原作を放って置くとバッドエンドになるんですが、どうしたら良いですか?   作:月の光

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前回は皆さん感想ありがとうございました。
おかげさまで、少し自信が付き、今回は更新が早かった気がします。

また、アドバイスをいただいたことを私なりに解釈し、
書いたつもりです。どんな感じかよろしければ感想を頂ければ幸いです。

では、どうぞ

あっ念能力紹介はまた後日……


43_ミスト『めんご♪』零冶『謝る気ゼロの巻』

《桜羽 葵物語》 エピローグサイド

 

 はやてとアリシアが悪乗りし、学校帰りに零冶君を尾行してから2日が経過した。あの日の翌日リンディさんから無断での魔法使用について注意を受けた。しかし、その件についてはリンディさん預かりとなり、上への報告はしないとの事だった。

 

 ライ兄さんから聞いていた管理局の印象もあり、私としては大助かりだった。下手をすれば何かしらの罰を受けていたかもしれないし、本当にリンディさんには頭が上がらない。

 

 そうして特に問題無くいつもの日常に戻った……戻ったと思っていた……私が学校に登校し、下駄箱を開けるとそこには手紙が入っていた。見てみるとそれは上級生からのラブレターだった。

 

 私達のグループはラブレターをもらうことはあまり珍しいことではない。今年は特に多かった。更にこの時期になると六年生が卒業することもあり、ダメ元で告白するのが流行ったらしく。私達のグループも何度かラブレターをもらった。

 

 その中でも一番多かったのはすずかだ。すずかは3年生にも関わらず、大人びており、身体つきも3年生とは思えないほどなため、人気が高かった。更に大人しい性格なのが男子の気を引いているらしい。

 

 順位で言うとフェイト、私、なのは、アリサ、アリシア、はやての順だった。はやては最近学校に復学したこともあり、周知されていなかっただけだと思う。アリシアは上級生より同学年か下級生にモテるタイプだと思う。現に同じクラスの男子に人気がある。

 

 小学生のくせに何を背伸びしているのかと思わなくもないが、私だった零冶君に恋しているのだから、人のことは言えない。

 

 流石に無視するのは相手に失礼だから、断るにしてもしっかり会って断るつもりだ。手紙を見るとやはり六年生。放課後に体育館倉庫に来て欲しいという内容だった。そして、その日の放課後。私は皆に断りをいれ、体育館倉庫へ向かった。

 

「あれ? 誰も居ないわね」

 

 私が体育館倉庫に入るとそこには誰も居なかった。

 

「まだ来てないのかな? ちょっと待ちましょう」

 

 とりあえず、相手が来るまで待つことにした私は傍にあった跳び箱に腰を下ろす。すると

 

 

ガラガラ

 

 

「こんにちは」

 

 誰かが入ってきた。おそらく手紙の主だろう。暗くてあまり見えないが髪はぼさぼさで体型も太め、顔もカッコいいとはとても言えない相手だった。

 

「こ、こんにちは」

 

「来てくれて嬉しいよ」

 

 私が返事を返すと相手がそんな事を言ってきた。

 

「それで用事って?」

 

「うん。実はね」

 

 私が用件を聞くと相手は話し始めた。

 

「僕は写真が趣味でね。色々なものを撮ったりしてるんだ」

 

 行き成り趣味の話しをし出した。あれ? 告白とかじゃ無かったのかな?

 

「親もそんな僕に結構高いカメラとか買ってくれてね。よく映るんだよ」

 

「う、うん」

 

 まさかとは思うけど趣味の話がしたくて私が呼び出されたの? 帰ってもいいかな?

 

「それでね。一昨日の放課後にこんなものが撮れたんだ」

 

 相手が懐に手を入れて、何かを取り出した。そこには

 

「こ、これは!」

 

 私が零冶君を助けるために魔法を使った時の写真だった。

 

「ね? よく映ってるでしょ?」

 

「お、お願い! この写真の事は秘密にして!」

 

 私は相手にお願いをした。

 

「やっぱりばれちゃマズいことなんだね? どうしようかな~」

 

 し、しまった! 相手は魔法のことを知らないんだから白を切る方法もあったのに!

 

「くっ!」

 

「それじゃ、これがばらされたくなかったら、僕と付き合ってよ」

 

「え? いやそれは……」

 

「ばらされていいの? 学校に、町中の人に、世界中の人に……よく考えてね。

 はいかイエスか? 答えはひとつしかないでしょ?」

 

 私は唇を噛み締めた。悔しい、こんなやつに……

 

「…………分かったわ。付き合う……」

 

「ん~? よく聞こえないな~。ばらしても良いのかな~」

 

「くっ! 分かりました。私と付き合って下さい」

 

「……ふふ、うふふふふふふ! 分かった。これで僕達は恋人同士だね。

 これからよろしくね。葵ちゃん♡」

 

 寒気がした。こんな最低なやつに名前で呼ばれたことに……まだ零冶君にだって呼ばれてないのに……

 

「それじゃ、今度に日曜にデートしようね」

 

「え? ご、ごめんなさい! 今度に日曜は親に頼まれた用事があるの! お願いだから

 別の日に……」

 

「え~、そんなの破っちゃいなよ。他に大事な用が出来たって」

 

 何て最低な男! こんなやつの為に私の幸せが!

 

「お願い! その日だけ! その日だけは!」

 

「……何俺に逆らってるの? てめぇは俺に逆らえねぇんだよ! 言う事聞かねぇとばらすぞ!」

 

 急に相手の雰囲気が変わった。さっきまでの穏やかな感じから怖い感じに。本当の恐怖を知っている私に取ってはこれが怖いとは思わない。けれど

 

「……分かり……ました」

 

 私は了承するしかなかった。

 

「……うん! 葵ちゃんは良い子だね~。そうだよ、それで良いんだよ」

 

 また、相手の雰囲気が変わった。まるで二重人格かのように。

 

「それじゃ、私はこれで」

 

 私はその場に居たくなくて帰ろうとしたが、

 

「何言っているの? 何でこんなところに呼び出したと思っているの? まだまだこれからだよ」

 

 そう言って男は強引に私を引き寄せ、私の唇を奪った。一瞬何が起こったか分からなかった。だけどだんだんと意識が覚醒していき……

 

「いや!」

 

 私は男を突き飛ばした。

 

「痛って!」

 

 突き飛ばされた男は尻餅をついたが、今の私に取ってはどうでも良かった。奪われた……私の初めてが……こんな最低な男に。

 

「ふぇ……ふえぇぇぇん!」

 

 私はその場に崩れ落ち泣いた。まるで子供のように。転生して前世も含めれば良い大人と言っていいほどの精神年齢にも関わらず、涙が止まらなかった。

 

「ってぇなこの!」

 

 男は座り込む私を強引に引っ張るとマットの上に寝転がされ、覆い被さって来た。

 

「いや! やめて! 離して!」

 

 サファイアを鞄に入れ、教室に置いてきてしまったため、魔法が使えない私は抵抗が出来なかった。

 

「ああ、良い匂いだぁ、ずっとこうしたかった。君を見たときからずっと! 一目ぼれだった!

 両親に頼み込んでカメラを買ってもらってずっと君のことを撮っていた! 一昨日だって

 後ろから後を付けていたらあんな写真が取れた! 僕は何て幸運なんだ!」

 

 気持ち悪い! 気持ち悪い! 何で! 何で私はこんな目にばかり会うの! 前世だって!

 

 それから私は犯された。私の全ての初めてはこんな最低な出来事で散った。ことが済み男が満足気に帰った後、私はずっとその場で泣いていた……そして家に帰り、お母さんに心配されたが、何でもないと言い、お風呂に入った。いつも以上に念入りに体を洗い、眠った。全てが夢であるようにと……。

 

 でも夢じゃなかった。朝起きると恥部に痛みを感じ、それが昨日の出来事が夢じゃなかったと語っていた。私はその場で声を殺して泣いた。家族に心配を掛けたくないから……

 

 そして、日曜はお母さんとの約束を破り、男と出かけた。つまらなかった。話は自慢話ばかりで、ことある事に私に触れてくる。そして、男の家に連れてかれ、また、行為におよんだ。私はただただ早く終わって欲しいと思っていた。

 

 翌日、私の様子がおかしいと感じたなのは達に心配されたが、とてもあんなこと言えなかった。

 

 それから一週間が経ち、また男の家に呼び出された。そこにいくと今度は複数の男が居た。そして私はその男達に犯された。まるでおもちゃのように……その男達のものは何度も何度も私の中に入って来た。もう痛みも感じない。本当に私は穢れてしまったと思うと涙が溢れてきた。

 

 それから更に三週間が経った。なのは達は私を心配してくれていたが、私は体も心もボロボロになっていた。そして、ふと本屋さんの前にあった一つの雑誌を見つけた。そこには私の初恋の人が私とは違う女の子と仲良く映っている雑誌の表紙があった。

 

 私の心は壊れた……何もかもどうでも良くなった。

 

 次の日、男に呼び出された。そこにはまた複数の男達が居た。いつものメンバーだった。そこで私はその男達を皆殺しにした。魔法で首から下を氷漬けにし、一人一人首を撥ねた。その時、何かを言っていた気がしたが、私の耳には入らなかった。

 

 そして、その首を持って、私は零冶君に告白した。好きだったこと。私が何をされたのかをこと細やかに説明し、零冶君を氷漬けにして、一生私のものにしようとした。

 

 しかし、そこでなのは達の邪魔が入った。どうやら私が男達を魔法で殺したときの魔力反応でばれたらしい。そして、なのは達との戦闘が始まった。

 

 その間に零冶君はアリシアに連れて行かれた。どこに連れて行く気なのかな? ソレハワタシノモノナノニ……

 

 そうしてなのは達と戦いになったが、私の優勢だった。本気で殺しに掛かっている私と本気になれないなのは達の違いだろう。それに私のアブソリュート・フォース・ドレスアップは魔法攻撃を凍らせその魔力を吸収する。私は魔導師相手になら大きなアドバンテージがある。

 

 私は一人一人、始末していった。最初はアリシア、私の零冶君を連れて行った罰。次はフェイト、アリシアがやられて冷静さを欠いてたから楽だったなぁ。そしてはやてを殺そうとしたら、守護騎士達がやって来た。

 

 そして、リインフォースの重力魔法で動けなくなった私は最後に魔力を暴走させて、自爆した。

 

 ごめんね。蒼乃、お母さん、お父さん、零冶君……私、幸せになれなかった……お母さん(前世)の言う通りだったよ。私には……幸せになる資格なんて無かった……

 

 

《桜羽 葵物語》 エピローグサイドアウト

 

 

 バタン!!

 

 

 零冶は未来漫画(フューチャリングコミック)を力強く閉じた。もし、時間が動いていたなら、周りの人が振り向く程の音だった。

 

「……何だこれは」

 

[何てひどい未来……マスター、お願いですからこんな未来にはしないで下さい]

 

「当然だ。言われるまでもない。こんな未来認めない……認めてなるものか」

 

[マスター、血が]

 

 零冶の栄光の手袋(グロリアスハンド)を装着した手から血が滴り落ちていた。しかし、その血は零冶から離れたため、空中で止まっていた。

 

「ああ」

 

 零冶は未来漫画(フューチャリングコミック)を消すとポケットからハンカチを取り出し、空中の血をふき取った。そして、全快再生(フルリペア)で手の傷を治した。

 

[よく最後まで読みました。ご立派です]

 

「ああ、未来のことを知らないと対策が出来ないからな」

 

 少しでも情報を得るために読み続けた零冶にミストが言葉をかけた。

 

「しかし、何だこのエロ同人のような展開は……酷過ぎないか?」

 

[まったくですね。ですが、どうするのです? 助けても助けなくても虫の知らせ(シックスセンス)

 発動したんですよね?]

 

「そんなのいくらでもやり様はある。ここはその中でも一番の安全牌を取るとしよう」

 

 零冶はザ・ワールドを解き、時間を再開させた。そして

 

『愛里、聞こえるか?』

 

『零冶さん? はい、聞こえますよ』

 

『これからお前にミッションを伝える』

 

『ッ! はっ! 何なりと!』

 

『月無 零冶が命じる。姿を変え、海鳴市駅前で三人の男に絡まれている女性を

 直ちに救出せよ!』

 

『イエス! マイロード!』

 

 零冶は念話で愛里に命令をした。

 

『なるほど、自分で助けられないなら他の人に助けさせる訳ですね』

 

『そうだ。俺が助けに行く事で葵が魔法を使ってしまうなら、俺が行かなければ良い』

 

『流石です。マスター』

 

『そうとも、俺はバグッターだからな』

 

『結構根に持ってます?』

 

『結構傷ついたんだよ』

 

『めんご♪』

 

『謝る気ゼロの巻』

 

 そして、少しすると一人の金髪の男が人だかりの中に入っていった。

 

「女性一人に男三人で寄って集ってとはいただけないな」

 

 金髪の男が三人の男達と女性の間に立つとそう言い放った。

 

「ああ? 誰だてめぇ」

 

「邪魔すんじゃねぇよ、おっさん」

 

 男達はその入って来た金髪の男に言った。

 

『よし、では後は頼んだぞ。愛里』

 

『了解しました』

 

 零冶はその愛里に任せえて、その場を後にした。

 

――しかし、姿を変えろとは言ったが何故あの姿なのか……

 

「大丈夫かな? お嬢さん」

 

「は、はい……」

 

 金髪の男はそれを無視し、男達に背を向け、女性に話しかけた。

 

「おい! 無視してんじゃねぇ!」

 

 そんな行動にイラついた男が後ろから金髪の男に殴り掛かった。

 

「危ない!」

 

 すると男はすぐさま振り返り、殴り掛かってきた男の拳を左手で掴んだ。

 

「な!」

 

「やれやれ、最近の若いのは血の気が多くていかんな」

 

 そう言うと金髪の男は掴んだその手を捻り上げ、殴り掛かった男の背中にその手が付く様にして押さえつけた。

 

「痛でででで!」

 

「このやろぉ!」

 

 すると別の男が殴りかかると金髪の男は押さえつけていた男を襲いかかってきた男に向かって突き飛ばした。

 

「「ぐへ!」」

 

「さっさ去ることだ。俺も素人相手では手加減できんからな」

 

「調子に乗ってじゃねぇぞ! おっさん!」

 

 金髪の男が言い放つと、最後の男が懐からバタフライナイフを取り出し、そのまま両手でナイフを持ち、金髪の男に向かって突進した。そしてナイフを持った男の体と金髪の男の体が接触した。

 

「キャアアア!」

 

 女性の悲鳴が響いた。辺りも騒然とし、救急車を呼べと言う声が聞こえる。しかし

 

「まったく、お前はその若さで犯罪者になりたいのか?」

 

 金髪の男の声が辺りを静まり返らせた。金髪の男にナイフは刺さっていなかった。男がナイフを持つ両手を更に上から両手で掴み、押さえたからだ。

 

「くそ! 離せ、ごら!」

 

「踏み込みが甘いな。お前に本当に刺す気が無かったからこそ、一瞬踏み留まった。

 本当に殺るつもりなら雑念を無くすことだ」

 

 金髪の男はナイフを持った男からナイフを奪うと、後ろを取り、首にナイフを当てた。

 

「そして、殺る時はできるだけ素早く静かにな」

 

「ひぃぃ!」

 

 ナイフを持っていた男は悲鳴を上げ、金髪の男が拘束を外すとその場から猛スピードで去っていった。残りの二人も去った男を追い、その場を離れた。

 

「まったく……」

 

 金髪の男が持っていたのは銀色に輝くスプーンだった。バタフライナイフは既に最初に去っていた男の懐に返していた。

 

「怪我は無いかな? お嬢さん」

 

「は、はい……」

 

「そうか、なら良かった」

 

 金髪の男がポケットに手を入れると一枚のハンカチを取り出した。

 

「それで涙を拭くと良い。君に涙は似合わない」

 

 そう言い、ハンカチを渡す金髪の男。

 

「は、はい……」

 

「ではな」

 

 金髪の男が振り向くと

 

「あっ! あの……お名前を」

 

 女性が金髪の男に聞くと男は振り向かず。

 

「マリク・シザース。ただの……旅人さ」

 

 そう言い残し、その場を去っていった。

 

「ああ……マリク様」

 

 その場には瞳をハートとマークに変えた女性が残った。その後、一人の男性が女性に近づいて行、少し口論した後、町中に消えて行った。将来、二人がどうなったかは誰も知る良しは無い。

 

 

 

 

 

「あれ? 何だか駅前が騒がしかったみたいなのに」

 

「そうね。遠目で見てても結構な人だかりが出来てたのに」

 

「なんだったんだろうね~」

 

 すずか、アリサ、アリシアは疑問に思ったことを口にした。

 

「まあ、良いじゃねぇか。んなことより、早く翠屋に行こうぜ」

 

「そうね。早くお茶がしたいわ」

 

 そんな三人を急かすように言うヴィータと葵。

 

「多分この時間ならそんなに混んでないはずなの」

 

 なのはは店の手伝いをしたことがあるだけに忙しい時間帯などに詳しいため、そう言った。

 

「だったら直ぐに座れそうだね」

 

「よっしゃ、今日はシュークリームも食べよかな」

 

 フェイトとはやてがそう言い、葵達は翠屋へ向かっていった。そして、店に入ると同時に店から零冶が出てきたため、そこで軽い挨拶を交わし、零冶は帰路に着いた。

 

『どうやら、愛里は上手くやったようだな』

 

『まあ、マスターの分身みたいなものですからね。余程のことが無い限り、大丈夫でしょう』

 

『そうだな。後残る問題は……』

 

 零冶が家に着くと玄関で愛里が迎えた。

 

「マイロード。任務速やかに完了しました」

 

「ああ、ご苦労」

 

「勿体無きお言葉。しかし、今回の件如何様にして?」

 

「ああ、今から話すよ。それとそんな固い話し方じゃ無くて良いぞ」

 

「分かりました。零冶さん」

 

「まったく。お前は真面目だな」

 

「ふふ、ありがとうございます」

 

 零冶は事情を愛里に話した。

 

「なるほど、そういうことですか……」

 

「ああ、まったくまいったよ」

 

[お疲れ様でした。では今夜は八宝菜にしますね]

 

「ああ、ミストの要望だからな」

 

[肉増し増しでお願いします]

 

「八宝菜なのに肉多めかよ。つーかお前シュミュレーターで食べるんだろ?」

 

[「家族の団欒、これ大事」]

 

「ハモんなし」

 

 そんな雑談をして、夕飯を食べた零冶達はその夜、行動を起こした。

 

「さて、行くとするか」

 

[はい、マスター]

 

 零冶は神の不在証明(パーフェクトプラン)で姿を消し、転移した。

 

 

 

 

 

 

 一人の男が部屋に篭り、壁に貼られた無数の写真を眺めてた。

 

「ああ、桜羽 葵ちゃん。今日も可愛いねぇ」

 

 男はその無数の写真の中から一枚を手に取り、舐めるように頬ずりをしていた。

 

「でも、葵ちゃんに好きな人が居たなんて知らなかったなぁ。許せないなぁ」

 

 男は机に置かれた零冶が映った写真を見て言葉を漏らす。

 

「彼女は僕のものだ。髪の毛から足のつめの先まで全て僕のものなんだ。君のような男に

 渡す訳には行かないんだよ!」

 

 そして、ナイフを零冶の写真に突き刺した。

 

「死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死んでしまえ!」

 

 何度も何度もナイフを突き刺した零冶の写真をズタボロになった。

 

「ああ、くそ! ちっとも気が晴れない! こうなったら直接。いや……こんなやつ放って

 置いて葵ちゃんを直接……うふふふふふふふふふふふふ!」

 

 無数の葵の写真を見て不敵に笑う男。

 

「まさかここまでとはな」

 

「ッ! 誰だ!」

 

 男が声をしたほうを見るとそこには仮面をした男が立っていた。

 

「お前! ここは僕の城だぞ! 勝手に入りやがって!」

 

「ああ、安心しろ。直ぐに出て行くさ」

 

「ああ?」

 

「用が済んだらな。《お前はこれから言う俺の命令に従え》」

 

 そこで男の記憶は途切れた。それから仮面の男 ライは男に葵や他の女生徒の写真や記録媒体を聞き出し、紙媒体は処分、記録媒体はミストに頼み、修復不可能なまで完全消去を行った。そして、男からそれに関する記憶や好きな女生徒の記憶を消し、正常な精神になるよう記憶を改変した。

 

「よし、ここまでやれば十分だろう。帰るぞ、ミスト」

 

『了解』

 

 ライは姿を消した。

 

「うっ、う~ん……あれ? 僕はどうしたんっけ?」

 

 男は目を覚ました。

 

「思い出せない……ま、いっか。お母さ~ん。お腹すいた~」

 

「ッ! ○○ちゃんが部屋から出て来た!」

 

「何て珍しい日だ! オイ母さん! 今日はお祝いだ!」

 

「ええ、あなた!」

 

「何騒いでるんだろう?」

 

 そんな家族のやり取りがあったそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 ライは葵のストーカー男を処理した後、自宅に帰って来た。

 

「これで懸念事項は全てクリアしたな」

 

[そうですね。これで葵ちゃんに害は及ばないでしょう]

 

「ああ、今回は乗り切れてもまた同じことになられても困るからな」

 

[ええ、そうですとも。ああ言う男はしっかり更生させないと、寧ろ私としては寛大な処置だと

 思います]

 

「お前は偉く葵を気にかけるよな。何でだ?」

 

[私はマスターと同じで葵ちゃんにも幸せになってもらいたいんです]

 

「まあ、確かに俺も葵には幸せになってもらいと思っているが、お前のは俺と少し違う気がする」

 

[……同じです。マスターと]

 

「そうか? なら良いけど。さてと、今度は日曜の読者モデルか……それを乗り切れば

 後は平和に過ごせるだろう」

 

[同じなんですよ。私にとってマスターと……葵ちゃんは]ボソ

 

「ん? 何か言ったか? ミスト」

 

[いえ、何でもありません]

 

「そうか? なら良いけど」

 

 こうして、零冶はバッドエンドを回避し、次の読者モデルまでのんびりと過ごしたのだった。




ボツネタ

「大丈夫かな? お嬢さん」

「は、はい……」

 金髪の男はそれを無視し、男達に背を向け、女性に話しかけた。

「おい! 無視してんじゃねぇ!」

 そんな行動にイラついた男が後ろから金髪の男に殴り掛かった。

「危ない!」

「漢なら背中で語れ! マリクビィィィィム!!!!」

「「「ギャアアアアア!?」」」

≪えええええええ!?≫

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