原作を放って置くとバッドエンドになるんですが、どうしたら良いですか?   作:月の光

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前書きも後書きも無く、投稿してしまって申し訳ありませんでした。
時間が時間だったので、めんどkごほんごほん
何でもないです。

誤字脱字の修正と多少修正をしました。
修正したのは最後の守護騎士登場シーンです。
大した修正ではありませんので、読み返すほどではないと思います。



35_ブラック『熱い男に』ゼロ『え? そっち?』

 アリシアに二度目のヒートナックルが放たれる数分前、桜羽 葵は騎士(ナイト)シグマと対面していた。その傍ではなのはとヴィータが既に戦いを始めている。

 

「ふむ、私の相手は君か……」

 

「あら? 不満かしら?」

 

「いや、そうではないのだが……女子供を相手にするのは私の騎士道精神に反するのでな」

 

「そう? なら負けてくれないかしら?」

 

「それは出来ん相談だ。ゼロ様の命令は私の騎士道よりも優先されるのだ」

 

「そう、それは残念ね!」

 

 葵は数回言葉を交わした後

 

「アイスエッジ!」

 

[アイスエッジ]

 

 複数の魔力弾を精製し、シグマに放った。

 

「ふん!」

 

 シグマは肩に背負ったランスを振り払い、葵の魔力弾をかき消した。

 

「まだまだ!」

 

[アイスエッジ・マルチショット]

 

 葵は更に魔力弾の量を増やし、シグマに放つ。

 

「ぬっ!」

 

 ランスで払い切れないと判断したシグマは後ろに跳び退いた。

 

「逃がさない! スノーリボン!」

 

[スノーリボン]

 

「甘い!」

 

 後ろに跳んだシグマをバインドで捕らえようとするもシグマはすぐさま前に跳躍し、葵の方へ接近してきた。葵は杖状にしているデバイスを構えた。

 

「ふん!」

 

「やぁっ!」

 

 シグマはランスによる突きを放つ。葵はそれを受け流すようにデバイスで受ける。

 

「むっ!」

 

 シグマは葵に自分の攻撃が防がれたことに少し驚いた。それは自分の予想と違っていたからだ。避わすでも、防御魔法で受けるでもなく、デバイスで完璧に受け流されたことに驚愕した。

 

「スノーリボン!」

 

[スノーリボン]

 

「ぬっ!」

 

 驚愕していたシグマは反応が遅れ、葵のバインドに掛かる。しかし、すぐさまバインドを破壊するために動こうとした瞬間、

 

 

ドカン!

 

 

「がっ!」

 

 

 シグマは背後から攻撃を受けた。葵が先程放っていた魔力弾だ。葵は今の攻防の間にマルチタスクを使用し、避わされた魔力弾をコントロールし、反転させていたのだ。突然の後ろからの攻撃に視線を後ろに向けてしまったシグマはすぐに前の葵に視線を戻したが、既に葵の姿をなかった。

 

「何!」

 

「アイシクルバスター!」

 

[アイシクルバスター]

 

 葵はシグマの真上に移動し、砲撃魔法を放っていた。

 

「おおおおお!?」

 

 

ドッカーーン!

 

 

 葵の砲撃魔法は直撃した。そして、葵はすぐさま距離をとる。

 

[やったでしょうか?]

 

「いえ、分からないわ。油断しないで」

 

[イエス、マスター]

 

 煙が立ち込める中を油断せず、見つめる葵。煙が徐々に晴れて行き、先程まで相対していたシグマが無傷で現れた。

 

「女子供と甘く見ていたよ。まさかここまで戦えるとは思っていなかった。

 その若さで大したものだ」

 

[そんな! 直撃したはずです!? 無傷だなんてありえません!]

 

「まさか無傷だなんてね。少し傷つくわ」

 

「いや、卑下することはない。これは当然の結果なのだから。我々親衛騎団は全員が永久不滅の

 超金属オリハルコンで出来ている。この金属は遥か昔、アルハザードで作られたと言われて

 いる超金属だ。ゼロ様はそれを複製する技術を使い、我々を作ったのだ」

 

「まさか、ゼロはアルハザードに行ったことがあるってこと?」

 

「そうではない。ゼロ様はあくまで偶然オリハルコンを手に入れただけだ。それをゼロ様自身の

 技術を使い、複製し、我々を作った」

 

「悪人が持っていい技術じゃないわよ。まったく」

 

『まいったわね。私のアイシクルバスターでも傷一つ付かないなんて……これじゃたとえ

 ブレイカー級の攻撃を当てても倒せるかどうか……』

 

『そうですね。あの装甲を破るのは難しそうです』

 

『なら方針は決まりね。あいつを倒すことは無いわ。私達はあいつを足止めすることに

 徹しましょう。サファイア、アブソリュートランスの準備を』

 

『イエス、マスター』

 

 葵はデバイスを待機モードに変型させた。そして、葵に指示されたサファイアは魔力収束と魔力圧縮を開始する。瞬く間に魔力が収束されていき、葵はそれに魔力変換と魔力整形を施す。

 

「アブソリュートランス」

 

 ジュエルシード事件で使用した時よりも熟練されたそれは、ほんの数秒で発動するに至った。

 

「ほう、君もランスを使うのか。これは楽しくなってきた」

 

「悪いけど、楽しませるつもりは無いわ。私、戦いが嫌いだから」

 

「なら、何故戦う?」

 

「友達のため、兄と慕う人のため。そして、家族のためよ」

 

「……なるほど、それが君の強さの根源か。君は名を何と言う?」

 

「桜羽 葵よ」

 

「葵か……良い名だ。ゼロ親衛騎団 騎士(ナイト)シグマ! 推して参る!」

 

「はああ!」

 

 葵とシグマのランスが交錯する。

 

「素晴らしい槍捌きだ! その若さで本当に大したものだ!」

 

「……」

 

 嬉々として葵を賞賛するシグマだが、葵は無言でシグマのランスを捌いていた。ライに教わったマルチタスクの訓練により、アブソリュートランスでの攻防、移動を可能としたが、維持するのに集中しているため、余裕が無いからだ。

 

「だが、イオ!」

 

「ッ!」

 

 シグマが魔法を唱え、直感で危険と判断した葵はその場から飛び退いた。すると、葵がさっきまでいた場所が突然爆発した。

 

「な!」

 

「ほう、良い判断だ。私の爆裂魔法を避わすとは」

 

「爆裂魔法?」

 

「その通り、私の魔力色はほぼ無色、故に魔力弾を爆発させることで何もないところで

 突然爆発を起こすことが可能なのだ」

 

「無色の魔力色……厄介ね。でもいいのかしら? 私にばらしてしまって」

 

「かまわん、分かったところで対処できんのだから! イオ!」

 

「くっ!」

 

 葵はシグマから放たれる見えない魔力弾に苦戦を強いられる。

 

――見えない魔力弾なんて! いえ、僅かに空間が揺らいでいる。それのおかげで対処できて

  いるけれど、このままじゃジリ貧だわ!

 

「ほら、どうした。避けているだけでは私を倒せんぞ!」

 

――勝機は一瞬……そこに誘い込めれば!

 

 飛行魔法でシグマから逃げる葵は徐々に地面に近づき、地面すれすれを飛び交っている。だが、進行方向にシグマから魔力弾を放たれ、爆発が起きる。

 

「しまった!」

 

「終わりだ!」

 

 爆発の直撃を避けるため、止まる葵。その機を逃すまいとシグマは跳躍するため、地に足を付けた。しかし

 

「な!」

 

 シグマは思うように跳躍できなかった。何故なら

 

「これは氷!」

 

 そう、シグマの足元には氷が張っており、そのために踏み込みが甘かったためだ。

 

「今よ! スノーリボン!」

 

[スノーリボン]

 

 葵はシグマをバインドで捕らえた。

 

「ぬっ!」

 

 そして、動きが止まったシグマに

 

「くらいなさい! アブソリュートランス!」

 

 絶氷の槍を投げ、それがシグマに直撃した。

 

「む!」

 

――これであいつを氷に閉じ込められる。そうすれば、あいつは動けない。私の勝ちよ!

 

「凍てつき閉じよ! アイスb」

 

 シグマを氷の中に閉じ込めようとアイスベルクを発動しようとした瞬間、

 

 

キィーーーン

 

 

「な!」

 

 アブソリュートランスは葵の方へ跳ね返ってきた。突然戻ってきた自分の攻撃に対処できるはずもなく、アブソリュートランスは葵に直撃する。そして

 

 

カッキーーーン

 

 

 葵は氷の中に閉じ込められた。

 

「おしかったな、葵よ。私の胴にあるこの盾はただの盾じゃない。あらゆる魔法を反射する

 ロストロギア【シャハルの鏡】だ。私がゼロ様より譲り受けた、最強の防具なのだ」

 

 シグマは葵に語りかける。

 

「まあ、聞こえてはいまい。この勝負、私の勝ちだ。さて、他の親衛騎士の援護に行くとしよう」

 

 自分の勝ちを確信したシグマは他の親衛騎士の援護に向かうべく、葵に背を向けた。だが

 

「アブソリュート・フォース・ドレスアップ」

 

「何?」

 

 背後から聞こえるはずがない声が聞こえた。振り返ると葵を閉じ込めていた氷が徐々に小さくなっていく。

 

「何だ? 何が起こっている」

 

 不可解な現象に驚きを隠せないシグマ。そして、氷が無くなり、現れた葵は白銀のドレスを纏い、地面に降り立った。

 

「それは何だ? 何をした?」

 

「そうね。さっき貴方の魔法の秘密を教えてくれたお返しに教えてあげるわ。

 これはアブソリュート・フォース・ドレスアップ。氷結魔法の氷をバリアジャケットと

 融合させることで体に纏うことが出来る、私の最大の切り札にして最強の防御魔法よ」

 

「なるほど、まだ奥の手を残していたとは恐れ入った。だが、防御魔法では

 私を倒せんぞ! イオ!」

 

 シグマは葵に見えない魔力弾を放った。しかし、葵は動かなかった。

 

――避けない?

 

 葵の様子に疑問が尽きないシグマ。そして、魔力弾が葵に衝突し、爆発……しなかった。

 

「何!?」

 

 葵に着弾した魔力弾はたちまち凍り付き、そして、葵のドレスに吸収された。

 

「貴様、何をした?」

 

「このドレスは魔力を一瞬で凍らせ、その氷を取り込むことで自らの魔力を回復させる。

 魔法に対する絶対防御のドレスなのよ」

 

「むぅ、厄介な」

 

「これで貴方の見えない魔力弾は封じたわ。形勢逆転ね」

 

 葵は右腕を横に振り払うと一瞬でアブソリュートランスを精製した。

 

「さあ、反撃開始よ!」

 

――魔力弾を放っても彼女を回復させるだけ、対して彼女は魔力弾を使用でき、

  それをシャハルの鏡で反射させても彼女に魔力が戻るだけ……優れた防御技術により、

  うかつに攻撃しようものなら、あのランスで凍り漬けにされる。

 

 シグマは葵の槍を捌きながら、勝つための方法を模索する。

 

――ランスの攻撃も受けたそばからこちらを凍り漬けにしようと隙を見ている。

  圧倒的に私が不利、だが!

 

「負ける訳にはいかんのだ! ゼロ様のためにも!」

 

 主のために奮闘するシグマ

 

「アイスアロー!」

 

 葵は左手に作った氷の矢をシグマに放つ

 

――シャハルの鏡で反射させても無意味! ここは避けるが吉!

 

 氷の矢をよけるシグマ

 

「甘いわ! アイスウォール!」

 

 シグマを通り過ぎた氷の矢は一瞬で氷の壁となり、シグマの背後に出現した。

 

「何!」

 

 退路を断たれたシグマ、葵はアブソリュートランスを二股の槍に変え、シグマの右手首を挟む形で捕らえ、氷の壁に突き刺した。

 

「これであなたを氷に閉じ込めて動きを封じる。私の勝ちよ」

 

「……よもやここまでやるとはな。ここまでの魔導師はそうは居まい」

 

 シグマは葵のことを心から賞賛する。

 

「君の勝ちだ。捕らえたのが……右手で無ければな!」

 

 次の瞬間、アブソリュートランスで捕らえていたシグマの右手首が外れ、拘束から逃れた。

 

「な!」

 

「終わりだ! ライトニングバスター!」

 

 シグマは一瞬で葵に接近し、手首が外れた右腕を葵の腹部に当て、魔法を発動させた。

 

 

バキッ! ボキッ!

 

 

「かっは!」

 

 鈍い音と共に吹き飛ばされる葵。地面を数回転がった後、止まった。そして、葵が纏っていた白銀のドレスが解けた。

 

「葵ちゃん!」

 

 吹き飛ばされた葵に声をかけるなのは。

 

「余所見すんな! 高町なのは!」

 

「え? きゃあああ!」

 

 葵に気を取られたなのはは襲いかかるヴィータの一撃を避わすことができず、吹き飛ばされた。そして、地面に横たわるなのは。

 

 シグマは葵にゆっくりと近づいた。

 

「おしかったな、葵よ。今のはライトニングバスター。爆裂魔法を一点集中させ、ゼロ距離で

 爆発させることで威力を増幅させる私の最後の切り札だ。君のドレスでは爆風までは

 防げない。私にここまで使わせたことは誇っていい」

 

 シグマは葵に語りかけるが返事は返ってこない。

 

「あばらが砕ける音がした。もう助かるまい。私はもう行く」

 

 シグマが再び、葵から背を向けると

 

「ごほっ! ごほっ!」

 

「何?」

 

 シグマが直ぐに振り返ると、咳き込みながらも立ち上がろうとする葵の姿があった。

 

「馬鹿な……直撃だったはずだ。君は不死身か?」

 

 シグマは自分の必殺技がまともに入ったにも関わらず、息のある葵に驚いた。しかし、その疑問も直ぐに解決する

 

 

パキパキ ぼとっ

 

 

 葵の腹部から氷の塊が落ちた。

 

「なるほど、とっさに氷を出現させ、衝撃を和らげたか」

 

 そう、葵はライトニングバスターをくらう前に腹部に氷の膜を張り、衝撃を和らげることで攻撃を防いでいた。

 

「だが、もう戦えまい。そこで大人しくしていることだ」

 

「……それは出来ない相談よ。例え負けても少しでも貴方を足止めする」

 

「……見事だ。それだけに惜しい。これほどの人材を葬らなければならんとは」

 

「逃げて……葵ちゃん」

 

 なのはは声を振り絞り、葵に声をかける。シグマはランスを担ぎ、葵に歩を進める。葵はサファイアを杖状に変形させ、構えた。

 

――私もここまでね。蒼乃、お母さん、お父さん、ごめんなさい……零冶君、最後に貴方に

  会いたかった……

 

「せめて、苦しまぬようにいかせてやる」

 

 そして、シグマのランスによる一撃が振り下ろされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 神宮寺は焦っていた。親衛騎団僧正(ビショップ)フェンブレンを相手にすることになった神宮寺はレアスキル王の財宝(ゲートオブバビロン)の投射で相対していた。

 

 

ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュ!

 

 

ギン! ギン! ギン! ギン!

 

 

 しかし、その投檄は一撃も当たることなく、全て撃ち落とされている。

 

「わはははは! 面白い! 貴様の無数の武器と全身武器のわし! どちらが世界最強の武器か

 はっきりさせようではないか!」

 

 そう、数多の投檄はフェンブレンの刃のような腕、足で撃ち落とされ、傷一つ付けられていないからだ。

 

「くっ! 勝手なこと言いやがって!」

 

 神宮寺の焦りも無理はない。ライからもらったアンチキラーオーブの非殺傷設定を外し、殺傷設定で攻撃しているにも関わらず、未だに傷一つ付けられていないのだ。王の財宝(ゲートオブバビロン)に収納されている武器は全てが業物。一撃一撃が必殺の威力を持っている。

 

 それが全く通じず、全て撃ち落とされ、破壊されていく。無数の武器が収納されているといってもその数は有限。このままでは底を付きかねない。

 

 幸いにも壊れた宝具は王の財宝(ゲートオブバビロン)に収納することで数日経ったのち修復はされるが、今の戦いで壊された宝具は使えない。

 

――くそ! バーサーカーを相手にした英雄王の気持ちが少し分かった気がするぜ……

  このままじゃこっちが持たない! 何とか突破口を

 

「どうした! どうした! どうした!? わしはまだまだ行けるぞ!」

 

――エクスカリバーで斬りかかるか? いやだめだ。この投檄を対応できるやつに接近戦を

  持ち込んだら一瞬でやられる自信がある。

  なら、砲撃魔法で!

 

 神宮寺が方針を決めたところで王の財宝(ゲートオブバビロン)の投檄が止んだ。

 

「ん? ついに底が尽きたか? つまらん」

 

 神宮寺はデバイスのエクスカリバーを上に掲げて魔力を込める。

 

「む?」

 

「はああああ! 約束された(エクス)! 勝利の剣(カリバー)ああ!」

 

 放たれた一撃は巨大な砲撃魔法となってフェンブレンを襲った。

 

「おおおおお!?」

 

 以前の慢心していた頃の砲撃魔法と違い、十分な魔力収束、魔力結合が行われたその一撃は神宮寺の魔力量SSSと相まって驚異的な威力になっていた。油断していたフェンブレンはよける間もなく、直撃した。

 

「はぁ、はぁ。やったか?」

 

[分かりません。注意しましょう]

 

「分かった」

 

 自ら放った砲撃魔法によって立ち込める煙を凝視する神宮寺。だが、次の瞬間、煙が揺らぎ、自分のほうに何かが飛んできた。

 

「何だ!?」

 

[プロテクション]

 

 飛んできた何かを神宮寺のデバイス、エクスカリバーが防御魔法を発動することで防いだ。

 

「ほう? 今のを防いだか。中々優秀なデバイスではないか?」

 

 そこには無傷のフェンブレンがいた。

 

「嘘だろ! 無傷かよ!」

 

[信じられません。おそらく何か秘密があるはずです]

 

「うむ、楽しませてもらった礼だ。教えてやろう。わしは真空魔法を得意とするのだ。

 それにより、おぬしの砲撃魔法とわしの間に空気の層を作り、防いだのだ」

 

「真空魔法?」

 

[それはライ様の魔力変換資質 風圧と同じということですか?]

 

「いや違う。わしのはあくまで魔力で風を起こし、空気をすり合わせて真空の刃を作るのだ」

 

「は? 何が違うんだ?」

 

「おぬしは馬鹿なのか?」

 

[はい、馬鹿です]

 

「お前が答えんのかよ! セイバー!」

 

「なら説明してやろう。馬鹿のために」

 

[感謝します。うちの馬鹿のために]

 

「俺、いじけるよ?」

 

「あの零騎士が使う魔力変換資質は魔力そのものを空気に変えることができる。そして、

 その空気を操ることができるのだが、わしの真空魔法は魔力で空気の流れを変え、操るのだ」

 

「……もっと分かりやすく」

 

「本当に馬鹿なのだな」

 

[はい、クズです]

 

「自分のデバイスにクズ呼ばわりされた」

 

「つまり団扇で扇げば風が起こせるのと同じ原理だ」

 

「おk把握」

 

[本当に分かったんですか?]

 

「つまり、魔力で団扇作って扇いでるんだろ?」

 

「[だからお前はアホなのだぁ]」

 

「……もうやだ、お家帰るぅ」

 

[泣かないで下さい、マスター。ぞくぞくします]

 

「このドSデバイスが!」

 

「何と言うか、おぬしも大変なのだな」

 

「分かってくれるのか? フェンブレン……」

 

「まあ、倒すことには変わらんが」

 

「ちくしょう! 俺の周りはドSばっかりか!」

 

「バギクロス」

 

「ちょ!」

 

 突然の戦闘再開に対応しきれず、発生した風に吹き飛ばされる神宮寺。その中何とか体勢を整えようとするが、乱気流のように無造作に吹き荒れる風に苦戦を強いられる。

 

『今度は洗濯機の中の洗濯物の気持ちが分かった』

 

『意外と余裕ですね、マスター』

 

『そう見えるならお前、修理してもらった方が良いぞ』

 

『あっそういえば、マスターが改心する前に私をポケットの中に入れたまま洗濯されたことが

 ありましたね』

 

『あの時はほんとにごめんなさい!』

 

 デバイスと呑気なやり取りをしている神宮寺だったが、ついに耐えられず、デバイスを手放してしまった。

 

「あっ! しまった!」

 

 手放したデバイスは少し離れたところの岩にささり、止まった。それとほぼ同時に風が止んだ。

 

「風が止んだ? 今の内に!」

 

 神宮寺は岩に刺さったデバイスに向かって移動した。

 

――何か、王を選定する岩に刺さった剣みたいになってるな。刺さってるのは

  エクスカリバーだけど……

 

[マスター! 来ては行けません!]

 

「え?」

 

 エクスカリバーの忠告も空しく、エクスカリバーの刺さった岩の中から、両腕を頭の上に上げ回転をしながら、フェンブレンが出現した。

 

「ツインソードピニング!」

 

 突然現れたフェンブレンに対応できる訳もなく、神宮寺は吹き飛ばされる。

 

「がはっ!」

 

[マスター!]

 

 吹き飛ばされた神宮寺は傷だらけになりながら、横たわる。

 

「うぅ」

 

「ほう? わしのツインソードピニングをくらってまだ息があるのか? 中々頑丈な

 バリアジャケットだな」

 

 神宮寺はその高い魔力ゆえにバリアジャケットもかなりの防御力を誇っている。しかし、その防御を突破するフェンブレンの攻撃もまた脅威と言えるだろう。

 

「さて、とどめといこうか。わしは……残酷なのだ」

 

 神宮寺に近づくフェンブレン。そして、オリハルコン製の刃が振り下ろされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スティンガースナイプ!」

 

「ブローーーム!」

 

 時空管理局執務管クロノ・ハラオウンは親衛騎団城兵(ルック)ブロックと戦っていた。クロノは相手の見た目から素早い動きはできないと推測し、遠距離から魔力弾による攻撃を仕掛けていた。

 

――くっ! 全弾命中しているはずなのに大したダメージもない。僕じゃあいつを

  倒せないかもしれない! ならやはり、倒すことより、足止めに徹する!

 

 葵と同じ結論に至ったクロノは魔力弾をコントロールし、ブロックをかく乱させていく。

 

「ブローーーム!」

 

 すると突然、ブロックが地面を殴り始めた。

 

――何だ? 壊れたのか?

 

 しかし、すぐに答えは出た。ブロックは地面の岩盤を持ち上げ、クロノに放ってきたのだ。

 

「な! なんつう馬鹿力!」

 

 クロノはその岩盤を避わすが、次々と岩盤が投げられてくる。

 

――くっ! このままじゃジリ貧だ。いや、この死角を使って!

 

「スティンガーブレイド・エクスキューションシフト!」

 

 クロノは大量の魔力弾を精製した。その数は優に100を超える。

 

「行け!」

 

 放たれた魔力弾はブロックが投げ込んてくる岩盤を破壊しつつ、ブロックへ向かっていく。

 

「ブローーーム!」

 

 破壊した岩盤もろともクロノが放った魔力弾は次々とブロックに命中して行き、煙が立ち込めた。そして、煙が晴れるとそこには無傷のブロックがいた。

 

――予想はしていたけど、やっぱり無傷か

 

「ブロ?」

 

 しかし、ブロックはクロノを見失った。そう、クロノの狙いはあくまで姿をくらますこと

 

――今がチャンスだ。グレアム提督にもらったこれで

 

『行くぞ! 氷結の杖 デュランダル!』

 

『オーケー、ボス』

 

 カード型のデバイスを杖状に展開し、ブロックの死角から魔法を準備する。

 

「悠久なる凍土 凍てつく棺のうちにて 永遠の眠りを与えよ」

 

「ブ、ブローーム!」

 

 クロノの存在に気付いたブロックだったが、時すでに遅し、クロノの魔法が発動する。

 

「凍てつけ! エターナル・コフィン!」

 

 地面を伝う氷の道はブロックを捕らえ、瞬く間にブロックを凍り漬けにする。そして、完全に凍てつき、ブロックは動きを止めた。

 

「ふぅ、流石に魔力の消費が激しいな。一日に2発はきついかもしれない。

 だけど、これで敵の戦力は削いだ。十分だろう。皆の援護に回ろう」

 

[イエス、ボス]

 

 クロノがブロックに背を向けると

 

 

ピシッ!

 

 

「ん?」

 

 後ろから音が聞こえてきたので、クロノは振り返った。すると

 

 

ピシッ! ピシッ! ピシッ!

 

 

 凍り漬けにしたブロックが動き始めていた。

 

「馬鹿な!」

 

「ブローーーム!」

 

 そして、完全に氷の拘束から逃れた。

 

「くっ! まさかエターナル・コフィンが足止めにもならないなんて!」

 

「ブローーーム!」

 

 ブロックは右手をクロノに向けた。そして、とてつもない冷気がクロノを襲った。

 

「まさか! 氷結魔法! こんなものを隠し持っていたなんて!」

 

 ブロックはマヒャドをクロノに放った。その冷気で身動きを封じられるクロノ。さっきと立場が逆転した。

 

「くっ! デュランダル!」

 

[オーケー、ボス]

 

 クロノは魔力の温度変換で自分を拘束する氷を溶かしにかかったが、ブロックは今まで見せてこなかった速度でクロノに接近する。

 

「な!」

 

「ブローーーム!」

 

 クロノはブロックに掴まれ、そのまま地面に叩きつけられる。

 

「がっ!」

 

 そして、トドメとばかりに、右足を上げ、今にも踏みつけようとするブロック。その足が下ろされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 闇の書の管理人格がスタープラズマブレイカ―を使用した直後、リニス、ロッテ、アリアは距離をとり、スタープラズマブレイカーを避わした。

 

「と、とんでもない威力ね」

 

「これくらったら防御の上からでも落とされるよ」

 

 管理人格の放った砲撃魔法に驚愕するアリアとロッテ。

 

「しかし、このスタープラズマブレイカーですら破ったことのあるゼロの砲撃はこれ以上

 という訳ですね」

 

 リニスがゼロの強さを分析する。

 

「やっぱりとんでもない強さね。春兎は大丈夫かしら?」

 

 アリアは峯岸の身を案じた。現在、ゼロと相対しているのが峯岸だからだ。アリアにそう言われたロッテ、リニスは目線を動かす。

 

「ふはははははははははは! 素晴らしい成長ではないか! 峯岸春兎!

 あの時よりも熟練された気と魔力の融合! この私とここまで対等に戦えるとはな!」

 

「はあああ!」

 

 ゼロと峯岸が互いの剣で何度も斬りあっている

 

「あっちは春兎に任せるしかないね」

 

「そうですね。後はプレシアが相手のクイーンを倒してこちらに合流してもらえれば、

 他の方の援護に向かうことも出来ます」

 

 現在、女王(クイーン)アルビナスを相手しているのがプレシアだ。管理局の最高戦力である峯岸とプレシアをゼロとアルビナスに当て、峯岸がゼロを押さえ、その間にプレシアがアルビナスを倒す。その後、プレシア、リニスが管理人格の足止めをし、ロッテ、アリアが他の援護に向かう算段だった。

 

 そう、()()()のだ。

 

「それは残念でしたね。貴方がたの目論見は外れです」

 

「「「な!」」」

 

 リニス、ロッテ、アリアが声がしたほうに振り向くと、そこにはゼロ親衛騎団 女王(クイーン) アルビナスが居た。

 

「な、何故貴方がここに! プレシアはどうしたのですか!?」

 

「ああ、あの女なら……あそこに」

 

 アルビナスが目線をやると、そこに倒れ伏せたプレシアが居た。

 

「プ、プレシア!?」

 

「安心なさい。まだ息はあります。彼女には利用価値があるので生かすようにとのゼロ様の

 言い付けだったので。まったく癪ですこと」

 

「そ、そんな、こっちの最高戦力だったのに……一体どんな卑怯な手を使ったんだ」

 

「嫌だこと、私は女王(クイーン)ですよ? チェスの女王(クイーン)僧正(ビショップ)城兵(ルック)の両方の特性を持った最強の駒。

 そもそも私はプレシア・テスタロッサ対策で作られたのです。この結果は必定なのですよ」

 

「……ロッテさん、アリアさん、管理人格をお願いします」

 

「リニス! 無理だよ! あのプレシアでも勝てなかったんだよ!」

 

「それでも彼女を野放しには出来ません。思考がリンクしている貴方達が管理人格を

 相手にしたほうが効率が良い以上、私しか居ません」

 

「でも……」

 

「大丈夫です、私はプレシアの使い魔ですから。元ですけどね」

 

「「リニス……」」

 

 リニスは前に出て、アルビナスの方へ移動する。

 

「さあ、貴方の次の相手は私です」

 

「別に全員で向かってきてもらっても構わないのですよ? その場合、ゼロ様によって

 闇の書が葬られるだけですが」

 

「やらせません! はあああ!」

 

 リニスは肉体強化の魔法を使ってアルビナスに殴りかかった。

 

「リニス……何で不得意な接近戦を?」

 

「いえ、あれで良いのよ。クイーンはリニスに任せて私達は管理人格のところへ行くわよ」

 

「オッケー」

 

 ロッテとアリアはその場から離れ、管理人格のところへ移動を開始した。

 

――プレシア対策で作られたという事は、プレシアの戦い方である高い魔力量と

  熟練された魔法攻撃による遠中距離からの魔力弾幕と広範囲殲滅魔法では

  彼女に勝てないという事、つまりプレシアと同じ戦い方では時間稼ぎすら出来ない!

 

 リニスの予想は概ね正しい。誤算があるとすれば、それは……

 

「はああ!」

 

 リニスの攻撃を紙一重で避わし続けるアルビナス。そして

 

 

バキッ!

 

 

 リニスの攻撃がアルビナスの肩へヒットする。

 

――やった!

 

「と思いますか?」

 

「え?」

 

「ニードルサウサンド!」

 

 アルビナスの体から全方位に閃光のような熱線が放たれた。

 

「あああ!」

 

 リニスは閃光に飲まれ、焼かれながら吹き飛ばされる。

 

「貴方の予想は当たっています。プレシア・テスタロッサ対策で作られた私にあの女と

 違う戦い方をする。ですが、我々親衛騎団は永久不滅の超金属オリハルコンで出来ています。

 貴方程度の付け焼刃で傷が付けられるとでも?」

 

「うぅ……」

 

 リニスは自分に回復魔法をかけながら、立ち上がる。

 

「おや、無事だったのですか。主に似て大した防御力ですこと。ですがいくらやっても無駄だと

 お分かりでしょう? そこで大人しくしていることです」

 

「……それはできません。ライに恩返しをするためにも、貴方達の望み通りにはさせません!」

 

――ライにはいくら恩を返しても返しきれないものを貰いました。私の命を救ってもらい、

  何度も家族を救ってもらいました。そのライが、助けたいと言っている人がいる、

  そう、私達を頼ってきた。ならば、ライの望みを叶える! たとえここで命果てても!

 

 リニスは自身に肉体強化を施し、アルビナスへ突っ込む。

 

「無駄だと言っているでしょう。あそこでゼロ様と戦っている羽虫ほどの戦闘技術なら

 ともかく、貴方では私に傷一つ付けることは出来ません」

 

「それでも! 私は引く訳には行きません! はああああ!」

 

 リニスは再びアルビナスに殴りかかる。アルビナスは避ける素振りも見せない。

 

 

バキッ!

 

 

 リニスの拳がアルビナスの胸にヒットする。

 

「だから無駄だと」

 

「プラズマスマッシャー!」

 

「な!」

 

 

ドッカーーーン

 

 

 リニスは当てた拳からゼロ距離の砲撃魔法を放った。辺りが煙に包まれた。

 

「くっ! まさか自爆とは」

 

 その煙から飛び出すようにアルビナスが現れた。

 

「はあああ!」

 

 それに続くようにリニスが飛び出した。

 

「な!」

 

 そして、再びアルビナスに殴りかかる。それを避わすアルビナス。

 

「貴方! 死ぬつもりですか! こんな自爆特攻!」

 

「たとえ死んでも、貴方を止めます! ライのためにも!」

 

 アルビナスは少し焦っていた。リニスの自爆ともとれるゼロ距離砲撃。オリハルコン製の自身もダメージを負うほどの攻撃を続けられたら、流石の自分もやられると思ったからだ。

 

「くっ! ニードルサウザンド!」

 

 アルビナスは全方位攻撃を放つ

 

「ッ!」

 

 しかし、リニスは持ち前の野生の勘で既に距離をとっており、アルビナスの攻撃は空振りに終わった。

 

「くっ! 厄介な」

 

「はあああ!」

 

 リニスはアルビナスに接近する。そしてその拳がアルビナスを捕らえた。

 

「ブラズマスマッシャー!」

 

「あああ!」

 

 再び、リニスのゼロ距離砲撃が放たれた。

 

 

ドッカーーン!

 

 

 辺りに煙が立ちこめ、アルビナスは煙から飛び出した。

 

「くっ!」

 

 そして、しばらくして煙が晴れ、リニスが姿を現した。

 

「はぁ、はぁ……」

 

 リニスは肩で息をし、その体は満身創痍といったところだった。

 

「もうおやめなさい。いくらやっても私を倒すには到りません。先に貴方が力尽きるのが

 早いのですから」

 

 アルビナスはリニスに告げる

 

「はぁ、はぁ、ふふ、それはどうでしょう」

 

 リニスがそう言うと、アルビナスの装甲がひび割れ、その欠片が落ちた。

 

「ッ! まさか、オリハルコン製のこの装甲に傷を付けるとは」

 

「このまま、攻撃を続ければ貴方を倒せます」

 

 リニスは自分に回復魔法をかけ、再び同じ戦法を取る準備をする。

 

「……仕方がありません。女王(クイーン)はうかつに動かぬのが定石ですが、

 致し方ありません」

 

 アルビナスは常にマントで両手両足を隠していた。しかし

 

「手が!」

 

「全力で戦うときの私の姿をお見せしましょう」

 

 アルビナスはマントから両手両足を解放した。

 

「先程も言いましたが、女王(クイーン)僧正(ビショップ)城兵(ルック)の両方の機動力を持つ盤上最強の駒です。

 そのあまりの戦力をセーブするために普段は両手両足を封印していたのですが、

 この姿になったからにはもう貴方に万に一つも勝ち目はありませんよ」

 

「くっ!」

 

 リニスは拳を構え、アルビナスを見つめる。

 

「何しろ……この姿の私は」

 

 

フッ

 

 

「消えっ!」

 

「スピードが違います」

 

 アルビナスは一瞬でリニスの後ろに回り込む。

 

「くっ!」

 

 リニスは振り返り、アルビナスに殴りかかる。しかし、空振りに終わる。

 

「また消えた!」

 

「ふん!」

 

「かっは!」

 

 再び後ろに回り込んだアルビナスは両手を振り下ろすようにしてリニスに殴りかかった。リニスはそのまま地面に叩きつけられる。

 

――速過ぎます! まったく目で追えません! このスピード、春兎君の闇の魔法(マギアエレベア)に匹敵します!

 

「くっ」

 

 リニスは地面に手を当て、起き上がり、上空のアルビナスを見る。

 

「更にもう一つ、展開した私は魔法の威力が違います。私の得意な魔法は閃熱魔法。

 それを無数に分散し、全身から針の様に放つのがニードルサウザンドです」

 

 アルビナスは右手を前に出し、

 

「そのエネルギーがこうして手を使える時には一箇所に集められる」

 

「はっ!」

 

「名づけてサウザンドボール!」

 

 アルビナスは右手の魔力弾をリニスに投げつける。

 

「くっ!」

 

 リニスはその場から移動し、魔力弾を避わす。

 

 

ドオオオオオオン!

 

 

「なっ!」

 

 着弾したサウザンドボールは巨大な爆発を起こした。

 

――何て破壊力! それにあのスピード……プレシアはこれにやられたのですね。

  確かにプレシアにとって最悪の相性です。

 

「サウザンドボール!」

 

「なっ! もう二撃目!?」

 

 

ドオオオオオオン!

 

 

 リニスはなんとか魔力弾を避わす。

 

――速過ぎます! 以前守護騎士達に見せてもらったライの連撃並です!

 

「くっ!」

 

 リニスは回復魔法で自分の傷を癒す。

 

「その程度の回復魔法では焼け石に水でしょう」

 

――不味いです。このままでは時間の問題です。何か……何か手を!

 

 リニスがアルビナスを倒す方法を模索していると

 

 

ゴオオオオオ!

 

 

「な!」

 

 リニスは巨大な魔力を感知した。

 

「この魔力はまさか!」

 

「どうやら、ゼロ様のほうも決着のようです」

 

「そ、そんな……」

 

――もうダメです……たとえアルビナスを倒してもゼロを倒す手段がありません。

  すみません、ライ。貴方に受けた恩を、返すことも出来ませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ」

 

 峯岸は自身の魔法陣の上に乗り、膝を突き、肩で息をしている。その体には無数の傷がある。対してゼロはほぼ無傷で峯岸に相対している。更に自身の魔力を解放し、魔力量SSSまで上昇させている。

 

「良くぞここまで戦ったものだ。その若さでこの私とここまで対等に戦えるとはな。誇るが良い。

 この私に切り札を使わせたのだ。だが終わりだ、峯岸春兎。恨むなら力の無い自分を恨め。

 無力な正義など悪となんら変わらない。力が全てだ! 力こそ正義だ!」

 

 ゼロは右手に魔力を集中させる。

 

「ジガディラス・ウル・ザケルガ」

 

 ゼロが魔法を発動させるとゼロの上に破壊の雷神が出現した。雷神の砲口の周りにある5つの太鼓のような箇所が時計回りに輝き始める。

 

「避けたければ避けるが良い。その場合、君の後ろの守るべきもの達が消えるだけだ。

 さあ行け! 破壊の雷神、ジガディラスよ! 全てを打ち砕け!」

 

「ZIGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA」

 

 ジガディラスから超巨大な電撃砲撃が放たれた。

 

「今だ! 太陰道!」

 

 峯岸の足元に巨大な魔法陣が出現する。

 

「何だそれは?」

 

「敵弾吸収陣! 固定!」

 

 峯岸はジガディラスの巨大な砲撃を受け止めると、それを右手の前に収束させていく。

 

「私のジガディラスの砲撃を受け止めただと!」

 

「左腕開放! 奈落の業火! 固定! 双腕掌握! 奈落の業火、加算 破壊の雷神!」

 

 峯岸はジガディラスの砲撃魔法を受け止め、それと自らの遅延魔法で溜めていた奈落の業火を体内に取り込んだ。

 

「術式兵装! 雷神獄炎!」

 

 峯岸の体が雷のように発光し、雷と同化した。その腕には赤黒い炎を纏っていた。

 

「私の砲撃魔法を吸収しただと? まさか最初からこれを狙っていたとでも言うのか!」

 

 ゼロが驚愕していると。

 

 

バリッ!

 

 

 峯岸が消え、ゼロの前に現れた。

 

「何!」

 

「はああ!」

 

 峯岸はゼロに殴りかかる。ゼロは絶対守護領域で峯岸の攻撃を防ぐが、

 

 

ガッ! バキン!

 

 

 峯岸の攻撃は絶対守護領域を打ち破った。

 

「何! このパワーは!」

 

「でやあああああ!」

 

 峯岸の怒涛の攻撃がゼロに突き刺さる。

 

「ぐっが! ぐあ! があああ! ぐああ!」

 

 峯岸のスピードと攻撃力に対応できず、ゼロは吹き飛ばれていく。

 

「まだまだあああ!」

 

 峯岸の連続攻撃の前に成す術なく、蹂躙されるゼロ。

 

「力が正義、そう言ったなゼロ!」

 

 峯岸はゼロを殴りながら、語り出す。

 

「これが! これが正義か! より強い力でぶちのめされれば! お前は満足なのか!

 こんなものが……こんなものが! 正義であってたまるかああああ!」

 

『彼も成長しましたね』

 

『いや、まったく』

 

『熱い男に』

 

『え? そっち?』

 

「ぐぅ……まさかこの私をここまで追い込むとは……」

 

「終わりだ、ゼロ」

 

 峯岸はゼロに告げる。

 

「だが、そろそろ時間だ」

 

「何を……ぐ!? がっは!」

 

 峯岸が突然血を吐いた。

 

「ごほっ! ごほっ! 一体何が……」

 

「では種明かしと行こうか。私は君の闇の魔法(マギア・エレベア)を見た時から思っていた。

 その魔法の真骨頂は相手の魔法すら自分の中に取り込むところにあるとな。ゆえに私の

 放ったジガディラスの砲撃にはウイルスを仕込んでいた。それが君の体に充満したのだ」

 

「そんな……馬鹿な」

 

「実に良く踊ってくれたぞ、峯岸春兎よ。中々良い余興だった。この私にここまでのダメージを

 与えるとはな。誇るが良い。さて峯岸春兎よ、我が軍門に下れ。お前の力をみすみす管理局に

 渡すのは惜しい。私が有効的に使ってやろう」

 

「こ、断る! たとえ何をされても!」

 

「分かっていないようだな。君だけじゃない。ここには未来有望な魔導師が豊富だ。

 全員を連れ帰り、我が忠実な駒とする。どうやら我が親衛騎団が勝利したようだしな」

 

「嘘……だろ……。皆!」

 

「君達の弱さという種に暴力という水をじっくりと撒いて、慎重に花を愛でるように

 時間をかけてゆっくりと貴様らを調教してやる」

 

「この外道が!」

 

「おや、そうかい? ふっふっふ、ふっはははははははははははは!」

 

 ゼロの高笑いが響きわたった。

 

「さあ、眠れ! 峯岸春兎!」

 

 ゼロは振り上げた剣を振り下ろした。

 

「くっ!」

 

 峯岸は目を瞑って衝撃を待つ……が

 

「がっは!」

 

 ゼロのダメージを受けた声が聞こえた。

 

「え?」

 

 峯岸が顔を上げると

 

「え? 何で管理人格が?」

 

 そう、管理人格が峯岸を助け、ゼロを攻撃していた。

 

「大丈夫か? 少年」

 

「あ、ああ……どうして俺を助けたんだ?」

 

「仮面の騎士が私の中でワクチンプログラムを発動させていたが、先程、防衛プログラムを

 完全に抑制した。よってゼロ達と戦うために管理局と共闘することが可能となった」

 

「な、なら! 他の皆を!」

 

「その心配には及ばない」

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヒムのヒートナックルがアリシアに当たろうとした瞬間、

 

「魔神炎!」

 

「ぐああ!」

 

 炎の衝撃波がヒムを襲った。

 

「シグ……ナム?」

 

「大丈夫か? アリシア」

 

「うん、ありが……と」

 

 アリシアはゆっくりとその場に倒れ、気を失った。

 

「良く頑張った。後は任せておけ。フェイト、アリシアを頼んだぞ」

 

「……どうして姉さんを助けたの?」

 

「詳しい説明は後だ、ただ一つ言える事は……今ここにいる私はお前達の友人だという事だ」

 

「……分かった。貴方を信じる。後は頼みます、シグナム」

 

 フェイトはアリシアの腕を肩に抱え、その場から離脱した。

 

「ゆくぞ! レヴァンティン・ディムロス!」

 

[了解だ]

 

 

 

 

 

 

 

 シグマのランスは葵に向かって一直線に振り下ろされた。

 

「陽炎!」

 

 

グサッ!

 

 

 しかし、そこに葵の姿はなかった。

 

「何!」

 

「無事か? 葵?」

 

「ヴィータ……ありがとう。助かったわ」

 

 いつの間にか葵を抱え、シグマから大分離れたところにいるヴィータ。

 

「気にすんな。友達を助けんのは当然だからな。後はあたしに任せとけ」

 

「ええ、お願いするわ……」

 

 安心した葵は気を失った。

 

「なのは、葵を頼んだぜ」

 

「分かったの。ヴィータちゃん、後はお願い」

 

「へっ! 一瞬で終わらせてやるよ!」

 

 ある程度回復したなのはは葵をおんぶし、その場を離脱した。

 

「よっしゃ! 行くぜ! グラーフアイゼン・イクティノス!」

 

[了解した]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フェンブレンは刃の腕を神宮寺に振り下ろしたが

 

「アイスウォール!」

 

「何!」

 

 フェンブレンの刃は突然、出現した氷の盾に防がれる。

 

「大丈夫か? 神宮寺」

 

「ザフィーラ……」

 

「後は私に任せておけ」

 

「ああ……頼んだよ」

 

 神宮寺は気を失った。

 

「アルフ、神宮寺を安全なところに」

 

「あいよ! 後は頼んだよ、ザフィーラ」

 

「心得た」

 

 アルフは神宮寺を肩に抱え、その場を離れた。

 

「行くぞ、アトワイト」

 

[分かったわ]

 

 

 

 

 

 

 

 クロノを踏みつけるべく、巨大な足を踏み下ろすブロック。

 

「ストーム!」

 

「ブ、ブローーム!」

 

 しかし、突然発生した突風にブロックの巨体が吹き飛ばされた。

 

「大丈夫? クロノ君」

 

「シャマルさん……」

 

「後は私に任せて。ユーノ君、クロノ君を」

 

「はい。後は頼みます、シャマルさん。クロノ、肩を」

 

「すまない、ユーノ。シャマルさん、気を付けて」

 

「は~い♪」

 

 ユーノはクロノに肩を貸し、その場を離脱する。

 

「さあ、行くわよ。クラールヴィント・クレメンテ!」

 

[了解じゃ]

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゼ、ゼロ様!」

 

 闇の書の管理人格に吹き飛ばされたゼロを見て、慌てるアルビナス。急いでそこに向かおうとしたが、

 

「でやああ!」

 

 ロッテがアルビナスを攻撃する

 

「な!? ぐは!」

 

 吹き飛ばされるアルビナス。

 

「大丈夫? リニス」

 

「アリアさん、ロッテさん」

 

「後は私達に任せて」

 

「……頼みます」

 

 リニスは気を失った。

 

「お疲れ様……リニス。さあ、行くわよ! ロッテ」

 

「でも、リニスをこのままにはしておけないよ」

 

「リニスは私が運ぶわ」

 

 リニスの身を案じたロッテだったが、突然、誰かに話しかけられた。

 

「ッ! プレシアさん! 大丈夫なんですか?」

 

「ええ、大分回復したわ。ごめんなさい、私ではクイーンと相性が悪すぎる。後は任せるわ」

 

「任せてください」

 

 プレシアはリニスを抱え、その場から離脱する

 

「今度こそ行くわよ、ロッテ」

 

「反撃開始ってね!」

 

 

 

 

 

 

 

 管理人格から他の仲間の様子を聞いた峯岸は安堵していた。

 

「じゃあ、皆無事なんだな。良かった」

 

「ああ、だから安心して眠ると良い」

 

「分かった。後は頼み……ます」

 

 峯岸は気を失った。

 

「安らかに眠ると良い、小さき戦士よ」

 

 管理人格は転移魔法を発動し、峯岸を離れたところに転移させた。そして、管理人格はゼロの方へ向き直り、右手を前に出すと突然、杖が出現する。

 

「シュベルトクロイツ・ベルセリオス。主の敵を殲滅する」

 

[オッケー! じゃんじゃん行くわよ]

 

 そうして、ゼロ親衛騎団達の第二ラウンドが始まった。




何も書いてなくて申し訳ありませんでした。

次回は守護騎士VS親衛騎団ですね。
これ、ちゃんと三つ巴になっているでしょうか?
自信がなくなってきました。まあ、いつもの事ですが。


さて、零冶の念能力紹介のコーナーです。

では、次の念能力はこれだ!


23、解析眼(インペクト・アイ)
 系統:具現化系
 説明:相手のステータスや能力を見ることが出来る眼鏡を具現化する。
    スキャン条件は対象の生物のみを眼鏡に一分間収めること。
    そうすことで対象の詳細のステータスを見ることが出来る。(時間は本人の体内時間)
    その間、対象が眼鏡のレンズから出てしまったり、他の生物が移ってしまった場合は
    また、最初からやり直さなければならない。
    一分間対象を収めたら、その対象の詳細のデータがレンズに浮かび上がる。
    見たいデータをイメージする事でそのデータを見ることが可能。
    一度、対象がレンズ外に出る。または他の生物がレンズに入った場合は
    また最初からになる。
    見れる情報は基本ステータス、レアスキル、身長、体重、年齢、好きな食べ物、
    抱えている病、家族構成等々。また対象のデータなら本人の知りえない情報でも可能。
    眼鏡の形状は何でも可能で瓶底眼鏡からオシャレ眼鏡、サングラス、仮面にレンズを
    はめるでも可。

 制約
  1、対象を一分間レンズに収めなければならない。
  2、対象以外をレンズに収めてはならない。
  3、スキャンを発動するには目を凝の状態にしなければならない。

 誓約
  1、制約の条件が満たされなければスキャンは発動しない。


 零冶が普段生活しているときに着けている眼鏡はこの具現化した眼鏡です。強度は強度は普通の眼鏡より丈夫程度です。ライの時は仮面の目の部分にレンズをはめています。その場合、透明ではなく、相手から目が見えないようにサングラスのように写らないようにしています。

 制約の3、は具現化している時に凝にするではなく、スキャンする時のみです。あまり、使っていないように見えますが、描写が無いだけで、使っています。

 例えば、転生者達を鍛えるのに的確なアドバイスをするには相手の弱点や長所が分かっているほうが良いので、そういうときに使っています。繰り返す、描写が無いだけです。

 対象のみを一分間、レンズに収める続けるのは難しいですが、零冶は栄光の手袋(グロリアスハンド)時の支配者(クロックマスター)で時間を止めることで容易に相手のステータスを見ることが出来ます。

 ここで重要になるのは本人の体内時間で一分ってところです。時間を止めても零冶は止まっていないので、一分間対象をレンズに収める事が可能です。

 これはゲームとかで相手のステータスを見る時に時間が止まっているのと同じような感じを出すために、そんな感じにしました。

って感じです。

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