に微笑む。

 

「でも君はここにいる」

 

「え?」

 

「どんな形で生を受けたとしても君はこうして生きている。今まで出会った人や経験、

 これからの出会い……全てが君の歩んできた道、そして歩んでゆく道だ。それは君だけの……

 君だけにしか作れない思い出になる」

 

「零冶さん……」

 

「いつかその出生や血統が障害になるかも知れないけど、その時はちゃんと他人を頼るんだよ?

 未来の僕でも構わないから。他力本願で悪いけどね」

 

 零冶は笑顔でヴィヴィオに言った。

 

「はい!」

 

 ヴィヴィオもそれに答えるように満面の笑みで答えた。

 

「ふふ、娘が出来たみたいだ」

 

「残念ですけど娘にはなりませんよ」

 

「ん?」

 

「娘になったらお嫁さんになれませんから! なのはママ達には絶対に負けません!」

 

『ミスト、翻訳を頼む』

 

『訳:零冶さんのお嫁さんに私はなる!』

 

『え? なんだって?』

 

『いきなり難聴系主人公にならないで下さい』

 

『俺も難聴系主人公になりたい』

 

『主人公で良いんですか?』

 

『訂正だ。難聴系モブキャラになりたい』

 

『難聴系は要らないですね』

 

「良く分からないけど、頑張ってね」

 

 零冶は心にもない言葉をヴィヴィオに投げかける。

 

「大丈夫ですよ、ヴィヴィオさん。ミッドは一夫多妻ですから」

 

「そうだったね! じゃあ第一婦人になるよ!」

 

「では私は第二婦人に」

 

『ミスト、翻訳を』

 

『訳:ハーレム王国建設の第一歩』

 

『OK把握、もういいぞ』

 

『ハーレム王国! バンザ~イ! バンザ~イ!』

 

『もういいって言ったじゃん!』

 

「えっと……やっぱり頑張らなくても良いですよ。いえ、頑張らないで下さい」

 

「もう手遅れだと思いますよ。零冶さん」

 

「そうですよ~、観念するのだ~」

 

 こうして楽しい?時間は過ぎて行き、そして

 

「さて、そろそろいいかな?」

 

「そうですね。美味しい紅茶でした」

 

「ええ~もっとお話したいです」

 

「我が侭言うなよ。ヴィヴィオ」

 

「零冶さん、このお菓子持って帰って良いですか?」

 

「ああ、構わないよ」

 

「やったー!」

 

 零冶は変身魔法とバリアジャケットを纏い、ライに変身した。

 

「よし、準備は良いか?」

 

「あ、変身しないと」

 

「そうですね」

 

「いや、そのままで問題ない。アミティエやキリエには関係ないからな」

 

「そうですか? わかりました」

 

「そういえばこの時代に来た時もこの姿でしたね」

 

「なら、尚の事そのままのほうが良い」

 

 ライは時間停止を止め、世界の時間が動き出した。

 

「あっ、時計が動き出した」

 

「ああ、時間停止を止めたからな。では行くぞ」

 

「「「「はい」」」」

 

 ライは再び、ヴィヴィオ達を連れて飛雷神の術(ひらいしんのじゅつ)で第101管理外世界ランジールに転移した。転移したところでキリエとアミタが言い合いをしているところに出くわした。

 

「もう~仕方の無いお姉ちゃんね。ほらサッサとやるわよ」

 

「何だ? まだ終わってなかったのか?」

 

「「早すぎでしょ〈早すぎです〉!」」

 

「仲が良いのは分かったから、早くしてくれよ」

 

 アミタとキリエはぶつぶつと文句を言いながら、着々と準備をし、ゲートを開いた。そして、ヴィヴィオ達を未来に送った後、ライはエルトリアへと旅立った。

 

 

 

 

~エルトリア~

 

 ライはエルトリアを復興するため、アミタ、キリエの生きる時代、エルトリアに姿を現した。

 

「着いたのか?」

 

「はい、戻ってきました。私達の時代……エルトリアに」

 

 ライは辺りを見回す。

 

「これが時空転移装置の本体か?」

 

「そうです。まだ使えるか調べますね」

 

 そう言ってアミタは装置を調べ始める。

 

『テイルズ・オブ・ファンタジアの時空転移装置に似ているな。かなり大掛かりな装置だ』

 

『確かにそうですね。すごく……大きいです』

 

『まあ、それだけ時空移動が難しいかと言うことだな』

 

『はい、すごく……難しいです』

 

『これは改造のし甲斐があるな』

 

『や・ら・な・い・か(魔改造)』

 

『折角無視してたのに! いい加減にしろ!』

 

『てへぺろ☆』

 

「……ダメです。私達の時空転移で限界だったようです」

 

 アミタは顔を暗くして答えた。

 

「あちゃ~困ったわね」

 

 それを聞いたキリエも言葉ではおちゃらけているが顔は真剣そのものだった。

 

「ちょっと貸してくれ」

 

 ライは二人にそう言うと時空転移装置に触れた。そして、しばらくすると。

 

「これで大丈夫だ。もう使えるぞ」

 

「「は?」」

 

 二人はライから言われた一言に目を点にする。

 

「そんなはずは……」

 

 アミタはライの言葉を疑いながらも装置のコントロールパネルを操作する。

 

「ええ!? ど、どうして! さっきまでは!」

 

「え? 本当に使えるの?」

 

「い、一体何をしたんですか!」

 

「何、壊れるの状態に時間を戻しただけさ」

 

 ライは時空転移装置に触れた際に時の支配者(クロックマスター)を発動し、時空転移装置をキリエとアミタが使う前の状態に戻した。

 

「ごめん、言っている意味が分からないわ。時間を戻すですって」

 

「ああ、俺は触れた対象の時間を操作する能力(レアスキル)を持っている」

 

「時間の操作なんて……もはや人間の領域を超えています」

 

 アミタは呆れた顔でライに言った。

 

「「あんた……本当に人間?〈あなた……本当に人間ですか?〉」」

 

 もはや恒例になりつつある言葉が二人から投げ掛けられた。

 

「まさか、ギアーズである君達にそれを言われるとは……俺は人間だよ。時空転移装置は

 使えるようになった。後で時空の歪みを発生させないよう改造しよう。いいね?」

 

「「ア、ハイ」」

 

「それでは案内してくれ」

 

「分かりました。こちらです」

 

 ライはアミタとキリエに案内され、地下の時空転移装置の部屋から出た。そして

 

「アミタ、キリエ。何処に行っていたんだ? それと君は誰だ?」

 

「はじめまして、私はライ。傭兵をやっております」

 

 ライは丁寧に礼をした。

 

「あっ、これはご丁寧にどうも。私はグランツ。グランツ・フローリアンです。アミティエと

 キリエの父親です」

 

 ライとグランツは互いにあいさつをした。そしてアミタ達は今まであったことを話した。

 

「……そうだったのか……ライ君、娘達が迷惑を掛けた。申し訳ない」

 

 グランツは深々と頭を下げた。

 

「そうですね。大変迷惑しました」

 

「本当に返す言葉も無い」

 

「ですから親である貴方には罰を受けて貰います」

 

「「な!」」

 

「ああ、構わない。娘の不始末の責任は親が取るものだ」

 

「博士!」

 

「させないわ!」

 

 キリエはヴァリアントザッパーをザッパーモードで出現させ、ライに銃を向けた。

 

「よしなさい。キリエ」

 

「でも!」

 

 キリエは必死に反抗する。

 

「いいんだ」

 

 グランツの言葉を聞き、悔しそうに銃を降ろすキリエ。

 

「では、グランツ・フローリアン」

 

「ああ」

 

「貴方には命ある限り、復興したエルトリアを見守る事を誓って貰います」

 

「「「え?」」」

 

 ライから言われた事に驚きを隠せないフローリアン親子。

 

「まだ死蝕を見ていないのでなんとも言えませんが、大地の汚染が自然発生するとは考えにくい。

 だとすれば人間による汚染物質の垂れ流しや自然破壊などが原因である可能性が高い。

 例え復興してもまた同じことが起きないよう貴方達が見守って下さい。

 それが俺が与える罰です」

 

「それは重い罰だな」

 

「はい、これは全力を尽くさないといけませんね」

 

「……ライ、ありがとう」

 

「礼は早いな。では早速だが、グランツ博士。貴方の若い頃はどんな姿でしたか?」

 

「ん? 何故それを?」

 

「先程言った罰を受けてもらうには貴方の寿命は短すぎる。持って一年と言ったところ

 でしょうか。それでは罰になりません。ですから貴方には若いころの姿に戻ってもらいます」

 

「若い頃に戻すって一体どうやって」

 

 ライの言った言葉にアミタが返した。

 

「あっ、さっきの時間を操作する能力?」

 

「それは別の能力だが、似たようなものだ」

 

「しかし、時を操るのは……」

 

 グランツは時間を操ることに難色を示した

 

「言ったはずです。これは俺が与える罰です。貴方に拒否権はありません。今後、エルトリアの

 為に貴方が娘達を導いて下さい。家族で手を取り合い生きて下さい」

 

「……分かった。それが私の役目なら、甘んじて受けよう」

 

 グランツは笑顔でライに言った。その後、プレシアの時と同じように絶対読心(ギアス)で記憶を覗き、完全修復(パーフェクトリカバリー)で若々しい姿にグランツは戻った。その姿を見てアミタとキリエはまた博士と暮らせることに喜び涙を流した。

 

「しかし凄い能力ですね」

 

「それがあれば死蝕も治りそうね」

 

「残念だが、これは使用者である俺が過去の状態を把握しておかなければならない。残念だが、

 これではエルトリアを復興できない」

 

「ではやはり私達の考えた復興計画を使うしか無いのでしょうか?」

 

「まずはその計画と死蝕を見せてくれ」

 

「分かった。こっちだ」

 

 ライはグランツ達に案内され、計画の内容と死蝕を見せてもらった。そして計画の甘いところを指摘し、更に綿密な計画に変えていく。

 

「まあ、こんなところか」

 

「凄いな、ライ君。まさかこれほど短時間で死蝕を理解した上、更に指摘まで」

 

「あなた達の資料が分かり易かったからですよ。助かりました」

 

「でも、確かに計画は綿密になりましたが、まだ100年以上の年月が必要ですね」

 

「これ以上はどうしようも無いわ」

 

「問題無い。そのために俺がいる」

 

 ライは話を切り、席を立ち上がった。

 

「ライさん、どちらに?」

 

 アミタはライに尋ねた。

 

「死蝕を消しに行く」

 

「「「は?」」」

 

 ライから放たれた言葉に呆けるフローリアン親子。そんなことをお構いなしにライは研究室から外に出た。それに続くようにフローリアン親子も外に出た。

 

――さて、やるか。強者の慈悲(リミッターオン)。オーラ量をSからEXへ

 

 ライはオーラ量の全リミッターを解除した。

 

「「「ッ!?」」」

 

 ライの纏っている雰囲気が変わり、それに驚愕するフローリアン親子。

 

「あんた何を――」

 

 キリエがライに聞こうとした瞬間。

 

――絶対停止(ギアス)発動。

 

 ライは絶対停止(ギアス)を発動し、フローリアン親子を円の中に入れ、体内時間を止める。そして、両手の人差し指と中指を立て、自分の前で十字に合わせる。

 

多重影分身の術(たじゅうかげぶんしんのじゅつ)!」

 

 ライは影分身の術(かげぶんしんのじゅつ)で大量の自分の分身を作った。その数はゆうに万を越える。

 

「散開!」

 

≪了解!≫

 

 影分身体達は本体からの指示を受け、神の不在証明(パーフェクトプラン)を発動し、各自がエルトリアの各所に散る。それを確認したライは絶対停止(ギアス)を解除する。

 

「――したの?」

 

 体内時間が動き出したキリエの言葉が続いた。

 

「自分に掛けていたリミッターを解除しただけだ」

 

「……あんたあれだけ強くてリミッターを付けていたの?」

 

「そうなるな。強大な力は恐怖の対象にしかならないからな」

 

 ライはキリエに聞かれたことに淡々と答える。

 

「一体何をするつもりなんだい? ライ君」

 

「まあ、見ていて下さい」

 

 しばらく時間が立ち、ライは念話を飛ばす。

 

『各員、まだ配置に付いていないものは応答しろ』

 

 ライの念話に応答は返って来なかった。すなわち、影分身全員が配置に付いたということ。

 

『では、始めるぞ』

 

『≪了解≫』

 

 ライはしゃがみ、大地に手を付ける。そしてオーラ量EXで周囲の大地を周で包み込む。それを影分身体も同じように自分の周囲の大地を周で覆う。そしてエルトリアという惑星一つをライのオーラが覆った。

 

『カウントを開始する。3、2、1』

 

 そして、全てのライが能力を発動する。

 

『≪全快再生(フルリペア)! 発動!≫』

 

 全快再生(フルリペア)……触れた対象をオーラで覆い、周をすることでその対象を治療する能力。対象を修理及び治療するための方法を本人が理解しておくことで治療するという過程を飛ばし、治療したという結果に変えることが出来る。対象は無機物でも可能。

 

 全快再生(フルリペア)によって、エルトリアは死蝕から復興したという結果に変わり、その姿に戻るため、死蝕はみるみる消えて行き、あたりは自然が戻っていった。ライは完全に死蝕が消えたことを確認し、影分身体を消した。

 

 そんな光景を目の当たりにしたフローリアン親子はただただ呆然と自然あふれる広原を見つめていた。

 

「これは奇跡か」

 

「信じられません」

 

「凄すぎて言葉が出ないわ」

 

 呆然と辺りの自然を見ているフローリアン親子を他所にライは次の行動を開始する。

 

「この辺で良いか」

 

 ライは王の財宝(ゲートオブバビロン)から一つの種を取り出した。そしてそれを地面に植える。そして、手でいくつもの印を結び終えた後、両手を地面に添える。

 

「木遁 大樹創生の術!」

 

 すると植えた種は芽吹き、みるみる大きく成長し、一つの大樹が生まれた。そんな光景を見ていたフローリアン親子は再び、言葉を失う。

 

「こんなところか」

 

 ライは強者の慈悲(リミッターオン)で再び、オーラ量にリミッターを掛け、Sランクまで落とす。

 

『何ですか、さっきの印は。あんなの必要無いでしょう』

 

『雰囲気は大事だろ?』

 

『ただの中二病にしか見えませんでした』

 

『もう二度とやらない! 絶対にだ!』

 

「これでエルトリアの復興は完了だ」

 

「「「……」」」

 

 ライの言葉に反応を示さないフローリアン親子。

 

「お~い」

 

「「「はっ!?」」」

 

 フローリアン親子はライに声を掛けられていることに気付いた。

 

「あ、貴方! 一体何をしたんですか!」

 

「そうよ! あんたが地面に手をつけたと思ったらいきなり自然が戻るわ! いきなり大きな樹が

 出てくるわ! 意味が分からないわ!」

 

「分かった、分かった。説明してやるから落ち着け」

 

 興奮を隠し切れないアミタとキリエを他所にグランツはその場にしゃがみ込み、足元に生えている緑に撫でるように優しく触れる。

 

「これがエルトリアの本来の姿だ。まさか生きている間にこの目で見ることができるとは……」

 

 グランツは立ち上がり、ライの方へ向き直る。

 

「ライ君。本当にありがとう。君はこの星の救世主だ」

 

 グランツは深々と頭を下げ、ライにお礼を言う。

 

「そのお礼、確かに受け取りました」

 

「それはさておき!」

 

 グランツは興奮気味にライに詰め寄った。

 

「さっきのは何だい! 何かの装置を使ったのか!? 魔法か何かか!?」

 

「わ、分かりました。答えますから離れて下さい」

 

『マスターのヘタレ受け。これは売れる!』

 

『おい馬鹿やめろ!』

 

「まず、先程のは俺の能力(レアスキル)です」

 

 ライは全快再生(フルリペア)の説明した。

 

「なるほどなるほど。時間の短縮、いや圧縮か? 素晴らしい! 何とか再現できないものか!」

 

 グランツは興奮気味に考え込む、やはり彼は科学者なんだろう。

 

「科学者って言うのは皆こうなのか?」

 

「すみません。我が父ながら……お恥ずかしい」

 

「気にするな。同じような人間に心当たりがある」

 

――もっとも()はあったこと無いけどな。

 

 ライが言っているのは闇の書救済作戦で行った未来から情報を記憶弾(メモリーボム)で受け取った記憶にあるジェイルスカリエッティのことだ。

 

『マジックアイテムを作っている時のマスターも似たようなものですよ?』

 

『え? マジで?』

 

『ええ、良く〈ここをこうして、あそこをこうで、やっべぇ! テンション上がって来たああ!〉

 って言ってます』

 

『結論:科学者って皆こんなのらしいぞ』

 

「さて、今後について話をしよう」

 

「今後? もう復興したんじゃないの?」

 

「ダメだ、まだ大きな問題がある」

 

 ライは重々しい雰囲気で言葉を紡ぐ。

 

「お、大きな問題……ですか」

 

「な、何よ。もったいぶらないで早く教えなさいよ」

 

 その雰囲気を察してアミタとキリエは真剣な面持ちになる。

 

「それは……伝承だ」

 

「「…………は?」」

 

 二人はライから放たれた言葉に疑問符を浮かべる。

 

「ああ、すまない。伝承って言うのはな」

 

「い、いえ、伝承の意味は知っています」

 

「何? あんた伝承に載りたいの?」

 

「そうではない。さっきも言ったが、死蝕はおそらく人間による自然破壊が原因だ。

 その自然破壊から復興させるためには100年以上の年月が必要になる」

 

「そんなことは分かってるわよ」

 

「だが、実際はほんの数分で復興してしまった。しかも、俺があっさりとな」

 

「つまり貴方の功績を後世に語り継げと?」

 

「違う。寧ろ逆だ」

 

「逆?」

 

「この事実を他の人間が知ったらどう思うか……大多数の人はこう思うだろう。

 〈もし、また死蝕になってもその人に直してもらえば良い〉とな」

 

「そ、それは……」

 

「無い……とは言えないね」

 

 ライの説明を聞き、言いよどんでいるアミタの変わりにグランツが答えた。

 

「いや、確実にそうなる。最初こそは自然を大切にしようと心掛けるだろう。だが、これほど

 あっさりと復興したのでは必ず心に隙ができる。だからこそアミティエとキリエには

 これから言う伝承を語り継いで貰いたい」

 

「一体どのような?」

 

 

 

 その日、一人の青年が惑星エルトリアに降り立った。青年は不思議な力を持っており、その力を自分の世界の為に使ってきた。しかし、人々が見ていたのは自分ではなく、自分の持つ不思議な力だった。そのことを知った青年は自分の居た世界に絶望し、世界を離れ、旅に出た。

 

 青年は自分の存在を認めて欲しかった。形あるものが欲しかった。それを見つけるための旅。その途中で立ち寄った惑星エルトリアの現状を知り、悲しんだ。そして青年は初めて理解する。自分が生まれてきた意味を……自分はこのために生まれてきたのだと。

 

 青年はその不思議な力を使い、エルトリアの穢れを一身に引き受けた。死蝕はみるみる消え、世界に緑が戻っていった。そして青年は大樹になった。その青年の名は……ユグドラシル。

 

 

 

「と、まあこんな感じかな」

 

「なるほど。エルトリアの復興は一人の青年の犠牲によって成されたもので二度とその様なことは

 無いことを伝える訳だね」

 

「その通りです。ですが、時が立てば伝承は忘れ去られる。そのためにギアーズである

 アミティエとキリエにはこの樹を守り、そして伝承を語り継いでもらい、出来る限り廃れない

 ようにして欲しい」

 

「なるほど、理解しました」

 

「めんどくさいけど、エルトリアのためだもの仕方ないわね」

 

「グランツ博士は残りの人生をアミティエとキリエのフォローに努めて下さい」

 

「もちろんだ。君に言われるまでも無いことだよ」

 

 グランツ達はライの話を聞き、快く引き受けた。

 

「それとこれを二人に渡しておく」

 

 そう言うとライは懐からある二つの物を取り出した。一つは赤い翼を思わせる形をしており、もう一つは桃色の騎士の剣を思わせる形をしていた。ライは赤い翼をアミタに、騎士剣をキリエに渡す。

 

「これは……メモリースティックですか?」

 

「こんなの貰ってどうしたら良いの? もしかして私達を口説いてる訳?」

 

「そんな訳無いだろ」

 

 キリエに言われたライは即否定する。

 

「むっ、そんな言い方しなくてもいいじゃない」

 

 それを聞いたキリエは少し不機嫌になる。

 

「確かに君達二人は魅力的な女性だが、俺はまだそう言うのに興味は無い」

 

「そ、そう? なら良いんだけど……」

 

「はは……少し……照れますね」

 

 キリエとアミタは少し顔を赤くして答えた。

 

「そのメモリースティックは俺が開発したマルチフォームスーツの待機形態だ」

 

「マルチフォームスーツ?」

 

「ああ、君達二人は強いが、まだ不十分だ。今後この樹や時空転移装置を守るなら更に強さが

 必要になるだろう。そのためのスーツだ」

 

「へぇ~気が利くじゃない。弱いって言われたのは癪だけど」

 

「ですが、力不足は否めません。結局ユーリさんには手も足も出ませんでしたし」

 

「それについては気にするな。ユーリの強さは俺が戦ってきた中でも上位に入る強さだ。

 もっともそのスーツを使えばユーリとも互角に戦えるようになるがな」

 

「「はい?」」

 

「そのマルチフォームスーツは宇宙空間での活動を可能とするために膨大なエネルギーを内包

 している。そのエネルギーでシールドを展開することで使用者を守る絶対防御が存在する。

 更にそのエネルギーは二つのコアによって相乗効果を発揮し、ほぼ無限にエネルギーを

 生み出すことが出来るダブルコアシステムを採用している。その名も……」

 

 ライは言葉を一度切り、再び口を開く。

 

「インフィニット・ストラトス。通称ISと呼ぶ」

 

「インフィニット……ストラトス」

 

「無限の宇宙(そら)……ですか」

 

「ああ、ダブルコアシステムにより、エネルギーが尽きることは無い。ユーリの無限の魔力に

 対向するには十分すぎる性能だろ?」

 

「あんた……とんでもないものを作ったわね」

 

「そうでもないだろ? そもそもエグザミアだって作ったのは人間だ。なら同じようなものを

 作ることは十分可能だ。さて、早速だがそれを装着してみてくれ。名前は持った瞬間に

 分かっただろ」

 

「「……」」

 

 ライに言われた二人は目を瞑り、ゆっくりと口を開く。

 

「来て! 紅蓮聖天八極式!」

 

「来なさい! ランスロット・フロンティア・アルビオン!」

 

 二人が機体の名前をコールするとその体にISを纏った。

 

 アミタは赤を基調にした機体。特徴的なのは一際大きい右腕だろう。

 

 キリエは桃色を基調とした機体。その風貌は騎士のように悠然としていた。

 

「これがIS……」

 

「凄いですね。視界が360度、全方位を見ることが出来るなんて不思議な感覚です」

 

「それだけじゃない。目視できない遠距離も知覚できるようになる。更に動きをスローモーション

 で見ることも出来る。また、PIC《パッシブ・イナーシャル・キャンセラー》によって、

 浮遊や加減速が出来る。それぞれの特徴にあった武装もある。また、両機体に共通している

 背中のエナジーウィングは攻撃・防御・移動。更に遠中近とあらゆるレンジにも対応できる

 スラスターを搭載している。他にも――」

 

 ライはしばらくISの性能について説明をした。

 

「もの凄いハイスペックですね」

 

「それに結構可愛いデザインね。あんた良いセンスしてるわ」

 

「それはどうも」

 

「しかし、こんな良いものを貰ってしまって良いんですか?」

 

 アミタはライに申し訳なさそうに聞いた。

 

「構わない。それに自分の分は持っている」

 

「そうなの? 見せてよ」

 

 ライのISが気になったキリエはライにISを見せるよう要求する。それを聞いたライは懐から青い騎士剣を模したメモリースティックを取り出す。

 

「ランスロット・クラブ・ブルームーン」

 

 ISの名前をコールしたライは青と白を基調とした騎士風のISを纏った。アミタとキリエと違い全身装甲となっている。

 

「何か私のと似てない? 私のはフルプレートじゃ無いけど」

 

「クラブはキリエのフロンティアを作る段階で作った試作機だ。スペックを高くしすぎて、

 扱える人がほとんどいないため、俺が使っている。所謂、兄弟機というやつだ」

 

「そうなんですか。こうやって見るとお揃いですね。ペアルックと言うやつでしょうか」

 

「そ、そうね。まあ、悪くないわね」

 

 キリエは少し嬉しそうに呟いた。

 

「試しに俺が使う。見てろ」

 

 ライは背中のスラスターを広げ、エナジーウィングを出現させる。そして、その場から消える。

 

「「え?」」

 

 二人はライの姿を見失った。しかし、二人のISはセンサーによってライの位置を補足していたため、二人の視線を誘導する矢印が出ている。二人はその誘導に従ってそちらを振り向くとその視線の先にライが居た。

 

「もうあんなに遠くに!」

 

「速すぎでしょ!」

 

 ライはその場で高速移動を開始する。二人はまた姿を見失いかけるが、ISの補助もあり、視線の先に高速で動くライの動きを捉えていた。

 

「凄い速さね。あれほど鋭角に曲がっているのにほとんど減速してない」

 

「それよりもあの瞬間的な加速ですね。最大速度がマッハ20を超えています」

 

 アミタは目の前のモニターに移るライの移動速度を見て、驚愕したように感想を言う。アミタが言っているのは瞬時加速(イグニッション・ブースト)を使った瞬間である。唯でさえエナジーウィングによって高速移動している最中に瞬時加速(イグニッション・ブースト)を使うことで更に加速している。

 

 そして、ライは高速移動を止め、ゆっくりとアミタとキリエのところに戻ってきた。

 

「まあ、こんな感じだ」

 

「良く分かりませんでした」

 

「速すぎだし、結局何がなんだが分からないわ」

 

「今はまだ理解する必要は無い。どれほどのものかが分かれば良い。詳しくはそのISに

 インストールしている取り扱い説明書を見て練習するんだな」

 

「分かりました」

 

「まっ、使いこなせれば良い戦力になりそうね」

 

「さて、俺の役目は終わりだ。時空転移装置を改造して、俺は帰るよ」

 

「そう……」

 

 ライともう会えなくなることに寂しさを感じたキリエは顔を暗くする。それからライ達は時空転移装置のある部屋へ向かい、ライは時空転移装置を修繕及び、時空の歪みを一切発生させないように改造した。

 

「さて、これで改造も終わりだ」

 

「ね、ねぇ。何もそんなに早く戻らなくても良いじゃない? もう少しゆっくりして来なさいよ」

 

「悪いな。この時代の人間じゃない俺は長い時間留まるべきじゃない」

 

 ライはキリエの提案を即座に断る。

 

「……そうね。時の奏者である私が言うべき言葉じゃなかったわ。忘れて」

 

「キリエ。寂しいのは分かりますが」

 

「べ! 別に寂しい訳じゃないわよ! 勘違いしないでよね!」

 

『マスター、フラグってますよ?』

 

『え? マジで? いついつ? 何時何分何秒何曜日? 地球が何回回った時?』

 

『小学生か!?』

 

「勘違いも何も、遅かれ早かれ俺は戻る事になるんだから、早いほうが良いだろう。

 これからは君達がエルトリアを導いていくんだ」

 

「……分かったわ」

 

「こちらの事はお任せ下さい」

 

 キリエは少し顔を暗くして答え、アミタはその豊満な胸を叩き、胸を張る。

 

「それと時空転移装置の改造した箇所の説明だが、時空の歪みを発生させないようにする以外にも

 君達のISが認証になっており、君達のどちらかが承認しないと使用できないようにロックを

 掛けている」

 

「それは助かります。これで不用意に使用されることはありませんね」

 

「それと俺の使っている拠点の座標を入れて置いた。そこに通信機を置いてあるから、

 何かあったらいつでも連絡を入れろ」

 

「「え?」」

 

「時空に歪みを発生させないから時空管理局に感ずかれることは無い」

 

「えっと、良いんでしょうか? これ以上貴方にご迷惑を掛けるわけには……」

 

「気にするな。アフターケアも傭兵ライの性分だ」

 

「でも、あんた記憶処理して忘れるんじゃ……」

 

「俺が記憶処理をするのはヴィヴィオ達についてだけだ。君達については忘れないよ。

 だからいつでも頼ってくれ」

 

「そ、そう! なら仕方ないわね。頼ってあげるわ」

 

 キリエは笑顔で答えた。

 

「では俺は行く。アミタ、ゲートを正しく閉じる為について来てくれ。それと通信機の使い方を

 説明する」

 

「分かりました」

 

「なら私も付いて行くわ」

 

「別にアミタから聞けば良いだろ?」

 

「べ、別に良いじゃない。減るもんじゃ無いし」

 

「いや、時空転移装置のエネルギーは減るぞ?」

 

「細かいことは良いのよ!」

 

 そうしてライ達はライの拠点にゲートを開き、時空転移した。その後、通信機の使用方法を説明し、アミタ達はエルトリアに戻っていった。ライは拠点で一人になり、一息つく。

 

[良かったんですか? また拠点が無くなりましたよ?]

 

「拠点なんて何時でもいくつでも作れるさ。さて俺の記憶処理をするとしよう」

 

 ライは二つの弾丸を具現化する。その内の一つを銃に込め、銃口を自分に向ける。そして引き金を引く。

 

「ふう、これでよし、これでいつでも記憶を引き出せる」

 

 記憶弾(メモリーボム)は記憶を銃弾に込めることで撃った対象にその記憶を植え付けることができる。逆に同じ記憶を持っている対象に撃つことでその記憶を消すことも出来る。ライはヴィヴィオ達に関する記憶弾(メモリーボム)を二つ作り、一つを自分に撃つ事で記憶処理を行い、二つ目を残しておき、いつでも自分の記憶を戻すことを可能とした。

 

「愛里を迎えに行くか」

 

[そうですね]

 

 ライはアルハザードに転移する。

 

「愛里、お疲れ」

 

「はい、ライさん。お疲れ様でした」

 

「愛里、早速だが、記憶弾(メモリーボム)を撃ち込む」

 

「分かりました」

 

 ライは再び、記憶弾(メモリーボム)を作り、愛里に撃った。

 

「……えっと、お父さんになったんですか?」

 

「成り行き上な。だからこれからについて話をする」

 

「分かりました」

 

 それからライは時間を止めて、愛里と今後について話をする。

 

「では、今後はその様に」

 

「ああ、頼んだ」

 

[もっと他に手は無かったのですか?]

 

「これがベストだ。今はな」

 

[……分かりました]

 

 打ち合わせが終わり、時間を再開させた。

 

「よし、行くぞ!」

 

[「了解」]

 

 ライは愛里をつれて飛雷神の術(ひらいしんのじゅつ)でユーリ達の待つ拠点に転移した。

 

「ただいま」

 

≪早!?≫

 

 なのは達の驚いた顔をしたが、その顔は直ぐに真顔に変わる。

 

≪その女の人誰?≫

 

 なのは達の冷たい声がマンションの部屋に木霊する。

 

『何これ怖~い』

 

『だから修羅場ると思ったんですよ』

 

『思ったなら言えよ!』

 

「彼女は俺の作った自動人形だ」

 

「はじめまして、皆さん。シェリア・バーンズと言います」

 

 愛里は普段、外に出る際シェリアの姿ではなく、黒髪でロングストレートの姿に変えている。零冶の母として過ごすにはシェリアの容姿では似ても似つかないため、姿を変えている。今はシェリアとしての姿でライの隣に立っている。

 

「彼女には俺が世話できない部分についてフォローしてもらおうと思ってな」

 

「で、でも」

 

 フェイトはライの言った事に言いよどむ。

 

「四人とも女の子なんだ。俺では世話できない部分が多い。そのためには女手が必要なんでな」

 

「な、なら私が手伝いますよ!」

 

 リニスが声を大きくして提案する。

 

「リニスはプレシアの手伝いで忙しいだろ」

 

「ぐっ!」

 

 ライに言われたリニスは悔しそうな顔をする。

 

「なら私でも!」

 

 今度はなのはが言った。

 

「いや、なのはは小学生だろ。学校はどうするんだ?」

 

「それは……その」

 

 なのは反論できず、言いよどむ。

 

「この場にいる誰にも出来ないんだ。だからシェリアに頼む」

 

「分かったわ」

 

 ライに頼まれたシェリアは笑顔で答える。

 

「そういうことだ」

 

 ライはそう言いながら、仮面を外す。

 

≪え?≫

 

「ふぅ、今日も疲れたな」

 

「ふふ、お疲れ。アスベル」

 

 ライが突然仮面を外したことに驚愕するなのは達を他所に、いつも通りと言わんばかりのやり取りをするシェリアとライ。

 

「改めて自己紹介するよ。俺はアスベル・ラント。ライの正体だ」

 

 零冶は再び、嘘を付く。仮面騎士のライとして。ユーリ達の父としてのアスベル。こうして零冶は仮面を被る。吉と出るか凶と出るか。分かるのは未来の人間だけだ。




ボツネタコーナーです。

①ヴィヴィオ達とのお茶会のシーン

 こうして楽しい?時間は過ぎていった。すると突然トーマが零冶に質問をする。

「そういえば聞きたいことがあるんですけど」

「何かな?」

「零冶さんってどうしてそんなに強いんですか? 俺、そろそろ16になるんだけど
 とても零冶さんが9歳に思えないんですが……」

「あっ、それ私も気になってました」

「何か秘密でもあるんでしょうか?」

 トーマの質問にヴィヴィオとアインハルトが便乗する。

「そうだね……話しても良いかな」

 零冶は紅茶を一口のみ言葉を続ける。

「僕はね。前世の経験を引き継ぐレアスキルを持っているんだ」

「前世の……」

「経験を……」

「引き継ぐ?」

「それはもしかして……」

 アインハルトは零冶の状況が自分の境遇と同じなのかと考えた。

「アインハルトさんとは違うよ。君のは先祖の記憶や身体資質を引き継いだものだ。
 だから別物なんだ」

「ご存知だったのですね」

「覇王クラウス・G・S・イングヴァルト……古代ベルカ時代に聖王オリヴィアと冥王イクスヴェリアと覇権を争った」

「詳しいんですね」

 アインハルトは少し顔を暗くして答えた。

「僕のは……そうだな。その上位互換と言う所かな」

「上位互換?」

「僕は記憶や身体資質を引き継いだんじゃない。前世の能力をそのまま引き継いだんだ」

「えっと、どう違うんですか?」

 零冶に言われたことが分からないリリィは零冶に聞いた。

「例えば前世の強さが100だとしたら、僕は生まれた時から100の強さだってことだよ。
 そして、これはレアスキルだから、それを何千年も繰り返してきた。
 だから、今の年齢は9歳だけど、それを含めたら僕は1000歳以上になるね」

「「「「……」」」」

 ヴィヴィオ達は零冶に言われた事に驚きを隠せず、唖然とする。

「そして人の成長は常に限界がある。だけど僕の場合は能力の継承を繰り返したため、
 常に限界値がリセットされる。生まれ変わるたびにレアスキルが発現することもある。
 だから僕はこの年齢でレアスキルを複数所持している。
 その継承の能力を僕は伝承法(オアイーブ・カーズ)と呼んでいる」





 ここまで考えたところでボツにしました。話事態が嘘だし、そもそもそんな話しをする意味が無い。伝承法は面白そうなので、誰か書いて良いですよ?(チラチラ

ちなみに伝承法はロマンシング・サガ2のネタです。詳しくは各自で調べて下さい。

ロマンシング・サガ2の簡単なストーリー

 主人公は帝国の皇帝レオン。レオンは自らモンスター退治などをし、帝国を大きくするために尽力していた。すると七英雄と言われる七人の英雄が復活したという噂が流れる。

 そこにオアイーブという女性が皇帝の前に現れ、七英雄を倒して欲しいという依頼をされる。最初は難色を示していた皇帝だったが、モンスター退治から帰ると自国の帝都が何者かに襲われ、壊滅していた。

 その際に息子のヴィクトールが七英雄のクジンシーに殺される。レオンは七英雄を討伐することを決める。その時にオアイーブから七英雄討伐の為に伝承法を授かる。

 そして、もう一人の息子ジェラールを連れ、クジンシー討伐に向かう。しかし、クジンシーの初見殺し(ソウルスティール)でレオンは死亡する。レオンはその際に初見殺し(ソウルスティール)を見切り、伝承法で息子のジェラールに自分の能力を引き継がせることでクジンシー討伐の足ががりを作る。

 息子ジェラールはクジンシーを討伐し、ついに父レオンと兄ヴィクトール(流し切りが完全に入ったのに……)の敵を討った。こうしてジェラールは帝国を大きくするために尽力する。

 
というプロローグで始まります。

 私からすると伝承法はオアイーブの呪いのようなので、伝承法をオアイーブ・カーズ(呪い)と名付けました。

 ロマンシング・サガ2は本当に面白い作品です。作者のマイフェイバリットゲームです。面白いのでやったこと無い方は是非やってみてください。スーパーファミコンなので、出来る人は少ないと思いますが……



 没ネタではありませんが、作中に出てきたISの設定を書きます。


機体名:ランスロット・クラブ・ブルームーン

 名前の由来はコードギアス反逆のルルーシュ・ロストカラーズのゲームで出てきた主人公ライが軍人ルートに進むと授かる専用機の名前「ランスロット・クラブ」と黒の騎士団ルートに言った際に授かる専用機「月下(先行試作機)」です。

月下(先行試作機)はカラーリングが青なので、作者が勝手に青月と呼んでいます。(一般的にも言われていたら私の調査不足です)

青月を英語にして「ブルームーン」で二つの機体をくっつけてランスロット・クラブ・ブルームーンにしました。
また、ロストカラーズのルートにブルームーンというルートも存在しています。

 スタイルチェンジ機能があり、使用するとクラブから月下に変わる。クラブが攻撃・防御・移動、遠中近とバランスの取れた機体で、月下は攻撃に特化型になっている。その際に武装も代わり、ランスロットの武装から紅蓮の武装になる。

 エナジーウイングのスラスターを搭載しており、エナジーの色は青になっている。

 ランスロットの武装であるMVSやヴァリスだけでなく、紅蓮の輻射推進型自在可動有線式右腕部などの同じ武装を持っている(ブルームーンは右腕部ではなく左腕部になっている)

 また、作者のオリジナルとしてエアロナノマシンを搭載しており、空気を自在に操る事が出来、ナノマシンを空気にすることで宇宙空間でも呼吸が出来るようになっている。
 エアロナノマシンは作中で書いている零冶の魔力変換資質 風圧の科学版なので、作中のような使用が可能となっている。



って感じです。え? 紅蓮とランスロットはって? 書くのがめんどくさ……大変なので、ここで終わりにします(汗
 作者がリリなのでは無くISを書くことを妄想していた時に考えた機体です。因みにでISで言うところの第四世代相当になります。

 また、オリジナルのエアロナノマシンだけでも十分チートです。私がISを書くときはこのエアロナノマシンを前面に出して書くでしょうね。

 ちなみに私はISの原作を見たわけではないのでにわかです。確かISの生徒会長がアクアナノマシンというのを使って水を自在に扱っていたような気がするので、それをまねして考えたのがエアロナノマシンです。

 リリなのが完結した際は他の作品を書こうと思っていますが、ISはその中の一つです。

 まあ、リリなのは完結するのはどれだけ先なんだと言う感じですが(汗

って感じです。では

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