原作を放って置くとバッドエンドになるんですが、どうしたら良いですか?   作:月の光

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闇の書編
21_零冶「鬼かお前は!?」ミスト[デバイスですよ?]


零冶 サイド

 

 

 学校で桜羽と再会した当日の真夜中、時間は23時55分、俺は神の不在証明(パーフェクトプラン)で姿を消して、上空50mの所にいる。え? 何でって? いや、ある子の誕生日を逸早く祝ってあげようかと思ってさ。ハッピバースデー♪ ディア♪ はやて~♪

 

『ふざけてないで、まじめにやりましょう』

 

『そうだな。八神邸の周りに使い魔が二体、リーゼ姉妹か。他の監視者は……居ない。

 つまり、今の所イレギュラーは無しだな』

 

『はい、管理局のメインサーバーをハッキングしましたが、

 闇の書の現在地は知られていないようです』

 

『つまり、ギル・グレアム以外は闇の書の存在を知らないと』

 

『はい』

 

『今の所問題無しだな』

 

 後は闇の書起動後にイレギュラーがなければ、俺の完全勝利だ。

 

『よし、時間だ。転移するぞ』

 

『イエス、マスター』

 

 俺は飛雷神の陣(ひらいしんのじん)で八神邸の内部に転移した。

 

『八神はやてはお休みだな。さて、残り5秒』

 

 4

 

 

 3

 

 

 2

 

 

 1

 

 

 0

 

 

 突如、闇の書が光を放ち、浮かび上がった。

 

「な、なんや!?」

 

 闇の書ははやての前に移動し、闇の書を縛っていた鎖が外れ、ページが次々と高速で捲られて行く。そして、はやての無い胸からリンカーコアが浮かび上がり、

 

「誰や!? 無い胸ゆうたの! これでも成長してるんやで! てゆーうかこれ何!?

 怖いんやけど!」

 

 はやての余裕があるのか無いのか分からない突っ込みも空しく、リンカーコアが光り出し、呼応するように闇の書が魔法陣を展開。眩い光を放つ。

 

「ぎゃあぁぁ! 目が、目が~!」

 

 やっぱり余裕はあるようだ。そして4人の男女が現れ、片膝を突き、語り出す

 

「闇の書の起動を確認しました」

 

 桃色の髪のポニーテールの女性が言う。

 

「我ら、闇の書の蒐集を行い、主を守る守護騎士にございます」

 

 続けて、金髪の女性が言う。

 

「夜天の主の元に集いし雲」

 

 青い犬耳と尻尾の男性が言う。

 

「我ら守護騎士、ヴォルケンリッター。何なりとご命令を……」

 

 赤毛の少女が言う。

 

「…………」

 

 あまりの出来事に言葉を失うはやて。しばらく沈黙が広がる。

 

「……なぁ」

 

「ヴィータ、主の前だぞ。控えろ」

 

「そうよ、ヴィータちゃん」

 

「でもよ……こいつ気絶してねぇ?」

 

「「は?」」

 

 ヴィータと呼ばれた赤毛の少女が告げると桃髪の女性と金髪の女性がはやてを見る。

 

「う~ん、無い胸ゆうなや~」

 

「た、大変!」

 

「あ、主!」

 

「こいつで大丈夫かよ……」

 

「……」

 

 慌ててはやてを診る金髪女性と慌て出す桃髪女性、この先が心配になるヴィータ、終始無言の犬耳男性。

 

『ふむ、イレギュラーは無し。はやてのつっ込み力には驚かされたが、原作通りだ。

 ミスト、闇の書による、八神はやてのリンカーコア侵食率は?』

 

『解析済みです。今の侵食率と侵食速度からですと、足の麻痺は大晦日辺りで心臓に達します』

 

『つまり、そこも原作通りって訳だ』

 

『そうですね』

 

『なら、後はリインフォースが消える時にライとして現れ、バグを消して終わりだ』

 

 ……やった。やったぞ! これで完全に傍観できる! 俺の完全勝利だ!! はーはっはっは! 俺は勝ったんだ! 何にかは分からないけどね!!

 

『よっしゃぁぁ! 帰るぞ! ミスト!』

 

『テンションMAXですね。マスター』

 

『これが喜ばずにいられるか! 俺の苦労が報われたんだぞ!』

 

 ほんとに苦労したよ。使えない転生者(桜羽を除く)のせいでな。影から動くのはもうこりごりだ。だが、転生者を育てた甲斐があった。後は転生者に任せよう。さあ~て、帰ろうかなっと!

 

 俺が飛雷神の術(ひらいしんのじゅつ)を発動させようとしたら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピキィーーーーン

 

 

『う そ だ ろっ!! 某お笑い芸人みたいな言い方しちゃったじゃねーか!

 え? 嘘でしょ? 何で? どうして!?』

 

虫の知らせ(シックスセンス)ですか? マスター』

 

『ああ……だが、理由がまったく分からない。何か見落としているか?』

 

『いえ、今のところまったくイレギュラーはありません』

 

『……つまり、未来で何かがあると言う事か……』

 

『おそらく……』

 

『はぁ~……分かった。なら未来漫画(フューチャリングコミック)で確認するぞ』

 

 俺は八神はやてにそっと触れ、未来漫画(フューチャリングコミック)を発動させる。俺の右手に一冊の漫画が出現する。そして、いつもの栄光の手袋(グロリアスハンド)時の支配者(クロックマスター)で時間を止める。

 

「では、早速読ませてもらうとしよう」

 

 

零冶 サイドアウト

 

 

《八神はやて物語》 サイド

 

 

「う、う~ん。ふあぁ~、何や変な夢見たな~」

 

 私は伸びをしながら、目を覚ます。

 

「いきなり本が浮かんで光り出すなんてある訳無いやんな」

 

 まして、4人の人間が出てくるなんてありえへんわ。まあ、あんな夢見るってことをはやっぱり私寂しいんかな? 【家族が欲しい】それが願望となって夢を見たとかなんかな? やっぱり

 

「やっぱり一人は寂しいな~」

 

 まあ、今更愚痴ってもしゃーないし、朝食作ろか。私は車椅子に移り、リビングへ移動する。リビングに入るとそこには

 

「あ、主! お目覚めになりましたか!」

 

 夢の人たちが居った。どゆこと?

 

「……」

 

「主?」

 

 桃髪ポニーの女の人が話しかけてくる。

 

「いや~あかんな、まだ眠っとるみたいやわ~、ほなお休み~」

 

「あ、はい。お休みなさいませ。主……って違います! 主! 夢ではありません!」

 

 桃髪ポニーの女の人が私を止めた。は? 夢じゃない?

 

「いや、ありえへんやろ。なんで本から人が出てくるんや?」

 

「どうやら主は困惑なさっているようですね。説明させて頂きます」

 

 どうやら、桃髪ポニーの女の人が説明してくれるらしい。親切な夢やな~助かるわ~

 

 

~桃髪ポニー説明中~

 

 

「はぁ~、魔法か~、さすが夢やな。何でも有りか……で? オチはなんなんや?

 あっ! 読めたで~、夢オチってことやな!」ドヤ~

 

 どうや! 名推理やろ? は? 迷推理? ほっといて~

 

「主……これは夢ではありません」

 

 桃髪……シグナムやったな。シグナムが言った。私は頬をつねってみる……痛い

 

「……ホンマ?」

 

「はい」

 

「……ホンマにホンマ?」

 

「はい」

 

「ホンマにサンマ?」

 

「は、へ? サンマ?」

 

「ノリ悪いでシグナム。そこはサンマでサンバ! ってくらい言わな」

 

「は、はい。サ、サンマでサンバ!」

 

 真顔で言うシグナム……うん、すまん。私が悪かったわ。

 

「……あ~、うん。頑張ったなシグナム」

 

 余程恥ずかしかったんやろな。顔が真っ赤や。これがギャップ萌えか!

 

「ぷくくく、シ、シグナムが。サンマ……サンバ……あっはははははは! ダメだ!

 我慢できない! あはははははは!」

 

「ダ、ダメよ、ヴィータちゃん、ぷくく、そ、そんなに笑っちゃ……くく」

 

 我慢が出来ず笑い出す赤毛の女の子がヴィータで、笑いをこらえる金髪の女性がシャマル。そして心なしかふるえとる青い狼がザフィーラやったな。

 

「く! 笑いたければ笑うが良い!」

 

「そう? じゃあ遠慮なく。あっははははは! シグナムがサンマって! サンバって!」

 

「本当に笑うやつがあるか!」

 

 しばらく、家中に笑い声が響いていたが、それも次第に収まって行き

 

「まあ、闇の書やら魔法やらはよう分からんかったけど、私が皆の面倒見なあかんのは

 分かったわ。あっ! 寸法測らせてな? 何時までもそんな格好はあかんやろ。

 皆の分の洋服買うて来るわ」

 

 私がそう言ったら、皆驚いた顔して私を見てきた。何や?

 

「どないしたん?」

 

「いえ、主は蒐集をしない御つもりですか?」

 

 シグナムが聞いてくる。

 

「蒐集って他人の……リンカーンコーラやったっけ?」

 

「主、リンカーコアです」

 

「それや、それから魔力を奪うんやろ?」

 

 私が確認するとシグナムが答えてくれる。

 

「はい、魔力を蒐集することでこの闇の書のページを埋め、666ページ埋めることで

 主は大いなる力を手に入れることが出来ます」

 

「それでその、リカチャーンドールから魔力を奪ったらその人はどうなるんや?」

 

「リンカーコアです。主」

 

「それや、どうなるんや?」

 

「はい、リンカーコアを傷つけなければ、しばらくした後に魔力が回復します」

 

「そうなんか、じゃあもしそのリンリーンベルを傷つけたらどうなるんや?」

 

「……主、もしかしてワザとですか?」

 

「あっ、バレた?」

 

 ジト目で見るシグナム、そんな目で見んといて~

 

「こほん、それでそのリンカーコアを傷つけたらどうなるんや?」

 

 私は咳払いをして誤魔化し、まじめに聞くことにする。

 

「魔導師にとって重要な器官ですので、魔法が使えなくなったり、体の一部が麻痺したり

 などの後遺症が残る可能性があります」

 

「そうか……他人に迷惑掛けるのはあかんわ」

 

「しかし、闇の書を覚醒させれば叶えられない願いはありません。主の足もきっと……」

 

「そこまでして叶えたい願いはあらへんわ」

 

 だって私の願いはもう……

 

「主としての命令や。蒐集はせんでええ。ずっと……私の傍にいて下さい」

 

 あかん、命令と言いつつお願いになってもうた。

 

「主……」

 

「はやて……」

 

「はやてちゃん……」

 

「主はやて……」

 

 守護騎士達は片膝を突いて、私に敬礼する。

 

「主の命、謹んでお受けいたします。今後ともよろしくお願いいたします。我らが主よ」

 

 そうや、蒐集なんて必要ない。だって私の願いはもう叶ってるんやで? これ以上望んだら罰が当たってまうわ。

 

 

《八神はやて物語》 サイドアウト

 

 

 

零冶 サイド

 

 

「ふむ、楽しそうで何よりだな」

 

[ええ、そうですね。サンマでサンバ]

 

「もう許してやれよ」

 

[だが、断る]

 

 シグナムェ、さてこれは予想通りだ。問題はこの後。

 

今後の展開(エピローグ)発動」

 

 

零冶 サイドアウト

 

 

《八神はやて物語》 エピローグサイド

 

 

 それから八神はやては守護騎士達と家族同然に過ごし、幸せな生活を送っていた。しかし、闇の書覚醒から約4ヶ月後、八神はやては胸の痛みを訴え、病院に緊急搬送される。

 

 主の病の原因が闇の書にあることに気付いた守護騎士達は、闇の書を完成させることで主の病を治せる、もしくは進行を止められると推察し、初めて主の命に背き、秘密裏に蒐集活動を開始する。

 

 主を悲しませないため、魔法生物からのみ蒐集していたが、進捗は思わしくなく、思うようにページが埋まらず、徐々に焦りが見え出してきた。

 

 そして、それに耐え切れなくなった守護騎士ヴィータは独断でついに魔導師からの蒐集に手を出してしまい、管理局と敵対することになってしまう。だが、その甲斐があり、蒐集活動は順調に進み、12月下旬頃にはあと一息のところまでページも埋まった。

 

 しかし、謎の仮面の男二人組みの謀略に掛かり、主の目の前で守護騎士達は闇の書に取り込まれた。その光景を目にした八神はやての絶望を糧に闇の書は覚醒、八神はやてを取り込み管理人格が姿を現した。

 

 謎の仮面の男二人組みとそれを裏で手を引いていたギル・グレアムによる永久凍結封印処理が施された闇の書の管理人格。しかし、管理人格は真っ向から永久凍結封印を打ち破った。そして、ギル・グレアムとその使い魔をこの世から葬り去り、無差別破壊を繰り返した。

 

 管理局から派遣された魔導師も次々と返り討ちにする管理人格。そして、管理局の次元戦艦から放たれたアルカンシェルによって闇の書諸共、八神はやてはこの世を去った。

 

 

~完~

 

 

《八神はやて物語》 エピローグサイドアウト

 

 

零冶 サイド

 

 

 ちょっと待って、Wait。どうしてそうなった? 途中からおかしくない? 何で永久凍結封印が一回成功してるの? その後打ち破られたけどさ。原作ではクロノの説得で止められたんじゃなかったっけ?

 

「どういうことだ? 何でこうなった?」

 

[分かりません。未来の展開が急に変わったとしか……]

 

「クロノが居ないってことか? それともクロノが説得に失敗した? いや、分からないな。

 まさかテスタロッサ一家の裁判が長引いて地球に来れなくなったか?」

 

[確かにそれならあり得ますね。ですが]

 

「ああ、推測の域を出ない」

 

 くそ! 今後の展開(エピローグ)でも分からないのか! まあ、これは仕方ないけどな。今後の展開(エピローグ)、あくまでこうなるで在ろうという可能性の未来だ……。未来になればなるほど的中率は低くなるし、これほどざっくりとしか分からないってことはこの未来が不確定な要素を多分に含んでいるってことだ。

 

 しかし何故だ! 八神はやて陣営やギル・グレアム陣営は原作通りのはずだ。なのになぜ、こうも結果が違う!? ……落ち着け俺、まずは情報の整理だ。気になる点を纏めよう。

  ①管理局の介入の描写はあるが、民間協力者の描写がない

  ②何故かギル・グレアムによる永久凍結封印が実施された

  ③永久凍結封印を打ち破るほどの管理人格の強さ

 

 まずは①だが、これのおかしな点はなのはや転生者達の描写が全くないことだ。【管理局】と一纏めにするには戦力が大きすぎるはず、別々の描写にされてもおかしくない……なのにその描写が無いのは何故だ?

 

 この事件に関わっていない? そんな事がありえるのか? だめだ、分からない……保留だ。

 

 ②に関してはクロノ……いや、アースラが地球に来なかった、あるいはクロノによる説得が失敗した場合だろう。

 

 原作ではアースラが地球に来るのはフェイトの裁判が終わり、なのはに会いに来ることが目的。その際になのはが襲われているのに気付いたって感じだったはず。つまり、テスタロッサ一家の裁判が原作より長引いたら起きる可能性がある。

 

 クロノの説得が失敗する可能性はギル・グレアム陣営の憎しみが強すぎる場合くらいだが、以前の調査では原作とほぼ変わりなかったはず。ということはテスタロッサ一家の裁判の影響の可能性が高いか……

 

 最後に③だが、これがまったく分からない。俺の見立てでは永久凍結封印を管理人格が破るのは不可能なはず……なのに真っ向から破っただと? まさか……桜羽の魔力を蒐集したことで凍結魔法に対しての耐性が付いた、あるいは凍結魔法を扱う熟練度が上がり、逆に利用したか? それならありえるな……だが

 

「ダメだ、いくら情報を整理しても何故こんな未来になるのかがまったく分からない」

 

[どうするのですか? マスター]

 

「…………仕方ない。未来漫画(フューチャリングコミック)の裏技を使おう」

 

[あれですか? しかし、それを使うと]

 

「大丈夫だ。それについても考えがある」

 

[分かりました。しかし、あれそれで通じると熟年夫婦みたいですね]

 

「ミストさんや、飯はまだかえ?」

 

[もうおじいちゃん……さっき熱湯飲ませたでしょ? さっさと死んで遺産頂戴?]

 

「鬼かお前は!?」

 

[デバイスですよ?]

 

「知っとるわ!」

 

 さてそうと決まれば早速。俺は時の支配者(クロックマスター)栄光の手袋(グロリアスハンド)を解除する。そして、時は動きd、 じゃなかった。飛雷神の術(ひらいしんのじゅつ)で自宅に転移した。俺は自室に入り、扉を閉め、《八神はやて物語》を机の上に置いた。

 

「では、早速……時の支配者(クロックマスター)発動。早送り(ファストフォワード)

 

 俺は《八神はやて物語》に触れ時の支配者(クロックマスター)を発動し、早送り(ファストフォワード)する。瞬く間に《八神はやて物語》の時間が経過していく。そして……

 

「よし、現在から約4ヵ月後、日付にして10月27日だ。はやてが無い胸の痛みを訴える日だな」

 

 遠くで「無い胸ゆうな!?」って声が聞こえた気がするが、気にすることは無い(キリ

 

未来漫画(フューチャリングコミック)第三の能力、新刊購入(アップデート)発動」

 

 新刊購入(アップデート)は物語を作成してから時間が経過した場合、その当日状態に内容を書き換える能力だ。え? これがあれば今後の展開(エピローグ)はいらないんじゃないかって? これは時の支配者(クロックマスター)と組み合わせて初めて使用できる裏技なんだ。それに代償もデカい。

 

 新刊購入(アップデート)を使うとその物語を消してから30日間は未来漫画(フューチャリングコミック)が使えなくなるんだ。それも一回の新刊購入(アップデート)で30日間。つまり新刊購入(アップデート)を使えば使うほどインターバルが長くなってしまう。

 

[それを懸念して今まで使ってこなかったんですよね? でもそれについて考えがあるって

言ってませんでした?]

 

「ああ、コピーパペットや影分身に完全修復(パーフェクトリカバリー)を使ってもらい、

 俺が新刊購入(アップデート)を使う前に戻してもらえば、代償はリセットされる」

 

[うわぁ……そんなのあって無いようなもんじゃないですか……

何で今まで使わなかったんです?]

 

「だって自分の体を過去の状態に戻すって……何か怖くない?」

 

[プレシアさんには遠慮なくやったくせに]

 

「てへ☆」

 

[…………]

 

「おぅふ、無言は怖いぜぇ……」

 

 さて、早速10月27日の《八神はやて物語》を読むとしよう。

 

 

 

零冶 サイドアウト

 

 

《八神はやて物語》 サイド

 

「皆~、朝ご飯できたで~」

 

 私は朝食を作り終え、テーブルに並べている。

 

「待ってました! はやての飯はギガうまだからな!」

 

「いつもありがとうございます。はやてちゃん。私も手伝えれば良いんですけど……」

 

「気にせんでええよ。これは私の仕事や」

 

 それにシャマルにご飯を作らせたら、全滅や……冗談やなく

 

「はやてちゃん……何か失礼なこと考えてない?」

 

「そ、そんなことあらへんよ」

 

 さすがは湖の騎士、勘が鋭いでぇ~。え? 関係ない? そうか~

 

「ほれ、ザフィーラもドッグフードやで~」

 

「主はやて、今更ですが私、狼なのでできれば皆と同じものを食べたいのですが……」

 

「あかんあかん、人間の食べ物は犬には毒なんやで? ドッグだけに」

 

「はぁ~」

 

 なんや? ザフィーラが物欲しそうな顔しとるな……分かった。今回は特別やで?

 

「ふっふ~ん、そろそろそう言うやろと思って今回はなんと!」

 

 ザフィーラが期待に満ちた目で見てくる。

 

「高級ドッグフードにしてみました~」

 

「…………」

 

 あれ? 無反応? 喜び過ぎて声が出えへんの?

 

「主、申し訳ありません。遅くなりました」

 

 おっ、シグナムも来たな。

 

「遅っせーぞ、シグナム。はやて~、早く食べようぜ」

 

 ヴィータも痺れを切らしているし、早速食べよっか

 

「よ~し、それじゃ、いただきまっ!? うっ!」

 

 急に胸が痛み出し、私は蹲ってしまった。

 

「「「「主《はやて》《はやてちゃん》!」」」」

 

 そして、私は倒れ、気を失ってしまった。

 

 

 

 

「うっ」

 

 私が目を覚ますとベットの上で寝ていた。

 

「主! 目を覚ましましたか!」

 

 顔を動かすと私の家族が居った。

 

「はやて~、無事で良かったよ~」

 

 ヴィータが涙目になりながら私に抱き着いてくる

 

「ここは?」

 

「ここは病院です」

 

「病院? 何で……うっ」

 

 私は何で病院に居るのか分からなかったが、胸の痛みと共に思い出した。

 

「はやて! 大丈夫か!?」

 

「……大丈夫や、もぅ~、少し胸がつっただけやのに皆大げさやな~」

 

 私は出来る限りの笑顔を作る。

 

「……主」

 

 しばらく、沈黙が続いていると

 

 

ガラ

 

 

 病室のドアが開いた。

 

「あっ、はやてちゃん。目が覚めたのね」

 

「あっ、フィリス先生」

 

「気分はどう?」

 

「はい、もうすっかり良いです」

 

 私は笑顔で言う。

 

「…………そう、なら良かったわ。今は安静にしててね」

 

「はい」

 

「シグナムさん、シャマルさん。ちょっとよろしいですか?」

 

「「はい」」

 

「では、廊下へ」

 

 そうフィリス先生に言われ、シグナムとシャマルが病室から出て行った。

 

「なぁ、はやてぇ。本当に大丈夫なのか?」

 

「大丈夫やって、もう痛くないんやから」

 

 しばらくヴィータと話をしていると、再び病室のドアが開く。

 

「ヴィータ……もう面会の時間が終わる……そろそろ御暇しよう……」

 

「ああ、分かった。はやて、また来るからな!」

 

「うん、待っとるよ」

 

「主、失礼します」

 

「すまんな、今日は夕飯作れへんわ。出前でも取ってな?」

 

「分かりました。では」

 

 シグナムとヴィータが出ていき、病室には誰もいなくなった。

 

「…………っは! はあぁ、はあぁ、うっ!」

 

 私は我慢していた胸の痛みに耐えられず、息を吐き出した。そして

 

「良かった……皆に見られへんで……余計な心配かけたくないもんなぁ」

 

 安堵していた。苦しむ姿を家族に見られなくて済んで良かったと

 

「はあぁ、はあぁ。私、死んでまうんやろか……嫌や、そんなの……」

 

 ちょっと前の私ならこんなに死ぬのは怖くなかっただろう。でも今は違う……家族ができた。離れたくない……一人は嫌や! 何で? 何で私ばっかりこんな目に合わないかんの? 神様は私の事が嫌いなん?

 

「誰か……誰かぁ、助けてぇ……」

 

 私は静かに呟き、ベットの布団を涙で濡らした。

 

 

《八神はやて物語》 サイドアウト

 

 

零冶 サイド

 

 

 あかん、少し涙目になってしまった。

 

[健気な子ですね。家族に心配掛けまいと]グスン

 

「ああ、本当に良い子だ……是非幸せになって欲しいものだ。胸は無いが」

 

 どこか遠くて(ry

 

[あれ? マスターって胸の大きい女性が好きなんでしたっけ?]

 

「いや別に? そろそろシリアスな雰囲気を壊しておきたいなと思って」

 

[何ですか、その使命感]

 

「シリアスは壊すもの! それが俺のジャスティス!」

 

[そんなもの捨ててしまいなさい]

 

「はいよ」

 

 ポイッと捨てる動作をする俺。さて、問題はこの後だぞ。頼む、ほんの少しでいい……俺に情報を分けてくれ!

 

今後の展開(エピローグ)ぅぅぅ!! 発動ぉぉぉ!!」

 

[こんな気合の入ったマスター、初めて見ました]

 

 

零冶 サイドアウト

 

 

《八神はやて物語》 エピローグサイド

 

 八神はやてが胸の痛みを訴えた日の夜、守護騎士たちは全員集まり、話をしていた。

 

「は? な、何言ってんだよ、シグナム……。はやてが死ぬって……冗談にしても笑えねぇぞ?」

 

「冗談ではない! 主は闇の書にリンカーコアを侵食されていたんだ……

 足の麻痺はそれが原因だ……。シャマルにも診てもらったから間違いない」

 

 シグナムは強く手を握り締め、ヴィータに聞かれたことに答える。その手からは血が滲んていた。

 

「嘘……だろ。そんな訳ないだろ! 何で闇の書が!」

 

「おそらく蒐集が無かったため、主のリンカーコアから魔力を奪っているんだ。

 このままでは足の麻痺が心臓に達して主はいずれ……」

 

 シグナムが告げた内容が信じられず、声を荒げるヴィータ。それを暗い顔で見つめるシャマルとザフィーラ。

 

「……なきゃ」

 

「ヴィータちゃん?」

 

「はやてを助けなきゃ! シャマル! お前回復魔法得意だろ! 何とかならねぇのか!」

 

「試したけどダメだったのよ! 闇の書がしていることだもの。プログラム体である私達では

 止められないのよ……」

 

「嫌だ! はやてが死ぬなんて! そうだ! 闇の書をぶっ壊せば!」

 

「そんなことをすれば我々も消える。主を悲しませることになるぞ」

 

 ザフィーラがヴィータに指摘する。

 

「はやてが死ぬよりはいいだろ!」

 

「……方法はある。闇の書を完成させれば良い」

 

「あっ、そうか。そうすればはやての足は……」

 

「治る。少なくとも侵食は止まる」

 

「なら早速!」

 

「だが、これは主の命に背く行為だ。それでもやるか?」

 

 シグナムはヴィータ、シャマル、ザフィーラに確認を取る。

 

「ふっ……、愚問だったな」

 

 そう、その瞳からは決意が溢れていた。例え命に背いてでも主を守る、それが自分達の使命だと。

 

 

 

 それから守護騎士たちは収集活動を開始した。だが、主を悲しませないため、人間以外の魔法生物からのみ蒐集することにした。だが、思うようにページが埋まらなかった。シャマルの見立では年明けまで主が持たないこともあり、徐々に焦りが見え出してきた。

 

 それに耐え切れなくなった守護騎士ヴィータは独断で近くの町にいた魔導師から蒐集することを決め、その魔導師の女の子を襲撃する。

 

 だが、その魔導師は強かった。僅差でヴィータが優勢に進めていたものの。3人の魔導師の増援により、その差は逆転した。そして、最初に襲撃をした女の子の巨大な砲撃魔法が放たれる。直撃は避けたもののヴィータは吹き飛ばされた。だが、運悪く戦いによって倒壊していたビルから出ていた鉄の杭に心臓を貫かれた。

 

 ほどなくして、駆けつけたシグナム、シャマル、ザフィーラが見たのは、鉄の杭に心臓を貫かれ、涙を流しながら、ガラスのように砕け散っていく家族の姿だった。

 

 シグナム、シャマル、ザフィーラは4人の魔導師を睨みつける。だが、殺すつもりはなかったのだろう。4人の魔導師は激しく動揺していた。

 

 これを好機とザフィーラは4人の魔導師をバインドで捕らえる。そして、シャマルの旅の鏡により、一人一人と蒐集を行う。更に蒐集後、家族の敵と言わんばかりに全員のリンカーコアを砕いた。

 

 そして、4人の魔導師は意識を失った。

 

「殺しはしないわ……。私達の家族を殺した罪。動かなくなったその体で一生後悔なさい」

 

 シャマルはそう言い放つ。

 

 ヴィータという大切な家族を失ったものの4人から奪った膨大な魔力により、闇の書のページは大分埋まった。しかし、ヴィータが死んだことを主に話さなくてはならなくなった。

 

「は? 何の冗談や? ヴィータが死んだ? あっはは! 全然笑えへんで?」

 

「……申し訳ありません。主……」

 

 八神はやては守護騎士たちの神妙な顔つきを見て嘘ではないことを理解した。

 

「嘘や……嘘や嘘や嘘や嘘や嘘や嘘や!! 私は信じひん! ヴィータが! ヴィータがぁぁ!」

 

「主! お気を確かに! それにまだ希望はあります」

 

「……え?」

 

「闇の書を完成させれば、ヴィータを呼び戻せます」

 

「……ホンマに?」

 

「はい、必ず」

 

 シグナムの真剣な顔を見て、嘘ではないと分かったはやては

 

「分かった。主として命令する。蒐集して何としても闇の書を完成させるんや!」

 

「「「は! この命に代えましても!」」」

 

「それと私に魔法を教えてや! 私もヴィータを助けるんや!」

 

 はやてはそう言い放ち、シャマルに魔法を教えて貰うことになった。そして、めきめきと力を付けていくはやて。ヴィータを欠いて蒐集スピードは落ちたものの、以前の4人の魔導師の魔力のおかげでページは順調に埋まっていった。

 

 だが、後一歩のところで仮面の男二人組に阻まれ、シグナム、シャマル、ザフィーラは闇の書に取り込まれた。その光景を目にしたはやての絶望を糧に闇の書は覚醒した。そして、はやてを取り込み、闇の書の管理人格が姿を現した。

 

「また、終わってしまった……もう誰にも止められない……」

 

 管理人格がそうつぶやくと老魔導師と二体の使い魔が姿を現し、管理人格は氷の中に閉じ込められた。だが、

 

「アブソリュート・フォース・ドレスアップ」

 

 管理人格を閉じ込めていた氷が次第に小さくなって行き、白銀の氷のドレスを纏った管理人格が姿を現した。そして、そのまま老魔導師と二体の使い魔に抱き着き

 

「アイスタイム」

 

 老魔導師と二体の使い魔は氷付き、三体の氷像が出来上がった。そしてそれを力任せに砕いた。それからも無差別破壊を繰り返し、ついに管理局のアルカンシェルにより、闇の書諸共、八神はやてをこの世を去った。

 

 

~完~

 

 

《八神はやて物語》 エピローグサイドアウト

 

 

零冶 サイド

 

 

パタン

 

 

《八神はやて物語》を読み終えた俺は静かに本を閉じた。

 

「ふぅ、なるほどね。なのはや転生者たちが強くてヴィータが返り討ちか~

 そして、4人共リンカーコアを砕かれて植物人間状態か~

 あっはは! 通りで最初の時に民間協力者の描写が無い訳だ~」

 

[マスター……]

 

「俺のせいじゃねぇか!? なのは達を強くし過ぎたせいじゃねぇかあああ! たはぁ~ウケる!

 って笑えるかい!」

 

[落ち着いて下さい。マスター]

 

「はぁはぁ、もう大丈夫だ」

 

[マスターの悪い癖ですよ]

 

「何が?」

 

[何でもやり過ぎてしまうのは]

 

「そういえば、修行の時もそうだったな~」遠い目

 

[ま、まあ、そこがマスターのいいところでもありますし……]

 

「……うん、ありがと……」

 

 ミストが慰めるほど俺は落ち込んでいるように見えるらしい。

 

「そういえば、テスタロッサ一家……いや、アースラは結局出てこなかったな」

 

[そういえばそうですね。ということはやはり]

 

「ああ、裁判が長引いているんだろう」

 

 しかし、おかしいな。罪を認めるだけなのに何故そんなに時間が掛かる? 無罪を主張するならともかく。

 

「はぁ~、そっちも確認しないとな」

 

[アフターケアも忘れない。流石は傭兵ライです]

 

 本当に珍しいな。ミストがこんなに慰めるなんて……

 

[まあ、自業自得ですがね]

 

「上げて落とす。それでこそミストだ。て言うかさ~、そもそもこういうのって

 オリ主がはやて陣営に付くもんじゃないの? 大抵の二次小説はそうだったじゃん」

 

 そうだよ。峯岸がはやて陣営につけば戦力的に問題無いじゃんか

 

[マスター、オリ主がはやてちゃんと出会うきっかけってどんな感じですか?]

 

「は? そりゃほとんどが図書館ではやてが踏み台に絡まれているところをオリ主が……はっ!」

 

[踏み台はもういません]

 

「しまったあああああああ!」

 

 そういう事か! 踏み台の更生が早すぎたんだ!

 

「また俺のせいか!? てか、何でそんなことまで気を遣わないといけないんだよ!

 ふざけんな!!」

 

[この計画に穴があったとすれば、穴が無かったことですかね]

 

「…………ふ、ふふふふふふふふふ、はぁーはっはっはっはっはっは!!」

 

[ついに壊れたましたか]

 

「良いぜ。バッドエンド、お前が何でも思い通りにできるってんなら……まずはそのふざけた

 幻想[あっマスター、そろそろメンテナンスお願いしま~す]最後まで言わせろよぉぉ!!

 これが……これがデバイスのすることかよぉぉぉぉ!?」

 

[他のデバイスにできないことを平然とやってのける。そこに痺れる憧れるぅ]

 

「自分で言うなよ……はあ、もういい。さっさと闇の書事件を解決させることにする」

 

[そうですね。また裏で動くのめんどくさいですし]

 

「とりあえず、しばらく放置する。その間にいろいろ準備しよう。

 関わるのは10月頭くらいでいいかな」

 

[了解しました。それで十分だと思います]

 

 はあ、完璧だと思ったんだけどな~。まあ、思い通りに行かないからこそ面白いのかな? そう思わないとやってられんわ

 

[あっ、マスター。メンテナンスを]

 

「あっ、それマジなんだ」

 

 

零冶 サイドアウト




零冶の念能力紹介のコーナーです。

次の念能力はこれだ!


8、飛雷神の術(ひらいしんのじゅつ)
 系統:放出系
 説明:神字によるマーキングの場所に転移する能力
    この能力の転移する仕組みは【円の中を自由に転移できる】というもの
    神字は円の役割も持っており、転移したい神字を頭で思い浮かべることで
    対象の神字を中心に円が発生する。
    なので、いくら離れていても神字が消えない限り、その円の中に転移することが可能になる。
    また、神字を書かれた箇所は使用者が消す・または神字に込められたオーラが尽きない限り消えない。
    神字の円を展開するには神字込められたオーラを使用する。
    また、神字にオーラを充電(充念か?)することが可能。
    
 制約
  1、円の中で無いと転移できない
  2、複数の神字を作成する場合は文字列パターンは同じものしてはならない

 誓約
  1、同じ文字列パターンの神字を作成した場合、先の神字は消える

 派生技
  飛雷神の陣(ひらいしんのじん)
   系統:放出系
   説明:使用者が広げた円の中ならどこでも転移できる能力
      この能力で転移した場合、円を広げた際の中心点は動かない
      なので、使用者が円の外に出るとその間は飛雷神の術(ひらいしんのじゅつ)が使用できなくなる。
      ただし、間接的でもオーラが円に触れていれば、飛雷神の術(ひらいしんのじゅつ)の使用や円の解除が可能
 
  制約
    1、円の中心点は動かない
    2、円の外に出てはいけない
    3、円に触れていないと円の解除ができない

   誓約
    1、円の外に出ると飛雷神の術(ひらいしんのじゅつ)が使用できなくなる。

 もし、零冶のレアスキルの中で(神の遊戯を除く)一つもらえるとしたら、私は迷わず、この能力を選ぶでしょう。
 そんな夢の能力です。
 また上記説明にはありませんが、零冶のオーラで周をしたものなら、一緒に転移可能です。なので、複数人でも転移できます。
 もちろん、零冶は転移せず、周をしたものだけを飛ばすことも可能です。

どこでもドアとこれってどっちの方が便利かな?

って感じです。では
 

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