原作を放って置くとバッドエンドになるんですが、どうしたら良いですか?   作:月の光

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更新が遅くなり申し訳ありません。
なんだか久しぶりの投稿です。

長くなったので、2話に分けて投稿します。
もう1話は短いので、ちょっと付け足して明日か明後日くらいに投稿でき……
ればいいな~


48_ミスト『褒めてね~よ』零冶『知ってた』

 ライはヴィヴィオ達と合流した後、今回の最重要目的である未来からやってくるトーマ達の口止めをするため、飛行魔法で空を飛びながら探索を続けていた。

 

『マスター、愛里からシステムU-Dに関する情報が送られて来ました』

 

『俺に送ってくれ』

 

『了解』

 

 ミストは念話で愛里がアルハザードで調べた情報をライに送った。

 

 

 

名前:ユーリ・エーベルヴァイン

 

通称:システムU-D

 

性別:女

 

年齢:不祥

 

デバイスなし

 

ステータス

 筋力:AA+

 俊敏:A

 耐久:SSS+

 魔力:∞

 幸運:E

 

 古代ベルカで夜天の書のコントロールを奪うために紫天の書と共に組み込まれた元人間。永遠結晶エグザミアのコアが体内に組み込まれており、魔力がほぼ無限に生み出される無限連環システムを搭載している。通称システムU-Dと呼ばれる。

 

 しかし、ユーリ本人でも制御できないため、目覚めると破壊活動を始める。唯一制御できるのは

紫天の書を持つ者だけである。

 

 

 

 ライはミストから送られてきた情報を見た。

 

『強いな……総合的なステータスだけで見れば、今の俺より上か』

 

『そうですね。ですが、マスターなら大丈夫でしょう』

 

『まあ、竜闘気砲魔法(ドルオーラ)なら防御の上からでも落とせるし、俺には()()がある』

 

『ああ、あのチート魔法ですか』

 

『ああ、魔法戦において俺が負けることは絶対に無い』

 

『相変わらずのバグチート』

 

『よせやい、照れるだろ』

 

『褒めてね~よ』

 

『知ってた。ミスト、他の情報は?』

 

『システムU-Dを押さえ込むプログラムが送られてきました。しかし、カートリッジシステムが

 必要なようです』

 

『そうか、ならプログラムごと俺に送ってくれ。こちらで解析及びカートリッジシステム無しで

 使えるように再構築する』

 

『了解』

 

 ミストはプログラムの内容をライに送った。

 

『…………なるほど。それほど難しいプログラムじゃないな。これなら問題ない』

 

 ライは送られてきたプログラムを解析し、自分で使えるように再構築した。

 

『マスター、言っておきますけど』

 

『どうした?』

 

『そんなこと人間の脳じゃ普通できませんからね?』

 

『え? そうなの?』

 

『はい、そのための私達デバイスなんですよ?』

 

『あ、そっか。ただのお喋り機械じゃなかったんだっけ』

 

『今明かされる衝撃の事実。マスターは私をなんだと思っているのですか?』

 

『え? 家族』

 

『もう~嬉しいこといってくれちゃって~』

 

 ライとミストが念話で会話していたところ。

 

 

ゴゴゴゴゴ

 

 

 再び、離れた場所で転送反応が現れた。

 

「これって!」

 

「転移反応!」

 

 それに気付いたヴィヴィオとアインハルトが言った。

 

「僅かに時空に歪みがある。おそらく君達と同じで未来から誰か来るのだろう」

 

「一体誰が……」

 

「会ってみないことには分からないな。二人とも行くぞ」

 

「「はい!」」

 

 ライが先導し、三人は飛行魔法で移動を開始した。しかし、アインハルトが遅れ気味になった。

 

「ん? アインハルト。君は飛行魔法が苦手なのか」

 

 ライはアインハルトに聞いた。

 

「は、はい。私の使う覇王流(カイザーアーツ)は地上で戦うことを想定しているため、飛行魔法はあまり……」

 

「そうか……」

 

「あっ! 私に構わず先に行って下さい。私も後で追いつきますから」

 

『何だか死亡フラグみたいですね』

 

『シチュエーションが違うから問題ないさ』

 

「現状何が起きるか分からないからはぐれるのは不味いな」

 

「し、しかし、それでは」

 

 ライが言うとアインハルトが言いよどむ。

 

「ふむ、仕方ない」

 

 ライは速度を落とし、アインハルトの傍に寄ると

 

「悪いが少し我慢してくれ」

 

「え?」

 

 ライはアインハルトの膝裏に左腕を潜り込ませ、右腕を背中に回し、抱きかかえた。要するにお姫様だっこをした。

 

「ええええ!?」

 

「ああああ!」

 

 行き成りライにお姫様だっこされたアインハルトは驚愕し、それを見ていたヴィヴィオは声を上げた。

 

「あ、あの! その!」

 

 アインハルトは顔を赤くしてうろたえた。

 

「ず、ずるいです! アインハルトさん!」

 

「ヴィヴィオさん! これは私の意志じゃ!」

 

「すまないな。不快かもしれないが、大人しくしていてくれ」

 

「いえ! 不快なんてことありません! 良い匂いがします!」

 

『この子は何を言っているんだろう?』

 

『マスターの匂いの香水でも作ったらどうでしょ~うか』

 

『何でお前がすねるんだよ』

 

『本当にマスターはすけこましですね』

 

「零冶さん! 次! 次は私もお願いします!」

 

「ちゃんと名前を間違えなかったらな」

 

「さあ! ライさん! 行きましょう!」

 

「まったく……アインハルト、少し飛ばす。舌噛むなよ」

 

「はい……」

 

 アインハルトは潤んだ瞳でライを見つめながら答えた。

 

「ヴィヴィオ、行くぞ」

 

「はい!」

 

 ライとヴィヴィオは再び、飛行魔法で移動を開始した。

 

 

 

 

 

 ライ達が向かっている転移反応があった場所に二人の少年と少女が現れた。

 

「あっ痛てーっ! 痛ってて……なんだよ、もう……ん?」

 

 一人の少年は茶髪にミドルヘヤーのトーマ・アヴェニール、その傍には一冊の魔導書がふわふわと浮かんでいた。

 

「トーマ、トーマ!」

 

 もう一人の少女はクリーム色に近い銀髪のロングストレートのリリィ・シュトロゼック。

 

「リリィ? あれっ? なんでここに? ていうか……ここ、どこ?」

 

 トーマはあたりを見回す。

 

「分からないの……私も気が付いたらここにいて」

 

 リリィも一緒にあたりを見回し、トーマに答える。

 

「俺、アイシス連れて訓練場に向かってる最中だったんだけど……」

 

「私は技術部でメディカルチェックをしてもらってた」

 

 トーマとリリィはさっきまでの自分達の状況を整理していた。

 

「なんだよ銀十字……お前の仕業なのか?」

 

 トーマは魔導書に向かって話しかけた。

 

[……]

 

「銀十字……トーマが誰かに呼ばれたって」

 

 リリィは銀十字の言葉をトーマに伝えた。

 

「呼ばれた? 誰だか知らないけど、いきなり呼びつけるとは失礼だなぁ……

 でもどっちにしろ、こんな場所でじっとしてる訳にもいかないし……」

 

「はっ! 誰か来る!」

 

 リリィは第三者の接近を感知した

 

「魔力反応だ……飛んでくる!」

 

 リリィに言われたトーマも魔力反応を感知した。

 

「荒事は避けたいけど、いきなり襲われちゃたまらないし……リリィ!」

 

「うん!」

 

 トーマはリリィに声をかけ、リリィがそれに答える。

 

「リアクト!」 

 

「オンッ!」

 

 すると二人の体が光輝き、リリィがトーマの中に入っていく。

 

「モード黒騎士!」

 

『ディバイダー、セット!』

 

 するとトーマの髪は銀色に変わり、服装は黒を基調としたバリアジャケットに変わり、体中に赤い奇妙な模様が浮かび上がった。

 

「良し、行こう! リリィ」

 

『うん、トーマ!』

 

 二人は接近してきた第三者の方へ移動を開始した。すると

 

「そこの少年。ちょっと良いかな」

 

 ライはトーマに話しかけた。

 

「って、零冶さん! それにヴィヴィオ!」

 

『よかった、私達だけじゃなかったんだね』

 

 トーマは現れたライに対して名前を呼んだ。

 

「君もか……いや、君達か。融合騎……いや、それとは少し違うようだな」

 

 ライは何故か自分の正体を知っているトーマとリリィに答えた。

 

「えっと……あの、すみません。どちら様でしょうか?」

 

 ヴィヴィオはトーマに名前を呼ばれたが、トーマ達が誰だか分からなかった。

 

「あ、あれ? 俺だよ、分からない? トーマだよ」

 

「トーマって……あのトーマ!?」

 

 ヴィヴィオはトーマが名前を聞くと驚いた声を上げた。

 

「そうだよ! この形態の戦闘防護服だって、見せた事あったでしょ?」

 

『そうだよ。それに、わたしもいるよ!』

 

 トーマとリリィがヴィヴィオに確認した。

 

「えぇっ!? ゆ、融合騎の方ですか?」

 

『え? リアクトプラグなんだけど……』

 

――ふむ、話が噛み合わないな。やはり別の時間軸から来たんだな。

 

「三人とも落ち着け。俺が情報をまとめる」

 

「えっと……零冶さんですよね?」

 

 トーマは様子のおかしいライに確認した。

 

「確かに俺は零冶だ。だが、君達の知っている零冶ではない」

 

「『は?』」

 

 トーマとリリィはライから意味不明なことを言われ、呆けた。

 

「今は新暦66年。君達は今より未来から来たんだ」

 

「は? えっと……冗談ですよね? 零冶さん」

 

「冗談では無いさ。この二人も未来から来た次元漂流者だ。いや正確には時空漂流者か。

 おそらく君達はこの子達より更に未来から来たんだろう」

 

「い、いくらなんでも信じられない」

 

『で、でも零冶さんがこんな嘘を付くとは思えないよ』

 

「それはそうなんだけど……」

 

 ライに言われたことが信じられない二人は考え込む。

 

「仕方ない」

 

 ライはずっとお姫様だっこしていたアインハルトを降ろした。

 

「あっ……」

 

 アインハルトは残念そうな声を漏らした。

 

「ん? どうした。アインハルト」

 

「あっいえ! 何でもありません!」

 

 アインハルトは自分に浮遊魔法をかけ、零冶から離れる。

 

『ミスト』

 

『了解』

 

 零冶はミストに指示を出し、バリアジャケットと変身魔法を解き、子供の姿に戻った。

 

『何だか今回は何度も変身魔法を解きますね』

 

『まあ、これが最後だろう』

 

「はじめまして、月無 零冶です」

 

 零冶はトーマとリリィに自己紹介をした。

 

「うわ! 零冶さんがちっさい!」

 

『ホントだ! 小さい零冶さん可愛い! トーマ! リアクト解いて!』

 

「え? あ、ああ……リアクト!」

 

『オフ!』

 

 するとトーマの体が光るとトーマとリリィが分離した。トーマは元の茶髪に戻った。トーマと分離したリリィは突然、零冶に抱きついた……が、

 

 

ヒョイ

 

 

 零冶はリリィを避わした。

 

「いきなり何ですか?」

 

「お願い! 抱かせて!」

 

「言葉が足りてませんよ。正確には抱きつかせての間違いです」

 

「どっちでも良いから!」

 

 零冶はリリィの奇行に冷静に対処した。

 

「はぁ……少しだけですよ」

 

「ありがとう!」

 

 リリィは零冶の後ろから抱きついた。

 

「ああ! わ、私も抱きたいです!」

 

 ヴィヴィオがリリィに同上した。

 

「あ、あの、私も良いですか?」

 

「お好きにどうぞ」

 

 すると三人は零冶をもみくちゃにする。

 

「さて、話の続きを」

 

「この状態で普通に続けるなんて……流石零冶さん」

 

 零冶は三人を気にせず話を続けた。

 

「君達が未来から来た原因だけど、ヴィヴィオさんとアインハルトさんが未来から来る前に

 未来から来た二人組みがいるんだ。その時の時空の歪みに巻き込まれたんだと思う」

 

「そうだったんですか……迷惑な話だな」

 

「その二人にも事情があるみたいだからあまり責めないで上げて? 誰だって家族や大切な人を

 助けたいって気持ちはあるんだから」

 

「……それはよく分かります。俺もそうですから」

 

 零冶は三人にたらい回しにされながら普通にトーマと会話する。

 

「今、その二人は泳がせているけど、何か動きがあったら直ぐに対処しに行くつもりなんだ。

 それとアースラに救援要請をしているからもうしばらくしたらこちらに到着すると思う。

 そこで君達を保護してもらうつもりだよ」

 

「分かりました」

 

「それとこの時代では僕は正体を隠している。だから僕のことはライと呼んで欲しい」

 

 零冶はトーマとリリィに自分の正体を秘密にするようお願いした。

 

「了解です。リリィも気をつけろよ」

 

「は~い」

 

 零冶のお願いを快く受けたトーマはリリィにも注意した。

 

「本当に頼むよ。もしこの時代で僕の正体がバレたら、深刻なタイムパラドックスが

 起きかねないから」

 

「それはマズイですね」

 

「えっと……トーマ、トーマ!」

 

「何? リリィ」

 

「タイムパラドックスって何?」

 

「あっ、私も気になってました」

 

 リリィとヴィヴィオが聞いてきた。

 

――ヴィヴィオは分かってなかったのかよ。

 

 零冶は心の中で呆れていた。

 

「タイムパラドックスと言うのは……そうですね。例えばある母親の子供が過去に行き、

 自分の母親を殺したとします」

 

 零冶は聞いてきた二人にタイムパラドックスの説明を始めた。

 

「すると本来生まれてくる子供が生まれないことになります。するとどうなると思います?」

 

「えっと……子供が生まれないことになるんだから子供が消えちゃうのかな?」

 

 ヴィヴィオが零冶に聞かれたことに答えた。

 

「ですが、母親を殺した原因の子供が生まれないってことは母親が殺される事実も消える。

 けど、母親が死なないってことは子供が産まれて母親の死ぬ原因が生まれる」

 

「「あれ? あれ?」」

 

 零冶の説明を聞いて首を傾げるヴィヴィオとリリィ

 

「こういう矛盾が起きてしまうことをタイムパラドックスと言うんです。実際にそれがおきた時

 どうなるかは分かっていませんが、色々な仮説があります。一つはその矛盾の原因である母親と

 子供を世界が修正しようとしてどちらも存在しなかった事にすると言うもの」

 

 ヴィヴィオとリリィは零冶の説明を聞き、言葉を失う。

 

「もう一つは世界がそのループから抜け出せなくなり、フリーズする。そして情報を処理しきれ

 なくなり、世界そのものが崩壊する。情報端末と同じでかな? 煙を吹いて二度と立ち上がら

 ないみたいな感じだよ」

 

 零冶の言葉を聞き、顔を青くするヴィヴィオとリリィ。

 

「僕が正体をまだ隠しているのにこの時間軸で正体がばれるってことはそういった問題を

 引き起こしかねないんだ。だから絶対に秘密にして欲しい」

 

「「分かりました!」」

 

『よし、これで大丈夫だろう』

 

『そうですね。ですが、さっきからもみくちゃにされているので、まったく締まってませんがね』

 

『これは俺も予想外だったよ』

 

『良い思い出来てよかったですね』

 

『何でお前が不機嫌になるんだよ』

 

『別に……何でもありません』

 

「さてと、そろそろ良いですか?」

 

 零冶は三人に確認した。

 

「あっ、うん。もう十分堪能したから」

 

「ライさんの髪でさらさら気持ち良かったです」

 

「素晴らしい抱き心地でした」

 

 リリィとヴィヴィオとアインハルトはそれぞれ感想を言った。

 

「それじゃ、『ミスト』」

 

『了解』

 

 零冶は再びミストに指示を出し、ライに変身した。

 

「では、二人とも俺たちと一緒に行動してくれ」

 

「了解です!〈分かりました!〉」

 

「それとこの世界で知っている人に会っても知らないフリをするように。相手からしたら

 初対面だからな。変に疑われることになる」

 

≪了解!≫

 

「君たちはそのリアクトとやらで融合しておけ」

 

「「了解〈わかりました〉」」

 

 ライに言われたトーマとリリィはリアクトした。

 

「よし、行くぞ」

 

 こうして、ライはトーマ達と合流して、移動をしようとしたら

 

「あっ! ライさん。今度は私ですよ!」

 

 ヴィヴィオがライにお姫様だっこをせがんで来た。

 

「まったく、しょうがないな」

 

 ライはヴィヴィオをお姫様抱っこで抱きかかえた。

 

「えへへ~。ライさんあったかいな~」

 

 そしてライを先頭に四人の未来人達は移動を開始した。

 

 

 しばらく、探索を続けていると

 

「ん? ……全員止まれ」

 

 ライがアインハルト達を止めた。

 

「どうしました? ライさん」

 

 トーマがライに聞いた。

 

「この先、約10kmに四人の人影がいる」

 

「ってことは私たちと同じ未来から来た人でしょうか?」

 

 ヴィヴィオがライのお姫様だっこされながらライに聞いた。

 

「いや」

 

 ライはヴィヴィオの推測を否定しながら、目にオーラを集め、凝を行った。そして、オーラで視力を強化し、四人の人影を捕捉する。

 

「やはりか……あれは守護騎士達だ」

 

「守護騎士ってことは、シグナム一尉やヴィータ師匠?」

 

「そうだ。まっすぐこちらに向かってくる。それとトーマ、不用意に未来の情報を口にするな」

 

「あっ! す、すみません」

 

 ライに指摘されたトーマは焦ったように謝った。

 

「今後は気をつけるように」

 

「はい」

 

『それにしても、よくわかりましたね。10km先なんて全然見えないし、魔力反応も

 まだ無いのに』

 

「流石はライさんです」

 

 リリィは魔力を探査するが未だに反応を検知できないでいた。そして、アインハルトはライを賞賛した。

 

 ライは現在も半径10kmの円を広げている。その円のセンサーに引っかかり、相手を捕捉したのだった。

 

「それじゃ、シグナムさん達と合流したほうが良いのか?」

 

 トーマがライに聞いた。

 

「いや、そもそもここに守護騎士達がいること事態がおかしい。アースラの応援が来るには

 早すぎるし、既に到着しているなら俺に連絡が来ないのはおかしい。それにここから

 見る限りでは何か焦っているようだ」

 

「え? ここから見えるんですか? 10km先が」

 

「ああ、はっきりとな」

 

 ライはヴィヴィオに聞かれたことにさも当然のように答えた。

 

――≪やっぱり零冶さんは規格外だなぁ~≫

 

 ライの答えにヴィヴィオ達の心は一つになった。

 

「このまま進み。守護騎士達を接触する。ヴィヴィオ、悪いがここまでだ」

 

「ええ~……わかりました」

 

 ヴィヴィオは残念がりながら、ライから離れていく。

 

「守護騎士達とは俺が話しをする。全員心するように」

 

≪了解!≫

 

 そして五人はライを先頭に移動を再開した。そして、守護騎士達と接触した。

 

「お前は確か……傭兵のライだったか?」

 

 シグナム?がライに聞いた。

 

「ああ、そうだ。お前達は何故ここにいる?」

 

「知れたこと。主を助けるためには魔力を蒐集するしかない。お前が言ったことだ」

 

 ザフィーラ?がライに答えた。

 

『ってことは俺が接触して直ぐの記憶か』

 

『そうですね。闇の欠片はその者の記憶や強い思いによって生まれるので』

 

『なるほど、はやてを助けたいと言う強い思いから生まれたってことか』

 

『おそらくそうでしょう』

 

「だが、俺はまだ動くなと言ったはずだ」

 

「何であたしらがてめぇの指図を受けねぇといけねぇんだ」

 

 ヴィータ?がライに答えた。

 

――ふむ、模擬戦はする前ってことか。面倒な

 

「私達の主は私達で助けるわ。あなたの手を借りずともね」

 

 シャマル?がライに言った。

 

「そうか『全員聞こえるか?』」

 

 ライは念話でヴィヴィオ達と交信した。

 

『はい、何ですか? ライさん』

 

 ライの念話にヴィヴィオが答えた。

 

『どうやら、この守護騎士達は偽者のようだ』

 

『え? そうなんですか?』

 

 ライに言われたことに今度はトーマが答える。

 

『ああ、詳しくは後で説明するが、おそらく闇の書の残滓が生み出した過去の記憶だろう。

 俺が対処する。全員そこを動くな』

 

『え? ですが、いくらライさんでもシグナムさん達を一人で相手するのはきついのでは?』

 

 ライの言ったことにアインハルトが反論する。

 

『問題ない。君達の力を疑っている訳ではないが、俺がやったほうが早く済む』

 

『分かりました。気を付けてください』

 

 リリィはライの指示に従うことにした。

 

――この時代の零冶さんか……どれほどの実力なのかな?

 

 トーマはライの強さに興味津々だった。

 

「さて、守護騎士達よ。お前達は今夢を見ている状態と同じだ」

 

「夢だと? 戯言を。我等の邪魔をすると言うなら貴様とて容赦せん」

 

 ライに言われたことにシグナムが答えた。

 

「だが、目を覚ます必要は無い。そのまま永遠に眠らせてやる」

 

 ライは腰の剣を抜いた。それに合わせて守護騎士達もそれぞれの武器を構えた……が、

 

「「「「え?」」」」 

 

 驚愕するヴィヴィオ達。何故なら傍に居た筈のライの姿は既に無く、守護騎士達の後ろに居たからだ。

 

「終わったぞ。さあ、全員行くぞ」

 

「「「「え?」」」」

 

 ライがそう言うと守護騎士達はガラス細工のように砕け散った。

 

――え? 今何が起こったの?

 

 あまりの出来事に言葉を失うヴィヴィオ。

 

――剣筋どころか、姿さえ見えませんでした。

 

 アインハルトもヴィヴィオ同様にライの姿を捉えることはできなかった。

 

――これで9歳って冗談だろ? 未来の零冶さんと全然変わらないじゃないか

 

 トーマは未来の零冶と変わらずの強さに驚愕する。

 

――零冶さんはやっぱり凄いなぁ。ちっちゃ可愛いし。こう言うのなんて言うんだっけ?

  可愛いは最強? あれ? 正義だっけ?

 

 リリィはトーマ達とは少しズレたことを考えていた。

 

「ん? 聞こえなかったのか?」

 

 ライは呆けているヴィヴィオ達に声をかける。

 

「あっ、いえ。聞こえてます」

 

「ちょっと何が起きたのか分からなくて」

 

「そうか、なら良い」

 

 ライに聞かれたヴィヴィオとアインハルトは答えた。

 

「あの、ライさん」

 

「どうした? トーマ」

 

「今、何をしたんですか?」

 

「解説したところで意味は無いと思うが?」

 

「いや気になっちゃって」

 

「ふむ……まあ良いだろう。移動しながら解説しよう」

 

「「「お願いします」」」『お願いします』

 

 四人はライに改めてお願いした。そして、五人は再び飛行魔法で移動を開始し、ライはまず、先程の偽者について説明した。その後、さっきの戦いの解説をヴィヴィオ達にし、それを聞いたヴィヴィオ達は改めてライが敵じゃなくてよかったと思った。

 

「まあ、あのシグナム達も偽者だけあって、大した実力は無かったな。本来の半分程度だろう。

 たったの5%程度で撃退できた」

 

「え? 5%? さっきの動きがですか?」

 

 ライの言葉を聞いたトーマはライに聞き返した。

 

「だが、5%も要らなかったな。俺もまだ甘い」

 

「やっぱり、ライさんは規格外だなぁ」

 

 ヴィヴィオは少し引きつった笑顔で言った。そんな会話をしていると。

 

 

ゴゴゴゴゴ!

 

 

「こ、これは!」

 

 凄まじい魔力反応と空間震動が発生し、トーマが言葉を漏らした。

 

「どうやら、向こうが動きだしたようだ」

 

「向こうって。先程ライさんが言ってた。泳がしている人達のことですか?」

 

 ライが言った事にアインハルトが聞いた。

 

「ああ、おしゃべりはここまでだ。今からそちらに向かう」

 

「わかりました」

 

 ライが真剣になって言ったため、ヴィヴィオもつられて真剣になった。

 

「これから転移する。全員、俺の傍に近寄ってくれ」

 

「わかりました」

 

 ライがそう言うとライの傍に寄るトーマ。何故かライの腕にしがみ付くヴィヴィオとアインハルト。

 

「いや、別にくっ付かなくても良いんだが?」

 

「その……転移ってあまりしたこと無いので不安で」

 

「わ、私もです」

 

 そう言って顔を赤くするヴィヴィオとアインハルト。

 

「そうか、まあ良いだろう」

 

――やった!

 

 ヴィヴィオは心の中で喜んだ。ライはキリエに付けていた飛雷神の術(ひらいしんのじゅつ)のマーキングを頭で思い浮かべ、半径50mほどの円を広げた。このマーキングはライがキリエ達の前に姿を現す前に既にキリエに付けていたものだ。

 

 更にアミタのウィルスを解除する際に触れたと時にアミタにもマーキングを付けていた。飛雷神のマーキングはどこにあるのかの位置情報も分かるようになっている。これにより、キリエやアミタの位置を常に把握し、動きがあれば直ぐに転移するつもりだった。

 

 そして、キリエに付けていたマーキングを使い、ヴィヴィオ達を連れて転移した。

 

「「「え?」」」『え?』

 

 魔力反応も無く、一瞬で目の前の光景が変わったヴィヴィオ達は思わず言葉を漏らした。そして、ヴィヴィオ達の目の前に映った光景は金髪の少女の周りに居る三人の少女達と地面に倒れている赤髪の女性とその傍にいる桃髪の女性の姿だった。

 

 

 

 

 

 時は、ライ達が魔力反応と空間震動を察知する前にさかのぼる。辺りは闇に包まれたように暗く、その中心には黒い球体が浮かんでいた。

 

「時は満ちた……桃色! 準備は良いか!」

 

 ディアーチェは両手を大きく広げ、ドヤ顔でキリエに聞いた。

 

「はぁ~い♪ 強制起動システム正常、リンクユニットフル稼働」

 

 ディアーチェに言われたキリエも軽いノリで答える。

 

「さあ蘇るぞ! 無限の力【砕け得ぬ闇】!! 我の記憶が確かなら、その姿は大いなる翼!

 名前からして戦船か、あるいは体外強化装備か」

 

「ん~、こんな感じかしら~?」

 

 ディアーチェの言った事にキリエが返し、四角い顔で金の角、体がメカメカしい、合体ロボのような模型を出した。

 

「おお! なかなかカッコイイではないか!」

 

 その模型を見たディアーチェはまんざらでもない様子だった。

 

「ねぇねぇシュテルん」

 

「何ですか? レヴィ」

 

 その様子を見ていたレヴィとシュテル。

 

「あれ、カッコイイのかな?」

 

「さぁ? 私には分かりかねます」

 

「ボクとしては普段は優しいけど仲間の死を目の当たりにして、金髪になって体から電気が

 バリバリ出て、挑発された時に『○○のことかああ!』って怒るのがカッコイイと

 思うんだけど」

 

「なるほど、私としては普段は粗暴な振る舞いをして周りから煙たがられていますが、

 雨の日に捨てられた猫に自分の傘を差してあげるのがキュンと来ます」

 

「ちょっとシュテルんが何言ってるのかボク分かんないや」

 

「それは残念です」

 

 レヴィとシュテルは我関せずと言わんばかりにディアーチェ達の行いを傍観している。

 

「そこの二人! 真面目にせぬか!」

 

「は~い、王様」

 

「畏まりました。ロード・ディアーチェ」

 

 するとディアーチェに怒られる二人。

 

「まったく……ともあれ、この偉大な力を手にする我等に負けは無い!」

 

「別にボクら何かと戦ってないよね?」

 

「まあ、雰囲気は大事ですから」

 

「ええい! 一々口を挟む出ないわ!」

 

「何だか締まらないわね~」

 

 四人は周りの雰囲気とは裏腹にほのぼのしたやり取りを展開していた。

 

「ふはははは! さあ蘇れ! そして我が手に収まれ! 忌まわしき無限連環機構、

 システムU-D! 砕け得ぬ闇よ!」

 

 ディアーチェがそう言うと、黒い球体は弾け、辺りは光に包まれた。

 

「ユニット起動……無限連環機構動作開始。システム【アンブレイカブル・ダーク】正常作動」

 

 するとその光の中から

 

「お……おおお! お?」

 

「はいっ?」

 

 光の中から出てきたものを見てディアーチェとキリエは呆ける。何故なら

 

「ちょ、ちょっと王様。システムU-Dが人型してるなんて、聞いて無いんですケド!?」

 

 そう、現れたのは金髪の長髪にウェーブの掛かったいたいけな少女だったのだ。

 

「むう、おかしい。我が記憶でも、人の姿を取っているなどとは……いや、それを言うなら、

 我々も元々人の姿などしておらなんだ訳で……」

 

 あまりの出来事にディアーチェも困惑していた。

 

「ねぇシュテルん。あれが砕け得ぬ闇なのかな?」

 

「分かりません。私も目覚めたばかりで記憶が混在しているようです。ですが、私の……

 いえ、我々の本能が告げています。あれが我々の求めていた砕け得ぬ闇だと」

 

「そっか、そうだね。ボクも何となくそうだと思うよ」

 

 シュテルとレヴィは金髪の少女を見て、そう言った。すると

 

「キリエ! 止めなさい!」

 

 アミタが現れた。

 

「アミタ……本当に邪魔ねぇ、やっぱりあの時壊しておくんだったかしら?」

 

「キリエ、今ならまだ間に合います。もう止めて帰りましょう」

 

 キリエはアミタと砕け得ぬ闇の間に割り込みアミタに向き直った。

 

「止・め・な・い♡ 折角ここまで来たんだものちゃんとエクザミアも持って帰らなくっちゃ」

 

 そう言うとキリエはヴァリアントザッパーをフェンサーモードで展開し、二刀流になった。

 

「キリエ! 博士が決めたギアーズの定め、忘れた訳じゃないでしょう!?

 『時を、運命を操ろうなどと思ってはいけない。厳然たる守護者であれ』

 だから私は守りたい……博士の教えを! 定められた運命を!」

 

 アミタは叫ぶようにキリエに言った。

 

「守れば良いでしょ! お姉ちゃんはッ! 私は出来の悪い妹だから、博士の言いつけなんか

 守らない! それで博士が悲しいまま死んじゃうより。ずっと……ずっと良いんだから!!」

 

「キリエッ!」

 

「一度決めたら、諦めずにやりとおす! 博士にもお姉ちゃんにも私はそう教わった!」

 

 二人が会話をしていると砕け得ぬ闇の背中から巨大な赤黒い魔力が噴き出した。

 

≪な!≫

 

 その魔力にその場に居た全員が驚いた。

 

「状況不安定……駆体の安全確保のため、周辺の危険因子を……」

 

 砕け得ぬ闇の目が赤く光った。

 

「排除します」

 

 砕け得ぬ闇は右手に赤黒い剣を出し、キリエに切りかかった。

 

「ッ!」

 

 背を向けていたキリエは反応が遅れ、回避が間に合わなかったが、

 

「アクセラレイター!」

 

 アミタは高速移動し、キリエを飛び掛り、庇った。

 

――間に合った。もし、ウィルスに犯されていた体なら間に合わず、私の体は真っ二つに

  なっていたでしょう。ライさんに感謝です。おかげで……

 

「お、お姉ちゃん……その足……」

 

――右足一本で済みました。

 

 アミタの右足は既に無く、その切り口から機械の体が見えていた。そこからはバチバチと電気が漏れている。

 

「空中白兵戦システムロード。出力上限、6%」

 

 砕け得ぬ闇は淡々と言葉を紡ぐ。

 

「何という重圧! 底知れない力を感じます」

 

 アミタが砕け得ぬ闇を前にしてその存在に驚愕していた。

 

「墜滅」

 

 砕け得ぬ闇は背中に赤黒い魔力の塊りである魄翼を言う二対一体の翼を発生させ、右側の翼を巨大な拳に変えて、アミタとキリエに殴り掛かった。

 

「くっ!」

 

 アミタはヴァリアントザッパーを大型剣のへヴィエッジに変化させ、砕け得ぬ闇の攻撃を受け止めた。しかし

 

「まだです」

 

 砕け得ぬ闇は残った左側の翼を鉤爪のような形に変え、アミタの右側から振り下ろした。

 

「させない!」

 

 その攻撃をキリエがヘヴィエッジに変えて受け止めた。

 

「終わりです」

 

 砕け得ぬ闇は二人が身動きできない状態になった瞬間、自分の真上に巨大な赤黒い結晶状の槍を作った。

 

「「なっ!」」

 

「ジャベリンバッシュ」

 

 放たれた槍は魄翼の拳を貫き、アミタに迫る。

 

「くっ!」

 

 アミタはヘヴィエッジで受け止める。しかし

 

 

ビシッ!

 

 

「な!」

 

 受け止めたヘヴィエッジにヒビが入り、

 

 

パリーーン!

 

 

 大剣は砕けた。そしてシステムU-Dの放った槍はキリエを巻き込み二人は地面まで吹き飛ばされた。地面に激突すると辺りには煙が立ちこめる。次第に煙は晴れ、そこにはぐったりと横たわるアミタとその傍で両腕を地面に付き、俯いているキリエが居た。

 

「くぅ、痛ったいわね~」

 

 キリエは悪態を吐きならが、辺りを見回すと

 

「お姉ちゃん!」

 

 自分の姉、アミタがぐったりと横たわっているのを見つけ、そばに駆け寄ろうとするも

 

「ッ!」

 

 キリエは自分の足が思うように動かないことに気付き、足を見た

 

「あらら、こりゃまずいわね」

 

 足があらぬ方向に曲がっていることに気付いた。そして、腕の力を使い、地面を這いつくばってアミタの傍に向かった。

 

「まだ動いてはいるわね。さっすが私のお姉ちゃん。しぶといわ」

 

 キリエは悪態をついてはいるが、内心ほっとしていた。そして上を見上げた。

 

「あれが、無限連環機構システムU-D。なるほど、化け物だわ」

 

 キリエが上を見上げ、どうするかを考えているとシステムU-Dの傍にディアーチェ達が集まった。

 

「ふはははは! 流石はU-D! 素晴らしい力ではないか!」

 

 ディアーチェは砕け得ぬ闇の戦いぶりをみて歓喜の高笑いを上げた。

 

「……ディアーチェ? ディアーチェですか?」

 

 その笑い声に気が付いた砕け得ぬ闇はディアーチェに語りける。

 

「そうとも。我が名は闇王(ディアーチェ)ぞ。いやはや、やっと巡り会えたわ。

 我等三基、うぬをずっと捜しておったのよ」

 

「シュテルや、レヴィも?」

 

 砕け得ぬ闇は自分の周りに居るシュテルとレヴィを見て言った。

 

「ここに」

 

「ボクもいるよーー!」

 

 シュテルは短く返事をし、レヴィは両手を挙げて元気に答えた。

 

「会えて嬉しい……本当は、そう言いたいです」

 

「……なんと?」

 

 砕け得ぬ闇から意外な言葉を聞き、驚愕するディアーチェ。

 

「だけど、駄目なんです……私を起動させちゃ。皆が私を制御しようとしました……だけど、

 できませんでした。だから必死で沈めました。私に繋がるシステムを破断して、

 別のシステムで上書きして」

 

 驚愕するディアーチェを他所に砕け得ぬ闇は言葉を続ける。

 

「闇の書に関わる全ての情報から私のデータを抹消して。夜天の主も管制融合騎も知り得ない、

 闇の書が抱える本当の闇……それが私なんです」

 

 砕け得ぬ闇の魄翼を先の鋭い棘のようなものに変化させ、マテリアル達を貫いた……かに見えたが、そこにマテリアル達は居なかった。

 

「「「え?〈は?〉」」」

 

 マテリアル達は自分達が見ていた光景が一瞬で変わったことに驚愕し、呆けた。

 

「そうだな。沈む事なき黒い太陽。影落とす月。ゆえに、決して砕け得ぬ闇」

 

 そして、自分達の傍から知らない男の声が聞こえてきた。

 

「……誰です?」

 

 砕け得ぬ闇が貫いたはずのディアーチェ達を抱えている仮面の男に聞いた。

 

「はじめまして、ユーリ・エーベルヴァイン。俺はライ、傭兵だ」

 

 最強の傭兵ライと古代ベルカの負の遺産ユーリは相まみえた。




没ネタコーナーです。


①闇の欠片が守護騎士達じゃなかったら(ちなみに結構長いです)
 ※ヤンデレ注意

「ん? ……全員止まれ」

 ライがアインハルト達を止めた。

「どうしました? ライさん」

 トーマがライに聞いた。

「この先、約10kmに複数の人影がいる」

「ってことは私たちと同じ未来から来た人でしょうか?」

 ヴィヴィオがライのお姫様だっこされながらライに聞いた。

「いや」

 ライはヴィヴィオの推測を否定しながら、目にオーラを集め、凝を行った。そして、オーラで視力を強化し、人影を捕捉する。

「やはりか……とりあえず接近するぞ」

 ライはヴィヴィオ達にそう言うと飛行魔法で移動を開始した。そして、補足した人影達と対峙する。その人影達とは

「ねぇライさん。その女の人は誰なのかな? かな?」

 左手に包丁を持ち、光の無い瞳でライに問い掛けるなのは。

「また、他の女を引っかけたのライ? どうして? どうして? どうして?」

 右手にハサミを持ち、光の無い瞳でライに問い掛けるフェイト。

「まったく他の雌の匂いが付いてイラつくったらないよ」

 鋭く尖った爪を出しながら光の無い瞳で言うアルフ

「やっぱり貴方には調教が必要なようね」

 両手で鞭を持ったプレシアが光の無い瞳でライに言った。

「ダメですよプレシア。まずは身動きを封じないと」

 大量の五寸釘と金槌を持って光の無い瞳で言うリニス。

「他に目移りするその目がダメなのかな? だったらこれでえぐり取らないと」

 両手にアイスピックを持ったアリシアが光の無い瞳で言った。

「ダメやでアリシアちゃん。それじゃ、ライさんの綺麗な瞳を傷つけてまう。
 これで綺麗にえぐり取らな」

 瞳に光が無いはやでが先が鋭利に尖った三又のスプーンを持って言った。

「その瞳は私に任せてね。しっかりホルマリン漬けにするから」

 両手にメスを持ったシャマルが光の無い瞳で言った。

「ねぇライ兄さん。どうして私を助けてくれなかったの? ねぇ? 答えて? ねぇ? ねぇ?
 ねぇ? ねぇ? ねぇ? ねぇ? ねぇ? ねぇ?」

 氷結魔法で作った大きな鎌を両手で持ちながら葵が光の宿っていない瞳で言った。

 その姿を見たヴィヴィオは恐怖のあまり、ライに抱きついている。アインハルトとトーマはガタガタと震え、涙目になっている。

『何これ?』

『お、おそらくマスターが助けなかったらこうなっていたであろう可能性の未来……かと』

『やだよ! こんな未来! え? 何? 何で皆ヤンデレ化してるの! 怖いわ!?』

『ヴィヴィオちゃんもまだお姫様だっこのままですから、更に彼女たちの怒りを増長させて
 いるんでしょうね』

『何故降ろしておかなかった俺!』

「と、とりあえずヴィヴィオ降りて下がってくれ」

 あまりの状況にどもってしまうライ

――あの零冶さんが動揺している!?

 ライの様子を見ていたトーマは驚愕した。

「ッ!」ブンブン

 ヴィヴィオは恐怖のあまり首を振り、ライから離れようとしない。

「チッ! ライさんが優しいからって調子に乗ってるんじゃないの? レイジングハート」

 なのはは魔力を開放した。その左手の薬指にある指輪を付けていた。

――何で闇の欠片のなのはがマジカルブースターを付けてんの!?

 ガション! ガション! ガション! ガション! ガション! ガション! ガション! ガション! ガション! ガション! ガション! ガション! ガション!

 あり得ない量のカートリッジをロードするなのは。そして、レイジングハートを上に向ける。

「待っててねライ。その女を始末するから」

「もう少しの辛抱だよ」

 そう言ってアビリティリンクで神速(カンムル)を発動させ、体が淡く発光し、髪が雷のようにギザギザになるフェイトとアリシア。

――だから何で闇の欠片がアビリティリンクを持ってんだよ!?

「行くわよリニス」

「はい、プレシア」

 そう言うとプレシアとリニスの体が淡く発光し、髪が雷のようにギザギザになるプレシアとリニス。

――何で素で神速(カンムル)を使ってんのこの二人!?

「私たちも行くで? シャマル」

「ええ、はやてちゃん」

ガション! ガション! ガション!

 そう言ってベルセリオスとクレメンテを構え、カートリッジをロードするはやてとシャマル。

――いや、予想は付いていたけど納得いかねぇ!?

「さあ行くよライ」

 アルフは爪を立てて、ライにすごんだ。

――アルフだけ普通すぎて何故か和んだ。俺の中のヤンデレがゲシュタルト崩壊しているらしい。

「さあ~ライ兄さん。い~っしょにあ~そびましょ~? キャハ! キャハハハハハハハハ!」

 いつの間にかアブソリュート・フォース・ドレスアップで白銀のドレスを纏い、氷の鎌を構えた葵が狂ったように笑い出した。

――何気に葵が一番怖ええええええ!

 ライは余りの状況に一瞬、硬直してしまった。

――ってまずい! 神速レベル3!

 ライが自分の認識速度を超強化して自分以外の時間を止めた。そして最初に目に映った光景は自分の目にアイスピックを突き刺そうとしているアリシアの姿とハサミを自分が抱きかかえているヴィヴィオの喉に突き刺そうとしているフェイトの姿だった。

――あっぶねぇ! 後少し遅かったらヴィヴィオがやられてたよ。

 ライは自分のことは心配していなかった。何故ならライの耐久力なら例え目であってもアイスピック程度が刺さるとは思わないからだ。

――流石神速(カンムル)だ。一瞬気を取られたからと言ってここまで接近されるとは

 そして次に目に入ってきた光景は自分の周りをプレシアの鞭が螺旋状に囲い俺を捕らえようとしている光景と自分の足に五寸釘を突き刺そうとしているリニスの姿だった。

――とりあえず、この状況はまずい。

 ライは瞬歩でアインハルトとトーマの傍に移動した。そこで目に映った光景はまるで太陽かと見紛うほど巨大な魔力の塊を作ったなのはの姿だった。

――でかい! でかいよ! 何だそれ! 超元気玉か!

 ライははやてとシャマルが何をしているかを見ると

――やっぱり秘奥義の準備してるし

 シャマルがクレメンテから雷を空に放とうとし、リバースクルセイダーの準備をしている。はやては精霊召喚の準備をしていた。そしてアルフは動き出そうとして少し前かがみになったところで止まっている。

――何だかアルフが普通で和むな~

 ライはアルフを見て癒されていた。やはりライの感覚が狂って来ているようだ。

――さて、あまり時間も無いし、早速対処するか

 ライはヴィヴィオを抱きかかえたまま、アインハルトとトーマを周で包み、円を広げた。

――飛雷神の陣(ひらいしんのじん)

 ヴィヴィオ達を連れ、飛雷神の陣(ひらいしんのじん)でその場から離脱したライは足元に魔法陣を展開し、足場を作った。そこにヴィヴィオを降ろした。そして、円を解除した。

――よし、やるか!

 ライは双竜紋(そうりゅうもん)を発動し、両手を組んで頭の上に掲げた。

「くたばれ! 全開! 竜闘気砲魔法(ドルオーラ)!」

 ライは全力の竜闘気砲魔法ドルオーラをなのは達の闇の欠片に放った。その巨大砲撃は放たれた瞬間、時間が止まったように固まった。

――神速レベル3解除

 ライが神速を解いたため、時間が動き出した。そして

≪ギャアアアア!≫

「「「え?」」」『え?』

 ライの砲撃魔法はなのは達の闇の欠片を葬り去った。

『ああ、怖かった』

『私はマスターの方が怖いです』



はい、没ですね。分かります。
まあ、これは没ネタと言うより、本編の内容を書いているときに
思いついただけの蛇足ネタですけどね。

それにこれが可能性の未来なら、本編でもあり得るということに……
あれ? 葵は既になったことがある気が……未来漫画でだけど
やっぱり没だ(確信)

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