原作を放って置くとバッドエンドになるんですが、どうしたら良いですか?   作:月の光

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04_零冶『お前は俺の親か……』ミスト『保護者ですかね』

零冶 サイド

 

 高町なのはに遭遇してから4年経ち、俺は小学2年生になった。通っている学校は私立聖祥大付属小学校だ。何故高町なのはと同じ学校にしたかというと、原作を見守る上で必要だと判断したからだ。だが、さすがに同じクラスは嫌なので、いろいろ裏工作をして、別々のクラス分けにした。

 

 原作組みと2人の転生者は1組、俺は2組だ。それと必要になるだろうと思って新たにレアスキルを作った。

 

 23、解析眼(インペクト・アイ)

   系統:具現化系

   説明:相手のステータスや能力を見ることが出来る眼鏡を具現化する

 

 24、探しモノの行方(ダウジングフューチャー)

   系統:特質系

   説明:人探しや物探しをする能力

      対象の情報が多いほど精度が高まる

 

 25、絶対読心(ギアス)

   系統:特質系

   説明:コードギアス 反逆のルルーシュのマオのギアス

 

 26、絶対改変(ギアス)

   系統:操作系

   説明:コードギアス 反逆のルルーシュのシャルルのギアス

 

 27、完全修復(パーフェクトリカバリー)

   系統:特質系

   説明:触れている対象を過去の状態まで戻すことができる能力

      ただし、使用者がその過去の状態を知らないと使用できない

 

 28、全快再生(フルリペア)

    系統:強化系

    説明:触れている対象の再生力を超強化して、全快させる能力

 

 

 解析眼(インペクト・アイ)は眼鏡として普段から掛けていて、日常で地味に過ごすための変装用でも使っている。見た目は瓶底眼鏡だ(もちろん形状は自由に変更可能)

 

 とりあえず、転生者に使ってみた結果がこれだ。

 

 

1人目の転生者

名前:神宮寺 王我(じんぐじ おうが)

 

性別:男

 

年齢:8歳

 

特典:①王の財宝(中身有り)

    ②魔力SSS

    ③ニコポ・ナデポ

 

デバイス:ギルガメッシュ(インテリジェントデバイス)

愛称:ギル

 

ステータス

 筋力:G

 俊敏:F

 耐久:F

 魔力:SSS

 幸運:D

 

レアスキル

 王の財宝(ゲートオブバビロン)

  説明:Fateのギルガメッシュの宝具

 

 

4人目の転生者

名前:桜羽 葵(さくらば あおい)

 

性別:女

 

年齢:8歳

 

特典:①健康的な体

    ②幸せな家族

    ③高町なのはと同等の魔法の才能

 

デバイス:ブルーサファイア(インテリジェントデバイス)

愛称:サファイア

 

ステータス

 筋力:D

 俊敏:C

 耐久:F

 魔力:S

 幸運:A

 

レアスキル

 魔力変換資質 氷結

 

 

 神宮寺 王我は一言で言うなら踏み台転生者だ。例によって原作組みに嫁発言して、嫌われている。勿論、当の本人はまったく気が付いておらず、照れているだけだと思っている。

 

 ニコポ・ナデポがあるから、好かれてると勘違いしているようだが、ニコポ・ナデポは元々好意を持っている人に対して効力を発揮するらしい。つまり、最初から嫌われている以上いくら使っても意味がない。ろくに訓練もしていないからステータスも魔力以外は酷い、あれでよくオリ主だなんてほざけるものだ。

 

 桜羽 葵は二次小説でいうところのオリヒロといったところだな。邪な感情はなく、あくまで原作組みを助けたいとか、仲良くしたいと思っているらしい。特典は意外とまともだ、特典の二つは前世の影響だろう。前世が病弱でそのせいで両親が不仲だったってところか……

 

 現在の家族構成は両親と妹の4人家族だ。父親が元々ミットチルダの出身で元管理局員、結婚をきっかけで退職し、地球に移り住んだらしい。

 

 父親の魔力値はB、母親と妹はリンカーコアなし。父親は大企業に就職しており、母親は雑誌会社に勤めている。妹は4歳になったところだ。桜羽 葵の魔力値が高いと思ったが、どうやら訓練して増やしたようで、元々はAA+だったようだ。しっかり訓練しているので、それなりに戦える。

 

 そして、未だに2人目の転生者が現れない。考えられるのは特典で転生時期や転生場所を指定したか、転生者であることを隠せる特典を選んだかのどちらかだろう。

 

 いや、もうひとつあったな。既にこの世にいないか……だ。この世界は転生者だからといって死なない訳ではない。現に未来漫画(フューチャリングコミック)の《高町なのは物語》のその後の展開(エピローグ)で転生者2人が死亡した。

 

 そう思えば既に死亡している仮説も立つが……まず無いな。この転生はアテナのミスの償いだ。余程のことが無い限り死ぬことはないと思うし、特典がある以上、死ぬような目にあっても死ぬことはない……はず。

 

 そうなると、転生時期・転生場所の指定か転生者であることを隠しているかだ。前者だとすれば、原作開始直前かフェイト陣営に付いている。あるいは他のシリーズを指定したかってところか。ミットチルダで管理局にいないことは確認済みなので、管理局員ではない。

 

 アテナの話だと、正義感が強いらしいから、次元犯罪者はないだろう。何れにせよ、今居ない以上はあてには出来んな。

 

「さあ、俺の嫁達よ、一緒に帰ろうではないか!」

 

「だから! 誰がアンタの嫁なのよ! いい加減にして!」

 

「はっはっは! アリサはツンデレだな~。安心しろ、本当の気持ちは分かっている」

 

「ツンデレじゃないわよ! 本当に嫌いなのよ! 着いてこないで!」

 

 そう言って走り出すバニングス。

 

「つれない事言うなよ~」

 

 バニングスを追いかける神宮寺。

 

「なんで! 着いてくるのよ!」

 

「アリサが逃げるからだろ~」

 

「もーーーーほんとにいやーーー!!」

 

「アリサちゃん、ごめんね」

 

「アリサちゃん、ご愁傷様なの」

 

「アリサ……惜しい人を亡くしたわ……」

 

「葵ちゃん、それシャレにならないよ」

 

「でも、アリサには悪いけど私達が助かったのは事実よ」

 

「それはそうだけど」

 

「いつも通り翠屋に行きましょう。アリサも直ぐ来るわよ」

 

「そうだね。アリサちゃんには何かサービスするの」

 

 そう言って昇降口から外に出て行く高町・月村・桜羽の三人。見ての通り、分かり易いほど踏み台している神宮寺と原作組みと仲良くなっている桜羽だ。

 

 桜羽は4年前に俺が絶対遵守(ギアス)を掛けた後、公園に行っても高町が居ないことに疑問を持ち、翠屋に行き高町と仲良くなったらしい。神宮寺はずっと公園を見張っていたけどな。

 

 2人の記憶は記憶改変(ギアス)で《口喧嘩している間に高町が何処かに行ってしまった》と改変している。

 

 さて、俺も帰るとするか

 

 

~帰宅中~

 

 

ピキィーーーーン

 

――な! 虫の知らせ(シックスセンス)が発動した!

 

 俺がいるのは商店街だ。周りは言ったって普通だが……俺は目を瞑り、円を広げる。

 

――特に変わった様子は…………! 魔力を持った生物がいる! だが……大分弱っているな

 

 俺はその生物がいた路地裏に入り、人目が付かないところで神の不在証明(パーフェクトプラン)を発動させる。

 

『ミスト、セットアップ』

 

『イエス、マスター。セットアップ』

 

 俺はバリアジャケットを装着し、路地裏を進んでいく。

 

 すると、消えかけの猫がいた。

 

『マスター、こちらは使い魔です。現在は契約が切られていて魔力が尽きかけているようですね』

 

『おそらく、プレシア・テスタロッサの使い魔のリニスだろう。

 だが、こいつは原作通りなら消えても問題ないはずなんだが……』

 

『しかし、虫の知らせ(シックスセンス)が発動した以上何かあるのでは?』

 

『そうだな。未来漫画(フューチャリングコミック)で確認するぞ』

 

『しかし、それまでこの使い魔が持ちませんよ?』

 

『分かっている』

 

 俺は猫に手を触れ、未来漫画(フューチャリングコミック)を発動し、一冊の漫画を具現化する。

 

――《リニス物語》、やはりリニスだったか……さらに、栄光の手袋(グロリアスハンド)発動

 

 

 俺はリニスから手を離し、右手に栄光の手袋(グロリアスハンド)を装着する。栄光の手袋(グロリアスハンド)は本来手で掴めないものを掴むことができる手袋だ。それで俺は《時間》を掴む。

 

 

――時の支配者(クロックマスター)発動 一時停止(ストップ)

 

 そうして、世界の時間が止まった。

 

 時の支配者(クロックマスター)は触れている物の時間を一時停止(ストップ)巻き戻し(リワインド)早送り(ファストフォワード)が可能な能力だ。ただし、生物には使えない。時間は生物ではないため、使用できる。

 

『さて、時間は稼いだ。読ませてもらうとしよう』

 

 

零冶 サイドアウト

 

 

《リニス物語》 サイド

 

 

 私はリニス、大魔導師プレシア・テスタロッサの使い魔です。いえ、使い魔でした、が正しいですね。

 

 契約内容のフェイトの魔法教育が終わり、プレシアにそのことを報告して消える予定だった。しかし、私には心残りであった。教え子のフェイトのことだ。

 

 フェイトの生まれは特殊でプレシアが娘として認めていない。私は最後にプレシアにフェイトを娘として扱って欲しいと進言したが、あっさり断られる。口論の末、プレシアに一方的に契約を切られた上、攻撃された。

 

 私は何とか攻撃を凌ぎ、残された魔力で転移した。しかし、魔力が切れ、結局何もできず仕舞いでした。

 

「プレシア……お願いです。どうかフェイトを大切にして下さい。

 フェイト……貴方は自慢の生徒です。アルフと一緒に強く生きて下さい。

 アリシア……私も今そっちに行きますから……」

 

 そして、私の意識は途絶えた。

 

 

《リニス物語》 サイドアウト

 

 

 

零冶 サイド

 

 

――ここまでは予想通りだ。問題はこの後、その後の展開(エピローグ)発動

 

 

零度 サイドアウト

 

 

《リニス物語》 サイド

 

 

 リニスが消えてから約6ヵ月後、元主のプレシアは、ユーノ・スクライアがジュエルシードを運ぶ次元艦を強襲したが、失敗。ジュエルシードは第97管理外世界の地球の海鳴市にばら撒かれた。

 

 プレシアは娘のフェイト・テスタロッサに回収を命じ、フェイトとその使い魔アルフは海鳴市に降り立つ。しかし、ユーノ・スクライアを含む5人の魔導師に阻まれ、ジュエルシードの回収は難航する。

 

 1つも回収できず、母の期待に応えられない焦りから睡眠や食事をろくに取らなかったフェイトは過労で倒れ、そのまま息を引き取った。

 

 使い魔のアルフがフェイトの敵と相手勢力に戦いを挑むも、その戦いの中発動したジュエルシードの思念体にやられ、アルフは消えた。

 

 そして、アルフとの戦いで消耗していた5人の魔導師たちは思念体との戦いで3人の犠牲を出したものの、何とかジュエルシードを封印する。

 

 フェイトの死を知ったプレシアは自らジュエルシード回収に乗り出し、2人の魔導師と対じする。大魔導師と言われた実力で2人の魔導師を葬り、その後全てのジュエルシードを回収した。

 

 しかし、病に侵された体は持たず倒れ、薄れいく意識の中で最後の願いを口にする。

 

「アリシアもフェイトも居なくなった世界なんて無くなってしまえば良いのよ」

 

 その願いに呼応し、全てのジュエルシードが発動。

 

 巨大な次元断層を発生させ、数多の世界とともにプレシアは飲み込まれていった……

 

 

《リニス物語》 サイドアウト

 

 

零冶 サイド

 

 

『なるほどな、高町なのは陣営に戦力が偏り、フェイトは無理をした結果死亡か……』

 

『ずいぶん冷静ですね。もっと慌てるかと思っていました』

 

『そうだな……自分でも驚くほど冷静だ。だが得られた情報は多い。ユーノ・スクライアを含む

 5人の魔導師の一人はおそらく、2人目の転生者だろう。その情報は嬉しい限りだ。

 それとプレシアがフェイトを認めているというのも良い情報だ』

 

『リニスさんを助けることで、フェイトちゃん陣営の戦力強化、加えてフェイトちゃんの

 体調管理が行われ、結果対等に戦えるといったところでしょうか』

 

『おそらくな、そうすれば俺が原作に関わる必要はほとんどなくなるが……』

 

『ですが、どうせならプレシアさんとアリシアちゃんも助けたい、ですか?』

 

『俺の心を読むな、ミスト』

 

『失礼しました。ですが、そうなんでしょう』

 

『まあ、そうだが』

 

『やはり、マスターはやさしいですね。私の自慢です』

 

『お前は俺の親か……』

 

『保護者ですかね』

 

『勝手に言ってろ。さて、リニスを助けるとしますか』

 

『使い魔して再契約をするのですか?』

 

『いや、それだと精神リンクで俺の正体がばれる。だから……』

 

 俺は王の財宝(ゲートオブバビロン)からブレスレットを取り出す。

 

『それは確か、マスターが作った』

 

『ああ、大気中の魔力素を集め、装備者の魔力を回復させるマジックアイテムだ』

 

 俺がブレスレットをリニスの右腕に通すと、ブレスレットは自動的に腕の太さに合わさり、装着された。そして、俺は猫形態のリニスを抱えて飛雷神の術(ひらいしんのじゅつ)でその場から消えた。

 

 

零冶 サイドアウト

 

 

リニス サイド

 

 

「うぅ……ここは……私は生きているのですか……」

 

 私は目を覚ますと、知らない一室にいた。あまりの急展開に困惑していると

 

「気が付いたのか」

 

 急に声を掛けられた。

 

「ッ! あなたは?」

 

 私は声のしたほうを見ると仮面を付けた男が居た。

 

「そう警戒するな。別に取って食ったりはしない。この仮面は事情があってね。

 申し訳ないが許してもらいたい」

 

「いえ、こちらこそ失礼しました。あなたが私を助けてくれたのですが?」

 

「ああそうだ、悪いが使い魔として契約する訳には行かなくてね。

 君の右腕に付いているブレスレットで君の魔力を回復させた」

 

「え? これでいったいどうやって?」

 

「それは大気中にある魔力素を集めて、装備者の魔力を回復させることができる

 マジックアイテムだ」

 

「まさか! ロストロギア!」

 

「残念だが違う、それは俺が自分の技術で作ったものだ」

 

「な! これほどのものを自分で作ったのですか!」

 

「デバイスの技術を磨く過程で思いついたのでね。遊び半分で作ったものだ。

 魔力は十分回復しているはずだが、それは君にプレゼントしよう」

 

「遊び半分って」

 

 私は呆れてしまった。これほどの技術があれば、遊んで暮らせるほどの大金が手に入るでしょうに……

 

「それで、他に質問はあるかな? 無いなら、こちらから質問させてもらいたいんだが」

 

「……いえ、質問があります。っとその前にさすがにこのままの姿では失礼ですね。

 少々お待ちください」

 

 私は人間形態に変身する。

 

「ふぅ、では、質問ですが、ここはどこで貴方は何者ですか?」

 

「ここは第97管理外世界で地球という星だ。そしてこの街は海鳴市。

 私はそこに住むライという魔導師だ。傭兵をやっている」

 

「なぜ私を助けたのですか?」

 

「さっきも言ったがここは管理外世界だ。魔法文明はない……にも関わらず、

 消えかけの使い魔が現れた……何かあったと考えるのが普通だ。

 それを知るためには本人に生きていてもらわないとな」

 

「私が敵だったら、どうするつもりだったんですか?」

 

「君は敵か味方か分からなければ、助けないのか? それにそれを知るために助けたんだよ。

 敵だと分かれば、早々にこの星から出て行ってもらうつもりだがな」

 

「そうですか、もう質問はありません」

 

「もういいのか?」

 

「はい、少なくとも貴方がお人よしだと分かりましたし、今はそれだけで十分です」

 

「それは心外だな……君を助けたのはあくまで事情を知るためだ。

 それ以上でもそれ以下でもない。

 まあいい、ならこちらからの質問だが、なぜ使い魔の契約が切れていた?」

 

「はい、実は……」

 

 

~リニス説明中~

 

 

「という訳でして……」

 

「なるほどな、何故プレシアはフェイトのことを娘として見ていない?」

 

「それは……」

 

「話せないならいいぞ」

 

「いえ、お話します。プレシアは昔管理局の研究員でした。私は当時その飼い猫でした。

 プレシアにはアリシアという娘が居たのですが、その時に行っていた実験で魔導炉が暴発し、

 その際に漏れた大量の魔力を浴びてアリシアと私は死にました。

 私はその後にプレシアの使い魔として契約し、生き長らえましたが、プレシアは何とか

 アリシアを蘇生させようと研究し、たどり着いたのがプロジェクトFです。

 その内容は魔導師のクローンを作ることで魔導師を量産するというものでしたが、プレシアは

 アリシアのクローンを作り、記憶を転写することでアリシアの蘇生が可能だと結論付け、

 そうして生まれたのが」

 

「フェイトという訳か……」

 

「はい……しかし、フェイトはアリシアと容姿は瓜二つですが、性格がまるで違いました。

 アリシアは明るく元気な子に対して、フェイトは大人しく控えめ。それにアリシアは

 リンカーコアがなく、左利きになのにフェイトにはリンカーコアがあり、右利き……

 プレシアは絶望し、プロジェクトFの正式名称、プロジェクトF.A.T.Eに因んで

 フェイトと名付け、それ以降娘としてではなく、道具として接していました」

 

「…………」

 

「フェイトは本当に良い子なんです。プレシアに何とか認めて貰おうと必死で魔法の勉強を

 していました。母親の手助けをしようと……そうすれば、昔みたいに優しいお母さんに

 戻ってくれると……私はフェイトのことをアリシアの妹だと思っています。ですから、

 なんとしてもプレシアにフェイトを認めて欲しかった!」

 

 私が全てを彼に告げると、彼から思いも寄らない言葉が発せられた。

 

「はぁ~……お前達はバカだな」

 

「……どういう意味ですか?」

 

 私はその言葉に激怒し、彼を睨み付ける。

 

「そう睨むな。ちゃんと説明してやる」

 

 そう言われて私は一先ず、睨むのやめ、彼の言葉を待つ。

 

「まず、最初にプレシアからだが、姿を似せて、記憶を転写しようとして、生まれた人間が別人に

 なるのは当たり前だ。この世にまったく同じ人間がいないように、いくらクローンであろうと

 まったく同じ人間になる訳が無い。一卵性双生児で姿形はほぼ同じだろうと、

 別人なんだからな。もし、そんなことができるとしたら、それは神くらいのものだろう」

 

「…………」

 

「次にフェイトだが、母親の手助けのために頑張るか……実にすばらしい考えだ。

 人間としてはな。だが、娘としては0点だ。親ってのは子供に甘えてもらいたいと

 思っているものだ」

 

「し、しかし、そもそもそれはプレシアが娘として認めていなければ!」

 

「最後にリニスの認識だ」

 

「私の認識?」

 

「何故リニスはプレシアがフェイトを娘として認めていないと思っている?」

 

「それは、プレシアがフェイトに取っている態度や言動から……」

 

「リニスの話だとプレシアは病に侵され、長くないそうだな」

 

「はい、研究の無理がたたって……ですから、残り少ない時間をフェイトのために」

 

「死んだ後はどうなる?」

 

「え……」

 

「プレシアがフェイトを娘として見て愛情を注いだら、フェイトは幸せだろうな。だが、プレシアが

 死んだらフェイトはどうなる? いや、どうすると言い換えても良いかもしれないな」

 

「そ、それは……」

 

「フェイトは悲しむだろう。たった一人の母親だ、当然だな。だが親を亡くし、子供だけで

 どうやって生きていく? 母親の後を追って自ら命を絶つかもしれない。それとも魔法の才能が

 あるから次元犯罪者として生きていくか? さぞ、過酷な人生になることだろうな。

 どちらにしてもフェイトが幸せになることはない」

 

「…………」

 

「母親なら……親なら子供の幸せを望んでいる。たとえ、今突き放すことになってもだ」

 

「つまり、貴方が言いたいのはプレシアはフェイトを娘として認めていると言うことですか?」

 

「そうだ」

 

「……何故」

 

「…………」

 

「何故少し話しを聞いた程度の貴方に分かるんですか! 分かるはずがない!

 そんな出鱈目なこt「俺なら」!?」

 

「俺がプレシアでフェイトを娘として認めていないなら、直ぐにフェイトを処分する」

 

「な!」

 

「そして、アリシアを蘇生させる次の方法を探す」

 

「そ、それは、プレシアが病に侵されてまともに動けないから、道具として」

 

「それならフェイトである必要はない。わざわざ魔法教育などする手間を掛けるくらいなら、

 自分のクローンを作り、感情を消した戦闘人形を作ったほうが効率が良い。

 いくらアリシアにそっくりでも認められないものが居たら神経を逆撫でされるだろう。

 しかもそれが、娘として接してくるなんて俺なら耐えられない」

 

「…………」

 

「だがもし、俺がプレシアでフェイトを娘として認めているなら……」

 

「認めているなら?」

 

「自分の残りの人生を掛けてフェイトの未来を作る。幸せになれる未来をな」

 

「そんなことどうやって……」

 

「そうだな……まず、魔法教育をして生きる術を身に付けさせる。そこはプレシアと同じだな。

 次に自分が何かしらの次元犯罪を起こす。ロストロギアの無断使用あたりが無難だな。

 そのロストロギアの回収にフェイトを向かわせ、管理局と敵対させる。そして、最後に

 フェイトに生まれの真実を教えて、突き放す。そうすれば、フェイトは親に利用されていた

 だけの哀れな子という立場になり、管理局の刑も軽くなるだろう。そして、自分は捕まるなり、

 死ぬなりすればいい」

 

「それが……そんなものがフェイトの幸せなんですか……」

 

「悲しみは時間が癒してくれる。生きてさえいてくれれば、きっと幸せになってくれる。

 死に行く者としてはそう思うことしか出来ないさ」

 

「……本当にプレシアはそう思ってくれているでしょうか」

 

「さあな、今のは俺がプレシアだったらの話だ。だが」

 

「…………」

 

 私は彼の……ライの言葉を待つ。

 

「そう考えたほうが幸せじゃないか? 考えるのは個人の自由だ」

 

「何ですかそれは……まったく……。ふふふ、でも確かにそうですね。

 考えるのは個人の自由です。」

 

 私はライの投げやりな言葉に呆れてしまった。

 

「それで、リニスはこれからどうする?」

 

「私は……それでも私はプレシアにフェイトを認めて欲しい。プレシアがどう考えているかは

 分かりませんが、プレシアが導くことが出来ないなら、私がフェイトを導きます。

 私の一生を掛けて!」

 

「なら、プレシアのところへ行くのか?」

 

「そうしたいのは山々ですが、用心深いプレシアのことです。既に時の庭園を

 移動させているでしょう。ですから、貴方に依頼します。」

 

「ほう」

 

「私と一緒にプレシアを探し出し、プレシアの本音を聞き出す。それが貴方に出す依頼です」

 

「俺は高いぞ?」

 

「私の一生を掛けてお支払いします。ですから、どうか力を貸して下さい」

 

「…………」

 

 

リニス サイドアウト

 

 

零冶 サイド

 

 

 現在リニスに依頼をされているが、俺はこの依頼を受けようか悩んでいる。なぜなら、リニスが気が付くまでの間に探しモノの行方(ダウジングフューチャー)でプレシアを探し当て、絶対読心(ギアス)でプレシアの考えを読んできたので、プレシアの本音を知っているからだ。

 

 つまり、このまま放っておけばプレシアとフェイトは原作通りになるだろう。その際にリニスがどうなるかは分からないが……俺が悩んでいるのは原作を変えてしまって良いのかどうかだ。既にリニスを助けた時点で原作から離れてしまっているが、それは助けなければ地球が滅亡するからだ。

 

 少しでも原作に近づけるために必要だった。もし、プレシアとフェイトを和解させたら原作と違ってきてしまい、他の転生者達が動揺しかねないし、それを理由にライが転生者と感付くかもしれない。

 

――やだな~何で俺はこんなに原作に巻き込まれ易いんだ? いや、待てよ。

  逆に考えるんだ……関わっちゃってもいいさと

 

『何、ネタを挟んでいるんですか?』

 

『だから、俺の心を読むな。ミスト』

 

『マスターがアホなこと考えているからですよ。まったく』

 

『まあいい、まじめにやりますか』

 

「悪いがその依頼は断る」

 

「え!? ……そうですか……」

 

 リニスが明らかに落ち込んでいる。少し罪悪感があるが……何、気にすることは無い。

 

「だから、改めてこちらからプランを提供しよう」

 

「プラン、ですか?」

 

「ああ、プランAはプレシアがフェイトを娘として認めていない場合だが、

 プレシアからフェイトを奪い去り、リニスに引き渡す」

 

「それはさっき私が言った……」

 

「少し違う、リニスは本音を聞き出すところまでだ」

 

「ほとんど変わらないじゃないですか……」

 

「まあ、本命はプランBだからな」

 

「それはいったい……」

 

「プレシアがフェイトを娘として認めている場合だ。プレシアの病を治し、

 アリシアを蘇生させ、家族全員で幸せになる」

 

「そ、そんなことが出来るのですか!?」

 

「出来る。俺にはそれをするだけの力がある」

 

「信じられません。死者の蘇生なんて……」

 

「実際に見せてやろう」

 

 俺は王の財宝(ゲートオブバビロン)から死んだ魚を取り出す。

 

「何もないところから、魚が!?」

 

「これは俺のレアスキルだ。自由に物の出し入れができる」

 

「まさか、レアスキル持ちだなんて」

 

「これくらいで驚かれても困るんだがな……これからこの死んだ魚を蘇生させるが、

 このことは他言無用で頼む」

 

「分かりました」

 

「俺には今のレアスキルの他にもレアスキルがある」

 

「複数のレアスキル保持者!? まさか! 1つだって珍しいのに!」

 

「だから、他言無用だ。分かったな」

 

 俺は威圧を持ってリニスに警告する。

 

「は、はい、わかりました」

 

「まず、使用するのは死後1分以内の生物を蘇生させるレアスキルだ」

 

「死後1分以内……しかし、アリシアが死んでから既に26年以上経過していますが……」

 

「まずと言っただろ、他には触れている物の時間を操るレアスキルだ。

 ただし、生物には使えない」

 

「時間を操る!? さっきの死者蘇生もそうですが、とんでもない能力ですよ!」

 

「既に分かったと思うが、俺が素顔を明かせないのは破格のレアスキルを複数所持している為だ」

 

「確かにそれほどの力があれば、管理局が放っておかないでしょうね」

 

「もちろん傭兵だからな、管理局の依頼をやったことはあるが、俺のレアスキルについては

 一切明かしていない。だから」

 

「他言無用……ですね」

 

「そうだ、ではやるぞ。時の支配者(クロックマスター)発動」

 

 俺は死んだ魚に触れて時の支配者(クロックマスター)を発動させる。俺の目には魚の死亡してからの時間が表示されている。

 

「死後3日って所か……巻き戻し(リワインド)

 

 魚の死亡してから経過した時間が高速に巻き戻されていく。

 

 そして、1分以内になったところで、

 

死者蘇生(レイズデット)発動」

 

 魚が輝き出し、光が収まるとぴちぴちと魚が動き出した。

 

「本当に蘇生させた……しかし、それはアリシアの体が無ければ意味が無いのでは?」

 

「アリシアを蘇生させるのが目的のプレシアがアリシアの体を保存していない訳がないだろ」

 

「それは……そうですね。プレシアのことです。何かしらの方法でしっかり

 保存しているでしょう」

 

「プレシアの病については触れている者を過去の状態に戻すレアスキルで病に

 かかる前にまで戻す」

 

 そう言って俺は魚の首を切り落とす。

 

完全修復(パーフェクトリカバリー)発動」

 

 すると、魚が首を切り落とす前の状態になる。

 

「それがあればアリシアを蘇生できるのでは?」

 

「残念だが、完全修復(パーフェクトリカバリー)は対象の過去の状態を俺が

 知っておかなければならない。

 相手の記憶を覗くレアスキルの絶対読心(ギアス)でプレシアの記憶を覗かせて貰い、

 プレシアの過去の状態を知ることで使用できるが、死んでいるアリシアには

 記憶が無いため、使用できない」

 

「……貴方はいったい、いくつレアスキルを持っているのですが?」

 

 リニスが呆れ気味に聞いてくる。

 

「悪いがそれは秘密だ」

 

「分かりました、貴方を信じます。ですが、私にはそこまでして貰っても

 お支払い出来るものは……」

 

「成功報酬で構わない。報酬は……」

 

 俺は報酬の内容をリニスに伝えた。

 

「本当にそれで良いのですか?」

 

「構わない。俺としては俺の日常が守れればそれでいい」

 

「分かりました。よろしくお願いします。ライ」

 

「契約成立だな。ここはマンションの一室だ、自由に使ってくれ。ただし、今日は大人しく

 この部屋に居て欲しい。明日までにリニスの戸籍を作っておく、そうしたら自由に過ごして

 もらってかまわない」

 

「何から何までありがとうございます。代わりと言っては何ですが、身の回りのお世話をさせて

 頂きます」

 

「いや、その必要ない」

 

「し、しかし、何もしないと言うのは……」

 

「言ってなかったが、俺はこの部屋に住んでいる訳ではない。あくまで拠点として使っている

 だけだ。だから、この部屋を貸してやるから自由にして貰って構わない」

 

「しかし、それでは私の気が済みません」

 

「気持ちだけで十分だ。それに俺は誰にも正体を明かす訳にはいかないんだ。

 リニスを信用していない訳ではないが、こればっかりは認めてもらうしかない」

 

「……分かりました。それが貴方のためになるなら、従います」

 

「すまんな、恩に着る。では俺はこれで失礼する」

 

 俺は飛雷神の術(ひらいしんのじゅつ)でその場から転移する。

 

 

零冶 サイドアウト

 

 

リニス サイド

 

 

 私はさっきまでライが居た場所を見つめている。

 

「今の転移……まったく魔力反応がなかった。と言うことは今のもレアスキルって

 ことでしょうか?」

 

 いくつレアスキルを持っているのでしょうか彼は……本当に規格外の魔導師です。正体を隠したくなる気持ちが分かりました。それに私の命を救ってもらったばかりか、家族まで救ってやると言ってくれるなんて……

 

 私は先ほどの報酬の話を思い出す。

 

ライ「報酬はリニスを含む家族全員で幸せになることだ」

 

 私は彼に対してお人よしだと判断し、彼はそれは心外だと言っていましたが、

 

「貴方は本物のお人よしですよ。ライ……」

 

 私は貰ったブレスレッドに左手をそえ、そっと涙を流す。

 

「本当にありがとうございいます」

 

 私はライに感謝しつつ、いつかは彼に恩返しをしたい。そう思った。

 

 

リニス サイドアウト


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