原作を放って置くとバッドエンドになるんですが、どうしたら良いですか?   作:月の光

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プロローグ
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 見渡す限り真っ白な空間。雪の降り積もった銀世界のような白い世界ではなく、地平線も無く、ただただ白い空間が延々と続いている。

 

「何だ此処は? …………え~っと……確か家でベットに寝転びながら漫画を読んでた

 はずなんだけど……あ~、あれか? 漫画読みながら寝てしまったって落ちか?」

 

 俺は自分の状況が理解できず、困惑している。

 

「でも、この状況は何だ? あれか……なんだっけ? 明晰夢? だったっけ?

 夢だと認識して夢を見ること……まぁ、それならなんとなく説明は付くけど……」

 

 俺は再度回りを見回す。そこには先程と変わりなく白い空間だけ眼に映った。

 

「だとしたら、ひどい夢だな……なんだよあたり一面が白い世界って……

 これでどうしろと? どうせなら」

 

 俺がどうせならもっといい夢にしてくれよと言おうとしたら

 

「あの~、少しよろしいですか?」

 

 急に後ろから声をかけられた。

 

「ッ! 誰だ!」

 

「ひぅ! すみません! すみません!」

 

 俺が振り向くと子供がいた……訂正、幼女がいた。

 

「あ! ごめんごめん、ビックリしただけだから、どうしたのかな?」

 

 俺は自分のしたことを反省しつつ、目の前の幼女に聞く。

 

「はい、あの……ですね、なんていうか……ここは貴方の夢の中ではなくてですね。

 その…………」

 

 幼女は脅えたようにしどろもどろ話している。その様子はとても痛々しくとても見ていられなかった。俺はそれを見てできる限りの笑顔で語りかける。

 

「さっきは怒鳴ってごめんね。大丈夫、怒ってないから落ち着いて話してね」

 

 俺は幼女と同じ目線になるように腰を落とし、頭を撫でながら安心させるために笑顔を作る。

 

「は、はい! わかりました」

 

「うん、それで……どうしたのかな」

 

「はい……此処は夢の世界ではなく、死後の世界です」

 

「え?」

 

 俺は思いも寄らないことを言われて固まってしまう。

 

「ですから、此処は死後の世界で貴方は死んでしまったのです」

 

 俺は右手を顎に手を当て、考える。

 

「…………だとしたら、君は神様で俺を天国か地獄に連れて行くってことかな?」

 

 幼女は驚いた顔をした。

 

「私の言ったことを信じるのですか?」

 

「う~ん、80%くらいかな? この光景はあまりに現実離れしているからね。

 夢ってもっと現実に近いものだと思うし……」

 

 残り20%は夢って落ちだけどと俺は付け足す。

 

「貴方は変わっていますね。さっきの人たちとは大分違います」

 

「そうかな? ん? さっきの人たち?」

 

「はい、実は貴方達はまだ死ぬはずではなかったんです。私の……ミスで死なせて

 しまったんです。本当に……本当にごめんなさい」

 

 神様は涙目になりながら、謝罪をしてきた。

 

――さっき脅えていたのは、前の人たちにひどいことを言われたからか? だとしたら……

 

「わかった。その謝罪を受け取るよ」

 

 神様はまた驚いた顔で俺に聞く。

 

「ゆ、許してくれるのですか?」

 

「うん」

 

「な、なぜですか? 貴方は死んでしまったんですよ! 私のせいで!」

 

「でも、わざとじゃないんでしょ? ミスは誰にでもあるし、神様も例外じゃなかったって

 だけだ。ちゃんと謝罪してもらったんだからとやかく言うつもりはないよ」

 

「で、でも…………」

 

「しいて言うなら……」

 

 俺の言葉を聞き、彼女は真剣な顔になる。

 

「もう、こんなミスはしないでね」

 

 神様は驚いたのか目を見開き、しばらくして笑顔になった。

 

「はい! 二度とこんな事はしません! 貴方に誓います!」

 

「よかった、やっと笑ってくれたね」

 

「はい、貴方のおかげです」

 

「そっか、それで俺はこれからどうなるのかな? さっき聞いた天国か地獄に行くのかな?」

 

 さすがに地獄はやだな~。まあ、何か悪いことをしてた訳ではないけれど。

 

「いえ、貴方にも転生していただきます」

 

「転生? ……もしかして二次小説にある神様転生ってやつか?」

 

「はい、そうです。転生先は魔法少女リリカルなのはです。といっても良く似た

 世界ですが……」

 

 リリなのか……原作に巻き込まれたくないな。それに前の転生者が噂の踏み台転生者だったら嫌だし。いや、そんな人間が現実にいる訳無いか。

 

「ちなみに他の転生先はないの?」

 

「はい、残念ながら私の管理している世界は貴方の世界とこの世界しかないので……」

 

 なら仕方ないか……

 

「それで、特典を3つまでお渡ししますので、考えてください」

 

 特典が貰えるのか……

 

「特典の前に聞いてもいいか?」

 

「はい、なんでしょう?」

 

「魔力……というかリンカーコアだっけ? それはどうなる?」

 

「はい、リンカーコアは持って転生します。魔力値はC~Sまでのランダムです。

 S以上がほしい場合は特典となります」

 

「じゃあ、転生時期と転生先の地域は?」

 

「転生時期は高町なのはと同世代で3歳からのスタートになります。

 転生先の地域は海鳴市です。もちろん、特典で変えることは可能です」

 

「その場合、両親はどうなる?」

 

「ご両親はすでに亡くなっている設定です。また他の家族もいません」

 

 そっか、家族は無しか……

 

「次にデバイスはどうなる?」

 

「こちらから特製のものを差し上げます」

 

「先に転生したやつらの能力は?」

 

「それは……残念ですが、お教えできません。貴方にならお話ししたいところなんですが……」

 

「いや、話せないならそれでいいよ。なら、そいつらの性格は?」

 

「それならお話できます。一人は自己中心的で我侭、もう一人は正義感のある青年です」

 

 おいおい、よくある踏み台転生者っぽいのがいるんだけど……いっそう原作に関わりたくなくなったぞ。もう一人は正統派オリ主って感じか……なら原作はオリ主君に任せて、俺は原作に関わらなくても大丈夫そうだな。

 

「分かった、ありがとう。じゃあ特典だけど、1つはハンター×ハンターの

 念能力及びオリジナルの発だ」

 

「オリジナルの発ですか? それはどういうものですか?」

 

「それは……」

 

 俺は神様にオリジナル発の説明をする。

 

「っていうのなんだけど、大丈夫?」

 

「なるほど。はい、可能です」

 

「そういえば念での攻撃をした場合、選別と同じで相手も念を使えるようになって

 しまうのか?」

 

「いえ、あくまで貴方に与える唯一無二の能力なので、それはありません」

 

「なら、念で攻撃したときの大ダメージを無くしたいんだが、特典が必要か?」

 

「いえ、特典なしで可能ですが、よろしいのですか?」

 

「ああ、欲しかったのは発のほうだからね……2つ目がそれだったんだけどな……

 なら、2つ目は俺以外の転生者からリリカルなのはを除く他のアニメ・漫画・ゲームの

 原作知識を消して欲しい」

 

「……可能ですが、何故そんなことを?」

 

「発の特性上、俺が転生者だとばれる可能性があるからだ」

 

「なるほど、ですが他の転生者が選んだ特典の原作知識は消せませんが、

 よろしいですか?」

 

 まあ、当然か……仕方ないな。

 

「ああ、それでかまわない。3つ目は……そうだな、成長率の向上でいい」

 

「わかりました。それにしても3つ目は随分適当ですね?」

 

「ああ、1つはさっきの大ダメージ無しだったからな、正直何でもよかった」

 

 さっきの発があれば、何でもできると思うし、それこそ3つ目の成長率向上とかね。

 

「そうですか……では転生させますが、何かありますか?」

 

「いや、特には……あっ、そうだ、最後に」

 

 大事なことを忘れてたよ。

 

「はい、何でしょう?」

 

「君の名前を教えて欲しいかな?」

 

 神様が絵に描いたようにぽか~んとしている。

 

「だめかな?」

 

 いつまでも君とか神様じゃ失礼かと思ったんだけど。

 

「いえ、ダメじゃありません! その……意外だったものですから……

 こほん、私はアテナです」

 

「アテナか……転生させてくれてありがとう、アテナ」

 

 俺はアテナにお礼を言う。

 

「いえ、元はと言えば私のせいですから、お礼はいりません。寧ろ私のほうこそ許して

 くれてありがとうございました。それでは、名残惜しいですが、お別れです」

 

「ああ、またな。アテナ」

 

「はい、また……」

 

 俺の意識はそこで途絶えた……だが、意識が途絶えるときに見えたアテナの寂しそうな顔がとても印象的だった。


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