原作を放って置くとバッドエンドになるんですが、どうしたら良いですか? 作:月の光
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では、どうぞ
零冶 サイド
桜羽と知り合いになった翌日、いつも通り学校に登校し、昼休みになった。俺は今、持ってきたおにぎりを食べている。
『やっぱり、おにぎりはツナマヨだな』
『私としては明太マヨも捨てがたいかと』
『いや、お前食ったことないだろ』
『全種類のおにぎりの具材の成分分析を行い、味を完全に再現。食事のシュミュレートを
行った結果、私の味の好みは明太マヨでした』
『無駄に見えて、まったく無駄のない、無駄な作業か、ほんと無駄にハイスペックだな、お前。
暇なの?』
『マスターが優秀すぎるとデバイスは出番が無いですからね。私の仕事は今の所、
バリアジャケットの生成と変身魔法と認識阻害魔法だけです』
『何だ、仕事したいの?』
『いえ、まったく。ニート最高です』
『うらやまけしからん。替わってくれ』
「月無君」
俺がミストとこんなやり取りをしていると相川さんに声をかけられた。
「何? 相川さん?」
「えっと、月無君を呼んで欲しいって」
「え? 僕を?」
「う、うん……」
一体誰だ? 学校で俺に用事がある人なんてそう居ないはずだが……
「分かったよ。廊下かな?」
「うん」
「ありがとう。相川さん」
「ううん」
まったく、飯の時間なのにめんどくさいな~。俺はおにぎりを弁当箱にしまい、廊下へ向かった。廊下に出るとそこには……
「こんにちは、零冶君」
桜羽が居た。一体何の用だ?
「こんにちは、桜羽さん。どうしたの?」
「う、うん、昨日蒼乃を助けてくれたお礼にクッキーを焼いて来たの。
良かったら貰ってくれない?」
何だそんなことか、別に良かったのに。しかし、油断してたな。まさかこんなに早く接触してくるなんて……いや、タイミング的にはここがベストか……くそ、失態だ。この流れで「昼ご飯も一緒にどう?」となりかねない。確か桜羽はなのは達と昼ご飯を一緒にしてたはず、これはまずいな。
「気にしないで良かったのに……態々ありがとう。ありがたくいただくよ」
「上手に出来ているかわからないけど……」
仕方が無いな……だが、これ以上は思い通りにさせない。話の主導権は握らせてもらうぞ。
「こういうのは気持ちの問題だから……食べて良い?」
「ど、どうぞ」
俺は袋を開け、クッキーを一つ取り、口に入れる。ふむ……中々美味しいな。
「うん、美味しい。料理上手なんだね」
「そ、そんな事ないよ(良かった~)」
「謙遜しなくて良いのに……ほら、食べてごらん?」
俺は袋からクッキーを一つ指でつまみ、桜羽の口の前に運ぶ。
「え? えぇぇ!?」
「食べないの? なら僕が食べちゃうね」
俺はつまんでいたクッキーを自分の口の前まで運ぶ。
「た、食べる! 食べます!」
「ふふふ、はい」
俺は再び、クッキーを桜羽の口の前まで運ぶ、桜羽は顔を真っ赤にして俺が指でつまんでいたクッキーを食べる。
「どう? 美味しいでしょ?」
「うん……(恥ずかし過ぎて、正直味が分からないわ)」
桜羽の顔がトマトの様に真っ赤になっている。
「それじゃあ、僕は教室に戻るね。クッキー、ありがとう。大事にいただくね」
「うん……」
「バイバイ」
「うん……バイバイ」
桜羽は呆けたままなのは達が待っている屋上へ向かっていった。ふぅ、上手く切り抜けられたな。
『まったく、女泣かせなマスターですね』
『距離を置くと言っただろ。必要以上に仲良くなる必要は無い』
だが、このままでは明日も誘いに来る可能性が高い。桜羽には悪いが先手を打たせてもらうぞ。
俺が席に戻ろうとすると、クラスの男子に囲まれた。それに合わせたようにクラスの皆が俺を見てくる。
「オイ、月無! お前、桜羽さんとはどういう関係だ!」
「聖祥の4大女神と知り合いなんて羨ま、どういう了見だ! 羨ましい!」
言い直せてないぞ。少なくともお前の許可は要らないよな。
「昨日、桜羽さんの妹さんが迷子になっていたのを助けただけだよ。
そのお礼にクッキーをくれただけ」
「ク、クッキー……だと」
「まさか……て づ く り?」
「そう言ってたね」
ざわざわ
俺の一言でクラスがざわめいた。
「キャー! 桜羽さん大胆!」
「そんなことより、このままじゃ月無君が盗られちゃうんじゃない?」
「くそ! リア充爆発しろ!」
「壁! 壁は何処だ。俺は……壁ドンしなくちゃいけないんだ!」
「くそぉぉ! 何であんな地味なやつに!」
「ちょっと男子! 月無君のこと悪く言わないでくれる?
少なくともあんた達より100倍ましよ!」
「そうだよ! 重い荷物を運んでる時は手伝ってくれるし、
困ってるときは必ず助けてくれるのよ!」
クラスが変な空気になってきたな。予想通りだ。
「皆、落ち着いて。僕が地味なのは本当のことだし、手伝ったのは僕がたまたま
気付いただけだから」
「何だ! モテるやつの余裕か! ふざけやがって!」
一人の男子が殴りかかってくる。俺はそれを
バキィ
ワザとらしくくらい、大人しく殴られる。
「ッ!」
俺は殴られた衝撃に合わせてよろめき、眼鏡が外れて床に落ちる。うわぁ全然痛くない、耐久Bは伊達じゃないな。
「つ、月無君!?」
「だ、大丈夫!?」
俺のことを心配してくれるクラスメイト達。
「お、おい、何も殴らなくても良かったんじゃないか?」
「あ、ああ、悪い。ついカッとなって……」
「ついじゃないわよ! 月無君に何するのよ!」
「皆、落ち着いて」
俺の言葉を聞いてその場が静かになる。
「ごめんね。磯山君」
「え……」
突然、俺に謝られ呆ける磯山君。
「僕、何か気に障るようなこと言っちゃったみたいだから、ごめんね」
「い、いや! 俺の方こそごめん! 殴るようなことじゃなかったのに
ついカッとなっちゃって!」
「なら……」
俺は親指と中指で輪を作り、
パチン
「って!」
磯山君のおでこに軽くデコピンをする
「これでおあいこね」
俺は屈託の無い笑顔を作り微笑む。その時窓から風が吹き込み、俺の前髪が巻き上げられ、クラス全員に俺の素顔が見られた。
――つ、月無君の顔、初めて見た! いつもちらっと見えてたから整ってるなぁとは
思ってたけど、予想通り……いえ、予想以上の美形だわ!
――かかかか、かっこ可愛い! 何これ! 反則でしょ!
――守りたい、この笑顔!
――何だよ……ほんとは美形とか反則だろ! ちくしょぉぉぉ!
――神様は不公平だぁぁぁぁ
――何で! あんな眼鏡してるの! 前髪だって切れば良いのに勿体無い!
風は止み、俺の前髪が下りて目が隠れた。そして、眼鏡を拾いかけ直す。
「皆、僕の怪我は大したことないからあまり大事にはしないでね。それと磯山君のしたことも
許してあげてね?」
≪う、うん≫
「ありがとう」
俺は席に戻って昼食の続きを食べる。さて、仕込みは十分だ。後は――
零冶 サイドアウト
葵 サイド
私は今、幸せな気持ちになっている。妹を助けてもらったお礼にクッキーを零冶君にあげたら、あろうことかクッキーを食べさせてもらったのだ。いわゆるアーンだ。こんなに良いものだと思わなかったわ! ふふふふふ♪ 楽しい昼食になりそ……
「って、あっ……」
しまった……幸せに浸っていて零冶君をお昼に誘うのを忘れてた……
「はぁ~、また呼んじゃうのは迷惑よね……明日にしよう……ふふふ♪」
私はさっきのことを思い出しながら、私はなのは達が待つ屋上へ向かった。
「あっ! 葵! こっちよ」
アリサが私を呼んだので、そちらに向かう。
「遅かったわね。あれ? 一人? 誰か誘うって言ってなかった?」
「うん、色々あって忘れちゃってね。また明日にするわ」
アリサに聞かれたので、正直に答える。
「そうなんだ。じゃあ、クッキーはちゃんと渡せたの?」
今度はすずかに聞かれた。
「ええ、それは渡せたわ」
「そっか、でも珍しいね? 葵ちゃんが忘れるなんて」
「ええ、ちょっと色々あって……」
なのはに指摘されたが、私ははぐらかした。恥ずかしくて言えないわよ。あんな事。
「むむ! これは面白そうな匂い! 何があったのかしらね~」
「な、何でもないわよ」
「あ~、葵ちゃんが動揺するなんて珍しい。ちょっと怪しいな~」
「すずかまでやめてよ。なのはも止めて」
「ごめんなさい、私も気になるの……」
なのはにまで裏切られた……
「わ、分かったわよ。正直に話すわ」
「ふっふ~、それで良いのよ」
まったく人の気も知らないで……私はさっきあったことを話す。
「へ~、それで屋上に来たときににやけてたのね」
「え? そ、そんな顔してた?」
「うん、幸せ~って顔してたよ」
うぅ、まさか顔に出てたなんて……恥ずかしいわ
「てか、俺達邪魔じゃね?」
「言うな王我、こういう時は背景になるんだよ」
あぁ、春兎と神宮寺居たの、まったく気付かなかったわ。
「何か、酷い事考えられた気がする……」
「考えるな王我、こういう時は無になるんだよ」
「無とは一体……うごごごご!」
春兎と神宮寺は何を言ってるのかしら? 意味分かんないわね。
「葵ちゃんが誘おうとしたのって二組の月無君だっけ?」
「そうよ」
すずかに聞かれたので、答える。
「どんな子なの?」
「え~と、黒髪で前髪が目が隠れるくらい長くって眼鏡をしてるわね。身長は私より少し
大きいくらいね」
今度はなのはに聞かれたので、零冶君の見た目を答える。そういえば、私もこれくらいしか零冶君のことを知らないのよね。
「へ~、なんていうか……地味ね。葵には悪いけど」
まあ、そうよね。私もそう思うし。
「別に良いわよ。私そういうの気にしないし」
「私、その子見たことあるかも……図書室で」
「そうなの? すずか」
私はすずかに聞いた。
「うん、いつも一人で本読んでるの。でも、困ってる人が見かけると直ぐ助けててね。
優しい人なんだな~って思ってたの」
そうなんだ。ふふふ、私の目に狂いはなかったってことね♪
「月無……月無……あぁ、思い出したわ。テストでいつも10位前後にいる子ね」
今度はアリサが思い出したように話し出した。
「へぇ~そうなんだ。頭も良いんだね」
なのはが言った。私もケアレスミスが無ければアリサと同じ満点だからね。いくら私立でレベルが高いからって流石に小学生レベルで悪い点は取れないわよ。頭も良いし、案外私達お似合いなんじゃないかしら? ふふふ♪
「葵……またにやけてるわよ」
「あっごめんなさい。ちょっと呆けてたわ」
「それにしてもあの葵ちゃんがこんな風になるなんて、恋って偉大だね」
アリサに注意されてしまった。すずかは私が恋をしていると指摘してくる。でも……
「これってやっぱり恋なのかしら? 私よく分からないのよね……」
「まあ、私も人のこと言えないけど、何ていうかその人のことを考えると、
こう……胸がぽかぽかしてくる感じかな?」
「あら~、アリサ? 貴方も誰かそういう人がいるってことかしら?」
「な、何言ってるのよ! そ、そんな訳無いじゃない」
「アリサちゃんはあの人だよね」
「ちょっと! すずか!」
「もしかして、ライさん?」
私はアリサに確認する。
「うっ……わ、悪い!? あの日以来の憧れなのよ!」
実はアリサとすずかがライさんと知り合いだと最近知ったわ。ジュエルシード事件の後、いつも通り学校でお昼を食べている時、なのはがうっかり口を滑らせちゃってね。私は慌ててなのはを止めたけど、同時にアリサとすずかも慌ててなのはを止めたの。
そして、その時に魔法のことを知っていたことを教えてもらった。もちろん私が魔法を使えることも教えたわ。まあ、なのはの立場からしたら仕方が無かったかもね。アリサもすずかも魔法のことを知っているって分かっていて、私達も魔法関係者だった。
ジュエルシード事件で色々あったし、アリサ達と私達が互いに魔法のことを隠していることを忘れても仕方ないわね。二人は新学期が始まる前に誘拐されて、その現場をたまたま目撃していたライさんに助けられたらしい。
それにしてもアリサやすずかとも知り合いになってるって、ライさんは一体何者なのかしら? 話を聞く限り海鳴市に住んでるみたいだし、やっぱり転生者なのかな? まあいいわ、今は味方だって分かってればいいしね。
「そろそろ時間も近づいてきたし、お昼を食べましょう」
「そうね。さっさと食べましょう」
私達はお昼を食べ終え、教室へ戻った。
「明日は一緒に食べられると良いね。葵ちゃん」
「ええ、明日こそちゃんと誘うわ」
すずかに聞かれたので私は答える。そうね、明日こそ零冶君と一緒にお昼を食べるわ。ふふふ♪
「ねぇ、聞いた? 二組で男子の喧嘩があったんだって~」
「え? 私は男の子が一方的に殴られたって聞いたよ?」
私達が教室に入るとクラスの女の子が話しているのが聞こえた。二組で喧嘩? 物騒ね……零冶君大丈夫かしら?
「何か、殴られた男の子が女の子からクッキーを貰ったのが気に入らなくて殴ったらしいよ」
……え? クッキーを貰った男の子が殴られた? まさか……
「ね、ねぇ……その話、本当?」
「あっ、桜羽さん。うん、本当らしいよ。二組の友達に聞いたから間違いないって」
「そ、その殴られた男の子の名前は?」
「えっと、確か……」
私は願った。どうか違う人であって欲しいと……
「……月無君だったかな?」
嘘……零冶君が殴られた? 私のせいで?
「ッ!?」
私は急いで二組に行こうと動き出したが、
「葵!? 落ち着きなさい!」
私はアリサに止められた。
「でも! 零冶君が!」
「だからこそ、落ち着きなさい。今の話が本当なら、今葵が行くと余計に事態が悪化する
可能性があるわ。行くにしても時間を置いたほうがいい」
確かにアリサの言う通りだわ、少し感情的になってた。
「……分かったわ」
良かったわ。あのまま二組に行ってたら、また零冶君に迷惑が掛かっていたかもしれない。アリサに感謝しないとね。
「アリサ、止めてくれてありがとう」
「翠屋のシュークリームで手を打つわ」
アリサが冗談めかして言ってくる。ふふ、私は本当に良い友達を持ったわ。
「ふふ、分かったわ」
「ねぇ、その月無君。怪我は大丈夫だったの?」
「あっ、月村さん。うん、怪我は大したことなくて殴った男の子とも直ぐに
和解したって言ってたよ」
「ありがとう。だって、葵ちゃん」
「すずか、ありがとう」
すずかが零冶君の容態を聞いてくれた。大した怪我がなくて本当に良かった……不幸中の幸いね。
「なら、放課後に会うのが一番なの」
「そうね、分かったわ。なのは」
私は放課後に零冶君に会いに行くことにして席に戻った。そして、午後の授業が始まった。しかし、私は上の空だった。零冶君大丈夫かな……
「それじゃ、次の行を……桜羽。読んでくれ」
「……」
「お~い、桜羽?」
「……」
「あ、葵ちゃん。指されてるよ?」
「え?」
なのはに指摘されてやっと気付いた。
「あ!? は、はい! すみません。ボーっとしてました!」
「珍しいな、桜羽。まあ、君は優秀だから今回は大目に見よう」
「すみません。ありがとうございます」
「それじゃ、~ページの○行目を読んでくれ」
「はい」
私は先生に指定された行を読んだ。
「よろしい、次から気を付けろよ~、それじゃ次は――」
私は席に着いた。うぅ、大失敗だわ。
そして、SHRも終わり、放課後になった。
「なのは、アリサ、すずか。ごめんなさい。今日は一緒に帰れないわ」
「大丈夫だよ。頑張ってね。葵ちゃん」
「きっと、葵ちゃんなら大丈夫なの。頑張って」
すずかとなのはが励ましてくれる。ありがたいわ
「シュークリームはまた今度にしてあげるわ。頑張りなさい」
アリサが冗談を言ってくれる……冗談よね?
「うん、皆ありがとう。また明日ね」
私はみんなにお別れを告げ、教室を出る。
「俺達、本当に空気だな」
「諦めよう王我、その内良いことあるさ」
誰かが何か言っていたような気がするけど、気のせいね。私は廊下から二組の教室をちらっと覗いて零冶君が居ることを確認する。ここで声掛けたらまた迷惑掛かるかもしれないわね。校門で待ちましょう。
私は二組の前の廊下を後にして校門へ向かった。そして、校門でしばらく待っていると、女子生徒のある会話が聞こえて来た。
「それにしてもお昼はビックリしたね~月無君が殴られるなんて」
「そうだね。あんな事されても許しちゃう月無君はやっぱり優しいよね~」
「やっぱり男は顔じゃないわ。いつか月無君を……」じゅるり
二組の女の子なのかな? もしかして零冶君って結構人気あるのかな? てっきり神宮寺や春兎が人気あると思ってたんだけど……あの二人顔は良いし、春兎は性格も悪くないしね。
「でも、一番衝撃だったのはあれね」
「そうだね」
「うんうん」
何のことだろう?
「「「月無君の素顔!!」」」
え? 零冶君の素顔? 何それすっごい気になるわ……どんな顔だったの?
「まさかあれほどとはね~」
「薄々気付いてはいたんだけどね~」
「うんうん、たまにちらっと見える時とかにね」
うぅ、すっごい聞きたいわ……どんな顔だったのかしら? 私が聞こうか悩んでいる間に女の子達は去って行ってしまった。私は諦めて零冶君を待つことにした。そして、しばらくすると零冶君が出てくるのが見えてきた。あっ零冶君も気付いたみたい。
「あれ? 桜羽さん、どうしたのこんなところで?」
「う、うん。零冶君を待ってたの……ちょっと話があって……途中まで一緒に帰らない?」
「話? うん、分かったよ。それじゃ行こうか」
私は零冶君の横に並んで一緒に下校する。私が話しを切り出せず、しばらく無言で歩いていると
「それで話って何なの?」
先に零冶君に聞かれてしまった。当たり前よね、話があるって言ったの私なんだから……
「う、うん……」
うぅ、やっぱり切り出し辛いわ……
「もしかして、お昼休みのことかな?」
ドキン!
私の胸は跳ね上がった。ばれてたみたいね。
「う、うん……その……ごめんなさい! 私のせいで零冶君が……」
「気にしないで。それに桜羽さんが悪い訳じゃないよ。僕が彼の気に障るようなことを
不用意に言っちゃったから」
「で、でも、きっかけを作ったのは私だし……」
私が俯いていると、不意に頭に手を置かれ
「人が行動を起こした以上、その行動に結果が生まれるのは当たり前だよ。
その結果は誰にも分からないんだ。だから、きっかけを作ったなんて関係ないよ。
そして、その結果に導いてしまったのは僕なんだ。だから、桜羽さんは悪くない」
頭を撫でられた。
「だから、気に病まないで。桜羽さん。折角の可愛い顔が台無しだよ?」
「か、可愛!?」
零冶君に可愛いって言われた。零冶君に頭撫でられた。零冶君に可愛いって言われた。零冶君に頭撫でられた。えへへ~♪
「それとも桜羽さんはクッキーを渡さなければ良かったって思っているの?」
「そ、そんな事ないけど……」
いけない、呆けてたわ。
「僕はクッキーを貰えて嬉しかったよ。そう思えば殴られたのもある意味役得だったかな……」
嬉しい……そんなことまで言ってくれるなんて……私ははっきりと分かった。私、零冶君のことが好きなんだ。これが恋なんだ。何て素敵な気持ちなんだろう。でも私は……
「良かった。嫌われちゃったらどうしようかと思ってたの。折角出来た、お、お友達なんだから」
「うん、僕も良い友達だと思ってるよ」
私は好きだという気持ちを必死に押し殺した。まだ早いわ。出会って一日も経ってないんだから、まだあせるような時間じゃない。
それから、私達は雑談をしながら歩いている。
「あっ私ここからバスだから……クッキー、機会があったら、また作るね」
「そうなんだ。うん、クッキー楽しみにしてるね」
零冶君は優しい。だからこそこれ以上、迷惑を掛けたくない。本当は明日からお昼を一緒に食べたかったけど。そんな事をしたら、私のせいで零冶君にまた迷惑を掛けてしまうかもしれない……それだけは出来ない。私のせいで他人が……好きな人が不幸になるなんて絶対に嫌。だから……
「これで良いのよ」
「桜羽さん?」
「ううん、何でもないの」
私は学校では零冶君に声を掛けず、遠くから見守ることにした。私がそう決心した時、ふとさっきの女の子達が話していたことを思い出した。私はちらちら零冶君の顔を見るが、前髪と眼鏡で素顔が見えない。う~ん気になるわ……
「ん? どうしたの? 僕の顔に何か付いてる?」
「え!? ううん! 何でもないよ!」
「でも、僕の顔ちらちら見てたよね?」
「うっ、その……零冶君の素顔って見たことないな~って思って」
「何だそんな事? 大したもんじゃないよ」
「で、でも、その……気になっちゃって……」
「ふ~ん、なら見てみる?」
「え! い、良いの?」
「うん、別に減るものじゃないしね」
そう言うと零冶君は眼鏡を外し、前髪を上げてくれた。そこには
「ほら、大したもんじゃないでしょ?」
美形がいた。神宮寺のように変に整っている訳ではなく、子供の雰囲気を残しつつ、とても整った容姿、目はパッチリしていてまるで女の子の様。
「……」ぽーー
「えっと、桜羽さん?」
「……え?」ぽーー
「もう良いかな?」
「は、はい……」ぽーー
「ん? それじゃ」
零冶君は前髪を下ろし、眼鏡を掛けた。
「ね? 大したことなかったでしょ?」
「そ、そんな事ないよ! どうして前髪伸ばして隠してるの? 勿体ないよ!
眼鏡だってコンタクトにすれば……」
「ありがとう、お世辞でも嬉しいよ。でも僕、あまり目立ちたくないんだ」
そんな勿体ない!? これだけカッコ良ければあっと言う間に人気が……ってあれ? もし零冶君が前髪を切って、眼鏡を外したらとっても人気者になってしまうのでは? 容姿良し、頭脳良し、性格良し、運動は……分からないけど…………うん、このままでいてもらおう!
「そうだね。そのままの方が良いよ」
「え? う、うん。分かった……よ? あっバス来たね。それじゃ、バイバイ。桜羽さん」
「うん、バイバイ。零冶君」
私は零冶君を笑顔で見送った。……零冶君カッコ良かったな~……うん、学校では話しかけないわ。学校ではね。
私の決心が鈍った瞬間だった。
葵 サイドアウト
零冶 サイド
上手く言ったな。これで桜羽は俺に対して接触し辛くなったはずだ。あの子は自分のせいで他人に迷惑が掛かるのを嫌っている。もし俺に接触したら、俺に迷惑が掛かると分かった以上、あまり積極的には来なくなるはずだ。
さて、俺のしたことを説明しておこうか、まず俺が桜羽と別れて教室に戻った時、
そして、その中の一人の理性を外し、俺を殴らせた。俺はそれをワザとくらい、二組の女子と仲の良い一組の女子を更に
そして、桜羽達が教室に戻った時に同じく
『まったく……何故そこまでして葵ちゃんを遠ざけるのですか?』
『あの子が幸せになりたいのなら、俺に関わってはいけない。
俺ではあの子を幸せにできないからな』
『そんなこと無いと思いますが……』
『忘れるな、ミスト。俺は自分の自由のために他人を利用する人間だ。
そんな人間の傍にいても幸せにはなれないさ』
『……イエス、マスター』
『しかし、バニングスが桜羽を止めてくれて良かったよ。あのまま二組に来ていたら、
またひと悶着あったからな。まさかあの桜羽があそこまで冷静さを欠くとは予想外だった』
『マスターはもう少し女心と言うものを学んだ方が良いですね』
『デバイスに女心を問われるとはな……』
『少なくともマスターよりは分かっていますよ。最後に葵ちゃんが何で素顔を見たいって
言ったと思いますか?』
『気になったって言ってたじゃないか。それ以外何かあると?』
『もう一回死んで、転生し直した方が良いですよ。マスター』
『そこまで言う!?』
『世界広しと言えどもここまでマスターにもの言えるデバイスはいませんね。
もっと誇って良いですよ?』
『怒って良い?』
『却下します』
最近、デバイスのようすがちょっとおかしいんだが。俺泣いて良い? さて、冗談は終わりだ。今日は6月3日。つまり闇の書、いや夜天の書が覚醒する日だ。気を引き締めていくぞ
『マスター、とりあえず私のおすすめの少女マンガを……』
『それはもう良い!』
零冶 サイドアウト
零冶の念能力紹介のコーナーです。
次の念能力はこれだ!
7、
系統:強化系
説明:使用者の現在の全ステータスを二乗倍する能力
発動には全力の練を行ったオーラを右手に硬を行う必要がある。
発動すると右手の甲に竜のような紋章が浮かび上がり、
硬を行ったオーラと同じ密度のオーラを体全身に纏うことが出来、
現在のステータスが二乗倍になる。
使用可能時間は1時間。
解除後、再度使用するには【使用した時間の二乗倍した時間】のインターバルが
必要になる。
使用可能時間全てを使い切ると強制的に能力は解除され、
インターバル中は強制的な絶になる。
制約
1、全力の練を行ったオーラで右手を硬にしないと発動できない
2、再度使用するには【使用した時間】を二乗倍した時間のインターバルが必要になる。
3、使用可能時間以上使用してはいけない
誓約
1、使用可能時間以上使用した場合、インターバル期間中は絶になる
派生技
1、
系統:強化系
説明:
発動すると左手の甲に竜のような紋章が浮かび上がり、
左手の硬を行ったオーラと同じ密度のオーラを体全身に纏うことが出来、
ステータスが二乗倍になる。
使用可能時間は
解除後、再度使用するには【
【
必要になる。
使用可能時間全てを使い切ると強制的に能力は解除され、
インターバル中は強制的な絶になる。
制約
1、
2、再度使用するには【
【
3、使用可能時間以上使用してはいけない
誓約
1、使用可能時間以上使用した場合、インターバル期間中は絶になる
2、
系統:放出系
説明:オーラで魔力を圧縮し、超高密度の魔法砲撃を放つ魔法
原作では
高密度の
転生の際にオーラによる攻撃力なくしているため、それでは
大したダメージならないので、魔力で代用している。
なので、
また、その超威力のため、使用する魔力ランクより耐久が低いと
その反動で自分にダメージが返ってくる
余談だが、魔力は変換もできるため、好きな属性で放つこともできる
制約
なし
誓約
なし
3、
系統:強化系・操作系
説明:
更に自分自身を操作することでオーラ量は爆発的に増える。
発動すると額に竜のような紋章が浮かび上がり、
額の硬を行ったオーラと同じ密度のオーラを体全身に纏うことが出来、
ステータスが二乗倍になる。
自分に出した命令を達成する、あるいは達成不可の状況に
なるまで解除できない。
使用可能時間に制限はない。
ただし、命令達成後、能力は強制的に解除され、
【
インターバルの必要になり、その間は強制的な絶になる。
制約
1、
2、再度使用するには【
時間のインターバルが必要になる。
3、インターバル期間中は絶になる
4、命令達成前に能力を解除してはならない
誓約
1、命令達成前に能力を解除した場合は24時間の強制的な睡眠状態になる。
零冶の最大切り札にして最強のチート能力です。
現在ステータスは
になる破格の能力です。
その分リスクも大きいですが、実際使用可能時間を使い切ることはまずありえないです。
そもそも、リミッター解除すれば
もちろんリミッター解除してこの能力で更に強化も可能です。
まあ、そんなことをしたらデコピンで余裕で星を破壊できるでしょうね。
零冶「スーパーウルトラデラックスファイナルロマンシング……デコピン!」
ドッカーーーーン
で地球滅亡みたいな
分からないことがあったら感想でお願いします。
って感じです。では