原作を放って置くとバッドエンドになるんですが、どうしたら良いですか?   作:月の光

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今回の更新は比較的早いほうだったかな?

ついにGOD編に入りましたね。
長かったな、空白期2……まあ、蛇足的なことが多かったからしょうがない。

GOD編は作者が未プレイなので、おかしなところがあると思います。
また、Vividもまだ見て無いので、ヴィヴィオやアインハルトの設定
などおかしなところがあるかもしれませんので、
おかしい点はご指摘していただけると非情に助かります。



47_ミスト『完全に厨二病ですね』零冶『痛い子だな……』

 零冶は未来から訪れる自分の正体を知っているヴィヴィオ達の口止めをするため、第101管理外世界ランジールに転移した。

 

「さて、早速辺りを探索するとするか。『ミスト』」

 

 零冶はミストに念話で指示を出した。

 

『了解。周囲の魔力を探索します』

 

『俺は円で周囲を探索する』

 

 零冶は半径10kmまで円を広げ、周囲を探索し始めた。現在の零冶の総オーラ量は強者の慈悲(リミッターオン)のレアスキルでSランクまで下げてる。いくらSランクのオーラ量があろうとこれほどの消費オーラでは三十分と持たずにオーラが枯渇する。

 

 しかし、零冶には高速自動回復(リジェネレーション)によるオーラの自動回復があるため、この半径10kmの円の消費速度と回復速度が均一になる。つまり零冶が常時広げておける最大サイズは半径10kmとなる。

 

『相変わらずとんでもない範囲ですね』

 

『オーラ総量Sランクでこれだからな』

 

『EXならどれくらいでしたっけ?』

 

『地球全体が覆えるくらいだったな』

 

『完全にバグってますね』

 

『完全にやりすぎたな。修行』

 

 零冶とミストが念話で会話をしながら周囲の探索をしていると

 

 

ゴゴゴゴゴ

 

 

 異常な空間転移反応を探知した。

 

『マスター』

 

『ああ、来たな』

 

 それにより、何者かがこの時代にやって来たことを理解した。

 

『これなら別に探索要らなかったのでは?』

 

『おいおい、既に来ていた後だったらどうすんだ』

 

『そういえばそうですね』

 

『そういうことだ。確認しに行くぞ』

 

『了解』

 

 零冶は神の不在証明(パーフェクトプラン)で姿を消し、歪みの元へと向かった。

 

 

 

 

 

 

「キリエ! やっと追いついた!」

 

 そう言ったのは長い赤髪を一つの三つ編みにし、上下共青を基調にした服を纏った女性、アミティエ・フローリアン。

 

「アミタってばホントにもう~、追ってこないでって私があんなに言ったのに……。

 私のお姉ちゃんでば、わりと本気でお馬鹿さんなの?」

 

 アミティエに声を掛けられ、呆れた顔で答える女性。長い桃色の髪の毛先が軽くウェーブが掛かったヘヤスタイルに赤を基調とした服を纏ったキリエ・フローリアン。

 

「馬鹿はどっち? 妹が馬鹿な事をしようとしているのにそれを止めない姉はいません!」

 

「ちょっとくらい早く生まれたってだけで、妹の生き方を曲げる権利なんてないも~ん。

 とにかく私はこの時代、この場所でやることがあるの……こっちの世界の人にもなるべく

 迷惑をかけないように頑張る。いいから私の邪魔をしないで」

 

「させません! 縄で縛ってお尻をつねり上げてでも……エルトリアに……私たちの博士が

 待っているあの家に連れて帰ります!」

 

 アミティエは右手に変幻自在の武器、ヴァリアントザッパーを片手剣のフェンサーモードで出現させた。

 

「ま、力付くは望むところ♡」

 

 アミティエと同じようにキリエもヴァリアントザッパーを左手にフェンサーモード、右手に短銃のザッパーモードで出現させた。

 

「やってみたら、アミタ? お姉ちゃんは妹に勝てないって事、教えてあげる!」

 

 アミティエとキリエはを持っている武器で構えた。

 

『STAND BY READY. PHASE 1. ENGAGE.』

 

『何言ってんの? ミスト』

 

『何か言わないといけない気がしたんです』

 

『ならしょうがない』

 

 キリエとアミタは互いのフェンサーで切りかかった。

 

 

ガキン!

 

 

 そして互いのフェンサーが交錯する。キリエが右手に持っていたザッパーが一瞬でフェンサーに変わり、二刀流にスタイルを変えた。

 

「スピンドライブ!」

 

 そして両腕を上下に伸ばし、縦に回転させて切りかかった。

 

「何の!」

 

 アミタはキリエの攻撃を後ろに下がることで避わした。キリエの攻撃が終わった瞬間アミタは急前進し

 

「ライザー!」

 

 横に一回転し、威力を上げた一撃を放った。

 

「甘いわ!」

 

 キリエは両手のフェンサーをクロスさせ、アミタの攻撃を受け止めた。

 

「お返しよ!」

 

 キリエは左手のフェンサーでアミタのフェンサーを弾いた。

 

「しまっ!」

 

 アミタもフェンサーを手放すことはなかったが、体制が崩れ、正面ががら空きになった。

 

「ライザー!」

 

 すかさずキリエはアミタに両手のフェンサーで下から振る上げるように切りかかった。

 

「ああっ!」

 

 攻撃を受けたアミタは上に吹き飛ばされた。

 

「くぅ、まだですよ!」

 

 アミタはフェンサーをザッパーモードの二丁拳銃に替えた。

 

「バルカンレイド!」

 

 アミタはザッパーから青色の光弾を複数放った。

 

「おっと~、そんなのあたると思った~?」

 

 キリエもフェンサーをザッパーモードの二丁拳銃に替えた。

 

「ラピッドトリガー!」

 

 キリエもザッパーから桃色の光弾を複数放った。そこから二人の銃撃戦を繰り広げた。

 

『流石。姉妹だけあって実力は拮抗してますね』

 

『ああ、二人とも中々の実力だ』

 

『銃撃戦に変わってからは僅かにアミタちゃんの方が押してますね』

 

『ああ、伊達に早く生まれた訳じゃないってことだ。だが』

 

『ええ』

 

『この勝負。キリエ・フローリアンの勝ちだ』

 

「「ファイネストカノン!」」

 

 二人は先ほどの光弾より大きな光弾を同時に放った。

 

 

ドッカーーン!

 

 

 互いの砲撃弾がぶつかり、煙が立ち込める。

 

「ロックオン!」

 

「な!」

 

 アミタはバインドを発動し、キリエを拘束した。

 

「アクセラレイター!」

 

 キリエをバインドで拘束した瞬間、アミタはキリエの目の前に高速で移動した。

 

『なるほど、拘束と高速がかかっている訳ですね』

 

『うん、今良い所だから黙ろうか?』

 

『マスターにSM趣味が……』

 

『そういう意味じゃねーよ』

 

 アミタはキリエの首にフェンサーを突きつけた。

 

「はぁ、はぁ。どう! 反省した?」

 

「うぅ……やられたぁ~」

 

『はぁはぁ……どうです? 興奮しました?』

 

『まだその話ひっぱんのかよ』

 

「……なんだが、ムカムカしてきました。何ででしょう?」

 

「何言ってんの? アミタ」

 

「いえ、大事な場面なのにおちょくられてる気がして……」

 

「何のこと? 頭大丈夫~」

 

 アミタは理由は分からないが、何故だか不快な気持ちになった。その様子を見たキリエは本気でアミタの頭を心配した。

 

「ごほん! 気を取り直して。さあ! 帰るわよ。キリエ」

 

「……仕方ないわねぇ」

 

「良かった分かってくれて」

 

 キリエの態度を見て安心するアミタ。しかし

 

「な~んてね。アミタってばやっぱりお馬鹿さん♪」

 

 キリエは軽くウインクをした。

 

「まさか、私が本気で戦ったとか思ってる? ていうか、気付くことすらできなかったでしょ?」

 

「何を言って……は!?」

 

 するとアミタはキリエに突き付けていた片手剣を下げ、両手をだらんと下げた。

 

「こ……これは、一体?」

 

「あはは~ん♪ 効いてきた? 戦闘中にこっそり撃ち込んだ特製のウィルス(バレット)

 動けないでしょ~?」

 

「なん……ですって?」

 

 アミタはキリエの言葉に驚愕した。そしてキリエはバインドから抜け出した。

 

「イエ~イ! (ケ~)(ビ~)(ブイ)♡ キリエ・ビューティフル・ビクトリ~♡

 ま、死ぬことは無いから安心して。あ~んなに止めたのにそれを無視して私を追ってくる

 ような馬鹿なおねぇちゃん♪ いっそこの場で本当にぶっ壊してもいいんだけど……」

 

「やれるものなら……」

 

 アミタは苦い顔をし、キリエを見つめた。

 

「や・ら・な・い♡ 私があなたを傷つけたりしたら、博士はきっと悲しむもの」

 

 キリエは少し暗い顔をし俯いた。

 

「なら、今取っている行動ならその博士とやらは喜ぶのかな?」

 

「「え!?」」

 

 ライは突然二人の前に姿を現し、会話に割り込んだ。

 

「誰!」

 

「はじめまして、俺はライ。傭兵をやっております。以後お見知り置きを」

 

 ライは二人に騎士のように礼をし、自己紹介した。

 

「あら? ご丁寧にど~も。悪いけど願い下げよ」

 

「それは残念」

 

 キリエはライに軽いノリで返したが、

 

――話しかけられるまで気付かなかった。私やアミタのセンサーにも引っ掛からないなんて。

  こいつ、やばいわ。

 

 表では余裕のあるフリをしつつ、心の中では最大限の警戒をしていた。

 

「あ、あなたは……一体」

 

「お姉ちゃんは本当にお馬鹿なの? ライって名乗ったでしょ?」

 

「そう言う意味じゃありません!」

 

「確かに。この状況でその質問は無いな」

 

「あなたまで!」

 

 二人に弄られ顔を少し赤くするアミタ。

 

「さて、先ほどの質問に答えてもらいたいが?」

 

「あら~、何だったかしら~」

 

「つまりお前も馬鹿だったと。いやボケか? その若さで大変だな」

 

「違うわよ! 覚えてないんじゃなくて、フリ! フリに決まってるでしょ!」

 

「それ言ったら意味が無いんじゃないか?」

 

「あっ……」

 

 ライに指摘され顔を少し赤くするキリエ。

 

「良かった! キリエもこっち側ですね!」

 

「お姉ちゃんと一緒にしないで!」

 

 アミタは嬉々とした顔、キリエは怒った顔なり、言い合いになった。

 

『本当に人間みたいなアンドロイドだな』

 

『そうですね。微笑ましいです』

 

『まあ、ミストも大概だけどな』

 

『人間になりた~い』

 

『デバイス人間ブラックミスト。はじまります』

 

『開幕ブッパで終わらせます♪』

 

『終わりの始まりってか』

 

『上手い!』

 

「「はぁ、はぁ」」

 

「もう漫才は良いのか?」

 

 誰のせいだ! っと二人は思ったがぐっとこらえた。

 

「まぁ良いわ。どちらにせよ、答える気なんて無いもの」

 

「そうか、なら」

 

「ッ!」

 

 ライがそう言うとキリエはヴァリアントザッパーをフェンサーとザッパーに替え、構えた。

 

「さっさと行くと良い」

 

「「は?」」

 

 ライから言われた言葉に呆然となるアミタとキリエ。

 

「聞こえなかったのか? 行って良いと言ったんだ」

 

「どう言うつもり?」

 

 ライの考えが読めないキリエは疑いの目でライを見た。

 

「君に答える気が無い……なら、事情の知っているこちらの女性から話を聞く。それだけだが?

 別に君からで無くとも情報を得ることはできる。だから」

 

 ライは言葉一度切り、口角を少し上げ、

 

「泳がせてやるから、存分に泳ぐと良い」

 

 そう言い放った。

 

「……」

 

 キリエはライの様子に異様な寒気を感じた。まるで全てを見透かされているかのようで。

 

「安心しろ。後ろから不意打ちなどしない」

 

「……後悔しても知らないから」

 

「どんな事態になろうとも、全力を尽くす。そこに後悔など微塵も無い」

 

「……」

 

 キリエはライの言葉に返すことなくその場で振り返った。

 

「キリエ! 待ちなさい!」

 

「バイバイ、アミタ。多分、もう会わないわ」

 

 キリエは猛スピードでその場から離脱した。

 

「キリエ……追わなくちゃ……」

 

「その体でか?」

 

「当然です。私はお姉ちゃんですから。キリエを止めないと……」

 

 ライの問いに答え、キリエを追おうとするアミタ。

 

「まずは治療が先だろう。撃ち込まれたのは、身体機能阻害のウィルス(バレット)だな?」

 

「そうですが、何故それを?」

 

「最初から見てたからな」

 

「私とキリエが戦っているところを見ていたってことですか?」

 

 アミタがライに質問する。

 

「【やっと追いついた】の辺りからだ」

 

「そ、そんなところから! 全然気付きませんでした……」

 

「そんなことより、どうすれば治る?」

 

「そ、そうでした。AC93系の坑ウィルス薬か治癒術で治ります」

 

「そうか、なら」

 

 ライは右手でアミタにそっと触れ、

 

「すべての呪縛はこの名の元に、無と消えよ。リカバー!」

 

 治癒魔法を発動させた。そしてアミタは光に包まれた。

 

「す、凄い……一瞬でウィルスが浄化されていく」

 

「これでいいだろう」

 

 ライはアミタの治癒を終えた。

 

「ありがとうございます」

 

 アミタはライに礼を言うと振り返り、その場を移動しようとした。

 

「どこへ行く?」

 

「もちろんキリエを止めに」

 

「その前に事情を教えてもらいたいんだが?」

 

「すみません、私はキリエを止めないと行けないんです。わりと緊急に、今すぐにでも!

 ですから、行かせて下さい!」

 

 アミタは焦りながら答える。

 

「それはそちらの事情。俺には関係ないことだ。俺も情報が欲しいんだが?」

 

「お願いします! 事態は急を要するんです! 私の妹が大変な事をしでかすかも

 しれないです!」

 

 アミタはそう言って、ヴァリアントザッパーを両手にザッパーモードで出現させ、ライに向けた。

 

――妹のため……か。気持ちは分かるが、銃を向けんな。

 

「分かった」

 

「分かっていただけましたか!」

 

 アミタはライの言葉を聞き、銃を下ろす。

 

「こちらで勝手に想像する」

 

「は?」

 

 ライの言葉に唖然となるアミタ

 

「まず、先程の桃髪……キリエだったな。彼女の言葉、この時代、この場所でと言っていた。

 この時代という事は君達は過去。あるいは未来から来たという事だ」

 

 ライは唖然となっているアミタを他所に語り出した。

 

「そしてこの場所。この星は人は愚か、生物すらまともにいない。まして古代の遺産や

 遺跡などもない。だが、この星は二ヶ月前に闇の書を修復するために使った星だ。

 つまり、彼女は闇の書に関わる何かを求めている可能性が高い」

 

「……」

 

 アミタはライの言葉を聞き、目を点にした。

 

「闇の書は過去から既に存在するものだ。にもかかわらずこの時代に限定するとしたら過去から

 来たというのはまず無いだろう。ゆえに君達は未来から来た可能性が非常に高い。

 加えて、先程から聞こえる微小のモーター音。君達は人間ではなく機械人だろう。

 これほど精密且つ、人間らしい機械人であればやはり未来から来たとするのが妥当だな」

 

「たったそれだけの情報でここまで……」

 

「更に君の言っていたエルトリアという言葉とそのニュアンスからおそらく君達の住む星であり、

 その星が衰退している。それを食い止めるために彼女は闇の書に関わる何かを求めていると

 推測されるが、いかがかな?」

 

「……ほぼ全て正解です」

 

「そうか、なら君も行って良い」

 

「本当にあなたは一体……」

 

「俺はライ。ただの……傭兵さ」

 

 そう言い残し、ライはその場から姿を消した。

 

「消えた……私のセンサーにも反応無し……。確か闇の書救済作戦はこの星で行ったと

 記録にはあった。しかし彼の事は書かれていなかった。一体何者なの?」

 

 アミタは姿を消したライのことを考察していると

 

 

ゴゴゴゴゴ

 

 

 遠くで空間震動と魔力集束が始まった。

 

 

「これは……考えるのは後です。今はキリエを止めないと!」

 

 アミタはその場から高速で移動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 ライがアミタのところから姿を消した場所から遥か離れた場所で空間震動と魔力集束が起きた。

 

 

ゴゴゴゴゴ

 

 

「ふふふ……ははは……はーーっはっはっは! 黒天に座す闇統べる王! 復ッ! 活ッッ!」

 

 銀色の髪に毛先が黒く染まったミドルヘヤー、黒を基調としたバリアジャケットに背中に二対の黒い翼を生やした少女が出現した。

 

「みなぎるぞパワァー! あふれるぞ魔力ッ! 震えるほど暗黒ゥゥッッ!!」

 

『うわぁ……完全に厨二病ですね』

 

『痛い子だな……』

 

「うっさいわ! 誰だ! 我を愚弄するのは!」

 

 アミタの居た場所から遥かに離れた場所だったにも関わらず、既にライはその場に居た。

 

『流石ははやてをベースにしただけあって、中々のツッコミ力だ』

 

『侮れませんね』

 

「何を言っているのです? ロード・ディアーチェ?」

 

「そうだよ。王様」

 

「む? 貴様らは(シュテル)(レヴィ)か?」

 

「え? ああ、そういえば私はそんな名でしたね」

 

「そうだっけ? ボクはあまり覚えてないけど。でもいいね、その名前カッコイイ♪」

 

「どうでも良いわそんなこと。それより貴様らその姿は何だ?」

 

「この姿でお目に掛かるのはお初になりますね。実体化するに辺り参考した素体を元にしました」

 

「ボクも何か適当に選んだらこうなった」

 

「まったく、素体は選べというのだ」

 

「そう言うディアーチェは何故そのお姿なのですか?」

 

 シュテルはディアーチェに聞いた。

 

「む? ふっふっふ~見て分からぬか? この気品あふれるカリスマ性、王の器として

 相応しいであろう?」

 

 ディアーチェは自信満々で答えた。

 

「そ~かな~、ボクにはよく分かんないや」

 

 レヴィは腕を組み、首を傾げる。

 

「ディアーチェ、こちらに鏡があります」

 

 シュテルはどこから取り出したから分からないが、手鏡をディアーチェに渡した。

 

「おお、気が利くでは無いか。流石は理のマテリアルだ」

 

「えっへん」

 

 シュテルは無表情で胸を張った。そしてシュテルから手鏡を受け取ったディアーチェは鏡を覗き込んだ。

 

「な、何だ! この顔はあああ!!」

 

 鏡を見たディアーチェは手を震わせ、叫んだ

 

「何って王様の顔?」

 

「我が選んだ素体とは違うでは無いか! 何だこの狸顔は! この残念な胸は! 我の威厳が

 なくなってしまうでは無いか!」

 

 どこか遠くで『残念ゆうな!』とツッコミがあったと言う。

 

「やはり、何かしらの不都合が起きたのでしょう」

 

「ぐぬぬぬ、ええい。この際姿などどうでも良いわ! 我等の目的、砕け得ぬ闇を手に入れ、

 この世界を混沌に染めてやるわ! はーーはっはっは!」

 

 辺りにディアーチェの笑いが響いた。

 

「でもどこにあるんだろう?」

 

「手当たり次第に探すしかありませんね」

 

「だが、我等マテリアル三基揃えば敵は居らぬわ。迅速に且つ確実行こうでは無いか」

 

「「分かりました〈りょ~かい〉」」

 

 三人のマテリアル達がその場を移動しようとした時

 

「ちょ~っと待ってくれるかしら?」

 

 キリエが現れ、三人に声を掛けた。

 

「む? 誰だ貴様」

 

「誰このピンクのお姉さん?」

 

「分かりません」

 

「呼び止めちゃってごめんなさいね~。ちょっとだけ、私のお話聞いてみない?」

 

 現れたキリエに対し、警戒するマテリアル達。

 

「聞かぬ。失せよ。下郎と話す口は持たぬのだ」

 

 ディアーチェはキリエの話を聞かず一蹴した。

 

「それがシステムU-D……【砕け得ぬ闇】の話だとしても?」

 

「砕け得ぬ闇……」

 

「それって、ボクらが探してる大いなる力……」

 

 キリエの口から自分達の求めるものの言葉が出たことでシュテル達は言葉を漏らす。

 

「そう♡ やっぱり、あなた達もまだ見つけてないのね?」

 

「え、キミ知ってるの? 砕け得ぬ闇がどこにあるか!」

 

「よさぬかレヴィ。こ奴は得体が知れぬ」

 

 キリエの言葉に興味心身のレヴィを諌めるディアーチェ。

 

「あら~ん♡ そんなこと言わないで♪」

 

 そんなディアーチェを前におちゃらけて答えるキリエ。

 

「得体が知れないのは同感ですが、ディアーチェ。話だけは聞きましょう。

 聞くだけならタダです」

 

「そうだよ王様、そうしようよ」

 

 シュテルとレヴィがディアーチェに進言する。

 

「ふん。臣下の声を聞くのも王の務めか。よかろう、話せ」

 

「ここじゃ邪魔が入りそうで♪」

 

『臣下の声を聞くちゃんと聞くか。優しい王だな』

 

『そうですね。厨二病によくある設定です』

 

『ああ、悪ぶりたいお年頃ってやつか』

 

『まあ、その内恋をするのでは無いでしょうか? 眼帯して』

 

『バニッシュメント・ディス・ワールド!』

 

「……」

 

「どうしたの? 王様」

 

「また我を愚弄している不届きものが居る気がしてな」

 

「ここには私達しか居ませんが?」

 

「そんな事分かっておるわ。まあ良い。おい桃色。場所を変えるぞ」

 

 ディアーチェがそう言うと四人は移動を開始した。

 

『ミスト、ここまでは原作通りか?』

 

『概ねこの通りです。本来ならここにはやてちゃんとリインフォース。アミタちゃんが

 居ましたが』

 

『そこはしょうがないだろう。大筋が変わっていなければ問題ない』

 

『了解です。それとそろそろ未来からヴィヴィオちゃん達が来ますよ』

 

『よし、ここが俺にとっての正念場だ』

 

『はい、行きましょう』

 

 零冶も姿を消したまま、その場を後にした。しばらくしてアミタがここに来て何も無いことに嘆いたと言う。

 

 

 

 

 

 

 

 ライはマテリアル達が出現した場所から離れ、神の不在証明(パーフェクトプラン)を解き、姿を現した。

 

「さて、ミスト。そろそろクロノに連絡をしよう」

 

『了解しました。ではアースラに連絡を取ります』

 

「頼んだ」

 

 ライに言われたミストはアースラに連絡を取り始めた。

 

『……マスター、繋がりました』

 

 ミストに言われたライは小さく頷き、話し出した。

 

「こちらはライだ。アースラ聞こえるか?」

 

『こちらはクロノです。お久しぶりです。ライ』

 

「ああ、久しぶりだな」

 

『どうかしましたか?』

 

「ああ、実はな」

 

 ライはクロノに状況を説明した。

 

『ランジールでそんな事が』

 

「ああ、胸騒ぎがしてな。見張っていたんだ。俺でも詳しい状況は分かっていない。

 そこでアースラに救援を要請したい」

 

『分かりました。闇の書が関わっているかも知れない以上、我々の管轄です。直ちにそちらに

 向かいます』

 

「頼んだ。それともし出来るなら、なのは達にも救援を要請してくれ」

 

『それほどの事態になりそうですか?』

 

「念のためだ。無理に協力させなくて良いぞ」

 

『分かりました。なのは達に救援要請した後、直ちにそちらに向かいます』

 

「ああ、よろしく頼む」

 

『了解!』

 

 クロノがそう言うと通信が切れた。それとほぼ同時に

 

 

ゴゴゴゴゴ

 

 

 離れた場所で転送反応が現れた。

 

「普通の転送じゃないな。時空の歪みがある。おそらくこれだな」

 

『方向はここから三時の方向です』

 

「了解だ」

 

 ライは神の不在証明(パーフェクトプラン)で姿を消した後、三時の方向に光並の速度で円を伸ばし、飛雷神の陣(ひらいしんのじん)で移動した。これがキリエよりも早く、マテリアル達の出現した場所にライが先回りした方法である。

 

 ライの熟練された円は光の速度に等しい速さで広げる事が可能なため、この円の中を自由に転移できる飛雷神の陣(ひらいしんのじん)により、一瞬で移動することが可能となる。転移後は円を解除し、再び同じように円を伸ばすことを繰り返し、転移を繰り返すことで光の速度に近い速さで移動することが可能となる。

 

『この辺だな』

 

『やはり速いですね。この連続転移』

 

『そうだな。波風ミナト風に言うと飛雷神(ひらいしん)光連疾風陣零式(こうれんしっぷうじんぜろしき)と言ったところか』

 

『マスターまで厨二発言しないで下さい』

 

『ああ、厨二病は一人で良いからな』

 

 どこか遠くで【いい加減にせぬか!】とツッコミを入れた王様が居たとか、居ないとか。ライがしばらくその場で待っていると

 

「え……えええーーーーーっ!?」

 

「ここは……上空!?」

 

 金髪のロングストレートで右目が緑、左目が赤のオッドアイの少女、高町ヴィヴィオと碧銀の髪のツインテールで右目が紫、左目が青のオッドアイの少女、アインハルト・ストラトスが現れた。

 

「あわわ! クリス、浮遊制御! 私とアインハルトさんの落下防止ーー!」

 

[!]ビシッ!

 

 ヴィヴィオが自分の補助制御型デバイスのうさぎVerで名称セイクリッド・ハート。愛称クリスが右手を額に当て、敬礼した。

 

「ティオ、クリスさんの手伝いを!」

 

[にゃっ!]

 

 次にアインハルトの補助制御型デバイスの豹Verで名称アスティオン。愛称ティオが鳴き、クリスを補助した。

 

「と、止まった……よかった」

 

 ヴィヴィオとアインハルトはデバイスの浮遊制御により、空中で止まった。

 

「これは一体、どういうことでしょう?」

 

「わ、わからないです……」

 

 二人は自分達が何故、こんなところの空中で居るのかを考える。

 

「状況を整理しましょう……私とヴィヴィオさんは、ついさっき学校が終わって」

 

「リオやコロナと一旦別れて、それでいつもの練習場に行こうとして」

 

「突然頭上が光ったと思ったら」

 

「いきなりここに飛ばされて」

 

「今、空の上で。なんとかフワフワ浮いていると……」

 

 アインハルトとヴィヴィオは交互に話し、自分達に何が起きたのか整理している。

 

「あああ~! 整理しても、サッパリなんだか分からな~い!!」

 

「お、落ち着きましょう。まずはここがどこなのかです。飛ばされた時はまだ午後の

 浅い時間でしたが……」

 

「えっと、昼……なのかな? でも周りに何もないです」

 

「ミッド中央区の風景ではないです……別世界でしょうか?」

 

 二人は上空から下を見回すが、

 

「何もありませんね。辺り一面荒野です」

 

 ヴィヴィオが言った。

 

「困りましたね。人が居れば良いのですが……一先ず、地面に降りましょう」

 

「そうですね」

 

 ヴィヴィオはアインハルトの提案に乗り、地面に降りようとしたその時

 

「すまない、少し良いかな?」

 

 ライは姿を現し、二人に声を掛けた。

 

「「誰!〈誰です〉!」」

 

 二人は声の主を見た。すると

 

「あっ! 零冶さんだ!」

 

 ヴィヴィオがライを見て名前を呼んだ。

 

「よかった~零冶さんも飛ばされてきたんですね」

 

 ヴィヴィオは突然姿を現した仮面の男ライに浮遊制御で近づいた。

 

「よかった。零冶さんが居てくれれば心強いです」

 

 ヴィヴィオに続き、アインハルトもライに近づいた。

 

「君達……何故俺の正体を知っている? 俺とは初対面の筈だ」

 

「「え?」」

 

 ライは二人に二人に言うと、二人は近付くのを止め、停止した。

 

「え? 何故って零冶さんが教えてくれたんじゃないですか? 忘れちゃいました?」

 

「私もあなたに助けてもらった時に教えて頂きました」

 

『どうやら、俺から正体を明かしたらしいな』

 

『そのようですね』

 

『一体何が有ったのやら』

 

『それは未来のお楽しみと言う事で』

 

 ライは右手を軽く顎に当て、考えるフリをする。

 

「君達、今が新暦何年か分かるかい?」

 

「今って、新暦79年ですよね?」

 

 ヴィヴィオはアインハルトに確認する。

 

「ええ、そうです」

 

「なるほどな」

 

 ヴィヴィオ達の答えを聞き、納得をしたフリをするライ。

 

「落ち着いて聞いて欲しい。今は新暦66年。そして君達は未来からこの時代に来たという事だ」

 

「「え? ……ええええええ!?」」

 

 ライから話しを聞き、大声を上げるヴィヴィオとアインハルト。

 

「そ、そんな。ありえません。タイムトラベルなんて」

 

「別にありえないことじゃないさ。現に俺は過去に行くレアスキルを持っている。不思議なこと

 じゃないさ」

 

 アインハルトの言葉に答えるライ

 

「ええええ! 零冶さん、過去に行けるの!」

 

「ああ、時間制限はあるけどね」

 

「あ、あはは。流石零冶さん。いつもながら規格外です」

 

 ヴィヴィオの質問に答えたライに呆れ気味にアインハルトは答えた。

 

「そうか。未来の俺は正体を明かしているのか……」

 

「(あれ? これってもしかしてまずくない)」

 

「(ええ、そうですね。未来が変わってしまい、最悪零冶さんに会わないなんてことも)」

 

「(ええ!? そんなのやだよ! 私の未来の旦那様が!)」

 

「(お、落ち着いてください。ヴィヴィオさん)」

 

「ん? ああ、別にこのことを知ったからと言って未来を変えるつもりは無いから安心して。

 えっと」

 

「あっ! 私、高町ヴィヴィオです!」

 

「高町? なのはの娘なのか?」

 

「あっ! えっと~」

 

 ヴィヴィオは自分の迂闊さに言いよどむ。

 

「ふむ、それじゃヴィヴィオって呼ぶよ。君は?」

 

「私はアインハルト・ストラトスです」

 

「アインハルトだね。分かった。それじゃ俺も『ミスト』」

 

『了解』

 

 ライはミストに指示を出し、バリアジャケットと変身魔法を解いた。

 

「はじめまして、月無 零冶です」

 

 零冶は自己紹介した。

 

「(うわぁ~子供零冶さんだ。可愛い~)」

 

「(ええ、目はパッチリしていて女の子をのようです)」

 

 二人は零冶の姿に見て感想を小声で言った。

 

「二人は未来から来たみたいだけど、いくつなのかな? アインハルトさんは僕より、

 年上って気がするけど」

 

「あっ、私は10歳です」

 

「私は14になります」

 

「そっか、僕はまだ9歳だから僕より年上だね。よろしく」

 

 零冶は満面の笑顔で二人に手を出した。

 

「(ふわぁ~あの笑顔は反則だよぉ)」

 

「(た、確かに思わず見惚れてしまいました)」

 

 二人は顔を赤くして俯いた。

 

「二人とも大丈夫ですか?」

 

 そんな二人を他所に首を傾げて二人の顔を覗きこんだ。

 

「(かかか! 可愛いよ! お持ち帰りしたい!)」

 

「(だ、駄目ですよ! ヴィヴィオさん! これは私が持って帰ります!)」

 

『二人ともどうしたんだ?』

 

『まさか、マスターがここまですけこましだったとは思いませんでした』

 

『何言ってんの? ミスト』

 

「本当に大丈夫? 顔も赤いですし」

 

「だ、大丈夫です! はい!」

 

「私も!」

 

 改めて零冶に聞かれた二人は顔を赤くして答えた。

 

「申し訳ないけど、二人の会話は聞かせてもらったから大体の状況は分かっている。

 原因は二人とは別に未来から来た二人組みが居たんだ。おそらくその時に時空に歪みが

 出来て、それに巻き込まれてしまったんだと思う」

 

「そうだったんですか」

 

 零冶の答えに答えるアインハルト。

 

「帰れるんでしょうか……」

 

 ヴィヴィオは不安そうな顔で俯いた。

 

「その二人の一人、キリエさんはここで目的のもの未来に持って帰るつもりみたいだから、

 未来に帰ることはできるはずだよ。それにもう一人のアミタさんは比較的常識のある

 人みたいだから、事情を話せば無下にはされないと思う」

 

「そうですか」

 

 零冶の言葉を聞き、少し笑顔になるヴィヴィオ。

 

「それでも駄目なときは。僕が責任を持って何とかしてあげる。この命に代えても」

 

 零冶がそう言い、笑顔を作った。

 

「「はい……」」ぽ~

 

 二人は顔を赤くして呆けていた。

 

「(やっぱり、零冶さんはカッコイイな~)」

 

「(ええ、この時代でも零冶さんは零冶さんなんですね)」

 

「今、アースラに救援を要請しているから僕以外の現代人が来る。僕の名前は伏せてね?

 少なくとも今は正体を明かすつもりは無いから、もし、ばれると深刻なタイムパラドックスを

 引き起こしかねないから」

 

「「分かりました」」

 

「それとここからは一緒に行動しよう。二人も訳の分からない場所に来て不安でしょ?」

 

「そうですね。不安が無いといえば嘘になります」

 

「私もお願いしてもいいですか?」

 

 零冶の提案に乗るアインハルトとヴィヴィオ。

 

「それじゃ『ミスト』」

 

『了解。セットアップ』

 

 零冶は再び、ミストに指示を出しライに変身した。

 

「私達も」

 

「はい! セクリッド・ハート!」

 

「アスティオン!」

 

「「セーーット! アーーーップ!」」

 

 二人はそれぞれのデバイスに指示を出し、変身魔法とバリアジャケットを纏った。ライは二人に背を向け、変身シーンを見ないようにしていた。

 

「準備完了!」

 

「注意していきましょう」

 

「二人も変身魔法で大人になるのか」

 

「はい、このほうが戦い易いので」

 

「零冶さんも同じですか?」

 

「ああ、基本的に接近戦が多いからな。子供の姿ではリーチが短い。それと二人とも俺のことは

 ライと呼んでくれ」

 

「「分かりました」」

 

 三人が変身魔法とバリアジャケットを纏い準備できたところ

 

「では、行くぞ。ヴィヴィオ。アインハルト」

 

「「はい。ライさん!」」

 

 ライが号令を掛け、その場から移動を開始した。




没ネタコーナーです。


①マテリアルが復活し、ディアーチェが自分の姿を見た時

「な、何だ! この顔はあああ!!」

 鏡を見たディアーチェは手を震わせ、叫んだ

「何って王様の顔?」

「我が選んだ素体とは違うでは無いか! 我は選んだのは白髪が左右に三つずつロールを巻いていて、
 立派な顎鬚とダンディボイスでぶるぁぁぁぁぁ! と言う王の姿であろうが!」

『どこの若本だ!』

『オール・ハイル・ブリタニア!』



はい、没ですね。分かります。






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