原作を放って置くとバッドエンドになるんですが、どうしたら良いですか?   作:月の光

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更新が遅くなってすみませんでした(お約束)

もはやこのセリフを言うのが当たり前になりつつありますね。
ホント申し訳ないです。

ネタはあるんです。無いのは時間とやる気です(え?)

そんなこんなでついに闇の書も終盤です。
今考えているネタを書いたら後何話になるんだろう?
ああ、鬱だ……死のう……

今回も念能力紹介はお休みです。
自分でも制約と誓約が思いつかないんです。
なんか申し訳ないです。

2015/3/22 更新
 念能力紹介を書きました。良かったら見てやって下さい



32_ミスト『いや知ってますし』零冶『急に素に戻るなよ』

 最初の模擬戦が終わり、それからなのは達はライの指導の下、作戦決行の時のコンビで守護騎士達と訓練を行った。

 

「なのは、ヴィータの居る位置ばかりに攻撃するな。ヴィータの動きを先読みしてそこを

 攻撃するんだ。そうすればヴィータの動きを抑制することができる」

 

「わ、分かったの! ……アクセルシューター!」

 

[アクセルシューター]

 

 なのははヴィータを見て、ヴィータの動きを予想し、魔力弾を放つ。

 

「はっ! そんな攻撃当たるかよ!」

 

 ヴィータはなのはの攻撃を避け、葵に攻撃を仕掛ける。葵はデバイスでヴィータの攻撃を受ける。

 

「くぅ! スノーリボン!」

 

「おっと! あぶね」

 

 葵はすかさずバインドを掛けようとするが、ヴィータに避わされる。

 

「そこまで! ちょっと中断だ」

 

 ライが戦闘を止め、動きを止めるなのは達。

 

「うぅ、動きの先読みって難しいの……」

 

「なのは、確かに相手の動きを先読みするのは難しい。これは本来多くの実戦経験を

 経て、身につけるものだからな」

 

「はい……」

 

 なのはは上手く行かないことに表情を暗くする。

 

「まあ、コツではないが、相手の動きを予想する方法はある」

 

「本当ですか?」

 

「ああ、例えばだが、ヴィータが葵に後ろから追いかけられているとする。その場合ヴィータの

 移動先はどうなる?」

 

「え~っと、まっすぐか、左右に行くと思うの」

 

 なのはは少し考えた後、答えた。

 

「その通り、では葵が真後ろではなく、やや右後ろから追いかけていたらどうなる?」

 

「それならまっすぐか左に行くと思うの」

 

「正解だ。分かったか?」

 

「えっと、葵ちゃんの位置を考えるってことですか?」

 

「ああ、他にも周りの状況もだ。さっきの状況でヴィータの進行方向に壁があったらどうなる?」

 

「あっ! そうしたら、左しかないんだ」

 

「そういうことだ。つまりヴィータだけを見るんじゃなく、周りの状況も見て判断するんだ。

 だが、これはゆっくり考えている暇はない。状況は常に変化しているからだ。状況を見て瞬時に

 判断しなければならない。だから、経験を積まなければならない」

 

「なるほどなの」

 

「次からはそれを意識してみてくれ」

 

「分かったの!」

 

 ライから言われたことに元気良く返事をするなのは。

 

「よし、では次は葵だ」

 

「はい」

 

「ヴィータの攻撃を受けた時だが、真正面から受けないほうが良い。腕力や攻撃力ではヴィータの

 方が上だから、真正面から受けると衝撃で次の行動が少し遅れる」

 

「なるほど」

 

「これも実戦経験が重要なんだが、なるべく受け流すようにしたほうがいい。そうすればさっきの

 バインドも成功するだろう」

 

「分かりました。ライ兄さん」

 

「よし、では今の所を踏まえて……どうした? お前ら」

 

「いや……仲良いなと思ってよ」

 

「うん、ライさんはいつの間にか葵ちゃんのこと名前で呼んでるし、葵ちゃんはライさんのこと

 兄さんって呼んでるし……」

 

 不機嫌そうに言うヴィータと心配そうに言うなのは。

 

「最初の模擬戦の後、少し葵と話をしてからだな」

 

「ええ、その時から兄さんって呼んでるわ」

 

「そ、そうなんだ(葵ちゃん、その……まさかとは思うけど、ライさんのこと)」

 

「(大丈夫。兄として慕っているだけよ)」

 

「(よかったの……これ以上ライバルは増えて欲しくないの)」

 

「話を戻すが、さっきの点を踏まえて模擬戦再開だ」

 

「「「了解」」」

 

 そして、なのは達の模擬戦が再開し、なのはと葵は思考錯誤しながら模擬戦終了となった。

 

 

 

 

 

 

「フェイト、相手の後ろばかり取ろうとするな。かえって読まれやすい。攻撃にフェイントを

 織り交ぜて相手に隙を作るんだ」

 

「うっ! 分かった! ソニックムーブ!」

 

[ソニックムーブ]

 

 フェイトは高速移動魔法を使用し、シグナムの左に移動した。そしてサイスフォームのバルディッシュを振り下ろした。

 

「はあっ!」

 

 シグナムはレヴァンティンを構え、バルディッシュを受け止めようとする。だが、フェイトはバルディッシュを途中で止め、直ぐに消えたようにシグナムの後ろに移動した。

 

「ッ!?」

 

「(取った!)」

 

 フェイトはバルディッシュを降り下ろした。しかし

 

「はああ!」

 

「ッ! 鞘!」

 

 シグナムは鞘でバルディッシュを受け止めた。

 

「でやああ!」

 

[ディフェンサー]

 

「ぐっ!」

 

 シグナムはフェイトを蹴り飛ばす。バルディッシュはすかさず防御魔法を発動し、左手で受け止めるフェイト。

 

「フォトンバレット・マルチショット!」

 

 アリシアは魔力弾をシグナムに放つ

 

「レヴァンティン! カートリッジロード」

 

 

ガション!

 

 

[シュランゲフォルム]

 

 シグナムはカートリッジをロードし、レヴァンティンをシュランゲフォルムに変更。アリシアの魔力弾を打ち落とす。

 

「負っけないよ~」

 

 アリシアも魔力弾を増やし、シグナムに放つ

 

「飛竜……」

 

「ってやば!」

 

「一閃!」

 

 シグナムはすぐさま飛竜一閃を放つ。

 

「ハリセン!」

 

[プラズマスマッシャー]

 

 少し遅れて、砲撃魔法を放つ。そして二つの砲撃魔法は衝突する。

 

 

ドッカーーーン!

 

 

 そして、煙が立ち込める中

 

 

ガション!

 

 

 シグナムがカートリッジをロードする。

 

 

「まさか、もう一発! ハリセン!」

 

[プラズマスマッシャー]

 

 アリシアは砲撃魔法を先程シグナムが居た場所に放つ。しかし、そこにはシグナムは居らず、煙の中から連結刃が飛んできた。

 

「ハリセン! ディフェンサー!」

 

[ディフェンサー]

 

 アリシアは防御魔法を使用するが、連結刃がアリシアの防御魔法に衝突した瞬間、アリシアのバリアが砕けた。シグナムが使用していたのはバリア破壊能力に長けたシュランゲバイセン・アングリフだったからだ。

 

「嘘!」

 

 アリシアは衝撃に備えて目を瞑った。そして、連結刃がアリシアに当たる瞬間

 

「姉さん!」

 

 フェイトが高速移動魔法でアリシアを助け出す。

 

「ッ!」

 

 その際に連結刃はフェイトの太股に掠り、フェイトは傷を負った。

 

「ありがと! フェイト」

 

「気をつけて、まだ終わってない」

 

「オッケー!」

 

 フェイトがアリシアを放し、シグナムに向かった瞬間

 

「そこまで! 一旦休憩だ」

 

 ライによって戦いは終了となった。

 

「フェイト、傷を見せてみろ」

 

「うん」

 

 ライはフェイトの太股の傷を見る。

 

「そこまで深い傷ではないな。光よ集え、全治の輝きを以て、彼の者を救え! キュア!」

 

 ライは回復魔法でフェイトの傷を癒す。

 

「ありがとう。ライ」

 

「気にするな。フェイト、先ほどの動きは悪くなかった。だが、予想外の方法で攻撃を

 受け止められたからといって驚き過ぎだ。常に冷静になることを意識しろ」

 

「はい」

 

「それと連結刃からアリシアを助けた動きも良かったが、足に怪我をする事はお前の長所である

 機動力が落ちる。無理だと思ったらあえて助けず、シグナムを攻撃することも頭に入れておけ」

 

「でも、それで姉さんが傷付くのは……」

 

「確かに仲間や家族が傷付くのを見るのは辛いだろう。だが、相手を倒し戦いが終われば、

 それ以上傷付く事は無い。それにアリシアのバリアジャケットは固いから、多少の攻撃は

 耐えられる。あそこは心を鬼にしてシグナムを攻撃するのも手ではある」

 

「……」

 

「だが、無理にそうする必要はない。あそこで攻撃してもアリシアが気になって攻撃が疎かに

 なっては本末転倒だからな」

 

「じゃあ、どうすれば……」

 

「アリシアを信じるんだ」

 

「姉さんを?」

 

「ああ、アリシアならあの攻撃を受けても大丈夫だと信じる。そうすれば心置きなく攻撃に

 専念できる」

 

「大丈夫だよ。フェイト。私、お姉ちゃんなんだからちょっとくらい攻撃食らったって

 ピンピンしてるよ。だから私を信じて」

 

「うん、分かったよ。姉さん」

 

「うん!」

 

 フェイトはアリシアを信じることに頷き、それを聞いたアリシアは笑顔になる。 

 

「では次はアリシアだが」

 

「は~い」

 

「魔力制御は良くなっている。短い期間で見事だ」

 

「えへへ、もっと褒めて~」

 

「だが、フェイトがシグナムの蹴りを受けてから攻撃に移るまでが遅い。もっと早く攻撃して

 いれば、シグナムに連結刃を使わせる前に攻撃できた」

 

「うっ! それは、その」

 

「それと相手の姿が見えてないのに攻撃するな。あそこは距離をとって相手の出方を

 伺うのが正解だ」

 

「うぅ! 分かった~……」

 

「そう落ち込むなアリシア、はっきり言って魔法を習って僅か半年でそこまで戦えるのは

 驚異的だ。天賦の才と言っても良い。流石は「流石は私の娘ね!」……そういう事だ」

 

「プレシア……貴方」

 

「ん? 何か言ったリニス?」

 

「……何でもありません」

 

「そう?」

 

「ごほん、とにかく次の模擬戦では今の点を気にして戦ってくれ」

 

「「了解《りょうか~い》」」

 

 まじめに返事をするフェイトと元気良く返事をするアリシア。

 

 

 

 

 

 

「アルフ! ザフィーラから距離をとり過ぎだ! 神宮寺! ザフィーラを囲うように周囲に

 武器を投射して動きを封じろ! アルフはそこで距離を詰める」

 

「たく! 注文が多すぎるよ」

 

王の財宝(ゲートオブバビロン)!」

 

 神宮寺はザフィーラを中心に武器を投射する。

 

「うおおおお!」

 

 ザフィーラは武器の弾幕が薄いところを狙って防御魔法を展開しつつ、その包囲から抜け出す。

 

「くそ!」

 

 神宮寺は武器の投射を止める。だが、

 

「テォアアアアア!」

 

 ザフィーラはその隙を突き、神宮寺に接近する。

 

「しまっ! プギャン!」

 

 ザフィーラに殴られ変な悲鳴を出して神宮寺が吹っ飛んだ。

 

「そこまで! はあ~まさかここまで連携がなってないとは……」

 

 ライはアルフと神宮寺コンビの戦いを見てため息を吐く。

 

「すまないねぇ。どうも後ろから飛んでくる武器が気になっちゃって」

 

「俺もアルフに当たっちゃうんじゃないかと思って遠慮がちに」

 

「まあ、それはこのまま続けるしかないだろう。それにしてもザフィーラは見事だった」

 

「それ程でもない」

 

 ライに褒められ謙遜するザフィーラ。

 

「謙遜するな。防御から攻撃に移るまでの流れは見事だった。流石は守護獣だ」

 

「確かに防御が固くて崩せないねぇ」

 

「俺も前の模擬戦では魔力切れまで破れなかったしな」

 

「……私はもう行くぞ」

 

 狼形態になったザフィーラはそう言い残し、その場を後にした。

 

「おや? 気を悪くさせちまったかい?」

 

「いや、あれは照れ隠しだ。現に尻尾が上がっている。喜んでいるんだろう。

 さて、今回の課題だが、まずアルフ」

 

「はいよ」

 

「距離感を掴むのが難しいのは分かる。こればっかりは実戦経験を多く積まないと

 いけないからな。だからそれはまだ良い。だが、神宮寺君との連携が悪すぎる」

 

「「うっ!」」

 

「まあ、これも多くの経験を積まないといけないところだが、まずは合図を決めよう」

 

「合図?」

 

 アルフが首を傾げてライに聞く。

 

「そうだ。例えばアルフが距離をとる時は神宮寺君の名前を呼ぶ。逆に神宮寺君が距離を

 詰めて欲しい場合はアルフの名前を呼ぶ。そうすればある程度は連携が良くなるはずだ」

 

「でもそれじゃ、直ぐにザフィーラにばれるんじゃ?」

 

 神宮寺がライに質問をする。

 

「それをずっと続けてたらな。そうやって相方がどう動くのかを、どうして欲しいのかを

 把握するまでは続けて、いずれは合図無しで連携を取ってもらう」

 

「なるほどねぇ」

 

「次に神宮司君だが、何故さっき武器の投射を止めた?」

 

「いや、包囲から抜けられたなら意味無いと思って」

 

「だが、投射を続けていれば牽制になったはず、そうすればザフィーラに接近されることは

 無かった」

 

「それは……そうですね」

 

「今回の作戦での君の役割は中遠距離からザフィーラを牽制することだ。攻撃を無理に当てる

 必要は無い。まずは接近されないように注意してくれ」

 

「了解です」

 

「よし、解散。ゆっくり休んでくれ」

 

「「はいよ《了解》」」

 

 

 

 

 

 

 

「スティンガースナイプ!」

 

「くっ!」

 

 クロノの誘導弾を避わすシャマル。

 

「ここだ! チェーンバインド!」

 

 シャマルの動きに合わせてバインドを発動させるユーノ。

 

「しまっ!」

 

「やった!」

 

 そのバインドに掛かるシャマル。そしてクロノの誘導弾がシャマルに接近する。しかし

 

「うわ!」

 

 シャマルがユーノをバインドで捕まえた。

 

「捕まえた♪ 旅の鏡!」

 

 すかさず旅の鏡を発動し、クロノの誘導弾をユーノの後ろに転移させ、ユーノを攻撃した。

 

「させるか!」

 

 クロノはユーノに当たる直前に誘導弾を止めた。

 

「甘い甘い、戒めの鎖!」

 

「しまった!」

 

 クロノの意識が逸れた瞬間にシャマルがクロノをバインドで捕らえる。そして旅の鏡で両腕を転移させ、クロノとユーノの首筋にクラールヴィントのペンデュラムを突きつける。

 

「私の勝ちね」

 

「「参りました」」

 

「はい、そこまで。シャマル、見事だった」

 

「はあ~疲れたわ。優秀な子達ね。直ぐに追い着かれそうだわ」

 

「確かに悪くない連携だった。今回はユーノの落ち度だな。シャマルを捕らえた瞬間に

 油断した。だから、バインドに引っ掛かったんだ」

 

「そうですね。僕のミスだ。すまないクロノ」

 

「いや、僕も君に何度もフォローしてもらった。お互い様さ」

 

 互いに励まし合うクロノのユーノ。

 

「そうだな。クロノは特に悪い点はない。ユーノを信頼し、上手く指示を出して動いていた。

 流石は執務官だ」

 

「それほどでも」

 

 ライに褒められまんざらでもないクロノ

 

「ユーノも良い補助だった。だが、やはり実戦経験が少ないからな。最後に油断してしまった。

 それさえなければ文句なしだ」

 

「はい、次から気をつけます」

 

 しっかりと返事をするユーノ

 

「さて、疲れただろう。休憩にすると良い。アースラの食堂の冷蔵庫に俺が作ったアイスがある。

 それでも食べて疲れを取っておけ」

 

「「分かりました」」

 

「あ~ライさん、実はな」

 

 ライの言った事に申し訳なさそうに言うはやて。

 

「ああ、ヴィータか」

 

「うっ! そうやねん。ヴィータが全部食ってもうた」

 

「あの量を全部か?」

 

「うん、全部」

 

「ざっと20人分はあったはずなんだが……」

 

「うん、なんか「今まで食えなかった分食うんだ!」って食ってもうて」

 

「はあ~、しょうがないやつだな。今はともかく夜天の書に戻した後はどうするつもりだ?

 俺はもう居ないんだぞ?」

 

「せやね~」

 

「仕方ない。俺のレシピをはやてに教えておくから、定期的に食わせてやれ」

 

「ええの? 助かるわ~」

 

「そういう訳だ。クロノ、スクライア君。すまないが今回は諦めてくれ」

 

「はは、分かりました」

 

「気にしないで良いですよ」

 

 クロノとユーノは笑顔で言った。

 

 

 

 

 

 

 

「まだ気と魔力の融合率が甘い! それではこれには耐えられないぞ! バーンストライク!」

 

 ライは上空に炎のかたまりを三つ作り、峯岸に放った。

 

「はあ! 斬空閃!」

 

 峯岸は夕凪に気を纏い、斬撃を飛ばして火球を切り裂こうとする。しかし一つ切り損ね、火球が峯岸を飲み込んだ。

 

「ぐうう!」

 

 峯岸は咸卦法(かんかほう)を意識し、耐熱効果を上昇させる。

 

「そこです! プラズマランサー!」

 

 リニスはライの後ろを取り、複数の魔力弾を放つ

 

「ウインドシールド!」

 

 ライは風の盾を発動させ、リニスの魔力弾を受け流す。

 

「甘いわ! サンダーレイジ!」

 

 プレシアが広範囲に雷撃を放ち、ライを攻撃した。

 

「アクアシールド!」

 

 プレシアの雷撃が止むと、水の盾を自分の周りに展開した無傷のライが居た。

 

「何故! 水は電気を通すはずです!」

 

「その考えは安直だな」

 

 リニスは無傷のライを見て驚愕する。

 

「なるほど、精製水って訳ね」

 

「その通り」

 

「ッ! なるほど、そういう事ですか」

 

 プレシアがライの使ったシールドの水が何なのかを言い当てた。そして、その言葉を聞き理解したリニス。

 

「さて、ここで模擬戦は終了しましょう」

 

「「「分かったわ《分かりました》《了……解》」」」

 

「さて、峯岸君」

 

「はい」

 

咸卦法(かんかほう)を使って自分の傷を癒すんだ。咸卦法(かんかほう)は治癒力も向上する」

 

「はあ、はあ、分かりました。……咸卦法(かんかほう)!」

 

「少しでも使って熟練度を上げるように。そうすれば呼吸をするように咸卦法(かんかほう)が使用可能になる」

 

「分かりました」

 

「プレシアさんとリニスもお疲れ様でした」

 

「ええ、お疲れ。流石ねライ。結局一撃も与えられなかったわ」

 

「そうですね。はっきり言って勝てる気がしません」

 

 プレシアとリニスはライの強さに呆れ気味に言った。

 

「ご安心を。俺の見立てでは三人の力でも十分に闇の書の管理人格と渡り合えます。

 問題があるとすれば、前衛がやられてしまうことだ」

 

「そのための咸卦法(かんかほう)って訳ね」

 

「その通りです。だから彼には頑張って貰わないとな」

 

「でも少し厳しすぎませんか? もう少し手を抜いても……」

 

 リニスはライに指摘した。

 

「あの時もっと厳しくしていればよかったと後悔するよりは良いだろう?

 それにいずれ彼には必要になる力だ。それが早いか遅いかの違いさ」

 

「それはそうですが……」

 

「この話は終わりだ。プレシアさんとリニスも休憩して下さい」

 

「分かったわ《……分かりました》」

 

 プレシアとリニスはそう言い残し、訓練場を後にした。

 

「峯岸君も治癒が終わったら休憩に入ってくれ」

 

「はい、分かりました。……ライさんは休憩しないんですか?」

 

 峯岸はライが残っている事に疑問を持ち、聞いた。

 

「流石に君に訓練するように言っておきながら先に休憩に入るほど無責任ではないさ。

 君が終わるまでここで待っているよ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

――やっぱり良い人だな、この人は……でも、未だに一撃も与えられないなんて……

  俺は強くなれているだろうか……

 

「安心しろ。最初の頃に比べれば、大分融合率も上がって来ている。少しづつではあるが

 着実に強くなっているよ」

 

「また顔に出てましたか?」

 

「ああ、今は良いが戦闘では気をつけることだ。考えが読まれるって事は致命的だぞ」

 

「分かりました」

 

 ライに指摘されて了承する峯岸。それからしばらくして峯岸の傷が完全に治癒したのを確認し、二人は休憩を取った。

 

 

 

 

 

 

 守護騎士達と戦うコンビの勝率が八割を上回ったころ、ライは守護騎士達に呼ばれた。

 

「それで話とは何だ?」

 

 ライが呼び出された理由をシグナムに聞いた。

 

「ああ、テスタロッサ達と話をしていた時に聞いたんだが、半年ほど前にこの町でロストロギアの

 事件があったそうじゃないか」

 

「ああ、ジュエルシード事件だな」

 

 シグナムがライの質問に答えた。

 

「それで、その事件の最後の戦闘映像を見せてもらったのだが」

 

 シグナムは悔しそうに俯きながら言葉を続ける。

 

「悔しいが、今の我々ではゼロには勝てないという結論に達した」

 

「そうだな。ゼロの強さは俺が少なくとも竜の紋章(ドラゴンのもんしょう)を使わなくてはならないほどだ」

 

「ああ。だが闇の書を夜天の書に戻した後、管理局に所属する以上、ゼロと対峙する事は

 あるだろう。その時に今の我々では主を守れない」

 

 シグナムがゼロと対峙した時のことを考え、弱音を吐く。

 

「だから、今より強くなりてぇんだが、良い方法が思いつかなくてよ」

 

「我等はプログラム体。肉体的な強さは上げれらない」

 

 ヴィータとザフィーラが言った。

 

「そう考えると、後は戦闘技術、戦略知識、新たな魔法くらいだけど、どれも今以上の向上は

 難しいと思うのよ」

 

「確かにな。守護騎士はそれぞれの分野で完成していると言って良いほどの実力だ」

 

 シャマルが強くなる方法を挙げるが、どれも難しいであろうことをライに言い、ライも同意する。

 

「そうなると他に方法が思いつかなくてな。そこでライに相談した訳だ」

 

「なるほどな」

 

 シグナムがライに相談を持ちかけた理由を話すとライが納得した。

 

「なんか言い方法ねぇかな? ライ」

 

「そうだな……まだ方法はある」

 

「本当か! それは一体」

 

 ライに手段があると言われたシグナムはライに聞いた。

 

「デバイスの強化だ」

 

「デバイス? でも私達のデバイスはベルカ時代の技術の粋を集めた代物よ?

 これ以上の向上は難しいんじゃないかしら?」

 

「私はデバイスを持っていないしな」

 

 ライの提案に指摘をするシャマルとザフィーラ。

 

「確かに今の管理局の技術力では無理だろう」

 

「じゃあ、無理ってことじゃねぇか」

 

「言っただろ? 管理局の技術力では無理だと」

 

「つまり、ライの持っている技術なら可能だと?」

 

「まあ、そういう事だ」

 

 そう言ったライは王の財宝(ゲートオブバビロン)から四つの宝玉を取り出した。

 

「それは?」

 

 シグナムはライの取り出した宝玉が何なのかを聞いた。

 

「これはSDコアクリスタル、デバイスにインストールする事でそれぞれのコアに秘められた

 魔力変換資質を扱うことが出来るようになる宝玉だ」

 

「魔力変換資質をデバイスにインストールするという事か?」

 

 シグナムはライに確認をする。

 

「ああ、ザフィーラはデバイスを持っていないが首からかけておくだけでも良い」

 

「それは助かる」

 

 ライにそう言われ安堵するザフィーラ。

 

「それくれんのか?」

 

「ああ、俺がお遊びで作ったものだからな。お前達で役立ててくれると助かる」

 

 ライはSDコアを守護騎士達に渡していく、赤のコアクリスタルをシグナムに、緑のコアクリスタルをヴィータに、黄のコアクリスタルをシャマルに、青のコアクリスタルをザフィーラに渡した。

 

「それとそのコアは意思を持っている。あと、今度の作戦では使えないようにしてある。

 お前達を抑えるのが目的なのに強くなっては意味が無いからな」

 

「分かっている」

 

 ライが言った事に返事をするシグナム

 

「じゃあ、使い方になれるために一度模擬戦するか?」

 

「そうだな。悪いがそうさせてくれ」

 

 ライの提案に乗るシグナム。

 

「それじゃ、守護騎士達全員となのは達全員で模擬戦と行こう」

 

 それから模擬戦を行い、守護騎士達のパワーアップに驚きを隠せないなのは達。そして、守護騎士達の圧勝で終わった。

 

「凄まじいパワーだ! これほどとは!」

 

 シグナムは渡されたコアクリスタルのあまりの力に驚く。

 

「あんなコア一つでここまで変わんのかよ」

 

 ヴィータは信じられないといった顔をする。

 

「これほどのものをお遊びで作ったって冗談でしょ?」

 

 シャマルはライの技術力に呆れた。

 

「これなら主を守れる」

 

 主を守れる力を手に入れたザフィーラが喜びをあらわにする。

 

「この力があれば私達は」

 

「「「「負けない!」」」」

 

 守護騎士達は意気込んだ。

 

「なら俺と戦ってみるか?」

 

「「「「ごめんなさい、嘘つきました」」」」

 

 意気込んだ守護騎士達だったが、ライに言われた直ぐに頭を下げる。

 

「分かっているとは思うが、力が手に入ったからといって浮かれるなよ」

 

「ああ、分かっている」

 

 守護騎士達はライに注意され、シグナムがそれに答える。

 

「みんな、ライさんからもらえてええな~。私には何もくれんの?」

 

「はやてにはこのSDコアクリスタルをやる」

 

 ライは王の財宝(ゲートオブバビロン)から黒のコアクリスタルを取り出し、はやてに渡す。

 

「ありがとう。でも黒ってなんや不気味やな」

 

「そうか? 夜天の書にぴったりだと思うがな」

 

「それもそうか~。それじゃ、ありがたく貰っとくわ」

 

 はやてはライから貰ったSDコアクリスタルを首からかけた。

 

 

 

 

 

 

 

「こんどはリーゼ姉妹か」

 

「悪いわね。急に呼び出して」

 

 ライはギル・グレアムの使い魔のリーゼアリアと

 

「ちょっと相談したいことがあってさ」

 

 リーゼロッテに呼び出された。

 

「いや構わない。それに大体の察しはついている。大方、今度作戦で自分達の戦力不足が

 不安なんだろう」

 

「その通りよ。皆の模擬戦を見ていて分かったわ。今の私達二人の戦闘力ではシグナムを相手に

 勝率7割弱、ヴィータを相手に勝率7割強、ザフィーラを相手に勝率8割弱、シャマルを相手に

 勝率約8割、管理人格を相手にすることになった場合は未知数。はっきり言って心許ないわ」

 

「そうなのよね~。模擬戦もしてみたけど、今の数値が妥当ね。だけど、今度の作戦で失敗は

 許されないわ。10割は無理でも全部9割以上は欲しいところね」

 

 アリアが守護騎士達と戦った場合の勝率を言い、ロッテが同意する。

 

「9割……ね……大分低いな」

 

「そりゃ貴方に比べれば低いでしょうけど」

 

「9割もあれば十分でしょ」

 

「1割負けるんだぞ?」

 

「「うっ!」」

 

「10割は難しい。俺ですら10割は無理だ。何があるか分からないからな。だから何があっても

 大丈夫なように準備をする。目指すのは9割9分9厘だ」

 

「そんなの」

 

「無理だと思うか?」

 

「思うっていうか無理でしょ、普通」

 

「無理を可能にするのが俺の役目だ。こんな事もあろうかとこれを作っておいた」

 

 そう言ってライは懐から二つのリングを取り出した。

 

『ライえも~ん、守護騎士達がいじめるんだ~。何か道具出してよ~』

 

『もうしょうがないな~ミス太君は。テレレテッテレ~、シンクリンクリング~』

 

『よ~し、これで守護騎士達に仕返しするぞ~』

 

『使い方も聞かないなんて、きみはじつにばかだな~』

 

『いや知ってますし』

 

『急に素に戻るなよ』

 

「これはシンクリンクリング。このリングをつけた者同士の思考を共有できるように

 なるマジックアイテムだ」

 

「思考を共有ですって?」

 

「何それ、何が凄いの?」

 

「まさかこの凄さが分からないとは……思考を共有するってことは相方の動きが分かる。

 そうなれば、相方が動き易いように動くことができる。つまり連携が容易にできるように

 なるってことだ」

 

「ああ、なるほどね」

 

「ロッテ、貴方ね……ちなみに私は分かってたわよ。ライ」

 

「なら良い。更に意識を共有することで連携技も使えるようになる」

 

「連携技? それは一体……」

 

 流石に連携技については見当もつかなかったアリア。

 

「それについては追い追い教えてやる」

 

「悪いわね。私達の力不足で」

 

 アリアが申し訳無さそうにライに謝った。

 

「そんなことは無いさ。アリアは補助、中遠距離魔法のスペシャリストだ。

 ロッテは近距離戦闘のスペシャリスト。更に二人の連携は目を見張るものがある」

 

「そりゃ私達だもんね」

 

「調子に乗らない!」

 

「このリングを使えばその連携が更に強固なものになる。連携技も使えるようになれば、

 勝率はグンと上がる。更にこいつにはある裏技もある。必ず役に立つはずだ」

 

「ありがとう。ライ」

 

「それじゃ、早速」

 

「ああ、模擬戦だな」

 

 そのあと滅茶苦茶なのは達と模擬戦をした。そして、なのは達から色々問い詰められたことは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、ライ兄さん」

 

 なのは・葵コンビとヴィータの模擬戦後、葵はライに声を掛けた。

 

「どうした? 葵」

 

「はい、実は相談があるんですが、良いですか?」

 

「ああ、構わないよ。何かな?」

 

「ありがとうございます」

 

 ライにお礼を言う葵はそのまま続けた。

 

「実はアブソリュートランスのことなんですが、以前言われた通り、マルチタスクの技術を磨いて

 いたんです。おかげでその場で防御することはできるようにはなったんですが、移動したり、

 攻撃に回ると維持できないんです。どうしたらもっと上手く扱えるようになるか相談したくて」

 

「なるほど、確かに移動と攻撃はその場で防御するより意識が割かれるからな。相手の動き、

 自分の位置取り、他にも意識しないといけないことがある。まあ、半年も満たないのに

 そこまで扱えるようになっただけでも驚異的なんだがな」

 

 ライは葵の成長を賞賛した。

 

「必死で訓練しましたから、家族を守るために」

 

――家族……か

 

 葵の答えを聞いて、物思いにふけるライ。

 

「ライ兄さん? どうかしましたか?」

 

「いや、何でもないよ。いい訓練方法か……俺のやっていた訓練方法でよければ教えよう」

 

「ライ兄さんのやっていたですか?」

 

「安心しろ。そんなに難しいものじゃない。これを使うんだ」

 

 ライは懐に手を入れ、四角い物体を二つ取り出した。

 

「これって……ルービックキューブですか?」

 

「その通り、俺はこれを使って訓練した」

 

「これでどうやって?」

 

 訓練方法の見当がつかなかった葵はライに確認した。

 

「まず、この二つを浮遊魔法で浮かせる」

 

 ライはルービックキューブを葵の目線の高さまで浮かせ、横に並べる。

 

「そしてこれを同時に動かして」

 

 ライは操作魔法で二つのルービックキューブを同時に動かした。

 

 

カカカカカカッ!

 

 

「こうやって完成させる」

 

「……」

 

「ふむ、0.95秒か……大分落ちたな」

 

 一瞬でルービックキューブを解いたライに驚愕する葵。

 

「見て分かったと思うが、これは浮遊魔法、操作魔法に加えてそれぞれのルービックキューブの

 面を見てどう動かすのかを瞬時に考えないといけない。五分以内に解けるようになったら、

 一つずつ増やしていく。まずはやってみな」

 

「はい」

 

 ライはルービックキューブをランダムに崩し、葵に渡す。そして、浮遊魔法で浮かせる。

 

「えい! やあ! とう!」

 

 そして、操作魔法でルービックキューブを動かす葵。

 

「葵、声は要らない」

 

「あっすみません」

 

「別に謝らなくていい。責めてる訳じゃない」

 

「はい……」

 

 ルービックキューブを解くのに集中する葵。そして解き終わった

 

「ふむ、5分32秒か……最初にしては上出来だ」

 

「ありがとうございます」

 

「君のアブソリュートランスだったら七つ同時に五分以内で解けるようになれば良いだろう」

 

「七つですか? ライ兄さんは最大どれくらい出来るんですか?」

 

「俺は1000個同時に1.75秒だ」

 

「1000個!?」

 

「やってみせようか?」

 

 ライは懐から1000個のルービックキューブを取り出した。

 

「今はその懐の方が気になるんですけど……どうなってるんですか?」

 

「気にするな」

 

――無理よ。もしかして神宮寺のような異次元の倉庫のレアスキルを持ってるのかしら……

 

「君の予想通りだとだけ言っておこう」

 

「ッ! 顔に出てましたか?」

 

「いや、なんとなくそんな気がしただけだ」

 

「ふふ、違ったら恥ずかしいですね」

 

「間違ってないようで何よりだ」

 

 ライは浮遊魔法で1000個のルービックキューブを縦10、横100に並べる。そして

 

 

カカカカカカッ!

 

 

 一瞬で解かれるルービックキューブ

 

「ふむ、2.22秒か。やはり、大分落ちたな」

 

「……」ポカーン

 

「まあ、慣れってやつだ。頑張れ」

 

「……え、あっはい」

 

 ライのやったことに驚きを隠せない葵は生返事しかできなかった。

 

「葵……君は家族を守れよ」

 

――君は? ……この人はもしかして

 

「……ライ兄さん。あの」

 

「ん? 何だ?」

 

 葵はライを呼び止めたが、

 

「……いえ、やっぱり何でも無いです」

 

「そうか? じゃあな。葵」

 

「はい……それじゃあ」

 

 葵は去っていくライの寂しそうな背中を見えなくなるまでずっと見つめていた。

 

 

 そして、作戦決行の日となった。




 掲載が遅くなってすみませんでした。結局いい制約と誓約が思いつきませんでしたので、そのまま載せます。ですが、良いのが思いついたら修正が入りますので、ご了承願います。


さて、零冶の念能力紹介のコーナーです。

では、次の念能力はこれだ!

20、栄光の手袋グロリアスハンド
  系統:具現化系
  説明:空気などの掴めないものを掴める手袋を具現化する。
     逆に通常掴めるものが掴めなくなる。
     そのため、手袋を装着した部分は物体を通り抜けるようになり、
     その状態での能力解除は不可となる。
     また、何かを掴んでいる状態での能力解除もできない


  制約
   1、通常は掴めるものが掴めなくなる。
   2、手袋が物体を通り抜けている状態で能力解除はできない。
   3、何かを掴んでいる状態での能力解除はできない。

  誓約
   無し


 この能力は通常掴めるものが掴めなくなるため、まったく攻撃力はありません。通り抜けるため、人に使うと体の中に手が入ると言う中々グロい光景になります。ですが、痛みはまったくありません。

 通常掴めるものが掴めなくなるという事象の逆転をさせた手袋と思っていただければと思います。

 この手袋で掴めるものは実体の無いものになります。なので、空気・時間・魔力といったものを掴む事ができます。

 零冶が良く使うのはこの能力で時間を掴み、時の支配者(クロックマスター)で時間を一時停止ですね。

 また、ゼロ戦で見せたジガディラスの砲撃魔法を掴み、投げ返すといった使い方もあります。ですが、掴んだと行ってもダメージが無いわけではないので、竜の紋章(ドラゴンのもんしょう)も使い、防御力を上げ、ダメージに耐えてた。となります。

 他の能力と組み合わせることで本領を発揮する能力ってことですね。まあ、中々のチートだ。


って感じです。では

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