原作を放って置くとバッドエンドになるんですが、どうしたら良いですか?   作:月の光

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お久しぶりです。月の光です。

更新が遅くなってしまい申し訳ありません。

今回で皆大好き紫天一家全員にフラグが立ちます。


50_ミスト『ちょっと待ってください』零冶『どうした?』

 ライとユーリの戦いが終わり、二人はアースラに回収された。

 

「ユーリ、歩けるか」

 

 ライは現在進行形でユーリをお姫様だっこしている。

 

「はい」

 

 ライはユーリを足から床に着くようにゆっくりと降ろす。

 

「……」

 

 ユーリは床に立ち、辺りを新鮮なものを見るような目で見回し、しばらくした後、目を瞑り顔を上に上げる。

 

「どうした?」

 

「こうして、ちゃんと地に足を着けられる日が来るなんて思っていなかったので嬉しくて」

 

「そうか……これからは何処へでも行ける様になるさ」

 

「はい!」

 

 そしてライが先導し、ユーリはライの後ろに着いてトコトコと歩き出した。ユーリは復活したばかりなため、少しフラつきならが歩いている。ライもそんなユーリに歩幅を合わせてゆっくりと歩く。

 

――私に合わせてゆっくり歩いてくれてるんですね。やっぱりこの人は優しい。この胸の中から

  湧き上がる気持ちは何なんでしょう? 

 

 ユーリは自分の胸に沸いた未知の感覚が分からずにいた。ユーリは隣を歩くライの顔を見上げた。

 

――胸がぽかぽかする……でも嫌な感じはありません。寧ろ安心する……もしかして私の中に

  何かバグが残っているんでしょうか……

 

 

 ユーリは自分の中に沸いた感情は分からないため、一抹の不安が残ったが、深く考えるのを止め、ライに着いて行った。そして、しばらく歩くとクロノ達が待つ管制室へ着いた。

 

「待たせたな」

 

 ライは管制室に入り、軽く挨拶をする。ユーリはライの後ろに隠れひょっこりと顔を出す。

 

「ライさん。お疲れ様です」

 

 クロノが代表し、ライに返事を返した。

 

「おお! U-D! 待ちわびたぞ!」

 

「ディアーチェ! シュテル! レヴィも!」

 

 ディアーチェに名前を呼ばれたユーリは三人の所に駆け出した。

 

「またこうして会えるなんて嬉しいです」

 

 ユーリは笑顔でディアーチェたちに言った。

 

「うむ、一時はどうなるかと思ったが、こうして相見えることができたのだ。よしとしよう」

 

 ディアーチェもつられて笑顔になった。

 

「体に異常はありませんか?」

 

 シュテルはユーリの体を気遣い、声を掛ける。

 

「はい、まだ動きなれませんが、至って健康です」

 

 ユーリはシュテルに聞かれたことに答える。

 

「なら良かったよ。辛かったいつでも行ってよ! この強くて凄くてカッコイイボクが

 やっつけるから」

 

「何と戦うつもりですか貴方は?」

 

 レヴィの言ったことにツッコミを入れるシュテル。

 

「えっと……敵?」

 

「いや、我に聞かれても」

 

 シュテルに聞かれたレヴィは頭を傾げならがディアーチェに問い掛ける。ディアーチェも困った顔で答えた。

 

「ふふふ」

 

 ユーリはそのやり取りを見て自然と笑顔になる。紫天一家は今日も元気です。

 

 

 

 紫天一家がほのぼのとしたやり取りをしている間、クロノとライも話を進めていた。

 

「今日は悪かったな。救援要請をして置きながら、結局無駄になってしまった」

 

「いえ、本来我々管理局の仕事ですから、こちらこそ助かりました」

 

「そう言ってくれると助かるよ」

 

「お疲れのところ申し訳ありませんが、状況を説明してもらえますか?」

 

「分かった。そろそろ赤髪の女性の治療も終わったころだろう。彼女と桃色の髪の女性を交えて

 話をしよう。ここに連れてきて貰えるか?」

 

「分かりました。エイミィ、医務室に居るシャマルさんに連絡してくれ」

 

「りょ~うかい!」

 

 クロノに指示されたエイミィは医務室に連絡を取った。

 

「お疲れ様です。ライさん」

 

 リンディはライに声を掛けた。

 

「ええ、リンディさんも非番のところ申し訳ないです」

 

「気にしないで下さい。クロノから連絡が来たときは驚きましたが、闇の書関連であれば、

 クロノ達だけでは荷が重くなるかもしれませんからね」

 

 リンディは闇の書救済作戦以降はクロノに指揮を任せることが多くなった。これは別にサボっている訳ではなく、次世代の教育を行うためであり、クロノに経験を積ませる方針だ。繰り返す、サボっている訳ではないのだ!

 

「懸命な判断だと思います。事と次第によっては提督クラスの権限が必要になる場合も

 ありえましたから」

 

「そうですね。まあ、杞憂で終わったようで何よりだわ」

 

「ですが、あまり心配もされていなかったようですね」

 

「え?」

 

 リンディはライから以外なことを言われ、目が点になる。

 

「皆さんでお茶をされるくらいにクロノを信頼されていたのでしょう? 微かにお茶の香りと

 お茶菓子の甘い香りがします。中々良い茶葉を使ってらっしゃいますね」

 

「え、ええ。クロノも成長していますから、安心して見ていました」

 

 ライから指摘されたリンディは少し動揺しつつ、答えた。リンディの後ろではお茶会を開いていた女性陣が僅かに汗をかいている。

 

「そうですね。信頼し任せられるのは素晴らしいことです。ですが、時と場合を選び、相応しい

 対応をすることをお勧めします。そんなでは部下に示しが付きませんよ。リンディ提督?」

 

 丁寧な言葉で話しているが、纏っている空気は重々しかった。

 

≪はい、以後気をつけます≫

 

 そんな雰囲気を察してかリンディ達は深く頭を下げ、ライに謝罪した。

 

「謝るのは俺にでは無いですよ?」

 

「そうですね。クロノ、ごめんなさい」

 

≪すみませんでした≫

 

 リンディが謝るとお茶会をしていた女性陣とトランプで遊んでいた男性陣はクロノに謝った。

 

「ま、まあ今後気を付けてもらえればそれで……」

 

 クロノも反応に困ったため、なんて言っていいか分からずあたふたしていた。

 

「悪いなクロノ。苦労をかけた。お詫びと言ってはなんだが、これをお前にプレゼントしよう」

 

 ライは懐に手を入れ、王の財宝(ゲートオブバビロン)から宝石を取り出した。

 

「これは……宝石ですか?」

 

「ああ、これはマジックバンクと言うマジックアイテムだ」

 

「どういったものなんですか?」

 

「簡単に言うと魔力を蓄積することができる宝石だ。普段の生活で魔力を使わずに終わることが

 あるだろう? そういう時に魔力をこの宝石に注ぐことで魔力をストックできる。

 そして必要な時に直ぐに取り出すことが出来る。まあ、魔力の貯金だと思えば良い。

 保存できる魔力量はSSSランク相当まで可能だ」

 

「す、凄い……良いんですかこんなもの貰って」

 

「ああ、俺も必要な分は持っているからな。それは余り物だ。もちろんデバイスにインストールも

 出来る。更に言うとカートリッジシステムと違い、わざわざ自分自身を変換せずに、

 使用できるから体の負担もほとんど無い。いざとなったら使うと良い」

 

「はい! ありがたく使わせて貰います!」

 

「だが、それに頼り切るな。あくまで切り札として考えることだ」

 

「はい、分かっています」

 

「ならいい」

 

『これでクロノが死ぬようなことは無くなるだろう』

 

『そうですね。クロノ君は魔力運用が上手ですから、有効的に活用できるでしょう』

 

『これで俺の心配事も減る』

 

『過保護過ぎる気がしますがね』

 

『俺の平穏は全てにおいて優先する!』

 

『何て清清しいほどのゲス発言!』

 

 しばらく待っていると管制室の扉が開いた。

 

「お待たせしました」

 

「久しぶりだな、シャマル」

 

「ええ、久しぶり。ライ。戦いの映像観てたわよ。流石ね」

 

「褒めても何も出ないぞ」

 

「あら残念」

 

 シャマルはにっこり微笑みながら、答えた。そんなシャマルの後ろには手錠を掛けられたアミタとキリエがいた。

 

「どうやら、治してもらったようだな」

 

 ライは二人に声を掛けた。

 

「ええ、おかげ様でね」

 

「助かりました。感謝します」

 

 キリエとアミタはライに答えた。

 

「俺は何もしていないけどな。礼ならアースラの乗組員達に言う事だ」

 

「ええ、そうですね。皆さんありがとうございました」

 

「どもでした~」

 

「キリエ! ちゃんとなさい!」

 

「分かったわよ~。皆さんありがとうございました~ついでに手錠も外してくれると嬉しいな♡」

 

「あなたって子は~~~!」

 

「きゃ~ん! お姉ちゃんが怒った~。助けてライ君♡」

 

 そうおちゃらけてライに擦り寄るキリエ。それを見ていた女性陣が眉をピクリとさせる。

 

「俺に色仕掛けは通じないぞ」

 

「あっそ」

 

 ライに言われてすぐさまライから離れるキリエ。

 

『心拍数に乱れなし、どうやら本当のようですね』

 

『まさか自分のデバイスに疑われるとは。しかもこのやり取り二回目』

 

『マスターってDTの癖に何で色仕掛けが効かないんですか?』

 

『誘惑耐性も混乱耐性もEXだからだろうな』

 

『つまり常時賢者タイム。いや常時賢者時間(フルセージタイム)ってことですね』

 

『いや絶対時間(エンペラータイム)みたいに言うなし』

 

『キャットエンペr『それ以上はいけない』ちぇ~』

 

「さて全員揃ったことだし、状況説明と行こうか」

 

 ライがそう切り出したところで全員が真剣な表情になる。

 

「まずはこの子達の説明をしよう」

 

 ライは後ろで控えていたユーリ達を前に出した。そして紫天の書のこと。闇の書にまつわるものであること。マテリアルのこと。そして砕け得ぬ闇のこと。

 

「っという訳だ」

 

「そうだったんですか……」

 

 ライが話し終わるとクロノが呟いた。そしてその場にいた全員が顔を暗くし、俯いていた。

 

「しかし何故お前はそうまで詳しい? 我ですら知らぬことを何故一介の傭兵が知っておる」

 

「それについては秘密だ」

 

「貴様……先程までと随分態度が違うのでは無いか?」

 

「ん? ああ、さっきのはな、営業モードってやつだ」

 

「営業! 営業だと! 貴様! 我を騙したのか!」

 

「騙したとは人聞きが悪い。事実、君達だけではユーリの相手をするには無理だったし、

 それにこうしてちゃんとユーリを連れて来ただろう」

 

「ぐぬぬぬ……」

 

「ディアーチェ。彼は確かに嘘は付いていません」

 

「シュテル。貴様こ奴の肩を持つのか?」

 

「事実を申しただけです。彼は宣言通り依頼を達成しただけ、そこに文句を言うのは筋違い

 ですよ」

 

「君は聡明だな。話は早くて助かるよ」

 

「もっと褒めてくれても良いんですよ」

 

 そう言って胸を張るシュテル。

 

「ああ、えらいえらい」

 

 ライはシュテルの頭を軽くポンポンと叩く。

 

「……」

 

 その叩かれた頭に両手を置き、考え込むシュテル。

 

――何なんでしょう。この胸の中が熱くなる感じは? 形容し難い感覚です。

 

「誤解を与えてしまってすまなかったな。ディアーチェ」

 

「……まあ、よかろう。我も貴様に頼るつもりなど端からなかったのだ」

 

「なんだかんだ言いつつ許してくれる辺り、やっぱり優しいよな。君は」

 

「な! 我が優しいだと! 貴様、訂正しろ。我は闇の王ロード・ディアーチェぞ!

 世界を混沌の闇に沈めるべく生まれた存在なのだ!」

 

「はいはい」

 

 ライはディアーチェを沈めるように頭を軽くポンポンと叩く。

 

「ええい! 我を子供扱いするでない! 無礼者め!」

 

 悪態をつきつつも満更でもない顔をするディアーチェ。

 

「ごめんごめん」

 

「ふん!」

 

 悪びれた様子もなく謝るライにイラつきながらも言っても無駄だと悟り押し黙るディアーチェ。しかし、その顔は満更でもないのか口角が少し上がっていた。

 

「さて、次はこの二人と後ろの四人の説明をしよう」

 

 ライはアミタとキリエを前に出した。

 

「この二人は姉のアミティエ・フローリアンと妹のキリエ・フローリアンだ」

 

「はじめまして、アミティエ・フローリアンと申します。アミタとお呼び下さい」

 

「どうも~キリエ・フローリアンよ」

 

 ライの紹介の後に自己紹介するアミタとキリエ。

 

「それとこの二人の手錠は外していいぞ」

 

「良いんですか?」

 

 クロノはライに確認をした。

 

「構わない。暴れたら俺が押さえる」

 

「別に暴れたりしませんよ」

 

 ライの言葉にアミタが返した。

 

「初対面でいきなり銃を突きつけたやつに言われてもな」

 

「あっあれは~その~」

 

 ライに指摘されたアミタは顔を赤くし、両手の指をツンツンした。

 

「お姉ちゃんたらそんな事したの? ダメよ~最初は愛想良くしなくっちゃ」

 

「あの時はあなたを止めるため必死だったんです!」

 

 姉妹で言い合いしている間にクロノはアミタとキリエの手錠を外す。

 

「ありがと♡ お礼にチューしてあげちゃう」

 

「え! ちょ!」

 

 キリエはクロノに抱きつこうとした……体勢で固まった。

 

「あ? あれ?」

 

 自分の体が止まっていることに気が付き、呆然となる。

 

「う~ご~け~な~い~」

 

「暴れたら押さえると言ったはずだ。キリエ・フローリアン」

 

 ライはキリエをエアロバインドで動きを封じていた。

 

「別に暴れてないじゃない。ちょっとサービスしてあげようと思っただけよ」

 

「過剰サービスはクーリングオフだ。クロノ、君の方から離れてくれるか?」

 

「え? あっはい」

 

 クロノはライに言われた通りキリエから離れるが

 

「クロノ……お前少し残念がって無いか?」

 

「え! いや! そんなこと……」

 

 ライに指摘されたクロノはかなり動揺した。

 

「ク~ロ~ノ~く~ん」

 

「エ! エイミィ! これは違っ!」

 

 怖い笑みをしたエイミィがクロノの肩を掴んだ。

 

「まあまあ、落ち着け。エイミィ・リミエッタ」

 

 ライはエイミィをなだめつつ、クロノから引き剥がした。そしてエイミィに耳打ちする。

 

「クロノが残念がっているってことはそれだけ女性の存在を意識しているという事だ」ボソ

 

「それが何なんですか?」ボソ

 

「クロノも思春期に入ったってことだ。アタックするな今がチャンスだぞ?」ボソ

 

「え? それ本当ですか?」ボソ

 

「ああ、頑張れ」ボソ

 

「はい!」ボソ

 

 ライにアドバイスをもらったエイミィはその後クロノに猛アタックをかけると誓った。

 

「さて話しは逸れたが、話しを戻すぞ。と言っても俺もそこまで詳しくは無いんだがな。

 まず、この二人のことだが、実は……」

 

≪ごくり≫

 

 ライはもったいぶって言葉を切る。

 

「未来から来た未来人なんだ!」

 

≪へぇ~≫

 

 ライの告げた事実に淡白な反応をするクロノ達。

 

「あ、あれ? 反応薄くない? 私達未来から来たのよ?」

 

 反応の薄いクロノ達にキリエが言った。

 

「いや、ライさんの以前やったことを考えると何だか普通だと思ってしまって」

 

『何か申し訳ないな』

 

『これを気に反省して下さい』

 

『反省はする。だが後悔はしない。俺達は前に進むしかないんだ……そうだろ? ミスト』

 

『はいはい』

 

『リアクションうっす』

 

「あんた一体何をしたのよ」

 

 キリエがライをジド目で見た。

 

「秘密だ」

 

 ライは素っ気無くキリエに答えた。

 

「後ろの四人はフローリアン姉妹が未来から来た事で時空に歪みが生じ、その歪みに

 巻き込まれて未来からこの時代にやって来た時空漂流者だ」

 

「なるほど、では彼女達から事情を聞かないように言ったのは未来で僕達の知り合いだったり

 するんでしょうか?」

 

 ライの説明にクロノが聞いた。

 

「お察しの通りだ。未来の情報を知ってしまうと未来が変わってしまう可能性があるからな。

 だから紹介するつもりはない。もっとも彼女達が未来から来たという情報は記憶操作して

 忘れさせるつもりけどな」

 

「そうですね。私もその方が良いと思います。時空を渡る技術は秘匿にするべきですし」

 

 ライの言った事に同意するアミタ。

 

「記憶の操作なんて出来るんですか?」

 

 疑問に思ったなのはがアミタに聞いた。

 

「もちろんよ。でないと未来から来たりしないわ」

 

「なら別に話をするくらいは良かったんじゃないの?」

 

 今度はアリシアが疑問に思ったことをライに聞いた。

 

「記憶操作すると言っても知らないに越したことは無いからな。その分手間も省けるだろう」

 

「そうですね。記憶操作するって言うのは相応の危険もありますから」

 

『間違って俺の名前を出されても困るしな』

 

『そうですね。ていうかそれが本音ですよね』

 

『そのために俺が出張ったんだ。無駄にされてたまるか』

 

「フローリアン姉妹がこの時代に来た理由は二人の住んでいる星……エルトリアだったか?

 その星で大地汚染がおきているらしい。それを直すために砕け得ぬ闇が必要らしく、

 キリエ・フローリアンがこの時代に来た。そして妹を止めるためにアミティエ・フローリアン

 が追って来たらしい」

 

「さっきかららしいばかりだね」

 

 ライの説明にフェイトが指摘した。

 

「悪いな。さっきも言ったが俺も詳しくは知らないんだ」

 

「へぇ~ライさんでも知らないことがあるんやね」

 

 ライの回答にはやてが意外そうな顔をして答えた。

 

「当たり前だろ。俺も人間なんだ。知らないことだってある」

 

「今までのあなたの行いを見てきた身としてはそう思いたくもなりますよ」

 

「悪かったな」

 

 ライの言った事にリニスが言葉を返す。

 

「さて、フローリアン姉妹。事情を説明してもらおうか?」

 

「分かりました。お話します」

 

「私達の故郷は、今……ゆっくり、死んで行っているの」

 

 ライに促され語りだしたアミタとキリエ。

 

『ちょっと待ってください』

 

『どうした? ミスト』

 

『長くなるのでカットします』

 

『無常なるカット、慈悲は無い』

 

「と言う訳なんです」

 

「そうだったんですか」

 

 アミタとキリエが自分達の事情を話し、その話に顔を暗くするクロノ達。そして、アミタが締め括ったところでキリエは不快な顔をする。

 

「どうしたんです? キリエ」

 

「何だか私達の最大の見せ場がなくなったような気がして」

 

「何を言っているんです?」

 

「まあ良いわ。システムU-Dを……エグザミアを手に入れて帰ればきっとエルトリアを蘇らせる

 事ができる」

 

 キリエは不快な顔から一転して神妙な顔付きになり、語り出した。

 

「世界が戻るにはきっと何百年もかかる。博士の命は間に合わないだろうけど。

 ほんの小さな一歩でも、前に進んだ事を博士に見せてあげたい。博士のやってきた事は、

 無駄なんかじゃなかったって」

 

「キリエ……」

 

 キリエの話が終わり、一同は神妙な顔になった。

 

「だけど、私のしてきたことは無駄になってしまったわ。この時代に来てライ君に遭遇して、

 泳がされた。出し抜いてやろうと思ったけど、結局砕け得ぬ闇は、ライ君の手中に納まった」

 

――ん? キリエは何を言ってるんだ?

 

 キリエの言ったことにおかしいと思ったライはキリエに言った。

 

「キリエ・フローリアン、君は勘違いしているようだが、別に砕け得ぬ闇は俺のものじゃない」

 

「え?」

 

 ライはキリエに間違いを指摘した。

 

「この子達の未来はこの子達のものだ。ここの誰のものでも無い。もっとも俺の見解では

 エルトリアに行くのが良いと思っているけどな」

 

「そうですね。ライさんの話を聞く限りでは紫天の書は夜天の書の制御を奪うために

 入れられたプログラム。と言うことは夜天の書とは別のものですから。そうなると彼女たちの

 身元を証明するものがありませんし」

 

「夜天の書の管制融合機である私が知らないシステムとなると夜天の書とは根底が異なる。

 我が主の庇護下に置くことは難しいだろう」

 

 クロノの説明にリインフォースが補足を加える。

 

「そうなると管理局に所属しなくてはならないが、それは嫌だろう?」

 

 ライはディアーチェに確認する。

 

「当たり前だ。我等は誰にも縛られぬ」

 

「なら、エルトリアに行くのがベストだろうな」

 

「我等に指図するでない」

 

 ライの提案を頑なに拒むディアーチェ。

 

「ですがディアーチェ、彼の言う事はもっともです。折角我等の悲願である自由を手に入れたのに

 管理局に所属する事になっては無意味です」

 

「僕も漢字局に入るのはやだな~」

 

 そんなディアーチェにシュテルとレヴィが言った。

 

「レヴィ、管理局だ」

 

「それそれ~、管理局、管理局」

 

「まったくしょうがないな」

 

 ライはレヴィの頭を軽くポンポンと叩く。

 

「あっ、えへへ~」

 

 レヴィはライに叩かれた頭に両手を置き、笑顔になった。

 

「ふん、まあお前の言う事も一理ある。大人しく従ってやらんでもない」

 

「そういう訳だ。キリエ・フローリアン、後はお前の交渉しだ、ん?」

 

 ライが交渉次第と言おうとしたら、何時の間にかライのバリアジャケットであるコートの裾が引っ張られていた。

 

「どうした? ユーリ」

 

 ライはコートの裾を不安そうな顔で引っ張っていたユーリに聞いた。

 

「あの……エルトリアに行っても貴方に会えますか?」

 

 ユーリは言葉を振り絞るかのように細い声で言った。

 

「それは難しいな。さっきも言ったが、未来から来たことは記憶操作によって忘れさせる。

 それは俺も例外ではない。何処に行ったかも分からない以上こちらから会いに行く事も

 出来ないからな。それに俺自身、表舞台に出ることが稀だから、もう会う事はないだろう」

 

「そうですか……」

 

 ユーリは顔を暗くし、俯いた。

 

「何か問題があるのか?」

 

「……私、貴方から離れたくありません」

 

≪は?≫

 

 ユーリの爆弾発言によって場の空気が凍った。

 

「私を貴方の傍に置いて下さい」

 

 ユーリは構わず、言葉を続ける。

 

「ちょっと待て、ユーリ。一旦落ち着こうか」

 

 あまりの事にライも少し動揺していた。

 

「ダメ……ですか」

 

 ユーリは潤んだ瞳の上目遣いでライを見つめた。

 

「ダメか、ダメじゃないかは理由による。何故俺から離れたくないんだ?」

 

「私にも良く分かりません。でも貴方の傍にいると胸がポカポカしてくるんです。

 でも貴方に会えなくなると思ったら、ぽっかり穴が空いたように寂しかった。だからです」

 

「ちょ、ちょ~っと待ってくれるかしら! 貴方に来てもらわないと私が困るの!

 お願いだから私と一緒に来てくれない?」

 

 フリーズから復活したキリエがユーリを説得した。

 

「そ、そうなの! ユーリちゃん! キリエさん達と一緒に言ったほうが良いよ! うん!」

 

 キリエに続き復活したなのはがユーリの説得を始めた。

 

「うん! その方がキリエさんも喜ぶと思うし! うん!」

 

 フェイトがなのはに続いた。

 

「そーそー! エルトリアのCショックを止められるのはユーリしか居ないよ!」

 

「死蝕やでアリシアちゃん! 高級腕時計みたいに言わんといて! ユーリちゃんも

 考え直すんや!」

 

「わ、我が主落ち着いて下さい」

 

 はやてが慌てながらもアリシアのボケにツッコミを入れた。

 

「何慌ててるんです? ナノハ」

 

「オリジナルもアリシアもそんな声だしてどうしたの?」

 

「子鴉も落ち着け、管制融合機が慌てているぞ?」

 

 慌てるなのは達にシュテル達が聞いた。

 

「そ、それはその……」

 

「うぅ……」

 

「子鴉って……」

 

「私はオリジナルじゃなくてフェイトだよ」

 

「ヘイト?」

 

「フェイト!」

 

「難しいからオリジナルで良いや」

 

 シュテル達に聞かれたなのはとアリシアは顔をほんのり赤くし、押し黙った。フェイトはレヴィに自分の名前を伝え、はやては少し暗い顔になった。

 

「子鴉も黒羽(くろはね)を困らせちゃダメだぞ」

 

「……」

 

 レヴィやなのは達のやり取りを見ていたライは真剣な顔でレヴィを見た。

 

「おい、青髪」

 

 すると突然ライは声を出した。

 

「……青髪ってボクのこと?」

 

 それに反応したレヴィはムスッとした顔でライに言った。

 

「そうだ」

 

「ムゥ~! ボクは青髪じゃないぞ! レヴィって言う名前があるんだぞ!」

 

「どう思った?」

 

「え?」

 

 突然ライに言われたレヴィはポカンと言う顔になった。

 

「青髪って言われてどう思った?」

 

「それは良く思わなかったよ。ちゃんと名前で呼んで欲しいと思った」

 

「それはフェイトやはやて、リインフォースも同じだ。レヴィが嫌な気持ちになったように

 レヴィが嫌な気持ちにさせたんだ」

 

「そ、それは……」

 

「だからちゃんと名前で呼びなさい」

 

「うぅ、分かった。ごめん、はやて、リインフォース、ふ、ヘイト」

 

「フェイト」

 

 フェイトと言えてなかったレヴィにライが言い方を教える。

 

「フェート?」

 

「少し時間が掛かりそうだな。悪いフェイト。しばらく我慢してくれ」

 

「あっうん、大丈夫だよ」

 

「だ、大丈夫! フェ……イト」

 

「まあ、いいだろう。これからはちゃんと名前で呼ぶんだぞ」

 

「分かったよ! え~っと……お父さん!」

 

≪は?≫

 

 レヴィの意外な一言で場は再び凍りついた。

 

「ああ……レヴィの今の一言で先程の形容し難い気持ちが鮮明になりました。

 私も貴方をお父様と」

 

 シュテルは先程ライに頭をポンポンされた時に湧いた感情の正体が判明し、スッキリした顔でライを父と呼んだ。

 

「お父さん……私も何故、貴方と離れたくなかったのか分かりました。私は貴方に父親を

 感じていたんですね。私もこれからお父さんと呼びます」

 

 ユーリもスッキリとした顔になり、シュテル達に続いてライを父と呼んだ。

 

「ふむ、我等4人は一心同体。ならば我も便乗しよう。これからよろしく頼むぞ。父上」

 

 ディアーチェもユーリ達に合わせて、ライを父と呼んだ。

 

『何これ? どうなってんの?』

 

『ぷくく! マ、マスターがお父さん……あははははははは!』

 

『笑うなよ。真剣に困ってるんだ』

 

「と、とりあえず、4人とも落ち着け。れ、冷静になるんだ」

 

――あの零冶さんがあんなに慌ててるの初めて見た。

 

――そうだね。慌ててる零冶さんって新鮮だな~。

 

 その光景を傍観していたトーマとリリィは我関せずで見ていた。

 

『ねぇアインハルトさん。私達の時代の零冶さんって子供なんていませんでしたよね?』

 

『そのはずです。それにシュテルさん達も零冶さんを父とは呼んでいなかったはずですが』

 

『まさかとは思うけど、未来が変わったりなんて事ありませんよね?』

 

『どうでしょう……寧ろ私は先程零冶さんがシュテルさん達はエルトリアに行ったほうが良いと

 言った時の方が焦りました。未来が変わってしまうのかと』

 

『そうですね。シュテルさん達も私達の時代に居ましたし』

 

 ヴィヴィオとアインハルトは未来が変わらないかどうかということを案じていた。

 

「これは諦めたほうが良さそうね」

 

「ええ、親子の間を引き裂く事は出来ません。私も博士と離ればなれなんて耐えられませんから」

 

 キリエとアミタはユーリ達を連れて帰ることを諦めた。

 

「……一旦話をまとめる」

 

 ライは諦めたように話を切り出した。

 

「君達4人はエルトリアには行かず、この時代に残る……と言う事で良いか?」

 

「「「「はい〈うむ〉〈うん〉」」」」

 

 ライは一つずつユーリ達に確認を取る。

 

「そして俺と一緒に暮らしたいと」

 

「「「「はい〈うむ〉〈うん〉」」」」

 

 ライはユーリ達の返事を聞き、頭を抱える。そして心の中でどうしてこうなったと嘆いた。

 

『多分、マスターが頭をポンポンしたからだと思います』

 

『それだけで父親になれるなら。世の中のお父さんは苦労しません』

 

 ライはしばらく考えた後、意を決したように口を開く。

 

「分かった。君達4人の面倒は俺が見よう。だが、一年の期間限定だ。その一年で君達に

 一般常識を教える。そこから先は4人で生きてもらう。それと心の中で俺を父親だと思うのは

 構わないが、俺を父と呼ぶな。俺はまだそんな年じゃない」

 

――ラ、ライさんに面倒見てもらうなんて羨ましいのシュテルちゃん達!

 

――面倒見るってことは一緒に暮らすってことだよね? いいな~レヴィ達

 

――あれ? ってことはレヴィ達からお母さんって呼んでもらったら?

 

――ライさんのお嫁さんってことになるんちゃう?

 

 そこに気付いたなのは達の動きは早かった。

 

「ねぇシュテルちゃん。私のことお母さんって呼んでみない?」

 

「お断りします。ナノハ」

 

「そこを何とか!」

 

 なのははシュテルを説得していた。

 

「レヴィ、フェイトって言い辛いんでしょ? だ、だったら別にお母さんでも良いんだよ?」

 

「ううん! 頑張ってフェ……イトって呼べるようになるよ!」

 

「あっうん」

 

「レヴィ! 私、お母さんぽく無い?」

 

「アリシアはボクより小さいから妹かな?」

 

「この身長が恨めしい!」

 

 フェイトとアリシアはレヴィを説得し、ライの奥さんポジションを確保しようとしていた。

 

「王様~。私のことお母さんって呼んでくれへん?」

 

「貴様など子鴉で十分だ」

 

「そんなこと言わんで」

 

「ええい! 纏わり付くでない! 鬱陶しい!」

 

「ディアーチェちゃん。私なんてお母さんにピッタリじゃない? ほら胸もそれなりに大きいし」

 

「母親の条件に胸の多寡は関係なかろう」

 

「せやで! シャマル! 胸で重要なのは大きさや無い! 感度や!」

 

「それもどうなのだ?」

 

 はやてとシャマルはディアーチェを説得していた。

 

「ユーリちゃん。お父さんだけじゃもの足りないでしょ? お母さんも欲しくない?」

 

「えっと……別にいらないです」

 

「今なら第二お母さんも付きますよ?」

 

「なんだい、第二お母さんって……ま、まあ、あたしだったらいっぱい甘えていいよ。

 子供好きだし」

 

 プレシアとリニスとアルフはユーリを説得していた。

 

「人気者ですね。ライ兄さん」

 

「まったく何でこうなったのやら」

 

「嘆いていないで止めたらどうだ?」

 

「どう止めろと言うんだ……まったく」

 

 ライは葵、シグナムと離れたところで会話をし、頭を抱えていた。

 

「元々の原因はお前にあったと思うが……」

 

「こうなるとは思わなかったんだがな」

 

 リインフォースは頭を抱えているライに声を掛けた。

 

「まあ、向こうはほとぼりがさめるのを待つとして、アミティエ」

 

「はい、なんでしょう?」

 

「転移機はあと何回使える?」

 

「おそらくあと一回が限界かと……最悪、私達が未来に戻る分しか動かない可能性もあります」

 

「見せてくれ」

 

「分かりました」

 

 アミタは懐から一つの機械を取り出した。

 

「こちらが転移機です。といってもこちらは子機にあたります。親機はエルトリアにあり、

 この子機はあくまで一度開いたゲートを再び開くためのものです」

 

「先程の話では時空移動する際に体に膨大な負担が掛かると言っていたが、こちらの4人は

 ゲートを潜れるのか?」

 

「はい、この転移機は親機が自身と時空移動する時代にゲートを作り、そのゲートとゲートを

 接続する際に時空の歪みが発生します。その際に発生する空間歪曲が普通の人間の体では

 耐えられないのですが、今は既にゲートとゲートの接続は確立しています。

 あとはこの子機でそのゲートを開き、そこを通る事で元の時代に戻れます」

 

「なるほどな。転移機の親機がゲートとゲートを接続する際に発生した時空の歪みによって、

 彼女達の時代にもゲートが発生し、この時代のゲートと繋がってしまった訳か」

 

「おそらくですがそうだと思います。私達姉妹がゲートを潜る際に彼女達の時代のゲートが

 開き、そこに巻き込まれたんでしょう」

 

「なら、4人をちゃんとそれぞれの時代に帰すことはできそうだな」

 

 ライはヴィヴィオ達を見て、アミタに確認した。

 

「はい、ゲート同士の接続は確立しているはずですから、ちゃんと元の時代に戻る事はできます」

 

 ヴィヴィオ達はその言葉を聞き、ほっと肩をなでおろす。

 

「それを聞いて安心したよ。それとエルトリアについてだが、ユーリ達はこの時代に残ることを

 選んだ。そうなるとエルトリアが崩壊してしまうじゃないか?」

 

「いえ、私達の試算では時間はかかりますが、エルトリアは復興できます」

 

「なら復興するための手段は分かっていると言う事か」

 

「はい……ですが途方も無い時間が掛かるでしょう」

 

「エクザミアがあれば大幅に時間が短縮されるんだけどね」

 

「なるほどな」

 

 ライが右手を自分の前で左から右にスライドさせると空中ディスプレイとキーボードが出現した。アミタ達は突然目の前に現れたディスプレイなどに驚いたが、ライは構わず、アミタから受け取った転移機を空中ディスプレイの前に浮かせ、キーボードを操作し始めた。

 

「何を?」

 

 疑問に思ったアミタはライに確認をする。

 

「どんなものなのかの解析とあと何回使えるかの調査だ」

 

 しばらくライがキーボードを操作していると右手で拳を作り、顎にあて考え込む。

 

「確かに帰り分のエネルギーはあるな。親機の方は見てみないとなんともいえないが……

 よし、これなら大丈夫だろう」

 

「どうかしましたか?」

 

「俺がエルトリアに行って復興の手伝いをしよう」

 

≪え!?≫

 

 ライがそう言うとその場の全員がライを見た。

 

「し、しかし。最悪この時代に戻って来れませんよ?」

 

 アミタが慌てたようにライに言った。

 

「そ、そうだよ! ライさん!」

 

「も、もう会えなくなっちゃうかもしれないんだよ!」

 

 なのはとフェイトは声を荒げてライを引き止める。

 

「せやせや! ライさんが行くのに反対の人!」

 

≪は~い!≫

 

 はやてがその場の全員に多数決を求め、女性陣が手を上げる。

 

「大丈夫だ。転移機が故障したなら修理すれば良い。俺には()()がある」

 

 ライは意味深なことを言った。

 

「ああ、()()ですか、確かにそれなら大丈夫そうですね」

 

 ライの言葉の意味を理解したリニスが納得したように行った。ライの言ったあれとは時の支配者(クロックマスター)の事だ。たとえ故障しようと故障した前に戻せば良い。

 

「なるほど、ちゃんと戻る算段を立てているのね。安心したわ」

 

 プレシアも理解したため、ほっと肩をなでおろす。

 

「しかしそれではまた時空の歪みが発生してしまうのでは?」

 

 リニスは危惧していることをライに聞いた。

 

「そうならないようにちょっと改造すれば良いのさ」

 

『え? 魔改造?』

 

『誤解だぞう』

 

「問題はそれだけじゃないわ。復興に何年掛かると思っているの? エクザミアが無いなら、

 人間の寿命程度じゃ全然足りないわよ? よしんば上手く行ったとしても復興した頃には

 おじいちゃんになっちゃうわ」

 

「それについても考えがあるから大丈夫だ」

 

――まあたとえどれだけ時間が掛かろうと俺は年を取らないけどな。

 

 零冶が転生特典としてもらった神の遊戯(キャラクターメイキング)は自分のあらゆるステータスをこの能力で一元管理する念能力だ。つまり、時間経過と共に本来取るはずの年も零冶が自ら、ステータス強化をさせない限り、変わらないのである。

 

 つまり零冶は神の遊戯(キャラクターメイキング)の副作用によって不老となっている。ある意味、人間本来の機能を犠牲にしたから得た強力な念能力と言えるだろう。

 

「本当に大丈夫なんでしょうね?」

 

「大船に乗ったつもりでいいぞ」

 

 キリエに確認されたライはさらりと答えた。

 

「何で……貴方がそこまでしてくれるのですか? 他人の私達のために」

 

 アミタは神妙な顔付きでライに聞いた。

 

「そうだな……強いて言うならキリエのしたことを無駄にしないためだな」

 

「え? 私?」

 

「ああ、お前は言っただろ? 博士のしたことは無駄なんかじゃなかったと証明したいと。

 だがそれはお前だって同じなんだ」

 

「……」

 

「博士を……父を安心させたい。ならその思いも、その思いに準じて起こした行動も無駄にしては

 いけない。無かったことにしてはいけない」

 

「……ライ……君」

 

 ライに自分のしたことを肯定されたキリエは少し熱っぽい目でライを見る。

 

「という訳だクロノ。それとものは相談だが、今回の事件は上には報告せず、揉み消して

 貰いたいんだが」

 

「えっとそれは何故ですか?」

 

「ユーリ達を俺が面倒を見ると言う事はユーリ達から俺の居場所が特定されかねない。

 俺はそれなりに管理局に恨まれているからな。最悪ユーリ達を人質に俺を捕らえようとする

 奴らがいるかも知れない」

 

「そう言う事ですか……僕の一存では何とも」

 

 クロノはちらりとリンディを見るとそれに気付いたリンディが口を開く。

 

「構いませんよ。本来は報告すべきですが。ライさんが未然に防いでくれたので、

 被害はありませんから」

 

「助かるよ。リンディ提督」

 

「いえいえ、お互い持ちつ持たれつと言うやつですよ。それにライさんには返しても

 返しきれない恩がありますから」

 

 こうして今回の事件は記録に残らない事になった。

 

「さて、俺たちは一足先に地球に戻るよ。なのは達も一緒に戻るか?」

 

「あ、はい。私も戻ります」

 

「私達も帰ろうか。結局何もしてないけど」

 

「そだね~。お菓子食べたくらい?」

 

「結局ライ兄さんだけで解決しちゃったからね」

 

「リニス、アルフ、私達も今日は帰りましょう。リンディ、あなたは?」

 

「私も帰ります。クロノ、あとは任せますよ」

 

「了解です。艦長」

 

 リンディ達はあとをクロノに任せた。

 

「峯岸君と神宮寺君はどうする?」

 

「俺は折角だからアースラで修行していきます」

 

「なら俺も付き合うぜ(何か本来のGODの展開と全然違うけど、まあいいか)」

 

 ライに聞かれた峯岸と神宮寺が答えた。

 

「そうか、余り無理はしすぎるなよ」

 

「「はい」」

 

「それじゃ、俺が地球まで送りましょう」

 

「ええ、お願い」

 

 そうしてアミタたちはアースラの乗組員達の記憶操作を行い、未来から来たことを忘れさせた。その後、ライはなのは達をオーラで包み、全員を連れて飛雷神の術(ひらいしんのじゅつ)で地球に転移した。




ね? 紫天一家全員にフラグが立ったでしょ? お父さんフラグが
え? 話が違う? はて? 私には何のことかさっぱり……

今回没ネタはありませんので、没ネタコーナーはお休みです。

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