原作を放って置くとバッドエンドになるんですが、どうしたら良いですか?   作:月の光

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前回は皆様をだましてしまい、本当に申し訳ありませんでした。
今後、ああいうネタは二度とやりません。

たくさんの方々に惜しんでもらえたこと、不謹慎ながら嬉しくなりました。
これからも皆様に楽しんでいただけるように精進してまいります。

やっとこれで闇の書編は完結です。
と言ってもこの話は闇の書とは全く関係がないですが、
かと言って空白期と言う訳ではないので、ここに掲載します。

では、どうぞ


37_零冶「どうしてこうなった?」ミスト[どん♪ まい♪]

??? サイド

 

 やあ、俺は月無 零冶……の影分身体だ。今日は本体と愛里が闇の書修復作戦に行っている。今日の俺の予定は月無 零冶のアリバイ作りのために桜羽蒼乃と高町士郎に会うことだ。そして欲を言えば、アリサ・バニングスと月村 すずかに会う事。まあこっちはできればでいいけどな。

 

 今日の俺のミッションで必ずやらなければならないのは蒼乃に会うことだ。最悪高町士郎に会わなくても、蒼乃に会って置けば必ず、葵にその話が行くだろう。そうすれば俺のアリバイが出来る。士郎さんに会っておけば大人のアリバイ証言になるが、まあ、一番警戒すべきは葵の感の鋭さだ。

 

 前情報では今日蒼乃は母親と駅前のデパートに買い物に行く予定だ。そこで蒼乃の前を横切ることで俺に気付いた蒼乃は俺に話し掛けて来るだろう。そして一言二言話しをして別れた後、翠屋に行き士郎さんに会えば、オッケーだ。

 

 アリサとすずかは今日二人で出かける予定だと把握しているから後は、二人を探して前を横切り、目に止まればオッケーだ。さて、時間は九時ちょっと前か。そろそろ行くとしよう。ではミッション開始だ。

 

解析眼(インペクト・アイ)発動」

 

 俺は解析眼(インペクト・アイ)で瓶底眼鏡を作り、眼鏡をかける。

 

「それと」

 

 俺は変身魔法で前髪を伸ばし、目が隠れるようにする。

 

「よし、完璧だ。それじゃ、行ってきます」

 

「行ってらっしゃ~い」

 

 え? 今のは誰かって? あれは愛里に変身しているもう一つ影分身だよ。俺のアリバイができても愛里のアリバイが出来てなかったそれはそれで意味は無いからな。そっちはそっちで家の家事をしてもらい、適当に買い物にでも行ってもらうつもりだよ。

 

 俺は家を出て、駅前のデパートに来た。

 

――さて蒼乃はどこかなと

 

 円を広げて蒼乃を探す。

 

――居た。二階の子供服売り場か。

 

 俺は今一階にいるから二階に上がるため、エスカレータに乗る。さて、上手く蒼乃の視線に入らないとな。

 

「あ! 零冶お兄ちゃんだ!」

 

「え? お兄ちゃん?」

 

 よし、蒼乃が俺に気付いた。そして俺の予想通りの反応だ。

 

「ん? ああ、蒼乃。こんにちは。久しぶりだね」

 

「こんにちは!」

 

 そう挨拶をした蒼乃は俺に抱きついてきた。

 

「えっと……」

 

 蒼乃の母親が戸惑ってるな。まあしょうがないが。

 

「あ、こんにちは。葵さんの友達の月無 零冶です。聖祥の三年二組なので、葵さんとクラスは

 違いますが」

 

「あ、これはご丁寧どうも、葵と蒼乃のお母さんの美咲です」

 

 ッ! 美咲だと? 黒羽葵の母親と同じ名前だ。なんだこの偶然は……まるで……いや考えるのは止そう。根拠が無いんだから。それにあの美咲さんとは容姿が全然違うだろう。どちらも美人であることには変わらないが。

 

「美咲さんですね。よろしくお願いします」

 

「ええ、よろしくね」

 

「蒼乃、お姉ちゃんは一緒じゃないのか?」

 

「うん! 今ね。お姉ちゃんはね。悪者と戦ってるの!」

 

「悪者?」

 

「あっ! いやその! ゲ、ゲームの話よ。ゲームの」

 

 美咲さんそこは慌てちゃいかんでしょ。気持ちは分からんでもないが。

 

「そうですか。葵さんがゲームって言うのも意外ですね。あまりそう言う話は聞かないので、

 僕は結構ゲームやりますが」

 

「そうなのよ~。(こら、蒼乃。あの話は内緒って言ったでしょ)」ボソ

 

「ごめんなさい。ママ」ショボン

 

 どうやら美咲さんに少し怒られたらしいな。まあ、これで俺の一つ目のミッションは成功だ。適当に時間を潰して、昼飯に翠屋に行こう。

 

「それじゃ、蒼乃。またね」

 

「ええ!? やだ! 零冶お兄ちゃんも一緒にお買い物しようよ!」

 

 ……この展開は読めなかったな。まあ、美咲さんが止めるだろう。

 

「こら、蒼乃。わがまま言っちゃいけません。零冶君には零冶君の用事があるのよ」

 

 よし、これでいい。

 

「やだ! やだ! 零冶お兄ちゃんも一緒なの!」

 

 まあ、予想通りの反応だ。美咲さんお願いします。

 

「めっ! 言う事を聞きなさい! 蒼乃」

 

 美咲さんは常識人。はっきりわかんだね。

 

「うぅ……零冶……お兄ちゃんも……一緒じゃなきゃ……やだもん」ぐすん

 

 ついに泣き出してしまった。これは心が痛むな……きっと桜と重ねているだろう。仕方ないな。

 

「美咲さん」

 

「何かしら?」

 

「美咲さんさえよければ、ご一緒してもいいですか?」

 

「え? いえ、零冶君に悪いわよ。蒼乃には言い聞かせるから大丈夫よ」

 

「僕は大丈夫ですよ」

 

「……そう? じゃあお願いしてもいいかしら」

 

「はい、ただ僕の買い物にも付き合って貰っていいですか?」

 

「ええ、構わないわよ」

 

「それじゃ、一緒に行こうか。蒼乃」

 

「本当?」

 

「もちろん」

 

「わーい! 零冶お兄ちゃん大好き!」

 

 ふふ、本当に桜みたいだな。

 

「零冶お兄ちゃん。お手手」

 

 蒼乃が手を繋ぐのをせがんで来た。

 

「はい」

 

「えへへ~」

 

「ふふ、こうして見ると本当に兄妹みたいね」

 

 こうして俺達はデパートを歩いて回った。

 

「あっ、僕あそこに用があるです」

 

 そう言って俺は指差した先には

 

「ゲームショップ?」

 

「はい、新作のゲームが出たらしいので、買いに来たんです」

 

「それじゃ、行きましょうか」

 

 俺達はゲームショップの方へ歩き始めた。

 

「すみません」

 

「いいのよ。寧ろこっちこそ買い物に付き合ってもらっちゃってごめんなさいね」

 

「構いませんよ。僕も蒼乃と話しが出来て楽しいですから」

 

「蒼乃も楽しい!」

 

「ふふ、そっか」

 

 そしてゲームショップの前に着いた。

 

「それじゃ美咲さん少し待ってて下さい」

 

「ええ、行ってらっしゃい」

 

「蒼乃、ちょっと手を離してくれるかな?」

 

「うん……直ぐ戻ってきてね?」

 

「もちろん」

 

 俺は蒼乃から手を離し、ゲームショップに入っていった。新作ゲームを手に取り、レジに向かう。

 

「お会計が5600円になります」

 

「はい、6000円でお願いします」

 

「400円のお釣りです」

 

「どうも」

 

 俺は会計を済ますと蒼乃達の所に戻った。

 

「お待たせしました」

 

「そんなに待ってないから大丈夫よ。何を買ったの?」

 

「ファイナルクエスト4って言うRPGです」

 

「ふ~ん、私はゲームをやらないから分からないけど、面白いのかしら?」

 

「そうですね。RPGって言うのは大抵が一人用のゲームですから、好きな人は好きって

 感じですかね。みんなで出来るゲームとかだったら、パーティゲームとかありますから

 葵さんと家族でやるのも良いんじゃないでしょうか?」

 

「そう言うゲームもあるのね。でも葵もあまりゲームやらないからな~」

 

 お~い、美咲さん。さっき葵はゲームやってるって言ったじゃないですか、しっかりして下さい。そんなこと言われたら突っ込まないと逆に不自然でしょうが。

 

「あれ? さっきゲームやってるって」

 

「え? あっ! そうだったわね。おほほほほ!」

 

 何てあからさまな誤魔化し方だ。ここまで来ると逆に清清しいぞ。

 

「まあ、深くは聞きませんが」

 

「ごめんなさいね(この子本当に小学三年生なのかしら、大人顔負けの気の使い方よ?)」

 

「うぅ、蒼乃歩くの疲れちゃった。零冶お兄ちゃん。おんぶ~」

 

 蒼乃が俺におんぶをせがんで来た。話を切る事が出来たナイスタイミングだ。蒼乃。

 

「こら、蒼乃わがまま言っちゃ駄目よ。もう少し頑張りなさい」

 

「もう歩けない~」

 

 そう言ってその場にしゃがみ込む蒼乃。仕方ないな。

 

「ほら、蒼乃。おぶさりな」

 

 俺は蒼乃に背中を向け、しゃがむ

 

「わーい!」

 

 蒼乃は俺の背中に乗ってきた。

 

「零冶君。いいのよ。私がするから」

 

「蒼乃は軽いから大丈夫ですよ。さあ、行きましょう」

 

「本当にごめんなさいね」

 

「零冶お兄ちゃんの背中あったか~い」

 

「そうかい? ありがとう」

 

「本当に良い子ね。息子に欲しいわ」ボソ

 

 美咲さん物騒なこと言わんで下さい。聞こえてますよ。それからしばらくデパートの中を見て回った。

 

「そろそろ、お昼ですね」

 

「あら? もうそんな時間? 楽しい時間はあっと言う間ね~」

 

「そうですね。僕も楽しかったですよ」

 

「……そうだ! これからお昼を食べに行きましょう? 私がご馳走するわ」

 

 いやそれはまずい。俺はこの後翠屋に言って士郎さんに会う任務があるんだ。ここは断ろう。

 

「いえそんな、悪いですよ」

 

「気にしないで、蒼乃の相手して貰ったお礼だと思って」

 

 もしお礼だと言うならこのまま流して欲しいんだが、どうする? この手の話はあまり断ると印象が悪くなる。かといって受けるわけには……いや、最悪翠屋は帰りに寄って、お土産を買うだけでも大丈夫か……仕方ないな

 

「……なら、お言葉に甘えます」

 

「そう? じゃあ行きましょう。近くに美味しい喫茶店があるのよ」

 

 あれ? もしかして

 

「もしかして、翠屋ですか?」

 

「あら? 知っているの?」

 

 ……これは良い偶然だ。俺が一人で行くより自然に翠屋に行く事が出来るぞ。

 

「はい、あそこは有名ですし、僕も結構行くんです。元々そこでお昼にしようと思ってたので」

 

「なら丁度良かったわ」

 

 本当に丁度良かったですよ。これで俺の方のミッションはほぼ達成だ。

 

「そうですね。蒼乃。お兄ちゃん疲れちゃったからそろそろ降りてくれるか?」

 

「うん、分かった~」

 

 腰を下ろし、蒼乃を降ろす。

 

「良い子だ」

 

「えへへ~」

 

 俺は蒼乃の頭を撫でる。蒼乃は目を細めて笑顔になる。それから俺達は移動を開始し、翠屋に着いた。

 

 

カラン、カラン

 

 

「いらっしゃいませ。翠屋へようこそ」

 

「こんにちは、士郎さん」

 

「ああ、桜羽さん。いらっしゃいませ」

 

「席空いてますか?」

 

「はい、丁度今、空いたところです」

 

「それじゃ、三人お願いします」

 

「三人?」

 

 士郎さんは三人と言う言葉に疑問を持ったようだ。それはそうか、葵は闇の書の方に行っているから美咲さんと蒼乃だけだと思うだろうし、旦那さん? 残念ながら旦那さんは休日出勤だ。お仕事お疲れ様です。

 

「こんにちは、士郎さん」

 

「おや、零冶君かい? これは随分と珍しい組み合わせだね」

 

「はい、デパートで買い物していたら偶然会ったんです」

 

「そうかい、僕としては桜羽さんと知り合いだったことに驚いたけどね」

 

「実は半年くらい前に葵さんと友達になったんです。蒼乃を通じて」

 

「おや? そうなのかい? 良かったよ。君はいつも一人だったから友達がいないのかと

 思っていた」

 

 大正解。友達なんていないさ。葵とは表面上の付き合いしかないからな。

 

「失礼ですね」

 

「ああ、ごめんごめん」

 

「友達なんて葵さん以外にいませんよ」

 

「そっちなのかい!」

 

「ふふ、お二人は随分仲が良いですね」

 

「いやはや大人の僕がからかわれてたら世話無いですけどね。席に案内します」

 

「お願いします」

 

 俺達は士郎さんにテーブル席に案内された。

 

「こちらがメニューでございます。ご注文が決まりましたら、お声かけください」

 

「「「はい《は~い》」」」

 

 士郎さんからメニューを渡され、俺が席に着くと。

 

「蒼乃の席ここ!」

 

 俺の膝の上に乗ってくる蒼乃。

 

「こら蒼乃、お行儀悪いでしょ。ちゃんと椅子に座りなさい」

 

「やぁ! 蒼乃ここに座るの!」

 

 う~ん、好かれているのは嬉しいんだが、なぜこんなに好かれたんだ?

 

「蒼乃、ご飯が来るまでだぞ? ご飯が来たらちゃんと椅子に座ること。良いね」

 

「うん!」

 

「零冶君ごめんなさいね?」

 

「構いませんよ」

 

 そうして、俺達はメニューに目を通す。

 

「遠慮せず、好きなもの頼んで良いからね?」

 

「分かりました。蒼乃は何にする?」

 

「お子様ランチ!」

 

「ふふ、そっか」

 

 そんな会話をしていると

 

 

カラン、カラン

 

 

 誰かが翠屋に入ってきたな。残念だったな。さっき席が空いたところって言っていたから直ぐには座れないぞ。俺はそう思い、扉の方へ視線を移すと俺は唖然とした。

 

――は?

 

「いらっしゃいませ。翠屋へようこそ」

 

「「こんにちは~」」

 

「ああ、いらっしゃい、アリサちゃん、すずかちゃん」

 

 アリサ・バニングスと月村 すずかが入ってきた。何だこの偶然は……いや、二人で出かける予定だったんだ。ここに来ることは予想できる範囲か、俺もまだまだだな。しかし、どうやら最後のミッションは失敗に終わりそうだ。

 

 これだけ混雑していれば、あの二人の視線に止まるのは難しい。更に席が埋まっているからあの二人がここを後にして別のところに向かうかもしれない。それなのに食事が終わった午後に二人の視線に止まったら偶然には出来過ぎで逆に不自然になりかねない。

 

 まああの二人の視線に止まるのは必須ではないからいいか。

 

「席は空いてますか?」

 

「ごめんね。今埋まっちゃったからしばらく掛かりそうなんだ」

 

「あっ、そうなんですか……どうするアリサちゃん」

 

「そうね~、仕方ないから別のところに行きましょうか?」

 

「すまないね……あっ! ちょっと待っててくれるかな?」

 

 そう言い残し、士郎さんがこっちに向かってくる。ん? まさかとは思うが……

 

「桜羽さん、ちょっと良いですか?」

 

「はい? 何ですか?」

 

「アリサちゃんとすずかちゃんを同席させても良いですか?」

 

 予想通りか! ちょちょちょっとちょっと待って! 士郎さん? 何で俺には聞きませんの? 俺の意思は無視ですのん?

 

「えっと、私と蒼乃は構わないですが……」

 

「アリサお姉ちゃんとすずかお姉ちゃんも一緒にご飯なの? わーい!」

 

 美咲さんが俺を見て言いよどむ。美咲さん貴方本当に良い人だな。でもまあ、断り辛くなっただけですけどね!

 

「僕は構いませんよ? あの二人が僕が居ても構わないならですが……」

 

「そうかい? 悪いね。ちょっと確認してくるよ」

 

 悪いと思うなら最初に俺にも聞いてくれ。まあ、どの道同じ結果になっていただろうが……士郎さんが二人のところに戻って話をしている。二人とも頼むから断ってくれ! 俺の祈りは届かず、こちらに士郎さんと一緒にこちらに向かってくる二人。神は死んだあああ!

 

「それではこちらの席へどうぞ」

 

「こんにちは、美咲さん、蒼乃」

 

「こんにちは」

 

 二人は美咲さんと蒼乃に挨拶をする。

 

「えっと、初めましてよね? 私、アリサ・バニングス。聖祥の三年一組よ」

 

「初めまして、月村 すずかです。同じく聖祥の三年一組です」

 

 バニングスと月村は俺に挨拶をした。

 

「初めまして、月無 零冶です。聖祥の三年二組です。よろしくお願いします」

 

 俺も無難な挨拶をする。

 

「ああ、あんたがあの」

 

 どういう意味だ? バニングスよ

 

「アリサちゃん、ちょっと失礼だよ? よろしくね? 月無くん」

 

「ああ、ごめんごめん。よろしく。月無」

 

「うん、よろしく」

 

 挨拶を終え、月村が俺の右隣りへ座り、バニングスが俺の真正面の席に座った。

 

「はい、月村さん。メニュー」

 

「ありがとう」

 

「私にはくれないのかしら?」

 

「僕が持っていたメニューは一つだけだからね」

 

「まあいいわ。すずか一緒に見せて」

 

「はい、アリサちゃん」

 

 そう言ってメニューをテーブルに置き、二人で見えるようにし、メニューを眺める二人。

 

「二人ともここは私がご馳走するから、遠慮なく頼んでね」

 

 美咲さんが二人に言った。

 

「え? そんな悪いですよ」

 

「そうです。私達そんなつもりじゃ……」

 

「良いのよ。ここは大人を立てると思って」

 

 美咲さんにそう言われて、顔を見合わせる二人。

 

「……それじゃ、ご馳走になります」

 

「私もご馳走になります」

 

「うん、素直でよろしい」

 

 しばらくして二人は注文が決まったようだ。

 

「それじゃ、店員さんを呼ぶわね?」

 

「「「「はい《は~い》」」」」

 

「すみませ~ん」

 

 美咲さんが店員に声を掛けると

 

「はい、ご注文は何になさいますか?」

 

 恭也さんが注文を取りに来た。

 

「お先にどうぞ」

 

 美咲さんが注文を促してきた。

 

「ほら、蒼乃。注文言いな」

 

「うん、お子様ランチとアップルジュース! 後ね。シュークリーム!」

 

「お子様ランチとアップルジュースとシュークリームですね」

 

 注文をメモに取る恭也さん。

 

「それじゃ、僕から先に言うね。カルボナーラとホットコーヒー、後シュークリーム一つ」

 

「カルボナーラとホットコーヒー、シュークリームですね」

 

「次は私ね。アスパラとキノコのアラビアータとホット紅茶、ザッハトルテ一つ」

 

「アラビアータとホット紅茶、ザッハトルテですね」

 

「じゃあ次は私だね。日替わりランチとホット紅茶、ラズベリータルト一つ」

 

「日替わりランチ、ホット紅茶、ラズベリータルトですね」

 

「最後に私ね。日替わりランチ、ホット紅茶、シュークリーム一つで」

 

「日替わりランチ、ホット紅茶、シュークリーム一つですね。ではご注文繰り返します。

 お子様ランチ一つ、カルボナーラ一つ、アラビアータ一つ、日替わりランチ二つ。

 アップルジュース一つ、ホットコーヒー一つ、ホット紅茶三つ。

 シュークリーム三つ、ザッハトルテ一つ、ラズベリータルト一つ。

 以上でよろしいでしょうか?」

 

「「「「「はい《は~い》」」」」」

 

「かしこまりました。少々お待ち下さい」

 

 注文を取り終えた恭也さんは厨房へ向かって行った。

 

「そう言えば……何であんたが美咲さん達といるの?」

 

 おいおい、今更だな。バニングス

 

「デパートで買い物してたら偶然会ったんだよ。それから一緒に買い物してたんだ」

 

「へぇ~そうなんだ。蒼乃ちゃんに随分懐かれてるだね」

 

「うん! 蒼乃、零冶お兄ちゃん大好き!」

 

 月村にそう言われたら、蒼乃が答えた。

 

「ふふふ、そうなんだ」

 

「良かったじゃない? お兄ちゃん?」

 

「まったく、僕みたいな地味なやつどこが良いんだか」

 

「まったくね」

 

「ア、アリサちゃん……」

 

 ドストレートでディスられたぞ、俺。まあ、そのための変装だから別に良いけどね。

 

「それにしてもあんたコーヒーなんて飲めるの?」

 

「うん、ブラックは無理だけどね。士郎さんの入れるコーヒーは美味しいから。

 でもバニングスさんの頼んだアラビアータだって結構辛いけど大丈夫なの?」

 

「大丈夫よ。ここのは絶妙な辛さだから」

 

 流石、バーニング・アリサ。燃えているから辛いものは大丈夫って訳だな。

 

「何か失礼なこと考えてない?」

 

「そんなことないよ?」

 

 心の中でディスってたら感づかれた。気をつけよう。

 

「月村さんはラズベリーが好きなの?」

 

「特別好きって訳じゃないよ。ここのデザートは何食べても美味しいから」

 

「そうだね。一流のパティシエールだからね。桃子さんは」

 

「へぇ~、あんた詳しいのね。結構ここに来るのかしら?」

 

「うん、結構来てるよ。常連って程ではないと思うけど」

 

「そうなんだ~、でも私、月無君のこと見たことないなぁ」

 

「そう? 僕は結構、見かけるよ? あと高町さんと桜羽さんもね。最近ではテスタロッサさん達

 姉妹も一緒だよね」

 

「よく知ってるわね。てことは結構ニアミスしてるのかしら」

 

「まあ、僕はお土産にシュークリームを買うくらいだから、あまり見かけないのかもね」

 

「ああ、そう言うこと」

 

 そんな雑談をしていると今度は美由希さんが注文を運んできた。

 

「ご注文お待たせしました。お子様ランチの方?」

 

「は~い」

 

「それじゃ、蒼乃。椅子に座ろうか?」

 

「うん!」

 

 蒼乃が元気よく返事をする。蒼乃は俺の膝から下りて俺の左の席に座る。

 

「ふふふ、はい」

 

 蒼乃の前にお子様ランチを置く美由希さん。

 

「アラビアータの方?」

 

「あっ、はい。私です」

 

 今度はバニングスが返事をする。

 

「はい、どうぞ。残りも今お持ちしますね」

 

 そう言って、厨房に戻る美由希さん。

 

「先に食べてていいわよ?」

 

「蒼乃、零冶お兄ちゃんと一緒にいただきますするの」

 

「じゃあ、私も待ってます」

 

「はい、日替わりランチの方」

 

「あっ、はい。私と」

 

「私ね」

 

 今度は月村と美咲さんの前に食事が置かれた。

 

「はい、カルボナーラです」

 

 そして最後に俺の前に食事が置かれた。

 

「お飲み物もただいまお持ちいたします」

 

 そう言い残し、厨房に戻る美由希さん。

 

「それじゃ、いただきましょうか?」

 

「「「「いただきます《いただきま~す!》」」」」

 

 そうして、食事が始まった。俺は眼鏡を外し、髪を上げる。流石に食事の時は邪魔だからな。

 

「「「「……」」」」

 

 そうすると急に無言になり、俺を見つめてくる面々。どうしたんだ?

 

「零冶お兄ちゃん! カッコいい!」

 

「そうかい? ありがとう。蒼乃。お世辞でもうれしいよ」

 

「いや、お世辞じゃなく本当にかなり整ってるわよ?」

 

「そうだよ! ビックリしたよ。どうしてそんな眼鏡してるの? もったいないよ?」

 

 今度はバニングスと月村が俺に言ってくる。

 

「そうかな? 僕目立ちたくないから、いつもこうしてるんだ」

 

「ええ!? もったいない! それを見せれば葵もイチコロよ?」

 

「何がイチコロなのか分からないんだけど……それに桜羽さんには前に見せたことあるよ?」

 

「何ですって?」

 

「葵ちゃん、そんなこと言ってない……」

 

「これは今度問い詰めないといけないわね」

 

 何か良く分からないけど、今度葵は碌な目に合わないと言うのは分かった。

 

「れれれれ零冶君! 今度読者モデルやらない!」

 

 今度は美咲さんが食いついてきた。何事かああぁ!

 

「み、美咲さん? 急に言われても分かりませんよ?」

 

 冷静な月村が美咲さんに言った。ナイスだ。

 

「ああ、ごめんなさいね。私、仕事で子供服の雑誌の編集長やっているのよ。でね。今、

 男の子のモデルを探してたんだけど、ピンと来る子がいなくてね。でも! 零冶君を見て

 ビビッと来たわ! ああ! アイディアが! アイディアがあふれてくる!

 今すぐにでも書き留めたいくらい!」

 

 な、なるほど。そういう事か……だが、美咲さんには悪いが。

 

「すみません。お断りします」

 

「ええ!? な、何で? 大丈夫よ! 零冶君なら人気モデルになれるわ!」

 

 いや、そう言う問題じゃなくて

 

「あの、僕はあまり目立ちたくないので……申し訳ありませんが……それにモデルなら

 バニングスさん達のクラスにいる。神宮寺君や峯岸君の方が良いんじゃないでしょうか?」

 

 俺はあの二人を犠牲に……逃げる!

 

「う~ん……確かにあの二人も逸材何だけど。こう……ビビッと来ないのよねぇ」

 

 考え込む美咲さん……この流れはまずいな。何とか話を終わらせよう。

 

「まあ、その話は置いておいて先に食事に「零冶お兄ちゃんモデルやるの? わーい!

 お兄ちゃんモデルさんだ~」」

 

 蒼乃おおおお! 何てことしてくれやがりますか!? 話が切れなかったじゃないか!

 

「蒼乃も零冶君がモデルだと嬉しいわよね~?」

 

「ね~!」

 

 美咲さんは蒼乃を味方に引き込んだ。くっ! 落ち着け俺。作戦を考えるんだ。まだ慌てるような時間じゃない! まずは状況分析だ。蒼乃は既に敵の手に落ちた。バニングスと月村は面白そうだという顔でこちらを見ており、孤立無援、いや四面楚歌の状態だ。

 

 諦める? 馬鹿を言え、考えろ! 考えて考えて考え抜く! それでも答えが出なかったら? もっと考える! 空気王もそう言っていたじゃないか! ただ断るだけではいつまで食らいついてくるだろう。バニングスや月村に助けを求める? 無理だ見放され、やったらどうだと言われるだけ。

 

 諦める訳には行かなくて断ることもできない。あれ? 詰んでね? いや! 諦めたらそこで試合終了だ! そうだ! 断れないのならば!

 

「う~ん……それじゃ保留ってことで良いですか? まだ決心が付かないので……」

 

 そう、俺の考えたのは断るのではなく、問題を先送りにすることだ! 何? それじゃ解決にはならないって? 昔のジャイ○ンは良いこと言った。そう、いつ返さないって言った? 永遠に借りて置くだけだ! とな。つまり、永遠に保留にして置くだけだ!

 

「そ、そこを何とか! 本当に男の子のモデルが居なくて困ってるのよ!」

 

 そうだった……神は死んでたんだった……神は言ったここで死ぬ定めだと……すまん本体! 後は任せた!

 

「……分かりました。その話お受けします」

 

「ほ、本当に!「ただし!」」

 

「一回だけですよ?」

 

「ええ! それで良いわ。ありがとう!」

 

 はあ~……どうしてこうなった? 俺が未来に絶望しているとバニングスが美咲さんに耳打ちをする

 

「(葵にこのこと話して、葵にもモデル頼んでみたらどうですか? きっと受けますよ?)」

 

「(あら、良いわね。葵もいつも断ってばかりだから零冶君を餌にしましょう♪)」

 

 おい、聞こえてるぞ。俺の聴力EXを舐めるなよ? やろうと思えば10キロ先の針を落とした時の空気を裂く音を聞き取れるレベルだぞ?

 

「あはは……その頑張ってね?」

 

 月村は申し訳なさそうな顔で言った。

 

「はあ~……目立ちたくないのに」

 

「零冶お兄ちゃんがモッデル! 零冶お兄ちゃんがモッデル!」

 

 最後まで元気な蒼乃だった。それから食事を済ませた俺たちは翠屋の外に出た。

 

「それじゃ、モデルの件はまた連絡するわ」

 

「はい、念のため言っておきますが、一回だけですからね?」

 

「もちろんよ」

 

「それじゃ、僕はここで失礼します」

 

「ええ! 零冶お兄ちゃんも一緒に帰ろうよぉ」

 

 蒼乃勘弁してくれ。もう俺のライフはゼロだよ……

 

「本当に兄妹みたいね……」

 

「そうだね」

 

 バニングスと月村が少し離れたところで話をしている。仕方ないな。

 

「蒼乃……ちょっとおいで」

 

 俺は手招きして蒼乃を呼んだ。

 

「なぁに?」

 

「おまじないしてあげる」

 

 俺はしゃがみ、蒼乃のおでこにキスをする。

 

「キャッ!」

 

「わぁ~!」

 

「あらあら」

 

「わっ! えへへ~」

 

 俺の行動に驚く、面々

 

「うん、再会の味がする。きっとまた会えるよ」

 

「うん! 分かった! バイバイ! 零冶お兄ちゃん!」

 

「うん、バイバイ。蒼乃。それじゃ美咲さん、バニングスさん、月村さん。またね」

 

 俺は手を振りその場を後にする。

 

「何かすごいのを見た気がするわ」

 

「うん、月無君大胆だね」

 

「ふふふ、蒼乃良かったわね~」

 

「うん!」

 

 俺はそのまま家に帰った。翠屋で結構話込んでたからな。もう、本体も帰ってきてるだろう。

 

「ただいま~」

 

「おかえり~」

 

「本体は?」

 

「戻ってきてるよ」

 

「了解」

 

 俺は部屋に行くとベットの上に座っている本体に会った。

 

「おかえり。首尾は?」

 

「……とりあえずミッションは完遂した」

 

「そうか、御苦労だった「ただ」ん?」

 

「その何ていうか……まあ、今日何があったか知らせるためにとりあえず俺は消えるな」

 

「ああ、分かった」

 

「じゃあ、後はよろしく、すまん!」

 

 こうして俺はボンっと音を立てて消えた。

 

 

影分身 サイドアウト

 

 

 

零冶 サイド

 

 影分身が消えたあとその記憶が俺の頭の中に入ってきた。

 

「は?」

 

 何だこの記憶は? 確かにミッションは完遂しているけどさ、何に読者モデルって? どういうこと? どうしてこうなった? いや、どうしてこうなったか経緯は分かるけどさ。あえて言おう。どうしてこうなった? と。

 

[どうしたんですか? マスター]

 

 ミストが俺の様子を見て聞いてきた。

 

「ああ、何か良く分からんが、読者モデルをやることになった」

 

[良く分からん、説明を要求します]

 

「ああ、実は」

 

 俺は今日影分身にあったことをミストに話した。

 

[なるほど、面白そ、面倒なことになりましたね]

 

「お前今面白そうって言おうとしなかった?」

 

[すみません。言語選択を間違えました]

 

「確かに面倒いと面白いは一字違いだけど、ワザとだろ?」

 

[はい、もちろん]

 

「だろうと思ったわ!」

 

 無駄にハイスペックなお前が間違える訳ねぇもんな! 他人事だと思いやがって!

 

[まあ良いじゃないですか。一回だけ! 一回だけ! 先っちょだけでいいから!]

 

「何故エロくした! 先っちょ関係無いし!」

 

[葵ちゃんと距離を縮めるチャンスですよ?]

 

「それが一番問題なんだけどな」

 

 何のために葵と距離を置いていると思っているのか……

 

「まあいい。一回だけだしな。それに記憶で見る限り、俺の名前は公にしないことを話している

 みたいだし、これを乗り切れれば良いわけだ」

 

 今は冬に入っているから次の春物の服でやるらしい。つまり後一、二カ月後くらいだろう。

 

「どうしてこうなった?」

 

[どん♪ まい♪]

 

 やけに楽しそうなミストがムカつくぜ……

 

「ただいま戻りました」

 

 おっ! 愛里が返ってきたな。

 

「おかえり」

 

「はい、ただいまです。零冶さん」

 

「それじゃ早速だが、何があったか記憶を打ち込んでくれ」

 

「分かりました」

 

 愛里は記憶弾(メモリーボム)で銃弾と拳銃を具現化するとなれた手付きで銃弾を拳銃に込める。

 

「それでは行きます」

 

 

バァン!

 

 

 銃弾は放たれ、俺の頭にヒットする。そして、今日愛里がライとして過ごした記憶が頭に流れ込んでくる。

 

「うん、こっちは何の問題もなく終わったようだな。闇の書に取り込まれた時も予想通り、

 幸せな夢を見ていないし、作戦後の報告も問題はない。流石だな」

 

「ありがとうございます」

 

「はぁ~こっちは全く問題なかったのにな~」

 

「えっと? 何か有ったんですか?」

 

「ああ、実はな」

 

 俺は愛里にミストと同じ説明をする。

 

「なるほど、零冶さんお気の毒に」

 

 ああ、愛里そう言ってくれるのはお前だけだよ。

 

「そうだ。愛里、ライのステータスから元のステータスに戻すぞ」

 

「はい、分かりました」

 

 俺は愛里の首の後ろに手をまわし、コピーパペットに戻す。コピーパペットは俺が作成する時のステータスの九割と記憶を受け継ぐようになっている。ライの変わりをしてもらうためにライのステータスを受け継がせたからな。もとのゼロの時のステータスに戻すための作業だ。

 

「さて、強者の慈悲(リミッターオン)発動」

 

 俺は強者の慈悲(リミッターオン)を発動させ、愛里がゼロのステータスと同じになるようにステータスを調整する。後はもう一つの影分身を消す。そして、コピーパペットに魔力を注入する。

 

「よし、どうだ?」

 

「はい、問題ありません」

 

 現れた俺の姿の愛里に確認する。

 

「そうか、ではいつもの姿に変身しておいてくれ」

 

「はい」

 

 愛里はシェリアの姿に変身する。

 

「よし、これで作戦は完了だ。みんなお疲れ様」

 

[「お疲れ様でした」]

 

 こうして闇の書修復作戦は完全に幕を閉じた。これでStrikerSまで何もない。平穏に暮らせるぞ! は~はっはっは!

 

 

零冶 サイドアウト

 

 

 

葵 サイド

 

 闇の書修復作戦が完了し、私達はそれぞれ自宅に帰ることなった。今回の作戦では何とか無事に終えたけどゼロの登場によってとても危険な状態だった。もっと強くならないと家族を守れない。

 

「ただいま~」

 

「あっ! お姉ちゃん! おかえり~」

 

「おかえり、葵」

 

 私が玄関を開けると蒼乃とお母さんが出迎えてくれた。

 

「うん、ただいま」

 

「お姉ちゃん、悪者やっつけた?」

 

「うん、もう大丈夫だよ~」

 

「やったー!」

 

「無事に帰ってくれて嬉しいわ。頑張ったわね葵」

 

「うん」

 

 私は暖かく迎えてくれた家族に感謝した。私は絶対に家族を守る。玄関から上がり、靴を整えてから私はリビングに向かった。

 

「そうだ! お姉ちゃん聞いて聞いて!」

 

「なぁに蒼乃」

 

「今日ねママと一緒にデパートにお買いものに行ったの!」

 

「そう、良かったわね」

 

「そうしたらね。零冶お兄ちゃんにあったの」

 

 な、何ですって? 零冶君にあったの?

 

「そ、そうなの。良かったわね」

 

「それでねそれでね。その後零冶お兄ちゃんとお手手繋いだり、おんぶしてもらいながら、

 お買いものしたの!」

 

 え? 零冶君とお買いものデートですって? ※デートとは言ってない

 

「へ、へぇ~そうなの~、良かったわね~」

 

 くっ! もし今日が作戦の日じゃなければ私も一緒にデートできたのに! どうして作戦は今日だったの! ※零冶がそう仕向けたからです

 

「それでその後翠屋に行ってね。一緒に昼食べに行ったの」

 

 お買いものデートの後にお食事デートですって!? なんて羨ま、だ、ダメよ相手は妹よ? 何嫉妬しているの私。

 

「そしたらね。そのあとアリサお姉ちゃんとすずかお姉ちゃんが来てね。一緒にお昼食べてね」

 

 アリサとすずかも一緒にお食事デートですって!? 私だってまだしてもらってないのに!? ※今の葵は正常な思考ではありません。

 

「それでお昼が終わった後、翠屋を出てね。また会えますようにっておまじないでおでこに

 チューしてもらったの!」

 

「おでこにチューうぅぅぅ!?」

 

 なんて羨ましい! なんて羨ましいの! 何で私はそこに居なかったの! そうすれば一緒にチューしてもらえたのに! ※葵は混乱しているようだ

 

「お姉ちゃん? どうしたの」

 

「い、いえ何でもないのよ。何でも……はは」

 

「そうなの? それで零冶お兄ちゃんが再会の味だって言ってくれたの!」

 

 良いなぁ蒼乃。幸せそうだなぁ。私の零冶君におでこにチューしてもらいたい。あれ? そういえば……

 

「蒼乃? 帰ってきてから手洗った?」

 

「うん、洗ったよ?」

 

「じゃあ、お顔は?」

 

「え? お顔はまだ洗ってないよ? 洗わなきゃダメ?」

 

 と言うことは……蒼乃おでこには零冶君のキスが残っているってことよね? ……よし!

 

「あ、蒼乃~、ちょっとおいで」

 

「なぁに?」

 

 私の前にトコトコと歩み寄ってくる蒼乃。そして私の前で立ち止まる。

 

「えっと、おまじないね?」

 

 そうこれはおまじない。決してやましい気持ちがある訳ではない。だっておまじないだもん。私は少し屈んで、蒼乃のおでこにキスをする。

 

「ッ~~~~」

 

 私はきっと真っ赤になっているだろう。零冶君と、かかか間接キスしちゃった! 間接キスしちゃったぁ~! えへへ~

 

「お姉ちゃんもおまじない? えへへ~。どんな味だったぁ?」

 

 蒼乃に味を聞かれたので

 

「し、幸せの味かなぁ~」

 

 幸せだわ。いつか零冶君と……えへへ~

 

「あっそういえば葵~」

 

「ハッ! な、何? お母さん」

 

 いけない呆けてたわ。

 

「今度の春物のモデルやってくれない?」

 

 お母さんはある子供服雑誌の編集長だからたまに私にモデルをお願いしてくる。私はあまり目立ちたくないのでいつも断っている。今回も断ろうっと。

 

「ごめん、いつも言ってるけど私そういうのは……」

 

「今度の春物のモデルは零冶君も出るわよ?」

 

「私! 頑張るね!」

 

――ふふふ、思った通り釣れたわ。零冶君さまさまね

 

 やった―! 零冶君と一緒にお仕事できる! 私幸せだよぉ~!

 

 次の日、私は衝撃的なものを発見した。

 

 

【葵の初間接キッス❤】

 

 

 と書かれたビデオテープを。うぅ、見られていただけじゃなく、撮られてたなんて……

 

 

葵 サイドアウト




さて、零冶の念能力紹介のコーナーです。

では、次の念能力はこれだ!


 25、絶対読心(ギアス)
  系統:特質系
  説明:目に赤い光の鳥のような紋章が浮かび上がると共に円を広げると
     その円の中に居る生物の思考を読める能力。
     しかし、円の中に入っていると対象を絞れないので、いろいろな声が
     頭に入ってくることになる。
     また、円の中に一人しかいない場合はその相手の深層心理まで読み取ることも可能。

  制約
   1、円の中の生物から更に対象をしぼることはできない。

  誓約
   なし


 コードギアスのマオのギアスですね。原作ではオン/オフが出来なくなり、心が壊れてしまったマオですが、この作品ではオン/オフ可能なので、問題ありません。

 また、一応作中にも書いていますが、零冶は円の形を自在に変形できるので、読みたい対象のみを円に入れることも可能です。

 ですが、あまり人の心を読むことを良しとしていないので、必要最低限しか使っていません。

 コードギアスではかなり強力な部類に入る能力ですね。相手の思考を読み、自分の思い通りに動くよう誘導する。心が読めていれば、簡単ですから、しかも回数制限なし、相手の目を見る必要もなし、広げようと思えば最大半径500メートル(半径とは明言されていなかったかな?)。まあ、その分読める深さも変わるでしょうし、大量な声が聞こえて脳がパンクするでしょうが。

って感じです。では

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