原作を放って置くとバッドエンドになるんですが、どうしたら良いですか?   作:月の光

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更新遅れてすみません。

またしても文字数多いです。
投稿する度に文字数が多くなっている気がする。
できれば、10000文字で抑えたいぜ。

あと、誤字脱字チェックが甘いと思います。
申し訳ない。


あとがきの念能力紹介はまた後日、載せます。
申し訳ないです。

2015/3/22 更新
 念能力紹介を書きました。良かったら見てやって下さい


31_ミスト『ごめんちゃい』零冶『誠意をまったく感じない件』

零冶 サイド

 

 闇の書のページも665ページ埋まった。なのは達の魔力が回復してから訓練するため、その日は解散となり、次の土日から模擬戦を開始する。それまでの間はそれぞれにあった訓練方法を教え、平日は今まで通りに過ごしてもらった。

 

「君達はまだ学生なんだ、今の内に学生生活を満喫しておけ。後悔しないようにな」

 

 って俺は学生じゃないんだぜアピールしたら、

 

「ライさんは……後悔してるんですか?」

 

 と桜羽に言われたので、

 

「さあな、そんな昔のことは忘れたさ。だが、後悔しないで生きる事ができる人間なんていない。

 だからこそ、人は未来を見据え、今を必死に生きるんだ」

 

 って誤魔化した。

 

 それからテスタロッサ一家は以前俺が提供した拠点に移り住み、その隣の部屋が空いていたので、そこにハラオウン親子とエイミィさんが暮らすことになった。

 

 そして、原作より早いがアリシアとフェイトが私立聖祥大付属小学校に編入し、なのは達と同じ一組に入った。そして、バニングスと月村とも直ぐに仲良くなり、聖祥の六大女神と呼ばれるようになった。もっとも七大女神と呼ばれる日もそう遠くないだろうが。

 

 俺のクラスの男子は「なんでまた一組なんだ!」と嘆いていたが、悪いな、それは俺が裏工作したからなんだ。元々アリシアは二組に配属される予定だったんだが、俺が嫌だったから、ちょちょいっと一組に配属させちった。方法は秘密だ。

 

『ギアスマジ便利』

 

『ばらすなよ、ミスト』

 

『ごめんちゃい』

 

『誠意をまったく感じない件』

 

 はやて達の護衛は基本管理局が付く事になったので、俺はお役御免だ。もっとも影分身体を見張りに付けているけどな。何故かはやてとシャマルががっかりしていたが、まあ良いだろう。ヴィータは「アイスが~」って言っていたが、何、気にする事はない。

 

 なのはと桜羽の家族にはリンディさん達が事情説明に行き、正式に協力してもらう事になった。

 

 

 そして、次の土曜日

 

 

「よし、ではこれから守護騎士達と一対一の模擬戦をしてもらう。最初はヴィータとなのはだ」

 

「分かったの」

 

「負けねぇぜ」

 

 結果から言うとヴィータの勝ち、まあ当然だが。なのはも良く戦っていた。最初こそ接戦だったが、ヴィータがカードリッジを使用し、ラケーテンハンマーを使うと形勢はヴィータに傾いた。

 

 原作と同じようにラケーテンハンマーをプロテクションで防ぐなのは。原作ではここでプロテクションが破られ、レイジングハートが破損するはずだったが、原作より強くなっているなのはは防ぎ切りそうだった。

 

 それに驚愕したヴィータだったが、冷静に追加のカードリッジをロードし、威力の底上げをしてなのはのプロテクションを破り、レイジングハートを破損させ、試合終了となった。

 

「ま、まあまあやるじゃねぇか。高町な、な、なんとか」

 

「なのはだよ!」

 

「なにょ、にゃの。ええい、面倒臭ぇ! 高町なんとか!」

 

「なのはだってば!」

 

 などとほのぼのとしたやり取りがあった。そして、ヴィータが一旦休憩する事となった。

 

「次はシグナムとフェイトだ」

 

「分かった」

 

「よろしくお願いします」

 

 戦いが始まり、まずはフェイトが速さでシグナムを翻弄する。その速さにシグナムも舌を巻いたが、動きを良く見て、攻撃を全て防いでいた。全ての攻撃が防がれることにあせりを感じたフェイトは更に速くなるため、バリアジャケットをパージした。

 

 それを見てた神宮寺が真剣な眼差しで「あれじゃ、少しの攻撃でやられるぞ」と言いながら鼻血を出して、周りの女性陣から引かれていた。

 

 更に速くなったフェイトに苦戦するシグナム。だが、長年の経験からフェイトの動きを先読みし、カートリッジをロードした後、紫電一閃を放ち、バルディッシュを真っ二つにして勝負あり、シグナムの勝利となった。

 

「中々良い勝負だった。また模擬戦をしよう、テスタロッサ」

 

「はい、次は負けません。シグナム」

 

 という、男じゃないけど熱い友情が芽生えた。

 

「次はザフィーラとアルフだ」

 

「うむ、よろしく頼む」

 

「フェイトの仇はとるよ」

 

「私、死んでないよ!」

 

 アルフのセリフに突っ込みを入れるフェイトを他所にザフィーラとアルフの模擬戦が始まった。結果はザフィーラの勝ち。守りを主体とするザフィーラと攻撃を主体とするアルフの戦いだったが、結局ザフィーラの固い守りを崩す事が出来ず、一瞬の隙を突いてアルフを組み伏せたザフィーラが勝利を収めた。

 

「男の癖に守ってばっかかい!」

 

「守りこそ、我が使命。貴様に文句を言われる謂れは無い」

 

 とアルフの挑発にも冷静だったザフィーラ

 

「男だぜ」

 

 と尊敬の眼差しをザフィーラに向ける峯岸

 

「あんたってホモ?」

 

 と冷たい目で言う桜羽。それを慌てて否定する峯岸からす~っと離れるクロノ達

 

「ホモって何? 美味しいの?」

 

 と無垢な眼差しで俺に聞いてくるアリシア。そこで俺は

 

「一部の人間にとっては美味しいんじゃないか?」

 

 と言っておいた。それを

 

「ふ~ん」

 

 と興味なさそうに頷くアリシアだった。

 

「さて、峯岸君のホモ疑惑は置いといて「ホモじゃない!」安心しろ」

 

 俺はそう言い、言葉を続ける。

 

「一部の人間には需要があるはずだ」

 

「だから違うんだああ!」

 

 俺の言葉に絶望し、叫ぶ峯岸。

 

「さて、次はシャマルとユーノだ」

 

「「お手柔らかにお願いね?《お願いします》」」

 

 とセリフがかぶった二人の模擬戦が始まった。始まったんが、二人とも最初はまったく動かず、エイミィさんが

 

「始まってるよ。二人とも」

 

 と言っても動かないので少しいじけてた。そして、二人が同時に動き出すとその二人のいた場所に互いのバインドが発動した。

 

 それからというもの二人のバインドの掛け合いが始まった。設置型バインドと任意発動型バインドで互いに相手を捕らえようしており、なのは達もハラハラしながら見ていた。

 

 そして、シャマルがユーノのバインドに引っかかったが、

 

「参りました」

 

 というユーノの一言でシャマルの勝利となった。なのは達は何故? と思っていたようだが、シャマルの旅の鏡によって右腕を転移させ、ユーノの後ろから彼女は右手に持ったペンデュラムの切っ先を首元を突きつけていたため、シャマルの勝ちだ。

 

「良い勝負だったわ」

 

「僕も勉強になりました」

 

 と握手をして和やかに模擬戦終了となった。その後、小休憩を挟み、ヴィータと桜羽の模擬戦となった。

 

「よし、休憩は終わりだ。次はヴィータと桜羽だ」

 

「手加減しねぇぜ。ちっとは楽しませろよ」

 

「ご期待に添える様頑張るわ」

 

 結果は桜羽の勝ち。最初こそヴィータVSなのはの時と同じような展開になったが、ヴィータがラケーテンハンマーを使用したところで、桜羽はアブソリュートランスを発動。

 

 桜羽がヴィータのラケーテンハンマーをアブソリュートランスで受け止めた瞬間、ヴィータのグラーフアイゼンのハンマー部分が凍り付き、ラケーテンハンマーは不発に終わった。そして、ヴィータの首元にアブソリュートランスの切っ先を突きつけ、桜羽の勝利に終わった。

 

「ちっ、次は負けねぇかんな。桜羽葵!」

 

「なんで葵ちゃんはちゃんと名前で呼んでるの!」

 

「うるせぇよ、高町なにょは」

 

「なのはだってばー!」

 

 ヴィータとなのはのほのぼのとしたやり取りが行われていた裏では

 

「桜羽、今度私と模擬戦しないか?」

 

「あ、あはは、考えておきます」

 

 とシグナムが桜羽に模擬戦を申し込むという出来事があった。そして次は

 

「では次はシグナムとアリシアだ」

 

「よろしく頼む、テスタロッサ」

 

「フェイトといる時は何て呼ぶの?」

 

「その時は名前で呼ぶさ」

 

「分かったよ。シグナムさん」

 

 そして、模擬戦が始まり、アリシアがデバイスであるハリケーンイノセンスを展開するとその場は騒然となった。そこにいたテスタロッサ一家以外が全員が言葉を漏らす。

 

≪何でハリセン!?≫

 

 と。だが、はやてだけは「あれ欲しい!」と言っていた。

 

 そして、シグナムとアリシアの模擬戦が始まった。

 

 アリシアの戦い方はフェイトと違い、遠距離からの魔力弾による弾幕だった。その戦い方はプレシアさんに近く、その魔力弾の量と威力にシグナムも苦戦を強いられた。シグナムはカードリッジを一つ使用し、レヴァンティンをシュランゲフォルムに変更。連結刃を巧みに使い、アリシアの魔力弾を打ち落とした。

 

 しかし、アリシアの膨大な魔力量を武器にした戦い方のため、一向に魔力が尽きそうになく、シグナムにも焦りが生まれた。意を決したシグナムは更にカードリッジを一つロードし、飛竜一閃を放つ。アリシアはプラズマスマッシャーを放ち、シグナムの飛竜一閃を相殺した。

 

 煙が立ち込める中からシグナムが飛び出し、アリシアにレヴァンティンを突きつけ、勝負あり。かと思ったが、アリシアは周囲に大量の魔力弾を展開しており、それを全て爆発させた。

 

 アリシアは自前の防御魔法で身を守り、ほぼ無傷。観戦していたものたちはアリシアの勝ちだと思ったが、そこは歴戦の将であるシグナムも負けていない。とっさにカートリッジをロードし、パンツァーガイストを発動して身を守っていた。

 

 そして仕切り直しになるかと思ったが、アリシアが魔力切れを宣言し、降参したため、シグナムの勝利となった。試合終了後、緊張の糸が切れたアリシアはバリアジャケットが解け、さきほどまで空中で戦っていたため地面に落ち始めたが、俺が飛雷神の陣(ひらいしんのじん)で先回りし、抱きかかえる形で助けた。

 

「アリシアちゃん二回目なの。ずるいの」

 

「姉さん、またライに迷惑掛けて……羨ましい」

 

 女性陣が羨ましそうな顔をしていたが、気にせず、医務室に運んだ。そして

 

「では次はザフィーラと神宮寺君だ」

 

「うむ」

 

「よっしゃ、負けねぇぜ」

 

 結果はザフィーラの勝ち。これでもかと言うほどあっさり勝負がついた。神宮寺が身体強化を行いデバイスのギルガメッシュ改め、エクスカリバーを構えて、ザフィーラに突っ込み、ザフィーラに防がれ、あっさり組み伏せられた。

 

「神宮寺君、何故レアスキルを使わなかった?」

 

「いや、俺の王の財宝(ゲートオブバビロン)は全部質量兵器で非殺傷設定ができないから

 模擬戦で使うべきじゃないと思って」

 

「なるほど」

 

 俺は神宮寺に理由を聞いた。

 

「なら君にこれを上げよう」

 

 俺はコートの内ポケットに手を入れ、王の財宝(ゲートオブバビロン)からある宝石を取り出し、神宮寺に渡した。

 

「これは?」

 

「これはアンチキラーオーブ。質量兵器に魔力を纏わせ、非殺傷設定をつけることが出来る

 プログラムの宝玉だ。君のデバイスにインストールすれば、君のレアスキルに非殺傷設定

 をつけることが出来る」

 

「マジっすか!」

 

「ああ、それを使ってもう一度模擬戦してもらう」

 

「分かったっす」

 

 神宮寺は自分のデバイスにアンチキラーオーブを取り込み、再度模擬戦となった。開始直後に神宮寺は王の財宝(ゲートオブバビロン)で数多の武器を展開。それに驚愕するザフィーラ。そして高速で打ち出される無数の武具達。それを得意の防御魔法で防ぐザフィーラ。

 

 しかし、尽きる事のない武具の攻撃に成す術無く、ザフィーラの魔力がそこを尽き、神宮寺の勝利となった。あまりの光景に呆然となる守護騎士達。やはり、慢心王さんは強かったと証明された瞬間だった。もっとも訓練室という狭い空間だったからこその結果だけどな。広い空間ならザフィーラももっと他の戦い方があっただろう。

 

「何だよ、あのレアスキルは反則じゃねぇか」

 

「あんなの防ぎ様がないじゃない」

 

「模擬戦したい」

 

 シャマルは旅の鏡で対抗できると思うが? まあ良いや。そして安定のシグナム。

 

「では次はシャマルとクロノだ」

 

「分かった」

 

「よろしくね?」

 

 そして、模擬戦が始まった。クロノが先制し、スティンガースナイプを放つ。シャマルはクロノの魔力弾を避けたり、防御魔法で防ぐが、クロノは魔力弾を巧みにコントロールし、シャマルを誘導する。そして、設置していたバインドにシャマルが掛かり、クロノがトドメの砲撃魔法、ブレイズキャノンを放つ。

 

 クロノの勝ちと思われたが、シャマルが旅の鏡を発動し、クロノの攻撃をクロノの後ろに転送し、不意を突いた。砲撃魔法はクロノに直撃し、シャマルの勝利かと思いきや、立ち込める煙の中クロノが飛び出した。

 

 クロノは旅の鏡で砲撃を返される事を読んでいたため、威力を弱めてた。不意を突かれたシャマルは対処が遅れ、クロノにデバイスを突きつけられ、クロノの勝利……ではなく、シャマルが旅の鏡でユーノの時と同様に右腕をクロノの胸の前に転移させ、右手で握ったペンデュラムの切っ先をクロノの胸に突きつけていたので、結果は引き分け。

 

「流石は執務官様ね」

 

「良い勝負でした」

 

 こうして守護騎士達との模擬戦は終わった。そして最後に

 

「それでは最後に俺と峯岸君で模擬戦だ」

 

「はい! よろしくお願いします!」

 

 

零冶 サイドアウト

 

 

 こうしてライと峯岸の模擬戦が始まった。峯岸はデバイスを夕凪モードにして構える。ライは特に構える訳でなく、普通に立っていた。

 

「行きます!」

 

 峯岸は瞬動術でその場から消えるように動き出した。

 

――速い! 直線的だが、速さだけなら、テスタロッサ以上だ! 

 

 峯岸の速さに驚愕しているシグナム。しかし

 

≪え?≫

 

 次の瞬間、その場にいた全員が驚愕した。何故なら峯岸がライに向かって高速で動き出したにも関わらず、既に組み伏せられた峯岸の姿があったからだ。

 

「え? あれ?」

 

 何時の間に組み伏せられたかが分からず、呆然としている峯岸

 

「やり直し」

 

「へ?」

 

 急にライに話しかけられた峯岸は呆けたように声を出した。

 

「模擬戦とはいえ、動き出す前にこれから行くと言うやつがあるか。君はバカか?」

 

「す、すみません」

 

「おい、シグナム。今のライの動き、見えたか?」

 

「いや、まったく見えなかった」

 

「うむ、峯岸が動き出し、次の瞬間には既に組み伏せられていた」

 

 ヴィータがシグナムに聞いた。ザフィーラも答えた。

 

「さあ、仕切り直しだ」

 

「はい、分かりました」

 

 再度、距離をとったライと峯岸は無言で向かい合った。そして、瞬動術で動き出す峯岸。ライの後ろに回り、夕凪で切りかかった。

 

 ライはオーラを集中させ右手人差し指で硬を行い、一本の指で夕凪を受け止めた。

 

「な!」

 

 指一本で止められたことに驚愕した峯岸はそのまま夕凪で何度も切りかかる。しかし、全て指で止められてしまう。

 

「くっ! それなら斬岩剣!」

 

 峯岸が岩を両断する斬撃を繰り出すも呆気なく、指に阻まれた。

 

「嘘だろ!?」

 

「悪くない太刀筋だ。剣速も速い。若いのに立派だな。だが、さっきの瞬動術は前傾姿勢に

 なり過ぎだ。それと剣筋が素直すぎる。もう少しフェイントを織り交ぜたほうが良い。

 こういう風に」

 

 ライは左手で手刀を作り、峯岸に放った。

 

「ッ!」

 

 手刀を防ぐため、夕凪で防御の姿勢をとる峯岸。だが、ライはその手刀を寸でのところで止め、峯岸の死角から右手を動かし、峯岸のおでこの前で人差し指と親指で輪を作り、

 

 

バッチーーーン!!

 

 

 デコピンをする

 

「ぐあ!」

 

 そして、ありえないほど吹っ飛ぶ峯岸。

 

「ねぇ、今のデコピン…凄い音しなかった?」

 

「うん、普通のデコピンでは有り得ない音だったね」

 

 ライの放ったデコピンの有り得ない音に驚愕するなのはとフェイト。

 

「くっ!」

 

 吹っ飛んだ峯岸は体勢を整え、ライから距離をとった。

 

「これならどうだ! 咸卦法(かんかほう)!」

 

「ほう? 気と魔力を融合させたのか、中々面白い技術を使うな」

 

「次はこれだ!」

 

 峯岸は夕凪を鞘に収める。

 

「ん?」

 

 峯岸は居合いの要領で夕凪を引き抜き、一瞬で戻す。そして空気を切り裂き、衝撃波を放った。その衝撃波は見えない斬撃となりライを襲ったが、それをまるで見えていたかの様にひょいっと避けるライ。

 

「くっ! 居合い剣まで」

 

「見えない斬撃か。中々多芸だな、君は。ならお返しだ」

 

 ライは左手を前に出し、峯岸に向ける

 

「エアハンマー」

 

 ライは魔力変換資質の風圧を使い、空気の塊を峯岸に放つ。

 

「え? うわっ!」

 

 峯岸が急に吹き飛び、壁に激突する。

 

「ぐは!」

 

――今のは居合い拳! いや違うか…ポケットに手を入れてた訳じゃない。これは魔法なのか?

 

 峯岸はライの放ったエアハンマーを居合い拳と勘違いしたが、直ぐに違うと結論付けた。

 

――咸卦法(かんかほう)で防御力を上げてなかったら今のでやられていたな

 

「なら次は、これだ! アーエル・ウル・エルド!」

 

 峯岸は始動キーからの詠唱を始めた。

 

「契約により我に従え、高殿の王、解放! 千の雷!」

 

 峯岸は右手を前に出し、魔法を放つ。

 

「固定! 掌握! 術式兵装! 雷天大壮!」

 

 峯岸は魔法を体内に取り込み

 

「術式解放! 完全雷化! 千磐破雷!」

 

 自身のレアスキルである闇の魔法(マギア・エレベア)を発動させた。

 

「なるほど……それが君の切り札という訳か」

 

 ライは峯岸の闇の魔法(マギア・エレベア)を見ても特に取り乱さず、冷静に言った

 

「魔法を体内に取り込むだと? そんな魔法見たことも聞いたことも無いぞ」

 

 峯岸の魔法を見てシグナムは思わず言葉を漏らす。

 

「あれは春兎のレアスキルよ。名前は確か闇の魔法(マギア・エレベア)だったかしら。

 魔法を体内に取り込んでその魔法と同化する魔法らしいわ」

 

 葵がシグナムに説明をする。

 

「だから何だってんだ? 確かに驚いたけどよ」

 

「そうね。折角の砲撃魔法を放たず、無駄にしたようにしか見えないわ」

 

 ヴィータとシャマルも峯岸の魔法に驚きはしたものの、その行動が理解できなかった。

 

「だが、意味も無くそんなことをするはずがない。直ぐに答えは出るはずだ」

 

「せやね」

 

 ザフィーラとはやてがそう言った瞬間、

 

 

バチッ!

 

 

 軽い放電と共に峯岸の姿が消えた。

 

「「「「な!?」」」」

 

「ほへ?」

 

 突然、姿を消した峯岸に驚愕する守護騎士達とまったく状況が理解できないはやて。そして次の瞬間にはライの後ろに峯岸の姿があった。そして峯岸はライに向かって夕凪を横に振り払った。しかし、ライは先ほどと同じように指で夕凪を受け止める。

 

「ッ! まさか、このスピードにも反応するなんて」

 

「なるほど、雷と同化することで雷速で動けるようになったのか」

 

 ライは峯岸の闇の魔法(マギア・エレベア)を冷静に分析する。

 

「は、速すぎる! まったく目で追えなかった!」

 

「速さだけならライ並みじゃねぇか」

 

 峯岸の速さに驚きを隠せないシグナムとヴィータ。

 

「速さに自信ありか。では次はスピード勝負と行こうか」

 

「ッ!」

 

 

バチッ

 

 

 峯岸はライから距離をとるため、その場から移動した。そして、ライがいた場所を見たが、

 

「ッ! 居ない!」

 

 既にライの姿はなく、

 

「こっちだ」

 

 後ろから声を掛けられた。

 

「な! 何時の間に!」

 

「さっきから居たぞ?」

 

 

バチッ

 

 

 峯岸は再びライから離れるため、移動した。しかし

 

「また居ない!」

 

「確かにそのスピードは驚異的だな」

 

 再び後ろからライの声が聞こえた。それから峯岸は何度も移動するが全てライに後ろを取られてしまう。

 

≪何あれ怖い≫

 

 その場に居た全員が、峯岸がいくら移動しても後ろを取られている状況を見て恐怖を感じる。

 

――くっ! まったく距離をとれない! そうだ、常に後ろに居るなら!

 

 峯岸は先行放電を放ち、再度移動する。

 

「斬鉄閃!」

 

 そして、後ろを確認する前に気を夕凪から螺旋状に飛ばし、攻撃した。

 

「あれ? 居ない」

 

「そんな単純な攻撃が当たると思うか?」

 

「な!」

 

 攻撃後、ライに後ろから声を掛けられ、驚愕する峯岸。

 

「どうやらその魔法は思考速度は上がっていないらしいな。だから、移動する前に移動ポイントに

 放電の目印を付けているのか」

 

「く! もうこの魔法の欠点を……」

 

「だが、その欠点は致命的だな。移動ポイントがばれてしまってはいくら速くても効果は半減だ

 更に思考速度が上がっていないってことは、動き出す前に不意を突かれたら意味がない」

 

――まさか、こんなに早く欠点を知られるなんて……だから

 

「もしかして、欠点を知られているから簡単に後ろを取られていると思っているのか?」

 

「え? は、はい(何で思っていることがばれたんだ?)」

 

「君は感情が顔に出易いからだよ」

 

「また読まれた!」

 

「話を戻すが、もし先行放電を知られたからだと思うなら、別々の場所に複数の先行放電を

 走らせてその一つに移動したらどうだ?」

 

「な、なるほど」

 

 峯岸はライに言われた通りに先行放電を4箇所に走らせ、その一つに移動した。

 

「これなら!」

 

 峯岸はライが居た方向を見るが、

 

「残念、後ろだ」

 

「嘘だろ!」

 

 やはりそこにライの姿は無く、

 

――確率は四分の一なのに、やっぱりまだ未完成だけどあれをやるしかないか

 

 峯岸はライの方に向き直り、

 

「ん? もう降参か?」

 

「まさか、ここからが本番です」

 

「ほう、まだ何かあると……いいだろう。君の全力を見せてみろ」

 

 ライは峯岸の全力を見るため、自ら距離をとった。

 

「あれ以上のものがあるだと? 一体何をするつもりだ?」

 

 シグナムは目をキラキラさせながら、峯岸のやることを見ていた。

 

「てか、ライが異常すぎて峯岸の野郎が普通に見えるんだが」

 

「そうね。あの子も十分異常なんだけどね」

 

「うむ、それ以上にライが異常なんだろう」

 

「ぷっ! ザフィーラが親父ギャグならぬ、狼ギャグを」

 

「はやて、ちょっと黙って」

 

「はやてちゃん。空気読めなの」

 

「あっはい、すんません(フェイトちゃんもなのはちゃんも怖いわぁ)」

 

「「何か言った?」」

 

「いえ! 何でもありません! サー!」

 

 原作組み三人娘による漫才を他所に峯岸は闇の魔法(マギア・エレベア)を解いた。そして

 

「……」

 

 峯岸は目を瞑り、集中する。

 

「先に言っておくが、一対一の戦いの最中に目を瞑るなんて愚の骨頂だからな?」

 

「あ、はい。すみません」

 

「今回は見逃すが、次やったらおしおきだ」

 

「分かりました!」

 

 峯岸は背筋をピンと伸ばし、右手を額に水平に当て、敬礼をする。

 

「良いから、続けろ」

 

「はい……」

 

 峯岸は再び目を瞑り、集中する。そして、目を見開き。

 

「左腕! 解放固定! 千の雷!」

 

 左手を前に出し、前に固定化された千の雷を作る。

 

「右腕! 解放固定! 千の雷!」

 

 今度は右手を前に出し、再び固定化された千の雷を作る。

 

「双腕掌握! 術式兵装!」

 

 同時に二つの千の雷を握り潰し、体内に取り込んだ。

 

「雷天大壮2! 雷天双壮」

 

 峯岸は再び、闇の魔法(マギア・エレベア)を発動させた。

 

「二つの魔法を取り込んだか……だが、見た目は先程と大差ないが?」

 

 ライは峯岸の姿に対して感想を述べたが、峯岸は答える事はなかった。それはライを無視したかった訳ではなく、闇の魔法(マギア・エレベア)を維持するために集中しているからだ。

 

 そして次の瞬間、峯岸が一瞬でライの前に移動し、既に夕凪を振り下ろす姿があった。ライは夕凪を受け止めるため、指を出したが、夕凪が指に当たる瞬間に峯岸は消え、後ろに現れた。

 

「ッ!」

 

 峯岸は夕凪でライに切りかかった。ライは左手で腰の剣を抜き、夕凪を受け止める。

 

 

ギン!

 

 

 お互いの武器が衝突した音を残し、その場から二人の姿が消えた。

 

「あれ? 二人とも居なくなってもうたで?」

 

 

ギン! ギン! ギン! ギン!

 

 

 二人の姿は見えないが、金属音は聞こえていた。

 

「まさか、二人とも目に見えないほどのスピードで動き続けているのか?」

 

「やっぱ峯岸も普通じゃねぇな」

 

 シグナムとヴィータがこの金属音だけが聞こえる状況を分析する。

 

「それにさっきライが指摘した先行放電も見当たらないわ」

 

「つまり、先程の峯岸の魔法はその欠点を補うものだったと言う訳か……」

 

 続けてシャマルとザフィーラが峯岸の魔法を分析する。

 

「春兎君、凄いの……」

 

「でもそれ以上にライが凄い。ハルトは魔法を使ってあの速度を出しているけど、

 ライはどうやってあの速度を出してるんだろう……」

 

「そうね。後でライさんに聞いてみましょうか(ライさんには他にも聞きたいことがあるし)」

 

 なのはとフェイトの言葉に葵が返した。

 

「いや~もう何が何やら分からんわ」

 

「そうだね~」

 

「あれ? アリシアちゃん何時の間に戻ってきたん?」

 

「さっき目が覚めたところ」

 

 はやての呟きに返事を返すアリシア。

 

「アリシア。調子はどうですか」

 

「うん、魔力も結構回復したし、もう大丈夫!」

 

「後でライにお礼を言っておきなさい。気を失ったアリシアを受け止めたのは彼だから」

 

「そうなんだ。分かったよ、お母さん。流石は未来の私の旦那様だね!」

 

 リニスがアリシアの調子を聞き、プレシアがアリシアに言った。

 

「「「アリシアちゃん《姉さん》、その言葉、聞き捨てならない《の》《よ》《んわ》」」」

 

 ライと峯岸の模擬戦の最中、そんなのん気なやり取りがあった。

 

――まさか、雷天大壮2の速度についてくるなんて! ライさんは一体何者なんだ!

 

 峯岸は自身の持つ最高の魔法を使用しているにも関わらず、対応するライに驚愕した。

 

――中々の完成度だな。だが、峯岸は気付いていないようだな、今の状態の致命的な欠点に

 

 目にも止まらない速さで動いてる中、ライは峯岸の魔法を分析していた。

 

――さて、そろそろ終わらせるとしようか……

 

 ライは移動を止め、姿を現した。

 

――ん? どうしたんだ? いや関係ない、俺は俺のやれることをやるだけだ。

 

 峯岸はライに切りかかるため、彼に向かって雷速で移動を開始した。だが、次の瞬間

 

「マジャスティス!」

 

 ライは魔力変換資質 光輝を使い、峯岸に光の波動を放った。すると峯岸が使用している闇の魔法(マギア・エレベア)が消え、姿を現した。

 

「あれ? うわっ!」

 

 急に速度が落ちたことで体勢を崩し、転倒する峯岸。

 

「さて、模擬戦は終了だ。中々面白い戦いだったよ。峯岸君」

 

 ライは床に寝そべっている峯岸に手を差し伸べた。

 

「あっはい、ありがとうございました」

 

 峯岸はその手を取り、引き起こされた。こうして、ライと峯岸の模擬戦は終了となった。

 

「さて、今日の模擬戦はこれで終わりだ。次回から以前話したタッグで模擬戦をする。

 なのはとフェイトはデバイスを修理して貰え」

 

「分かったの」

 

「分かったよ。後でエイミィさんに渡すね」

 

 ライは模擬戦終了を告げ、なのはとフェイトのデバイスを修理するよう促し、なのはとフェイトは了承した。

 

「ライよ。出来ればさっきの戦いの解説をして貰いたいんだが」

 

 シグナムはライに先程のライと峯岸の模擬戦の解説をお願いした。

 

「そうだな。だが、その前にそれぞれの課題の話をしたい。順を追って話そう。

 まず、なのはだが」

 

「はい」

 

「魔力制御は見事だった。魔力弾のコントロールや砲撃魔法の威力も申し分ない。

 防御魔法もヴィータのラケーテンハンマーを受け止めたのは賞賛に値する。

 ちゃんと練習していたようだな。偉いぞ」

 

「え、えへへ」

 

 ライに褒められ顔を赤くするなのは。

 

「なのはが使用しているミッド式は中・遠距離の魔法が多い。今回相手にするヴィータは

 ベルカ式という近接戦闘に特化した魔法だ。たから近接戦闘に慣れてもらう必要がある。

 今後はその点を中心に訓練しよう」

 

「分かったの!」

 

 なのはが元気に返事をする。

 

「次にフェイトだが」

 

「はい」

 

「長所である速さを上げるという発想は悪くない。だが、あんなバリアジャケットでは

 防御が無いに等しい。峯岸君のような速さがあるならともかく、あれはあまりいただけないな」

 

「うっ! す、すみません」

 

「だから後で、アビリティリンクを使った裏技を教えてやる」

 

「え?」

 

「それを使えば峯岸君並みのスピードを出す事が出来る」

 

「ほ、本当!?」

 

「ああ、今後はそれを使う練習だな」

 

「分かったよ!」

 

 今より速くなれることに喜び、満面の笑みになるフェイト。

 

「次はアルフだが、まあ言いたいことは既に分かっていると思うが」

 

「ああ、攻撃ばかりやりすぎって言いたいんだろ」

 

「そうだ、だがそれを直す必要はない」

 

「どういう事だい?」

 

「攻撃特化は立派な長所だ。重要なのは間合いだ」

 

「間合い?」

 

「そう、相手の距離感。今回の作戦の目的はザフィーラを倒す事ではない、時間を稼ぐことだ。

 神宮寺君との連携でザフィーラの足止めをすること。だからアルフはつかず離れずの距離を保つ

 必要がある」

 

「なるほどね」

 

「まあ、これからの課題を簡単に言うと神宮寺君との連携訓練だ。それは神宮寺君も同じだ」

 

「「《分かったよ》《分かりました》」」

 

 ライに課題を言われたアルフと神宮寺は返事をする。

 

「では次にスクライア君だが」

 

「はい」

 

「君もタッグであるクロノとの連携訓練になるが、設置型バインドは使わず、防御魔法と

 任意発動型のバインドを中心に使ってもらう」

 

「そうですね。僕の設置したバインドにクロノが引っ掛かったら意味ないですし」

 

 ライから言われたことに同意するユーノ

 

「本来はそれすらも考慮して連携訓練をしたいところだが、流石にそこまでの時間はない。

 設置型バインドの位置を視覚できるこの【トラップウォッチャー】を使えば問題ないが」

 

「そんなものあったんですね……何故使わないですか?」

 

 クロノが少し呆れ気味に言った後、何故使わないのか理由を尋ねた

 

「これは使用中、常に魔力を消費する。クロノの魔力量では長時間の使用は無理だ。

 それに今後のことを考えたら道具にはなるべく頼らないほうが良い」

 

「なるほど」

 

 ライの答えた理由に納得するクロノ。

 

「だから、スクライア君は主にクロノの援護。クロノが動きやすいようにフォローする。

 クロノはシャマルの動きを抑制することを訓練する」

 

「「了解《です》《した》」」

 

「さて、次は桜羽だが」

 

「はい」

 

「先程の戦い、見事だった。まさかその若さでヴィータに勝つと思わなかったぞ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「それにこれといった落ち度も無く、ヴィータにラケーテンハンマーを使わせるように

 上手く誘導していた。それはなのはとの戦いをよく見ていたと言うこと、素晴らしい観察眼だ」

 

「そうだな。高町なんとかと同じ戦い方をされたからラケーテンハンマーでけりをつけられると

 思ったしな」

 

 ライが葵をベたぼめしているとヴィータが口を挟み、なのはが「なのはなのに」と落ち込んでいた。

 

「なのは・桜羽ペアの戦い方としては互いにヴィータを挟む形で距離を取り、中・遠距離から

 攻撃をしてもらう。その場合ヴィータは片方を潰しにかかるはずだ」

 

「まあそうなるだろうな」

 

 ライの説明に対してヴィータが同意する。

 

「ヴィータに詰め寄られないように動いてもらうが、距離を詰め寄られた場合は防御に徹して

 もらう。そして相方が再び距離をとれるよう援護をする」

 

「なるほど、じゃあ私は防御戦術となのはが距離をとれるような援護の訓練になるってこと

 ですね?」

 

「正解だ。やはり君は優秀だな」

 

「そんなことありませんよ。少し考えれば分かる事です」

 

「その少し考えるをできるから優秀なのさ。それは十分誇って良いことだよ」

 

「ありがとうございます」

 

「さて、次はアリシアだ」

 

「は~い」

 

「……」

 

 ライは無言でアリシアに近づくと

 

「ライ?」

 

 

パチン

 

 

 アリシアに軽くデコピンをする

 

「痛った! 何すんの!」

 

「最後のあの自爆は何だ? いくら防御に自信があると言っても、とても褒められた行為

 じゃない。下手をすれば怪我をしていたんだぞ? お前が怪我をすれば悲しむ人がいるのは分かるだろ?」

 

「うっ、ご、ごめんなさい……」

 

 ライに言われてシュンとなるアリシア。ライはアリシアの頭に手を置き

 

「ちゃんと反省しているなら良い。小突いて悪かったな」

 

 アリシアの頭を撫でる。

 

「えへへ」

 

 それに満足そうな顔をするアリシア。

 

「勇気と無謀は別物だ。ちゃんと覚えておくんだぞ」

 

「うん!」

 

「アリシアちゃんばかりズルイの」

 

「姉さん羨ましい」

 

「いや~ライさんモテモテやん」

 

 アリシアを羨ましそうに見る女性陣。

 

「さて、アリシアの模擬戦についてだが、まず魔力弾の弾幕は悪くない。アリシアの長所である

 魔力量を上手く生かしている。威力も申し分無い」

 

「そうでしょ! お母さんを参考にしたんだ~」

 

「流石私の娘ね!」

 

「だが、魔力制御がまだ甘い。適切な魔力が込められてないから、無駄に魔力消費が早く、

 本来の威力を発揮できていない。今後は魔力制御の訓練を中心に行う」

 

「うん、分かった!」

 

「他にもまだまだ改善点があるが、今回はそれだけで良い。最後に峯岸君だが」

 

「はい」

 

「剣技、気と魔力の融合、魔法。実に多彩でそれぞれがとても良く訓練されている。

 俺に二割ほどの力を出させたのは誇っていいだろう」

 

「あれで二割なんですか……喜んで良いのか?」

 

 ライの言葉を聞き、微妙な表情をする峯岸。

 

「いや、峯岸。我々守護騎士が4人がかりで一割しか出させなかったことを考えれば、

 十分誇っていいことだ」

 

 そんな峯岸にシグナムがフォローをする。

 

「だが、とても良く訓練されているが、熟練はされていないな。剣技については太刀筋、剣速は

 悪くないが、もっとフェイントを入れることを意識しろ。それとあの刀は君にはまだ

 長すぎる。あと10㎝は短くしたほうが良い」

 

「そんなにですか? でもそれだと相手に届かなくなりませんか?」

 

「君の剣技は独学か?」

 

「えっと、家に奥義書があってそれを読んでます」

 

「という事は誰かに教えて説いてもらった訳じゃないんだな。その奥義書に刀の長さが

 書いてあったのかも知れないが、それは大人用だったはずだ。子供の君にあったサイズの

 刀にしなければならない」

 

「なるほど。そう言われてみればそうだったかも知れない」

 

「君の体格を考えたら、長すぎるんだ。長いとその分戻りが遅くなる。折角の剣速も意味が無い。

 短くなったリーチは相手との距離を詰めることと気を飛ばすことで補ったほうが良い。

 そうすれば剣速は更に速くなるだろう」

 

「分かりました」

 

「次に気と魔力の融合、咸卦法(かんかほう)だったか? 気と魔力の融合というのは

 良い発想だ。肉体強化、加速、防御などが上昇する素晴らしい技法だ。

 だが、融合の結合率は低すぎる。君のは気と魔力を足しているに過ぎない」

 

「えっと、どういうことですか?」

 

「例えば気を10、魔力を10として、君の結合率では足して20になっているに過ぎない。

 だが、折角気と魔力を融合させるなら相乗効果で掛け算にならなければ意味が無い」

 

 ライはそう言うと左手に魔力、右手に気(オーラ)を出し、

 

咸卦法(かんかほう)!」

 

 

ゴオオオウ!

 

 

 その二つを融合させた。するとライから凄まじい威圧感が発生した。

 

「そ、そんな! 咸卦法(かんかほう)をこんな簡単に!」

 

「こんな感じだ。しかし、使ってみて分かったが先程の上昇に加えて鼓舞、耐熱、耐寒、対毒、

 その他諸々のオマケ付きか、まさに究極の技法だな」

 

 ライは咸卦法(かんかほう)を解いた。

 

「だが、魔力の消費が激しいな。俺の今の魔力量では長時間の使用は厳しいか」

 

「ライさん、貴方は一体何者なんですか? こんなに簡単に咸卦法(かんかほう)を使うなんて」

 

「俺は傭兵だ。それ以上でもそれ以下でもない。分かったと思うが、君の咸卦法(かんかほう)

 結合率が低い、もっと訓練した方が良い」

 

「……分かりました」

 

「次に体を雷化させたあの魔法だが、君はあの魔法のことを分かっていない」

 

「どういうことですか?」

 

「君はあの魔法の使用中、刀を使っていたな。それは何故だ?」

 

「それは俺の打撃では攻撃力が足りないので、攻撃力の底上げのために」

 

「それだ」

 

「え?」

 

「確かにあの魔法のスピードは驚異的だ。だが、攻撃力が低いのが難点だ。

 だから攻撃力を上げるという考えは悪くない。だが、そこで武器を持つ事は間違っている」

 

「え? どうして」

 

「武器は雷化していないからだ」

 

「えっと、意味が分かりません」

 

「体が雷化していることで雷に近い速度で動く事ができるが、刀は別だ。つまり君の速度が

 落ちている。理由は物体に生じる空気抵抗の影響だ」

 

「空気抵抗ですか?」

 

「そうだ。例えば雨があるだろう。あれは空から雨粒が落ちてくる訳だが、それは重力によって

 地面に引っ張られているからだ。そして、雨粒はその重力加速度を常に受け、常に加速

 している」

 

 ライの説明を黙って聞く峯岸。

 

「だが、雨粒は一定の速度まで上がるとそれ以上の速度は上がらない。それは物体の速度が

 上がれば上がるほど空気抵抗が強くなり、重力と、空気抵抗の反対の方向への力が

 同じになるからなんだ」

 

「ふむふむ」

 

「だが、もし雨が高度2000mから空気抵抗無しで降って来た場合の速度は拳銃の弾丸とほぼ同じ

 速度になる」

 

「そ、そんなに!?」

 

「ここまで言えばもう分かったと思うが、君が刀を持って移動するということは刀が空気抵抗を

 受け、速度が落ちているってことなんだ」

 

「そ、そうだったのか」

 

 ライの説明を理解した峯岸は驚愕する

 

「じゃあ、ライはどうしてあんなに速く動けるの?」

 

 フェイトがライに質問をした。

 

「簡単だ。俺は魔力変換資質 風圧を使い、自分の周りを真空状態にして空気抵抗無しで

 動いているからだ」

 

「は? ちょ、ちょっと待ってくれ。色々聞きたいことがあるんだが、魔力変換資質 風圧

 なんて聞いたこと無いぞ?」

 

 ライの衝撃の言葉を聞き、クロノがライに質問する

 

「そうだな。俺も自分以外が持っていると聞いた事は無い。恐らくレアスキル、いや

 ユニークスキルだろう」

 

「そ、そうだったのか。じゃあ次に自分の周りを真空状態にして大丈夫なんですか?」

 

 ライが質問に答えた後、更にクロノは質問を続けた。

 

「え? どういう事なの?」

 

 クロノの質問の意味が分からず、疑問を問い掛けるなのは。それに同意する子供達。

 

「そうだな。簡単に言うと体中の空気が抜けて、窒息死する」

 

「「「「「「「え?」」」」」」」

 

「それか体内に残った僅かな空気が膨張し、体が破裂する」

 

「「「「「「「え!?」」」」」」」

 

 ライが答えた事に驚愕する子供達

 

「だが、俺は自分の体と内臓を魔力でコーティングしているから問題ない」

 

「で、でもそれじゃ呼吸ができないんじゃ?」

 

 フェイトがライに質問する

 

「魔力変換資質 風圧は魔力を空気に変えたり、空気を操る事ができる。体内で必要分の酸素を

 作る事で酸欠になることはない。魔力が続く限り俺は真空の中に居ることができる」

 

『しかも高速自動回復(リジェネレーション)で回復し続けるからほぼ永遠に居れますね』

 

『本当にマジチート』

 

『チートや! チーターや!』

 

『バグでチーターだから、ビーターだ!』

 

「と、とんでもないレアスキルですね。ライさんが強い訳です」

 

 葵がライの強さの理由を理解した。

 

「まあ、それを使って約二割ほどだけどな」

 

「規格外じゃん。ホントなんなのこの人」

 

 ライの規格外の強さに遠い目をする神宮寺。

 

「話を戻すが、刀を持っているから速度が落ちている。かといって打撃だけでは攻撃力が

 足りない。俺の技術を使えば刀を雷化することはできるが、それではただ雷で殴るだけ、

 君の気を使った剣技は使えない。君の剣技は物体に気を纏わせて放つものだからだ」

 

「つまり速度を選べば攻撃力が落ち、攻撃力を選べば速度が落ちるってことですね」

 

「そういうことだ。シグナム達も後半の頃にはなんとなく峯岸の姿が見えたはずだ」

 

「ああ、影程度だったがうっすらとな」

 

「そうだな。目がなれて来たからな」

 

「うむ、あれなら何とか対応できるかもしれん」

 

 ライに聞かれたシグナムが答え、ヴィータとザフィーラが続いた。

 

――どうしよう………私まったく見えなかったわ

 

 しかし、シャマルは見えてなかった。

 

「そういうことだ。それに今回の作戦では君はプレシアさんとリニスとコンビを組んで

 もらうが、君には前衛、リニスは中衛、プレシアさんには後衛をやってもらう。

 だから、君はあの咸卦法(かんかほう)を中心に訓練してもらう」

 

「分かりました」

 

 こうして訓練は無事終了となった。

 

 

零冶 サイド

 

 

 ふぅ、峯岸との模擬戦は疲れたぜ。まったく自分の魔法なのにちゃんと欠点を把握してないとかどうなってるんだよ。バカなの? 死ぬの?

 

『それでもあの速度は十分脅威に値すると思いますがね』

 

『そうだな。しかしまだまだ実戦が足りないな』

 

『まあこれからそれを補う訳ですしね』

 

『ああ、作戦決行までじっくり教えてやるとしよう』

 

 俺は心の中でにんまりと笑った。

 

「うっ!」ゾク

 

「どうしたんだ。春兎?」

 

「いや、今悪寒が」

 

「オカン? お前両親居ないんじゃなかったっけ?」

 

「いや、そのオカンじゃなくて」

 

 おっとどうやら邪気が出てたみたいだ。反省反省。峯岸と神宮寺がそんなやり取りをしていると

 

「あのライさん」

 

 桜羽が話しかけてきた。

 

「どうした桜羽」

 

「この間から気になってたんですけど、なんでライさんは闇の書についてあんなに

 詳しかったんですか?」

 

――もしかしたら転生者だから、あそこまで詳しかったのかもしれない。それを確かめないと

 

 どうやら俺が転生者かどうか疑っているみたいだな…。桜羽の優秀さには何度か助けられたが、正直この勘の鋭さは鬱陶しいな。仕方ない

 

「そうだな。正直話したくはないんだが」

 

――話したくない? やっぱり何かあるのね

 

「まず、俺が闇の書の存在に気付いたのは6月3日の午前0時、はやての誕生日になった瞬間だ。

 その時、微量な魔力反応を感知した。それを確かめてみると一つの魔導書と守護騎士達が

 居たんだ。それからその魔導書を調べると闇の書であることが判明した」

 

「……」

 

 俺の説明を真剣に聞く桜羽。

 

「それから俺ははやて達を観察した。もし魔導書で蒐集活動を行い、力を手にしようと

 するなら、直ぐに処理するためだ」

 

「処理って……」

 

「もちろん殺す事だ」

 

「ッ!」

 

「だが、はやてはそうしなかった。寧ろ守護騎士達を家族として迎え入れ、平和に暮らそうと

 した。だから闇の書について調べたんだ」

 

「それは……無限書庫でですか?」

 

「いや、俺は無限書庫を使うことはできない。管理局員じゃないからな。かといって申請して

 閲覧というのも厳しい。俺は姿を現せないからな」

 

「じゃあ、どうやって」

 

「これは他言無用で頼むぞ。アルハザードだ」

 

「な! アルハザード!? そんなの」

 

「有り得ないか? アルハザードは存在する。虚数空間の中にな」

 

「じゃあ、どうやってアルハザードに?」

 

「俺は探し物をするレアスキルを持っている。それを使ってアルハザードを探し当てた」

 

「ほ、本当に……」

 

「そういうことだ。俺が規格外の技術を持っているのはアルハザードで知識を得たからだ」

 

「……分かりました」

 

「納得したか?」

 

「はい」

 

――分からないわね。もし転生者ならそもそもアルハザートの知識を貰うことが出来るはず、

  なら態々探す必要は無い。やっぱり違うってことかしら?

 

「他に質問は無いかな?」

 

「いえ、まだあります」

 

「何かな?」

 

「ライさんの家族は居るんですか?」

 

――もし転生者なら家族が居ないはず、私のように特典で選ばない限りは

 

 まだ疑ってるのかよ。

 

「いや、俺の家族は俺が小さい時に事故で亡くなった」

 

「え? そうなんですか……すみません」

 

――小さい頃に亡くなったってことは家族が居たって言う事。やっぱり違うってことね

 

「いや、気にしないで良い。大切なものは無くしてから気付くものだ。君は家族を大切にな」

 

「はい、私の力で家族を守って見せます」

 

「う~ん、50点」

 

「え?」

 

「一人の力には限界がある。君は仲間と……友達と一緒に守って行くんだ。後悔しないようにな」

 

「ライさん……はい、分かりました」

 

「うん、よろしい」

 

 俺は桜羽の頭をポンポンと叩いた。

 

「ふふ、ライさんってお兄ちゃんみたいですね」

 

「ん? そうかな? そう言われたのは初めてだな」

 

「そうですよ。私もお兄ちゃんは居ないですけど、居たらこんな感じかなって」

 

「そうか」

 

「はい、あの……いつかお兄ちゃんって呼んでも良いですか?」

 

「ふっ、好きに呼べば良いさ。じゃあな。()

 

「はい、ライ兄さん」

 

 葵はそう言い残し、なのは達のところへ行った。ふぅ、乗り切ったか。

 

『マスター、さっきの家族の話……』

 

『ん? ああ、俺の前世の話だな』

 

『……大丈夫ですか』

 

『何だ? 心配してくれるのか? ミスト』

 

『当たり前です。私はマスターの……家族ですから』

 

『ふふ、ありがとう。ミスト』

 

 こうして模擬戦初日は終わり、俺たちは毎週土日にそれぞれの課題を中心に訓練をしていた。

 

――家族……か。大切なものは近すぎて……当たり前過ぎて、大切だと気付けないものだ。

  だからこそ俺は

 

 

零冶 サイドアウト




 掲載が遅くなってすみませんでした。結局いい制約と誓約が思いつきませんでしたので、そのまま載せます。ですが、良いのが思いついたら修正が入りますので、ご了承願います。


さて、零冶の念能力紹介のコーナーです。

では、次の念能力はこれだ!

19、死者蘇生(レイズデット)
  系統:特質系
  説明:死後1分以内の生物を生き返らせる。
     その仕組みは超常現象ではなく、医療に基づいた治療を行うというもの。
     人は死にいたるのは心臓が停止した瞬間ではなく、心臓が止まることで
     酸素結合した血液を送り出せなくなり、脳に十分な血液と酸素が行き渡らなくなり、
     脳細胞が死ぬかららしいです。
     (私は医療に詳しくありませんので、間違っていたらごめんなさい)
     逆に言えば、脳に酸素結合した血液が行き渡れば、死なないという事です……よね?
     この能力では例えば、心臓が破裂した人に使った場合、
     まず、具現化系で擬似心臓を生成、出血した血液を強化系で増幅、変化系で
     オーラを酸素に変え、血液の酸素結合、操作系で心臓を動かし、
     血液を循環させると行った方法で延命処置をします。
     その後、死の原因である心臓を修復すれば、蘇生完了となります。
     また、放出系能力で離れた相手にも使用が可能となります。

     つまり、この能力は全ての念系統を駆使して、治療をするとなります。
     なので、特質系の分類されます。

  制約
   1、死後1分以内でなければならない
    ※ここで言う死の概念は心臓が停止した瞬間の事とする

  誓約
   なし


 説明にあるとおり、この能力は医療技術や医療知識に基づいて治療を行います。なので、念で可能な範囲であれば、治療が可能となります。

 アリシアの治療について説明をすると、まず、死因は大量の魔力を浴びたことによる魔力汚染です。

 魔力汚染によって、心臓が停止し、脳死に到ったと推測しています。なので、変化系でオーラを酸素に変え、血液の酸素結合、操作系で心臓を動かし、血液を循環させることで延命処置を行い、魔力汚染を取り除けばいいとなります。

 心停止の原因である魔力汚染を取り除いたため、心臓が稼動し、蘇生。と言う流れです。

 この能力に弱点があるとすれば、対象となる死者の脳が無い場合です。それ以外なら、脳に必要な血液を循環することで延命ができ、その後、強化系で体組織の再生などを行い、蘇生が可能です。

 クライドさんを過去に行って助けたのは、体が無かったため、蘇生不可だったからです。


って感じです。では



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