原作を放って置くとバッドエンドになるんですが、どうしたら良いですか?   作:月の光

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今回の話は賛否両論あるだろうな(遠い目)

それでも私は後悔していない(キリ)

では、どうぞ


25_愛里「今日は焼き鳥丼です」零冶「今日もだろそれ」

零冶 サイド

 

 

 俺は八神はやて及び守護騎士たちの協力を取りつけたので、飛雷神の術(ひらいしんのじゅつ)で一旦自宅の自室に帰ってきた。

 

「ただいまっと」

 

[お疲れ様でした]

 

「ああ、だがこれで一つ懸念事項が減った。まずまずだろう」

 

[そうですね。しかし、模擬戦をする必要はあったのですか?]

 

「守護騎士達に協力するよう持っていくには、言葉で説得するより実際に力を見せたほうが

 早いだろうからな。それに守護騎士達の実力を測る意味でも良い収穫だ」

 

[そうですか。それで守護騎士達の実力はいかほどでした?]

 

「そうだな……プレシアさん・リニスコンビと同等ってところだな。そう考えると

 如何にプレシアさんとリニスが強いかが分かるな……」

 

[そうですね。そして如何にマスターがバグかが分かりますね]

 

「確かに……俺は強くなり過ぎたな。バランスブレイカーも良いところだな。

 まあ、プレシアさん達の方は戦闘スタイルの相性を考えれば守護騎士達に分がある。

 戦えば守護騎士達が勝つだろうな」

 

[それに戦闘経験の量は守護騎士達の方が上ですからね。コンビネーションが同等であれば

守護騎士のほうが優勢ですね]

 

「そうだな。まあ、今回は敵対することは無いから気にする必要は無いがな」

 

 

コンコンコン

 

 

 部屋のドアがノックされた。礼儀正しいやつだな。元にしたAIがミストとは思えん。

 

 

「入って良いぞ」

 

「失礼します。おかえりなさい、零冶さん。首尾はどうでした?」

 

 愛里が入ってきた……三角巾をかぶって。お母さんか!?

 

「ああ、順調に八神達の協力を漕ぎ着けた」

 

[そして、順調にフラグ建築中です]

 

「そんなバカな」

 

「さすがは零冶さんです」

 

「そんなバァカなぁぅ。あと愛里」

 

「はい?」

 

 俺は愛里に話しかける。

 

「言ってなかったが、この姿のときはライと呼んでくれ」

 

「え? 何故ですか?」

 

「大丈夫だとは思うが、万が一呼び間違えないようにする為だ。言い分けてくれ」

 

「分かりました。ライ」

 

 まあ、大丈夫だとは思うがな。念には念をってやつだ。

 

「よし、ではこれからミゼットに連絡を取る。愛里、悪いが」

 

「はい、では私は掃除に戻ります」

 

 

バタン

 

 

「よし、ミスト。ミゼットに連絡を」

 

[了解しました。…………マスター。どうぞ]

 

「ああ」

 

『はい。貴方のお母さんですよ』

 

 

ピッ!

 

 

「ミスト、お前が間違えるなんて珍しいな。どうした? ついに壊れたか? メンテしようか?」

 

[いえ、間違えてません。と言うか酷い言われようですね。メンテナンスはお願いします。

私を思う存分弄んで下さい]

 

「いやいや、間違いだろ? 俺はミゼットに掛けろと言った筈だぞ?

 なんで第一声がお母さん? それと弄んでなどいない。人聞きが悪いぞ」

 

[さあ? それでも私はやってない]

 

 ミストが某映画のタイトル張りに無罪を主張してきた。

 

「あっそう。ならもう一度掛けてくれ」

 

[了か、あちらから掛かってきました]

 

「そうか、繋いでくれ」

 

[了解……どうぞ]

 

『はい、ライです』

 

『いきなり切るなんて酷いじゃない。ちょっとした冗談なのに』

 

『ただ今留守にしております。発信音の後にメッセージを』

 

『ちょっとライ? 聞いてるんでしょ?』

 

『ピー』

 

 俺は七色の声帯(ウグイスボイス)を使って、発信音の声を出す。

 

『口で言っているとは思えないほどの精密な音ね』

 

『…………』

 

『ライ?』

 

『…………』

 

『ごめんなさい。謝るから無視しないで』

 

『はぁ~、いい加減にしないとお前との縁を切るぞ?』

 

『それは困るわね。分かったわ。でも気が変わったらいつでも言ってね?

 私は何時までも待つわ』

 

 乙女か!?

 

『安心しろ。そんなことは一生無い』

 

『それは残念ね。それにしてもついこの間、貴方から連絡を貰ったばかりなのに立て続けに連絡が

 来るなんて……雪でも降るのかしら?』

 

『すまんな。またお前に頼みたいことがあるんだ』

 

『本当にどうしたのかしら? 槍でも降りそうなくらい珍しいわね』

 

『本当に降らしてやろうか?』

 

 デモンズランス・ホーリーランス・フリーズランサー……好きなのを選べ。桜羽のアブソリュートランスでも良いぞ。

 

『冗談よ、やめて頂戴。それで何かしら?』

 

『ああ、まずは簡潔に言うぞ。闇の書の主と接触した』

 

『……詳しく話して下さい』

 

『そのつもりだ』

 

 

~状況説明中~

 

 

『なるほど……闇の書のバグによる主の障害、その主を救うために蒐集活動をしたいと』

 

『そうだ。もちろん主に魔法生物からのみ蒐集を行うし、生態系を崩さないようアフターケアも

 行う。そちらに迷惑は掛けない。だから許可、ないし協力をして欲しい』

 

『……事情は分かりました。しかしこれほどとなると私の一存では難しいですね。

 緊急会議を開き、早急に話をまとめます』

 

『分かった。こちらの要求を伝える

  一つ、闇の書の蒐集活動の許可、または協力。

  二つ、この件を傭兵ライに一任すること。

  三つ、闇の書の主に対し、詮索しない、及び罪に問わないこと。

  四つ、回答は遅くても明日までに出すこと。

 以上だ。今の要求が通らない場合は俺、傭兵ライは管理局と敵対し、蒐集活動を強行する』

 

『要求承りました。ふふ、随分強気に出たわね』

 

『俺を敵に回したらどうなるか、管理局ならよく分かっているだろう?』

 

『ふふ、そうね……ねぇ、ライ』

 

『なんだ』

 

『貴方の見立てでは、闇の書救済の計画はどれほどの確率で成功するかしら?』

 

 ミゼットが聞いてきた。ふっ、ミゼットの不安そうな顔が目に浮かぶな。

 

『さあな、さっきも言ったが成功するかは闇の書の主にかかっている。俺にも分からないことだ』

 

『そう……』

 

『だが』

 

『え?』

 

『傭兵ライの名に懸けて誓おう。必ず成功させると』

 

『ふふ、要らぬ心配だったわね。その子のこと……必ず救ってあげて頂戴』

 

『分かった。ああそれと』

 

『何?』

 

『分かっているとは思うが今回の件で貸し借りは無しだぞ?』

 

『あら? こんなに協力してあげているのに?』

 

『そもそも闇の書の件は管理局が対処しなければならないものだ。それを俺が代わりに対処して

 やると言っているんだ。礼を言われこそすれ、貸しを作るなどあり得ない』

 

『……それもそうね。分かったわ』

 

『さすが、ミゼットだ。話が分かる』

 

『貴方のことだもの、渋ったところでこちらの不利になる情報を持っているでしょう?』

 

『ご名答だ』

 

『ふふ、まったく怖いわね。参考までに聞かせてくれるかしら?』

 

『なんてことは無いさ。歴代主達による改竄には管理局の前身や現管理局が

 少なからず絡んでいるというだけのことさ』

 

『……そう。やっぱりそうなのね』

 

『そういうことだ。もし渋るつもりならこのことを公表すると言うつもりだった。

 自分達で種を蒔いたにも関わらず、自分達で刈ることもできず、数々の悲劇を生み出し、

 それを闇の書の主に押し付けた無能な集団だと付け加えてな』

 

『それなら、管理局としては要求を呑まざるを得ませんね。ですが、

 その情報はどこで手に入れたの? もし無断で無限書庫を使用したなら……』

 

『俺が同じ轍を踏むと思うのか? これは俺の独自ルートで手に入れた情報だ』

 

『そう? 安心したわ。それを聞いても?』

 

『構わない、だが分かっていると思うが他言無用だぞ?』

 

『分かったわ』

 

『アルハザードでだ』

 

『な、何ですって?』

 

『アルハザードには様々な情報があった。流石に未来の情報は無かったが、過去から現在に

 至るまで、様々な情報を収集していた。その中の情報だ。

 それにアルハザードは事故で虚数空間に呑まれたのではなく、自ら虚数空間に流れたのだ。

 その技術を悪用されないようにな』

 

『そうだったの……貴方はどうやってアルハザードに?』

 

『悪いな。そこまで教える義理はない』

 

『あら残念』

 

『では、早急に話をまとめてくれ。ミゼット統幕議長』

 

『畏まりました、傭兵ライ。それでは』

 

『はい、では………ふぅ、これで良いだろう」

 

[お疲れ様でした]

 

 ふぅ、疲れた。ああそれと、アルハザードの件は本当だからね、探し物の行方(ダウジングフューチャー)で探し出したんだから。虚数空間では魔法は使えなかったが、念は使えたからオーラ放出で移動可能だった。他の発も使えるから問題なし、念能力様様だぜ。

 

「ああ、だがまだ終わりじゃない。管理局の方はミゼットに任せるとして、もう一つの

 懸念事項を片付けに行く」

 

[そうですね。今回の一番のやり過ぎポイントですから派手に行きましょう]

 

「派手な要素はまったく無いがな」

 

[例えですよ。例え]

 

「たく、『愛里行ってくる』」

 

『はい、行ってらっしゃい。ライ』

 

 俺は神の不在証明(パーフェクトプラン)を発動させ、飛雷神の術(ひらいしんのじゅつ)で転移した。

 

 

零冶 サイドアウト

 

 

リーゼアリア サイド

 

 一体どういうことだろう? 監視対象の家に一度封時結界が展開されたと思ったら、数分で結界が解除された。それ以降特に魔法反応も無く、特に何も起きていなかった。

 

『一体なんだったのかしら?』

 

『さぁね。大方闇の書の主が魔法を見たいとか言ったんじゃない?』

 

 私の妹ロッテがさっきの出来事を推測する。

 

『それなら良いけど、もし蒐集活動をするつもりだと言うなら』

 

『関係ないでしょ? もしそうならあの子も所詮他の主達と同じで力を求めた自分勝手な

 やつってだけだよ。寧ろその方が』

 

「心置きなく葬れる、か?」

 

「「ッ!?」」

 

 突然後ろから声を掛けられた。私達はすぐさま後ろを振り返り、そいつから距離を取る。

 

「はじめまして。私はライ。傭兵をやっております。以後お見知りおきを」

 

 ライと名乗った仮面の男は一礼する。

 

「ライってまさかあの零騎士?」

 

「な、何でこんなとこに!」

 

 何故こんなところに零騎士が! くっ、闇の書のことは隠しきらないと!

 

「さっき八神邸で封時結界が展開されたな」

 

「だ、だからなんだ」

 

 ロッテが零騎士に聞く。

 

「あれは俺が張ったんだ」

 

 あの結界はこいつが張った? まさか!

 

「だからなんだっての?」

 

「なんだ? 分からないのか?」

 

「何がよ!」

 

「つまり貴方は闇の書のことを既に知っていると……」

 

「え!?」

 

 私は零騎士に確認する。というかロッテ、気付きなさいよ。

 

「その通り、そして俺は八神はやてに協力することになった」

 

「「な!?」」

 

 闇の書の主に協力することになったですって! あの零騎士が……

 

「闇の書の蒐集を行い、闇の書を完成させる」

 

「お前! あれが何だか分かってんの! あれは!」

 

「完成すると同時に主を取り込み破壊を撒き散らす化け物になる、だろう?」

 

「そこまで分かっていてッ!? そうか、お前もあの魔導書の力を求めるクズって訳ね」

 

 そう……こいつも力に狂ったクズなんだわ。

 

「ほう、ではいたいけな少女を利用し、闇の書ごと永久凍結封印を施し、

 虚数空間に葬り去るやつらはクズではないと?」

 

「「な! 何で私達の計画を!?」」

 

「それだけじゃないぞ。お前達の名がリーゼアリアとリーゼロッテだということ。

 お前たちの主がギル・グレアムであること。そして11年前に闇の書事件で死亡した

 クライド・ハラオウンの上司であり、闇の書に復讐をするために現主である八神はやてに

 両親の知り合いだと偽り、財産管理と資金援助等を行っていること。

 そして、闇の書が覚醒させるよう支援し、最後は永久凍結封印を施そうとしていること……」

 

 くっ、ほとんど全てじゃない……。最悪だわ、こいつに知られてしまうなんて……。ここで葬り去らないと!

 

「そこまで知られちゃ仕方ないね。悪いけどここで死んでもらうよ」

 

 ロッテも私と同じ考えみたいね。なら

 

「はっ!」

 

 私は直ぐに零騎士から距離を取り、封時結界を展開させ、人間モードに変身する。

 

「あんたに恨みはないけど、容赦しないよ!」

 

 ロッテも直ぐに人間モードに変身して零騎士に襲い掛かる。避けない? ロッテの攻撃を正面から受ける気? ロッテの拳がやつの顔に入ると思った瞬間

 

「「え?」」

 

 一瞬でロッテは宙に舞い、逆さまになり、地面に叩きつけられた。

 

「かっは!」

 

「ロッテ! 貴様!」

 

 私はやつにバインドを掛けるため、魔法を発動させる。

 

「リングバインd え? 居ない!」

 

「動くな」

 

「ッ!?」

 

 私が零騎士を見失うと後ろから首に剣を突きつけられ、声を掛けられた。

 

「ア、アリア! ごほっごほっ!」

 

「さて、言うことを聞いてもらおうか?」

 

「だ、誰がお前の言うことを……」

 

「お前達に拒否権は無い。俺と共にギル・グレアムの所に来てもらおうか」

 

 こいつ、まさかお父様に手を出すつもり! そんなこと絶対にさせない!

 

「誰がお父様の居場所を教えるものか……」

 

「死んでも……答えないよ」

 

「ふふ」

 

「何がおかしい!」

 

「人の話はちゃんと聞け、俺は案内しろとも居場所を吐けとも言っていない。

 来て貰うと言ったんだ」

 

「ま、まさか」

 

 こいつ!お父様の居場所を!

 

「その」

 

 

フッ

 

 

「まさかだ」

 

「「な!?」」

 

 突然目の前の光景が変わった。此処はお父様の自宅だわ。

 

「アリア、ロッテ。何故ここに? それと君は誰だ? この子達に何をした」

 

「はじめまして、ギル・グレアム提督。私はライ、傭兵をやっております」

 

「ライ……あの零騎士が何の用かな?」

 

「お父様……こいつは私達の計画を」

 

 ロッテがお父様に言う。

 

「そうか……それで私達を殺しに来たのかな?」

 

「まさか、俺は交渉をしに来たんですよ」

 

「交渉だと?」

 

「その通り、彼女達に手荒なことをして申し訳ありません。私としては穏便に済ませたかったの

 ですが」

 

「いや、恐らく二人から手を出したのだろう。私達の計画を知っている以上、口封じを

 しようとして」

 

 うっ、ばれてる。

 

「お察しの通りですよ。話が早くて助かります」

 

「それで? 交渉とは何かな?」

 

「もちろん、闇の書についてですよ。その件を俺に任せて貴方がやろうとしていることを

 止めてもらたい」

 

 こいつ!私達がどれほど苦労したかも知らないくせに勝手なことを!

 

「お父様! こんなやつの言うことを聞くことなんて無いよ!」

 

「そうです! それに私達は良かれと思って!」

 

「良かれと思って人を一人見殺しにします、か?」

 

「お前!」

 

「ロッテ、アリア。静かになさい」

 

「でも!」

 

 ロッテがお父様に反論する。

 

「ロッテ!」

 

 

ビクッ

 

 

 お父様がロッテに怒鳴る。私までビックリしちゃったわ。

 

「……ごめんなさい」シュン

 

 ロッテが落ち込んでいる。お父様に怒鳴られたのがよっぽどショックだったのね。

 

「もう良いですか?」

 

「ああ、すまないね」

 

 零騎士が知らぬ顔で話し出す。そもそもお前のせいでこんなことになったのよ! ロッテも零騎士を睨みつけてる。

 

「さて、止めてくれと言って、はい分かりましたとならないことぐらい分かっています。

 ですから交渉です」

 

「つまり、私達が止めるに値する何かがあると……」

 

 お父様が零騎士に確認する。そんなのある訳無い。私達はクライド君の復讐のためにやってるんだ。止めて欲しいならクライド君を生き返らせてみろ!

 

「もちろんです。もっとも俺がこれから出すものを見れば、そもそも復讐など必要ない

 ことと思うでしょうね」

 

 こいつ、何を言っているの? 何を出されたって私達は……!?

 

 

フィィィィン

 

 

 突然、零騎士が魔法陣を展開し出した。これは召喚魔法! 一体何をするつもり? いやそれよりお父様を守らないと!

 

 

ザザッ

 

 私とロッテはお父様を守るように零騎士とお父様の間に入る。そして召喚陣から人が出てきた。

 

「「「……え?」」」

 

「お久しぶりです。グレアム提督」

 

 そこには

 

「「クライド……君」」

 

「クライド……本当に君なのか?」

 

「はい、クライド・ハラオウン本人です」

 

 そう、11年前に死んだはずのクライド君が居た。

 

「これが俺の交渉です。貴方達の目的であるクライド・ハラオウンの復讐はそもそも

 本人が死んでいないのですから、もう意味を成さないでしょう?」

 

「い、一体どういう事なんだ……何故クライドが生きている? クライドはあの時」

 

「簡単なことですよ。クライドさんは死んでおらず、ずっと生きていたということです」

 

 死んでなかった? ずっと生きていた? なら何で今まで生きてるって教えてくれなかったの? クライド君……

 

「どういう事なのかな? ライ君、生きていたなら何故今までこのことを隠していた?」

 

「もちろん説明するさ。だが、これから話すことは全て他言無用だ。他の者に話せば、

 直ぐに処理する。良いな?」

 

 零騎士から威圧を感じる。それほどのことと言う事ね。

 

「「「分かった《分かったわ》」」」

 

「クライドさんは本来、死んでいたはずだった。だが今、実際に生きている。それが

 意味することと言えば?」

 

「本当は死んでいたはずだった? まさか!」

 

 どういう意味? お父様は気付いたみたいだけど。

 

「お父様。どういう意味なの?」

 

「私も気になります」

 

「……過去を変えた」

 

「「え?」」

 

「正解だ。俺は過去に行くことができるレアスキルがある」

 

「「えぇぇ!?」」

 

 過去に行くですって!? そんなのあり得ないわ!

 

「僕も最初に話を聞いた時は信じられませんでした。ですが、実際にこうなった以上

 信じざるを得ません」

 

 クライド君が補足してくる。まさか本当に……

 

「まさか、信じられん……」

 

「貴方が信じようと信じまいと事実は変わりません。俺は11年前の闇の書事件でクライドさん

 がアルカンシェルに呑まれる前に救い出し、地球の海鳴市の隣町である藤丘町に匿った。

 その際に俺が未来から来たこと、グレアム提督が復讐のため、一人の少女を見殺しに

 しようとしていることを話した。もちろん、管理局には接触しないように言ってな。

 そして現代に戻りクライドさんに接触した」

 

「何故、管理局に接触しないよう言ったのだ?」

 

「過去を変えることのリスクを最小限にするためだ。バタフライ効果と言う説がある。

 これは蝶が羽ばたいた時に発生した風をきっかけに遠い未来の遠い場所で竜巻が発生する

 という説だ。俺が警戒したのはこれだ。本来死んでいたはずの人間の死をなかったことに

 するということは現在に及ぼす影響が計り知れない。最悪、一つの次元世界が

 滅んでしまうかもしれないほどに」

 

「……なるほど、だからクライドのことを隠していたと」

 

「そうだ」

 

 と、とんでもない話だわ……こいつ一体何者なの? 過去に行けるなんて

 

「だが、俺はもう二度と過去に行くレアスキルは使わないだろう」

 

「なんでよ。そんな便利な力を使わないなんて……」

 

 ロッテが零騎士に聞いた。

 

「過去を変えると現代に及ぼす影響が大きいからだ。今回の件だけでも、

 大きく変わったところはある。そして変わってしまった結果を元に戻すことは

 まず不可能。戻そう戻そうとして更に悪化することも考えられる」

 

「なるほどな」

 

「さて、最後の確認だ。貴方の計画は止めてもらえますね?」

 

 零騎士が私達に確認してくる。そんなの決まってる。

 

「ああ、我々の計画は破棄する。もはや必要なくなった。本当に……ありがとう」

 

 お父様が深々と頭を下げる。

 

「それを聞いて安心しました」

 

「だが、このままではあの子が……」

 

「その心配には及びません。そちらは俺が動いています」

 

「というと?」

 

「実は」

 

 

~ライ説明中~

 

 

「そうか、闇の書を修復するか……ではあの子を救ってくれるのだな……」

 

 闇の書の真実がそんなだったなんて……私達はずっと分かっていなかった。いや分かろうとしていなかった。恥ずかしい限りね

 

「ええ、今頃ミゼット統幕議長が主だった役員達に招集を掛けているでしょう。

 そこで俺に一任されれば、八神はやてと夜天の書のため全力を尽くせます」

 

「……こんな事言えた義理ではないが、あの子を救ってやってくれ。頼む」

 

「貴方に言われなくともそのつもりですよ。それと貴方がやろうとしたことは、

 はやてにちゃんと話し、謝ることですね」

 

「……あの子は許してくれるだろうか……」

 

 お父様……

 

「違うな、間違っているぞ」

 

「え?」

 

 間違っている? 何を言うつもり?

 

「許してもらうために謝るのではない。貴方が謝るべきだから謝れと言っている。

 許すかどうかはあの子が決めることだ。貴方が考えることじゃない」

 

「お前! お父様がどれだけ苦しんだと思っているんだ! どれだけ悩んだと!」

 

 ロッテが零騎士に突っかかる。でも私もその気持ちは分かる。ロッテが言わなければ私が言っていた。

 

「知るかそんなこと。苦しんだ? 悩んだ? どれだけの苦悩を抱え、どれだけ胸が痛んでも、

 そんなものは人を殺していい理由にはならない。甘ったれるな」

 

「「うっ」」

 

 正論だわ。ぐうの音もでない。

 

「ギル・グレアム」

 

「……何かな」

 

「お前が申し訳ないことをしたと本当に思っているならやることは一つだ。よく考えろ」

 

「……分かった」

 

「それとクライドさんのことはハラオウン親子に伏せていて下さい。機を見て俺から話します」

 

「うむ、了解した」

 

「では、帰りましょうか。クライドさん」

 

「ああ、分かった。では、グレアム提督。またいずれ」

 

「うむ、いつかまた酒を酌み交わそう」 

 

「はい、必ず」

 

 

フッ

 

 

 そう言って、クライド君と零騎士は姿を消した。その後お父様は顔に手を当て、ひっそりと涙を流した。

 

「本当に良かった……本当に」

 

 すると、通信機がなり、ロッテが出た。

 

「はい……はい……分かりました、では。お父様。本局から連絡。

 これから緊急会議を行うので、直ぐに集まるようにだって」

 

「ああ、分かった。行こう」

 

 こうして私達はミッドチルダに転移した。

 

 

リーゼアリア サイドアウト

 

 

零冶 サイド

 

 

 俺はクライドさんを彼の家に送ってから、再び自宅に戻った。さて、そろそろ俺が何をやり過ぎたかはもう分かっただろうが、ちゃんと説明しよう。まずは新たに作ったレアスキルの紹介だ。

 

 30、時空旅行券(タイムトラベラーチケット)

   系統:具現化系

   説明:指定した過去の日時に行ける券を2枚1組で具現化する能力。

      具現化したチケットを1枚破ることで目の前にゲートが開く。

      そのゲートを潜ることで指定した過去の日時のゲートを開いた

      場所に行くことができる。

      使用最大時間は1時間。帰るにはもう1枚のチケットを破り、ゲートを開き、そこを

      潜るか、使用時間が過ぎるまで待つ。

      また、旅行券は1年に一度しか発行できない。

 

 31、仮想現在(バーチャルリアリティー)

   系統:具現化系

   説明:過去のあの時に、こうしていたら今頃どうなっていたか? ということを

      シュミュレートできる端末を具現化する能力。

      精度は脅威の100%の確率となっている。

 

 もう分かったかもしれないが、仮想現在(バーチャルリアリティー)でクライドさんを助けたらどうなるか? を様々なパターンでシュミュレートし、現在に最も変化を与えない方法を探し、時空旅行券(タイムトラベラーチケット)で過去に行き、クライドさんを助けたという訳だ。

 

 今回、一番時間が掛かったのは仮想現在(バーチャルリアリティー)で最も影響の与えないパターンの洗い出しだ。影分身1万体を駆使しても2週間掛かった。めちゃくちゃ疲れたよ、主に頭が。そして、最も影響を与えない方法は

 

 ①クライド・ハラオウンを助け、海鳴市の隣町、藤丘町に匿う。

 ②ライが未来から来たこと、及び目的を話す。

 ③匿う場所は○○マンションの3階、0325室。

 ④戸籍を「原尾(はらお) 蔵人(くらと)」で作成、嘘経歴を作成する。

 ⑤中小企業××社へ入社させる。

 ⑥元手資金を126万3501円にする。

 

 だった。これによって現在との変更点は

 

 ①2年後、中小企業××社は業績が悪化し、倒産するはずだったが、

  原尾 蔵人の活躍で建て直し、8年後大企業になった。

 

 の一つだけだった。もちろん経済にも多少なりとも影響を与えたが、良い方向だったので、問題ないと判断し、これで実行した。

 

[まったく、やり過ぎたらどうなるか、分かっている筈なのに、またやるなんてマスターは

バカなの? 死ぬの?]

 

「ひでぇな。良いだろ? 闇の書事件が片付けば次のストライカーズまで何も無いんだから」

 

[あれ? なのはちゃん撃墜はどうするんです?]

 

「さあな。そもそもそれが起きるかは分からないし、起きるなら起きるでなのはには必要な

 イベントだろう。だから放っておく」

 

[そうですか、了解しました]

 

 

コンコンコン

 

 

「どうぞ」

 

 

ガチャ

 

 

「お帰りなさい、ライ、ミストさん」

 

「ああ、ただいま。愛里」

 

[ただいま戻りました]

 

「如何でした?」

 

「ああ、グレアム提督の説得は成功だ。人事は尽くした。後は天命を待つのみだ」

 

 俺はバリアジャケットと変身魔法を解き、零冶に戻る。

 

「そうですか。では、丁度お昼ですし、昼食にしましょう」

 

「ああ、助かるよ。今日は何だ?」

 

「今日は焼き鳥丼です」

 

「今日もだろそれ」

 

「女は黙って焼き鳥丼、です」

 

「そこまでシェリアを真似しなくて良い」

 

「ふふ、冗談です。今日は零冶さんの好きなカレーです」

 

「ちゃんと甘口だろうな」

 

「もちろんです」

 

[アスベルか!?]

 

「「冗談だ《冗談です》」」

 

[まったく]

 

「それで何なんだ?」

 

「はい、あんかけチャーハンです」

 

「そうか、よし行こうか」

 

「はい」

 

 翌日、ミゼットから闇の書の件に関して、俺の要求は全て通ったと連絡があった。驚いたことにまったくもめなかったらしい。「零騎士なら良いや」ってなったらしい。それで良いのか管理局。

 

[そう言えば、私の昼食は?]

 

「いや、お前食えないだろ?」

 

[デバイス差別反対です。よってメンテナンスを要求します]

 

「はいはい、今夜やってやるよ」

 

[やったー! 今夜は寝かせないぜ?]

 

「いや、寝させろよ」

 

 

零冶 サイドアウト




零冶の念能力紹介のコーナーです。

では、次の念能力はこれだ!


13、虹の魔力(レインボーマジック)
  系統:変化系
  説明:炎熱・氷結・電撃・風圧・大地・闇黒・光輝の魔力変換資質を使うことができる能力。
     オーラを消費し、魔力の性質を変化させることで属性を変化することができる。
     また、複数の変換を同時に使うことも可能。

  制約
   1、変換する際は消費オーラと消費魔力の大きさを同じにしなければならない

  誓約
   1、消費オーラと消費魔力が同じでないと発動しない


 Q、最強の魔導師といえば?

と聞かれたら

 A、全ての魔法を使いこなせる

だと思います。それを実現するための能力です。

 ドラクエ風に言うと大魔導師です。最後の頃のポップのカッコ良さは異常だと思う。

「一瞬でも! 閃光のように!」

 良い言葉だな~


って感じです。では

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