木曾が現代に紛れ込んでしまったようです   作:ビクトリー

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木曾が好き過ぎてやってしまった。


出会い

出会い

 

 

「何にも釣れないな...」

 

今日は特に釣れない、もう結構やってんのに...。

いつもなら一匹くらい釣れてもいいはずなんだが、全く釣れない。

 

「なんでこんな時にアタリが来ないんだよ」

 

せっかくの夏休み初日から坊主で帰るわけにはいかない。

せめて一匹でも釣らなければ...。

 

だけど、ここは結構な穴場で来れば必ずと言っていいほど釣れてたのに、何で今日だけ釣れないんだ?

なんか沖合でなんか起こってるとかか?

そんなことを考えていると竿にアタリが来る。

 

「ようやくか!」

 

...ん?この感じ、まさか...。

 

「たぶんこれ、根がかりしてるな...」

 

やっちゃたよ...、まだ一匹も魚が釣れてないのに...。

もうゴミでも何でもいいから引き上げよう、それだけでも釣った結果は残る。

...ゴミだけど。

 

カリカリ

 

「ずいぶんと重いな」

 

少しこれは重すぎないか...。

いったいこのラインの先に何が引かっかているんだ?

 

「コンクリの入ったドラム缶とかじゃないよな」

 

もしそんなんなら俺はリールを切るぞ。そんな中にナニが入ってるか不明なものを誰が引き上げるか。

まあ、そんなことは引き上げればわかることか。

ちょうどもう少しだし...。もう巻くのが面倒だから力づくで引っ張り上げるか...。

切れる可能性が大きくなるが、どうせゴミだしいいだろう。

 

「よっとッ!」

 

ざばぁ

 

「...これは夢かなにかか?」

 

俺に対してドッキリでもやってんのか?

だとしたら相当悪質だな、オイ。

 

「...」

 

なんで俺の竿にコスプレイヤーが引かっかんだ?

おっと、そんなこと考えている場合じゃないな、この娘を早く針から外さなければ...。

 

....。

 

針は外したけどこの娘どうしよう...?

一応生きてはいるようだが...。

まず家に連れて帰ろう、このまま放置もかわいそうだし濡れた服のままじゃ風邪をひくしな。

そう思って俺はその娘を担ぐが...。

 

「お、重い...」

 

なんだこのコスプレイヤー、武装も鉄製かよっ!!

気合入りすぎだろ...。

これは車まで行くのが大変そうだ。

 

 

 

「ようやくたどり着けた...」

 

ここまで来るのが容易じゃなかった。

救いがあるとすれば、運んでいるところを誰にも見られなかったことだな。

人の少ない場所で見つかってよかった。

男がびしょびしょに濡れたコスプレ娘を背負う、なんて光景を見られた日には確実に捕まるからな。

 

「よっと」

 

俺はそのコスプレ娘を車の座席に寝かせる。

疲れた...。

座席が濡れてしまうが、しょうがないということにしよう。

だけど、あとは家に連れて帰るだけだ。

そして俺は運転席に乗りエンジンをかけ、走り出した。

 

「だけど、あのコスプレ娘が起きたら自宅まで送らなければならないのか...」

 

だとしたら相当めんどくさいな、まあ車に乗せた時点でこうなることは決まっていたしな。

だけど、このコスプレ少女の親はどんな人だろう?

 

この田舎でこんな恰好をした娘を、何も言わずに家の外に出す親か...。

このコスプレ娘の両親が常識人であることを祈ろう。

だけど、この娘もなんで海に落ちたんだ?

どちらにしろこの娘が起きるまで分からないか...。

 

 

 

「やっと着いた」

 

車を走らせること2時間、ようやく我が家に到着した。

さて、まだ車の座席で寝ているコスプレ娘を家の中に運ぶか。

 

「よっと」

 

やっぱり何回持っても重い、だがさっきと比べると距離も短いしだいぶ楽だな。

そして俺はコスプレ娘を背負ったまま家の中に入り、部屋のソファーに寝かせる。

 

「さてこれからどうするか」

 

まずこの、コスプレ娘が起きてくれないことには家の場所も聞けないしな...。

だけど本当にコスプレのレベルが高いよな、武装とかも重さと手触りから鉄で造られていることがわかるし、服装や顔立ちまで何から何まで完璧である。

 

本当に『艦隊これくしょん』の世界から出てきたみたいだな...。

 

「...ここはどこだ?」

 

どうやらそんなことを考えているうちにコスプレ娘が起きたらしい。

此処はどこかか、...普通に答えるか。

 

「ここは俺の部屋だ」

 

「お前が助けてくれたのか?」

 

助けたというか釣り上げただけなんだが...。

なんか少し罪悪感が...。

 

「ああ、そうだ」

 

良し、あとはこのコスプレ娘から家の場所を聞いて送っていけば終わりだ。

だけど最後に名前くらいは聞いておこう。友達との話のタネになるかもしれない。

 

「お前の名前は?」

 

「俺か?俺は『木曽』だ」

 

いや、俺が聞いたのはそういうことではなく本名なんだが...、

まあ、俺の質問の仕方も悪かったな。

 

「本名のほうを教えてくれないか?」

 

「本名?木曽だが?」

 

こいつマジで言っているのか?

だとしたら結構痛い子だぞ。

 

いや、ちょっと待て、そういえばこのコスプレ娘が持っていた武装どこで作ったんだ?

あんなデカい物を鉄から作れる工場なんてここらにはない。てか、このコスプレ娘は鉄の武装を付けたまま移動していたのか?

だとしたらこのコスプレ娘が俺以上の怪力を持っていることになるが、普通の人間の女の子があの重さを耐えきれるとは思えない。

 

「コスプレじゃないんだな...」

 

出来ればありえないほどに凝ったコスプレであってくれ...。

 

「こすぷれ?なんだそれ?」

 

これは、もう...。

まだだ、まだ決まったわけじゃない....。

 

「少し質問に答えてもらっていいかな?」

 

「いいぞ」

 

さて、この質問で決まる...。

俺の予想が外れていることを祈ろう。

 

「どうしてここに居るの?」

 

「ああ、鎮守府の近くで謎の海域が出現してな、それで俺が一人で偵察に行ったんだ。そしたら、海 域に入って少し経ったときに光に包まれて、気を失って気づいたらここに居た」

 

もしこれが嘘だというのならこの子は相当な嘘つきだな。

だけどこのこの子がそんな嘘をつくとは思えない。

...これはもう決まりかな。

 

「『木曾』、これから説明することをよく聞いてくれ、それと今から言うことはすべてが真実だ」

 

「なんか重い話みたいだな、いいぞ言ってみろ」

 

どうやら木曾も事の俺の声から重大さを感じ取ったらしい。

 

そして俺は木曽に全てを教えた。

本来、彼女はこの世界に存在しないと、そして存在するはずのない架空の人物だと...。

 

 

 

 

 

 




きりが悪いですが此処で終わります。

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