原作を放って置くとバッドエンドになるんですが、どうしたら良いですか?   作:月の光

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やっぱり関西弁は難しいな~
おかしな所があったら指摘お願いします。


23_ミスト『男の涙はみっともないですからね』零冶『お前ほんとに容赦ないな』

零冶 サイド

 

 さて、今は10月上旬。闇の書救済計画の下準備も全て終わったので、これから八神邸に行ってきます。

 

[マスター、お気付きだと思いますが、今回も色々やり過ぎてますよ?]

 

「もちろん分かっている。だが、この世界が原作通りにならない以上、原作通りに進める

 意味は無いだろう。なら徹底的に救済してやろうと思ってな」

 

[なるほど、そうやってハーレムを形成しようという魂胆な訳ですね]

 

「はっはっは! ご冗談を! そんな簡単にフラグが立ってたまるか。

 さて、行くとするか、ミスト」

 

[了解、セットアップ]

 

「よし、では行ってくる。愛里(えり)

 

「はい、いってらっしゃい。零冶さん」

 

 え? 愛里(えり)って誰だって? コピーパペットだよ。戸籍を作ったんだが、月無シェリアって何か変だなってなったので、シェリア→シエリア→エリ→愛里って感じで月無愛里になった。ポジション的には俺の保護者だ。学校の三者面談が楽になったよ。

 

「ああ、行ってくる。神の不在証明(パーフェクトプラン)発動」

 

 俺は姿を消し、飛雷神の術(ひらいしんのじゅつ)で転移した。

 

「御武運を」

 

零冶 サイドアウト

 

 

はやて サイド

 

 

「「「「ご馳走様でした《わふ》」」」」

 

「はい、お粗末様~」

 

 私は皆でご飯を食べ終え、食器を片付け始める。

 

「はやてちゃん、手伝いますよ」

 

「ほうか? じゃあ頼むわ」

 

 シャマルが食器の片付けを手伝ってくれることになった。

 

「はやて~ あたしも何か手伝うことあるか?」

 

「大丈夫やで~。ヴィータはゆっくりしててええで」

 

「う、うん、分かった」

 

 そうヴィータに言ったら、ヴィータが少し落ち込んでもうた。

 

「あっ、でも今日は食器いっぱい使うたから、流しに持ってくの手伝ってくれるか?」

 

「ッ! 分かった!」

 

 笑顔になったヴィータ。かわええな~

 

「まったく、ヴィータは……」

 

「良いではないか、将よ。主が好きなのだ。もちろん我らもな」

 

「そうだな」

 

 ふふ、私幸せや。こんな日がずっと続けば良いのに……私がそう思っていると突然

 

 

キーーーーン

 

 

 辺りの雰囲気が変わった。

 

「「「「ッ!?」」」」

 

「な、何やこれ?」

 

「全員、主を守れ!」

 

 シグナムが号令すると皆が私を囲むように陣取り、私が考えた騎士の服を着ていた。

 

「な、なぁ、シグナム、これ何なんや? 突然周りの雰囲気が変わったんやけど」

 

「今は詳しく説明できませんが、簡単に言うと敵襲です」

 

「え? 敵? な、なんで?」

 

「おそらく、闇の書を狙っているのでしょう」

 

 闇の書を? 何で? 誰が? どうして? 私が色々考えてしまい不安になっていると

 

「安心しろ、はやて。はやてのことはあたし達が守る」

 

 ヴィータが私に言った。違う、そうやないんや。

 

「私のことはええから、皆、怪我せんといてな。お願いや」

 

 私が不安なのは皆の事や、私のせいで家族が傷つくところなんて見たくない。

 

「「「「はやて《ちゃん》《主》……」」」」

 

「分かりました、主。我らヴォルケンリッター、必ずや無傷で勝利してみせます」

 

「……しかし、何で何も来ねぇんだ?」

 

「分からん、だがそれも敵の作戦かも知れん。気を抜くな」

 

 しばらく、そのままの状態で時間が過ぎていくと

 

 

ピンポーン

 

 

 家のインターホンが鳴った。

 

「あれ? 誰か来た?」

 

「主、この結界の中は魔導師しか存在しません。無論例外はありますが……

 おそらく敵の魔導師が来たのでしょう」

 

「そうなんか? でも、敵なら何でインターホン鳴らすんや?」

 

「分かりません。敵の作戦かもしれませんので、素直に出る必要はないでしょう」

 

 

ピンポーン

 

 

 またインターホンが鳴った。なんやホラーみたいやな。

 

「シグナム。玄関にでっかいのかました方がいいんじゃねぇか?」

 

「待て、不用意に動くな。それが敵の作戦かもしれん」

 

「ていうか、そんなことしたら家が壊れてまうやん」

 

「ご安心を。この結界内で破壊したものは結界が解ければ元通りになります」

 

「そうなんや」

 

 

ピンポーン ピンポーン

 

 

 またまたインターホンが鳴った。しつこいな~

 

「シャマル、周りの敵の数は?」

 

「今確認したけれど、玄関先に一人だけだわ」

 

「うむ、私も探ってみたが、他の気配は無い」

 

「そうか」

 

「どうすんだよ。シグナム」

 

「もう少し、様子を見る」

 

 

ピンポピンポピンポピンポピンポピンポ……

 

 

「だー! うっさいわ! ヴィータ! 一発かましたれ! あっ、一応手加減してや」

 

「分かった! グラーフアイゼン!」

 

[了解]

 

「待て! ヴィータ!」

 

「はああああ! テートリヒ・シュラーク!」

 

 

ピンポピンポピ ドッカーーーン

 

 ヴィータが玄関ごと吹き飛ばした。って、ちょっ! や、やりすぎちゃう?しかも直前までインターホン鳴らしとったで? 直撃やん……だ、大丈夫やろか?

 

「ヴィータ! 不用意に動くな! 何かあったらどうするつもりだ!」

 

「いいじゃねぇか、こうして倒せたんだしよ。早速敵の顔を拝もうぜ」

 

 シグナムがヴィータを咎める。てか私がやれ言うたんやけど私には言わんの?

 

「いきなり攻撃とはご挨拶だな」

 

 突然私達の後ろから声が聞こえてきた。

 

「何!?」

 

 私達が後ろを振り返るとそこには黒いコートを着て顔の上半分を仮面で隠した男の人が居った。

 

「貴様! いつのまに!」

 

 シグナムが仮面の人に話しかける。

 

「そこの赤髪の子が玄関を壊した時にだ。勝手に入ってしまってすまないな。インターホンを

 鳴らしても出てこない上にいきなり攻撃をされたので勝手に入ってしまった」

 

「へ……」

 

「ん?」

 

「変態やーー!」

 

「失礼な……せめて変人と言ってくれ」

 

≪(あっ、変なのは認めるんだ)≫

 

「さて」

 

 仮面の人がそう言うと

 

 

ザザッ

 

 

 シグナムたちが私を囲うように並び、仮面の人を睨む。そして、

 

「てめぇ、一体あたし達に何のようだ!」

 

 ヴィータが

 

「もし、はやてちゃんに何かするつもりなら」

 

 シャマルが

 

「我らが相手になる」

 

 ザフィーラが

 

「覚悟しろ」

 

 シグナムが仮面の人に言った

 

「……ふぅ、落ち着いてくれ。話がしたいだけだ」

 

「話だと」

 

「そうだ。とりあえず、家の中に入れたからな。封時結界は解く」

 

 そう仮面の人が言うと周りがいつもの風景に戻る。玄関も元通りや。安心したで、もし戻らんかったらどうしようかと思ったわ。

 

「さて、まずは自己紹介と行こうか。俺はライ。君達と同じ魔導師だ。傭兵をやっている」

 

「傭兵だと」

 

 仮面の人……ライさんが自己紹介をし、シグナムが応える。

 

「ああ、君達の自己紹介を……っと言いたいところだが、既に知っているから構わない」

 

「剣の騎士、シグナム」

 

 シグナムを見て言うライさん。

 

「鉄槌の騎士、ヴィータ」

 

 今度はヴィータを見る。

 

「湖の騎士、シャマル」

 

 次にシャマルを見る。

 

「盾の守護獣、ザフィーラ」

 

 更にザフィーラを見る。

 

「そして、夜天の主である八神はやて。いや、今は闇の書の主か」

 

 最後に私を見る。

 

「それで私達に話って何なんです?」

 

「ふむ、聞いてもらえるのかな?」

 

「まあ、聞かないことには始まらないと思いますし」

 

「よろしいのですか? 主」

 

 シグナムが私に聞いてくる。

 

「かまへんよ。とりあえずお茶入れますね。そこのテーブルの椅子に座ってて下さい。

 シャマル、ちょっと手伝ってや」

 

「……分かったわ」

 

「いいのかよ、はやて。こんな変な仮面したやつ信用して」

 

「まあ、悪い人には見えないしな。変な仮面してても」

 

「変で悪かったな」

 

 私は話を聞くため、お茶を入れることにした。シグナムとヴィータとザフィーラはライさんを警戒しているのか、常に目を離していない。

 

「お待たせしました。粗茶ですが、どうぞ」

 

「ありがとう。頂くよ」

 

 そう言ってお茶を飲むライさん。

 

「それで話というのは?」

 

「ああ、話というのは君の持っている闇の書についてだ」

 

 ライさんがそう言うとシグナム達の顔がピクッと動いた。

 

「闇の書についてですか?」

 

「そうだ、君は闇の書がどういうものか知っているかな?」

 

「え~っと、確か他者のリンカーコアから魔力を蒐集して主に絶大な力を与える魔導書……

 だったと思います」

 

 私はライさんに聞かれたことに答える。

 

「ふむ、概ね正解だ。付け加えるならリンカーコアの魔力蒐集は人間だけでなく、魔法生物からも

 可能だ。では次の質問だ。闇の書が起動し、君がこの事実を知ったのは6月4日……つまり

 君の誕生日だ。だが、君は今日までその蒐集活動を行っていないね。それは何故かな?」

 

「それはリンカーコアから魔力を蒐集するってことはその相手に迷惑が掛かることだからです。

 それに私は絶大な力なんていりません。家族……守護騎士達が居てくれれば十分です」

 

 次の質問に答えるとライさんが

 

「なるほど、闇の書が起動してからしばらく君のことを観察させてもらったから大体は

 分かっていたが、こう話してみてはっきりした」

 

 ライさんは一呼吸置いて話を続ける。

 

「君はとても優しい。他人のことを思いやり、例え自分が傷ついても他人に迷惑を掛けたくない

 と思っている」

 

「いや~、そんなに褒めないで下さい。照れてしまいます」

 

「だが、辛いことも苦しいことも一人で抱え込むところがあるようだな。

 そして、誰よりも家族の愛に飢えている」

 

「……はい、私はずっと一人でした。小さいころに両親を亡くして一人で暮らしてきました。

 遠いところにおじさんは居るけれど、会ったことは無いし……でも、今は違います。

 守護騎士達が居ます。私の大切な家族が出来ました。ですからもう寂しくありません」

 

 私はまっすぐライさんを見つめる。

 

「良い目だ。まっすぐで力強く、そして何より優しい目だ。では最後の質問だ」

 

 私とライさんの目が合う。と言っても私からライさんの目は見えへんけどな。

 

「君にとって闇の書は、家族ができ、幸せな生活を送るきっかけを作った魔導書だ」

 

「はい」

 

「その闇の書が君のその幸せを奪う存在だとしたらどうする?」

 

「……え?」

 

 どうゆうこと? 闇の書が私の幸せを奪う? 何で?

 

「貴様……一体何を言っている。それ以上闇の書を侮辱したら許さんぞ」

 

 シグナムがライさんを睨みつける。

 

「闇の書がはやてに悪さする訳ねぇだろが」

 

 ヴィータがライさんに言う。

 

「君の足には原因不明の麻痺があるね?」

 

「え? あっ、はい」

 

「その麻痺は、闇の書が君のリンカーコアを侵食していることが原因だ」

 

「……え?」

 

「貴様! 聞いていなかったのか!?」

 

「もう許さねぇぞ!」

 

 シグナムとヴィータが今にも飛び掛かりそうなほど怒っている。

 

「湖の騎士」

 

「……何かしら」

 

「君が診れば分かるはずだ」

 

 ライさんがシャマルに聞く。

 

「シャマル。こいつの言うことを聞く必要はない。今ここでレヴァンティンの錆にしてくれる」

 

「敵の言葉を真に受けず、自分達の意思を貫くのは悪いことではないが、

 調べるくらいはしてもいいのではないか? 仮にその言葉が真実だったらどうする?」

 

「貴様の戯言など聞く気はない」

 

「ふむ、君はどう思う? 八神はやて」

 

 ライさんが私に話を振ってきた。

 

「そ、そうやね。調べるくらいは良いと思います」

 

「だそうだよ。剣の騎士?」

 

「くっ!」

 

「シャマル、いっぺん調べて貰って良い?」

 

「分かったわ、はやてちゃん」

 

 シャマルの体が緑色に光りだし、その光が私を包み込んだ。しばらくして

 

「ッ! そ、そんな!」

 

「シャマル? どうした」

 

 シャマルが驚いた顔をして、シグナムが尋ねた。

 

「……確かにはやてちゃんのリンカーコアが闇の書に侵食されているわ」

 

「嘘だろ! 何で闇の書が!」

 

 シャマルから衝撃的なことが告げられ、声を荒げるヴィータ。闇の書が私の足の麻痺の原因? 何の冗談や、それ……。

 

「闇の書は魔力を蒐集することでその存在を維持する魔導書だ。だから一定期間魔力の蒐集が

 無いと主のリンカーコアから魔力を奪うようになっているんだ」

 

「こんな……ことが……」

 

 ライさんから私のリンカーコアが侵食されている理由を告げられ、その事実に寡黙なザフィーラが言葉を漏らした。

 

「そして、リンカーコアの侵食が進行すればするほど、足の麻痺は上に上がってきて、

 いずれ麻痺が心臓に達し……」

 

 止めて……それ以上言わんといて……

 

「君は死ぬ」

 

「…………」

 

 そうか……私は幸せになれへんのや……いつもそうや。図書館で本を取る時だって、手が届きそうなのに届かない。目に見えているのに……直ぐそこにあるのに……手が届かないんや。目の前にあるのに果てしなく遠い。どうしようもないほどに……

 

「……だ」

 

「ヴィータ?」

 

「やだ! やだ! はやてが死ぬなんて絶対やだ! そうだ! 闇の書をぶっ壊せば!」

 

「そんなことをすれば我等も消える」

 

 ザフィーラがヴィータに言うた。消える? 皆が?

 

「はやてが死ぬより良いだろ!」

 

「そんなん絶対ダメや! 私が生きてても皆が居らんかったら意味がない!」

 

「でも……はやてぇ」

 

「ヴィータ、お願いや、もう二度とそんなこと言わんといて」

 

「はやてぇ!」

 

 ヴィータが私に抱き着く。私は優しくヴィータの頭を撫でる。

 

「……大丈夫です。主。リンカーコアの侵食が蒐集が無かったから起こっているのならば、闇の書を完成させれば」

 

「残念だが、それはダメだ」

 

 シグナムが私に言っているところでライさんが口を挟んだ

 

「何だと? 貴様が我らの邪魔をすると言うのか?」

 

「そうじゃない。闇の書には他にもバグがある」

 

「他のバグだと?」

 

 シグナムが答えた。バグって何?

 

「バグって何? 夢を食うやつ?」

 

「それはバクだ」

 

「手提げ袋」

 

「それはバッグ」

 

「一晩でお肌がつるつるに」

 

「それはパック」

 

「穢れの無い白さ」

 

「それは純白」

 

「ほっぺたにご飯粒が」

 

「それはヒョイパク」

 

「借りたものを返さない」

 

「それは借りパク」

 

「お前のものは俺のもの」

 

「それはジャイアニズム、バグ関係無くなっちゃった!」

 

「「どうもありがとうございました~」」

 

 シグナム達が絵に描いたようにポカーンとしとるな。いや~、不謹慎やけど良いノリやわライさん。私達相性ええんとちゃう? お笑いでてっぺん目指そか?

 

「さて、話を戻すぞ?」

 

「あ、ああ」

 

 ライさんがシグナムに言って話を続ける。

 

「闇の書には大きく分けて三つのプログラムがある。

 一つ目は君達守護騎士プログラム。これの説明は不要だろうから省略する。

 二つ目は管理プログラム、これは書全体の管理を行っている管理システムだ。

 簡単に言うともう一人の守護騎士のようなものだ。管理人格(マスタープログラム)とも言われている。

 三つ目は防衛プログラム、これは主が外敵から攻撃を受けた際に発動し、主を守るシステムだ」

 

「管理人格のことまで知っているとは……。貴様はどこまで闇の書のことを知っているのだ」

 

「そうだな、今の闇の書については少なくともお前達よりは知っているだろうな」

 

「あんだと? あたし達より知ってる訳ねぇだろうが。闇の書のことはあたし達が一番知ってる」

 

「闇の書は本来、夜天の魔導書と呼ばれていたことは知っているのか?」

 

 夜天の魔道書? どういうこと? 闇の書じゃないん?

 

「何? どういうことだ」

 

「それはまた後だ。話を戻す。今挙げたプログラムで問題なのは三つ目の防衛プログラムだ。

 歴代の主達による改竄が行われ、今では管理人格(マスタープログラム)でも制御しきれないものになってしまった。

 これは闇の書が完成すると同時に主を取り込み、周囲に存在するものを全て破壊する魔物へと

 変貌する。そうなった時点で主は永遠の覚めることない夢を見続ける。

 例え、防衛プログラムを破壊しても主を捨て、新たな主を探し、転生するようになっている」

 

「そ、そんな……馬鹿な」

 

 シグナムが驚いとる。

 

「これが夜天の書が闇の書と呼ばれるようになった原因だ。そして、守護騎士達は転生すると

 同時にその時の記憶が初期化される。だから君達は前回の主がどうなったか覚えていない

 だろう? おそらくだが、記憶も操作されている。だから夜天の書のことを知らないんだ」

 

「そ、そんな事ねぇ、前の主は……あれ? な、何で思い出せねぇんだ」

 

 ヴィータがライさんに言われたことに反発しようとしたが、ダメだったみたいや。

 

「まさか……そんなことが」

 

 ザフィーラが言葉を漏らす。

 

「それじゃあ、はやてちゃんは……」

 

「このまま蒐集をしなければ年明けに麻痺が心臓に達するだろう。そして蒐集し、闇の書を

 完成させたとしても、闇の書に取り込まれる」

 

「……つまり私はもうすぐ死ぬってことなんやね。あ~あ、折角幸せになれると思ったのにな~」

 

「「「「はやて《ちゃん》《主》」」」」

 

「何か……何か手は無いのかよ!」

 

 ヴィータが泣きそうな顔でライさんに懇願している。もうええんや、ヴィータ。短い間だったけど、私幸せやったよ。

 

「ある」

 

「「「「「ってあるんか~い!?」」」」」

 

 ライさんの発言に皆がつっ込んでもうたわ! って、ある?

 

「え? 助かる方法があるんか?」

 

「そう言っているだろう。というかそのために俺が来たんだが? 何だ? 君達は俺が死の宣告を

 するために来たと思っていたのか? ワザワザそんなことする訳無いだろう」

 

「え? だって、え?」

 

「助かる方法を話すぞ。まず、問題なのは防衛プログラムだ。だが、こいつは主以外が

 闇の書の完成前に干渉すれば、主を取り込み直ぐに転生する仕組みになっているので

 外部からの修復は不可能だ。主自身もプログラムに干渉できるようになるのは書を

 完成させ、管理人格(マスタープログラム)を起動してからになる」

 

 ……それってどうしようもなくない?

 

「だが、防衛プログラムが主を完全に取り込むまでにはタイムラグがある。

 その間なら主からの干渉を受け付けるし、外部からもある程度は干渉が出来る」

 

「それってつまり」

 

「そうだ。一度闇の書を完成させ、防衛プログラムを闇の書から切り離す。そうすれば

 主が取り込まれることはない。あとは切り離した防衛プログラムを何とかすれば良い」

 

「な、なるほど。でもそんなこと可能なんか?」

 

「闇の書が完成した時点で主は一度取り込まれ、その際に自身が望む幸せな夢を見せられるらしい。

 大抵はその夢から覚めることがなく、防衛プログラムに完全に取り込まれてしまう。

 つまり、君の意思が一番重要だ」

 

「私の意思……」

 

「そうだ。ワクチンプログラムは作ってあるが、防衛プログラムの修復は出来ない。

 せいぜい防衛プログラムの機能を低下させ、時間を稼ぐ程度だ。

 だから、君自身がその夢に打ち勝たなければならない」

 

「……私にできるでしょうか……」

 

「それは俺には分からない。だが、出来るか出来ないかじゃない。やるかやらないかだ。

 やると言うのであれば俺は全力で力を貸す」

 

「…………」

 

 私は迷っている。私が望んでいるのは家族との幸せや。例え短くてもこのままでいいんじゃないか? そう思ってしまっている。ライさんが言っていることは分かる。でも博打や。それも命を掛けた大博打。失敗したら死ぬ。でも、何もしなければ今年いっぱいは皆と暮らせる。幸せな生活が送れる。私は……

 

「人は」

 

「え?」

 

 私が黙っているとライさんが話し出した。何を言うんや?

 

「人は平等ではない」

 

「……」

 

「生まれつき足が速い者、美しい者、親が貧しい者、病弱な体も持つ者、生まれも育ちも

 才能も、人間は皆、違っている」

 

「……」

 

「だからこそ人は他人と自分を比べ、争い、競い合ってきた。何故だと思う?」

 

「……分かりません」

 

「未来に進むためだ」

 

「未来に……進むため」

 

「そう、誰もが辛くても今を必死に生きて、競い合ってきた。その先の幸せな未来を信じて」

 

「……」

 

「闘え、八神はやて、その果てに未来がある」

 

 未来……よし、決めたで! 私は……私は!

 

 

はやて サイドアウト

 

 

零冶 サイド

 

 

 今、俺ははやて達と対峙している。さて、これでやらないって言われたらどうしよう? 俺の計画が丸潰れなんだけど……

 

『マスターは考えているようで、考えていない時がありますからね』

 

『何があっても対処できるだけの力があると、結構雑になったりするんだよね。

 まあ、ここ一番でそれをやったことはないけどさ』

 

『まあ、それがいつものマスターです。私はそれを面白おかしく見るだけです』

 

『なんて協調性の無いデバイス!? ミスト……恐ろしい子!?』

 

 俺がミストと漫才をやっていると

 

「ライさん、私、やります。どうか力を貸して下さい」

 

「それが君の答えか?」

 

「はい、私はもう逃げません。闘って未来を……皆と幸せな未来を掴んでみせます」

 

 はやてが決意に満ちた目で俺を見つめてくる。守護騎士達も一度はやてを見て、主を守ると言わんばかりの目で俺を見てくる。

 

「分かった。なら俺も全力を尽くそう。これからよろしく頼む。八神はやて」

 

 俺は手を前に出す。

 

「はい! よろしくお願いします」

 

 俺たちは固い握手をした。

 

「おい、あたしはまだお前を信用した訳じゃないからな。はやてに変なことしたら許さねぇぞ」

 

「ヴィータ、変なことって私、まだ子供やねんから~」

 

 ヴィータが俺に言ったことに顔を赤くして体をクネクネさせながら言うはやて。

 

「安心しろ。子供相手にそんな事は絶対に無い」

 

「むっ、なんや。私が幼児体型って言いたいんか?」

 

 何故、お前が反応する?

 

「良いか? それは無い。絶対にだ!」

 

「ひどっ! これでも成長してるんやで」

 

 両手を自分の胸に当てて言うはやて。

 

「はいはい、成長してる成長してる」

 

「ぞんざい! 知らんで~、10年後に私がナイスボディになっても」

 

「そうだな。きっと綺麗になっているだろうな」

 

「へ?」

 

「君は容姿が良いから、10年後はきっと美人になっているさ」

 

「なななな! お、お世辞言うても何もでぇへんで!」

 

「まあ、体型は別の話だが」

 

「上げて落とされた! わ~んシグナムぅ、その立派なお胸で慰めて~」

 

「あ、主!」

 

 はやてがシグナムにセクハラし出した。ダメだこいつ……早く何とかしないと。

 

「さて、これからのことを話そうか」

 

「あ、そうやね」

 

「うん、君はシグナムからその手を離そうか」

 

「おっといかんいかん、すっかり忘れてたわ」

 

「では、これからのことだが、まず、管理局にこのことを話す」

 

「「「「何だと《何ですって》!」」」」

 

 俺がそう言うと守護騎士達が過剰に反応する。

 

「てめぇ! やっぱり管理局の回しもんか!」

 

「落ち着け、八神がついてこれて居ない」

 

「え~と、まず管理局って何?」

 

「管理局って言うのはな」

 

 

~管理局の説明中~

 

 

「なるほど、つまりでっかい警察って感じなんやな?」

 

「まあ、正確には違うが簡単に言うとそうだ」

 

「それで、何でシグナム達は怒ったん?」

 

 はやてがシグナム達に聞く。

 

「管理局は過去、何度も我らと対峙し、闇の書を葬って来た我等の敵です」

 

「そいつらに話すってことはこいつは管理局の人間だ。つまり敵ってことだ」

 

「なるほどな~」

 

「俺は傭兵だ。管理局の人間ではない。無論管理局の依頼をやったことはあるが」

 

「じゃあ、管理局の依頼であたし達を捕らえに来たんだろ!」

 

 ヴィータが怒っている。激おこぷんぷん丸状態だ。何これ似合う!

 

「では聞くが管理局に黙って蒐集活動を行ったら、どうなる?」

 

「それは管理局に狙われるだろうな」

 

 シグナムが答える。まだ分からないのかよ。

 

「管理局に狙われたら八神はどうなる?」

 

「そりゃ、捕まるんじゃねーか? そんなことさせねぇけどな」

 

 何故分からない? もしかしてワザとか?

 

「つまり八神は犯罪者になってしまう。それで幸せになれるのか?」

 

「そ、それは」

 

 シャマルが言いよどんでいる。おい、気付けよ

 

「つまり管理局に許可を取った上で蒐集活動を行えば、主は犯罪者ではなくなるということか?」

 

 良く言った! 良く気付いたザフィーラ! 後で高級ドックフードあげちゃう!

 

「「「はっ!?」」」

 

 いや、はっ!? じゃねーよ。マジで気付いてなかったのかよ。こっちがビックリだわ。

 

「正解だ。正解したザフィーラにはこれをやろう」

 

 俺は王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)から高級霜降り牛とステーキ用の鉄板を取り出す。

 

「なっ! まさかレアスキル!」

 

「おお! すごい! 何も無いところからお肉が出てきたで! しかも高級そう!」

 

 俺は肉をステーキ用鉄板に乗せ、炎熱変換でミディアムレアに焼く。

 

「さぁ、どうぞ」

 

「い、良いのか?」

 

 ザフィーラが喜びのあまり、尻尾を高速で振っている。ちょっと可愛いなおい。

 

「ああ、ダメやでザフィーラ。そないなもん犬が食べたら」

 

 あっ、すっげー落ち込んだ。そりゃ食べられると思ったのにこんなこと言われたらな。こんなのって無いよ! あんまりだよ!状態だ。仕方ない、フォローするか

 

「八神、ザフィーラは正確には犬じゃない。狼だ。それに守護プログラムとして存在しているから

 人間と大して変わらない。だから食べても問題ないぞ」

 

「え? そうなん? なんやザフィーラ。そうならそう言ってや」

 

「……申し訳ありません。主」

 

 ザフィーラが何か言いたげな目ではやてを見たが、きっと気のせいだ。

 

「というわけだ。食べて良いぞ、ザフィーラ。熱いから気をつけろ。」

 

「かたじけない」

 

 そういうとザフィーラはステーキにかぶり付いた。ほんのり涙目に見えるのは見なかったことにしよう。

 

『男の涙はみっともないですからね』

 

『お前ほんとに容赦ないな』

 

『ザフィーラが、お肉を食って、男泣き』

 

『何故川柳風に言った?』

 

「ザフィーラだけずりぃぞ! あたしにも何かくれ」

 

「お前は何も正解してないからダメ」

 

「じゃあ、何か問題出せ!」

 

「それじゃあ問題。パンはパンでも食べられないパンは?」

 

 俺は初歩的ななぞなぞを出す。

 

「はっ! 何だ、そんなの簡単じゃねぇか、腐ったパンだろ」

 

 はい、お決まり頂きました~

 

「え? 賞味期限切れのパンじゃないの?」

 

 何故シャマルも参加した? そしてそれは消費期限の間違いだ。

 

「二人共もっと良く考えろ。硬くなったパンに決まっているだろう」

 

 まさかのシグナム参戦、そしてある意味惜しい。

 

「ぶっぶ~、正解はフライパンでした~」

 

「あっ、そういうことか! おもしれぇ!」

 

「盲点だったわ~」

 

 答えを聞き、納得するヴィータとシャマル。

 

「くっ! 騎士として何たる不覚!」

 

 正解してなくて悔しがるシグナム。うん、騎士関係ないね

 

「おい、ライ! 次だ! 次こそ正解してやるぜ!」

 

「次はどんな問題かしら? 楽しみだわ♪」

 

「次で先の汚名返上してくれる」

 

 いや、まだやんのかよ。

 

「いや、そろそろ闇の書の話に戻りたいんだが……」

 

「「「あっ、そうだった」」」

 

「はぁ~、じゃあ話を戻すぞ。俺は管理局にツテがある。そいつに話せば、今回の件は

 俺に一任して貰えるだろう。そうなったら、大手を振って蒐集活動をしよう」

 

「しかし、そう簡単に上手くいくのか? それにお前の言うそいつが認めても他の

 管理局員が認めるとは……」

 

 俺の話にシグナムが指摘する。うん、中々良い着眼点だ。

 

「そうだな。管理局も一枚岩ではないからな。このことを管理局に話せば八神が狙われる

 可能性は0ではないだろう」

 

「それじゃ意味無いんじゃ……」

 

 今度はシャマルが言ってくる。

 

「だから、八神には守護騎士の内、最低3人の護衛を残し、残り一人は俺と一緒に蒐集活動を

 行い、守護騎士はローテーションで入れ替わるようにする」

 

「確かにそれならはやては大丈夫だけどよ、蒐集が間に合わねぇんじゃねぇか?」

 

 俺の案にヴィータが意見する。

 

「問題ない。俺が守護騎士4人分以上の働きをすれば良いだけだ」

 

 

ピクッ

 

 

「ほう、それはつまりお前は我々よりも強いと言っているのか?」

 

「ああ」

 

 俺はシグナムに言われたことに素直に答える。

 

「おい、それは聞き捨てならねぇぞ。あたし達にもプライドってもんがあんだからな」

 

「なら、この後模擬戦でもするか? 証明してやろう」

 

「はっ! 上等じゃねぇか」

 

 俺の挑発に乗るヴィータ。

 

「ちょ~、喧嘩はやめ~や」

 

 はやては止めに入るが

 

「主、これから蒐集活動をするに辺り、ライの強さを知ることは重要なことです。

 どうかご容赦を」

 

「大丈夫よ。怪我しても私が治すから」

 

「まあ、そういうことならええけど……」

 

 こうして俺たちは模擬戦をすることになった。

 

「よし、では」

 

「ああ」

 

「ザフィーラが食べ終えたら、行こうか」

 

「「「「まだ食ってたんかーい!」」」」

 

「わふ(すまぬ)」

 

 

零冶 サイドアウト




零冶の念能力紹介のコーナーです。

次の念能力はこれだ!

11、絶対停止ギアス
  系統:操作系
  説明:瞳にV型の鳥のような紋章浮かび上がり、円を広げると円の中にいる
     知能を持ったもの全ての体内時間を停止させる能力
     知能を持ったもの全てなのでデバイスなどのAIにも有効となっている
     また、円で完全に覆わなければならない
     停止できる最大の時間は5秒
     また、一度使用すると使用した秒数×3倍のインターバルが必要になる
     原作では使用中は使用者の心臓が止まってしまうが、レアスキル強化で
     心臓を止めずに使用可能。
     その代わりのインターバルとなっている。


  制約
   1、対象を円で完全に覆わなければならない
   2、使用可能最大時間は5秒まで
   3、使用後は使用した秒数×3倍の時間、使用できない

  誓約
   なし


 対人戦ではおそらく最強の能力だと思います。気付くことすら出来ない以上避けようがありませんから、しかも物理現象は止まらないので、気がついたらやられてたってなります。

 原作ではチートすぎるせいか最後のころにはあまり使われなかったのが残念です。
まあ、ロロのあのシーンではボロ泣きでしたが(泣)作者の顔がボロ雑巾のようでした。

 この能力を使っている描写があまりありませんが、傭兵活動しているときは結構使っている設定です。この能力と飛雷神の陣の相性が良いので、この能力で相手の動きを止め飛雷神の陣で距離を積め、気絶させるってことが可能です。
 私は最強の組み合わせだと思っています。


って感じです。では

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