原作を放って置くとバッドエンドになるんですが、どうしたら良いですか?   作:月の光

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更新が遅くなってすみませんでした。

書き終わってみれば文字数18000文字。
過去最大の文字数です。
疲れました。本当に疲れました。
くぅ~疲れました。

二つに割るべきだったでしょうか?
詳しい方教えてください。


30_愛里『スタンプ集めが止められません』零冶『主婦か!?』

 ライがシャマルの料理を食べ、死にかけた翌日、その日にアースラが地球に到着する。はやて達との顔合わせに関する打ち合わせのため、ライはアースラに訪れることにした。

 

「さて、そろそろ行くとするか。ミスト、セットアップ」

 

「……]

 

「ミスト?」

 

[……]

 

「おーい、ミストさんや」

 

[ツーーン]

 

「……お前、もしかして昨日のことまだ怒っているの?」

 

[さあ? 何のことか分かりませんね]

 

「悪かったって、いい加減機嫌直せよ。後でメンテナンスしてやるから」

 

[メンテナンスさえしてれば、私が機嫌を直すと思っているなら大間違いです。

私は深く傷ついたのです。ボイコットです。ストライキです。クーデターです]

 

「何、冗談言ってるんだよ。早くセットアップを」

 

[ふーんだ]

 

「……そうか、本気なんだな」

 

 零冶は感情のこもっていない表情でミストに言った。

 

[え? あっ!? いえ! 冗談です! イッツ ア ジョーク!]

 

「何だ。やっぱり冗談か。お前も俺がこの手の冗談は通じないって知ってるだろ?

 どうしたんだ?」

 

[申し訳ありません。私が感情的になっていました。私のミスです]

 

「そうか? まあ間違いは誰にでもある、気にするな」

 

――うっかりしていました。マスターにこの手の冗談はまったく通じないのでした。

  しかし通じないというのは、それに対して怒るのではなく、ただ本気にしてしまう。

  本気で自分から離れる気なんだと思い、引き止めようと思わない。

  例え付き合いの長い私でさえ、引き止めることをしない。

  来る者を拒み、去るものを追わない……それが私のマスターでした。

 

「では改めて。ミスト、セットアップ」

 

[イエス、マスター。セットアップ]

 

 ミストがそう言うと零冶の体を黒い魔力が包み、ライに変身した。

 

「よし、ミスト。リンディさんに連絡を」

 

[了解しました……マスター、繋がりました]

 

『はい、リンディです。ライさんですか?』

 

「はい、ライです。そろそろこちらに到着するとのことですので、到着した後の事で

 打ち合わせをしたいのですが、よろしいですか?」

 

『はい、大丈夫です』

 

「では、今そちらに向かいます。では」

 

 

ブツッ

 

 

 ライはそう言い残し、通信を切った。

 

『それじゃ、愛里。行って来る』

 

『はい、行ってらっしゃい。寄り道しちゃダメですよ?』

 

『お前は俺のお母さんか』

 

『スタンプ集めが止められません』

 

『主婦か!?』

 

『冗談です。気を付けて下さいね』

 

『ああ、ではな』

 

 ライはリンディに渡した通信機のマーキングに転移した。

 

 

フッ

 

 

「こんにちは」

 

「はい、お待ちしておりました」

 

 ライを迎えるリンディ。

 

「久しぶりね。ライ」

 

「はい、プレシアさんもお元気そうで何よりです」

 

「お久しぶりです。ライ」

 

「ああ、リニスも相変わらず猫耳だな」

 

「どういう挨拶ですか!」

 

「いや、帽子が少しズレて見えてるぞ」

 

「え!」

 

 リニスは慌てて帽子を正す。

 

「……プレシア、気付いていたなら教えてくださいよ……」

 

 リニスは顔を赤くし、プレシアを睨む。

 

「あら、それズレてたの? てっきりワザとなのかと思ったわ」

 

 プレシアは気にした様子も無く言い返す。

 

「あたしもリニスにしては珍しいな~と思ったんだけど、それズレてたんだ……」

 

「私も……」

 

「リニスの耳可愛いよね!」

 

 アルフ・フェイト・アリシアがリニスに言った。

 

「うぅ、恥ずかしいです」

 

 リニスはその場にうずくまった。

 

「なぁ、アルフ。耳って見られるとそんなに恥ずかしいものなのか?」

 

「何であたしに聞くんだい?」

 

「いや、ここで使い魔ってお前だけだろ」

 

「そうだけどさ。そうだね~、別にあたしは気にならないよ」

 

「そうか……ありがとう。それと遅くなったな。久しぶり、アルフ」

 

「あいよ。久しぶり、ライ」

 

 アルフとライが挨拶をする。ライはリニスに近づき、

 

「リニス、気にするな……とは言わん。だが、それは戦いにおいて弱点になりかねないから

 克服した方が良いぞ?」

 

 しらっと変なことを言う。変なことを言ったライを変な目で見るプレシア達。

 

「どうした?」

 

「貴方って……結構鈍感よね」

 

「そうか? 自分では分からないな」

 

「そうだね~ライは鈍感だよね~私の気持ちも気付いてくれないし~」

 

「久しぶりだな、アリシア。だが、そういうのはもう少し大きくなってからにしろ。

 俺は子供には興味ない」

 

「え? そ、そうなの?」

 

「フェイト? 久しぶりだな。その〈そうなの?〉はどういう意味だ? 俺がロリコンだって

 言いたいのか?」

 

「う、ううん。そういう意味じゃなくて。その……どれくらい大きくなったら良いの?

 お母さんくらい?」

 

 フェイトが自分の胸に手を当ててライに確認する。

 

「いや、誰も胸の話はしていないぞ。フェイト」

 

「え? 違うの?」

 

「俺が言っているのは身長や年齢の話だ」

 

「あっ、そうなんだ」

 

「ああ! 天然なフェイト! 可愛いわ! フェイト!」

 

 フェイトの天然ぶりをいつの間にか持っていたデバイスでハァハァ言いながら撮影をするプレシア。

 

「プレシア、落ち着きなさい」

 

 フェイトの天然ぶりに暴走するプレシアを止めるリニス。

 

「さて、地球に到着した後の話をしても良いかな?」

 

「ええ、どうぞ」

 

「では、まず到着予定時刻は?」

 

「はい、エイミィ」

 

「はいは~い、え~とねぇ、後およそ1時間半くらいですね。地球の日本の時間で言うと……

 13時45分くらいです」

 

「分かった。なら到着後、高町なのは、ユーノ・スクライア、桜羽葵、神宮寺王我、峯岸春兎

 以上、5名に協力要請をしてくれ。受けてくれる場合はフェイト、アリシア、アルフで

 迎えに行ってくれ」

 

「分かりました」

 

 ライの言葉に了承するリンディ。

 

「大丈夫、なのは達ならきっと協力してくれるよ」

 

「そう願うよ。それと無理に協力してもらう必要はありません。その時は俺の計画に微調整が

 かかるだけなので。ああ、そういえば…フェイト、それとアリシア。二人は魔力は

 提供してくれるのか?」

 

「あっ、うん。私は良いよ」

 

「うん、オッケーだよ~」

 

「ありがとう。二人とも」

 

 ライは二人にお礼を言い、二人の頭をなでる。

 

「う、うん」

 

「えへへ~」

 

 二人は顔をほんのり赤くして俯いた。

 

「さて、リンディ提督。14時丁度に闇の書の主と顔合わせをします。会議室の準備を

 お願いします。また、召集は主要メンバーだけで構いません」

 

「分かりました」

 

「それと――に声を掛けておいて下さい」

 

「そ、それは……」

 

「彼等には十分時間を与えました。ここであの子に会っておかなければ次に会う機会は

 大分後になるでしょう。最悪機会は訪れません。その事も踏まえて彼等に伝えて下さい」

 

「……分かりました」

 

「よろしく頼みます。それとこちらの報告ですが、闇の書のページは現在562ページ程

 埋まっています」

 

「も、もうそんなに埋まっているのか」

 

 クロノがライに確認する。

 

「はい、後はアリシア、フェイトの二人から蒐集すれば、およそ80ページ埋まるでしょう

 そうすれば640ページ前後は埋まる。残りは魔法生物から蒐集するかなのは達に魔力提供を

 お願いしようと考えています」

 

「では、数日の内には完成するという事か……」

 

「いや、完成予定は12月上旬か中旬まで引っ張るつもりです」

 

「何? それは何でですか?」

 

 クロノがライに質問する。

 

「それについては闇の書の主達との顔合わせの時に話します。では、打ち合わせは以上です。

 さて、時間が余ったな……」

 

「ならライ、私達とお話しようよ」

 

「そうだな。13時55分になったら闇の書の主達を迎えに行く。それまでは話でもして待つか」

 

「やったー! じゃあねじゃあねぇ……ライの好きな女性のタイプを教えて」

 

 アリシアの質問によってテスタロッサ一家の全員がピクリと反応する

 

「好きな女性のタイプ? 随分唐突だな。これといってこだわりは無いな。どんな女性にも

 魅力はあるものだ」

 

「ぶ~、何か無いの? 髪が長いのが好きとか、金髪が良いとか、胸は大きいほうが良いとか」

 

 ライの回答に対し、納得がいかないアリシアはライに聞いた。

 

「特には無いな」

 

「うぅ~、そうだ! 私達の中では誰が一番好き?」

 

 アリシアの質問にさっきよりピクリと動くテスタロッサ一家達。

 

「それはまた難しい質問だな。さっきも言ったがどんな女性にも魅力はある。

 例えばプレシアさんは、容姿はとても整っているし、母性的で包み込むような優しさがある」

 

 ライに言われて顔を赤くしたプレシアは恥ずかしさを紛らわすため、軽く握った左手を口元に当てて「こほん」と咳払いをする。

 

「リニスは童顔だが、それに伴って可愛らしさがあり、責任感も強く相手を支えることが

 できるからとても頼りになる」

 

 両手で頬に当て、「可愛らしい」と呟きながら、顔を赤くするリニス。

 

「アルフは目が少し鋭いが、美人の部類に入るだろう。フェイトに対して献身的に尽くす所も

 とても魅力的だ」

 

 顔赤くしながら、右手で頬を掻くアルフ。

 

「フェイトは少し天然だが、例え敵でも相手を思いやる優しい心を持っている」

 

 フェイトは顔を赤くしてアウアウと言いながら俯いた。

 

「そしてアリシアは」

 

「うんうん!」

 

「元気がある」

 

「それだけ!」

 

「大丈夫さ、元気があれば何でも出来る!」

 

「1、2、3、ダァー! って違うよ! もっと何かあるでしょ!」

 

 ライのフリにノリノリで答えたアリシアだったが、不満な顔でライに抗議する。

 

「はっはは! 冗談だよ! アリシアの笑顔は皆に元気を与えてくれる。まるで太陽のようだ。

 その笑顔は他の誰にも無い魅力だよ」

 

「えへへ~」

 

 顔を赤くし、満面の笑顔でライに抱き付くアリシア。

 

「だから、この中で誰が好きかと聞かれても答えられないさ。皆、とても魅力的なんだから」

 

 その言葉を聞き、テスタロッサ一家は顔を赤くし、ポーっとなった。

 

『上手く誤魔化せたか?』

 

『そうですね。話()逸らせたんじゃないでしょうか?』

 

『助かったぜ!』

 

『だが、勘違いは加速する』

 

 それからライはしばらくして復活したテスタロッサ一家達と雑談をし、アースラが地球に到着した後、なのは達に連絡を取った。幸い日本は日曜の休日だったため、5人に連絡がついた。そして、状況説明のため、全員集まる事になった。

 

 アリシア、フェイト、アルフの3人はなのは達に会いたいということもあり、一度海鳴市に行き、状況の説明をする事となった。説明のフォローはオペレーターのエイミィが行う事になった。

 

 そして、

 

「時間だな。それでは闇の書の主達を迎えに行って来る」

 

「分かりました。私達は会議室に行っています」

 

「了解。闇の書の主達と一緒にそちらに転移します」

 

 ライははやてに渡している通信機に施してある飛雷神の術(ひらいしんのじゅつ)のマーキングに転移した。

 

 

 

~八神邸にて~

 

 

「そろそろ時間やな。あかん、緊張してきた」

 

「主はやて、落ち着いて下さい」

 

 そわそわしているはやてを落ち着かせようとするシグナム。

 

「そうだよ、はやて。ライも居るんだし、大丈夫だって」

 

「せやけど、緊張するなって言うほうが無理あるで。失礼な態度とったら、この話無しって

 なるかもしれんし……」

 

 ヴィータにも気を遣ってもらったはやてだが、あまり効果はなかった。

 

「ライが信用できるって言っている人たちならそんなことにはならないと思うけど……」

 

「せやかて、工藤……」

 

「工藤って誰ですか? 主」

 

 シャマルの言葉も空しく、落ち着かないはやて。しかし、こんな時でもネタに走る事を忘れないのは似非でも関西人の血が流れているからなのか。そして、突っ込みを入れるザフィーラ。

 

「ネタに走るくらい余裕があるじゃねぇか、バーロー」

 

「いやな、こういうときはネタにでも走らんと落ち着かんねん」

 

「そういうもんか?」

 

「せやねん……って! ライさん! 何時の間に!」

 

「〈そろそろ、時間やな〉の辺りからだ」

 

「そ! そんな前から居ったん! 気付かんかったわ~」

 

「てか、あたしも今まで気付かなかったぞ……」

 

 ヴィータが驚いた顔で言った。

 

「気配を消していたからな」

 

「これほど接近されても気付けないとは……不覚」

 

 シグナムが片膝を突き、俯きながら言った。

 

「ザフィーラも気付かなかったの?」

 

「ああ、匂いもしなかった……」

 

 シャマルがザフィーラに確認し、ザフィーラが答える。

 

「さて、14時になったら転移するが、準備は良いか?」

 

「ちょ、ちょっと待って。菓子折りはオッケー……ああ、こんな私服で大丈夫やろか……

 やっぱり皆と同じようにバリアジャケット考えてたほうが良かったやろか……

 台所の元栓しめたやろか……それから」

 

 再び、慌て出すはやて。

 

「はぁ~」

 

 ライは一つため息をつき、はやての前に立つ。

 

「ライさん?」

 

 そして、片膝を突き、はやてと同じ目線まで腰を落とし、はやての頭に手を置く。

 

「緊張するなとは言わんが、まずは落ち着け。格好はそのままで大丈夫だ。

 ミゼットと会った時と同じように振る舞っていればいい」

 

「う、うん……」

 

 はやては顔を赤くして俯き、答えた。

 

「落ち着いたか?」

 

「うん……」

 

 別の意味で緊張しているはやてに気付かないライ。

 

「はやてちゃん、良いなぁ」ボソ

 

「どうした? シャマル?」

 

「な、なんでもないわ。気にしないで」

 

 シャマルは羨ましそうな顔して、はやてを見ていた。そして、様子がおかしいシャマルに確認するザフィーラ。

 

「よし、14時になったら転移する。守護騎士達も準備は良いな?」

 

「「「「ああ《ええ》」」」」

 

 ライに確認され、答える守護騎士達。そして……

 

「……時間だ。俺の傍に集まってくれ」

 

 ライに言われて、ライの傍に集まるはやて達

 

「では、行くぞ」

 

 ライは飛雷神の術(ひらいしんのじゅつ)を発動させ、はやて達と共にその場から転移した。

 

 

~アースラにて~

 

 

 ライははやて達を連れて次元戦艦アースラの会議室に転移した。

 

 

フッ

 

 

「お待たせしました」

 

「時間ぴったりですね。流石です」

 

「褒めても何もでませんよ。さて、俺が仲介役を引き受けよう」

 

 ライはリンディ達とはやて達の間に立ち、紹介を始めた。

 

「では、まず管理局側の紹介からだ。こちらが時空管理局次元航行艦アースラの艦長、

 リンディ・ハラオウン提督だ」

 

「はじめまして。リンディです。よろしくお願いしますね」

 

 ライの紹介と共に一歩前に出て挨拶をするリンディ。

 

「続いて、時空管理局執務官クロノ・ハラオウン」

 

「クロノです。先ほど紹介のあったリンディの息子です。よろしく」

 

 リンディに続いて挨拶をするクロノ。

 

「時空管理局一等陸海空士プレシア・テスタロッサ」

 

「プレシアよ。よろしくね」

 

 やわらかく微笑みながら挨拶をするプレシア

 

「プレシア・テスタロッサの元使い魔リニス。現在の主はプレシアの娘の

 アリシア・テスタロッサだが、今は所用でここには居ない」

 

「リニスです。よろしくお願いします」

 

 行儀良く丁寧に挨拶をするリニス。

 

「他にも紹介したい人は居るのだが、今は所用で出ている。また後で紹介しよう。

 次は闇の書側の紹介だ」

 

 ライは一呼吸おいて紹介を続ける。

 

「こちらが現闇の書の主八神はやてだ」

 

「ど、どうも。闇の書の主のはやてです。よろしくお願いします。

 これ、つまらないものですが……」

 

 挨拶をした後、菓子折りを渡すはやて

 

「これはこれはご丁寧にどうも」

 

 はやてから出された菓子折りを受け取るリンディ。

 

「続いて、剣の騎士シグナム」

 

「シグナムだ。よろしく頼む」

 

 相手をまっすぐ見つめたまま挨拶をするシグナム。

 

「鉄槌の騎士ヴィータ」

 

「……ヴィータ……です」

 

 愛想悪く挨拶をするヴィータ。

 

「もう少し愛想を良くしろヴィータ。可愛い顔が台無しだぞ?」

 

「うっせ。あと可愛いとか言うな」

 

 ライはヴィータを注意するが、うるさいと一蹴される。そして可愛いと言われたヴィータは少し顔を赤くする。

 

「……アイス無し」

 

「ヴィ、ヴィータです♪ よろしく♪」

 

 ライにアイスのことで脅され、少し引きつった笑顔で挨拶をするヴィータ。ころっと態度が変わったヴィータにリンディ達は呆然となった。

 

「はい、良く出来ました」

 

 ライはヴィータの頭を撫でながらそう言った。

 

「アイス忘れんなよ」

 

「分かってるって。すみません、少し脱線させてしまいました。紹介に戻ります。

 続いて、湖の騎士シャマル」

 

「シャマルです。はやてちゃん共々よろしくお願いします」

 

 にこりと笑顔を作り、挨拶をするシャマル。

 

「あれだよ、ヴィータ。シャマルを見習え」

 

「しつけぇよ」

 

「ふふ、まったく」

 

 軽く笑いながらヴィータの頭をポンポンと叩くライ。そしてまんざらでもない顔で笑顔を作るヴィータ。

 

「最後に盾の守護獣ザフィーラ」

 

「ザフィーラだ。今は人間形態だが、普段は狼の姿になっている。よろしく頼む」

 

 ザフィーラが軽く会釈をし、挨拶をする。

 

「では、紹介は終わりだ。それと」

 

 紹介が終わったライはリンディの方をちらりと見る。それに気付いたリンディは小さく頷いた。

 

「最後にはやて、君に会わせたい人が居る」

 

「会わせたい人?」

 

「ああ、リンディ提督」

 

 ライがリンディに声を掛ける

 

「分かりました」

 

 リンディがライの言葉に了承した後、通信機で連絡を取る。そして、数十秒後、会議室の扉がノックされた。

 

「どうぞ、お入り下さい」

 

 リンディはノックした相手に入るように促すと扉が開いた。そして、そこから一人の高齢の男性と二人の若々しい猫耳の女性が入ってきた。

 

「はやて、こちらはギル・グレアムさん。時空管理局提督だ。そして後ろの二人は、右が

 リーゼアリア、左がリーゼロッテ。二人はギル・グレアム提督の使い魔だ」

 

「え? ギル・グレアムってもしかしてグレアムおじさん? 何でここに居るん?

 それに時空管理局提督って」

 

「はやて君、私がそのギル・グレアムだ。今日はその事で君に会いに来たのだ」

 

「本物のグレアムおじさんなん? ライさん、どういうこと?」

 

「それについては私から話をする。実は」

 

 その後、ギル・グレアムから衝撃の真実が告げられた。元々はやての両親の知り合いでもないこと。11年前の闇の書事件で失った部下の復讐のため、両親の知り合いだと偽ったこと。そして、復讐のため、はやてを利用して見殺しにしようとしたことが語られた。

 

「11年前の闇の書の事件で亡くなったクライドさんの復讐のため、

 私を闇の書ごと永久凍結封印をするつもりだった……」

 

「そうだ……私は自分の復讐のため、君を騙し、あろうことか殺すつもりだった。

 決して許されることではないのは分かっている。私の自己満足に過ぎないのも分かっている。

 だが、それでも言わせて欲しい。本当に申し訳なかった」

 

 ギル・グレアムは深く頭を下げ、はやてに許しを請う。

 

「私達もお父様と同じ気持ちです。本当に申し訳ありませんでした」

 

 続けてリーゼアリアが頭を下げる。

 

「申し訳ありませんでした」

 

 最後にリーゼロッテが頭を下げる。

 

 しばらくの間、沈黙がその場を包む。そして、はやては口を開く。

 

「グレアムさん、頭を上げて下さい。リーゼアリアさんとリーゼロッテさんも」

 

 はやてに促され頭を上げるグレアム達。そして、本人達にとって信じられないものが目に映った。そこには優しく微笑んでいるはやての笑顔あった。

 

「私、全然怒ってません。少しビックリはしましたけど。それと、本当のこと話してくれて

 ありがとうございます」

 

 はやては頭を下げる。

 

「止してくれ。君にそんなことを言って貰える資格など、我々には無いのだから」

 

「いえ、そんなことありません。私、両親が死んでからずっと一人でした。でもグレアムさん

 との手紙のやり取りが心の支えでした。今日は手紙が届いてないかな? っていつも楽しみに

 していたんです」

 

「……」

 

「だから、その……これからも私のおじさんで居てくれませんか? お願いします」

 

 微笑みながら右手を差し出すはやて、

 

「ッ!? ああ、もちろんだ。本当にありがとう! ……ありがとう」

 

 涙を流しながらはやての手を迷い無く取るグレアム。

 

「お父様……良かったです。はやてさん、本当にありがとうございます」

 

「私からも……許してくれてありがとう」

 

 リーゼアリアとリーゼロッテも少し涙目になりながら、はやてにお礼を言う。

 

「でも、クライドさんのことは本当にすみません。現闇の書の主として謝罪します。

 それにハラオウンって」

 

 はやては顔を暗くしてクライドのことを謝罪する。そして、ハラオウンで察したはやてはリンディとクロノを方を見る。

 

「はい、私の夫でクロノの父です」

 

「やっぱり……そうしたら闇の書はお二人の」

 

「仇と言う事になりますね」

 

「そんな……ライさんはそのこと分かっていたんやろ?」

 

「ああ、知っていた」

 

「どうして? 二人には辛いことやろ? 何で闇の書の担当に推したん?」

 

「はやてさん、11年前の事件は貴方とは関係ありません。私達は自分の意思で闇の書を……

 貴方を救いたいと思ったのよ」

 

「関係ないなんてことありません。経緯はどうあれ、私は今の闇の書の主です。

 過去にあったことであれ、私はその責任を取らないといけないと思っています」

 

 リンディに気にしないよう言われたはやてだったが、はやては自分の意見を言った。

 

「はやてさん、貴方は本当に優しい子ね。でも……」

 

 リンディはライをちらりと見るとライは小さく頷き、口を開いた。

 

「はやて、クライド・ハラオウンのことは気にするな」

 

「気にするなって、いくらライさんでも今のは聞き流せんで」

 

 はやてはライの言葉に怒りをあらわにする。

 

「そうは言うが、死んでいない以上、そこまで気にする必要はないと思うが?

 まあもちろん、行方不明だった期間のことは気にする必要はあるだろうが」

 

「へ? 死んでいないってどういうこと?」

 

 ライからの意外な言葉が理解できないはやて。

 

「ああ、実はな」

 

 そしてライから更に信じられないことが告げられた。

 

「過去に行くレアスキルでクライドさんが死ぬ前に助けて、地球に匿ってた?」

 

「そういう事だ。だから、クライド・ハラオウンは生きている。そしてその事はここに居る

 全員に話しているし、既に面会済みだ」

 

「……もうライさんのすることに驚く事は無い思っとったけど、もう何でありか!

 本当にありがとう!」

 

 ライの人外っぷりに呆れつつ、器用に少し切れたようにお礼を言うはやて

 

「お前って何でも出来るんだな」

 

 ヴィータが呆れた顔でライに言う。

 

「何でもは出来ないさ。出来る事が出来るだけだ」

 

 どこかの猫物語の猫娘のように言うライ。

 

「それにクライドさんのことは今後の闇の書の救済の障害になると思ったからやっただけだ。

 礼を言われるような事じゃない」

 

「そんなことはありません。理由はどうあれ、貴方のおかげで私達はクライドさんと再会できた

 のですから、本当にありがとうございました」

 

「ならその言葉、素直に受け取っておこう」

 

 ライがお礼を受け取ったとほぼ同時に通信が入る。

 

『艦長、エイミィです。なのはちゃん達に状況説明して、アースラに来てもらいました。

 これからどうします?』

 

「分かりました。こちらに来てもらって下さい」

 

『りょ~かい』

 

 エイミィからの連絡が終わり、しばらくすると会議室の扉がノックされる。

 

「どうぞ」

 

≪失礼します≫

 

 リンディが入るよう促すと、はやてと同年代の子供達と二人の女性が入ってきた。

 

「さて、しつこいが紹介をしよう。こちらの女性は時空管理局執務官補佐エイミィ・リミエッタ。

 このアースラのオペレータでクロノの補佐だ」

 

「エイミィで~す。よろしくね」

 

「エイミィ、もっとちゃんとしろ」

 

 エイミィを注意するクロノ。

 

「このお堅い執務官の補佐です。そんなんだから真っ黒クロノ助って言われるんだよ?」

 

「君が柔らかすぎるんだよ。それに色は関係無いだろ。あとそんなこと言われたこと無い」

 

「え? 知らないの?」

 

「え?」

 

「え?」

 

 クロノとエイミィは何言ってるんだこいつという顔で問いかける。

 

「まあ、このように夫婦漫才ができるくらい仲が良い」

 

「「誰と誰が夫婦だ≪ですか≫!」」

 

「え?」

 

「「え?」」

 

≪何これ怖い≫

 

「さて、紹介に戻るぞ。この子は高町なのは。管理局員では無く、民間協力者だ」

 

「高町なのはです。よろしくお願いします。なのはって呼んでね」

 

「今回の闇の書救済で俺が協力を要請した。まだ小さいが、魔導師としてはとても優秀だ。

 それにはやてと同い年だから仲良くしてくれ」

 

「小さい……」

 

 小さいと言われて少し落ち込むなのは。

 

――この反応…もしかしてなのはちゃんもライさんのことを? ライさんモテモテやん。

  こんな仮面をした人のどこがいいんや? 人のこと言えんけどな

 

「(仮面は関係無いだろ)続いて、ユーノ・スクライア。なのはと同じ民間協力者だ」

 

「ユーノ・スクライアです。スクライアは部族でユーノが名前です。よろしく」

 

 ユーノが挨拶をする。

 

「男の娘?」

 

「何だか聞き捨てならない事を言われた気がするけど、僕は男だよ」

 

 はやての言葉に反論するユーノ

 

「まあ、趣味は人それぞれだからさ」

 

「ちょっと! まるで僕が変な趣味を持っているような言い方しないでよ!」

 

 ライが言った言葉に過剰に反応するユーノ。

 

「別にユーノのことを言った訳じゃないさ。君がスクライアの部族に居たころに告白された

 ことがあっただろ? 男に」

 

「え? 何で知ってるの?」

 

「しかも、君を男だと分かっていて告白したんだよな?」

 

「だから! 何で知ってるの!」

 

「さて、何ででしょう?」

 

「何これ! 怖いよ!」

 

 ニヤリと笑うライにその場に居た全員が怖いと思った。

 

「っと、このようにからかい甲斐がある。仲良くしてやってくれ」

 

「折角忘れてたのに……どうして僕ばっかり……良いんだ。どうせ僕なんか、僕なんか……」

 

「元気出せよ。ユーノ」

 

「そうだ。きっと良いことあるさ」

 

 ライにからかわれていじけるユーノ。それを慰める神宮寺と峯岸。

 

「悪かった。ユーノ、後で絶版になった本やるから」

 

「もうしょうがないな~」

 

「「なんでやねん!」」

 

 ライの言葉で一瞬で機嫌を直すユーノと漫才のように突っ込みを入れる神宮寺と峯岸。

 

「さて、紹介に戻ろう。民間協力者の桜羽葵だ」

 

「桜羽葵よ。よろしくね」

 

 ライに紹介されて挨拶をする葵。

 

「彼女は少し大人びているがはやてと同い年だ。それに魔導師としてもとても優秀で

 既に魔導師ランクはAAAからSほどはあるだろう」

 

「ほう」

 

 ライの紹介に反応を示すシグナム

 

「そんなことありませんよ。私なんてまだまだです」

 

「とまあこのように子供っぽくない。それに勉強も出来るし、運動神経も良い。

 非の打ち所は少しシスコン気味なところだ。仲良くやってくれ」

 

「家族ですから、好きで当然です」

 

「次は神宮寺王我君だ」

 

「神宮寺王我です。よろしく」

 

「彼は高い魔力と強力なレアスキルを持っている。まだそれに見合った実力はついていないが、

 現在修行中だ。ちゃんと修行すれば、将来管理局でも指折りの魔導師になるだろう」

 

「そ、そうすっか、いや~照れるな」

 

「だが、このように直ぐに調子に乗るのが欠点だ」

 

 ライに指摘され、ず~んと落ち込む神宮寺

 

「次は峯岸春兎君」

 

「峯岸春兎だ。よろしくな」

 

「彼も現在修行中だ。以上」

 

「短いな! それだけかよ!」

 

「さて、次は「無視ですか!」」

 

 ライにあっさりとした紹介をされ、落ち込む峯岸。

 

「この子はアリシア・テスタロッサ。さっき紹介したプレシアさんの娘でリニスの主だ」

 

「アリシアだよ~。よろしくね~」

 

 元気良く挨拶をするアリシア。

 

「この子もさっき紹介した二人ほどでは無いが高い魔力を持っている。こんななりでも

 はやてと同じ年だ」

 

「こんななりって、レディに対して失礼だよ!」

 

「レディ(笑)のアリシアだ」

 

「(笑)が余計だよ!」

 

「はいはい、ごめんごめん」

 

 アリシアの頭を撫でながら謝るライ。

 

「えへへ~」

 

――どう見ても親子にしか見えんけど、アリシアちゃんのあの顔を見る限り、ライさんに好意を

  持ってそうやな。一体何人落としとるんや、ライさん

 

「次はこの子だ。フェイト・テスタロッサ。アリシアと同じでプレシアさんの娘だ。

 アリシアが姉に当たる」

 

「フェイトです。よろしくね?」

 

「アリシアと違ってしっかりものだ。少し天然だが」

 

「そ、そんなこと無いよ。それと私は天然じゃないよ?」

 

≪いや、フェイト《ちゃん》は天然だ《よ》?≫

 

「皆、ひどいよ!」

 

「ああ、弄られるアリシアもフェイトも可愛いわぁ」

 

「もう好きになさい」

 

 プレシアの親バカが発動し、諦めた様子のリニス。

 

「そして最後に、フェイトの使い魔であるアルフだ」

 

「アルフだよ。よろしく頼むよ」

 

「ザフィーラと同じ狼型の使い魔だ。仲良くすると良い」

 

「うむ、よろしく頼む」

 

 そして、そのまま闇の書側の紹介をしたライ。

 

「さて、紹介は終わりだ。これで主要メンバーは全員揃った。このまま、今後の動きについて

 話をしたいが、良いだろうか?」

 

「はい、構いません。お願いします」

 

「では、俺が議長を務めさせて頂きます。皆さん着席を」

 

 ライに促され、その場にいた全員はそれぞれ会議室の席に着席した。

 

「ではこれより、闇の書救済の会議を始めます。では、まず闇の書がどういうものかは

 全員把握しているかな?」

 

 ライはその場の全員を見回す。

 

「では詳しい説明は省きます。皆さんご存知の通り、闇の書は元々、夜天の魔導書と

 呼ばれており、対象の魔力を蒐集し、666ページを埋めることで覚醒をします。

 ですが、その魔導書にバグが存在し、覚醒と同時に主を取り込み、破壊を撒き散らす

 化け物に変貌します」

 

 ライの言葉を聞き、真剣な面持ちになる面々。

 

「そのバグを修正しようにも外部から闇の書に干渉すると主を取り込み転生するため、

 修復は不可能、主自身も闇の書に干渉できるのは覚醒をしてからになります」

 

「そう聞くと絶望的ね」

 

 ライの説明に独り言を言うプレシア。

 

「ですが闇の書、いや防衛プログラムが主を完全に取り込むまでにはおよそ30分ほどの

 タイムラグが存在します。その間に防衛プログラムを闇の書から切り離すことができれば、

 主が取り込まれることはありません」

 

「たったの30分か」

 

 今度はクロノが反応する。

 

「だが、闇の書覚醒後、主は一度闇の書に取り込まれ、表に管理人格(マスタープログラム)という闇の書を管理

 している管理プログラムの人格が現れます。簡単に言うともう一人の守護騎士です」

 

 全員がライの説明を真剣に聞いている。

 

「しかし、この管理人格も防衛プログラムのバグに侵食されており、自身を制御することが

 できません。防衛プログラムほどではありませんが、周りへの破壊活動を始めます」

 

「あの、その間はやてちゃんはどうなっているんでしょうか? 無事なの?」

 

 ライの説明に疑問を持ったなのはが質問した。

 

「その間はやては闇の書に自身が望む幸せな夢を見せられ、眠っている。だから、はやてが

 闇の書に干渉することはできない。生きてはいるが、とても無事とは言えないな」

 

「そっか……」

 

 少し顔を暗くするなのは。

 

「そして管理人格及び防衛プログラムを弱らせることで主への干渉を弱めることができます。

 そうすれば、はやては目覚めやすくなる。更に俺の作ったワクチンプログラムを使用すれば、

 防衛プログラムの機能を低下させ、はやてを完全に取り込むまでの時間を稼ぐ事ができます」

 

「そこまで分かっているなら、ライさん一人でも何とかなるんじゃないですか?

 正直ライさんの強さならその管理人格を弱らせることができるんじゃ?」

 

 峯岸がライに質問をする。

 

「確かに俺一人で管理人格を弱らせることは可能だ。しかし、問題があるから君達に協力を

 要請したんだ」

 

「問題ですか?」

 

 今度は葵がライに聞いた。

 

「ああ、まず一つ目の問題は守護騎士達だ。管理人格が表に出てくれば、守護騎士達の

 制御は管理人格に移行される。つまり守護騎士達が敵になる」

 

「そうか、流石にライさんでも5対1はキツイよな」

 

 ライの説明を聞き、納得する神宮寺。

 

「いや、それは大した問題じゃない。正直俺なら守護騎士全員と管理人格を相手にしても

 余裕で勝てる」

 

≪は?≫

 

 ライの信じられない言葉に八神一家以外の全員が呆然となる。

 

「せやな、守護騎士四人とライさん一人で模擬戦したときなんか、一割の力で圧倒してたもんな」

 

「そうだな。悔しいが、手も足も出なかった」

 

「てか、もうライとは戦いたくねぇな」

 

「本当に敵じゃなくて良かったわ」

 

「うむ」

 

 ライに同意する八神一家。

 

「話を戻します」

 

≪どうぞ、ライ様≫

 

 ライが話し始めると畏まる面々。

 

「様は止めてくれ。次の問題だが、これが君達に協力を要請した理由でもある」

 

「一体何が……」

 

 見当もつかないユーノが言葉を漏らす。

 

「俺の作ったワクチンプログラムは闇の書の中からでないと起動できない。つまり、

 一度闇の書に取り込まれなくてはならないということだ」

 

≪ッ!?≫

 

 ライから発せられた言葉にその場にいた全員が驚きを隠せなかった。

 

「そして、これを起動できるのは俺だけ、だから闇の書が覚醒したら、俺はわざと闇の書に

 取り込まれる予定だ」

 

「そ、そんな! 危険だよ! ライ!」

 

 淡々と説明するライに声を荒げるフェイト。

 

「危険は承知だ。だが、これが一番成功率が高い」

 

「で、でも!」

 

「フェイト、落ち着きなさい。ライも勝算も無しにこんな事はしないはずよ」

 

「流石ですね、プレシアさん。このワクチンプログラムを起動すれば、防衛プログラムの機能を

 90%ダウンさせることができます。そうすれば管理人格もはやてを起こすことができるでしょう。

 俺の見立てでは、この作戦は87%の確率で成功します」

 

「87%か……少ないな」

 

 ライの告げる確率に難しい顔をするクロノ。

 

「そうですね。命を懸ける確率としては87%は低いと言えるでしょう。ですが、それは俺一人で

 やった場合の話です。さっきも言いましたが、管理人格を弱らせることではやては目覚め

 やすくなります。皆さんにお願いしたいのは、俺が居ない間の管理人格及び守護騎士達の

 相手です」

 

「なるほど、そこでさっきの問題が出てくる訳ですね」

 

 ライの説明に察したようにリニスは頷いた。

 

「そうです。守護騎士達が敵になるから、その相手をする戦力が必要だった。

 現在闇の書側の戦力は5人、管理局側の戦力は13人。管理局側に数の利があり、

 ここに居る人たちは全員優秀です。ちゃんと準備をすれば、問題なく渡り合えるでしょう。

 これで成功率は98%になると思っています」

 

 ライの説明に全員が納得したように頷いた。

 

「そして残り2%ははやてが幸せな夢に負けてしまった場合の確率です。ですが俺はその心配を

 していません」

 

「え?」

 

「この子は強い子です。きっと目を覚まします。少なくとも俺はそう確信しています」

 

「い、いや~そんなに褒めんといて下さい。恥ずかしいです」

 

「ですが、万が一失敗した場合は俺ごとアルカンシェルで葬って下さい」

 

≪な!?≫

 

 ライの言葉に驚きを隠せない管理局の面々。

 

「え? アルカンシェルって何?」

 

 分からないはやてはアルカンシェルについて聞き、なのはやフェイト達も分からない顔している。

 

「……アルカンシェルは管理局の中でも屈指の殲滅力を誇る大規模な魔導砲だ。

 着弾地点の空間歪曲と反応消滅で対象を殲滅する。その効果範囲は中心に百数十キロに

 も及ぶ。過去何度も闇の書を葬って来た魔導砲だ」

 

「だ、ダメだよ! そんなの! それじゃライさんもはやてちゃんも死んじゃう!」

 

「はやては目覚めるのに失敗した時点でもう助からない。俺は一応脱出する事は出来るが、

 俺は今回の闇の書の総責任者だ。失敗の責任を取らなくてはならない。もちろん死ぬ事は

 責任を取ることではないが、はやてを一人で死なせる訳にはいかないさ」

 

 ライははやての方を向き、言葉を紡ぐ

 

「お前を一人にはさせない。お前が死ぬ時は俺も一緒に死んでやるよ。はやて」

 

 ライにそう言われたはやては顔を真っ赤にして口をパクパクさせている。

 

「いや~まさか生のプロポーズをこの目で見れるなんて思わなかったな~」

 

 顔を少し赤くし、感想を言うエイミィ。そのエイミィの言葉で復活する女性陣

 

「ちょ! ちょっと待ってよ! ライ! 子供には興味ないって言ってたじゃん!

 なのにはやてを選んだの!」

 

 慌てるように言うアリシア。

 

「そ、そうだよ! それにはやてで良いなら私達でも良いはずだよね!」

 

 アリシアに続くフェイト

 

「フェイトちゃん! 何言ってるの! 何時の間にそんな大胆発言ができるようになったの!

 あと私も混ぜて下さい! お願いします! あれ? 私まで何言ってるんだろう?」

 

 フェイトの変わり様に驚きを隠せず、さらに自分の発言にビックリするなのは。

 

「ふふふ、3人ともダメよ? こういう時は優しく聞くものよ。さぁ、教えてくれるよね?」

 

 優しい雰囲気を纏いながら三人を嗜めていたプレシアが、一転して鋭い眼光でライに聞く。

 

「私も気になります。私、気になります!」

 

 大事なことだから二回言ったリニス。二回目はどこかのアイスクリームのヒロインのようだった。

 

「あたしにも教えてくれるよね?」

 

 アルフがすごんで聞いてくる。

 

「さて、会議を続けるぞ」

 

 ライは特に気にした様子も無く、話を続けた。

 

「この状況を無視できるってすげぇ……」

 

 ライの態度に尊敬する神宮寺。

 

「僕には……無理だ!」

 

 某骸骨仮面のように言うユーノ。

 

「カオスだなぁ~」

 

 我関せずの峯岸。

 

「ライさんモテモテですね」

 

 葵が微笑ましいものを見ているかのように言った。

 

「ん? 桜羽、君は以前より物腰が柔らかくなったな。どうした? 好きな人でも出来たか?」

 

「な! そ、そんなこと無いことも無いですけど………」ゴニョゴニョ

 

 ライに指摘され、顔を少し赤くして言葉を濁す葵。

 

「ライ! 話を逸らさないでよ!」

 

「そうだよ! 何ではやてにプロポーズしたの!」

 

 アリシアとフェイトがライを問い詰める。

 

「はぁ~、そもそも何故さっきの言葉がプロポーズになる? 一緒に死んでやるだぞ?

 一緒になろうならともかく」

 

「あれ? そういえば……」

 

「それも……そうね」

 

 なのはとプレシアが冷静になった

 

「でも……ほら、ヤンデレって言うものが」

 

 リニスがライに指摘する。

 

「何故お前がヤンデレを知っているのかは、この際置いておこう。

 そしてヤンデレって言うのは《好きな相手を殺してでも自分の物にする》というほど

 心が病んでいることを示す。今回のこのことには当てはまらない」

 

 ライはリニスの指摘に対し冷静に分析し、回答する。

 

「何だ、あたしの早とちりか……良かった」

 

 ライの言葉に納得して冷静になるアルフ。

 

「そ、そっか、私の勘違いか」

 

「そ、そうだよね。でも」

 

 誤解が解けたアリシアとフェイト。だが、

 

「一緒に死んでやる。一緒に死んでやる。ふふふ」

 

 全員が未だに顔を赤くして幸せそうにブツブツ呟いて居るはやてを見ると

 

≪(何だか羨ましい)≫

 

「おい、はやて。戻って来い」

 

「はっ! な、なんや、ダーリン」

 

「古いわ、お前いくつだよ。落ち着け。さっきのはプロポーズじゃないぞ」

 

「わ、分かっとるわ。うん、今はそれでええねん」

 

「では、話を戻します」

 

「ライさん、先ほどの話ですが、残念ながら、この艦はアルカンシェルを搭載していません」

 

 会議に戻り、直ぐにライの作戦に穴があることを指摘するリンディ

 

「ご安心を。アルカンシェルなら俺が持っています」

 

 ライがさも当たり前かのように言い放つ

 

「え? 何でライさんが持っているの?」

 

 エイミィがライに質問する

 

「自分で作ったからだ」

 

「もう何も言わない」

 

 ライの爆弾発言に遠い目をするクロノ。

 

「では次に、現在、闇の書ページは562ページ埋まっています。後はアリシア・フェイトの

 魔力を蒐集すれば、恐らく640ページまで埋まるでしょう。後はなのは・神宮寺君の

 魔力を提供してもらいたいんだが」

 

「え~と、私は構いません」

 

「俺も良いけど。何で俺なんですか?」

 

「理由は簡単だ。闇の書で蒐集すると蒐集対象の魔法を使う事ができる。100%使いこなす

 訳ではないが、桜羽や峯岸君の多彩な魔法を管理人格が使えるようになると更に手強く

 なってしまう。その点なのはと神宮寺は砲撃魔法の威力は高いが単純な魔法のため、

 管理人格にそれ程アドバンテージを与えずに済む」

 

「なるほど」

 

 ライの説明を聞き、納得する神宮寺。

 

「そして、闇の書を覚醒させるのは12月上旬か中旬だ」

 

「え? 何でそこまで引っ張るんですか?」

 

 葵がライに質問する。

 

「そういえば、以前そう言っていたな。もしかして」

 

 シグナムがライのしようとしていることに勘付いた。

 

「そうだ。守護騎士達と戦うための準備期間、つまり守護騎士達と模擬戦をしてもらい、

 守護騎士達との戦いになれてもらうためだ。そうする事で成功率は上がる」

 

「そういうことだったんですね」

 

 クロノが納得したように言った。

 

「予めなのはから蒐集しておく事で恐らく664ページまで埋まると思います。

 残り2ページは覚醒させる当日に神宮寺君から蒐集する。君は魔力量が高いから

 2ページ程度魔力を奪われても問題無いだろう?」

 

「そうですね。正直、魔力を使い切った事なんてありませんし」

 

 ライに確認された神宮寺が答える。

 

「では、次に闇の書覚醒後の動きを話をします。俺は先程も言いましたが、ワクチンプログラム

 起動のため、わざと闇の書に取り込まれます。当日の守護騎士達のそれぞれの担当ですが、

 まずヴィータは、なのは・桜羽ペアで相手をしてくれ」

 

「分かったの《分かりました》」

 

「お前達が相手か、手加減しねぇぜ」

 

「バカ、手加減できれば手加減しろ。実際は手加減できないだ」

 

 ライはヴィータの頭を小突くように叩く。

 

「うっせ、気分だよ。気分」

 

「まったく」

 

 小突いた手でそのまま、ヴィータの頭を撫でるライ。

 

「へへ♪」

 

≪ヴィータ《ちゃん》いいな~≫

 

 まんざらでもない顔をするヴィータ。それを羨ましそうに見つめる女性陣。

 

「続いてシグナムだが、フェイト・アリシアペアだ」

 

「了解《りょうか~い》」

 

「おまえ達か、よろしく頼む」

 

「ザフィーラについてはアルフ・神宮寺ペアだ」

 

「あいよ《了解》」

 

「うむ」

 

「そして、シャマルはクロノ・ユーノペアだ」

 

「分かった《分かりました》」

 

「お手柔らかにお願いね」

 

「最後に管理人格だが、プレシアさん・リニス・峯岸チームで頼む」

 

「分かったわ《分かりました》《了解です》」

 

「あれ? 私達は?」

 

 リーゼ姉妹は割り当てられなかったのを疑問に思い、ロッテがライに聞く。

 

「二人は不測の事態に対しての対処要員だ。例えば、誰かがやられてしまった時の穴埋めなどだな」

 

「なるほど、了解しました」

 

 納得したアリアが答えた。

 

「俺が居ない間の全体の指揮はリンディ提督が行ってください」

 

「分かりました」

 

「よし、今後はそれぞれの担当相手と模擬戦をしてもらい、戦いになれてもらう。

 では会議は以上だ」

 

 ライの言葉で会議はお開きとなった。

 

「さて、アリシア、フェイト、なのは。魔力を蒐集させてくれ」

 

「「「はい《はーい》」」」

 

 ライに呼ばれた三人はライの傍に近づいた。

 

「では、シャマル」

 

「はい、ちょっと痛いかも知れないけど、我慢してね?」

 

 ライに呼ばれたシャマルは闇の書を持って三人に近づく。

 

「じゃあ、まずアリシアちゃんから」

 

 闇の書をアリシアの胸に当て、リンカーコアから魔力を蒐集するシャマル。

 

「んっ! 何これくすぐったい……あっ!」

 

 なぜかエロい声を出すアリシア。

 

「な、なんかエロいな………」

 

「ああ………」

 

 神宮寺と峯岸が少し前屈みになって会話する。

 

「まったく男って」

 

 その様子を見て呆れる葵。

 

「ライさんは平気なん?」

 

「何がだ? ただ魔力を蒐集しているだけだろ?」

 

 何食わぬ顔で見ているライにはやてが聞いた。

 

「はい、おしまい。凄いわね。一気に58ページも埋まったわ」

 

「魔力量はSS+だからな。当然だ」

 

「そりゃ、すげぇな。あの時のドラゴン並みじゃねぇか」

 

「ふにゃ~、力が抜けた~」

 

 アリシアはその場に座り込んだ。

 

「大丈夫? 姉さん」

 

 アリシアを心配するフェイト。

 

「うん、力が抜けただけ~」

 

「動けないの?」

 

 なのはがアリシアに聞いた。

 

「うん、動けそうに無い」

 

 なのはの質問に力なく答えるアリシア。

 

「そうか、それじゃ医務室に行ったほうが良いな」

 

 ライは医務室に行く事を勧める。

 

「う~ん、そうだ! ライが連れてって?」

 

≪な!?≫

 

 アリシアの言った言葉に過剰に反応する女性陣。

 

「仕方ないな」

 

 ライはアリシアを親が子供をだっこするように持ち上げた。

 

「そうじゃなくて、こういう時はお姫様だっこでしょ?」

 

 アリシアの発言に更にピクリと反応する女性陣

 

「どっちも大して変わらないだろ?」

 

「甘いよ、ライ。ハニートーストより激甘だよ。こういうときはお姫様だっこって相場が

 決まっているんだよ」

 

「どこの相場だよ。まったく」

 

 文句を言いながらアリシアを横にして両腕で抱きかかえるように持ち上げた。

 

「よ~し、このまま医務室にレッツゴー!」

 

「元気じゃないか」

 

――アリシアちゃん良いな~、私もライさんにお姫様だっこして貰いたい

 

――姉さん、ライに迷惑掛けて、決して羨ましいわけじゃないよ? ほんとだよ?

 

 嬉しそうにライにお姫様だっこしてもらっているアリシアを見て羨ましそうに見るなのはとフェイト。

 

――あれ? でもこれから私も魔力を蒐集されるんだよね?

 

――ということは私もライにお姫様だっこして貰える?

 

「さて、次の蒐集は」

 

 ライが魔力蒐集の話をすると

 

「はい、次は私なの!」

 

「ううん! 私からどうぞ!」

 

 逸早くライにお姫様だっこしてもらうため、名乗りでるなのはとフェイト。だが、

 

「また動けなくなっても面倒だから医務室でやるぞ。いいね?」

 

「「アッハイ」」

 

 ライから非情なことを言われ、その場に両手を突き落ち込むなのはとフェイト。所謂orzである。

 

 その後、医務室でフェイト、なのはから魔力を蒐集し、闇の書は665ページまで埋まった。そして、なのは達の魔力が回復したら、訓練を始める事となった。




さて、零冶の念能力紹介のコーナーです。

では、次の念能力はこれだ!


 18、時の支配者(クロックマスター)
  系統:操作系
  説明:触れている物の時間を一時停止(ストップ)巻き戻し(リワインド)早送り(ファストフォワード)ができる
     ただし、生物には使えない。

  制約
   1、対象に触れて無くてはならない。
   2、生物には使用できない。

  誓約
   なし


 ライの能力中でも規格外の能力ですね。この時間操作はビデオデッキやDVDプレイヤーを想像してもらうと近いと思います。一時停止で画面が停止、巻き戻しで映像が戻る、早送りで映像が進む、そういったことが出来る能力です。

 この能力事態にはまったく攻撃力はありませんが、他の能力と組み合わせて真価を発揮します。

 作中にも有った栄光の手袋《グロリアスハンド》と組み合わせたり。死者蘇生《レイズデッド》と組み合わせたりなどです。

 あと栄光の手袋とのコンボで時間を止めていますが、あれは止めるので精一杯なので、時間を戻したり、進めたりするのは数分程度しかできません。


って感じです。では

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