原作を放って置くとバッドエンドになるんですが、どうしたら良いですか?   作:月の光

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更新が遅くなってすみませんでした。

話が一向に進まない……何時なったら闇の書は完結するんだ!
ってくらい話が進んでません。




28_ミスト『ここテストに出ます』零冶『それ何のテスト?』

零冶 サイド

 

 蒐集活動を開始してから四日が経過し、今日は五日目だ。最初のヴィータから始まり、シグナム、シャマル、ザフィーラのローテーションで行い、現在は506ページ埋まった。なかなか順調だ。

 

 活動内容はヴィータの時と変わらない。魔法生物と話をして魔力を提供してもらう。拒否された場合は大人しく引き下がり、自発的に提供してくれる魔法生物からのみ、蒐集を行った。シグナム達からは甘いといわれたが、管理局に生態系を破壊しないことを誓っているからと言ったら、納得してくれた。

 

 もっとも完全修復(パーフェクトリカバリー)があるから無理やり蒐集しても、蒐集前に戻せるので、まったく問題無いが、やはり無理やりと言うのは気分が悪い。それにはやての性格を考えると無理やり奪っているとなったら気に病んでしまうだろう。そのことを分かっているから守護騎士達もあっさり納得したようだ。

 

 もちろん思うようにページが埋まらなかったら無理やり奪うと話をしている。だが、今のところまったく問題無いので、その予定は無い。

 

 そして今日の蒐集対象は……

 

「管理局に行く?」

 

 シグナムが難しい顔をして俺に聞き返した。

 

「そうだ、俺が管理局から闇の書の件を一任してもらうのに協力してもらったやつに管理局内で

 魔力提供を呼びかけてもらった。その結果、昨日、65名の魔導師が提供に志願したと連絡が

 あった」

 

「そうゆう事か」

 

 俺の説明にヴィータが理解した。

 

「でも大丈夫かしら? まさかとは思うけど罠って可能性も……」

 

 シャマルが不安そうな顔で俺に聞いてくる。

 

「0とは言わないが、まず無いな」

 

「それは何故だ?」

 

 今度はザフィーラが聞いてきた。

 

「簡単に言うと俺が居るからだ」

 

「なるほど……さっぱり分からん! つまり、どういうことなん?」

 

 はやてがさっぱり分からんという顔で俺に聞いてくる。

 

「俺は今まで管理局からの依頼を何度かやっているから、俺がどれほどの実力かをむこうは

 把握している。更に俺は管理局に対して不正を暴き、多くの上層部の連中を失脚されている。

 そんな俺に罠を張ろうなどとはまず思わないだろう」

 

「だが、それで恨みを買ってお前を陥れるためにと……」

 

「そうやって何度も失敗し、失脚させられているにも関わらずか? だとしたらとんだ

 マゾヒストだな。そこまで行っているなら救えないが、普通ならこう考えるだろう。

 【下手に手を出さず、管理局に手を貸して貰おう】とな」

 

 俺はシグナムに言われたことに答えた。

 

「なるほどな。てかお前今まであいつらに何したんだよ」

 

「確かに興味あるわ」

 

「そこんとこどうなん? ライさん」

 

 ヴィータの質問に乗ってきたシャマルとはやて。

 

「そうだな……例えば」

 

 俺は今まで管理局にしたことの一部を話した。

 

「なんか、管理局に同情したくなったぞ」

 

「でも、話を聞く限り彼らの自業自得なのよね」

 

「てか私、そこに入らなあかんのか……ちょっと早まったかな? はやてだけに」

 

「安心しろ。管理局全員がそういう人間って訳じゃない。もしそうなら俺がとっくに潰している」

 

≪は?≫

 

「それにはやてのことは俺が管理局の中でも信用できる人に任せるつもりだ。

 ちなみにその人は……どうしたお前ら?」

 

 俺が話をしていると全員がポカーンという顔していた。俺変なこと言ったか?

 

『俺がとっくに潰していると言いましたね』

 

『それって驚くことか? 俺の実力は見せただろうに』

 

『これが一般人と人外の感覚の違いです。皆さん勉強になりましたね? ここテストに出ます』

 

『それ何のテスト?』

 

「ライ、お前管理局潰せんのか?」

 

 ヴィータが聞いて来た。ミストの言う通り原因はそこらしい。

 

「何言ってるんだ? あんな連中一晩あれば余裕だろう?」

 

 竜闘気魔法(ドルオーラ)を開幕ブッパすれば良いんだよ。ね? 簡単でしょう?

 

「ほんまライさんが敵じゃなくてよかったわ」

 

「そう思うとゾッとするわね」

 

「うむ、これからも敵に回さぬよう気を付けよう」

 

≪そうだな《そうね》《そうやね》≫

 

 ザフィーラの提案に賛同するはやて達。

 

「失礼な。俺をなんだと思っているんだ?」

 

≪人外≫

 

「シンクロすんな」

 

「あっ、そういえば外人さん」

 

「反対にすんな。それじゃただの外国の人だ」

 

「失礼噛みました」

 

「違うワザとだ」

 

「かみまみた」(テヘぺろ

 

「ワザとじゃない~」

 

「「イエーーイ」」

 

 俺とはやてはハイタッチをする。例のごとくポカーンとする守護騎士達。

 

『はやてのごとく!』

 

『それ別のアニメだから。はやての声の人も居るけどな』

 

「いや~、ライさんやっぱノリええな~。どや? 私と一緒にコンビ組まん?」

 

「悪いが俺は誰ともコンビを組むつもりは無い」

 

「なるほど……ピンで行くって事やね」

 

「漫才のことじゃね~よ」

 

 俺ははやてに言葉とともに手振りでも突っ込みを入れる。

 

「それでなんだ? はやて」

 

「ああ、そやった。実はお願いがあるんやけど」

 

「却下」

 

「ちょっ! 話す前に却下せんといて!」

 

「はやての言いたいことは今回の蒐集に連れてって欲しい、だろ?」

 

「いやそうやけど……何で分かったん? はっ! 愛か! 愛なんやな! やっと私の愛が」

 

「さて、ヴィータ。さっさと行こうか」

 

「無視! ひどいわ! 私とは遊びやったんやね!」

 

「冗談だ。はやての言いたいことは分かる。大方魔力提供してくれる人たちにちゃんとお礼を

 言いたいんだろう? だが、はっきり言うとおすすめはしない」

 

「私のことそこまで分かってくれるなんて……やっぱりあ「言わせねーよ」ちぇっ!

 でも何でダメなん? 闇の書のために手伝ってくれるんならちゃんとお礼言わんと」

 

「はやての言っていることは正しい。だが、問題は世の中正しいことばかりでは通らないと

 言う点だ」

 

「つまり?」

 

「俺が懸念しているのは、今回魔力提供を志願している者の中に打算的に協力しているものが

 居る可能性があるってことだ」

 

「打算的に……」

 

「そうだ。例えばだが、実は闇の書に恨みがあり、その恨みを晴らすために表向きは

 協力しているなどだな」

 

「闇の書に恨み……」

 

 はやては口に軽く握った右手を丁度人差し指が唇にあたるように当て俯いた。

 

「主、私もライに賛成です。少なくとも闇の書を夜天の書に戻すまでは、主は身を隠したほうが

 よろしいかと」

 

「そうね……それにはやてちゃんが姿を現せばそれだけで危険が増すわ」

 

「無論我々が主はやてを守りますが、危険は避けるべきだと」

 

「ライはともかく管理局はまだあまり信用ならねぇからな」

 

 はやての言葉に否定的な言葉を返す守護騎士達。さて、はやてはどうするかな?

 

『相変わらずいい性格してますね、マスター』

 

『俺のやりたいことはお前も分かるだろう? ミスト』

 

『もちろんです。何年の付き合いだと思っているのですか?』

 

『ふっ、愚問だったな』

 

「ライさん、やっぱり私も連れてって下さい」

 

「理由を聞こう」

 

「ライさんの言う通り、本心で協力をしてくれていないかも知れないと言うのは分かりました。

 でも、それとこれは別や。どっちにしろ私がやらんといけないのはお礼を言うことや。

 それに」

 

 はやては言葉を切り、闇の書を一旦見てから言葉を続ける。

 

「もし、闇の書に恨みがあるって言うなら私はきちんとその人と向き合わなあかんと思います。

 今の闇の書の主として。それが今の私に出来る唯一のことやから」

 

≪主《はやてちゃん》《はやて》……≫

 

 良い答えだ。ふふふ、人が成長する姿というのはどうしてこうも輝いて見えるのかな? 俺の期待以上の答えだよ。八神はやて。

 

「はやての言いたいことは分かった」

 

 俺は守護騎士達を見る。どうやらはやてと同じ気持ちのようだ。

 

「どうやら守護騎士達もはやてと同じようだな」

 

 俺は守護騎士達に確認する。

 

「皆……ええのか」

 

「はっ! もちろんです。我々は主のお心のままに従います」

 

「安心しろ! はやて! 誰が来ようとあたしたちが守っから!」

 

「私達ははやてちゃんに付いて行くわ。どこまでも」

 

「我等は主と共に」

 

「皆……ありがとう」

 

 はやて達と守護騎士達の絆が深まった。めでたしめでたし

 

「お前達の気持ちは分かった。その上で俺から一言」

 

 はやて達は決意に満ちた目で俺を見てくる。

 

 俺は一呼吸置き、言葉を発する。

 

「却下で」

 

 

ズコーーー

 

 

 はやて達は見事にズッコけた。これが見たかった!

 

「何でやねん!? そこは許可する流れやん!」

 

 はやてが声を荒げて行ってきた

 

「流れがそうだからと言ってそれに乗ってどうする。自分の意思を貫いて何が悪い?」

 

「何その正論!」

 

「貴様! 先ほど分かったと言ったではないか!」

 

「お前達の気持ちは分かったとは言ったが認めるとは言っていない」

 

「そりゃそうだけどよ! なんかそんな感じだったじゃねぇか!」

 

 シグナムとヴィータが俺に言ってくる。

 

「それは勝手にお前達がそう思っただけだ。だから『僕は悪くない』」

 

 俺は両手を広げ、某嘘つきのように言った。

 

「カッコつけんな! 僕って…恐ろしく似合わねぇぞ!」

 

「ちょっと皆、落ち着いて……」

 

 シャマルが興奮したはやて達を静めようとしている。だが、その顔は少し不機嫌だ。落ち着いているようだが、はやて達と同じで少し怒っているようだ。

 

「ライも無意味に否定はしないだろう。それを聞こう」

 

 ザフィーラが言った。冷静だな。だが、疑いの目で俺を見ている。

 

「ちゃんと説明はする。納得が行くかはお前達次第だ」

 

 俺がそう言うとはやて達は冷静になった。

 

「却下したのはメリット・デメリットの問題だ」

 

「メリット・デメリット?」

 

「そうだ」

 

「しゃn「シャンプーじゃないぞ」先言わんといて」

 

「まず、メリットの話だが、はやてが行き、誠意を見せることで今回の闇の書の主はまともだと

 思われるから信用されやすくなるだろう。それは管理局に所属することになった時に

 有利に働く」

 

「ふむふむ」

 

 はやてがワザとらしく頷いている。

 

「だが、それは夜天の書に戻すのが成功してからお礼を言いに行っても十分な事だ。

 つまり今じゃなくても良い。メリットはそれだけだ。

 次にデメリットの話だが、まず、はやての身の危険が高まる」

 

「私の身の危険?」

 

「そりゃ、さっきの闇の書を恨んでいるかも知れないやつに狙われるからか?」

 

「だが、それを承知で行くと言ったはずだ」

 

 ヴィータとシグナムが言ったが、それだけじゃない。

 

「その想定は蒐集の場ではだろう? だが、はやてが表に出ることでどこの誰と言う事が

 知られる可能性がある。そうなると住んでいる場所が特定され、日常的に狙われる可能性

 が出てくる」

 

「それは……無いとは言えないわね」

 

「うむ、それに日中常に警戒していなければならないとなると集中力が持たんだろう」

 

 シャマルとザフィーラが言った。

 

「そうだ。それに俺の予定では闇の書を完成させ、覚醒させるのは12月上旬か中旬頃だ」

 

「何? 何故それ程遅い? 今の速度で蒐集すれば遅くとも10月末には完成する筈だ」

 

 俺が闇の書完成の日程を話したところシグナムが聞いてきた。

 

「それについては管理局の担当者と顔合わせした時に説明する。とりあえずは完成はまだ先だと

 思っていてくれ。完成が大分先だから、日中常に集中するのはもたないだろう」

 

「そりゃそうだけどよ」

 

「他にもデメリットはある」

 

「まだあるんか……」

 

「まあ、それはお前達とは関係無いかも知れないがな」

 

「私達とは関係ない?」

 

「そうだ、はやての所在を知られるってことは俺の住んでいる場所も知られるってことだ

 そうなると俺も管理局から狙われる」

 

「あっ! そっか……」

 

「まあ、それについては気にしないで良い。そうなったら俺がこの星から出て行けば良い話だ」

 

「いやそれはあかんわ。私のせいでライさんにこれ以上迷惑は掛けられません」

 

「そうか……分かったと思うが、メリットに対してデメリットが大きすぎる。そしてメリットは

 今じゃなくても十分回収できる。となれば今回の蒐集にはやてを連れて行かないほうが良い」

 

「なるほどな。ライはそこまで考えていたのか」

 

「ちっ! 確かにお前の言っている事の方が正しいな」

 

 シグナムとヴィータがしぶしぶ納得した。

 

「さすがね。そこまで頭が回らなかったわ」

 

「うむ」

 

 シャマルとザフィーラも納得したようだ。

 

「その……ごめんなさい。ライさん。私、ライさんに迷惑が掛かることまで考えてなかったわ」

 

「気にするな。はやての言っている事が正しいの事実だ。だが、それは今じゃないってだけだ」

 

 俺ははやての頭を撫でながら言った。

 

「あっその……どうも」

 

 恥ずかしいからか顔が赤くなるはやて。可愛い奴め、これが将来あの狸になるかと思うと時の流れは残酷だと思うぞ。

 

「さて、これは提案だが」

 

「提案?」

 

 俺の言葉に反応するシグナム

 

「今回の話に限ってデメリットを消し、メリットを取る方法がある」

 

「え? そんなんあるんか?」

 

「ああ、だがやるかやらないかははやてが決めて良い」

 

「まあ、そんな方法があるならやるけど……」

 

「そうか、ではその方法と言うのは」

 

 俺ははやてにその方法を話した。その時のいやそうな顔はしばらく忘れないだろうな。

 

零冶 サイドアウト

 

 

八神はやて サイド

 

 私達家族は次元のはざまにある管理局の本局に来た。と言ってもライさんに連れて来られたから一瞬やったけど。それに景色が変わったと思ったら大きな部屋の中やったし。そこには気のええお婆ちゃんが居った。

 

 何でもその人が闇の書の件でライさんに協力してくれたお偉いさんだったようや。名前はミゼットさん。話をしてみてもそれを鼻にかけない気のええお婆ちゃんやったわ。そしてその人の秘書の方に演習場に案内された。どうやらその演習場に魔力提供者が集まっているらしい。

 

 その途中で分かった事なんやけど、その秘書さん、エリスさん言うんやけど、どうやらライさんと会った事があるらしいねん。何でもライさんが最初に受けた護衛任務がミゼットさんの護衛でその時にエリスさんも会った事があるらしい。

 

 まあ、何で私がこんな話をしとるかと言うと、そのエリスさんはライさんのことが好きなんや。本人から聞いた訳やないけど。女の勘ってやつやな、見てたらピンと来たわ。だって私がライさんを見る目と同じやったもん。

 

 そのエリスさんやけど強敵や。顔もええし、スタイルもええ。髪は金髪でロングストレート。胸もシグナムほどやないけどある。服の上からやから詳しくは分からんけどな。性格は物腰も柔らかく悪くない。いや寧ろ良い。これは私も気を引き締めんといかんね。

 

 エリスさんには悪いけど私も負けられんわ。

 

「着きました。ここです」

 

 おっと、考え事してたら目的地に着いたみたいや

 

「分かった。案内ありがとう。エリス」

 

「どう致しまして。今度お茶しましょう、ライ」

 

 さりげなくデートに誘ったやと! これが大人の余裕ってやつか! 勉強になります!

 

「ミゼットの部屋でな。そういえばこの間ミゼットにいれてもらった紅茶は美味かったな。

 あれを選んだのはお前だろう?」

 

「あら、良く分かったわね」

 

「お前の好きそうな香りだったからな。お前に良く似合っているよ」

 

 そんなこと言ったらあかんてライさん。エリスさん真っ赤やん。

 

「そ、そう? だったら終わったらお茶にしましょう?」

 

 ってしまった! 勉強しとる場合やなかった! 何とか阻止せな!

 

「悪いな。終わり次第すぐ戻るつもりだ。そんな暇は無い」

 

「あら残念ね」

 

 何とかなって良かったわ。油断も隙も無い。好きではあるんやけどね。

 

「それでは、俺が先に魔力提供者達に挨拶をする。俺が合図をしたら出てきてくれ」

 

「「「「わかった」」」」

 

「分かりました。ライさん」

 

 私はライさんにそう返事すると、ライさんは通路から出た。するとざわめき出した。

 

「あれが零騎士ライ?」

 

「本当に仮面を着けてる」

 

「本当にあれが噂の零騎士なのか? 俺たちと大して魔力量も変わらないが」

 

 そんな話し声が聞こえてきた。ライさんは気にした様子も見せず、整列している人たちの前に立った。

 

「皆さん、本日はお忙しい中お集まり頂きありがとうございます。既にご存知の方も

 居られるようですが、私がライです」

 

 ライさんが話し始めた。あんな敬語で話しているところ見た事無かったから新鮮やわ。

 

「早速ですが、闇の書の主を紹介したいと思います。それじゃ出てきてくれ」

 

 おっと合図や。ちょっと気が進まんけど行くとしよか。シャマルが車椅子を動かし、ライさんの方へ進んだ。すると周りがざわめき出した。そりゃそうやな

 

 だがそれは車椅子に乗った齢九歳のか弱い女の子が出てきたからやないと分かった。ましてそんな女の子を騎士の格好をした男女が囲っているからではない。何故なら

 

――≪何で狸のお面?≫

 

 そう、私は狸のお面を着けている。百歩、いや千歩譲ってお面はええ、でも何で狸なん?

 

「主……おいたわしや」

 

「はy……主、嫌なら言えば良かったのに」

 

「そうね(でも不思議と似合ってると思ってしまったわ)」

 

「……」

 

 守護騎士達が私を慰めてくれた。でも何故かシャマルとは後で話しせんとあかん気がするのは何故や? 私がライさんの傍まで来ると

 

「紹介します。この少女が現在の闇の書の主です。見ての通り彼女は闇の書にリンカーコアが

 侵食されており、両足が麻痺しています。また、このお面は諸事情により、顔と本名を明かす

 ことが出来ないための処置です。どうかご理解頂きたい。彼女の事は夜天と呼んで下さい」

 

「ど、どうも夜天です。こんなお面を着けたままで大変失礼ですが、この度は私のために

 お集まり頂きありがとうございます」

 

 私は頭を下げる。

 

「あれが闇の書の主か……」

 

「若いのにしっかりしている」

 

「でも」

 

「うん」

 

――≪あのお面のせいで台無しだ≫

 

 絶対お面のことを気にしている気がする。そう、ライさんの提案とは顔も名前も出さないというものだった。喋り方も標準語にするように言われた。

 

「では、早速蒐集を……と言いたいところだが、その前に」

 

 ライさんはそう言い列に並んでいる人たちを見ると

 

「B列の前から3番目の方、D列の前から7番目の方、それとE列の前から5番目の方は

 退場して下さい」

 

「「「な!」」」

 

 ライさんが突然トンでもないことを言い出した。

 

「何故だ! 折角魔力を提供しようとしたのに!」

 

「そうだ! 人の善意を無碍にするのか!」

 

「そうよ! 何のために来たと思っているのよ!」

 

「そ、そうですよ。ライさん。皆さんに失礼ですよ」

 

 私はライさんに抗議する。

 

「そうかな? まず最初の貴方、ガラン・べラード一等空士。陸戦ランクA、空戦ランクAA、

 魔力量はAA+、とても優秀だ。だが、貴方はどうやら魔力提供するつもりではなく、

 俺を倒して名を上げるのが目的だったようなので、丁重に退場頂こうかと」

 

「な、何故それを!」

 

「次に2番目の貴方、ベルモンド・ファレント一等陸曹。貴方はカラレス・ヴォルク提督に

 闇の書を奪ってくるよう任務を受けて来られているようなので、ご退場を。それと提督共々

 処分は追って通達します。エリス、そちらは頼んだ」

 

「はい、畏まりました」

 

「い、一体何の証拠が有って」

 

「では、この資料をどうぞ」

 

 そう言ってライさんはベルモンドさんに資料を渡した。渡された資料に目を通す。するとベルモンドさんの顔がドンドン青くなっていった。

 

「き、貴様、どこでこの資料を」

 

「まだ言い逃れしますか?」

 

「くっ、参りました。申し訳ありません」

 

「では、ご退場を」

 

「……はい」

 

 退場していくベルモンドさん。一体なんやったんやろ?

 

「そして最後の貴方、レイラ・リーベライト二等陸士。貴方は」

 

「いえ、言わなくていいわ」

 

 そういうとレイラさんは私の方を向き、

 

「私は11年前の闇の書事件で亡くなったアルト・ヒーニアスの妻よ」

 

「え?」

 

「いえ、正確には妻になるはずだった。彼が帰ってきた時に結婚するはずだったのよ。

 だけど帰ってきたのは、彼が愛用していた壊れたデバイスだけよ。もう分かったでしょう?

 私は闇の書は憎い。だから今日はその恨みを晴らすために来たの」

 

 私を見ながら言うレイラさん。

 

「貴方は11年前の事件とは関係ないのは分かっているわ。貴方が良い子なのも分かった。

 でもそれとこれとは関係ないのよ! 貴方は関係無いといくら自分言い聞かせても

 闇の書への憎しみは消えない! 今更闇の書を修復したところで彼は戻って来ないのよ!」

 

 泣き崩れるレイラさん。ライさんはレイラさんに近づき肩に手を置くと

 

「言いたいことは終わりですか? ではご退場を」

 

「……はい、すみませんでした」

 

 そう言って出口に歩き出すレイラさん。私はレイラさんの前に出る。

 

「レイラさん。アルトさんのこと、闇の書の主としてお詫びします。すみませんでした」

 

 私が謝ると目を見開いて驚くレイラさん。

 

「貴方は関係無いのに何故謝るのかしら?」

 

「過去にあった事でも関係無い事は無いです。私は今の闇の書の主ですから……

 闇の書の主として謝罪します。すみませんでした」

 

「そう……闇の書の修復が上手く行く事を祈っているわ。夜天さん」

 

「はい、ありがとうございます」

 

 そう言い残して演習場から出て行くレイラさん。

 

「あとは貴方だけですよ。ガランさん。すぐにご退場願います」

 

「分かった。だが」

 

 ガランさんは変な棒を取り出し、ライさんに向けた。

 

「お前を倒してからだ! 零騎士!」

 

 すると魔力弾がライさんに放たれた。

 

「ライさん! 危ない!」

 

「ふっ」

 

 ライさんは飛んできた魔力弾をいつの間にか右手に持っていた剣を振り抜いて魔力弾をかき消した。

 

「満足か?」

 

「いい気になるな! ファントムバスター!」

 

 今度はライさんにでっかい砲撃を放つガランさん。

 

「ふぅ、面倒だな」

 

 すると砲撃は急に上に曲がり、上空に反れた。

 

「な! 貴様何をした!」

 

 ライさんは左手をガランさんに向け。

 

「エアハンマー」

 

「な!」

 

 突然吹き飛んだガランさん。吹き飛ばされたガランさんはそのまま演習場の壁に激突した。

 

「がっは!!」

 

 するとガランさんは壁からずるずると地面にすべり落ちた。

 

「終わりだ。エリス」

 

「はい、『警備係の方、ガラン・べラード一等空士を退場させて下さい。

 それと拘束して牢に監禁して下さい』」

 

『了解しました』

 

 警備係の人たちがぐったりとしているガランさんを運び、退場させた。すると周りの人たちがざわめき出した。

 

「一体何が起きたんだ?」

 

「これが零騎士……」

 

「ライさん、大丈夫ですか?」

 

「問題無い。それでは蒐集を行うとしよう」

 

 それから私達は皆から魔力を蒐集し、つつがなく終了した。闇の書の方も最終的に562ページ埋まった。結局私は何の役にも立たなかったけど、いつか誰かの役に立つことをしたいと思った。

 

 それから私達はエリスさんの案内でミゼットさんの所に戻る事になった。

 

「あの……」

 

「何かしら?」

 

 私は戻る途中でエリスさんに話し掛けた。

 

「レイラさんはどうなりますか?」

 

「そうね。彼女がしようとしたことは許されないことだけど、事情が事情です。それほど酷い

 処分にはしませんよ」

 

「そうですか! 安心しました」

 

「ふふ、優しいのね。その優しさをライにも分けて欲しいわ」

 

「大きなお世話だ」

 

「そ、そんなことありません。ライさんは優しいですよ。私達を助けてくれてますし」

 

 私はライさんをフォローした。まあ本心やし。

 

「フォローありがとう。お前も見習ったらどうだ? エリス」

 

「考えておくわ」

 

「そんな気も無いくせに。それと夜天」

 

 夜天? ああ、私のことか

 

「何ですか?」

 

「レイラ・リーベライトのことは俺に任せておけ」

 

「え?」

 

 どうゆうこと?

 

「彼女の闇の書に対する憎しみは今後の修復活動に支障が出かねない。だから俺の方で

 フォローしておく」

 

 フォローって何する気なん?

 

「何かするつもりなの? ライ」

 

「秘密だ」

 

 秘密って……ちょっとくらい教えてくれてもええやん。

 

「秘密って、あなたいつもそうね。少しくらい教えてくれても良いじゃない?」

 

 私もエリスさんと同感や

 

「悪いな。確証が無い以上話す事は出来ない」

 

 確証? 何の?

 

「……そういうこと。分かったわ。貴方に任せる」

 

「え? エリスさん。今ので分かったんですか?」

 

「ええ、ライが何をしたいかはね」

 

 ホンマに? 私にはさっぱりわからんわ。

 

「流石だな」

 

「でも、本当に見つかるかしら?」

 

「さあな。探してみないことには何とも言えないな」

 

「そう、期待せずに待っているわ」

 

「勝手にしろ」

 

 ……なんやこの空気。言わなくても伝わるよ! ってことなんか? 私達の間に言葉は要らないってことなんか? あかん、このままでは勝てへん。何とかせんと!

 

「ライ」

 

 私が何とかしないとと思っていたらシグナムがライさんに話し掛けた。なんや?

 

「レイラ・リーベライトの事、よろしく頼む」

 

 え? もしかしてシグナムも分かったん?

 

「あたし達じゃどうしようも無いからな。悔しいがお前に任せる」

 

「よろしくね」

 

「うむ。頼んだ」

 

 え? 分かってないのって私だけ?

 

「任せておけ」

 

 あかん。こうなったら

 

「……ライさん。よろしくお願いします」

 

 この流れに乗るんや! するとライさんが私に近づいてきて私の頭に手を置いた。

 

「……見栄を張るな」

 

 バレテーラ

 

「……すみません」

 

「ふふふ、そうやって見ると親子みたいね」

 

 くっ! これが大人の余裕か! 私も負けてられん!

 

「だったら、母親はお前か? エリス」

 

「え! いや! その!」

 

 エリスさんが絵に書いたように慌て出した。

 

「冗談だ。エリスが母親では若すぎるからな」

 

 そう言うとライさんは先に歩き出した。

 

「もう……ふふふ」

 

 そしてまんざらでもない顔をしたエリスさんがライさんに続いた。私はその今のやり取りを見て一言言いたくなった。

 

「エリスさん羨ましいなぁ。私もいつか」ボソ

 

「はy、夜天ちゃん? 何か言った?」

 

「いやなんでもないよ」

 

 私の独り言は誰にも聞こえなかったみたいや。

 

 それから私達はミゼットさんの部屋に戻って一言二言話をした後、家に帰った。するとライさんが

 

「当初の目的であるページ数は確保できた。今後は管理局側の担当者と話をして方向性を決めて

 からだ。それまでゆっくりすると良い。俺も他にやる事が無い時は日中の護衛に加わる」

 

「「「「分かった《わかったわ》《心得た》」」」」

 

「それでは」

 

 そう良い残し、姿を消すライさん。

 

「結局私は何も出来なかったなぁ」

 

「そんなことありませんよ。主」

 

 私が呟くとシグナムが言ってきた

 

「え?」

 

「きっと主のお気持ちは管理局に伝わったはずです。決して無駄ではありません」 

 

「そうよ。それにこれで終わりじゃないわ。私達にはこれからがあるんだから」

 

 シグナム……シャマル

 

「これから……」

 

「そうだよ、はやて。あたし達は何時までもはやてに着いて行く」

 

「我等、主と共に」

 

「皆……そうやね。大事なのはこれからや。きっと私にしかできない事がある」

 

 そのためにも

 

「なぁ、皆」

 

 私が話しかけると皆私を見た。

 

「私に魔法を教えてくれへん? 私も強くなりたい」

 

 これからのために……今日のことを無駄にしないために……私は強くなる。そして、エリスさんに追い付くんや。ライさんの隣は渡さへん。

 

八神はやて サイドアウト

 

 

零冶 サイド

 

 俺が八神邸を後にしてからの事を簡単に説明しよう。何、直ぐに終わる。

 

 レイラ・リーベライトをアルト・ヒーニアスに会わせた。以上。

 

 え? また時空旅行券(タイムトラベラーチケット)を使ったのかって? まさか、また仮想現在(バーチャルリアリティ)のパターンの洗い出しはやりたくねぇよ。そもそもアルト・ヒーニアスは死んでなかったし。

 

 戻ってきたのは壊れたデバイスだけだったろ? もしかしたらやられる直前にデバイスに強制転移されたのではないかと思っていたら案の定そうだった。だが転移した場所が悪く、管理局に連絡することも出来ない文明レベルの場所に転移したので、どうしようも無かったと言う訳だ。

 

 探し物の行方(ダウジングフューチャー)で探し、飛雷神の術(ひらいしんのじゅつ)でレイラ・リーベライトの所に転移して、事情を説明。アルト・ヒーニアスの所に連れて行った。

 

 え? レイラの所にはどうやって転移したか? 演習場で肩に手を置いたときがあっただろ? その時にマーキングを付けた。プライベート侵害? 関係ないね。だって証拠が無いんだから。だから『僕は悪くない』

 

[裸エプロン先輩はお帰り下さい]

 

「『甘ぇよ。今の時代は手ブラジーンズだ。だが、その甘さ…嫌いじゃないぜ』」

 

「え? そうなんですか? 折角その格好をして来たのに……」

 

「うん、愛里。とりあえず着替えて来なさい」

 

「手ブラジーンズに?」

 

「普通の格好でお願いします」

 

[へたれマスターに敬礼]

 

「うるさいよ」

 

「大丈夫です。下に水着を着てますから」

 

 すぅ~……とエプロンをたくし上げる愛里。だが、そういう問題じゃない。

 

「分かったから着替えて来い」

 

「分かりました」

 

[良かったですね、マスター。今夜のおかずできましたよ]

 

「ありもしないことは言うな。それに俺はもっと慎ましい感じが好きなんだ」

 

[だそうですよ。愛里]

 

「参考になります」

 

「そろそろ先に行って良いかな?」

 

[「どうぞ」]

 

「はぁ~」

 

 どこまで話したっけ? ああ、レイラ・リーベライトをアルト・ヒーニアスに会わせたことはミゼットとエリスに話した。その翌日、レイラ・リーベライトは管理局に辞職願いを出したそうだ。

 

 何でもアルト・ヒーニアスが現在暮らしている次元世界で一緒に暮らすらしい。俺にとっては障害が無くなればどうでも良い。はやて達にも話したら、はやてが自分のことのように喜んでいたな。「今夜はお祝いや!」って言ってた。

 

 今の所は俺の計画通りに進んでいる。後はアースラが到着してからだな。

 

「着替えてきました」

 

 愛里が戻ってきた。いつものシェリアの格好だな。

 

「よかった、普通の格好だな。てっきりまた変な格好で来るかと思った」

 

[そうですね。てっきり裸Yシャツかと思っていました]

 

「やっぱり絶対守護領、じゃなかった。絶対領域が良いかと」

 

「そんなことだろうと思った」

 

[盲点でしたね]

 

「そして、実は」

 

[「実は?」]

 

「下着履いてません」

 

「な! なんだってぇ!」

 

[成長しましたね。愛里]

 

零冶 サイドアウト




さて、零冶の念能力紹介のコーナーです。

では、次の念能力はこれだ!

16、虫の知らせ(シックスセンス)
  系統:特質系
  説明:自分に取って都合の悪い未来になる時、感付く能力
     ただし、何が起こるかまでは分からない。
     分かるのは「あそこで何かがあるかもしれない」の程度
     感覚的にはピーンと来るというだけ。
     更にそれを回避するまで鳴り続ける。
     直感力を超強化している。

  制約
   1、自分自身のことでしか発動しない
   2、何が起きるかは分からない

  誓約
   なし

  派生技
   1、無意識の回避(オートパイロット)
    系統:特質系
    説明:自分に対する不意打ちの攻撃を自動回避する能力。
       あくまで自分が気付いていない事が発動条件。
       オン/オフは可能だが、基本はオンのままにしている。
       眠っている間も発動するので、勝手に避けられるため

    制約
     1、虫の知らせが使えることが条件

    誓約
     1、虫の知らせが使えないと発動しない


 バッドエンド回避に大貢献している能力の二つ目の能力ですね。そして、一番零冶が迷惑している能力ですね。

 零冶も作った当初は役に立つだろうと思った程度の能力だったのにこんなにはた迷惑な能力になるとは本人も思っていなかったです。

 次に出るのは何時になるのかな?


って感じです。では



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