原作を放って置くとバッドエンドになるんですが、どうしたら良いですか?   作:月の光

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更新が遅くなってすみませんでした。


感想で誰の会話なのかが分からないとご指摘のあったので、台本形式にしてみました。
おかしなところがあったらご指摘して頂けると非常に助かります。

追記 2014/10/05
 台本形式で書いたことについて沢山のご指摘ありがとうございました。
 この話は一度、台本形式で書きましたが、元の書き方に戻しました。
 これからも元の書き方で書いていきます。


16_零冶『いや~若いっていいね~』ミスト『貴方も若いはずなんですが?』

 ゼロの襲撃のあとアースラでは作戦会議が行われていた。

 

「クロノ、神宮寺君の容態はどうかしら?」

 

「まだ目を覚ましませんが、命に別状はありません。じきに目を覚ますそうです」

 

「そう……彼には申し訳ないことをしたわ」

 

「それと不思議なことに怪我自体は大したことはないらしく、ゼロの使った魔法は

 痛みだけを与える魔法だったのではないかとのことです」

 

「まさに拷問のための魔法と言う訳ね。プレシアさん、貴方から見てゼロの実力はどうですか?」

 

「なんとも言えないわね。情報が少なすぎる。あそこで逃がしたのは痛いわ」

 

「そうですか……エイミィ、ゼロの魔力量は分かったかしら?」

 

「はい、測定した結果S+ほどでした」

 

「あの近接戦闘に加えてその魔力量か……」

 

 エイミィの報告を聞いて峯岸が難しい顔をする。

 

「あの、それって高いんですか?」

 

「かなり高いわ。管理局で把握している魔導師の平均がBなの。

 AAA以上ともなれば管理局でもほとんどいないわ」

 

 なのはの質問に対して、リンディが答える。

 

「なのはちゃんとフェイトちゃんがAAA 葵ちゃんがS、春兎君と神宮寺君なんかSSSだよ。

 あとプレシアさんとリニスさんがSS、アリシアちゃんがSS+だね。

 ここにいる皆すごいんだよね~。クロノ君以外は」

 

「魔導師の実力は魔力量で決まる訳じゃない。魔力制御や状況に合わせた適切な使い方をすれば、

 魔力量なんて関係ない」

 

「羨ましいくせに~」

 

「うるさい!」

 

「二人とも、今はそんなことをしている場合では無いですよ。やるなら終わった後になさい」

 

「「すみませんでした」」

 

 エイミィとクロノがじゃれ合っていたところをリンディが注意する。

 

「まったく……しかし、困ったわね。魔力量も高く、以前のデッドコピーパペットが

 本当に10分1の実力なら、今の戦力で勝てるかどうか……」

 

≪…………≫

 

 リンディの言葉を聞き、その場の全員から覇気がなくなってしまった。

 

――こんなときライさんが居てくれたら……でも秘密にしてないといけないし……

 

――参ったわね……原作には無い展開だし、ゼロは強すぎる……このままじゃ……

 

――くそ! こんなことならもっと早く転生して修行すれば良かった……

  いや、今更嘆いても仕方ない。今はどうするべきかを考えないと……

 

――なんとかゼロの動きを止められれば良いんだけど、僕のバインドじゃ1秒でも

  止めることすら……

 

――本局に増援を要請しようにも間に合うとは思えない……間に合ったとしても

  直ぐに出せる戦力なんて……

 

――皆、意気消沈しているわね。こんなとき艦長として何かしないといけないのだけど、

  何も出来ない自分が歯痒いわ……

 

『プレシア』

 

『何かしら、リニス』

 

『ライに依頼するというのはどうでしょう?』

 

『ダメよ。それではライのことを管理局に話すことになるわ。それでは契約違反よ』

 

『しかし、背に腹は代えられませんよ。ライならゼロと対等に戦えると思いますし』

 

『確かに彼ならゼロに勝てるかも知れない。それでもダメよ』

 

『そうですか……』

 

『ねぇ母さん、ライにお願いしたらどうかなって思ったんだけど』

 

『流石私の娘ね! 私もそう思っていたのよ! 直ぐ連絡取るわね!

 リニス、上手くごまかしておいて』

 

『ちょ!? プレシア! さっきと言っていることが違いますよ! ってもういない!』

 

「えっと、プレシアさんはどこへ行ったんでしょう?」

 

「えっと~、たぶん、お手洗いです!」

 

「それならそうと声を掛けて欲しかったんだが……」

 

「正論だけど、男の貴方が言うと変な意味に聞こえるわよ? そういう趣味なの?」

 

「な! 言い掛かりだ!」

 

「うわ~、クロノ君それは無いよ……」

 

「はぁ~、どこで育て方を間違えたのかしら……」

 

「どういう意味なのかな? フェイトちゃん分かる?」

 

「ううん、分からない」

 

「二人は知らなくていいのよ」

 

――温泉のときになのはに連れてかれていたら僕も同じような目にあっていたのかな?

  春兎、本当にありがとう

 

「んぁ……ふあぁ~、会議は終わったのかい?」

 

「アルフ……」

 

「静かだと思っていたら貴方って人は……」

 

「しょ、しょうがないじゃないか、あたしはこういうの苦手なんだよ……

 それでどうなったんだい?」

 

「現在、ゼロと戦うための戦力の不足をどうするかを話しています」

 

「ふ~ん……ならライに頼んだら良いんじゃないかい?」

 

「「アルフ!?」」

 

「えっ……あ!?」

 

「ア、アルフさん。ライさんのこと知っているの!? あっ……」

 

「……どういうことですか?」

 

 急に挙動不審になったなのは達に問いかけるリンディ

 

「ライってもしかして零騎士ライか?」

 

「零騎士? 誰よそれ?」

 

 葵が疑問を問いかける。

 

「ああ、管理局内で噂になっている傭兵で5年くらい前に突然現れた魔導師だ。

 黒いコートのバリアジャケットに顔の上半分を仮面で隠しているらしい。

 管理局の中でも難易度が高い依頼を難なくこなし、一度の失敗もない。

 彼の出た戦場に敗北はなく、本来何ヶ月も掛かる任務も短期間で解決させる。

 その騎士のような風貌や誰も正体を知らないことから正体不明の零。

 通称【零騎士ライ】と呼ばれている」

 

「そんなやつ本当に居るのか?」

 

 今度は峯岸が問いかける。

 

「分からない。僕も見たことはないし、管理局で噂になっているだけだ」

 

「一番有名なのはバレイルファミリーを捕らえた任務かな?」

 

「何ですかそれ?」

 

 エイミィの言葉に問いかけるフェイト

 

「管理局も手を焼いていた犯罪一家だ。SS級犯罪者が多数在籍していて、

 SSランクの局員10人がかりでも半年掛かると言われていた任務だったんだが、

 彼は1人で任務に当たり、しかも1ヶ月足らずで全員を捕らえたらしい」

 

――そんなにすごい人だったんだ

 

「本人かどうかはともかくとして、もし、戦力に心当たりがあるなら教えて欲しいのですが……」

 

「……申し訳ありません。これをお話しする訳には行かないので」

 

「……なのはさんの方は?」

 

「その……ごめんなさい」

 

「そうですか……」

 

 しばらくの沈黙の後、席を外していたプレシアが戻ってきた。

 

「ごめんなさいね。急に席を外してしまって」

 

「いえ、お気になさらず、それでライさんはなんと?」

 

「ええ、残念だけど直ぐにはこちらに来れないそう……あ」

 

 やってしまったという感じの顔をするプレシア

 

「やはり、ライさんと連絡を取っていたのですね……」

 

「リニス……これはどういう状況かしら?」

 

「アルフが口を滑らせまして……」

 

「ご、ごめんよ……」

 

「はぁ~、仕方ないわね。隠していてごめんなさいね。私達も彼のことを話さないのが

 私の病を治す条件の一つだったのよ」

 

「そうですか、こちらこそ騙すようなことをしてしまい申し訳ありません。

 ですが、もしよろしければライさんと話をさせて頂けないでしょうか?」

 

「……確認するわ」

 

 通信機で連絡を取るプレシア

 

『はい、どうしました? プレシアさん。また何かありましたか?』

 

「ごめんなさい、ライ。貴方のことが管理局にばれてしまったわ」

 

『……そうですか、大方アルフあたりが口を滑らせたってところですか?』

 

「ご名答よ。それで貴方と話をしたいと言っているのだけど……」

 

『……分かりました。では全員に聞こえるようにスピーカーモードにして下さい』

 

「分かったわ」

 

 通信機のスピーカーボタンを押し、テーブルの真ん中に通信機が置かれた。

 

『始めまして、リンディ・ハラオウン提督。ライです』

 

「始めまして、リンディです。ごめんなさいね。無理を言ってしまって」

 

『構いませんよ。ダメなら断ることも出来たのですから、それで話とは?』

 

「率直に聞きます。貴方が零騎士ライですか?」

 

『別に俺がその二つ名を名乗っている訳では無いんですが……

 もし、管理局の依頼をやっている傭兵のライのことを言っているんでしたら俺のことです』

 

「貴方が……本当に実在したのね。先ほどプレシアさんから直ぐには来れないとのことでしたが、

 何故ですか?」

 

『今、他の依頼を受けているので手が放せないからです』

 

「では、それが済み次第、こちらに合流して頂けると?」

 

『はい』

 

「今どちらに?」

 

『ミッドチルダに居ます』

 

「そうですか……だとしたら間に合いそうにありませんね」

 

『もし、移動時間でそう言っているのならその心配はありません。終わり次第、

 直ぐにそちらに行く事は可能です』

 

「分かりました。期待せずに待っています。こちらの現状はご存知ですか?」

 

『はい、プレシアさんから伺いました』

 

「では、この現状貴方ならどうしますか? 差し支えなければ貴方の考えを教えて

 頂きたいのですが……」

 

『……そうですね。格上の相手と戦う上で重要なのは下準備です。

 例えば、自分達に有利な場所に相手を誘い込んだり、逆に相手に有利な場所に

 誘い込んだりです』

 

「相手に有利な場所じゃ、意味ないんじゃ……」

 

 峯岸がライに質問する。

 

『そうとも限らない。自分に有利な状況になったことを想像して見ろ。

 安心感や余裕が生まれ、そこに油断が生じる。その油断を逆手に取り、

 相手を追い詰める下準備をしておくんだ。そうなれば相手は焦りから動きが荒くなり、

 いつも通りの戦いができなくなる』

 

「なるほど」

 

 ライの考えにクロノが納得する。

 

『どちらにせよ、大事なのは下準備だ。そして相手の意表をつく一手があれば、

 戦況を変えることができる』

 

「……分かりました。貴重なご意見ありがとうございました」

 

『いえ。話は以上ですか?』

 

「ええ、もうありません」

 

『分かりました。フェイトはそこに居ますか?』

 

「何? ライ」

 

『前に言われたプレゼントの件だ。今そっちに送る』

 

「え!?」

 

 ライの言葉に過剰に反応するなのは。

 

「あ、ありがとう」

 

 通信機の傍に2つのブレスレットが出現した。

 

≪ッ!?≫

 

 突然、出現したブレスレットに全員が驚いた。

 

『それはアビリティリンク。2つで1つのブレスレットだ。1つはフェイトが着け、

 もう1つは誰か他の人が着ける。そうすることで互いの能力を共有できるマジックアイテムだ』

 

「どういうこと?」

 

 ライの説明が分からず、質問するフェイト

 

『つまりフェイトのレアスキルである魔力変換資質の電撃を相手も使うことが出来るようになり、

 フェイトも相手のレアスキルや魔力を使うことが出来るようになるってことだ』

 

「何ですって!?」

 

「まさかロストロギアじゃないだろうな!」

 

 あまりの性能にリンディとクロノが驚愕する

 

『何故自分で作ったものをロストロギア扱いされなくてはいけない。

 それと相手も魔力変換資質の電撃を持っていたら更に強力になる。

 いずれアリシアに渡せば良いコンビになるだろう』

 

「またすごいものを作ったわね……」

 

 ライの説明に呆れ顔をするプレシア。

 

『そんなことはありませんよ。これはディバイドエナジーの応用です。

 それにこれは相手との相性が重要なので、誰でも良いというわけではありません』

 

「レアスキルの共有なんて今の技術では無理よ」

 

「あ、あの、ライ。その……ごめんよ。あたしのせいで……」

 

『気にするな。これくらいなら想定内だ。次に同じ失敗をしなれば良い。

 そういう素直なところはお前の美点だ。気に病むことはない』

 

「あ、ありがとう」

 

 顔がほんのり赤くなるアルフ

 

――あら、まさかアルフもなのかしら

 

『それとハラオウン提督。お願いがあるんですが』

 

「リンディで構いませんよ。何かしら?」

 

『それではリンディ提督と。俺がプレシアさん達となのはの知り合いであることを

 上には黙っていて欲しいんです』

 

「……理由を聞いても?」

 

『大体察しは付いていると思いますが、俺は地球に住んでいます。

 俺は傭兵なので管理局に入るつもりはありません。しつこく勧誘されては困るからですよ』

 

「……分かりました。善処します」

 

『よろしくお願いします』

 

「しかし、何故なのはさんも話したと分かったのですか?」

 

『アルフが喋ったときにうっかり言ってしまっただろうと思いました。

 あの子は正直者ですからね』

 

「あぅ。ごめんなさい。ライさん」

 

『気にするな。状況はプレシアさんから聞いた。大変なことになっている様だな』

 

「はい……」

 

『すまないな。力を貸してやれなくて』

 

「いえ」

 

『そこでなのはにも渡すものがある』

 

「えっ!」

 

 再び通信機の傍に1つの指輪が現れる。

 

「綺麗な指輪……」

 

――はっ! もしかして! けっけっ結婚指輪!

 

『それはマジカルブースター。装備者の魔法の威力を上げるマジックアイテムだ。

 その分消費魔力は上がってしまうから注意しろ。利き手の人差し指に着けてくれ』

 

「あっはい」

 

――やっぱり違うよね(ショボーン)

 

――あら、もしかしてなのはちゃんもなのかしら? これはライバルが多いわね

 

『それとそのマジックアイテムは今回の事件が終わったら返してもらう』

 

「えっ! な、なんでですか!?」

 

『魔力ブーストは体に負担を掛ける。まだ未成熟のなのはは多用すべきじゃないからだ。

 分かるな?』

 

「……はい、分かったの」

 

『それでは俺は失礼します』

 

 そうして通信機の通話が切れた。

 

「本当に零騎士が存在していたとは……」

 

――いったい何者なのかしら……私達転生者の影響で生まれたイレギュラー? それとも……

 

「とりあえず会議はここまでにしましょう」

 

 そして、会議はお開きとなった。

 

 

 

 

 神宮寺の拷問からしばらく経ち、管理局はジュエルシード探しを続行している。

神宮寺も目を覚まし、心も入れ替わったようで随分と大人しくなった。少なくともなのは達への

嫁発言をやめ、普通に接している。自分が主人公ではないと分かったようだ。

 

 峯岸とも和解し、クロノと三人で修行をしている。

 

『どうやら、最後の懸念事項は無事解決したな』

 

『そうですね。これで足手まといも居なくなりましたから、大分楽できるじゃないですか』

 

『そうだな。さて、そろそろ次の段階へ進めるとするか』

 

『そうですね。管理局も残りのジュエルシードは海にあると気付く頃でしょう』

 

『では、動くぞ』

 

『了解』

 

 ゼロは海上に姿を現し、封時結界を展開した。

 

 

「はっ!? 艦長! 海鳴市近くの海上に封時結界が展開されました!」

 

「直ぐに映像を!」

 

 アースラのディスプレイに映し出されるゼロ。

 

「あいつ、今度は何をするつもりだ」

 

 クロノがディスプレイを見て、ゼロが何をするつもりなのかを推測する。そして、ゼロは懐から1つのジュエルシードを取り出し、魔力を送り込む。

 

「ゼロの持っているジュエルシードが強制発動されました!」

 

「いったい何をするつもり?」

 

 そして、ジュエルシードを海に落とす。

 

「まさか!」

 

 海に落ちたジュエルシードは渦を生み、そして海中の残り6つジュエルシードと共鳴し、

7つ全てのジュエルシードが発動した。

 

「なんて無茶をするんだ! あいつは!」

 

「ですが、これは好機です。いくらゼロでもあれだけのジュエルシードを相手にすれば、

 かなり消耗するはずです。そこを叩きましょう」

 

「で、でも、もしゼロさんが失敗したら街が……」

 

「確かに街どころか地球が危ないわ」

 

「ゼロも勝算も無しにこんなことはしないはずです。もし出来なければ、我々も出動し、

 封印してからゼロを捕らえましょう」

 

「えっ!? 艦長! ゼロから転移反応です!」

 

「な、何ですって!」

 

『ご機嫌いかがかな? 管理局の諸君。君達はこう考えていただろう。

 私がジュエルシードの封印で消耗したところを叩くと。しかし、忘れていないかな?

 私にとってこの星がどうなろうと知ったことではないことを。

 さあ、頑張って封印してくれたまえ。ふははははははははははは!』

 

 そう言い残し、ゼロは転移する。

 

「くっ! やられたわ! クロノ、皆を連れてジュエルシードの封印に向かって下さい」

 

「了解! 皆行くぞ」

 

≪了解《なの》!≫

 

 アースラの転送装置によって海上に姿を現した8人の子供達。そして、唸りを上げる7つの竜巻。

その7つが一つになり、1体の水龍になった。

 

「■■■■■■■■■■■」

 

 声にならない叫びを上げる水龍

 

「くっ! なんて魔力だ! 皆、油断するな! ユーノとアルフと僕でやつにバインドを掛けて

 動きを止める! 残り全員の砲撃魔法で封印だ!」

 

≪了解《なの》!≫

 

「リングバインド!」

 

 クロノが発動の早いバインドで水龍の動きを止める。しかし、強度が高くないためひびが入り、今にも壊れそうになっている。

 

「「チェーンバインド!」」

 

 更にユーノとアルフによる拘束力の高いバインドを使用する。水龍の体を複数の鎖が巻きつき動きを止めた。

 

「今だ!」

 

「ディバインバスター!」

 

「サンダースマッシャー!」

 

「アイシクルバスター!」

 

「雷の暴風!」

 

「エクスカリバー!」

 

 クロノの合図の後、複数の砲撃魔法が水龍へと放たれた。しかし

 

「■■■■■■■■■■■」

 

 水龍の咆哮によって全ての砲撃魔法はかき消された。

 

「そんな!」

 

「くっ! これ以上は!」

 

「押さえられないよ……」

 

 水龍に巻き付いていた鎖が砕かれ、自由になった水龍はなのは達の方を向き

 

「■■■■■■■■■■■」

 

 大きく口を開き、そこへ魔力が収束していく。

 

「まさか! 砲撃魔法!」

 

「なんて魔力だ!」

 

クロノと峯岸が水龍の行動に驚愕し、エイミィから通信が入る

 

『気をつけて皆! 推定魔力Sランクオーバーだよ!』

 

 そしてその一撃が放たれた。

 

「ラージシールド!」

 

 ユーノが前に出て巨大なシールドを発動させ、水龍の砲撃を受け止めた。

 

「くぅぅぅ!」

 

 そして砲撃が止み、ユーノのシールドが砕け散った。

 

「ユーノ君! 大丈夫!」

 

「僕は大丈夫。ゼロ対策で用意していた防御魔法が役に立った。

 でも、おかげで魔力が殆ど無くなってしまった」

 

――このままじゃ全滅だわ! ここで負けたら海鳴市まで、そうしたら蒼乃が……

  私の家族が……そんなこと絶対にさせない!

 

「皆! 私の切り札を使うわ! 少しの間あいつの相手をお願い!」

 

「しかし、そんなことをしたらゼロの思惑通りに!」

 

「ここでやられたら元も子もないでしょ! 私はこの星を守りたいのよ!」

 

「……わかった。皆! 葵を援護するぞ!」

 

≪了解《なの》!≫

 

「やるわよ! サファイア!」

 

[イエス! マスター!]

 

 葵が右手を前に出し、魔力を収束させていく。魔力を圧縮し、肥大化するのを抑え、大きさはバスケットボール大を維持している。そして、圧縮された魔力は次第に形を変え、一本の槍になった。

 

「皆! 下がって!」

 

 葵の言葉と同時になのは達は水龍から離れる。葵は槍を掴み

 

「くらいなさい! アブソリュートランス!」

 

 葵は槍を海に向かって投げつけた。誰もが何故水龍に投げなかったのか疑問に思ったが、槍が海に当たった瞬間、直ぐに答えは出た。

 

「来たれ! 氷河の時代! アイスエイジ!」

 

 海一面が凍りつき、海と繋がっていた水龍もたちまち凍りついた。

 

「すごい……」

 

「これがアオイの切り札」

 

 なのはとフェイトが葵の切り札に驚愕する中、エイミィから通信が入る。

 

『ジュ、ジュエルシード、全て沈静化しました』

 

 そして、自重に耐えられなくなった水龍の氷像はひびが入り、次第に砕けていった。

 

「ふぅ」

 

「うぅ、寒! ここからジュエルシードを探すのか……」

 

「泣き言言ってないで探すわよ」

 

「わ、分かってるよ」

 

 葵は一息付き、神宮寺が泣き言を言って、葵に怒られる。

 

『はっ!? 気をつけて、皆! 直ぐ傍に転移反応だよ!』

 

≪えっ!?≫

 

 氷の大地と化した海上に転移方陣が現れ、そこからゼロが現れた。

 

「ジュエルシードの封印ご苦労だった。桜羽葵だったな。数日前とは比べ物にならないほどの

 成長ぶりだ。素晴らしいぞ」

 

≪ゼロ!≫

 

「それとそこの主人公君の気にしたことは杞憂だよ。既にジュエルシードは回収済みだ」

 

「そんなバカな!」

 

 ゼロの言ったことが信じられないクロノ。

 

「これがその証拠だ」

 

 七つのジュエルシードを見せるゼロ。

 

「いったいいつの間に!」

 

 峯岸がゼロの問いかける。

 

「では種明かしと行こうか。私は残りの6つのジュエルシード全てに簡易転送装置を

 付けていたんだよ。つまり、どこにあったのかを既に知っていたのだ」

 

「ならなんで強制発動なんか……まさか!」

 

 ゼロの真意に気が付くユーノ

 

「気付いたか? 君たちの持つジュエルシードを奪うために少しでも有利に進めようと思ってね。

 君達を消耗させるためにこの舞台を用意した。実に効率的だろう?

 スクライア少年は既に魔力が殆ど残っておらず、桜羽葵は切り札を使用し、

 魔力を大分消耗した。残りも少なからず、魔力を消費している。全て私の計算通りだ」

 

「くっ! しかし、まだ負けた訳じゃない!」

 

「いや、勝負はもう付いた」

 

 まだ諦めないクロノにゼロが勝利宣言をする。

 

「何! どういうことだ!」 

 

「君達は私が意味も無くこんな長話をすると思っているのか?」

 

 峯岸の問いかけに答えるゼロ。

 

「……しまった!」

 

「もう遅い。ボムバインド」

 

 クロノが気付いたが、ゼロのバインドがなのは達を捕らえた。

 

「ふはははははははははははは! この程度で執務官とはな、クロノ・ハラオウン!

 管理局の質も落ちたものだ!」

 

「管理局をバカにするな! こんなバインド! バインドブレイク!」

 

 クロノがバインドを破壊した瞬間

 

 

ドカァァーーーン

 

 

 バインドが爆発した。

 

「ぐわぁぁ!」

 

『クロノ!?』

 

 突然の爆発に飲まれたクロノに声を掛けるリンディ

 

「そのバインドは使用者が解くか正しい手順で解かなければ爆発するバインドだ。

 安い挑発に乗るからそうなる。さてこれで一人脱落だ」 

 

 ゼロの上空に巨大な雷が出現し、ゼロを飲み込んだ。しかし、その一撃は絶対守護領域によって防がれていた。

 

「真打登場か……」 

 

「ええ、待たせたわね」

 

 上空からプレシアがゆっくりと下りてくる。

 

「別に待ってなどいない。貴方ほどの魔導師を失うのは惜しい。私と一緒に来い。

 管理局は貴方が仕える価値のない組織だ」

 

「お断りよ。私の望みは家族で幸せになることなのだから」

 

「それは残念だ。なら」

 

「だから」

 

「ここで消えろ! プレシア・テスタロッサ!」

 

「ここで消えなさい! ゼロ! フォトンバレット・マルチショット!」

 

「ハドロンスフィア・マルチショット!」

 

 ゼロとプレシアの魔力弾による弾幕戦が始まった。

 

「ふははははははは! 素晴らしい! そんな初級魔法で私のハドロンスフィアと

 打ち合うとはな! 魔法のレベルを落として手数を増やし尚この威力!

 実に惜しい人材だ! プレシア・テスタロッサ!」

 

「くっ! 勝手なことを言ってくれるわね!『リニス、今の内に皆を』」

 

『分かりました』

 

 しばらく、魔力弾の打ち合いが続いたが、先にゼロが動いた。

 

「では、これならどうだ? ハドロンショット!」

 

 ゼロは先ほど打ち合っていた魔力弾より大きな魔力弾を放つ。それに対し、複数のフォトンバレットを一つにまとめてゼロの魔力弾と同じ大きさの魔力弾を作るプレシア。

 

「はぁっ!」

 

 ゼロの魔力弾とプレシアの魔力弾は衝突し、消滅した。

 

「ふははははは! 流石だな!」

 

「そこまでです! ブラズマランサー!」

 

 ゼロとプレシアの打ち合いとは別の方向からリニスは魔力弾を放つ。しかし、それは絶対守護領域によって阻まれた。

 

「ほう、もう全員のバインドを解いたのか? もう少し手こずると思ったのだがな……

 やはり主人に似て使い魔も優秀ということか。是が非でも手に入れたくなったぞ。

 プレシア・テスタロッサ」

 

 ゼロとプレシアの魔力弾の撃ち合いが止み、なのは達が開放されているの確認するゼロ。

 

「これで形勢逆転だ!」

 

「観念しなさい! ゼロ!」

 

「ふむ、では第2ラウンドと行こうか」

 

 峯岸と葵がゼロに告げ、ゼロが次の行動を起こす。懐からペン型のスイッチを取り出し、ボタンを押した。すると突然、なのは・フェイト・葵・ユーノ・アルフの飛行魔法が消え、地面に落ち始めた。

 

「「「きゃああああ」」」

 

「うわああああ」

 

「魔法が! どういうことだい!」

 

「くっ!」

 

 プレシアの浮遊魔法によって、地面へ衝突する前に空中で留まるなのは達。そしてゆっくり氷の大地に降ろされた。

 

「ゼロ! いったい何をした!」

 

「少しは自分で考えたらどうだ? まぁ良いだろう。特別にその足りない脳みそでも分かるように

 説明してやる。これはゲフィオンディスターバー。魔力ランクがS以下の魔導師の魔法を

 完全に封じる結界を発生させる装置だ。それをたった今起動させた」

 

「馬鹿な! いつの間にそんなものを!」

 

 峯岸の問い掛けに対し、ゼロが答え、その事実に驚愕するリニス。

 

「お前達は忘れているのか? ここは私が用意した戦場だぞ? この仕掛けをしてから

 行動を起こしたんだよ」

 

「くっ! 最初から貴方の思惑通りだったということね」

 

「その通り、さてこの中で動けるのはプレシア・テスタロッサとその使い魔、

 赤髪の少年と主人公君だけだな。だが、一人は既に使い物にならないだろうがな」

 

 そう言い右手に電撃を纏わせ、神宮寺の方を向くゼロ。

 

「ひぃ!?」ガタガタ

 

――やはり、かなりのトラウマになっているな。今回の戦いで克服するのはまず無理だろう。

  だが、いつかこのトラウマを克服した時、やつは一皮むけることになる。

  まあ、それは踏み台次第だがな

 

「貴方の相手は私達よ『春兎君と王我君はゼロの言っていた装置を探し出して破壊して頂戴』」

 

 プレシアは念話で峯岸と神宮寺に指示を出す。

 

『しかし、2人だけじゃ!』

 

『時間を稼ぐだけよ。今のまま戦っても勝てないわ』

 

『……分かりました。王我、行くぞ!』

 

「…………」ガタガタ

 

 恐怖で動けない神宮寺。

 

「しっかりしろ! 王我! 俺達が修行してきたことを無駄にするな!」

 

「春兎……ああ、分かった! 行こう! 春兎!」

 

 2人はその場から離れる。

 

『いや~若いっていいね~』

 

『貴方も若いはずなんですが?』

 

 峯岸と神宮寺が青春しているのを見て、零冶とミストが念話でやり取りをする。

 

「私がむざむざ逃がすと思うのか?」

 

 ゼロは2つの魔力弾を峯岸と神宮寺に放つ。しかし、プレシアの魔力弾によって阻まれた。

 

「貴方の相手は私達だと言った筈よ。それともレディの誘いを断るのが、

 貴方の流儀なのかしら?」

 

「貴方のような美しい女性に誘われるなら大歓迎だよ」

 

「そう? なら私と踊って下さるかしら?」

 

 ロングスカート状のバリアジャケットをたくし上げて、膝を軽く折り挨拶をするプレシア。

 

「良いだろう。共に踊ろうか……破滅への輪舞曲(ロンド)を!」

 

 そうして、再び2人の弾幕戦が始まった。ゼロとプレシアが魔力弾で撃ち合う中、リニスは隙を見てゼロを攻撃するが、ゼロはマルチタスクを使い、絶対守護領域でリニスの攻撃を防ぐ。しばらくそのまま硬直状態が続いていた。

 

――くっ! こっちは2人で戦っているのにまったく隙ができない! なんて強さなの!

 

――また防がれた! いったいどれほどの実力を秘めているのですか彼は!

 

『いや~この2人のコンビは強いな。これなら闇の書の管理人格と対等に戦えるんじゃないか?』

 

『余裕で防いでいる貴方が言っても説得力なんてありませんよ』

 

『俺が本気だしたらそもそも戦いにすらならないじゃん。さて、そろそろかな~』

 

「ふははははは! この私とここまで対等に戦える者がこんな辺境の地に存在するとはな!

 だが、時間を稼ぎゲフィオンディスターバーを破壊するのが目的なんだろうが、

 私が作成したステルス機能をなめないでもらおうか? あんな子供だけで見つけられるはずが」

 

 

ドカァーーーン

 

 

 爆発音とともに周囲に張り巡らされていた結界が解け、なのは達が魔法を使えるようになる。

 

 

「何! 馬鹿な!」

 

「今よ! リニス!」

 

「はい!」

 

 リニスは既にプレシアの隣に来ており、同時に魔法を使う。

 

「「プラズマサンダースマッシャー!」」

 

「しまった!」

 

 

ドカァーーーン

 

 

 プレシアとリニスの砲撃魔法の直撃を受けるゼロ。周りに煙が立ち込める。そして次第に煙が晴れていく。

 

「ぐっ! まさかゲフィオンディスターバーを破壊されるとは思っていなかったぞ」

 

『貴方と違い私達は1人ではありません。装置はこちらで発見しました』

 

「やってくれたな! リンディ・ハラオウン!」

 

「観念なさい。ゼロ。貴方の負けよ」

 

「大人しく捕まってください」

 

『貴方の身柄は管理局で拘束させてもらいます』

 

 プレシア・リニス・リンディがゼロに告げる。

 

「……な」

 

「何を……」

 

「かかったな! プレシア・テスタロッサ!」

 

「「な!?」」

 

 突然、プレシアとリニスを囲うように結界が発生した。

 

「ふはははははははは! 弾幕戦の中私が何もしていないと思ったか! そちらが裏で

 動いていたように私も動いていたのだよ! これでそちらの切り札は封じた! 私の勝ちだ!」

 

「こんな結界! サンダースマッシャー!」

 

 プレシアが魔法を唱えたが、魔法は発動しなかった。

 

「な!? これはいったい!」

 

「それはエムゼロルーム。その中では一切の魔法を使用することはできない。

 そして外部からの干渉は一切受け付けなくなる」

 

「くっ! そんな魔法が!」

 

 ゼロの説明に驚愕するリニス。

 

「しかし、その性能故にその大きさが限界だ。最初からお前達2人が一か所に集まるタイミングを

 謀っていたのだよ」

 

「くっ!」

 

「だが、私は君達を高く評価している。今一度問おう。私のところへ来い。プレシア」

 

「さっきも言ったけれど、お断りよ。私は家族で」

 

「はたして管理局の元で君たちは幸せになれるかな?」

 

「……何が言いたいのかしら」

 

「かつて、貴方が家族を失ったのは誰のせいだ? 管理局による謀略のせいだったはずだ」

 

「なっ!? 何故あなたがそれを!」

 

『それはどういうことですか!? プレシアさん!』

 

「私は今、プレシアと話をしているんだ。外野は黙っていてもらおうか。

 さもなくば、その次元艦と共に消えることになるぞ?」

 

『くっ!』

 

「貴方は当時、ミッドの中央技術開発局の第3局長を務めていたが、その時に行っていた

 次元航行エネルギー駆動炉ヒュードラの実験に失敗し、大量の魔力を浴びた最愛の娘は死亡。

 貴方は辺境の地へ異動となった。

 だが、実験失敗の真実は管理局上層部からの無理な工程の短縮化・非人道的な労働時間を

 強いられていたことが原因だった」

 

「…………」

 

「そして、その裏は貴方の成功を妬む者による貴方を貶めるための謀略だった。

 貴方もそれは既にご存じだろう?」

 

「……ええ」

 

『そ、そんな……』

 

「管理局の元では貴方は……貴方達家族は幸せになどなれない。また娘達を失うことになるぞ。

 あの2人はプロジェクトFの貴重な成功体。実験体にされるのが落ちだ」

 

『そんなことには絶対にさせません! 私達が守ります!』

 

「どうやって? 残念ながら、彼女は違法研究に手を出し、さらにこの事件の発端者だ。

 ここで協力をしているといってもその罪は消えない」

 

『そ、それは……』

 

「出来もしないことは口にするな。虫唾が走る。さあ、プレシア。私と共に来い。

 私は貴方に無理をさせない。家族にも手は出さない。家族で幸せになるのが目的なら

 私の元でも構わないはずだ」

 

「……答えは…………NOよ」

 

『プレシアさん!』

 

「……そうか、とても残念だよプレシア。ならばそこで見ていると良い。

 貴方の大切なものが蹂躙される様をな」

 

「貴方は1つ思い違いをしているわ」

 

「何?」

 

「切り札は私だけじゃないってことよ」

 

「戯言を……ここに貴方ほどの使い手など……」

 

「アーエル・ウル・エルド!」

 

 峯岸が少し離れたところで演唱を始めた。

 

「ふん、誰かと思えば……」

 

「契約により我に従え、高殿の王、解放! 千の雷!」

 

 遅延魔法により、事前に詠唱して溜めておいた魔法を発動させる峯岸。

 

「ほう、遅延魔法か……だが、私の絶対守護領域は」

 

「固定!」

 

「何?」

 

「掌握! 術式兵装! 雷天大壮!」

 

「まさか、魔法を体内に取り込んだのか」

 

「術式解放! 完全雷化! 千磐破雷! ぐっ!」

 

「ふはははははははは! 面白い! 面白いぞ! 赤髪の少年! いや、峯岸春兎!

 それが貴様の切り札か! ならば見せてみろ! 貴様の全力を!」

 

 ゼロがそう言った瞬間、峯岸の姿が消え、いつの間にかゼロの前にいた。

 

「何!?」

 

「はああぁ!」

 

「ぐはっ!」

 

 春兎の掌底がゼロの腹部に決まった。

 

「ぐっ、速いな……自らを雷と化し、雷速を得たか。だが、まだ攻撃が軽いな。

 それではいくらやっても私を倒すことは」

 

「ゼファ! モード夕凪!」

 

「イエス! マスター!」

 

「なるほど、足りない攻撃力は武器でカバーか……良いだろう、相手になってやる」

 

 ゼロは腰の剣を右手に持ち、懐の短剣を左手に持った

 

「ッ! 二刀流……」

 

「これが私本来のスタイルだ。さあ、私を楽しませてみせろ! 峯岸春兎!」

 

 ゼロと峯岸の姿が消え、周囲には剣撃だけが響き渡った。

 

「これが春兎君の全力……」

 

「速くてまったく見えない。私も速さには自信があったんだけどな」

 

「あれは仕方ないわよ。春兎が変人なのよ」

 

「すごい……あのゼロと対等に戦ってる」

 

「敵じゃなくて本当に良かったよ」

 

――やっぱり俺は主人公じゃないな。あんなの見せられたら認めるしかない。

  だけど、いつか追いついてやるからな春兎!

 

「さあ、もたもたしてないで私達も準備するわよ」

 

≪分かった《の》≫

 

 葵の言葉でなのは達が行動を開始する。

 

「ふはははははははは! 素晴らしいぞ! 僅か数日で見違えるようではないか!」

 

「くっ! 余裕扱きやがって!」

 

――まだ甘いが、なかなかの完成度じゃないか。後は慣らしと体への負担を減らすこと。

  神鳴流の剣技と気の使い方を修行すれば完璧だな。まあ、その辺は峯岸にまかせよう。

  だが、ここではまだ勝たせる訳には行かないな

 

「だが、それの弱点はお前も気付いているだろう?」

 

「ッ!?」

 

「まず、移動速度が上がっても思考速度は変わらない。故に」

 

 ゼロが一瞬で春兎の後ろに回り込む。

 

「動き出す前の出がかりで潰されしまう。掌底破!」

 

「がはっ!」

 

 ゼロの掌底が峯岸を吹き飛ばす。吹き飛ばされた峯岸は体勢を立て直し、ゼロに攻撃を仕掛けようとするが、

 

 

パリッ

 

 

「次にこれだ。速すぎて自分でも止まれなくなってしまうのを防ぐために予め、

 移動する場所を決定させる先行放電がある」

 

 峯岸が一瞬でゼロの前に移動する。

 

「故にカウンターを受け易い。月閃光!」

 

「ぐはっ!」

 

 ゼロの三日月のような半円を描いた切り上げをくらい、再び吹き飛ばされる峯岸。しかし、直ぐに体勢を立て直す。

 

「まだだ! まだやれる!」

 

「いいや、もう終わりだ。ディスペルバインド!」

 

「しまった!」

 

 ゼロのバインドによって拘束される峯岸。

 

「こんなバインドすぐに……!?」

 

 しかし、峯岸は自分の体に違和感を感じた。

 

「そんな! 何故闇の魔法(マギア・エレベア)が!」

 

「そのバインドは、捕らえた相手に掛かっている特殊な魔法を打ち消す効果がある。

 これで終わりだ。ハドロンブラスター!」

 

 ゼロの砲撃魔法が峯岸を襲う。

 

「くそぉぉ!」

 

「ラウンドシールド!」

 

 ユーノがゼロの砲撃魔法を防いだ。しかしすぐにひび割れ、貫かれた。だが、既に峯岸はアルフによって助け出されていた。

 

「まだ!」

 

「終わらせないよ!」

 

「小賢しい真似を……何!」

 

 ゼロに向かって複数の刀剣が降り注いだが、それを絶対守護領域で防ぐ。

 

「俺達が居るのを忘れて貰っちゃ困るぜ!」

 

「ええい! 鬱陶しい!」

 

――うん、狙いもちゃんと定まっている。少しは成長したようだな

 

「消えろ! ハドロンブラスター!」

 

「ブレイズキャノン!」

 

 神宮寺に放たれたゼロの砲撃魔法にクロノが側面から自分の砲撃魔法を当て、軌道を逸らす。

 

「この死に損ないがぁ!」

 

「アブソリュートランス!」

 

 桜羽がゼロに絶氷の槍を投げた。

 

「私をなめるなぁ!」

 

 それを絶対守護領域で防ぐゼロ。

 

「それはこっちのセリフよ! 凍てつき閉じよ! アイスベルク!」

 

 突然、氷山が出現し、その中にゼロを閉じ込めた。

 

――なるほど、一方方向からの攻撃では絶対守護領域で防がれるから全方位から覆った訳だ

 

「今よ! なのは! フェイト!」

 

「うん! 受けてみて!」

 

「これが私達の!」

 

「全力~!」

 

「「全開!」」

 

 ライから貰ったアビリティリンクでなのはとフェイトの能力を共有し、互いのデバイスをクロスさせ、なのはが魔力を収束、フェイトが魔力を電撃に変えて行く。

 

――おお! まさかの合体魔法とはな! いつの間にあんなの覚えたんだ? まあいいや

 

『ミスト、ここが潮時だろう。やられたふりして帰るぞ』

 

『……いいえ、貴方には最後まで悪役を演じてもらいます』

 

『ミスト? 何を言っ…………イエス、マイロード。強者の慈悲(リミッターオン) 魔力をS+からSSSへ』

 

 突然、ゼロから巨大な魔力が噴き出す。

 

≪なっ!?≫

 

『そ、そんな! 皆、気を付けて! ゼロの魔力ランクがSSSに上がった!』

 

「うそ……だろ」

 

 その事実に峯岸が驚愕している中、氷山にひびが入り、全ての氷が砕かれた。

 

「そ、そんな……」

 

 自分の切り札がいとも簡単に砕かれたことに言葉を漏らす葵

 

「……大健闘だよ。まさかここまで追い詰められるとは私も思っていなかった……だが、

 それもここまでだ。さて、私から君達に最後の教訓だ。

 切り札は先に見せるな。見せるならさらに奥の手を持て」

 

「なんて魔力だ……」

 

 ゼロが解放した魔力を右手に集中させ、その魔力量にユーノが絶望する。

 

「ジガディラス・ウル・ザケルガ」

 

 そう唱えたゼロの頭上に下半身が砲口を思わせる巨大な翼と2本の角を持つ雷神を出現した。

 

「うあぁ……」ガタガタ

 

 トラウマが蘇り、震え出す神宮寺を他所に雷神の砲口の周りにある5つの太鼓のような箇所が時計回りに輝き始める

 

「こんなのもう無理だよ……」

 

 アルフが諦めたとき、なのはとフェイトはまだ諦めていなかった。

 

「まだ終わっていない!」

 

「私達は最後まで諦めない!」

 

「スターァァァ」

 

「プラズマ!」

 

「「ブレイカーァァァァ!」」

 

 なのはとフェイトの合体魔法による巨大な雷撃砲が放たれた。その砲撃魔法はライから渡されたマジカルブースターにより更に強化され、推定威力はSS+に至っていた。

 

「さあ、破壊の雷神。ジガディラスよ。全てを打ち砕け!」

 

「ZIGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA」

 

 ジガディラスから超巨大な電撃ビームが放たれ、なのは達の砲撃魔法と衝突する。

 

 

ドガガガガガガガ!

 

 

「キャアアアァ」

 

「くっ! なんて衝撃だ!」

 

「なんつぅーバカ魔力!」

 

 あまりの衝撃に吹き飛ばされそうになる葵と驚愕する峯岸とクロノ。

 

「雷怖い雷怖い雷怖い雷怖い雷怖い雷……」ガタガタ

 

「しっかりするんだ! 王我!」

 

「いや、これは誰だって怖いよ」

 

 トラウマが蘇り、震える神宮寺に声を掛けるユーノとアルフ。

 

「くうぅぅぅぅ!」

 

「ぜっ……たいに……諦めない……」

 

「…………味気無い。ジガディラス……その淡い希望……打ち砕いてやれ」

 

「ZIGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」

 

 ジガディラスのビームが更に巨大になり、なのは達の砲撃と衝突する。

 

「そん……な」

 

「まだ……力を隠してた……なんて」

 

 そして、ジガディラスのビームはなのは達の砲撃を打ち抜いた。

 

 

パァァァン

 

 

「なのはぁぁ! フェイトォォ!」

 

「なのは!」

 

 フェイトはなのはを突き飛ばし、ジガディラスのビームの軌道上から追い出した。

 

「フェイトちゃん!」

 

「イヤァァァァ! フェイトォォォォ!」

 

 フェイトの行動に驚き声を掛けるなのはと悲鳴を上げるプレシア

 

「ッ!」

 

 フェイトは目を瞑り衝撃に備えた。そして……

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

 

「冗……談……だろ」

 

「こんなことが……ありえるの?」

 

「はっはは……これは夢だ。そうに決まってる!」

 

 転生者達は信じられない光景を見ている。神様に特典をもらい転生した彼らでも手も足も出ない敵が放った最強の砲撃魔法ジガディラス。その砲撃に飲み込まれるフェイトの姿……ではなく、

 

 原作キャラ達の合体魔法でも勝てなかった最強の砲撃を()()で受け止めている仮面の男の姿だった。

 

 

 フェイトはいつまでも来ない衝撃に疑問を持ち目を開ける。そこには

 

「ラ…イ」

 

 右手の甲に竜の様な紋章が浮かび上がった、ライの姿があった。

 

「遅くなってすまなかったな。フェイト、なのは」

 

「「ライ《さん》!」」

 

――バカな! 何故俺がいる!

 

『ミスト! これはいったいどういうことだ!』

 

『…………』

 

 ゼロに黙秘で返すミスト。そして、ライは受け止めていた砲撃をまるで実体があるかの様に掴み、ゼロに投げ返した。

 

≪えええええええ!≫

 

「馬鹿な!? おおおおお!」

 

 絶対守護領域で返ってきたジガディラスの砲撃を防ぐゼロ。シールドにひびが入ったもののなんとか防ぎきった。

 

――あれは間違いなく竜の紋章(ドラゴンのもんしょう)だ! それに栄光の手袋(グロリアスハンド)だと!

 

 ライは飛雷神の陣(ひらいしんのじん)で、一瞬でゼロの背後に回り込み、剣で切りかかった。

 

「な!?」

 

 ゼロも反応し、剣で受け止める。

 

「お前はいったい!」

 

「喋るな……辛い役目を押し付けて悪かったな。今、解放してやる。コピーパペットよ。

 ギアスキャンセラー発動」

 

「何を言って……」

 

 ライのギアスキャンセラーによってゼロは失っていた記憶を取り戻す。

 

 

 

~数日前~

 

 

「さて、コピーパペット。お前には俺に成り代わり悪役を演じてもらう」

 

「イエス、マイロード」

 

「お前は俺の記憶と実力の90%を受け継いでいる。だが、いくつか能力に制限を掛ける」

 

 零冶は管理者の鍵(マスターキー)を具現化し、コピーパペットの能力に封印(ロック)を掛けていく、封印(ロック)された能力は2つ

  ①竜の紋章(ドラゴンのもんしょう)

  ②ギアスキャンセラー

 

「では、これからお前に絶対遵守(ギアス)を掛ける」

 

「イエス、マイロード」

 

「月無零冶が命じる。お前はこれから挙げる3つを遵守せよ!

  1つ、自分が偽者であることを忘れ、月無零冶として悪役を演じろ。

  2つ、今封印(ロック)を掛けた能力を使おうと思うな。

  3つ、ミストが出す指示には絶対に従え。

 以上だ」

 

「《イエス、マイロード。私は偽者であることを忘れ、月無零冶として悪役を演じ、

 封印(ロック)が掛けられた能力のことは考えず、ミスト様が出す指示に従います》」

 

「よし、ではミスト。悪いが後は任せたぞ」

 

「分かりました」

 

 

~数日前~ END

 

 

――ああ、そうだった……自分は偽者。主のための人形だったのだ。なら……

 

「ふはははははは! まさかこんなところで零騎士ライに会うとはな! 私も存外運が無い!」

 

「俺を知っているのか?」

 

「無論だ。目を付けていた魔導師だからな。どうだ、私と共に来ないか?」

 

「断る。俺は誰にも縛られない」

 

「それは……残念だ!」

 

――そう、この命は全て主のために!

 

 ライとゼロの姿が消え、剣撃だけが鳴り響く。

 

「なのは! フェイト! 大丈夫!」

 

「うん、私は大丈夫。フェイトちゃんは?」

 

「私も大丈夫。ライが守ってくれたから」

 

「あれが零騎士ライ……」

 

「なんだよ。なんでこんなに強いやつがゴロゴロいるんだよ」

 

「いや、これほどの強さの魔導師なんてごく僅かだ。今ここに此れほど集まっていること

 自体が異常だよ」

 

「もしかして春兎と同じような強化魔法を使っているのかな?」

 

「ていうか、あれは本当に人間なのかい? 人外って言われたほうが納得できるよ」

 

 

 

「くっ! 虎牙破斬!」

 

「雷斬衝!」

 

 ゼロの切り上げから切り下ろしの2段攻撃を雷を纏った切り下ろしで相殺するライ

 

「双牙斬!」

 

「砕氷刃!」

 

 更にゼロは長剣を横に切り払い、短剣による切り上げの攻撃を放ち、ライは氷を纏った斬撃をX状にクロスさせた攻撃で相殺

 

「空襲剣!」

 

「邪霊一閃!」

 

 前方移動と後方上空に移動しつつ、切りつけるゼロに対し、ゼロに飛び込み斬り、すぐさま右へ追い抜けながら切りつける攻撃を放つライ

 

「幻影刃!」

 

「風牙絶咬!」

 

 互いに前方への高速移動と共に攻撃をする技を仕掛ける。

 

「爪竜r」

 

「抜砕竜斬!」

 

 ゼロが高速の連続切りを放とうしたが、ライの神速の居合いによって阻まれた。

 

「何! ぐはっ!」

 

「潜身脚!」

 

「ぐっ」

 

 ライはゼロの足を払い、蹴り上げる。

 

「双衝!」

 

「がっ!」

 

 ライはゼロを膝蹴りで打ち上げ、剣を収めた鞘で殴り落し、更に鞘で追撃する

 

「昇竜氷舞!」

 

「ぐぅ!」

 

 ゼロを蹴り上げ、竜の形をした冷気をゼロに放つライ。

 

「裂空刃!」

 

「くぅぅ!」

 

 ライは神速で剣を複数回振り抜き、真空波で切り刻む

 

「終わらせてやる! 閃く刃は勝利の証!」

 

 ライがゼロに急接近し、連続で切りつけ、そして

 

「白夜殲滅剣!」

 

 最後に剣を納刀すると同時に鞘でゼロを吹き飛ばす

 

「がっはぁ! ぐっ! 貴様よくもやってくれたな……!? 体が!」

 

「エアロバインド。お前の動きは封じさせてもらった」

 

「貴様ぁぁ!」

 

双竜紋(そうりゅうもん)発動!」

 

 ライの左手の甲に右手の甲と同じ紋章が浮かび上がった。

 

「受けてみろ!」

 

 ライは頭の上に両腕を挙げ、肘を伸ばした状態で指を組む。そして体を纏っているオーラと魔力を両手に集中させる。

 

「これが俺の最強の魔法だ!」

 

 竜の口の形に組み合わせた両手をゼロに向け

 

『さようなら、我が主』

 

『ああ、今まで……ありがとう』

 

竜闘気砲魔法(ドルオーラ)!」

 

「ライィィィィィィィ!」

 

 ライが砲撃魔法を放ち、ゼロも絶対守護領域で防いだが、瞬く間にひびが入り、やがてゼロを飲み込んだ。そして砲撃が止んだが、そこにゼロの姿はなかった。

 

 こうして長かった戦いに決着が付き、ジュエルシード事件は幕を閉じた。

 




感想にあった零冶の使う念能力の制約と誓約はどうなっているのかをこれから
1話毎に書いて行こうかと思います。

まずはこれから

1、神の遊戯
 系統:特質系
  説明:端末を具現化し、自分自身のステータス確認・強化及びレアスキルの
     作成・強化を行える。
     ステータス強化及びレアスキル作成・強化にはEXPポイントが必要になり、
     EXPポイントは修行や実戦などで手に入る
     レアスキル作成はオリジナルを考えて端末に登録でき、必要なEXPを
     消費することで覚えることが可能

  制約
   1、修行や実戦などを行うとEXPが手に入る
   2、ステータスはこの能力以外で強化することはできない
   3、ステータス強化にはEXPを支払わなくてはならない
   4、レアスキル作成・強化にはEXPを支払わなくてはならない

  誓約
   なし

零冶がバグチートになった原因の能力ですね。
制約の2、が分かり辛いと思うのでここで説明します。
つまり、筋トレをした場合に疲労は溜まってもそれによって付く筈の筋肉は付かず、
全てEXPに加算されます。
そしてそのEXPを使用してステータス強化を行い、初めて筋肉が付く。
また、そのEXPを使い他のステータスを強化したり、レアスキルの作成・強化が
行える。
って感じです。

ゲームとかに良くレベルは上がってもステータスポイントを振り分けないと
強くならないものとかありますよね。 あるよね? あるって言って下さい。
それを参考にして考えた能力です。

これにより、修行したからと言って上がらないようなステータスである幸運などを
上げることができるようになり、自分の思い通りにステータスを強化することが
出来る。まさに修行チートのための能力です。

レアスキルの作成もどんな能力か? 制約と誓約はなにか? によって必要なEXPが
変動します。つまり、チートなほど大量のEXPが必要になります。

作成後のレアスキルの強化ではデメリットである制約・誓約を消すこともできます。
その分EXPが必要になります。

と、まあこんな感じの能力です。

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