原作を放って置くとバッドエンドになるんですが、どうしたら良いですか?   作:月の光

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10_ミスト『我ながら良い仕事をしました』零冶『流石は俺の相棒だぜ!』

零冶 サイド

 

 

 俺とリニスはプレシアが待つ部屋の扉を開けた。

 

「プレシア…………」

 

「リニス……本当に生きていたのね」

 

「ええ、彼のおかげで」

 

「はじめまして、プレシア・テスタロッサ。私はライと申します。以後お見知りおきを」

 

 俺は右腕を動かし、軽く握った右手が左胸の前にくるように上げ、礼をする。

 

「ええ、はじめまして……まるで騎士のようね。早速だけど、あの手紙を渡したのは貴方ね?」

 

「はい、お会い出来て嬉しいです。ミス.プレシア」

 

「私も会いたかったわ」

 

「貴方のような麗しい女性にそう言って頂けるとは……光栄の至りです」

 

「あらお上手ね。こんなおばさんを捕まえて」

 

「本心ですよ」

 

「ふふふ」

 

「ははは」

 

「……何なんですか、これは?」

 

「どうした? リニス?」

 

「いえ……貴方の態度が私の時とはあまりにも違うので」

 

「ん?すまないな。今営業モードなんだ」

 

「なんですか! 営業モードって!」

 

「さて、プレシアさん「また無視!」うるさいぞ。リニス」

 

「そうよ、リニス。少し静かにしなさい」

 

「……もういいです。グスン」

 

「良かったな。リニス」

 

「何がですか!?」

 

「お前の望み通り、プレシアさんはフェイトのことを認めているってことだよ」

 

「え?……」

 

「そうですよね。プレシアさん」

 

「ええ、フェイトは私の大切な娘でアリシアの妹よ」

 

「え?え? どうしてそうなったんですか?え?」

 

「俺の渡した手紙にはアリシアの蘇生方法とプレシアさんの病気の治療方法が書いてあった。

 さらに実際の映像のメモリーも渡していたんだよ。その俺に会いたかったという言葉と

 今の物腰の柔らかさから、悪役を演じる必要が無くなったんだと判断した」

 

「……そう言うことですか」

 

「貴方は相当頭が切れるのね。まさかあれだけのやり取りで見抜かれるとは思わなかったわ」

 

 いえ、本当はもっと前から知ってました。

 

「お褒めに預かり光栄ですよ。ミス.プレシア」

 

「それはもう良いわよ。それより、手紙と映像はまだ完全には信じられないわ。

 実際に見せて欲しいのだけど?」

 

「分かりました」

 

 俺は王の財宝(ゲートオブバビロン)から死んだ魚を取り出し、リニスに見せたことと同じことをプレシアさんに見せた。

 

「どうやら本当のようね……お願いします。アリシアを生き返らせて下さい。

 私に出来ることなら何でもします」

 

 頭を深く下げるプレシアさん。

 

「分かった。聞き届けようその願い」

 

『どこぞの裏切りの騎士になったり、どこぞの仮面王子になったり、めんどくさい人ですね』

 

『俺はライ、奇跡を起こす男だ!』

 

『本当に起こせるだけに性質が悪い』

 

「ありがとう」

 

「ただし、条件がある」

 

「何かしら?」

 

「俺の情報……特にレアスキルについては絶対に漏らさないこと。それだけだ。

 レアスキル以外については最悪の場合を除き不用意に漏らさないで欲しい」

 

「それだけで良いの?」

 

「それで構わない。それとこれから言うのはお願いだが」

 

「お願い?」

 

「ああ、こちらは別に聞けなかったとしても、アリシアの蘇生と貴方の治療は

 ちゃんとやるから安心しろ。

  1つ、ジュエルシードの回収は続行すること。

  2つ、現在ジュエルシードを回収している子達と共闘すること。

  3つ、管理局に事の顛末を話すこと。

  そして最後に……家族全員で幸せになること。

 以上だ」

 

「……分かったわ」

 

「管理局に話すことで罰を受けることになる。おそらく管理局への期限付きの

 無償奉仕になるだろう……もし、過度の罰になりそうな時はこれを使え」

 

 俺はプレシアさんにメモリーを渡す

 

「これは?」

 

「26年前のヒュードラ実験の真相がまとめてある」

 

「真相? どういう意味かしら?」

 

「それを見れば分かるが……簡単に言うとあの事故は仕組まれていたと言うことだ」

 

「まさか!?」

 

「やはり、そうなのね……」

 

 今まで空気だったリニスが一番驚いている件……というかプレシアさんも気付いていたのか

 

「プレシアさんも気付いていたんですね」

 

「心当たりがあるだけよ。それにしてもどうやってこれを手に入れたのかしら?」

 

「それは教えられませんね」

 

 ミストが一晩でやってくれました! なんて言えないよね。

 

『我ながら良い仕事をしました』

 

『流石は俺の相棒だぜ!』

 

『何言ってるんですか? 貴方ならこれくらい簡単にできることでしょうに』

 

『え? やだよめんどくさい』

 

 確かに俺もハッキングくらい出来るけどね。管理局のセキュリティー程度造作も無い。

 

「さて、早速ですが、プレシアさんの治療からやります」

 

「私は良いから、先にアリシアを」

 

「26年ともなれば、アリシアを死後1分以内まで戻すのは相応の時間が掛かる。

 貴方の治療なら直ぐ終わるから、先にそちらをやる。それに今だって相当辛いはずです」

 

「……分かったわ。お願い」

 

「では……リニス、少し離れてくれ」

 

「分かりました」

 

 リニスは俺とプレシアさんから離れる。そして俺はプレシアさんに近づく

 

「プレシアさん、手を」

 

「ええ」

 

 俺はプレシアさんの手を取り

 

「ではプレシアさん、貴方の26年前の姿を思い浮かべて下さい」

 

「……」

 

 目を瞑り絶対読心(ギアス)を発動させる。絶対読心(ギアス)は円で広げた範囲内に居る生物の記憶や考えを読み取る能力だ。しかし、円の範囲内に居る生物全てが対象になるため、その場合対象を絞ることは出来ない。リニスに離れて貰ったのはそのためだ。

 

(もっとも俺の円は球体以外にも形を変えられるから対象のみを円に入れることは可能だがな。

 それにしても……)

 

「プレシアさん……」

 

「何かしら」

 

「この姿は本当に26年前の姿なんですか?」

 

「? ええ、そうよ?」

 

「そうですか……」

 

 若っ! いや記憶の方ではなく、今がだ!? 全然変わってないじゃん!? どゆこと!?

 

「では、この姿まで戻します」

 

「ええ、お願い」

 

完全修復(パーフェクトリカバリー)発動」

 

 プレシアさんの体が光り、忽ち若若しい姿になった。元も十分若く見えたけどね。

 

「……凄いものね」

 

「体の調子はどうです?」

 

「ええ、体のだるさが消えたわ」

 

「それはよかった。しかし、記憶を見た限りでは研究員として働いていた時期のようなので、

 疲労も再現されています。今後しっかりと休養を取られると良いでしょう」

 

「ええ、そうさせてもらうわ」

 

「ライ、本当にありがとうございます」

 

「礼を言うのは早いぞ、リニス。本番はこれからだ」

 

「そうですね。アリシアのこともお願いします」

 

「任せろ。プレシアさん、アリシアのところへ案内して下さい」

 

「わかったわ」

 

 俺達はプレシアさんに裏の部屋まで案内された。

 

「ここよ」

 

 案内された場所には大きなフラスコ上のカプセルにアリシアの遺体が保存されていた。

 

時の支配者(クロックマスター)は直接触れる必要があります。悪いですがカプセルから

 出してもらえますか? それと」

 

 俺はあるものを王の財宝(ゲートオブバビロン)から取り出す。

 

「これを着せてやって下さい。目が覚めて裸では恥ずかしいでしょう」

 

「あら、気が利くのね」

 

「俺は紳士なんですよ」

 

『自分が恥ずかしかっただけですよね?』

 

『俺はロリコンじゃないって言ってるだろうが』

 

『でも、異性の裸を見るのは恥ずかしいでしょ?』

 

『……ノーコメントだ』

 

「終わったわ」

 

「分かりました。では悪いですが、アリシアと二人きりにして貰えますか?」

 

「構わないけど、何故かしら?」

 

「先ほど26年を戻すとなると相応の時間が掛かるとお話しましたよね?

 普通にやったら、1年でも約1時間ほど掛かるでしょう。しかし、流石にそれでは

 俺の方がもたないので、裏技を使います。それを見られたくないからです」

 

「そういうことね。分かったわ……アリシアに変なことしたら許さないわよ?」

 

 急に目つきがきつくなるプレシアさん……親バカここに極まれり。

 

「しませんよ。俺を何だと思っているんですか?」

 

「それはアリシアに魅力がないって言っているのかしら?」

 

 さらに目つきがきつくなる。どうしろと?

 

「いえ、プレシアさんに似て大変可愛らしい容姿をしていらっしゃる。将来美人になるでしょう」

 

「そう、なら良かったわ」

 

 そう言って俺から視線を逸らす、プレシアさん。

 

(少し顔が赤かったが、俺おかしなこと言ったか?)

 

(天然ジゴロここに極まれり)

 

「むぅ~!」

 

「何むくれてるんだ、リニス? 拾い食いでもしたか?」

 

「貴方は私のこと何だと思っているんですか!?」

 

「え? 素体が山猫の使い魔」

 

「合ってますけど! 合ってますけれども!? そう言うことではないんです!」

 

「リニス、お前は他の使い魔に比べて特別優秀だが、そうやって感情的になってしまうことが

 あるのが玉に瑕だ」

 

「そ、それは……「だが、」?」

 

「そういう人間らしいところは嫌いじゃない」

 

「!?そ、そうですか?」

 

「だからこそ……」

 

「……(ドキドキ)」

 

「からかいがいがある」

 

「そんなオチだろうと思っていました!」 

 

「ふっ……ははは! 冗談だ。本当に可愛いやつだよ、リニスは」

 

「…………」

 

 なんかリニスがポカーンとしてる。どうした?

 

「どうした、リニス?」

 

「いえ……貴方がそんな風に笑っているのが意外で」

 

「君は俺を何だと思っているんだ? 俺だって笑うときは笑うし、冗談だって言うぞ」

 

「そう……ですよね。なんだか……」

 

「ん?」

 

「あっ、いえ、なんでもないです」

 

「そうか? さてプレシアさん…………プレシアさん?」

 

「……これだけの好物件逃す手は無いわ……アリシアかフェイトの夫に……いえ、二人には

 まだ早いわ……あの包容力なら父親なんてどうかしら? きっと良い父親に……

 あれ?そうなると私が奥さんになるのかしら? そんなの……悪くないわね」ブツブツ

 

 何ブツブツ言っているんだ? よく聞こえないな……

 

「プレシア・テスタロッサ!」

 

「!?な、何かしら?」

 

「そろそろ部屋を出てくれないか? 始めたいんだが……」

 

「わ、分かったわ。リニス、出るわよ」

 

「分かりました」

 

「プレシアさん」

 

「何かしら?」

 

「大体30分から1時間くらい掛かると思います。その間にフェイトと話しておいて下さい」

 

「……でも」

 

「あの子は今、不安がっています。俺のせいで自分は要らない子になってしまうのではないかと。

 少しでも早く安心させてやって下さい……お母さんなんでしょ?」

 

「……分かったわ」

 

 

バタン

 

 

 やっとプレシアさんとリニスが出て行った。

 

「さて、管理者の鍵(マスターキー)

 

 俺は管理者の鍵(マスターキー)を具現化し、扉に突き刺す。

 

「開閉能力を封印(ロック)

 

 扉の能力を言葉にし、鍵を回す。管理者の鍵(マスターキー)は突き刺した対象の能力に封印(ロック)を掛ける能力だ。これにより、扉の開閉能力は封印(ロック)され、誰にも開くことは出来ない。もちろん封印(ロック)を掛けたキーで解除(アンロック)も出来る。

 

「これで誰もこの扉からは入れない。次だ」

 

 さらに部屋の前後左右の壁・床・天井にオーラを流し、周をする。

 

「よし、これで誰もこの部屋に入れなくなった」

 

『随分と慎重ですね』

 

『周囲に誰も居ないのに念話で話すお前ほどではないよ、ミスト』

 

『そういえば、時の支配者(クロックマスター)に裏技なんてありましたっけ』

 

『いや、時の支配者(クロックマスター)に裏技はない。俺の計算では今の顕在オーラと

 潜在オーラでは1年を戻すのに約1時間ほど掛かるだろう。だから』

 

強者の慈悲(リミッターオン)、顕在オーラと潜在オーラをSからEXに」

 

 俺の体からオーラが噴き出す……うん、相変わらず凄いオーラ量だ。

 

『相変わらず、化け物みたいなオーラ量ですね。それでただの纏ですよね?』

 

『ああ、これだけあれば1年を戻すのに約1分ほどで戻せるだろう』

 

『これが裏技ですか?』

 

『いや、これだけじゃない。1年を戻すのに約1分ほどの消費オーラでは直ぐに枯渇する。

 いくら高速自動回復(リジェネレーション)が有っても消費速度の方が早い。だから』

 

影分身の術(かげぶんしんのじゅつ)

 

 俺は26体の分身体を作る。

 

『なるほど……1体1年分という訳ですね』

 

 そう、影分身の術(かげぶんしんのじゅつ)は作成した分身体分にオーラを均等に分けなくてはならない……が、高速自動回復(リジェネレーション)のおかげで100秒後には全快だ。やっぱりチートだよな、この能力。

 

「……100秒経過、よしでは早速やるぞ」

 

「了解」× 26

 

 

零冶 サイドアウト

 

 

フェイト サイド

 

 

 私はリニス達と別れてから部屋のベッドの上に座って連絡を待っている。

 

「リニス、大丈夫かな?」

 

「フェイト、さっきからそればっかりだよ。心配なのは分かるけどさ」

 

「だって、折角また会えたのにまたお別れなんでやだもん」

 

「あのライってやつも居るんだから大丈夫じゃないかい?」

 

「ライ……」

 

 数ヶ月前に消えかけのリニスを助けてくれて、今日私が倒れたときに助けてくれた人。そして今、母さんに会っている人……でも

 

「アルフは彼のことどう思った?」

 

「ライのことかい? う~んそうだね。最初は怪しかったけど、悪いやつじゃないと

 思っているよ。フェイトもリニスも助けてくれたしね」

 

「そっか……」

 

 確かに悪い人には見えなかったけど……

 

「まあフェイトの気持ちも分かるよ。あんな変な仮面付けているやつを信用できないのは」

 

「それもあるけど、私はあの人が何をしたいのかが分からない」

 

「何がしたいって?」

 

 今母さんに会っている……もしそれで母さんの願いが叶ってしまったら私はどうなるんだろう……必要なくなっちゃうのかな? 嫌だそんなの……私は要らない子なの? 私は母さんにとって何なのかな……

 

「ううん、なんでもない」

 

「フェイト……」

 

『フェイト、聞こえるかしら?』

 

『!?はい、母さん』

 

『いつもの部屋に来て頂戴、話があるわ』

 

『分かりました……』

 

「鬼ばばかい?」

 

「うん……でもアルフ、そんな言い方しないで」

 

「ふん、あたしにとって一番大事なのはフェイトさ、あんなやつの事なんて知らないよ」

 

「ありがと……でも私のこと思ってくれるなら、やっぱりそんな言い方しないで……

 母さんのことを悪く言われたら悲しいよ……」

 

「フェイト……ごめんよ、あたしが悪かったよ」

 

「ううん……アルフの気持ちは嬉しいから……ありがとう」

 

「当たり前さ、あたしはフェイトの使い魔だからね」

 

「うん……母さんに呼ばれたから行ってくるね」

 

「あたしも行くよ」

 

「でも……」

 

「いくらフェイトでもこれだけは譲れないよ。フェイトはあたしが守る」

 

「……分かった。一緒に行こう」

 

「あいよ」

 

 アルフと一緒に母さんのところへ向かう。そして扉の前に着いた。

 

「……」

 

「フェイト?」

 

 怖い……この扉を開けてしまったら、もう元には戻れない気がして……

 

『怖いか?』

 

 !?この声……ライ?

 

『……何か用ですか?』

 

『質問の答えになっていないな』

 

『……貴方に答える義理はありません』

 

『そうか……ならこれから言うのは俺の独り言だが』

 

『…………』

 

『未来を恐れるな。誰しも過去があるから今があり、今を生きるから未来が訪れる』

 

『…………』

 

『時は戻らない……それが自然の摂理。それなら今を必死に生きろ。

 自分の心と戦え……過去を追い求めるな、今に立ち止まるな、

 未来はここにある……ここから始まる』

 

『未来はここから始まる……』

 

『以上だ、そこから先はお前が考えろ』

 

 そこで念話が切れた。

 

「フェイト? どうしたんだい?」

 

「ううん、なんでもない」

 

 私は扉に手を掛け、

 

「母さん、フェイトです。入ります」

 

 扉を開けた。

 

「すみません、遅くなりま……した」

 

 あれ? いつもの母さんじゃない……何だか若くなったような、それに雰囲気が

 

「よく来たわね、フェイト。こっちへいらっしゃい」

 

「は、はい」

 

 どうしてこんなに優しそうに感じるの? 私が居ない間にいったい何が有ったの? 私は混乱しつつ玉座に座る母さんとその横に立っているリニスの所へ向かって歩き

 

「それでお話とは何でしょうか?」

 

 階段の手前で立ち止まり、尋ねる。

 

「……」

 

「えっと、母さん?」

 

 すると、母さんは玉座から立ち上がり、私に向かって歩きだす。そして私の前で立ち止まり

 

「えっと、私何か母さんに失礼なことを?」

 

「いいえ、貴方は悪くないわ。悪いのは私」

 

「え……」

 

「貴方にきつく当たり、母親に対して敬語で話すように仕向けてしまった。私の責任なのよ」

 

「母さん?」

 

 私の前で膝を突き、私と同じ高さの目線まで腰を落としたあと

 

「フェイト、今まで本当にごめんなさい」

 

 私を抱きしめた。優しく包み込みように強く

 

「母……さん……お母さんっ!」

 

 私もお母さんに抱き付いて泣いた。泣きじゃくる子供のように

 

「フェイト……良かったですね」

 

「リニス、いったい何があったんだい? あの鬼ば……プレシアに」

 

「それはプレシアから話がありますよ」

 

「フェイト、これから大事な話があるわ。お願いだから最後まで聞いて頂戴」

 

「うん、分かったよ。お母さん」

 

 それからお母さんの話を聞いた。26年前の事故のこと。アリシアのこと。そして、私のこと。

 

「私がアリシアのクローン……?」

 

「ええ、でもフェイト、これだけは信じて……私は貴方のことを本当の娘でアリシアの妹だと

 思っているわ。確かにアリシアではないと気付いたときは絶望もした……きつくあたったことも

 あったわ。でも、ちゃんと娘として認めることが出来たわ」

 

「…………」

 

 私は何も言えなかった。

 

「……だ」

 

「アルフ?」

 

「そんなの嘘だ! だったら何でフェイトにきつく当たったんだい!? あんなの母親の

 やることじゃないよ! そんな言葉、信じられる訳無いだろ!」

 

「落ち着いて下さい、アルフ。それには事情が」

 

「どんな事情だってんだい! 母親が娘に虐待する事情なんて!」

 

「プレシアは病で長くなかったんです」

 

「「え?」」

 

「もって半年、早ければ2ヶ月と持たないほどに」

 

「だ、だから何だってんだい。そんなの娘を虐待する理由には」

 

「プレシアが死んだら、貴方達はどうやって生きていきますか?」

 

「そ、それは……」

 

「プレシアは今回の事件を起こし、自分が黒幕になることでフェイトを管理局に預ける

 きっかけを作るつもりだったんです。そのためにはフェイトに自分のことを捨てて

 貰わなくてはならない。だから、心を鬼にしてフェイトにきつく当たっていたんです」

 

『まさに鬼ばばというわけですね。分かります』

 

『ミストお前、ちょっとは空気読め』

 

「お母さん! 体は大丈夫なの?」

 

「ええ、ライに治してもらったわ。そして今、アリシアを生き返らせて貰っているの」

 

「「へ?」」

 

 い、生き返らせる? 死んだ人を?

 

「プ、プレシア……頭大丈夫かい?」

 

「酷い言い草ね……事実よ。これを見なさい」

 

 そう言って映像を見せてくれるお母さん。そこには死んだ魚を生き返らせるライが映っていた。

 

「ほ、本当にこんなことが出来るのかい?」

 

「ええ、実際にこの目で見させてもらったから間違いないわ」

 

「そ、そうなんだ……」

 

 私は不安になった……もしアリシアが生き返ったら私は要らない子になってしまうのではないか? 私は……私は……

 

「でも、安心してフェイト」

 

「え?」

 

「アリシアが生き返っても貴方は私の娘よ」

 

「あっ……うん!」

 

 

 

ガチャ

 

 

「どうやら、無事和解したようですね」

 

「ええ、貴方のおかげよ」

 

 ライが奥の扉から出てきた

 

「そうですか、こちらも無事成功しましたよ。ほら、行きな」

 

 ライがそういうと影から私そっくりの女の子が出てきた。

 

「うん、お母さん!」

 

「アリシア!」

 

「お母さ~ん」

 

「アリシア~」

 

「お母さ~~ん……のばか!」

 

「え? アリシア?」

 

「ライさんに話は聞いたよ! ダメじゃない!どんな事情でもフェイトにきつく当たっちゃ!

 フェイトは私の妹なんだよ! そんなお母さん大嫌い!」

 

「ぐはっ!」

 

 病気が治ったはずの母さんが吐血した。

 

「あっ! 貴方がフェイトね! 私アリシア、貴方のお姉ちゃんよ。よろしくね!」

 

「う、うん。よろしくアリシア」

 

 私がそう答えると不機嫌になるアリシア

 

「ぶぅ~! ちゃんとお姉ちゃんて呼んでよ、それとも私が小さいから呼びたくないの?」

 

「そ、そんなんじゃ……いきなり過ぎてついていけなくて」

 

「そう? なら呼んで? さぁさぁ」

 

「うっ、ア、アリシアお姉ちゃん」

 

 私は恥ずかしがりながら言った。きっと顔は真っ赤になっているだろう

 

「うん! これからよろしくね。フェイト!」

 

 私に抱きつくアリシア……お姉ちゃん。いきなりのことで困惑したけど、不思議と安心できた。

 

「うん、よろしくね。アリシアお姉ちゃん」

 

「アリシアに大嫌いって言われた、アリシアに大嫌いって言われた、アリシアに大嫌いって

 言われた、アリシアに大嫌いって言われた、アリシアに大嫌いって言われた……

 そうだ! 死のう!」

 

「プレシア、落ち着いて下さい」

 

「本当にこれがあのプレシアなのかい……」

 

「お母さん! フェイトのことありがと! 大好き!」

 

「私もよ! アリシア、フェイト~」

 

「わぷっ!」

 

 お姉ちゃん……恥ずかしいから姉さんにしよう。姉さんと一緒に抱きしめられた。

 

「プレシアってこんなのだったのかい?リニス」

 

「ええ、26年前のプレシアを見ているようです」

 

「こんなのだったんだ……」

 

 私は胸の奥が暖かくなるのを感じた。これが幸せって事なのかな……私はライの言っていた言葉を思い出した。昔の母さんに戻って欲しいと過去を求めていた。今の変化を恐れて扉の前で立ち止まった。でも未来に向かって良かった。ありがとう……ライ

 

 

フェイト サイドアウト

 

 

零冶 サイド

 

 

「プレシアさん、アリシアの件ですが、一つ問題があります」

 

「!?どういうことかしら? 貴方いったいアリシアに何をしたの? どう責任を取るつもり?

 寧ろ責任を取りなさい。選ばせて上げるわ、アリシアとフェイトとリニスと私、誰と結婚する?

 さあ選びなさい」

 

 最後まで話を聞いて~! そして何故結婚?

 

「ちょっと、プレシア! なんで私まで入っているんですか!」

 

「あら? まんざらでもないでしょう?」

 

「な、何を言っているんですか、そんなこと……ないですよ?」

 

『なあ~ミスト、俺また変なフラグ立ててたかな?』

 

『?何を言っているんです』

 

『やっぱり勘違いだよな』

 

『マスターがフラグを立てなかった時って何時でしたっけ?』

 

『あれ? そっちなの?』

 

「はあ~、落ち着いて下さいプレシアさん。俺のやったことには問題はありませんでしたよ」

 

「どういうこと?」

 

「分かりませんか、アリシアの変化に」

 

「アリシアの?」

 

「リンカーコアがあるでしょう」

 

「!そんなバカな!アリシアにリンカーコアは!」

 

「それが起きた問題です。これは管理局も知らないことだから、他言無用でお願いします」

 

「何かしら」

 

「リンカーコアは持っている人間といない人間で分かれるのではなく、

 覚醒している人間といない人間とで分かれるんです」

 

「?何が違うのかしら」

 

「つまりリンカーコアは誰しもが持っている器官だということです」

 

「そんなバカな、何を根拠に」

 

「根拠は目の前にも居ますよ」

 

「まさかアリシア?」

 

「例えばですが、人間は特別な場合を除き、脚を持たずに生まれてくることはない。

 だが、生まれつき脚が速いものと遅いものがいる。もちろん一概に生まれで全てが

 決まる訳ではないが、リンカーコアも同じことが言える。人間は全員リンカーコアを

 持っている。それが覚醒している人間が魔力を持っており、していない人間は魔力を

 持っていない。しかし、管理局ではリンカーコアを持っている人間といない人間としか

 理解していない。まったくもって愚かだな」

 

「……まさかそんな、では何故アリシアのリンカーコアは覚醒したのかしら」

 

「心当たりがあるでしょう。26年前に浴びた大量の魔力によってですよ」

 

「なら、魔力を浴びれば皆、リンカーコアが覚醒すると?」

 

「その通り、だが問題がある」

 

「覚醒するほどの魔力を浴びれば死ぬ」

 

「その通りです。しかし、アリシアは生き返った。だからリンカーコアが覚醒している」

 

「そういうことね。でもそれの何が問題なのかしら?」

 

「魔力量がSS+でもですか?」

 

「そ、そんなに!」

 

「しかも、まだ伸び代がある。管理局に知られれば、間違いなく勧誘されるだろうな」

 

「それは……確かに問題ね」

 

「だが、良いことでもある。26年前のアリシアと今のアリシアは別人だと言い張れる」

 

「なるほどね」

 

「アリシアのことを説明する場合は別人だと言うことにして下さい」

 

「分かったわ」

 

「ねぇ~ライさん」

 

「何だアリシア?」

 

「私フェイトより小っちゃいよ?」

 

「言っている意味が分からんぞ」

 

「私、フェイトのお姉ちゃんなのにフェイトより小っちゃいよ?」

 

「もっと分かり安く……いや言いたいことは分かったが、要するにフェイトと同じか

 それ以上の年にして欲しいと……」

 

「そう!」

 

「アリシア、無理言っちゃダメよ」

 

「出来ないことはないが……」

 

「ほら、出来ないことはないって……え? 出来る?」

 

「正確にはそう見せるだけだが」

 

 俺は王の財宝(ゲートオブバビロン)からあるものを取り出す。

 

「「何も無い所から!」」

 

「すご~い!」

 

「そのブレスレットは?」

 

「これは装備者を未来の姿に変身させるマジックアイテムだ。あくまで可能性の未来ですがね」

 

「それはまた随分と凄い技術ね」

 

「いや、そうでもないですよ。これは変身魔法の応用です」

 

「それをアイテム化したのが凄いのよ」

 

「つまり、それを付ければフェイトと同じ年になれるの?」

 

「そういうことだ」

 

「やった~! フェイト今いくつ?」

 

「え? 9歳」

 

「私は5歳だから4年後に設定してっと」

 

 アリシアの体が光り、フェイトと同じ位の大きさになる。そもそもまだあげるとは言ってないんだけどな~、まあ良いか

 

「と、これが4年後の私? でもフェイトより少し小さいよ?」

 

「元々小さかったんじゃないか? それにあくまで可能性の姿だし」

 

「ぶぅ~、仕方ないか」

 

「さて、プレシアさん。アリシアとフェイトのことは管理局にどう説明しますか?」

 

「そうね。不本意だけと二人ともプロジェクトFのクローンだと説明するしか無いわね」

 

「いいのですか?」

 

「仕方ないわ、貴方のことを話す訳には行かないし、周りがどう思おうと二人は私の娘である

 ことに変わりはないのだから」

 

「分かりました。そのお心遣いに感謝します。家族で幸せになって下さい」

 

「ありがとう」

 

「ライ! 本当にありがとう。母さんのことも姉さんのこともリニスのことも全部!」

 

「ふっ、これから幸せな未来を掴むと良い」

 

 俺はフェイトの頭を撫でながらそう言った

 

「う、うん、ありがとう」

 

 顔を赤くして俯くフェイト、恥ずかしいのか?

 

『そうやってフラグを立ててるんですよ』

 

『え? これが原因なの? そんなバカな』

 

「それでは、プレシアさん。お願いの件よろしく頼みます」

 

「ええ、本当にありがとう」

 

「ライ、ありがとうございました。いつか恩返しします」

 

「あたしからもお礼をいうよ。フェイトのことありがとね。あんなに喜んでる

 フェイトを見れて良かったよ」

 

「気にするな。では」

 

 飛雷神の術(ひらいしんのじゅつ)で転移する。ああ~疲れた

 

 

零冶 サイドアウト

 

 


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