原作を放って置くとバッドエンドになるんですが、どうしたら良いですか?   作:月の光

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更新が遅くなって(ry
いつも本当にすみません。

実はまだ投稿したくなかったんです。
一話として投稿しようとしていた内容を書いていたら20000文字を超えました。
これでも半分も書いていないくらいです。
なので、二話か三話に分けて連続投稿しようかと思っていました。……が、
心が折れました。

とりあえず、一話分のキリが良い所で一度投稿します。
ですが、もしかしたら書き直すかもしれないので、
ご了承下さいますようお願い致します。

では、どうぞ


34_ミスト『だから言ったんですよ』零冶『何を?』

 荒廃した草原、空は暗く淀んでいる。ここは第101管理外世界ランジール。およそ生物らしい生物も見当たらない世界にライ達は降り立った。

 

「さて、全員。準備は良いな?」

 

≪《はい》《ああ》《ええ》≫

 

「…………」

 

 ライの確認に返事を返すなのは達、ただ一人を除いては

 

「大丈夫か? はやて」

 

「ライさん……」

 

「不安か?」

 

「……せやね。不安が無いってゆうたら嘘になるやろね。もしかしたら、こうして皆と話し

 出来るのもこれが最後かもしれんと思うと」

 

 はやては神妙な顔付きで弱音を吐く。

 

「そうだな。僅かでも死ぬ可能性が残っている以上、不安は消えないだろう」

 

「…………」

 

「だが、それで良いんだ」

 

「え?」

 

「未来が不安だからこそ、人は抗い続けるんだ。より良い未来を掴むために。

 不安が無くなったら、そこで人の成長は止まる。だから不安で良いんだ」

 

「……」

 

「思い出せ。その不安を拭う為に皆訓練して来たんだ。お前は一人じゃない。そうだろ?」

 

 ライははやてに問いかけた。

 

「でも……もし私が夢から覚めなかったら、ライさんが……」

 

 不安を拭い切れないはやては顔を伏せて言葉を漏らす。

 

「何だ、そんなことか」

 

「え?」

 

 ライから放たれた意外な言葉に顔上げるはやて。

 

「俺はそんなこと心配していない。お前は必ず目を覚ますと信じてるからな」

 

「……」

 

 ライははやての頭に手を置き、言葉を紡ぐ。

 

「お前の傍には守護騎士達がいる。仲間がいる。俺がいる。お前を信じろ。

 俺が、俺達が信じるお前を信じろ」

 

「ライさん……」

 

 ライにそう言われたはやてはなのは達の方を見る。

 

「そうだよ、はやてちゃん。きっと上手く行くの」

 

「なのはちゃん……」

 

「そうよ。そのために私達は訓練したんだから」

 

「葵ちゃん……」

 

「不安なのは分かるけど、立ち止まっちゃダメだよ」

 

「フェイトちゃん……」

 

「そーそー、私達を信じて! 泥舟に乗ったつもりで!」

 

「アリシアちゃん……大船の間違いやで」

 

「あれ? そだっけ」

 

「はやての傍には僕達がいるよ」

 

「ユーノ君……」

 

「俺達を信じてくれ。必ず成功させる」

 

「ハルにゃん……」

 

「その呼び方やめろって言っただろ!」

 

「まあまあ。落ち着けよ、春兎。大丈夫、俺達が付いてるぜ」

 

「えっと、誰やっけ?」

 

「今更かよ!?」

 

「嘘や嘘。冗談やって、王我君。ふふふ、皆、ありがとうな」

 

 なのは達と話して少し緊張がほぐれたはやては安心したように微笑む。

 

「よし、始めよう。アースラ、聞こえるか? 封時結界を」

 

『了解しました。エイミィ』

 

『りょうか~い!』

 

 リンディがエイミィに指示を出すとすぐさまライ達を中心に広範囲に封時結界が展開された。

 

「では、シャマル。神宮寺君から魔力の蒐集を」

 

「分かったわ」

 

 ライが指示を出すと神宮寺が前に出て、闇の書を持ったシャマルが前に出る。

 

「それじゃ、行くわよ」

 

「はい、お願いします」

 

 シャマルが神宮寺に確認すると闇の書を神宮寺の胸に当て、魔力の蒐集を開始する。そして、665ページまで埋まっていた闇の書は、すぐに666ページ全てに魔力が埋まり完成した。

 

「うっ!」

 

 闇の書が完成した瞬間、はやての胸が痛み出し、彼女は手で胸を押さえて蹲る。そして、闇の書の暴走が始まる。

 

「あああああああああああ!」

 

 はやてから巨大な魔力が吹き上がる。

 

「あああぁぁ…………我は闇の書の主なり、この手に力を」

 

 次の瞬間、闇の書がはやての左手に転移した。

 

「封印……解放」

 

『解放』

 

 はやてが闇の書の封印を解放すると闇の書から魔力が洩れ、はやての体を包み込む。体がみるみる成長し、伸び始めた髪は銀色に染まり、黒を強調したバリアジャケットが展開された。その背中には黒い翼が生える。

 

「また、全てが終わってしまった。一体幾たび、こんな悲しみを繰り返せばいい」

 

 管理人格が姿を現した。

 

≪《はやてちゃん》《はやて》……≫

 

 はやての変貌ぶりに驚愕を隠せないなのは達。

 

「その答えは簡単だ。悲劇は今日終わる。いや、俺達が終わらせる」

 

 管理人格に対し、ライが答えた。

 

「仮面の騎士よ。貴方のことは書の中から見させてもらっていた。お前の実力はある程度

 把握している」

 

「それは光栄だな。夜天の書よ「だが」ん?」

 

 ライの言葉をさえぎり、管理人格が言葉を紡ぐ。

 

「とても上手く行くとは思えない。我は闇の書。我が力の全ては主の望みを叶えるために」

 

 管理人格は右手を上に上げる。

 

[デアボリック・エミッション]

 

 闇の書が魔法を発動させ、管理人格の上に黒く稲光した魔力の球体が出現した。

 

「デアボリック・エミッション」

 

 管理人格が魔法を唱えると黒い球体は収縮を開始する。

 

「まさか! 広域殲滅魔法!」

 

「直ぐに離れないと!」

 

 クロノが管理人格の魔法に反応し、ユーノが全員に注意を促す。

 

「大丈夫だ」

 

 ライはそう言うと腰から持ち手に特殊な文字が書かれたクナイを取り出した。そのクナイを右手に持って横に倒し、左手を添え、前に突き出す。

 

「闇に染まれ」

 

 黒い球体ははじけるように膨れ上がり、辺りを闇が包み込む。その波動がライの持つクナイに触れた瞬間、黒い球体が消えた。

 

≪は?≫

 

 全員がその光景に驚愕した。次の瞬間

 

 

ドーーーーーーーーーン

 

 

 ライ達の遥か後方で爆発が発生した。

 

≪な!?≫

 

 その場に居た全員が驚愕した。

 

「……」

 

 管理人格は無言でライを見つめている。

 

「攻撃魔法だけを転移させたのか?」

 

「あの転移のレアスキルはこんな使い方もできるのね」

 

 シグナムとシャマルは今の現象をライの飛雷神の術(ひらいしんのじゅつ)だと推測した。

 

「これで少しは信じて貰えるかな?」

 

 ライは管理人格に問いかける。

 

「……確かにお前は強い、私が出会ったどの魔導師より。だが、お前の強さと主が

 お目覚めになるかは別の問題だ」

 

「そのために俺がいる。早速だが、俺を書の中に取り込んで貰いたいんだが?」

 

 ライは管理人格の前に出て、管理人格に尋ねた。当初の作戦通りライが闇の書の中からワクチンプログラムを起動させるためだ。しかし

 

「……拒否する」

 

≪へ?≫

 

 管理人格がライを取り込むのを拒否した。その場に居た全員が目を丸くした。

 

「……は? ……理由を聞いても?」

 

 ライは管理人格に尋ねた。

 

「お前は強すぎる。故に防衛プログラムがお前を取り込むのを拒否した。

 だからお前を取り込むことはできない」

 

「……」

 

 管理人格の答えにあのライですら言葉を失った。

 

『え? どうすんのこれ? どう収拾つけんの?』

 

『だから言ったんですよ』

 

『何を?』

 

『やり過ぎるなって』

 

『こんなの予想できるかい!?』

 

『しかし、さっきのセリフ恥ずかしいですね。俺たちが終わらせる(キリ』

 

『やめたげてよぉ!?』

 

 その場にいた全員が、どうするの? と思った。だが

 

――きっとライさんなら何とかしてくれるの

 

 なのはがライを見る

 

――ライならきっと

 

 フェイトがライを見る

 

――ライ兄さんなら何か手が

 

 葵がライを見る

 

――ライが居るから大丈夫だよ。きっと

 

 アリシアがライを見る

 

――何とかしとくれよ。ライ

 

 アルフがライを見る

 

――ライさん……

 

 ユーノがライを見る

 

――ライさん、どうするんですか?

 

 峯岸がライを見る

 

――どうすんのこれ? ライさん

 

 神宮寺がライを見る

 

――ライさん、零騎士の力を見せて下さい……というか何とかして下さい。お願いします

 

 クロノがライを見る

 

――まあ、ライなら何とか出来る気がするわ

 

 プレシアがライを見る

 

――ライなら大丈夫でしょう。期待しています、ライ

 

 リニスがライを見る

 

――うわぁ、どうすんのこれ

 

 ロッテがライを見る

 

――どうするの? 零騎士ライ

 

 アリアがライを見る

 

――どうするのだ、ライよ

 

 シグナムがライを見る

 

――おいおい、マジかよ。どうすんだ、ライ

 

 ヴィータがライを見る

 

――お願い何とかして、ライ

 

 シャマルがライを見る

 

――すまない、ライ。我等ではどうしようもない

 

 ザフィーラが申し訳なさそうにライを見る

 

「……ふぅ」

 

 ライが一息ついて、行動に出る。

 

竜の紋章(ドラゴンのもんしょう)発動!」

 

 ライは突然、竜の紋章(ドラゴンのもんしょう)を発動させた。

 

「更に双竜紋(そうりゅうもん)発動!」

 

 続けて双竜紋(そうりゅうもん)を発動させる。その場の全員がライの行動の意味が分からなかった。そんな周りを他所にライは両手を頭の上で組み、オーラと魔力を集中させる。そして、誰も居ない山の方を向き、両手を竜の口のように開いた。

 

竜闘気砲魔法(ドルオーラ)!」

 

 そして、超巨大な砲撃魔法を放った。

 

≪きゃあああ!≫

 

≪うわあああ!≫

 

 ライの放った砲撃魔法の衝撃に、その場の全員が吹き飛ばされそうになった

 

「くっ! 何て威力だ! 余波でこれほどの衝撃が!」

 

 シグナムはライの放った砲撃魔法の威力に驚愕していた。そして、衝撃が止み、全員が目を開くとそこには

 

≪え?≫

 

 あったはずの山が消えていた。

 

≪え? ええええ?≫

 

「これでも全力の2割程度の威力だ」

 

≪……≫

 

 全員が言葉を失った。

 

「更にこの程度威力なら連発も可能だ。だが、安心しろ。一応、非殺傷設定だ。死にはしない。

 まあ、直撃したら再起不能になるだろうが」

 

≪何それ怖い……≫

 

「さて、これを食らうのと俺を取り込むの、どちらがいい?」

 

「あっはい、取り込みます」

 

「あ゛あ゛?」

 

「いえ、取り込まさせて下さい」

 

「よろしい」

 

≪お、脅しだああああ!≫

 

 ライは管理人格を脅して取り込まれることとなった。しかし、ライもただ脅しただけじゃない。絶対誘導(ギアス)を使い、自分を取り込むように管理人格の思考を誘導した。竜闘気砲魔法(ドルオーラ)の威力を見せることで一瞬でもライに逆らう気をなくし、そのまま思考を誘導し、取り込みにこじつけた。

 

「よし、では皆。後は作戦通り頼む」

 

≪イエス、サー!≫

 

 全員がライに向かって敬礼をした。

 

「では、管理人格。頼む」

 

「分かった」

 

 管理人格は闇の書をライに向けるとライの体が光りだし、そしてそのまま消えた。

 

「よし。全員、作戦通りに行くぞ」

 

≪了解!≫

 

 クロノが号令を掛けると管理局側の全員が返事をする。

 

「我々も行くぞ!」

 

≪了解!≫

 

 シグナムが号令を掛けると闇の書側の全員が返事をする。そして動き出そうとした瞬間。

 

「ッ!」

 

 管理人格が動きを止め、後ろに向き直る。

 

「どうした? 管理人格よ」

 

 シグナムが管理人格に尋ねた。

 

「……盾」

 

[パンツァーシルト]

 

 管理人格が斜め上に右手を前に出し、シールド魔法を使用した瞬間

 

 

ドオオオオオオ!

 

 

 突然、砲撃魔法が管理人格を襲った。

 

≪な!?≫

 

 そして、砲撃魔法が止むと

 

「流石は闇の書だ。我がハドロンブラスターをこう易々と受け止めるとは」

 

「こ、この声は」

 

「まさか……」

 

 聞こえてきた声に驚愕を隠せないクロノとユーノ。ライを最高の仲間と例えるなら、その男はまったくの逆。

 

「ごきげんよう。管理局並びに闇の書の守護騎士達よ」

 

≪ゼロ!!≫

 

 最凶の敵がそこに居た。

 

「何故、お前がここに居る! この場所はアースラの乗組員しか分からないはずだ!」

 

 クロノがゼロに問いかける。

 

「ひさしぶりだな。クロノ執務k、ごほん、チビ執務官殿」

 

「わざわざ言い直すな! それにチビじゃない! これでもあの時より」

 

「0.5センチ伸びたんだろう? おめでとう。まあ、チビであることには変わらないがな」

 

「う、うるさい!? 何で知ってるんだ!」

 

≪なんか緊張感ないな~≫

 

「何故知っているか? 確か君が身長が伸びて喜んでいたのは一週間くらい前だったな。

 アースラの自室で喜んで鼻歌を歌っていたではないか? さて、ここまで言えば答えは

 直ぐに出るだろう?」

 

「ま、まさか」

 

「そのまさかだ。覚えていないかな? 次元艦アースラは一度私によって制御が奪われたことが

 あったはずだが?」

 

「確かあったが……それじゃ、あの時からずっと?」

 

「気付いたようだな、その通り。あの時、私の仕込んだウイルスでアースラの制御を奪った。

 そのウイルスはプレシアの活躍で直ぐに除去された。だが、私は他にもウイルスを

 仕込んでいたのだ。つまり、そちらの情報はこちらに筒抜けだったという訳だよ」

 

「くっ! こんな失態を!」

 

「私はこの情報を得たとき歓喜した。我が宿敵である零騎士ライを葬れる機会を得たとな。

 奴さえいなくなれば我が覇道を阻むものはいない。ここで闇の書ごと葬る」

 

 ゼロは腰の剣を抜いた。

 

「そうはさせない!」

 

「いくらお前でもこの人数を相手に出来ると思ってるのか」

 

 戦闘態勢を取ったゼロに対してクロノと峰岸が言った。

 

「確かにこの人数を相手にするのはいくら私でも手間取りそうだ」

 

「あれから俺達も強くなったんだ」

 

「貴方の思い通りにはさせないわ!」

 

 神宮寺と葵がゼロに言った。

 

「……ふ、ふはははははははははははははは!」

 

「な、何がおかしいんだい!」

 

 突然笑い出したゼロに対してアルフが聞いた。

 

「ふふふふ、失敬。どうやら私は甘く見られているらしいのでな。この作戦が始まってから

 約一ヶ月余りか……その間私が何の準備もしていないと思っているのか?」

 

「何ですって?」

 

「まさか……」

 

 ゼロの意味深な言葉に驚愕するプレシアとリニス。すると右手を高く挙げ、

 

 

パチン!

 

 

 指を鳴らすゼロ。

 

≪ッ!≫

 

 全員が身構えた。しかし、何も起こらなかった。

 

「ん? 何も起こらねぇな」

 

「警戒を怠るな」

 

 ヴィータは何も起こらないことに疑問を持ったが、シグナムが注意をする。すると上空から五つの物体が降ってきた。降ってきたそれはゼロの前に一列に並んだ。まるでチェスの駒を彷彿とさせるそれは徐々に形を変え、人型に変形した

 

「紹介しよう。守護騎士にならって作った我が親衛騎士。完全自立型戦闘用デバイス兵士(ポーン)のヒム」

 

 メタリックな人間の容姿のデバイスが前に出る

 

騎士(ナイト)シグマ」

 

 馬のような顔をした容姿のデバイスが大きなランスを肩に担ぎ、前に出る

 

僧正(ビショップ)フェンブレン」

 

 全身が刃物になっている容姿のデバイスが前に出る。

 

城兵(ルック)ブロック」

 

 人間の数倍の大きさの容姿のデバイスが前に出る。

 

女王(クイーン)アルビナス」

 

 女王の容姿をしたデバイスが前に出る。

 

「そして私が(キング)ゼロ」

 

 ゼロが右手を胸に当て、名乗りを上げる。

 

「そして、我等がゼロ様を守るゼロ親衛騎団」

 

 アルビナスが喋り出した。

 

「しゃ、喋った!」

 

『キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!!』

 

『ブラックさん、空気読んで下さい』

 

「当たりめぇだろ。完全自立型つったろうが」

 

 ヒムが右手で拳を作り、左手に当てて言った。

 

「さて、戦闘を始めようか?」

 

 ゼロが言うと、守護騎士達とゼロの間に割って入るなのは・フェイト・アリシア・ユーノ・峯岸・神宮寺。

 

「そんなことさせない!」

 

「ライもはやても私達が守る!」

 

 ゼロ達に言い放つなのはとフェイト。

 

「違うわ! 皆! 下がって!」

 

「「「「「え?」」」」」

 

 なのは達が振り返るとヴィータがなのはに襲い掛かった。

 

「え! きゃっ!」

 

[プロテクション]

 

 レイジングハートがとっさにプロテクションを張り、なのはを守った。

 

「ヴィータちゃん、何するの!」

 

「わりぃな、高町。確かにゼロはあたし達にとって敵だが」

 

「管理局が味方という訳ではないのだ」

 

「ごめんなさいね」

 

「これは我等ではどうしようもないのだ」

 

「全てを破壊する。例外は無い」

 

 守護騎士達と管理人格が告げた。

 

「そんな、それじゃ」

 

「俺達は守る対象からも攻撃されるってことか……」

 

 ユーノと峯岸が現状を理解した。

 

「その通り、この戦いは管理局側、闇の書側、そして我々ゼロ親衛騎団の三つ巴の戦い。

 さあ、奏でよう。生死をかけた交響曲(シンフォニー)を!」

 

 

 

 

 

 

「手加減できねぇかんな! 高町にゃのは!」

 

「なのはだってば!」

 

 互いの魔力弾が飛び交う中、ほのぼのとしたやり取りをしながら、戦闘するなのはとヴィータ。

 

「うるせぇ! なんだって良いだろ!」

 

「もう! 絶対に勝って名前で呼んでもらうんだから!」

 

「出来るもんならやってみやがれ! アイゼン!」

 

[了解]

 

 

ガション! ガション!

 

 

 ヴィータがカートリッジをロードし、グラーフアイゼンをラケーテンフォルムに変更した。

 

「ラケーテン!」

 

 ロケットのように加速するヴィータ。

 

「私だって! レイジングハート!」

 

[イエス、マスター。ロード・カートリッジ]

 

 

ガション!

 

 

「プロテクション!」

 

[プロテクション・パワード]

 

 なのはは新しくなったレイジングハートのカートリッジシステムで魔力の底上げをし、防御魔法を発動させた。

 

「ハンマー!」

 

 ヴィータはグラーフアイゼンを叩き付けた。なのははその攻撃を受け止めた。

 

「うっ、固てぇ……」

 

「本当だ……」

 

[バリアバースト]

 

 

ドカン!

 

 

「ッ!」

 

 レイジングハートはプロテクションを爆発させて、ヴィータを牽制し、距離を取るなのは。

 

「レイジングハート! カートリッジ・ロード」

 

[カートリッジ・ロード]

 

 

ガション!

 

 

「アクセルシューター!」

 

[アクセルシューター]

 

 なのはの周りに大量の魔力弾が発生する。

 

「ちっ! アイゼン、カートリッジ・ロード」

 

[了解]

 

 

ガション!

 

 

[パンツァーヒンダネス]

 

 ヴィータが全方位防御魔法を展開した。なのはは魔力弾をコントロールしてヴィータを攻撃する。数十回の攻撃がぶつかるとヴィータの防御魔法にひびが入る。

 

「ちっ!」

 

「これで終わりだよ! ライさん直伝! アクセルシューター」

 

 なのはは一つの魔力弾を自分の前に発生させ、レイジングハートをヴィータに向ける。

 

「スパイラルショット!」

 

 魔力弾がヴィータに向かって急加速する。魔力弾がヴィータの防御魔法に激突すると

 

 

ギュルルルル! パリィーーーン!

 

 

「なっ! くっ!」

 

 

 魔力弾を拳銃の弾のように螺旋回転させることで貫通力と速度を高めたなのはの攻撃はヴィータの防御魔法を打ち破った。ヴィータはアイゼンで何とか受け止め、直撃を避けた。

 

「まだまだ行くよ! スパイラルショット!」

 

「ちっ! 厄介な!」

 

 なのはが複数の魔力弾をヴィータに放つ、更に撃ち終わった魔力弾をコントロールし、ヴィータに攻撃するなのは。

 

「スパイラルショット!」

 

「なめんな!」

 

 ヴィータはなのはの魔力弾をグラーフアイゼンで打ち返した。

 

「嘘!」

 

 なのはは魔力弾をコントロールし、自分にぶつかる前に止める。

 

「流石だね。ヴィータちゃん」

 

「お前もな。高町なにょは!」

 

「なのはだってば!」

 

 再び、戦闘が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

「お前とは再び、一対一で模擬戦をしたいと思っていたが、まさかこんな形で叶うとはな」

 

「私も、また戦いたいと思っていました」

 

「手加減はできんぞ? テスタロッサ」

 

「望むところです。シグナム」

 

 互いに睨み合うフェイトとシグナム。そして

 

「「はあああ!」」

 

 同時に動き出し、距離を詰める。互いのデバイスが相手の防御魔法にぶつかり、すれ違う。着地と同時に高速移動でシグナムの後ろに回りこむフェイト。

 

「ッ!」

 

「てやあああ!」

 

 フェイトはバルディッシュを振り下ろす。

 

「はあああ!」

 

 シグナムはバルディッシュを受け止めようとレヴァンティンを横に倒し、構えた。しかし、フェイトの姿が消え、シグナムの右に現れる。

 

――ッ! フェイントか!

 

「はあっ!」

 

 シグナムは鞘で受け止める。

 

「ッ! また鞘で!」

 

「でやああ!」

 

 シグナムはレヴァンティンでフェイトに切りかかる。しかし、既にそこにフェイトの姿はなかった。

 

「バルディッシュ! カートリッジ・ロード」

 

[イエス、サー]

 

 

ガション!

 

 

「プラズマランサー」

 

[プラズマランサー]

 

 フェイトはカートリッジをロードし、魔力弾をシグナムに放つ。それを上に飛び上がり避わすシグナム。

 

「ターン」

 

 シグナムが避わした魔力弾が止まり、その場で向きを変え、上のシグナムに向かって発射された。

 

「ちっ! レヴァンティン!」

 

[了解]

 

 

ガション!

 

 

 レヴァンティンを鞘に収め、

 

「はああ! 陣風! 空牙!」

 

 居合いの要領で引き抜き、炎の衝撃波を放ち、フェイトの魔力弾をかき消すシグナム。フェイトはシグナムの後ろに回りこみサイスフォームにしたバルディッシュで切りかかる。

 

「ッ!」

 

「てやああ!」

 

 シグナムは攻撃を避わすが、避わしきれず掠ってしまい、バリアジャケットが傷ついた。

 

「流石だな。テスタロッサ」

 

「貴方も、シグナム。まさか今のが避わされるとは思いませんでした」

 

「私も守護騎士としてのプライドがあるからな。簡単に負ける訳にいかんのだ」

 

「私も今日は負ける訳には行きません。はやてのためにも」

 

「……主はやては良い友人を持った」

 

「シグナムも私の大切な友人ですよ。ヴィータもシャマルもザフィーラも皆」

 

「……ありがとう。行くぞ! フェイト!」

 

「はい! シグナム!」

 

 熱い友情バトルが再開となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「テォアアアアア!」

 

「はああああ!」

 

 ザフィーラとアルフが互いの拳をぶつけ合う。その後、距離を取るアルフ。

 

――やはり、距離の取り方が絶妙だ。迂闊に近づけん

 

――たっく、何て固い守りだい。崩せる気がしないよ。でも……

 

「どうしたんだい、ザフィーラ。今日は妙に攻撃的じゃないかい」

 

「確かに私は守護獣。守りこそ我が使命。しかし、今の支配者は管理人格。管理人格が

 破壊を望むなら私も攻撃が主体となる。それだけのことだ」

 

「そうかい。主のために信念を曲げるってのかい。まあ、あたしはそういうの嫌いじゃないよ」

 

「そうか。すまんが、手加減はできん。簡単に倒れてくれるなよ」

 

「はっ! 上等だよ! 攻撃であたしに勝とうなんて1万光年早いんだよ!」

 

「……1万光年は時間じゃない、距離だ」

 

「う、うるさいよ! 細かいことはいいんだよ!」

 

 アルフとザフィーラの漫才のようなやり取りの後、再び互いのこぶしが衝突した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 周りの皆が死力を尽くし戦う中、互いに動かず、ただ睨み合っている二人が居た。

 

「こうして一対一で戦うのはあの模擬戦以来ね」

 

「そうですね。あの時は負けましたが、今回は負けません」

 

「ふふ、お手並み拝見ね」

 

 シャマルとユーノは最初の模擬戦の再現と言わんばかりに互いにまったく動かず、着々と自分達の戦いを始めてた。相手の裏を読み、如何に自分のバインドで相手を捕らえるか、まったく動かない中、設置型バインドの配置と任意発動バインドの使い所を見極め、互いの思考がせめぎあっている。

 

 そして、同時にその場から動き出し、お互いの元居た場所にバインドが発動する。最初の模擬戦の再現のように設置型バインドと任意発動型バインドで相手を捕らえようとする。しかし、シャマルが前回と違う動きを見せる。

 

「な! 魔力弾!」

 

「確かに苦手だけと使えない訳じゃないのよ!」

 

――くっ! 読み間違えた! 魔力弾を使ったことが無いから使えないものだと

  思い込んでしまった!

 

 魔力弾は決して威力は高くないが、かといって無視する訳には行かず、防御魔法で防ぐユーノ。その間もシャマルはバインドでユーノを捕らえようとしている。ここでユーノが後手に回ることになった。

 

「フルーレバレット!」

 

「ラウンドシールド!」

 

「甘いわ! 戒めの鎖!」

 

「しまった!」

 

 シャマルの魔力弾を防ぐため、防御魔法を発動したユーノだったが、ここでシャマルのペンデュラムがユーノを捕らえようとユーノの周りに円を描くように囲い、今にもユーノを捕らえようとする。

 

「これで私の勝ちよ!」

 

「今だ!」

 

 シャマルのペンデュラムが絞まりユーノを捕らえようとした瞬間、ユーノはフェレットモードに変身することでペンデュラムの拘束から抜け出した。

 

「嘘!?」

 

「リングバインド!」

 

「しまった!」

 

 ユーノの秘策に驚愕したシャマルの一瞬の隙を逃さず、ユーノは発動の早いリングバインドでシャマルを捕らえた。

 

「まだだ! チェーンバインド!」

 

 ユーノはすかさず、拘束力の強いチェーンバインドでシャマルを捕らえた。

 

「僕の勝ちですね」

 

「まいったわ……まさか、あんな方法で私のバインドから逃れるなんてね」

 

「奥の手は最後までとっておくものですから」

 

「そうね、ユーノ君の言う通り。でもね」

 

「え? ッ!?」

 

 ユーノは勝ちを確信していたが、シャマルの様子に疑問を持ち、直ぐにその場から飛び退いた。すると突然、元居た場所でバインドが発動した。

 

「あら、残念」

 

「そんな! あなたはあそこに!」

 

 ユーノは後ろから現れたシャマルに驚愕した。そして、自分のバインドで捕らえたはずのシャマルを見た。だが、そのシャマルは煙のように消えた。

 

「幻覚魔法……」

 

「大正解♪ 奥の手は最後までとっておくものよね」

 

「流石です、シャマルさん」

 

「貴方もね、ユーノ君。さて、仕切りなおしね」

 

「はい。次こそ、僕が勝ちます」

 

「楽しみにしてるわ♪」

 

 再び、互いの思考の読み合いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でやあああ!」

 

「盾」

 

[パンツァーシルト]

 

 ロッテが管理人格に攻撃を仕掛けるが、管理人格の防御魔法で防がれてしまう。

 

「刃以て、血に染めよ」

 

「やば!」

 

「穿て、ブラッディダガー」 

 

「させません! プラズマランサー!」

 

 リニスが管理人格から放たれた自動誘導型高速射撃魔法を迎撃する。ゼロが現れたことで当初予定していた戦いの組み合わせで戦うことが出来なくなり、管理人格はリニスとリーゼ姉妹が相手をすることになった。

 

 リーゼロッテの近接戦闘、リーゼアリアの遠距離攻撃と支援魔法、リニスが中衛からリーゼロッテを援護する形で管理人格と応戦していた。ロッテが前衛、アリアが後衛に回ることで、当初予定していた峯岸・プレシアの代役を務めてた。

 

 今回の三つ巴の戦いで最重要となるポイントは管理人格の暴走を抑えつつ、ゼロ達から管理人格を守らなければならない点だ。それ故に本来、誰かが倒れたときの補助要員だったアリアとロッテが管理人格との戦いに参戦している。

 

 戦い方はロッテが管理人格を近接戦闘で抑え、リニスがフォローする。アリアは極力戦闘には参加せず、ゼロ達の動向を伺い、管理人格を守る役目を担っていた。更にロッテとアリアはライから貰ったシンクリンクリングにより、思考の共有がされており、ゼロ達の動きが管理人格と戦いながらでも知る事ができるため、今取れる選択としては最善だろう。

 

――流石は管理局の提督を勤めているだけはあります。あの状況から最善の手を打つなんて。

 

 リニスはリンディの采配に感銘を受けていた。リニスの言う通り、今回の戦いにおいて影の功労者はリンディだろう……最もそれは作戦が成功したときの話だが……

 

「サンキュー! リニス!」

 

「お気になさらず。ロッテさんも大変でしょうが、頼みます」

 

「まっかせておいて!」

 

「力をこの手に」

 

[シュヴァルツェ・ヴィルクング]

 

 管理人格が魔力を両手に集中させた後、

 

「スレイプニール……羽ばたいて」

 

[スレイプニール]

 

 背中の翼を羽ばたかせ、高速移動を開始する。そして、左手でロッテに殴りかかる。

 

「させないわ! ラウンドシールド!」

 

 アリアがロッテを守るため、防御魔法を発動させる。しかし、それに構うことなく、今度は右手で殴りかかる管理人格。するとアリアの防御魔法はガラスのように砕け散った。

 

「嘘!?」

 

「やらせません! ブラズマランサー!」

 

 防御魔法が砕け、むき出しになったロッテをフォローすべく、リニスが魔力弾を放つ。それを左手で殴り粉々に粉砕する管理人格。

 

「な!?」

 

「終わりだ」

 

 そのまま、ロッテに殴りかかる管理人格。ロッテも辛うじて防御するが、勢いを殺しきれず、吹き飛ばされる。

 

「うわあああ!」

 

「ロッテ!」

 

 吹き飛ばされたロッテの方向に先回りし、受けとめるアリア。

 

「大丈夫、ロッテ?」

 

「ててっ、うん。何とか」

 

「どうやら、今の打撃は左右の拳に破壊効果を纏わせていたみたいですね」

 

 リニスが分析した通り、管理人格は右手にはバリア破壊の効果、左手には魔力弾破壊効果を持たせていた。

 

「分かっていたことだけど、やっぱり一筋縄ではいかないわね」

 

「でも、負ける訳に行かないよ」

 

「もちろんです。はやてちゃんのため、ライのために」

 

「「「《行くよ!》《行きます!》」」

 

「咎人達に、滅びの光を」

 

 管理人格が右手を上げ、魔力を収束させていく

 

「まさか……あれは」

 

「なのはちゃんの」

 

「スターライトブレイカー?」

 

 ロッテ、アリア、リニスは管理人格がなのはのスターライトブレイカーを使うと予想した。しかし

 

「星よ集え、全てを滅する(いかづち)となれ」

 

「あれ? もしかして……」

 

「なのはちゃんとフェイトちゃんの……」

 

「スタープラズマブレイカーですか!?」

 

「貫け 雷光」

 

 ロッテ、アリア、リニスは顔を見合わせ同時に頷く

 

「「「《一旦逃げよう!》《一旦逃げましょう!》」」」

 

「スタープラズマブレイカー」

 

 三人は脱兎の如く逃げ出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 無数の魔力弾が飛び交う中、メタリックな人間が拳でそれらを破壊していく。

 

「だああ! ちまちまちまちまとおお!」

 

「悔しかったらここまでおいで~」

 

 アリシアが兵士(ポーン)ヒムを相手にし、魔力弾の弾幕で足止めをする。ヒムは接近戦のスペシャリストだ。だが、アリシアに近づくことが叶わない。その理由は

 

「ちっ! この魔力弾幕に加えてあのスピード。相性が悪いぜ」

 

 そう、アリシアの戦い方はプレシアに近いが、プレシアと同じ魔力砲台による魔力弾幕だけではない。フェイトほどではないが、侮れないスピードがある。言わば、プレシアとフェイトを足して二で割ったような戦闘スタイルなのだ。

 

「フォトンバレット・マルチショット!」

 

「ちっ! キリがねぇな。仕方ねぇ!」

 

 ヒムは魔力弾の回避を捨て、ダメージ覚悟でアリシアに突っ込んだ。

 

「そう来ると思って!」

 

 アリシアは数個の魔力弾を爆発させて煙幕を張った。

 

「しゃらくせえ!」

 

 ヒムは腕を大振りで振り払い、煙を払った。しかしそこには

 

「何ぃ!」

 

 ヒムを中心に、無数の魔力弾が包囲していた。

 

「これで終わりだよ! プラズマランサー・ベラーゲルング!」

 

 魔力弾はヒムを中心に向き直り、一斉に発射された。

 

「俺をなめんなあ! ヒートナックル!」

 

 ヒムは熱が篭った拳を両手に展開し、迫り来る魔力弾を次々と破壊していく

 

「嘘!?」

 

「ラストオオ!」

 

 そして、最後の魔力弾を砕いた。

 

「考えが甘かったな嬢ちゃん。俺達はゼロ様に作られた戦闘用デバイスだぜ。俺だけじゃなく

 他の奴らも何かしらの特技を持ってんのさ。俺はこれ。炎熱系魔法を使用し、拳に集める

 ことで破壊力を高める。名づけてヒートナックル」

 

「ヒートナックル……なんかかっこいい!」

 

「おっ、話が分かるじゃねぇか嬢ちゃん。この良さが分かるとはな。倒しちまうには勿体ねぇ」

 

「いいな~、私もなんか欲しいな。私ね。雷撃が得意なの。良いの無い?」

 

「ほう、雷撃か……だとしたら、ライトニングバスターとか……いやそれはシグマのだから……

 ライジングインパクトなんてどうだ?」

 

「おお! なんか良い感じ。ライジングインパクト!」

 

 ハリセンを振り下ろし、技名を言うアリシア

 

「はっはっは! 良いじゃねぇか!」

 

「「《そこの二人! まじめにやれ!》《姉さん! まじめにやって!》」」

 

 ほのぼのとしたやり取りをしていたら傍で戦っていたシグナムとフェイトに怒られる二人。

 

「怒られちゃった……」

 

「いけねぇ、いけねぇ。俺としたことが盛り上がっちまったぜ」

 

『ねえ、フェイト』

 

『……何? 姉さん』

 

 アリシアがフェイトに念話をするが、フェイトから不機嫌そうな雰囲気が伝わってくる。

 

『もしかして、まだ怒ってる? ごめんってば、謝るから許して?』

 

『……もう。しょうがないな、姉さんは』

 

『えへへ~ありがと。でもね、まじめな話、私じゃあの人倒せないよ。私の魔力弾とか

 砲撃魔法じゃ、とても傷つけられそうにない』

 

『そうなの?』

 

『うん、だって私の魔力弾って全部、防がれた訳じゃなくてある程度は当たってるんだよ?

 でも全然傷つかないの』

 

『それほど固い装甲ってこと?』

 

『うん、今はスピードで誤魔化してるけどその内捕まっちゃう。だから』

 

『ライに教えてもらったあれをやるってこと?』

 

『そう、そう』

 

『でも、あれは魔力の消費が早い。時間を稼がないといけない状況では使うべきじゃないと

 思うけど……』

 

『でも早く倒せれば、それで敵の数が減ってこっちが有利になると思うよ?』

 

『……分かった。あれをやろう』

 

『うん!』

 

 フェイトとアリシアは突然、動きを止めた。

 

「どうした? フェイト」

 

 動きを止めたフェイトにシグナムが尋ねた。

 

「ついに諦めたか?」

 

 今度はヒムがアリシアに聞いた。

 

「ううん、そうじゃないよ。シグナム」

 

「ここから私達の本気を見せてあげるよ」

 

 シグナムとヒムの質問に答えるフェイトとアリシア。フェイトは右手首につけたブレスレットを左手でそっと触れ、アリシアは左手首につけたブレスレットに右手でそっと触れた。

 

「「アビリティリンク・スキルコネクト!」」

 

 二人が同時に言葉を発すると、二人の体が淡く発行し、髪が電気を帯びたようにギザギザになった。まるで雷そのものになったかのように。

 

「何だそれは?」

 

「何だそりゃ?」

 

 シグナムとヒムは目の前で起きた不可思議な現象に疑問が尽きなかったが、気持ちは変わらない目の前の敵を倒す。そう思い、シグナムが武器を構えようとし、ヒムが拳をかまえようとした瞬間

 

 

フッ

 

 

 

 二人の姿が消えた。

 

「「な!?」」

 

 そして、いつの間にかヒムの懐にフェイトが現れ、背後にアリシアが現れた。そして二人はデバイスで攻撃した。

 

「「はあああ!」」

 

 その攻撃は防ぐ間もなく、ヒムにヒットする。

 

「ぐはっ!」

 

 二人に攻撃されたヒムは態勢を立て直そうし、二人を見て動こうとするも

 

「ぐっ!」

 

 二人の動きを捉えることはできず、いつの間にか攻撃をされている。

 

「がっ! ぐ! はっ!」

 

 ヒムは目で追いきれないスピードの前に成す術がなかった。これこそがライから教わったアビリティリンクの裏技。フェイトとアリシア、互いの魔力変換資質 電撃を結合させ、強大になったそれは脳から送る電気信号を体全体に纏うことで脳から指示をするより早く四肢を動かすことが可能になる。

 

「「名づけて神速(カンムル)!」」

 

 そしてこの特性は二つある。一つは自分の肉体を操作することで超高速移動を可能にする電光石火(でんこうせっか)。もう一つは相手の動きに感応して自動的に体が動く疾風迅雷(しっぷうじんらい)。そして、今二人が使っているのが後者である。

 

 予め、プログラムした攻撃が相手の魔力、筋肉の動き、視線、重心に反応する。脳からの命令を省き反射のみで繰り出される限界を超越した動きは……容易に敵の肉体の動きを追い越した。

 

――一体どうなってんだ。こりゃよ。一撃一撃は大したことねぇが、手も足も出ねぇ。

  それに電気を帯びた攻撃で着々とダメージを加算して行きやがる。こうなったら……

 

「「疾風迅雷(しっぷうじんらい)!」」

 

 フェイトとアリシアは圧倒的な初動の差でヒムに文字通り手も足も出させる間もなく蹂躙している。その光景を見ていたシグナムは驚愕していた。

 

――なんという早さだ。相手が動き出す瞬間には既に先回りをし、攻撃している。

  圧倒的な初動の早さ。あれでは私も迂闊に動けん。

 

 本来、フェイトはシグナムの足止めという任務を担っていたが、本当の敵である親衛騎団を先に倒す事が本来の目的であるシグナムの足止めに繋がると判断し、アリシアと共にヒムを攻撃している。だが、シグナムがその場から離れ、他の守護騎士達の援護に向かわれては意味が無い。

 

 故にフェイトはヒムを攻撃しつつ、シグナムの様子を伺っていた。もし、その場から離れる素振りを見せた場合は電光石火(でんこうせっか)でシグナムに接近し、攻撃をするためだ。

 

 それが分かっているからシグナムもその場を離れようとしない。それが最善の選択だと判断したからだ。だが、シグナムもただ見ているだけではない。少しでも情報を得ようと二人の動きを分析している。何故なら、二人がヒムを倒したら、次に戦うのは自分なのだから。

 

『これだけ攻撃してもダメージを大して受けた様子が無い。やっぱりあの装甲は簡単には

 破れそうにない。このまま攻撃し続けてもこっちの魔力が尽きるほうが早いかも知れない』

 

『だったら大技で一気に決めようよ!』

 

『でも、あいつの様子が変だ。迂闊に動かないほうが良いかも知れない』

 

『でもそれじゃこっちが先にまいっちゃうよ? 大丈夫だって、私達の速さに対応できてない

 だけだって。一気に決めるよ』

 

『待って! 姉さん』

 

「トドメだよ!」

 

 アリシアは電光石火(でんこうせっか)でヒムの遥か上空に移動した。そして、更に電光石火(でんこうせっか)で急降下する。そして、電気を帯びたハリセンでヒムを攻撃する。

 

「てやあああ! ライジングインパクト!」

 

「その技名、本当に採用したの!?」

 

 アリシアの放ったライジングインパクトは見事にヒムの頭にヒットした。

 

「やった!」

 

 だが、

 

 

ガシッ!

 

 

「え!?」

 

 アリシアは右手をヒムの左手で掴まれた。

 

「そんな! 直撃したはずなのに!」

 

 アリシアは自分の必殺技が通じなかった事に驚愕した。

 

「確かに直撃したぜ、ライジングインパクト……良い技じゃねぇか、嬢ちゃん。だがな、

 トドメとくりゃ(ここ)に来ると思ったぜ。だからここに力を集中しておけばダメージは

 最小限に留められる。惜しかったな、嬢ちゃん」

 

「姉さん! この!」

 

 フェイトは電光石火(でんこうせっか)を使用し、ヒムの後ろに回りこみ攻撃をする。

 

「ぐがっ! 確かに大したスピードだぜ。だがな、一撃一撃は大したことねぇ。

 耐えるのはそう難しくねぇんだぜ?」

 

「この! この! 姉さんを離せ!」

 

「フェイト! 私のことはいいから逃げて!」

 

「わりぃがこれも仕事なんでな。悪く思うなよ」

 

 ヒムは腰を落とし、右手を魔力を込める。

 

「ヒートナックル!」

 

「やめてええええええ!」

 

 フェイトの叫びも空しく、ヒムの拳はアリシアに突き刺さった。

 

[ディフェンサー]

 

「きゃふ!?」

 

 吹き飛ぶアリシア。

 

「姉さん!」

 

 そして、地面に叩き付けられた。

 

「……うっ」

 

 アリシアは無事だった。彼女のデバイスであるハリセンが攻撃が当たる直前にディフェンサーを発動したことで、ダメージを軽減していたためである。

 

 

フッ

 

 

 しかし、アリシアの集中力が切れたことでアビリティリンクによるスキルコネクトが切れ、元の姿に戻るフェイトとアリシア。

 

「姉さん!」

 

 直ぐにアリシアの傍に駆けつけようとするフェイトだったが

 

「はあああ!」

 

 その隙をみすみす逃すシグナムではなかった。

 

「しまっ!」

 

 フェイトは辛うじてシグナムの攻撃に反応するが、避わし切れず足を負傷してしまう。

 

「くっ!」

 

 その間にヒムはアリシアに近づいた。

 

「ほう、俺のヒートナックルを食らってまだ息があるとはな。中々優秀なデバイスじゃねぇか」

 

「うっ……まだ、まだやれるもん」

 

 アリシアは何とか起き上がると、お腹を手で押さえ、涙目になった顔でヒムを見る。

 

「大した闘志だ。女にしとくのはもったいねぇぜ。だが、悪ぃな嬢ちゃん。これもゼロ様の

 命令なんだ。眠ってもらうぜ」

 

 ヒムは再び、腰を落とし、右手に魔力を集中させる。絶対絶命となったアリシア。しかし、ハリセンを構えてヒムを迎え撃とうとする。

 

「もう、やめて……逃げて! 姉さん!」

 

「ヒートナックル!」

 

 フェイトの悲痛な叫びも空しく、ヒムの必殺の一撃が放たれた。

 




さて、零冶の念能力紹介のコーナーです。

では、次の念能力はこれだ!


 22、強者の慈悲(リミッターオン)
  系統:特質系
  説明:自分の能力に制限を掛けることができる能力
     基本ステータスに限らず、ありとあらゆるステータスに制限を掛けることが可能。
     幸運・動体視力・年齢・身長・体重・知識・記憶力等々
     もちろん自分自身にしか使用できない。
     使用する場合は制限を変更する前にステータスを正確に知って置かなければならない

  制約
   1、リミッターのオン/オフに限らず、現在ステータスの値を正確に把握して
     置かなければならない
     ※リミッターオンならオンにする前のステータス。リミッターオフならオフの
      前のステータスの値を正確に把握する必要がある
   2、リミッターオン/オフを掛けたステータスは一週間制限を変更することはできない

  誓約
   1、現在ステータスを正確に把握していなければ、能力は発動しない


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