原作を放って置くとバッドエンドになるんですが、どうしたら良いですか?   作:月の光

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長くなったので、二話に分割します。
続きはまたいづれ

また、念能力紹介もまたいづれ記載します。


40_零冶『この世界は残酷だ』ミスト『そしてとても美しい』

葵 サイド

 

 夜天の書の修復からしばらく時間が経った。冬休みも終わり、私達……いえ、私はいつもの日常に戻った。

 

 あの夜天の書修復作戦の翌日に夜天の書修復のお祝いを兼ねて夜に翠屋を貸切にし、クリスマスパーティを行った。そこではやてから聞いた話では次の日からアースラに乗ってミッドチルダに行き、管理局員になるための手続きや簡単な戦闘訓練、魔法の勉強などを行うと言っていた。

 

 はやても作戦の準備期間中に魔法の練習をしていたからある程度は知識があるけど、習って一ヶ月程度じゃ、とても実戦で使えるレベルじゃないし。そう考えるとなのはの才能は凄いと思う。

 

 はやても才能が無いわけではない。寧ろ才能はあるほうだ。天才と言っていいと思う。なのはは鬼才と言えるレベルだってライさんも言ってたし、特典でなのはと同等の魔法の才能を頼んだ私も同じ鬼才レベルってことになるんだろうか?

 

 う~ん、そこまでの才能は要らなかったんだけどな~。私は平穏な日常を過ごせればそれでいいんだから。家族や好きな人との人並み幸せがあればそれで良い。そして自分の大切な人を守れる強さがあれば良かった。

 

 まあ、後悔したってしょうがないわよね。あるに越した事は無いし、今更もうどうしようもないしね。

 

 話が逸れちゃったわね。クリスマスパーティが終わり、はやてはアースラに乗ってミッドチルダに行った。その途中で出来る限り、リンディさん達から指導などを受けたそうだ。それと戦闘訓練も受けたと言っていた。

 

 その時の話を聞き、驚いたことがあった。リインフォースのことだ。その戦闘訓練でライさんがリインフォースに渡したSDコアを使いこなすために守護騎士達とSDコア有りで模擬戦をしたそうだ。その結果、リインフォースの圧勝だったらしい。

 

 いくら模擬戦とは言え、守護騎士達も手は抜いていなかったらしいので、更に驚愕した。私達も守護騎士達とSDコアを使った模擬戦をしたからその強さは嫌というほど知っている。SDコアを使った守護騎士達に惨敗だった。

 

 それほどの強さの守護騎士達を相手にリインフォースは圧勝したのだ。驚かない訳が無い。話を聞くとSDコア【シャルティエ】は今までに確認されたこと無い魔力変換資質 大地を使えるということだった。

 

 私も初めて聞いたのでどういう能力か分からなかったけど、聞いたところによると土や石を操り、相手を攻撃・拘束する能力らしい。また、石の壁を作る事で防御も出来る攻防のバランスが良い能力だった。

 

 なるほどそれは強力だ……とそれを聞いた時に思った。けどそれだとアースラの訓練室に土なんて無いんだから使えないのでは? はやてにそう聞いたら、他の能力もあると言っていた。それは重力魔法を使えると言うこと。

 

 模擬戦ではその重力魔法を使ってリインフォースが圧勝したらしい。開始直後に重力を操り、守護騎士達が地面に縛り付けられ、身動きできない状態にされたとのこと。

 

 しかもその時力の加減を間違えたらしくその重力の影響でアースラが沈みかけたらしい。ライ兄さんはとんでもないものをリインフォースに残していきました。ただこれにも弱点はあり、魔力の消費が激しいと言っていた。

 

 魔力量Aランクの魔導師でもその重力結界魔法を使うと5秒も持たなず、魔力が空になるほどの消費らしい。良かったわ。これで弱点無しだったら、もう全部あいつ一人でいいんじゃないかな? になってしまうところだった。

 

 もっともリインフォースの魔力量ははやてと同じでSSランクあるから、弱点になっていないらしい。実質、夜天の書組で最強はリインフォースになった。後、シャルティエの話だとライ兄さんはその重力結界の中でも普通に動けるらしい。やっぱりライ兄さんは凄い。

 

 後なのは、フェイト、アリシア、春兎、神宮寺は嘱託魔導師になった。私はなってないけどね。さっき私が私の日常と言い直したのはこれだ。なのは達は冬休みを利用して嘱託魔導師認定試験の勉強をし、試験に無事合格した。

 

 まあ、なのはとフェイトとアリシアはまず家族の説得からだったが、もちろん三人とも反対された。士郎さんと桃子さんはなのは熱意に負け、しぶしぶ承諾。プレシアさんは認めてくれないと一生口利かないとアリシアに言われ、あっさり認めたらしい。

 

 私はやっぱり管理局に入る気にはならなかった。管理局にブラックなところがあるからって訳じゃない。もちろんそう言う理由もあるにはあるけれど、私はやっぱり戦いが好きになれない。止むを得ない場合は仕方ないとしても、自ら進んで戦いに身を投じることは出来なかった。

 

 きっとジュエルシード事件のときにゼロから受けた殺気の影響だろう。本当に死ぬかも知れないと思った時に体の震えが止まらなかった。そして、人を傷付けることが怖くなった。相手にも同じ恐怖を与えてしまうと思ったから。

 

 だから私は必要最低限しか戦わない。大切な人を守れればそれで良い。そのために訓練はする。あの作戦で親衛騎団のシグマと戦いまだ力不足を痛感した。もっと強くならければ家族を……大切な人たちを守れない。

 

 そして、冬休みが終わり、いつも通り学校に登校した。はやてもリハビリのおかげで何とか歩くことが出来るようになり、無事学校に復学した。クラスは私たちと同じ一組だ。まあ、原作通りになったってことね。

 

 でも一組ばかりに集中して大丈夫なのかしら? 教室は進学校だけあって広いからまだ余裕があるけど、クラスの人数のバランスとか普通平均的にしたりしないのかしら? まあ、私が考えても仕方ないけれど。

 

 はやての場合は知り合いと同じクラスって考えたのかも知れないわね。リハビリして歩けるようになったとはいえ、長時間は辛いみたいだし、激しい運動も出来ないそうだから。魔力で強化すれば人並みに歩けるとは言っていたけれど、それじゃリハビリにならないからあまりやらないらしいし。学校でもわたし達のグループと一緒に行動している。

 

 学校では今までの生活にはやてが加わり、日常を送っている。それと来週の日曜日にお母さんから今度の春物ファッションのモデルを頼まれている。つい零冶君に釣られて了承してしまったけど、後悔はしていない。

 

「……ゃん」

 

 だって零冶君と一緒に仕事が出来るんだから、学校では迷惑を掛けないようにするためあまり話しできないけど、お仕事で外に居るならいっぱいお話できるし。

 

「……お……ちゃ」

 

 楽しみだなぁ~、どんなお話しよう? やっぱり好きな食べ物とか? 趣味は……確かゲームが好きなんだよね。普段何をやってるとか? ふふふ。

 

「あお……ちゃん」

 

 でも絶対に聞かなくちゃいけないのは好きな女性のタイプね! これは何においても優先する私のミッションよ! 好きなタイプが分かれば、それに合わせることが出来るし、零冶君にそれを聞いたら私が気があるって知ってもらえるかもしれない。絶対に聞かなくっちゃ!

 

「こら! 葵! 聞いてんの!」

 

「っ! な、何? アリサ、急に大きな声出さないでよ」

 

「何言ってんの。さっきから皆で声掛けてたわよ」

 

「え? 本当?」

 

 私は回りを見回すと皆が頷いた。今私たちはお昼休みに入っており、屋上で昼食を食べていた。

 

「ご、ごめん。考え事してたわ」

 

「別にかまへんけど、えらい幸せそうな顔しとったなぁ」

 

「うん、葵ちゃんにしては珍しい顔だよね」

 

「うん、私も初めて見たよ」

 

「お花畑が舞ってたよね!」

 

 はやて、なのは、フェイト、アリシアが言った。あとアリシアお花が舞ってたの間違いよ。

 

「な、何でもないわよ」

 

「どうせアンタのことだから、月無のことでも考えてたんでしょ」

 

「前にも似たようなことがあったしね」

 

 うっ! アリサとすずかにはばれてるわね。

 

「ふっふ~ん、この名探偵アリサ様が予想してあげるわ。美咲さんから頼まれた春物ファッション

 の臨時モデルの件でしょう」

 

「うっ」

 

「大方、来週の土日にそれがあって、月無と会えるからって浮かれてたのよ!」

 

 ババーンと言う効果音が出るかのように私に指を突きつけるアリサ。

 

「くっ! 正解よ」

 

「凄いね。アリサちゃん」

 

「ふっ、真実はいつも一つなのよ」

 

 すずかがアリサを褒め、アリサが勝ち誇ったかのような顔をする。

 

「モデルって何のことや? それと月無って誰?」

 

「ああ、葵が今度の子供服雑誌ルナテイクのモデルをやるって話よ」

 

「へぇ~そうなんだ~」

 

「凄いね。アオイ」

 

「いいな~」

 

 はやての質問にアリサが答え、なのは、フェイト、アリシアが言った。

 

「なるほどなぁ、なら今度はこの名探偵美少女はやてちゃんが推理したるわ。

 ずばり、その月無は葵ちゃんの恋人ないし、想い人や」

 

 今度ははやてが推理する。

 

「そしてその月無君は読者モデルの仕事をしとる男の子。その子に今度のモデル撮影で会える

 から葵ちゃんは浮かれとったんや!」ドヤ~

 

 ドヤ顔で私を見つめるはやて。

 

「なるほど。流石、はやてちゃん」

 

「よっ名探偵!」

 

 はやての推理を聞き、なのはとアリシアが言った。というか、なのは。あなたは月無君のこと隣のクラスって知ってるはずよね?

 

「ふっ、じっちゃんはいつも一人や」

 

「それ混ざってない?」

 

 はやての決め台詞に対して突っ込みを入れるフェイト。

 

「う~ん、半分正解かな?」

 

「そうだね。オマケして六割正解かな」

 

「なん……やて」

 

 はやての推理に対して、アリサとすずかが答えた。

 

「月無が葵の想い人まではあってるけどね。そいつ別にモデルではないのよ」

 

「せ、せやかて工藤」

 

「誰が工藤よ、ボケはやて」

 

「アリサちゃんが辛辣や、でもモデルやないのに何で今度の撮影の話が出るんや?」

 

「そいつも葵のお母さんのお願いで臨時モデルをやるからよ」

 

「くぅ~、この名探偵美少女戦士ミラクルはやてちゃんの推理が外れるとは」

 

 はやてどれか一つに絞りなさい。意味が分かんなくなってるわよ。

 

「そうなんだ。でも月無君? ってどんな子なの?」

 

 フェイトが零冶君のことを聞いてきた。

 

「そうねぇ~。一言で言えば、地味ね。目は前髪で隠してるし、変な眼鏡してるし。クラスも

 二組で私達とは別だし」

 

「へぇ~意外や。っでや葵ちゃんはその月無君のどこに惚れたんや」

 

「そうだそうだ! ここではっきり言ってもらおうじゃないか~」

 

 そう陽気に言いながら、から揚げを刺した箸をマイク代わりと言わんばかりに私に突きつけてくるアリシア。お行儀悪いわよアリシア。

 

「そ、それは……」

 

 私が言いよどんでいると期待の眼差しで私を見ている皆。私は決心をし。

 

「あむ!」

 

「ああ! 私のから揚げが!」

 

 私はアリシアのから揚げを食べる。美味しいわね。流石プレシアさん。そしてそのから揚げを飲み込み。

 

「黙秘権を行使します」

 

「ひ、ひどいよ! 私のから揚げ返して!」

 

「アリシア、諦めなさい」

 

「そうだよ。から揚げは犠牲になったんだよ」

 

「強く生きてね。アリシアちゃん」

 

「アリシアちゃん……から揚げの事は忘れるんや……もう助からへん」

 

「皆ひどいよ!」

 

 皆でアリシアをいじっていると

 

「ね、姉さん。私のから揚げ上げるから元気出して」

 

「フェイトォ~」

 

 アリシアがフェイトに抱きついた。フェイトがアリシアにから揚げを上げることでその場は収まった。

 

「あっ、私のから揚げもう無かった」

 

「嘘ぉ! 嘘だと言ってよ。フェイト!」

 

「ご、ごめん姉さん……」

 

 見るからに落ち込んだアリシア。仕方ないわね。

 

「アリシア。私のハンバーグあげるから機嫌直して?」

 

「……うん、ありがと」

 

 少し機嫌が直ったアリシア。

 

「でや、話戻すと何でその地味な月無君のことが好きなんや?」

 

「だから黙秘権を」

 

 私が言おうとしたら、

 

「まあ、眼鏡を取った月無はカッコよかったわよね。すずか」

 

「そうだね。目はパッチリしてるし、全体のバランスもとっても良かったよ」

 

 は? な、何でアリサとすずかは知ってるの?

 

「なんや、やっぱり顔か。顔なんか」

 

「ち、違うわよ! 好きって自覚してから素顔見たんだから。ま、まあ、それでますます

 好きになっちゃったけど」

 

 私は両手の一指し指の指先をツンツンを合わせながら言った。

 

「お、乙女や。ここに乙女がおる」

 

「葵ちゃん、お顔が真っ赤なの」

 

「うん、こんなアオイ初めてみた」

 

「恋って偉大だねぇ。まあ私も負けず劣らずの乙女だけどね!」

 

「それを自分で言う?」

 

「あはは、アリシアちゃんらしいね」

 

 そう言って私達は笑い出す。するとアリサが

 

「そういえばそれで思い出したわ。葵、アンタずっと前から月無の素顔知ってたらしいわね」

 

「え、ええ。知ってたわよ。それがどうしたの?」

 

「よくもそんな面白……大事なこと隠してたわね」

 

 今、面白そうって言おうとしなかった?

 

「べ、別に隠してた訳じゃないわよ。言いふらすようなことじゃないし、零冶君も

 目立ちたくないって言ってたのに私がばらしちゃいけないでしょ」

 

「ふ~ん、で本音は?」

 

「皆に知られたら人気者になっちゃうんじゃないかと思って……しまっ!」

 

「やっぱりそう言う事ね」

 

「ほほう。そんなにイケメンなんか」

 

「も、もう良いでしょこの話は! 早く食べないとお昼休みが終わっちゃうわよ」

 

「おっと、もうそんな時間なのね。皆早く食べましょう」

 

≪うん〈了解や~〉≫

 

 皆黙々と箸を進める。

 

≪ご馳走様でした≫

 

 そして、皆お弁当を食べ終えた。そのままお弁当箱を片付け、私達は屋上を後にした。するとはやてが

 

「しかし、あの葵ちゃんがここまでの乙女にした月無君でどんなんか気になるわぁ」

 

「あっそれ、それ私も気になる」

 

「よし! 今から見に行こう!」

 

 はやての言葉にフェイトとアリシアが便乗する。

 

「だ、ダメよ!」

 

「ええ、良いじゃん。減るもんじゃないし」

 

「せやせや、アリシアちゃんの言う通りや。独り占めはあかんでぇ、葵ちゃん」

 

 私が反対するとアリシアとはやてが反論してきた。ど、どうしようこのまま押しかけたら、零冶君に迷惑が掛かるかもしれない。何とかしないと! 零冶君は私が守る!

 

「意気込んでいるとこ残念だけど、そんな時間は無いわよ」

 

「うん、そろそろお昼休み終わっちゃうし」

 

 助かったわ。これで零冶君に迷惑が掛からずに済む。

 

「それは残念や」

 

「だね~」

 

 二人とも諦めたようだ。良かったわ。きっと明日には忘れているだろうからもう無いと思うし

 

「あっ、だったら放課後に見に行けばいいんじゃないかな?」

 

 ちょっ! フェイト! 余計なこと言わないで!

 

「せやね。よっしゃ! 放課後に月無君を尾行するで!」

 

「お~!」

 

 ちょっと! はやて! 尾行って何よ! 見に行くだけじゃなかったの!

 

「面白い展開になってきたわ」

 

「い、いいのかな~?」

 

「それより、そろそろ授業始まるよ?」

 

 アリサ、すずか、なのはが言っていたが私の耳には入ってこなかった。私はマモレナカッタ。

 

 

 そして午後の授業が終わり、放課後になった。

 

「ではこれより、オペレーションT、月無君尾行作戦の概要を説明するで」

 

「「了解〈了解?〉」」

 

「なによ、これ?」

 

「はやてちゃんとアリシアちゃん、ノリノリだね」

 

「フェイトちゃんはなんか流されてるだけっぽいけど」

 

 どうしようはやてとアリシアが悪乗りしている気がする。零冶君に迷惑が掛かりそうな時は力尽くでも止めないと。

 

「皆、私語は慎みぃ、我々は今、校門前の物陰に身を潜めとる。ここで目標が出てくるのを

 待ちその後ろを尾行し、彼の本性を暴くんや」

 

「本性って何よ?」

 

 アリサがはやてに聞いた。

 

「もちろん、冷静沈着、冷酷無比、戦いになったら容赦なく敵を倒すあの葵ちゃんを

 乙女に変えたんや、きっと裏があるに決まっとるで」

 

「はやて……それはどういう意味かしら?」

 

 私がはやてに聞くとアリシアとフェイトが、なのはとアリサがそれぞれ、抱き合いブルブル震えていた。

 

「い、いややな葵ちゃん、冗談に決まっとるやろ。イッツ・ア・ジョークや」

 

「そう、良かったわ。もし冗談じゃ無かったら氷漬けにしてたところよ」

 

 私がそう言ったらはやてが顔を真っ青にしていた。すると

 

「あっ、皆、月無君出てきたよ?」

 

 すずかが何事も無かったかのように私達に教えてくれた。

 

「すずか……アンタなんとも無いの?」

 

「え? 何が?」

 

――あの葵の恐ろしさになんとも思わないなんて……すずかが一番敵に回しちゃいけない気が

  するわ。

 

「き、気を取り直してやな。取り合えず、どれが月無君なんや?」

 

 はやてがすずかに聞いた。

 

「あの前髪で目が隠れてる黒髪の男の子だよ」

 

「お~、あの子か。なんちゅうか、地味やね」

 

「だから言ったじゃない」

 

 すずかがはやてに答え、アリサが言った。

 

「あれがアオイの好きな人なんだ?」

 

「う、うん」

 

 フェイトに聞かれたので私が正直に答える。

 

「へぇ~、あの子が月無君なんだ」

 

 なのはが言った。

 

「ん? もしかして葵が学校に登校していっつも直ぐに教室の窓際で校門を見てるのって

 あの子が来るの見てるの? 確かその時に見たことあるような……」

 

 アリシアが言った。うぅバレてしまった。

 

「まあ、今の葵は完全な乙女ってことよ。さっ、後を着けるわよ」

 

「アリサちゃん、意外とノリノリだね」

 

 あのアリサまで……はぁ、零冶君に迷惑が掛からなければいいけど

 

「……」

 

「フェイトちゃん? どうしたの?」

 

 ずっと黙っていたフェイトになのはが話しかけた。

 

「うん、あの子どこかで見たことあるような気がして」

 

「え? そうなの?」

 

「うん、でもそれが思い出せないんだ」

 

 まさかフェイトは零冶君に会ったことがあるって事?

 

「それって何時の話よ?」

 

 アリサがフェイトに聞いた。

 

「う~ん、結構前だと思う。もしかしたら私が初めてこの町に来た頃かも」

 

 フェイトが初めてこの町に来た頃ってことはジュエルシード事件の頃ってことよね? まさか零冶君がジュエルシード事件に絡んでいたってこと?

 

「もしかしてジュエルシードの被害者だったりしたのかな?」

 

「ううん、そんな感じじゃないんだ」

 

 なのはがフェイトに聞き、フェイトが答えた。

 

「だったらバルディッシュに聞いてみたら?」

 

「あ、そっか」

 

 アリシアがフェイトに助言した。

 

「バルディッシュ。あの子のこと知ってる?」

 

[……恐らくサーが最初にジュエルシードを回収した時にジュエルシードを見つめていた

 少年では?] 

 

「あっ、そうだ。あの時の男の子だ」

 

「何か分かったの?」

 

 フェイトは思い出したように言い、なのはが聞いた。

 

「うん、私がジュエルシードを回収するためにこの町に着た時に道端にジュエルシードが

 落ちてたのを見つけたんだけど、私より先にジュエルシードを見つけてる男の子が居てね。

 その子が居たから手を拱いていたんだけど」

 

「ま、まさか。ジュエルシードが発動したんじゃ……」

 

 私が心配してフェイトに聞いてみると。

 

「ううん、しばらくジュエルシードを見つめていたから魔導師なのかと思って私も警戒して

 たんだけど、目の前の家の人に呼ばれてそのまま家に入っていったの。その後私が直ぐに

 ジュエルシードを回収したから、発動はしなかったよ」

 

「そっか良かった」

 

 本当に良かったわ。もし零冶君がジュエルシードに巻き込まれていたらどうしようかと思ったわ。

 

「あんた達、静かにしなさい。月無にばれるでしょ」

 

 そうだった今、零冶君を尾行してるんだった。

 

「せやで、四人とも静かにせな。気付かれるで」

 

 ていうか私は止めてたはずなのに何で普通に尾行してるのかしら? しばらく後を着けていた。

 

「あっ、横断歩道の真ん中で困っているお婆ちゃんがおるで」

 

 はやてが困っているお婆ちゃんに気付いた。

 

「早く助けないと……」

 

「でも尾行がばれちゃうんじゃ」

 

 すずかが助けようとしたが、フェイトが言った。すると

 

「あっ、月無君が助けるみたいだよ」

 

 なのはが言った。

 

「へぇ~、ええ人やな」

 

「うん、月無君は優しい人だよ。図書室で見かけた時も困ってる人を助けたりしてるし」

 

 ふふ、流石は零冶君ね。自分のことのように嬉しいわ。

 

「なるほどなぁ、葵ちゃんはそういうところに惚れたちゅう訳やな」

 

「まあ、そうなるわね。分かったでしょ。もう止めましょう?」

 

「甘いわね、葵。これだけじゃ分からないわよ」

 

「せや、さあ。尾行再開や」

 

「はぁ……」

 

 私はため息を付く。……でも零冶君の事を知れるのはちょっと嬉しかったり。零冶君の尾行を再開した。

 

「ん? 公園の入り口で立ち止まったで?」

 

「本当ね。どうしたのかしら?」

 

 はやてとアリサがそう言ったので私もそっちを見ると

 

「公園に入っていったね。どうしたんだろう?」

 

「さあ、後を着けるよ。皆」

 

 すずかとアリシアが言い、私達が公園の入り口まで移動し、中の様子を伺う。

 

「何をするつもりなのかな?」

 

「そうだね」

 

 なのはとフェイトが言った。

 

「なんか、あの大きな木の所向かっとるな」

 

「本当だ」

 

 零冶君を見ていると公園の真ん中にある大きな木の所に向かっているのが見えた。

 

「あっ、木の傍に女の子が居るよ。何だか上を見上げてるみたい」

 

「そうみたいね。あっ、女の子に話しかけた」

 

 その様子を見ていると零冶君が腰を下ろして女の子と同じ目線にして女の子に話しかけている。そして女の子が上の木を指差して零冶君が上を見上げる。

 

「もしかしたらボールか何かが気に引っ掛かっちゃったのかな?」

 

「そうかもしれないわね」

 

「でも、あの木結構高いよ?」

 

 そうね。ここから見るだけでも結構な高さだわ。あそこに引っ掛かったら、まず取れない。

 

「あっ、今度は女の子の頭を撫でてる」

 

 零冶君が女の子を慰めるために頭を撫でていた。

 

「いいなぁ」

 

「葵ちゃんどうしたの?」

 

 私が羨ましがっているとなのはが聞いてきた。

 

「な、なんでもないわ」

 

「ん? 月無君が」

 

 すずかが何かに気付いて言った。私も零冶君のほうを見たら

 

「ん? 眼鏡を外したで」

 

 そう零冶君が眼鏡を外して眼鏡ケースに締まった。すると木から少し距離を取り、準備運動を始めた。

 

「何をする気や?」

 

「もしかして木を蹴ってゆらして取る気かな」

 

「え? でもあの木結構太いからビクともしないと思うよ?」

 

 はやて、フェイト、すずかが言った。すると急に走り出した零冶君は助走をつけて木をスルスルと上り始めた。木の幹に足をかけ登り、一番低いところの枝にぶら下がったと思ったら、腕の力で枝の上に登り、そのまま枝伝いに上へ上へと登っていった。

 

「ええ! あの木を登ってるわよ!」

 

「す、凄い……」

 

 アリサとすずかが驚いている。なのは達も驚いているみたいね。私も驚いている。あっと言う間に上の方まで登った零冶君は枝に引っ掛かったボールを下の女の子に当たらないように上から落とした。

 

「いや~見事なもんやなぁ」

 

「そうだね~、人助けもそうだけどあの木を難なく登ったよ」

 

 はやてとアリシアが今見た光景の感想を言った。すると零冶君は降り始めたが、一番下の枝のあたりまで来るとそこから飛び降りた……ってええええ! 飛び降りた!

 

「ええ! あそこからかなりの高さがあるよ!」

 

「怪我しちゃうよ!」

 

「れ、零冶君!」

 

 私はなりふり構わず入り口から飛び出したが、

 

「ダメよ! 葵! 尾行がばれちゃうわ!」

 

 アリサに止められた。

 

「離して! 零冶君が!」

 

 私は何とかアリサを振り払おうとするが、零冶君は落下中に木の幹を足場して蹴り、落下速度を落とすと、くるりと一回転しながら、綺麗に地面に着地した。

 

≪……≫

 

 みんなが無言に驚いていた。かくいう私も驚いている。

 

「すっごーい!」

 

 アリシアが無言を打ち破り、私達は我に返った。

 

「た、確かに凄いわ」

 

「うん、あんなの出来ないよ」

 

 アリサとすずかが言った。

 

「運動神経も良いんやなぁ、葵ちゃん知っとった?」

 

「いいえ、知らなかったわ」

 

 知らなかった零冶君って運動神経も良いんだ……頭も良くて、性格も優しくて、容姿も良くて、運動神経も良いなんて……どうしよう非の打ち所が無くて、私の方が分不相応なんじゃ……ううん! 大丈夫、私には魔法がある! 何かあった時は私が零冶君を守る!

 

「あっ、女の子が月無君の傍に駆け寄ったよ」

 

「ほんとだ。何かお話しているみたいなの」

 

 フェイトとなのはが言っているのにつられて私もそっちを見る。そこには何か興奮したかのように身振り手振りで零冶君とお話している女の子が居た。

 

「まあ、あんなもん見せられた興奮するのは当たり前やな」

 

「そだね~」

 

 はやてとアリシアが言っていた。零冶君は女の子の頭を撫でて、女の子はどこかに行った。零冶君は眼鏡ケースから眼鏡を取り出し、掛けた。

 

「う~ん、こっからやと顔がよう見えんな~」

 

 はやてが言った通り、それなり距離が空いているから零冶君の顔は良く見えなかった。

 

「ってやば! あいつこっちに戻ってくるわよ!」

 

「か、隠れなきゃ!」

 

 アリサとなのはの言う通り私達は急いで入り口付近から戻り、物陰に隠れた。そして零冶君が公園から出てきて、また歩き出した。

 

「それにしても本当に優しい子だね。女の子が困ってたら迷わず助けに行くなんて」

 

「そうだね。誰にでも出来ることじゃないと思う」

 

 なのはとフェイトが零冶君のことを褒めている。

 

「もう分かったでしょ? もう尾行は良いわよね?」

 

「確かにええやつなんわ、分かったわ」

 

 はやてもやっと分かってくれたみたいね。

 

「せやけど、聞いた話やと勉強もできて、ルックスも良くて、性格も良くて、

 オマケに運動神経もええなんて、出来すぎや。きっとどこかに欠点があるはずや。

 それを突き止めんとオペレーションTの作戦は終わらへん」

 

 まだそれ続いてたのね。はぁ、零冶君ごめんね。私じゃ止められないみたい。尾行が再開し、零冶君の後ろをしばらくつけていると商店街に着いた。

 

「商店街? ここで何するのかしら?」

 

「買いものでもするのかな?」

 

「それかこのまま商店街を抜けて駅方面に行くかだね」

 

「なぁ、葵ちゃん。こっちの方が月無君のお家なん?」

 

「分からないわ。私、零冶君のお家知らないの」

 

「そうなんだ」

 

「フェイトちゃんなら分かるんじゃない?」

 

「ごめん、私も分からない。あの時は焦っていたからあまり地形のこと気にしてなくて……」

 

「バルディッシュは?」

 

[申し訳ありません。正確な位置までは記録していません。ですが、この当たりでは

 無いのは確かです]

 

「そうなんだ。じゃあ、やっぱり買い物かな?」

 

「まあ、それはこれから分かるやろ」

 

 そんな会話をしながら私達は零冶君の後をつける。

 

「ん? また立ち止まったで」

 

 すると零冶君がまた立ち止まり、左の方を見ている。

 

「誰かに声を掛けられた感じだったわね」

 

「あの方向はゲームセンターかな?」

 

「そうだね。いったい誰かな?」

 

 その様子をアリサが予想し、すずかとフェイトが言った。零冶君はそのゲームセンターの方へ歩き出した。そして、入り口付近のUFOキャッチャの当たりで止まり、誰かと会話をしている。

 

「う~ん、こっからやと誰と会話しとるか分からんな~」

 

 確かにはやての言う通り、UFOキャッチャの影に隠れて相手が見えない。

 

「そうね。気になるわ」

 

 アリサが言った。

 

「もしかしてガールフレンドとかかな?」

 

「ま、まさか~。そんな訳無いじゃない。アリシアは冗談が上手いわね~」

 

 そう言いながらアリシアの肩を掴む私。

 

「痛! 痛い痛いよ! 葵!」

 

「冗談よね?」

 

「はい! 冗談です!」

 

「あっ、月無君がUFOキャッチャをやり出したよ」

 

 私はアリシアを放っておいて、零冶君の方を見た。

 

「何で行き成りUFOキャッチャをやり出しただろう?」

 

 全員が疑問を持ったまま成り行きを見ていると

 

「おお! 一発で取りおった」

 

「凄いね」

 

「そうだね。あれ結構難しいもんね。私あれで取れたことないよ」

 

「確かになのはじゃ無理ね」

 

「アリサちゃんひどいよ!」

 

「なのは、静かにしてて!」

 

 私はなのはに言った。

 

「はいなの……(何で私が怒られたの?)」

 

「(ドンマイ、なのは)」

 

「(ありがとう。フェイトちゃん)」

 

 なのはとフェイトがユリってるのを無視して、私は零冶君の方を見る。零冶君は取った景品を取り出し、誰かに渡した。

 

「今話をしている人に取るよう言われたって感じね」

 

「なるほどなぁ」

 

「そんなことはどうだって良いわ。問題は相手が誰かってことよ」

 

 私はアリサとはやての会話を一蹴した。

 

「なんか、葵がちょっと怖いよ」

 

「ま、まあ気持ちは少し分かるけど……」

 

 相手が気になって私にはアリシアとすずかの会話は耳に入らなかった。すると零冶君が相手とゲームセンターから出てきた。

 

「へ? 何でヴィータなん?」

 

 そう驚いたことに零冶君の相手は夜天の書の守護騎士の一人、鉄槌の騎士ヴィータだった。

 

「あの子ってクリスマスパーティの時に居た。はやての家族よね?」

 

「そうや……」

 

 アリサがはやてに確認してはやてが答えた。でもそんな事はどうだっていいのよ……

 

「はやて……これはどう言うことかしら?」

 

「し、知らん! 私も初めて知ったんや!」

 

「その言葉に嘘偽りはないわね?」

 

「ありません! 神様に誓って!」

 

「そう、なら良いわ」

 

 私は零冶君の方を見ると、ヴィータと手を繋ぎ、歩いているを見た。

 

「零冶君と手を繋いで歩くなんて……なんて羨ましい……」

 

「手を繋いでいるって言うより、ヴィータちゃんが手を引っ張って歩いてるだけなような……」

 

「なのは、何か言った?」

 

「いえ! 何でもありません!」

 

 そんな事はどうだって良いのよ。零冶君と手を繋いでいることが重要なのよ

 

「(今の葵には何を言っても無駄よ)」

 

「(恋する乙女は複雑なの)」

 

「(でもどうしてヴィータが?)」

 

「(分からへん、ヴィータからも何も聞いてへんし)」

 

「(でもあのヴィータの顔。明らかに恋する乙女の顔な気がするよ)」

 

「(まさかのライバル登場だね)」

 

 零冶君はヴィータに連れられ、アイスクリーム屋に行き、アイスを買っていた。ヴィータがお金を払っているところ見ると、さっきのUFOキャッチャのお礼のようだ。そして、商店街の道の真ん中にある円の形になったベンチに腰掛ける零冶君達。

 

「なんか楽しげに話してるわね」

 

「羨ましい。ヴィータそこを代わりなさい……」

 

「葵がまったく取り繕わなくなったよ」

 

「あ、あはは。こんなアオイ初めて見たよ」

 

「あなた達だってライ兄さんがあんな事されてたら冷静では居られないでしょ?」

 

≪ヴィータ《ちゃん》ちょっとそこ代わりなさい《代わるの》≫

 

 そんな会話をしているとヴィータが零冶君の食べているアイスを指差した。すると零冶君がそのアイスをヴィータの口の前に差し出した。

 

「ま、まさか……」

 

 そしてそのまま一口食べるヴィータ。

 

「…………」

 

 私は無言でその光景を見ている。

 

「(ど、どうしよう。葵ちゃんが喋らなくなったの)」

 

「(だ、だめよなのは。今葵に関わっちゃ。死にたいの?)」

 

「(こ、怖すぎて顔を見れないよ)」

 

「(だ、誰や、月無君を尾行するなんてゆうたんは)」

 

「(はやてちゃんだよ! ど、どうするの)」

 

「(と、取り合えず、成り行きを見守ろう)」

 

 ミンナガナニカイッテイルガ、ワタシニハキコエナカッタ。ナニヲオハナシシテルノカナァ?

 

≪ひぃ!≫

 

 零冶君と間接キスするなんてヴィータ許すまじ……今度氷漬けにしてやろうかしら?

 

「あかん、ヴィータオワタや」

 

「ヴィータちゃんご愁傷様なの」

 

「私、ヴィータのこと……忘れないよ」

 

「短い間だったけど、友達だと思っているわ」

 

「惜しい人をなくしちゃったね……」

 

 あのアイスを今度は零冶君が食べるのよね? ヴィータと間接キスするの? 私を差し置いて? どうして? ワタシダッテマダシテモラッテナイヨ?

 

 すると零冶君はアイスをそのままヴィータに渡した。ヴィータは遠慮しているようなことを言っている気がするが、結局アイスを受け取るヴィータ。

 

「なんや、月無君のほうは死亡フラグを回避したみたいやな」

 

「す、凄いね。あのままアイスを食べていたら……」

 

「うん、きっとアオイに……」

 

「何されるのかな?」

 

「ナニを?」

 

「おいバカやめなさい。アリシア」

 

 良かった……零冶君のファーストは私がもらうわ。絶対に! それに間接キスだって私の方が早いのよ! たぶん!

 

 そしてヴィータから離れ、再び歩き出す、零冶君。ヴィータは零冶君とは反対方向に歩き出した。つまり私達の方へやって来た。

 

「はやて。ヴィータをここに呼びなさい」

 

「イエス! サー!(ごめん、ヴィータ……弱い私を恨んでや)」

 

 私ははやてにヴィータをここに呼ぶよう指示を出す

 

『ヴィータ? 聞こえる?』

 

『はやて? うん、聞こえるよ?』

 

『そのまま歩くと私達がおるからちょっと来てくれる?』

 

『ん? おお、居た居た。分かったぁ』

 

 はやてがヴィータと念話で話をしてヴィータが私達の方へ歩いてきた。

 

「おっす、はやて。どうしんだ?」

 

「うん、ヴィータ。用があんのは私やないねん」

 

「ん? どういうことだ? じゃあ誰が?」

 

「私よ。ヴィータ」

 

 私はヴィータに話しかける。

 

「葵かよ。どうしたんだ? 怖い顔して」

 

「ヴィータ。零冶君と知り合いなの?」

 

「零冶と? ああ、知り合いだぜ。さっきも会ってたし」

 

 知ってるわよ。見てたもの。羨ましかったよ。しかも呼び捨てですって?

 

「そう、一体どういう関係なのかしら?」

 

「関係って言ってもなぁ……友達か?」

 

「じゃあ、別に零冶君のことが好きって訳じゃないのね?」

 

「な、なんでそんな事お前に言わきゃいけねぇんだよ」

 

「はやて?」

 

「イエス! サー! ヴィータ。命が惜しかったら正直に言うんや」

 

「ど、どうしたんだよ。はやて!」

 

「私も命が惜しいんや……」

 

「そんなことどうでもいいのよ。それで、どうなの? ヴィータ?」

 

 私はヴィータに聞いた。

 

「……好きだよ。悪りぃかよ」

 

 そ、そんな、まさかライバルが居たなんて……いえ落ち着きなさい葵。友達としての好きかも知れないわ

 

「そ、それは友達として? それとも異性として?」

 

「……それはちょっと良くわかんねぇけど。少なくとも一緒に居ると胸の奥がポカポカしてくる

 感じだ」

 

 自覚は無いけど、異性として好きってことね。ふふふふふふふふふ……零冶君は渡さないわ!

 

「そう、なら私達はライバルってことね」

 

「葵、お前も零冶のこと好きなのか?」

 

「ええ、好きよ」

 

「……負けねぇかんな」

 

「望むところよ」

 

 私とヴィータは見つめあった。

 

「何だか、二人の間に火花か見える気がするわ」

 

「まさかのライバル登場だね」

 

「私はどっちを応援したらいいんや?」

 

「それにしても、ヴィータは何時月無君と出合ったの?」

 

 そうね。それは聞いておかなくちゃ

 

「大体、四ヶ月くらい前かな? あたしがはやてに買い物頼まれてここに買いに着たときに

 あそこのゲーセンのUFOキャッチャののろウサの景品が欲しくてずっと見てたんだ。

 そしたらあいつが話しかけてきて、のろウサの人形を取ってくれたんだ」

 

「ああ、あの時かぁ、のろウサ人形を持って返って来た時があったなぁ」

 

「そん時からたまに会った時に話たりしてたな」

 

 そ、そんなに前から零冶君と知り合いになっていたなんて。

 

「それで、はやて達は何やってんだ?」

 

「今、月無君を尾行してるんだ」

 

 ヴィータの疑問にフェイトが答えた。

 

「何やってんだお前ら?」

 

「元々ははやてちゃんが尾行するって言ったんだよ?」

 

「うんうん、葵ちゃんの好きな人がどんな人か知りたくて」

 

 ヴィータが呆れた顔しながら、言ってきた。それになのはとフェイトが答える。

 

「み、皆もノリノリやったないか」

 

「まあ、否定はしないわ」

 

「まさかこんな展開になるとは思ってなかったけどね」

 

 はやてはちょっと動揺したようにいい、アリサとすずかが答えた。

 

「それで? どうする? まだ続ける?」

 

 アリシアが私達に聞いてきた。そんなの決まってるじゃない。

 

「続行よ」

 

「へ? 葵ちゃん?」

 

 私が言うと、はやてが意外そうな顔をして言った。

 

「ここまで来たら、徹底的に調べるわ。零冶君の女性関係を……」

 

「(なんか、旦那さんの浮気を調査する奥さんみたいなの)」

 

「(もう誰にもアオイを止められない)」

 

「(一体誰や月無君を尾行するゆうたんわ)」

 

「「「「「(はやてちゃんだよ!)」」」」」

 

 こうしてヴィータを加えた私達は零冶君の尾行を再開した。ふふふ、浮気は許さないわ……

 

――≪葵《ちゃん》が怖い≫

 

葵 サイドアウト

 

 

零冶 サイド

 

『うわぁ、まだつけて来るのかよ』

 

『マスターは人気者ですね』

 

『冗談言ってる場合か? 今日だけで何回虫の知らせ(シックスセンス)が発動したと思ってるんだ』

 

『確か、横断歩道のお婆ちゃんを見つけた時と公園の女の子を見つけた時とヴィータちゃんに

 一口上げたアイスを食べようとした時ですね』

 

『そうだ。この20分足らずで三回だぞ? これは異常だ』

 

『やっぱりこの葵ちゃんたちの尾行の影響ですかね?』

 

『恐らくな。何があるかは分からないが、あそこで無視していたら何か俺に取って不都合な

 未来になったんだろうな』

 

『本当にマスターの人生は波乱万丈ですね』

 

『この世界は残酷だ』

 

『そしてとても美しい』

 

『はぁ、取り合えず、このままにして置くか……もう何もありませんように』

 

『フラグ立て、お疲れ様です』

 

『やめてくれマジで』

 

 そうして俺はそのまま駅方面に歩き出した。

 

零冶 サイドアウト




前書きでも書きましたが、念能力紹介はまたいづれ記載します。
申し訳ありません。


零冶の念能力紹介のコーナーです。

では、次の念能力はこれだ!


 28、全快再生(フルリペア)
  系統:強化系
  説明:触れている対象の再生力を超強化して、全快させる能力。
     再生可能なものは生物に限らず、植物や大地のようなものも再生可能
     また、無機物でも修理が可能なものは使用できる。
     元の状態に回復させるものなので、完全修復(パーフェクトリカバリー)が過去に戻すものなら
     こちらは未来に進めるという感じの能力。
     未来に進めると言っても、無条件に未来の状態にするのではなく、
     何もせず放って置くと死んでしまうようなものを治療をしながら未来に進めると
     いう感じ。
     例えば病院に通い、全治一ヶ月で治る怪我は薬などを使い、時間をかけて徐々に
     治してが、その過程を短縮し、たった数秒で治すとができる。
     無機物に関しては例えば刃こぼれした剣は刃を研ぎなおせば使える。
     折れた剣は打ち直せば使えるようにその修理する過程を飛ばし、修理することができる
     簡単に言うと【怪我をする】→【治療する】→【完治する】の【治療する】を無くし、
     【怪我をする】→【完治する】に短縮する能力。
     もちろん自分自身にも使用は可能。

  制約
   1、対象に直接触れていなければならない
   2、対象全体をオーラで包まなければならない(要するに周をする)
   3、対象の治療・修理の内容を把握しておかなければならない

  誓約
   なし


 作ったはいいものの今の所一度も使用した描写がない不遇な能力です(笑)

 作者本人ももっと使用する機会があるだろうと思っていたのに中々使う機会がやって来ず、どうしてこなった? 状態です。

 まあ、あのバグチートが自分自身に使うことはまず無いですし、瀕死になったのはシャマルの料理食ったときだけです。

 シャマルの料理の時も瀕死過ぎて自分で自分に使えないくらいだったので、愛里に完全修復(パーフェクトリカバリー)で直してもらったので、使う機会が無かったです。

 何故、使うことが出来なかったかと言うと意識が朦朧としていたこともそうですが、この能力の制約にある通り、治療方法を知っている必要があり、あの段階では治療方法も不明だったのため、使用できなかったためです。シャマルの料理恐るべし……

 ただ、今後一回だけ使用するシチュエーションが思いついているので、そこで使用します。その一回だけの為に作られた能力だと割り切っていこうかと思っています。

 説明を読む限りではとんでもない能力のはずなのに……どうしてこうなった?

って感じです。では

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