原作を放って置くとバッドエンドになるんですが、どうしたら良いですか?   作:月の光

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更新が遅くなって……いないだと(驚愕)
今回は更新が早かったですね。

ですが、念能力紹介はまたお休みです。
ネタを考えるのが精一杯で、そっちまで考えられません。
申し訳ないです。

2015/3/22 更新
 念能力紹介を書きました。良かったら見てやって下さい


33_ミスト[くさいセリフですね]零冶「色々台無しだよ!」

零冶 サイド

 

 

「好きです。私と付き合って下さい」

 

 僕こと月無 零冶は学校の体育館の裏に呼び出されて、告白をされている。相手は肩より少し長い程度の長さ黒髪で、容姿はとても整っており、同学年の男子からとても人気のある女子生徒だ。

 

「え~っと、何で僕?」

 

 僕は未だに信じられなくて、彼女に聞き返した。

 

「その……一年の時、一緒のクラスだったでしょ? その時からずっと気になっててそれで……」

 

 その女子生徒は少し顔を赤くし、答えた。

 

「そうなんだ……」

 

 僕は理由を聞いても分からなかった。何故なら目の前の女子生徒はクラスでも人気があり、人当たりも良く、マドンナ的な存在だ。そんな彼女が何故僕に? そんな疑問が尽きなかった。だが、

 

――まあ、断る理由は無いから良いかな……

 

 そんな安直な考えで僕はその告白を受け入れることにした。

 

「分かったよ。これからよろしくね?」

 

「う、うん! これからよろしく! 月無君!」

 

 月無 零冶、中学一年の冬の出来事である。

 

 

 

 

 ああ、これは夢だ。俺の前世の夢、まさか今になってみることになるなんて思わなかったな。俺は人を幸せに出来ない。そう確信した時の記憶だ。

 

 あれは俺が小学四年でそろそろ五年生に上がる頃だった。

 

 

 

「零冶、明日は寄り道しないで帰ってくるのよ」

 

「分かってるよ。母さん。桜の卒園式のお祝いでしょ」

 

 そう明日は妹の桜が幼稚園から卒園する。その卒園式に父さんと母さんは出席する。そして帰ってきたら桜の卒園祝いにちょっと高めのディナーに行くことになっている

 

「その通り、少し早めに予約を取ってあるからな。零冶が帰ってきたら直ぐに出かけるぞ。

 遅れるんじゃないぞ」

 

 父さんが僕に念を押してきた。

 

「分かってるよ。大事な妹のお祝いだからね」

 

 僕はそう言った。

 

「まあ、零冶なら大丈夫よ。しっかりしてるもの。何でも一人でこなしちゃうし」

 

 そう僕は何でも人並みにこなす才能があった。けど、それは言い方を変えればただの器用貧乏なんだけどね。

 

「そうだな~、おかげであまり手は掛からなかったが、それはそれで寂しいもんだ」

 

 そう言われてもね。そう言う性分なんでしょ。

 

「でも、零冶。困ったときはいつでも私達を頼るのよ?」

 

「分かってるよ。母さん」

 

「約束よ? 約束は破っちゃダメなんだか」

 

「大丈夫だって。今までだって破ってなかったでしょ?」

 

「そうだけど、いくつになってもあなたは私達の子供なんだから、心配するのは当たり前でしょ」

 

「分かった。何かあったら絶対母さん達に話すよ」

 

「ふふ、よろしい」

 

 そんな母と父の愛が俺は嬉しかった。

 

「お兄ちゃん見て見て! 似合う~?」

 

 そんな話をしていると桜が卒園式で着る衣装を着てきた。

 

「うん、良く似合ってるよ」

 

「えへへ~」

 

 僕は桜のことを褒めると桜は僕に抱きついてきた。

 

「どうしたの? 嬉しそうだね」

 

「うん! だって今度はお兄ちゃんと一緒に学校に行けるでしょ? そしたらずっと一緒に

 居られるんだよ?」

 

 まあ一緒の機会は増えるけど、ずっとじゃないぞ?

 

「あらあら、本当に桜はお兄ちゃんのこと大好きなんだから」

 

「うん! 桜、お兄ちゃんのこと大好き! 桜ね、将来お兄ちゃんと結婚するの!

 それでね! ずっとお兄ちゃんと一緒に居るんだ~」

 

 妹にここまで好かれるなんてお兄ちゃん冥利に尽きるな。

 

「くっ! 娘に言って欲しいセリフランキング一位を息子に取られるとは!」

 

 何を言っているんだこの父は

 

「メ! パパにはママが居るでしょ、それにママにはパパが居るでしょ。

 だからね、お兄ちゃんには私が居て、私にはお兄ちゃんが居れば寂しくないよね?」

 

「そうだね。ありがとう、桜」

 

「えへへ~」

 

 僕はお礼を良いながら桜の頭を撫でる。髪がさらさらしていて気持ち良いな。

 

「零冶、桜が欲しかったら私を倒してからにしろ」

 

 ホントに何を言っているんだこの父は

 

「あらあら、宗冶さんったら、ちょっとお話が必要みたいね」

 

「いや、待ってくれ。咲弥さんや。あれはちょっと」

 

「ふふ、問答無用よ」

 

「れ、零冶! 助けてくれ!」

 

 息子に助けを求める父

 

「父さん……」

 

「れ、零冶……」

 

 期待を込めた目で俺を見つめてくる父さん

 

「骨は拾ってあげるよ」

 

「いやあああああ!」

 

 そう言って母さんに連れられる父さん。そんな光景も今となっては見慣れたいつもの光景だ。

 

「そうだ! お兄ちゃんあれやって、あれ!」

 

「また? しょうがないな」

 

 桜がせがんで来たので、僕は桜のおでこにキスをする。

 

「ぶぅ~、またおでこ~。何時になったらチューしてくれるの?」

 

「だ~め、それは取っておきなさい。いつか僕より好きになる人が必ずできるから」

 

「出来ないも~ん。だって桜お兄ちゃんのことが一番好きだもん。それで今日はどんな味?」

 

「まったく……う~ん、そうだな。今日のは……幸せの味かな?」

 

 桜とそんなやり取りをしていると肌をつやつやにしている母とぐったりしている父が戻ってきた。

 

「それじゃ、そろそろ寝ましょうか?」

 

「「「は~い《イエス、マム!》」」」

 

 僕達は母さんに促され、その日は眠った。

 

 

 

 そして翌日、僕は学校が終わったので、まっすぐ家に帰った。

 

「あれ? 車が無い。まだ帰ってきてないのかな?」

 

 僕が学校から帰ると自宅の車が無い事に気が付いた。だが、その時は少し遅れているだけだと思い気に留めなかった。そして、玄関の鍵を開けると

 

「あれ? 電話鳴ってる」

 

 電話が鳴っている事に気が付いた。僕は受話器を取った。

 

「はい、月無です」

 

『あっ、月無さんのお宅ですか?』

 

「はい、そうですが、すみません。今、父も母も留守なので、また後に」

 

『えっと、君は今いくつかな?』

 

 何だその質問は? もしかして変な勧誘の電話か?

 

「……え~っと、今年で11歳です」

 

『そうか……今お家に君より年上の方は居るかい? お兄さんとかお姉さんとか』

 

「いえ、僕が長男なので」

 

 何だ、何が聞きたいんだ?

 

『そうか……なら落ち着いて聞いて欲しい。君のご家族が事故に遭われた』

 

「え?」

 

 事故? 何の冗談だ?

 

『今、病院で治療を受けている。○○病院という名前だ。分かるかい?』

 

「……」

 

『月無君?』

 

「あっはい、何ですか?」

 

『今、君の家族は○○病院に居る。出来れば来て欲しいんだが』

 

「分かりました。あの……父さんと母さんとさく……妹は無事なんですか?」

 

『……今は何とも言えない』

 

「……分かり……ました。直ぐに行きます」

 

『慌てずに来るんだよ』

 

「はい」

 

 僕は電話を切ると直ぐに支度をし、自転車を走らせた。絶対に大丈夫だと必ず生きていると自分に言い聞かせて……そして、病院に着き、直ぐに受付に行った。

 

「すみません。月無です」

 

「あっはい、待ってたわ。こちらへ」

 

「はい」

 

 僕は受付の人に病院の奥へと連れられた。そこに居た白衣を着た人とスーツを着た人が居た。

 

「君が月無君かな?」

 

「はい、あの父さんと母さんと妹は無事ですよね?」

 

 僕は真っ先に家族の容態を聞いた。

 

「……残念だけど、助けられなかった」

 

「……」

 

 言葉が出なかった。信じられなかった。信じたくなかった。昨日まであんなに普通に話していたのにもう居ない? 桜も? 母さんも? 父さんも? はは、嘘に決まってる。

 

「辛いと思うが、本当に君の家族かどうか、遺体の確認をお願いしても良いかな?」

 

「……はい」

 

 そうだよ。まだ、僕の家族と決まった訳じゃない。そうして僕は霊安室に連れられた。

 

「ここだ。入ってくれ」

 

「……」

 

 僕は無言で扉を開いた。そこには三人分のベットと白い布が掛けられた遺体があった。そして、一人目の顔に掛かった白い布のゆっくりめくると。

 

「ッ!」

 

 見慣れた父の顔があった。僕は急いで残りの遺体の布をめくった。

 

「母さん……桜」

 

 残りの遺体も自分の母と妹だった。

 

「間違いないんだね?」

 

「……はい」

 

「そうか……」

 

 事故の詳細を聞かされた。信号待ちをしていた父が運転していた車に右側から曲がって来たトラックがスピードの出しすぎで上手く曲がれず、そのまま父の車に衝突。更に家の車を押しつぶすように倒れたそうだ。

 

 父も母も助けた時点で意識不明の重体。桜は既に息はなかったそうだ。運転手は重体であるものの命に別状はないらしい。

 

 そう警察の方に説明を受け、僕は一人で霊安室の中に残った。しばらく無言で立ち尽くした後、ベットに横たわる父の方を見て

 

「……まったく何やってるんだよ父さん。今日は桜の卒園のお祝いするんだろ?

 こんなところで寝てちゃ、ディナーに間に合わなくなっちゃうよ?」

 

 僕が話しかけても父からの返事はなかった。

 

「ほら母さんも父さんに何か言ってあげてよ。約束守れない人になっちゃダメなんでしょ?

 このままじゃ、父さんも僕も約束守れない人になっちゃうよ?」

 

 そこにはいつも優しく微笑んでくれた母の笑顔はなかった。

 

「桜もそろそろ起きないと、こんなところで寝てたら僕と一緒に小学校に行けないぞ?

 将来僕と結婚するんでしょ? 僕とずっと一緒に居てくれるんでしょ?

 だから、起きてよ……お願い……だから……僕を一人にしないでよ……」

 

 僕は桜の冷たくなった手を握って泣き崩れた。

 

――そうだ! お兄ちゃんあれやって、あれ!

 

 ふと昨日桜にせがまれたあれを思い出した。僕はゆっくり立ち上がり、自分の唇を桜の顔に近づける。そして

 

 桜の唇にキスをした。桜と交わした最初で最後の口付けは……死の味がした。

 

 

 

 それからと家族の葬儀が行われた。しかし、親戚も居なかったため、僕は途方に暮れていた。だが、家の隣のおじさんが後継人になってくれたおかげで僕はそのまま、家で暮らすことが出来るようになった。家族と暮らしたこの家を手放したく無かったので本当に助かった。

 

 そして、色々な手続きをして、両親の残した財産を隣のおじさんが管理する事となった。翌週、両親の残した多額の遺産を持っておじさんが失踪した。どうやら、株に失敗して多額の借金を抱えていたらしく、僕の両親の遺産で借金を返済して失踪したらしかった。

 

 僕は今まで良くしてくれてたおじさんに裏切られたことがショックだった。だが、失踪しても法律上はおじさんが後継人のまま。そのおかげで今まで通り、家で暮らすことが出来るのだからもうそれ以上のことは望まなかった。

 

 僕は学校に事情を話し、お金を稼ぐため、新聞配達のバイトを始めた。朝早くの新聞配達のバイトを行い、終わり次第、学校へ行き、勉強をして、家に帰り、家事をして寝る。そんな生活を繰り返した。

 

 中学校に上がってもその生活は変わらなかった。だが、中学二年に上がって直ぐそこに変化があった。それが

 

「帰ろう。月無君」

 

「うん、帰ろっか」

 

 そう、恋人が出来たことだ。

 

「クソ! 何で月無なんだ!」

 

「リア充爆発しろ。わりとマジで!」

 

 僕の生活に変化があった。だが、帰りに彼女と帰ることとたまの休日に遊びに行くくらいの変化だった。そんな生活を繰り返し、約一年の月日が流れた。

 

「零冶君、帰ろう」

 

「あっごめん、今日は委員会の仕事があるから、先帰っていいよ」

 

「ううん、待ってるよ?」

 

「いや、一時間から二時間くらい掛かるから……」

 

「そっか、なら一時間くらい待ってるね」

 

「ふふ、分かった。なるべく早く終わらせられるようにするね」

 

「無理しないでね」

 

「分かってるよ」

 

 彼女に言われた僕はそう言い残し、教室を後にした。僕は基本的に何でも人並み以上に出来た。勉強も、運動も、人付き合いも。それ故にクラスメイトに頼られることも合ったし、教師達からもそれなりの信頼を得ている。

 

 そして、仕事を50分で片付け、教室に戻る事にした。

 

「まだ残っているかな……」

 

 僕は足早に教室に向かった。すると教室の中から話声が聞こえた。

 

――ん? 何だろう?

 

「あんたさぁ、まだ月無君と付き合ってるの?」

 

「うん、もちろん」

 

 教室には僕の彼女とその親友の女子生徒が話していた。

 

「まあ、確かに月無君は頼りになるし、顔も良いけどね」

 

「自分の彼氏が褒められるのはなんか嬉しいなぁ。あげないよ?」

 

「要らないわよ。でもさぁ、そもそもあんたが告白したのって月無君が好きだったから

 じゃなくて、月無君がバイトしてるからってお金が目的だったよね?」

 

 え? お金が目的? 彼女が? 最初から?

 

「そ、それはその……さ、最初だけだよ。今は本当に好きになったもん」

 

「はいはい、熱い熱い。さて……と、私帰るわ。あんたは?」

 

「私はもう少し待ってるよ」

 

「あっそ、じゃね」

 

 僕はとっさに隠れた。そして彼女の友人をやり過ごし、自分の気持ちを落ち着かせた。だがその時、僕には言い知れぬ感情が渦巻いていた。それは彼女への怒りではない。もっと別の醜悪で、冷徹で、最低なことだった。だが、自分でも何でそんな感情になったのかが分からなかった。

 

 僕はしばらくその場に立ち尽くしていた。そして気が付いたら彼女を1時間10分も待たせていた。僕はさっきの話を聞いていないフリして教室に入った。

 

「あれ? まだ待っててくれたんだ」

 

「あっ、零冶君。うん、やっぱり一緒に帰りたいなぁと思って」

 

「そっか、ありがとう。じゃあ帰ろう」

 

「うん」

 

 僕がそう言うと彼女は笑顔で僕の手を握った。そしてそのまま一緒に帰り、いつもの分かれ道で別れ、家路へ付いた。玄関の扉を開けて、家の中に入り、直ぐに鍵を掛けた。

 

 自分の部屋へ行き、着替えることもなくベットに倒れこんだ。それからずっとあの時自分の中に沸いた……いや本来沸くはずだった感情について考えていた。

 

 そして、一つの答えに行き着いた。

 

「そっか、だから僕は……ふふ、はっははははははははは! あーはっはははははは!」

 

 僕は生まれて初めて高笑いをした。

 

「ふふ、バカみたいな笑い方……二度とやらない」

 

 

 

 翌日、僕は彼女を体育館裏へ呼び出した。

 

「え? 別れて欲しいって……な、何で?」

 

「理由は……言いたくない」 

 

 僕は彼女と別れることにした。

 

「言いたくないって……そんなの納得できないよ! 何でなの? 私のこと嫌いになった?」

 

「ううん、嫌いになってないよ」

 

「じゃあ何で!」

 

「嫌いにもならなかったんだよ」

 

「え?」

 

「昨日の帰りさ、僕が教室に行く前に友達と話してたよね」

 

「う、うん。何で知って」

 

「僕その時、教室の前に居たんだ」

 

「え!? じゃ、じゃあ、もしかして」

 

「うん、君が僕に告白したのって元々僕のお金が目的だったんだよね?」

 

「ま、待って! 確かに最初はそうだったけど、今は」

 

「本当に好きになったんだよね?」

 

「う、うん。その……ごめんなさい」

 

「謝らなくて良いよ。僕ね、その話を聞いても何も思わなかったよ」

 

「え? どう言う……」

 

「何も思わなかったんだよ。お金目的だったと聞いて怒るでも、本当に好きになったと聞いて

 嬉しくなるでもなく、何も感じなかったんだ。それってさ。僕にとって君が僕のことを

 好きだろうが、お金目的だろうが、どうでも良かったってことなんだよ」

 

「……」

 

「昨日、その話を聞いてからずっと考えてた。何で何も感じなかったのか……

 そして分かったんだ。僕は家族が死んでからずっと一人だった。だから、

 一人の時間が誤魔化せれば、君じゃなくても良かったんだよ」

 

「そ、そんな」

 

「君と一年間も過ごしてきたのに僕は君を好きになるでも嫌いになるでもなかった。

 そんな僕と一緒に居ても、君は幸せになれない。だから僕と別れて下さい」

 

「……やだ、やだやだ! 好きになってくれなくても良い! 私、零冶君と一緒に居たいの!」

 

「今はそれで良いかも知れないけど、いつか気付くよ。歪んでるって、愛が欲しいって、

 そして、その時間が長ければ長いほど後戻りできなくなる。だから、これ以上一緒に

 居ちゃいけないんだ」

 

「やだよぉ、私が悪かったから、そんなこと言わないでよぉ」

 

 彼女は僕にすがるように泣き付く。

 

「……さよなら、黒羽(くろは) (あおい)さん」

 

 僕は泣き付く彼女の手を振り払い、その場を後にした。それからと言うもの黒羽さんに覇気はなかった。周りの友達は彼女のことを心配し、そして僕と別れたことを知った黒羽さんの親友は僕を責め立てたが、気持ちが冷めたとだけ伝えた。

 

 そして、それから一週間後、事件は起きた。

 

――そろそろ、朝のホームルームの時間なのに、あお……黒羽さんまだ着てないな。

  如何したんだろう?

 

 そう黒羽さんがまだ教室に来ていなかった。僕と別れてから覇気が無くなったとは言え、学校を休む事は無く、いつも早めに登校してるんだけどな

 

 そんなことを考えていると教室の扉が開いたが、

 

「はい、静かに」

 

 担任の先生ではない先生が入ってきた。クラスの生徒は疑問に思い、ざわめき出した。僕も疑問に思っていた。

 

「え~、担任の佐崎(さざき)先生は急用でまだ、学校に来ていないので、私が代わりをします。

 それと黒羽さんは体調不良で今日は休みです」

 

 代わりの先生の言葉で疑問が解消したため、ざわめきは静まった。

 

――黒羽さんは体調不良で休みか……もし、僕と別れたショックで体調を崩したなら申し訳ない

  ことをしたな。でも、これ以上付き合ってても溝は深まるだけだし、心の傷は時間が

  癒してくれるよね。

 

 それからいつも通り授業が始まり、放課後になった。放課後のホームルームで担任の佐崎先生が顔を暗くして教室に入ってきた。そして……

 

「皆さんに……残念なお知らせがあります」

 

 佐崎先生が神妙な面持ちで言葉を発した。

 

「今朝、黒羽さんが事故に遭い、先ほど息を引き取りました」

 

 佐崎先生から告げられた衝撃的な言葉にクラスの全員が言葉を失った。僕もその一人だ。そして黒羽さんの親友が口を開く。

 

「嘘ですよね? 先生。葵が死んだって」

 

 その言葉に顔を俯かせる佐崎先生

 

「本当に……残念です」

 

 佐崎先生のその言葉でクラスがざわめき出した。

 

「嘘だろ! 黒羽さんが!」

 

「いやぁぁぁ! 葵ちゃん!」

 

 その場は騒然となった。泣き出すもの怒り出すもの。未だに先生の言葉が信じられなくて呆然とするもの。

 

 しばらくして、その場が静まると先生から事故の簡単な詳細が告げられた。黒羽さんが登校中、青信号を渡っていると信号無視をしてきたトラックに撥ねられたそうだ。そして、病院に搬送されたが、医師達の懸命な処置も空しく、息を引き取ったそうだ。

 

 辺りは静まり返っていた。

 

「……た……せいよ」

 

 その沈黙を破ったのは黒羽さんの親友の岸元さんだった。

 

「あんたのせいよ! あんたが葵に別れるなんて言ったから! 葵が事故に遭ったのよ!」

 

 岸元さんは僕に指を差して言った。

 

「何で僕のせいになるのか分からないんだけど……」

 

 僕は彼女の行っている事が分からなかった。それはそうだ別れたからといって事故に遭った根拠が無いのだから

 

「葵は元気が無かったからトラックに気が付かなかったのよ!」

 

「確かにそれなら僕にも責任の一端はありそうだね。そうなんですか? 先生」

 

「い、いや、そのようなことは……」

 

「だってさ」

 

「おい! 月無! お前なんでそんなに冷静なんだよ! 黒羽さんが死んだんだぞ!」

 

「じゃあ、どうすれば良いの? 取り乱せば良いの? そうしたら黒羽さんは生き返るの?」

 

「そ、そういう訳じゃ」

 

「僕だって驚いているよ。ショックだって受けてる。伊達に一年間付き合っていた

 訳じゃないんだ。でもこんな時だからこそ冷静にならないと」

 

 僕がそう言うと周りの人たちは静かになった。

 

「月無君って……冷たいね」

 

 誰かがそう言ったのが聞こえた。

 

――そうだね。僕は冷たい。こんなことがあったのに未だに怒りも憎しみの無いなんて……

  僕は一生人を愛せないんだろう。

 

「先生、ホームルームは終わりですか?」

 

「あ、ああ、今日は以上だ。皆気をつけて帰るんだぞ」

 

 こうして帰りのショートホームルームはお開きとなった。僕は佐崎先生から黒羽さんの居る病院を聞き、一度家に帰り、その病院へ自転車を走らせた。

 

「すみません。黒羽 葵さんの居場所が知りたいんですが」

 

 受付で黒羽さんの居場所を聞いた。

 

「はい、黒羽 葵さんですね。失礼ですが、ご関係は?」

 

「黒羽さんのかr」

 

 待て、僕は今何を言おうとした? 彼氏? もう違うだろバカ

 

「……友達です」

 

「はい、分かりました。少々お待ちください……黒羽 葵ってもしかして今日亡くなった?」

 

「はい、そうです」

 

「残念だけど、ご家族以外に会わせる訳には……」

 

「今もご両親は居ますか? もし居るなら月無 零冶が来たって伝えて貰えますか?

 それでダメなら諦めます」

 

「……確認します。少々お待ちを」

 

 受付の女性が受話器を取り、どこかに連絡をしている。そして

 

「ご両親から許可を頂きました。こちらです」

 

 僕は受付の女性に霊安室に案内された。そこには何度も顔を合わせた黒羽さんのお母さんが居た。

 

「美咲さん」

 

「零冶君……久しぶりね」

 

 美咲さんは目を赤く腫らせて、酷く沈んでいた。

 

「お久しぶりです。この度はご愁傷様でした」

 

 僕は深く頭を下げる。

 

「……未だに信じられないわ。葵が死んだなんて」

 

「僕もですよ。一週間前はあんなに普通に話して居たのに」

 

「そういえば、葵と別れたんだったわね。この一週間元気の無い葵を見て心配してたのよ?」

 

「すみません。僕のせいです」

 

「いいのよ。それに……いえ、何でも無いわ。亡くなるちょっと前にね。葵、意識が戻ったのよ。

 葵から貴方に最後の言付けよ」

 

 美咲さんは僕の目をまっすぐ見た。

 

「《私が死んでも自分を責めないでね。大好きだったよ》」

 

 美咲さんと葵が重なったような気がした。

 

「……お言葉、確かに頂戴しました」

 

「……どうする? 葵に逢っていく?」

 

「いえ、最初はそのつもりでしたが今の僕にその資格はありません。これで失礼します……

 葬儀には参列しますので、さようなら」

 

「ええ、気をつけて」

 

 美咲さんに別れを告げ、僕は家に帰った。途中の記憶は酷くあいまいだった。僕はどうやって家に帰ってきたんだろう。どうして、僕はこんなに喪失感に襲われているだろう。僕にとって葵はどうでも良い存在だった筈なのに……葵が残した最後の言葉が頭から離れなかった。

 

 しばらくして、葵の葬儀が行われた。棺桶に入った葵は相変わらず、美しかった。でも顔色は土気色で異常なまでに白かった。

 

 クラスメイトは涙を流しながら、葵に別れを告げていた。僕は棺桶の横で涙も流さず、ずっと立ち尽くしていた。そして葬儀が終わった。明日、火葬を行うらしい。僕は一人で葬儀場に残っていたところ美咲さんに声を掛けられた。

 

「零冶君、これ貴方に渡して置くわ」

 

 そう言って渡されたのは日記帳だった。

 

「日記帳……もしかして葵さんのですか?」

 

「ええ、読んで上げて」

 

 そう言い残し、美咲さんは僕から離れていった。僕は近くの椅子に腰掛け。日記帳を開く

 

 

~黒羽 葵の日記~

 

 

○月××日

 今日はずっと気になっていた月無君に告白をした。体育館の裏って言うべたな場所だったけれど、告白するならここしかないと思っていた。

 

 緊張したけれど思い切って告白してしばらく沈黙が続いた後、月無君が口を開き、何で僕なのかを聞いてきた。私は自分の思いを伝え、私たちは恋人同士になった。とても嬉しかった。

 

 友達にはふられた時、恥ずかしくなるのがいやでお金目的なんて嘘をついちゃったけど、こんな事なら本当のことを言えば良かったな~

 

 

――そう言うことか……ならお金目的って言うほうが嘘だったんだね。だから別れ話をしたとき

  あんなに動揺してたのか……悪い事しちゃったな

 

 

○月××日

 今日は初めて月無君と手を繋いだ。とても緊張しけど暖かくて心がポカポカした。また繋ぎたいな♪ でもいつも通りだった月無君が気になる。もしかしてこういうのに慣れてるの? だとしたら寂しいな

 

 

――そんなこと無かったよ。僕も緊張したし、恥ずかしかったよ。

 

 

 それから僕は日記帳を読み続けた。そして

 

 

○月××日

 今日は悲しいことがあった……零冶君と別れることになってしまった。きっかけは私が告白した時の嘘の理由を聞かれてしまったからだ。でも何より悲しかったのは零冶君に取って私はどうでも良い存在だと言われた事だ。

 

 一緒に過ごした一年間、私は幸せだった。大好きな人と一緒の時間が過ごせたこと。一緒にお出掛けしたこと。手を繋いだ事。私は   私は

 

 

――途中で終わってる。紙が歪んでるし、もしかして涙で? 僕はそこまで彼女を追い込んで

  しまったのか……

 

 

○月××日

 零冶君と別れてから数日が経った。学校で話す事も無く、零冶君はいつも通りに過ごしている。それを見ると本当に私のことなんてどうでもいいんだなと思った。

 

 なら私も前を向かないと私の幸せを願って別れると言った零冶君に答えるためにも……とそう思った時、私は気が付いた。どうでもいい存在なら何で私の幸せのために別れるって言ったのかなって。

 

 どうでもいい存在なら自分の寂しさを紛らわすため、気にせず付き合い続けるんじゃないかな? どうなんだろう? 私の考え過ぎかな?

 

 

――そういえばそうだな。何で僕は葵に幸せになって欲しかったんだろう。どうでもいい

  存在なら気にならないはず。もしかして僕は何か思い違いをしているんだろうか……

 

 

○月××日

 零冶君が別れたいと言った理由のおかしな所に気付いてから、ずっと考えていたけど、結局自分では分からなかった。私の様子を心配したお母さんが悩みを聞いてきたので、思い切ってそのことを聞いてみた。そうしたら

 

「好きでも嫌いでもないって言うのには二通りあるのよ」

 

「二通り?」

 

「ええ、本当に何とも思っていない時と好きと嫌いが釣り合った時よ」

 

「好きと嫌いが釣り合う?」

 

「ええ、天秤をイメージしたら分かり易いかしら、何とも思っていないときは両方の受け皿に

 何も乗っていない状態ね。もう一つは片方の受け皿に好き、反対の受け皿に嫌いが乗って

 釣り合った状態よ」

 

「……」

 

「恋人同士だと相手の良い所しか見えないし、自分も相手に良い所しか見せようしないの。

 そうして、嫌いな所や嫌な所を見ないようにするの。恋は盲目って言うでしょ?

 だから、好きに天秤が傾くのよ。それを恋って言うの」

 

「……」

 

「でも結婚して夫婦になると途端に相手の嫌いな所や嫌な所が見えてくる。そうして嫌いの

 受け皿に積みあがってくるの。でもそれが原因で別れたしないわ。何でだと思う?」

 

「えっと、嫌いもひっくるめて好きになるから?」

 

「ふふ、若いわね。残念不正解。正解は好きが嫌いを許容するからよ。貴方のここが嫌い。

 でも貴方のここが好きって言う風にね」

 

「……」

 

「そうして嫌いの受け皿に積みあがって好きと嫌いが釣り合うの。そうなるとね、

 一緒に居るのが当たり前で本当に大切な人になるの。人はそれを」

 

「それを?」

 

「愛って言うのよ」

 

「愛……」

 

「もしからしたら零冶君は葵のこと愛してるのかも知れないわね」

 

「ちょっと恥ずかしいよ。お母さん」

 

「ふふ、葵……後悔しないようになさい。今ならまだ間に合うわ。きっと」

 

「お母さん……うん、明日零冶君にもう一回告白する」

 

「ええ、頑張りなさい」

 

 お母さんにもらったアドバイス通り明日、零冶君にまた告白する。そうと決まったら早速ラブレター書かなくちゃ! そして明日早く学校行って靴箱に入れよう。うん、大丈夫きっと零冶君なら分かってくれる。

 

 

~黒羽 葵の日記~ END

 

 

 そこで日記は終わっていた。僕は日記帳を静かに閉じた。そして、

 

「ッ!」

 

 僕の頬に涙が伝っているのに気が付いた。この涙は知っている。僕が家族を亡くした時と同じだ。

 

「はは、そっか。僕にとって葵は家族同然の存在だったんだ。だから、あの時何も

 感じなかったんだ。どうでも良かったんだ。そんなことで嫌いになんてならないよ。

 だって家族だもん」

 

 良く聞く言葉だ。大切なものは失くしてから気付く。僕はいつも気付くのが遅すぎた。僕は立ち上がり、葵の傍に寄った、棺桶の中に葵の日記帳を入れ、そして

 

「さようなら、僕の愛した人」

 

 葵の唇に僕の人生最後のキスをした。そのキスは死と……愛の味がした。

 

 それから僕はまた一人の生活に戻った。いつもの作業を淡々とこなし、目的も無くただ生きていた。誰とも深く関わることなく。距離を取った。また失うのが怖かったからだ。その考えのまま、奨学金制度で高校を推薦入学、卒業後、中小企業に入社した。

 

 俺は一人の時間を紛らわすためにゲームをしたり、アニメを見たり、漫画を読んだりすることが多かった。そして、社会人10年目で俺は死んで、神様にあった。

 

 間違えて殺してしまったので、転生させるとのことだった。アテナは間違えたと言っていたが、今になって思うとそれは嘘なんじゃないかと思っている。

 

 人間にこれほど力を与えられる神様が果たして間違いを犯すだろうか? いや例え間違ったとしても修正が可能なはずだ。一人の死傷者を出すことなく正す事が。人間の俺ですら時間を止める事が出来るのだ。神様が出来ない筈はない。

 

 これはきっとアテナが転生者全員、あるいは数人に慈悲を与えたのではないかと思っている。しかし、神様が特定の人間を優遇する訳にはいかない。そこで間違えたという後付の理由で転生させたのではないか? まああくまで推測だけどな。

 

 そして、俺は転生した。転生した世界は魔法少女リリカルなのはに似た世界だ。俺はまた失うのが怖かった。だから原作に関わる気は無かった。関われば繋がりが出来る。繋がりができれば絆が生まれる。だから俺は正体を知られないために仮面をかぶった。

 

 転生してから必死に修行した。一人で生き抜く力を得るために。まあ、やり過ぎたけどな。俺は他人の不幸が嫌いだ。自分は我慢すれば済むが人の不幸を見るとやるせない気持ちになる。だから、俺に都合の悪い未来を避けるため、虫の知らせ(シックスセンス)を作った。

 

 不幸な未来を避けるため、未来漫画(フューチャリングコミック)を作った。相手のプライベートを覗くのは不本意だったが、それで不幸が回避できるならそれで良い。

 

 どちらも使わないことに越した事はなかったが、直ぐに使用する機会が来てしまった。そして知った。この世界は原作通りに進む訳ではないことを。関わらなければ不幸になる人が出ると。

 

 

 なのはや士郎さん、桃子さんを助けたのは家族の不幸が見たくなかったからだ。

 

 リニスを助けたのは家族を失う悲しみを知っていたからだ。

 

 アリサやすずかを助けたのは不幸が嫌いだったからだ

 

 プレシアさんやアリシア、フェイトを助けたのは母と妹に影を重ねたからだ。

 

 桜羽 葵を遠ざけたのは黒羽 葵の二の舞にさせないためだ。

 

 はやてを助けたいのは過去の自分を重ねたからだ。

 

 そして、これらは全て俺の自己満足だ。

 

 

 俺は一人で生きていく、これまでも。そして、これからもだ。

 

 前世のゲームで特に気に入ったゲームがあった。そのゲーム内のセリフで共感できる言葉が沢山あったからだ。特に共感したのが言葉が

 

≪未練はある。だから、未練はない≫

 

 自分の存在が周りの大切な人たちを不幸にしてしまう。本当は一緒に居たいという思いを振り払い。大切だからこそ離れることを決めた決意の言葉。そして悲しい言葉。きっとこれが俺のルーツなんだろう。

 

 バッドエンドをグッドエンドに導く。それが俺の……本当の信念だ。

 

 

 

[マスター]

 

 俺が前世の夢を見ているとミストに起こされた。

 

「何だ? ミスト」

 

[ずっと目を瞑っていらっしゃったので、眠っているのかと]

 

「ああ、悪いな。少し眠っていた」

 

[お気になさらず、ですが]

 

「ああ、そろそろ時間だな」

 

[はい、行きましょう]

 

「ああ、行こうか」

 

 俺が望むのはグッドエンドだけだ。もし立ち塞がるなら例え神でも容赦しない。

 

「幸せな未来を作りに」

 

[くさいセリフですね]

 

「色々台無しだよ!」

 

 

零冶 サイドアウト




 掲載が遅くなってすみませんでした。結局いい制約と誓約が思いつきませんでしたので、そのまま載せます。ですが、良いのが思いついたら修正が入りますので、ご了承願います。


さて、零冶の念能力紹介のコーナーです。

では、次の念能力はこれだ!


21、神秘の服飾(シンピノヴェール)
  系統:特質系
  説明:自分の体の周りをオーラの膜で纏い、外に漏れる自分の情報を
     シャットアウトする
     これにより、魔力やオーラなどが外に漏れないため、
     ただの一般人にしか見えなくなる
     また、シャットアウトできるのは自分の情報なので、
     声や気配などもシャットアウト可能。
     四大行の絶より、気配を消すことが可能になる。
     何の情報をシャットアウトするかの選択も可能

  制約
   1、自分にしか使用できない。
   2、外からの情報はシャットアウトできない。

  誓約
   無し


 説明の気配をシャットアウトするとありますので、神の不在証明(パーフェクトプラン)要らないじゃんと思うかも知れませんが、存在が消えている訳ではないため、相手に触れたら、触れられたことは相手に伝わります。

 神の不在証明(パーフェクトプラン)の場合はそっと触れた程度なら触れられたことにすら気付けないので、その点に置いては神の不在証明(パーフェクトプラン)の方が上です。

 この能力の優れたところはあくまで一般人にしか見えないというところです。なので、魔力をEXに解放して砲撃魔法を放つために魔力をチャージしても、相手はまったく何も感じません。

 そして、急に一般人から威力EXの砲撃魔法が放たれるという理不尽極まりないことがおきます。

敵「何だ、ただの子供か」

零「竜闘気砲魔法(ドルオーラ)♪」ニコ

敵「ちょ!?」

って感じですね。敵がカワイソス!? やっぱりチートですやん。


って感じです。では

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