原作を放って置くとバッドエンドになるんですが、どうしたら良いですか?   作:月の光

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早めの更新です。

次の更新はまた遅れるかもです。




29_零冶「心配かけたな」ミスト[まったくです]

 ここは月無 零冶の自室。そこに一人生死の狭間を彷徨っている者がいる。その者は口からは大量の血を吐き、床に横たわっている。しかし、外傷は無く、五体満足。では何故血を吐いているのか……それは内臓系をやられているからだ。

 

[マスター! 大丈夫ですか!]

 

「ごふっ! ごふっ! ミスト……愛里を……呼んでくれ」

 

[はい! 『愛里! 直ぐに来て下さい! マスターが!』]

 

 すると飛雷神の術(ひらいしんのじゅつ)で愛里が現れた。

 

「零冶さん! どうしたんですか!」

 

[それより愛里! 治療を!]

 

「は、はい! 完全修復(パーフェクトリカバリー)!」

 

 何故、バグチートとなり人外とまで言われている零冶がこれほどのダメージを受けているか、それは時を遡る事二時間前の出来事。

 

 

~二時間前~

 

 

 管理局の魔導師から魔力を蒐集を行った翌日、時間は11時30分。ライははやての護衛のため八神邸を訪れた。

 

 

フッ

 

 

「こんにちは」

 

「おお、いらっしゃい。お茶入れますね」

 

「はやてちゃん、手伝うわ」

 

「それじゃ、頼むわ」

 

 ライがいきなり現れても驚きもしなくなったはやて。ずいぶん慣れたようだ。

 

「ライ、よく来た」

 

「おお、待ってたぜ。あi、ライ」

 

 シグナムもライを迎えた。だがヴィータはライをアイスと勘違いしているようだ。

 

「ヴィータ、お前は俺はアイスをくれる人だと勘違いしてないか?」

 

「「「人?」」」

 

「そっちに反応するな」

 

 ザフィーラもライの人発言に反応する。

 

「まったく。ほら、アイスだ。昼飯の後にしろよ」

 

「へへ、サンキュー! ライ」

 

「ライ、あまりヴィータを甘やかすな」

 

「甘やかすってヴィータは子供じゃないんだ。ちゃんと言われたことは守れるだろう?

 好きなものがあるっていうのは良い事だぞ」

 

「ライの言う通りだ。アイスはあたしの力の源なんだよ」

 

「シグナムは無いのか? そういうものは」

 

 ライはシグナムに質問した。

 

「私は……そうだな。主はやての作る和食料理が好きだ。それと入浴だな」

 

「和食と入浴か。和食はなんとなく分かるが、入浴とは意外だな」

 

「む? そうか? 私も湯船に湯を張り、その中につかるというのは知らなかったが、

 あれは良いものだ。その日の疲れが取れる」

 

「ああ、シグナムは風呂好きだよな。一番長げぇし」

 

「うむ、長いときは一時間は出てこないな」

 

 ヴィータとザフィーラがシグナムの風呂好きを補足した。

 

『ほわほわほわ~ん』

 

『イメージなんかしないぞ。ミスト』

 

『ノリが悪いですよ。マスター』

 

「風呂が好きか……」

 

「む? おかしいか?」

 

「いや、良いんじゃないか? ただ、それなら温泉なんかも好きなんじゃないかと思ってな」

 

「温泉? 何だそれは」

 

 シグナムはライの言った温泉に興味を示した。

 

「何だ知らないのか」

 

「なになに、何の話?」

 

 シグナム達と雑談をしているとはやてとシャマルがお茶を持って戻って来る。

 

「ああ、シグナムが好きなものは何かって話になってな。風呂が好きなら温泉も好きなのかって

 聞いたんだが、温泉を知らないんだと」

 

「ああ、確かにシグナムは温泉好きになるかもな~」

 

「主はやて、温泉とは?」

 

「せやな~、簡単に言うとでっかいお風呂やな。地面を掘って湧き出したお湯で作ったお風呂で、

 出てきたお湯によって色々な効能があるんや。美肌効果とか疲労回復とか。

 露天風呂って言うのもあって、外に風呂があって開放感のあるところもあるで」

 

「ほうほう」

 

 はやての話を聞いて目がキラキラしているシグナム。余程行きたいようだ。

 

「まあ、闇の書を夜天の書に戻したら時間はたっぷりあるんだ。家族で行ってくると良い」

 

「そん時はライさんも一緒やな」

 

「悪いが俺は素顔が明かせないからな。温泉には入れない」

 

「む? それは残念だな」

 

「仮面付けたまま入ればええやん」

 

 はやてがライに案を伝えるが、

 

「そこまでして温泉に入りたくはないな」

 

「ほうか……」

 

 拒否されて残念そうな顔をするはやて。

 

「悪いな」

 

 そうやってしばらくはやて達とライが雑談していると

 

「皆、お昼にしましょう」

 

 ()()()()が全員を呼んだ。

 

「ん? もう12時半か、そういえばさっきからシャマルの姿が見えなかったな」

 

 するとはやて達の顔が青くなっている。

 

「ん? どうしたんだお前ら」

 

「あ、主はやて、何時の間にお昼を作ったんですか?」

 

「いや、私は何も作ってへん」

 

 シグナムははやてに聞いた。

 

「いやまさか、シャマルは温めただけだろ?」

 

「……」

 

 ヴィータがこの世の終わりかのような顔ではやてに聞いた。

 

「何か言って下さい。主」

 

 何も言わないはやてにすがるように聞くザフィーラ

 

「皆……死ぬときは一緒やで」

 

「「「主はやて《はやて》!」」」

 

 はやて達は4人で抱き合った。

 

「もう! そこまで言わなくても良いじゃない」

 

 その光景を見ていたシャマルは不機嫌そうに言った。

 

「シャマルの料理か……」

 

 シャマルが皿をテーブルの上に並べた。そこには

 

「……シャマル。一応聞くが、これは何だ?」

 

 紫色の液体があった。

 

「え? ホワイトシチューよ?」

 

 そこにはまったくホワイトの要素が無い液体があった。それを見たはやて達は顔が青ざめて、ガタガタ震えている。

 

「シャマル……味見はしたのか?」

 

「美味しい食材をいっぱい入れたから美味しいに決まっているわ」

 

 ライがシャマルに確認するが、さも当たり前でしょという顔で答えるシャマル。

 

「つまり味見はしていないと」

 

「それに栄養価の高いものもいっぱい入っているから健康にも良いわ」

 

――この料理の目的は何だ? 美味しさか? 健康か? 滋養強壮か? 

  どれにしろまともな料理じゃないことは分かった。これをこれから食べるのか?

  冗談だろ? 何か理由を付けて帰ろうかな

 

 

ピキィーーーーン

 

 

――いけない、俺の作った虫の知らせ(シックスセンス)というレアスキルが、「ここは逃げろ」と叫んでいる!

  それほどまでに危険な相手か!? シャマルの手料理!

 

「そうか……だが悪いな。俺はこれから用事がある。ここで」

 

 ライがその場から離脱しようとしていると

 

 

ガシ!

 

 

 はやて達に掴まれた。

 

「ま~そう言わんといて。ゆっくりして逝ってや」

 

「そうだ。じっくり味わって逝くと良い」

 

「お前もたまには家で(どく)食ってけって」

 

「我等運命共同体」

 

「「「「というか」」」」

 

「「「「……逃がさん……お前だけは……」」」」

 

「……」

 

――何これ怖い。「いく」の字が違うだろ。逃げようと思えば逃げられるが……

  まあ食べても大丈夫だろう。俺は神の遊戯(キャラクターメイキング)で内臓系も鍛えているし、

  毒耐性もEXだ。例え致死量の猛毒を一気に飲み干してもやられることはない。

  虫の知らせ(シックスセンス)もおさまっているし、大丈夫なはずだ。

 

「はぁ~、分かった。ではご相伴にあずかろうか」

 

 ライはテーブルに着き、スプーンで「WHYと死注」(ライ命名)をすくう。そしてそれを口に運ぶ。

 

「「「「……」」」」

 

 はやて達は俺をじっと見つめている。味の感想でも期待しているのだろう。ライは口に入れた謎の物体を咀嚼し、飲み込む。

 

「ごくっ……ふむ」

 

「ど、どうかしら?」

 

 シャマルがライに味の感想を聞いてくる。

 

「そうだな、一言で言うなら」

 

「……」

 

 シャマルが緊張した面持ちでライの言葉を待つ。

 

「不味い」

 

「え!?」

 

「小麦粉、バター、ブイヨン、牛乳、鳥もも肉、人参、玉葱、じゃがいも、塩、コショウ、

 ローリエ、パルミジャーノチーズ」

 

 するとライが突然、食材を羅列し始めた。

 

「え?」

 

「ホワイトシチューの材料やん」

 

「にんにく、しょうが、しょうゆ、ごま油、鷹の爪、大豆、味噌、パセリ、ローズマリー、

 バジル、はちみつ、わさび、からし」

 

 はやて達は皆顔を見合わせ、何を言っているんだって顔している。シャマル以外は。

 

「タウリン、マカ、ウコン、うなぎ、すっぽん……生き血もか、山芋、チョコレート、プルーン、

 黒豆、ブルーベリー、真珠パウダー、イモリの黒焼き、コウモリの黒焼き、カエルの舌」

 

「ライさん、どうしたんですか? 頭おかしくなってしもうた?」

 

「失礼な、シャマルが作ったホワイトシチューに入っている食材を挙げてるんだ」

 

「「「「え?」」」」

 

「今の所全部当たってるわ……」

 

「「「「え!?」」」」

 

「そう言うことだ。今ので大体七割か?」

 

「ええ、そうね」

 

「まあ、もう良いだろう。俺の言いたいことが分かるか? シャマル」

 

「……いえ」

 

「分からないのか、なら自分で食ってみろ」

 

 ライはスプーンで「WHYと死注」をすくってシャマルの口の前まで運ぶ。

 

――これは! 乙女の憧れ、「はい、あ~ん」やないか! しかも同じスプーンの間接キス付き

  やと! でもシャマルの料理のせいでまったく羨ましくない!

 

 シャマルは恐る恐るその謎の物体を口にする。すると顔が青くなり、その場に倒れた。

 

 

バタン

 

 

「「「「シャマル!」」」」

 

「やれやれ」

 

 ライは倒れたシャマルに手で触れ、

 

完全修復(パーフェクトリカバリー)

 

 完全修復(パーフェクトリカバリー)で謎の物体を食べる前に戻す。

 

 

ガバッ

 

 

 シャマルは急に起き上がり、

 

「すっっっごく不味いわ!」

 

 自分の料理の感想を言った。

 

「料理の味は分かっただろ? 何故こんなに不味いと思う?」

 

「……色々な食材を混ぜたから?」

 

「正解だ」

 

「でもどうして? 一つ一つは美味しい食材なのに……」

 

――お前はすっぽんの生き血も美味い食材なのか? イモリの黒焼きも? まあ人それぞれだが

 

「一つ問題を出そう」

 

≪え?≫

 

「自分が世界一美味しそうな料理を作ったとする。では最初にそれを誰に食べさせる?」

 

 ライの出した問題に対して考えるはやて達。

 

「やっぱり自分の大切な人じゃないかしら」

 

 最初にシャマルが答える。

 

「うむ、やはり家族や大切な人だな」

 

 次はシグナムが答えた。

 

「これってなぞなぞじゃねぇの?」

 

 ヴィータがライに聞いた。

 

「ああ、なぞなぞじゃない。純粋に誰に食べさせるかだ」

 

「そっか、ならはやてだな」

 

 ヴィータが答えた。

 

「うむ、私も将達と同じだな」

 

 ザフィーラもシグナム達と同じと答えた。残りははやてだけ。

 

「はやては?」

 

 ライがはやてに聞くと守護騎士達がはやてを見る。するとはやては顔上げ

 

「……自分や」

 

「「「「え?」」」」

 

「ほう、それは何故だ?」

 

「だって()()()()()なんやろ? だったら美味しいかわからんやん。

 だったら美味しいか自分で確かめんと、とても人には食べさせられんわ」

 

 はやての答えを聞き、はっとなる守護騎士達。

 

「ふふ、正解だ。流石は料理をするだけはある。そうだ、美味しそうであって美味しいではない。

 ちゃんと自分で味見して美味しいかを確かめないといけない。料理をする上で大切なことだ。

 シャマルは味見をしていないな?」

 

「うっ! はい……」

 

「分かったと思うが味見は大切だ。次に食材についてだ。料理に例えるのは不適切だが、

 例えば絵の具があるだろう」

 

「ええ」

 

「赤と青を混ぜると何色になる?」

 

「紫ね」

 

「正解だ。青と黄では?」

 

「緑よ」

 

「その通り、色の組み合わせで鮮やかな色を作る事ができる。だが、綺麗だからといって

 様々な色を混ぜたらどうなる」

 

「濁った汚い色になるわ」

 

「そうだ、それは料理でも言えることだ。一つ一つが美味しい食材でもそれぞれのバランスが

 大事なんだ。人はそれを総称してレシピと呼ぶ」

 

「……」

 

「レシピはその時点で完成している。そこに他の食材を加えることはそのバランスを崩す行為だ」

 

「で、でもアレンジ料理って言うのも」

 

「アレンジ料理って言うのは自分の色を出すってことだ」

 

「自分の色……」

 

「そう、自分の好きな食材、自分好みの味、そうやって自分が表現したい料理にする

 それがアレンジ料理だ」

 

「……」

 

「では、これがお前の表現したかった料理だったのか?」

 

「いいえ、違うわ」

 

「だろうな。これは手当たり次第食材を放り込んだだけ、とても料理とは言えないな」

 

「……返す言葉もありません」

 

「ラ、ライさん。その辺で」

 

 はやてがライを止めてきた。

 

「はやて、料理をするものとしてここでシャマルを甘やかすな。はっきり言ってやらないと

 分からないこともある」

 

「は、はい」

 

 ライは強く言いはやてを黙らせる。

 

「シャマル、お前の料理を食べて分かったことがある。お前は料理人に向いていない。

 味見をしないなど言語道断だ。食材のバランスも考えず手当たり次第に放り込み食材を

 無駄にしている。食材に対する冒涜だ」

 

「……」

 

 シャマルはライにボロクソ言われ、これ以上無いほどへこんでいる。その顔は涙目になり今にも零れそうだ。

 

「もうやめてあげて、ライさん」

 

 見てられなかったはやてはライに懇願する

 

「だが、相手のことを思い、喜ばせようとした愛情は伝わった」

 

「え?」

 

 ライから思いも寄らないことを言われたシャマルは顔を上げる

 

「その気持ちは料理をする上で一番重要なことだ。日本ではそれをまごころと言う。

 その気持ちがあるなら大丈夫だ。今挙げた点に気を付けてレシピ通りに作るぞ」

 

「え? え?」

 

「何している。さっさと来い。俺が指導してやる」

 

「あ、はい!」

 

 ライはシャマルを連れて台所に移動した。

 

「……そう言うことか~。てっきり、もう料理はするな! って言うのかと思ったわ」

 

「ですが、ライの言っていたことは正しいです」

 

「ああ、あたしもシャマルがあたし達のために作ろうとしたって事くらいは分かるからな」

 

「うむ、だが出てくるのがあれではな」

 

 はやて達はテーブルの「WHYと死注」を見る。

 

「「「「うん、これは食えん」」」」

 

「でも、ライのやつは平然としてたな」

 

 シャマルの手料理を食べたライが平然としていた事に疑問を持ったヴィータが言った

 

「確かに……今日のはそうでもないんかな?」

 

「しかし、シャマルは気絶しましたが……」

 

 はやてに対し、シグナムが指摘する。

 

「うむ、それにライが言い当てた食材に妙なものも……」

 

 ザフィーラがライの挙げた食材を思い出し、顔を青くする

 

「せ、せやな。けど、なんや……こう……好奇心がな」

 

「主はやて、まさか……」

 

 はやての態度にはやてが何をしたいかを察したシグナム。

 

「や、止めとけよ。はやて。こんな色だぜ」

 

 ヴィータも察したようだ。

 

「わ、私もやめたほうが無難だと」

 

 ザフィーラははやてを止める。

 

「私は……闇の書の主や。シャマルが作ったもんにも私の責任があるんや! だから食べる!」

 

「くっ! 主はやて。そこまでお考えだったとは! 不肖このシグナム。主とお供します!」

 

「はやてだけ、辛い思いはさせねぇぜ! あたしも食う! 死ぬ時は一緒だぜ! はやて」

 

「シグナム、ヴィータ………。おっしゃ! 逝くで!」

 

「いざ!」

 

「うおお!」

 

 

パク×3

 

 

「「「がっは!」」」

 

 

バタン×3

 

 

 はやてとシグナムとヴィータは「WHYと死注」を食べて吐血した後、同時に倒れた。倒れたはやての指先には血文字で「シャマル」とかかれてた。

 

 ザフィーラはその光景に慌てることもなく、台所のライを呼びに行き、ライは完全修復(パーフェクトリカバリー)で戻し、事無きを得たが、その後ライに説教されたことは言うまでもない。

 

 

~しばらくして~

 

 

 ライはシャマルに料理指導をしてホワイトシチューを作り、テーブルに並べた。そこには

 

「さあ、出来たぞ。召し上がれ」

 

 到って普通なホワイトシチューが並んでいた。

 

「これ、シャマルが作ったんか?」

 

「ええ」

 

 はやてがシャマルに確認する。

 

「俺は後ろでおかしな点を指摘しただけだ。基本はシャマルがレシピ通りに作った。

 味は問題ない」

 

 ライがシャマルの作ったホワイトシチューをフォローする。

 

「そ、そういうことなら」

 

「ああ」

 

「よし、く、食うぞ」

 

「うむ」

 

 はやて達はホワイトシチューをスプーンですくい、恐る恐る口に運ぶ。それを緊張した面持ちで見つめるシャマル。

 

 そしてはやて達はそれを口に入れた。

 

「「「「ん!」」」」

 

「ど、どうかしら?」

 

「美味い!」

 

「ああ、食べられるぞ!」

 

「はやてほどじゃねぇけどうめぇぞ!」

 

「うむ、見事なものだ」

 

「ほ、本当!」

 

 はやて達の感想を聞き、満面の笑みになるシャマル。

 

「どうだ、言われた通りにしてよかっただろ? シャマル」

 

「ええ! 美味しいって言って貰えるってこんなに嬉しいことなのね……」

 

「それを忘れるな。そうすれば、もう道を間違えることはないだろう」

 

「ええ、レシピ通りに作る。当たり前だけと大切だって分かったわ」

 

「なら、もう大丈夫だ。さて、俺は用事がある。これで失礼する」

 

「ええ、ありがとう。ライ」

 

 シャマルは熱っぽい瞳でライを見つめる

 

――ん? もしかしてシャマル、ライさんに惚れてもうたんちゃう? あかんライバルが増えたで

 

「おっと、伝え忘れていたことがある。管理局側の担当者だが、明日地球に到着する。

 だから、明日の14時に顔合わせだ。五分前にまた来る。ではな」

 

 

フッ

 

 

 ライはその場から転移した。

 

 

 飛雷神の術(ひらいしんのじゅつ)で自宅の自室に転移したライはバリアジャケットと変身魔法を解き、零冶に戻り部屋に佇んでいる。

 

[マスター? どうしました? 今日はこれから予定なんてありませんが?]

 

「それは……わかって……いる。ぐ!? ごっは!」

 

 零冶は突然、口から大量の血を吐き出し、その場に倒れこむ。

 

[マスター! 大丈夫ですか!]

 

 

 そして冒頭に戻る。

 

 

「ふぅ、助かったよ。愛里」

 

「いえ、何が有ったのですか? 零冶さんがこれほどのダメージを受けるなんて」

 

「実はな」

 

 

~零冶説明中~

 

 

「シャマルさんの手料理を食べたですか?」

 

「ああ、俺も油断していた。いくら神の遊戯(キャラクターメイキング)で内臓系も鍛えていても、

 それを上回る攻撃を受ければダメージを負うのは当たり前なのに」

 

「つまり、シャマルさんの手料理は耐久EX以上の攻撃力があると?」

 

「そういうことになるな。そして何故あの時虫の知らせ(シックスセンス)が発動したかも分かった」

 

「そうなのですか? しかし、直ぐにおさまったんですよね?」

 

「ああ、俺はてっきりシャマルの手料理を食べる事に対して発動したのかと思ったが、

 そうじゃない。あれは俺が離脱しようとしたことに対して発動したんだ」

 

「しかし、離脱すれば死にかけることも無かったはずです」

 

「その通り……俺はな」

 

「零冶さんはってことは、つまり」

 

「そう、俺があそこで離脱していたら、はやて達が死んでいたってことだ」

 

「ま、まさか。料理で死ぬなんてこと」

 

「俺があそこまでダメージを負ったんだぞ? いくら耐性がありそうなはやて達でもただでは

 済まんだろう。それすなわち俺にとって都合の悪い未来ってことだ」

 

「……油断も隙もありませんね。本当に零冶さんが居なかったら」

 

「ああ、明日の新聞の一面を飾るだろう。八神邸毒殺殺人事件。しかし、被害者は一人、

 完全な密室。恐らく事故か、自殺で完結するだろう」

 

[ギャグ回かと思いきや。飛んだオチが付きましたね]

 

「ホント冗談じゃないよ。まさか料理を食って死にかけるなんて考えても見なかった」

 

「しかし、よく無事でした。今思い出してもぞっとしますよ。倒れた零冶さんを見たときは」

 

「そうだな。気絶もせず済んで良かったよ。気絶してたら、学校に送った影分身体が消える

 からな。フォローが面倒臭くなるところだった」

 

 零冶はベットに腰をかける。

 

「だが、シャマルには料理の何たるかを教えた。もう大丈夫だろう」

 

[そうですね。私も見てましたが、料理の手際は悪くありませんでした]

 

「そうですか。安心しました。ではこれからどうしますか? お昼にします?」

 

「そうだな。頼めるか? 愛里」

 

「もちろんです。零冶さんはここで休んでいて下さい」

 

 愛里は零冶の部屋から出て行く。

 

「ふぅ」

 

 零冶はベットに横になる。

 

[良かったです。マスターが無事で]

 

「心配かけたな」

 

[まったくです]

 

「そういえば……」

 

[何ですか?]

 

「さっきの慌てたミストは可愛かったぞ」

 

[な! あれは! その!]

 

「はは! 可愛いやつ」

 

[もう! 知りません!]

 

 そう言い残したミストはスリープモードに移行したのだった。




今回は少し悪乗りしすぎたかもしれません。
だが、後悔はしていない(キリ


さて、零冶の念能力紹介のコーナーです。

では、次の念能力はこれだ!


 17、管理者の鍵(マスターキー)
  系統:具現化系
  説明:鍵を具現化し、対象に突き刺して、能力名とともに鍵を回すと
     その能力に封印(ロック)を掛ける
     封印(ロック)を掛けた鍵で解錠(アンロック)もできる
     また、対象は人間以外にも物や動物にも可能
     例えば扉対して、開閉能力を封印(ロック)する事も可能
     鍵事態には殺傷能力は無い

  制約
   1、使用者は封印(ロック)を掛ける能力のことを知らなくてならない
     知っておかなければならない内容は
      1、能力名
      2、能力の内容
      3、使用対象の名前(物体なら名称)
   2、封印(ロック)を掛ける際は能力名を口に出さなければならない
   3、この能力(管理者の鍵)の封印(ロック)はできない

  誓約
   1、知っておかなければならない内容に間違いがあると能力は発動せず、
     一日この能力が使用できなくなる

  派生技
   存在しなかった鍵(デリートキー)
    系統:特質系
    説明:鍵を消滅させる。その際にロックを掛けていた能力も一緒に消滅する。

    制約
     1、使用すると一ヶ月間管理者の鍵(マスターキー)を使用できなくなる。

    誓約
     なし


 この能力今のところ使用されている描写が少ないですが、地味に役に立っています。
オフに出来ない能力を強制封印することができるからです。もっともめったにそんなことやりませんが

 感想にもありましたが、この能力で防衛プログラムを封印、削除で追消滅はリスクが高いのでやりません。

 他にも書きたいことがあった気がしますが、思い出したらここに書きます。申し訳ありません。



って感じです。では

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