アルドノア・パニック!?   作:灰音穂乃香

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FAZE04 『ノヴォスタリスクの攻防』

2014年12月24日 10時50分―ロシア地球連邦軍ノヴォスタリスク基地。

 

『デューカリオン、並びにトゥアハー・デ・ダナン、入港を許可します。

デューカリオンは六番ドックへ、トゥアハー・デ・ダナンは七ドックへと着艦してください』

 

空を行くロケットに似た船と氷に包まれた運、そこに作られた水中トンネルを行くトゥアハー・デ・ダナンは地球連合軍、本部であるロシアのノヴォスタリスクへと訪れていた。

空中を行く艦の名はデューカリオン。10年前に種子島へ最初に降り立ったカタクラフトのアルドノアドライブを移植した戦艦である。

だが、アルドノアドライブを起動することが出来なかったためにそのまま種子島の地下に眠っていたのだ。

 

その眠りから目覚めさせたのが暗殺されたはずのヴァース帝国の第一王女であるアセイラムである。

 

種子島での戦闘後、テスタロッサはデューカリオンと通信を行い、自分達の素性を明かしたのであった。

 

そして、ここノヴォスタリスクからヴァースへ停戦をアセイラムが呼びかけ、それがヴァース側に受け入れられる事になったら元の世界へと戻るために協力してもらえることとなったのだ。

 

『上手くいけばの話だがな…』

 

基地内を歩きながら宗介はそんな事を考える。

 

そもそも、地球とヴァース側の戦力差は大きい、そのためリスクを追ってまでアセイラムを暗殺するはずはないと宗介は考えている。

それ故にアセイラムを暗殺しようとしたのは火星の軍人であると。

ならば、彼女が生きている事が知られれば…。

 

『というよりも…既にアセイラム姫が生きている事は既に敵に知られていると考えるべきだな…』

 

そうなれば、敵は必ず仕掛けてくるはずだ。

などと宗介が考えているとー。

 

「宗介、ちょっといいか?」

 

そう声をかけたのは裕也である。

 

「裕也か。

どうかしたか?」

 

「実は、少し気になった事があってな…」

 

裕也は宗介の隣を歩きながらそう切り出す。

 

「なぁ、お前はこの戦争がこれで終わると思うか?」

 

どうやら、和也も宗介と同じことを考えていたらしい。

 

「相良さん、相原さん」

 

声に宗介と裕也は振り向く。

そこにいたのは貝塚稲穂。

種子島で共に戦ったオレンジ色のカタクラフト‐スレイプニールのパイロットである少年だ。

無表情であるが、どこか強い信念を感じさせる口調で彼はこう切り出した。

 

「お二人に、お伺いしたいかとがあります」

…っと。

 

2014年12月24日12時50分―ザーツバルム城

 

『私は、アセイラム・ヴァース・アリューシア。

ヴァース帝国皇帝、レイレガリア・ヴァース・レイガースの孫娘、第一王女です。

 

祖国、ヴァースに告げます。

この無意味な戦争の即時停戦を求めます。

 

私は無事、生きています。

 

私の命を狙ったのは地球人ではありません。

地球侵略を目論む軌道騎手の策略です。

 

地球人に罪はありません。

 

今すぐ戦争をやめてください。

 

そして…地球と和平を結んでください。

 

どうか、この不幸に終止符を…』

 

「どうあっても、姫を亡き者にするおつもりですか?」

 

モニターから聞こえるアセイラムの演説を聞きながらスレインはザーツバルムに問う。

ヘラスとの戦闘の後、オレンジ色のカタクラフトからアセイラムの情報を引きだそうとしたが失敗、撃墜されルクルーテオにスパイ容疑で捕らえられ拷問を受け、気を失っていたのだ。

そして、気を失ったスレインが気がつくと、ザーツバルム城におり、そこで彼がアセイラムの暗殺を指示していたのだと知ったのだ。

 

「無論だ」

 

淀みなく、答えるザーツバルム。

彼がアセイラム暗殺という狂行を行った事にも理由がある。

 

アルドノアのおかげで火星の文明は確かに発展はした。

 

だが、それだけである。

水も僅か、食糧も小さな海老や藻しかない、そんな状況で民衆が不満を持たぬ筈はない。

自然が豊かで資源も豊かな地球を恨む事で民衆の不満を逸らし、火星騎士を焚き付けて戦争を引き起こした。

その結果、彼は婚約者を失い、ザーツバル自身も瀕死の重傷をを追ったのだ。

そんな彼を救ったのがスレインの父であるトロイヤード博士である。

スレインを助けたのはその恩を返す意味もあったのである。

 

「姫の味方をするも、我の味方をするのもお前の自由だ。

だが、再び我が前に立つのであれば容赦はせん」

 

降下を始めた揚陸城の中、ザーツバルムはスレインにそう告げた。

2014年12月24日 11時55分―ロシア地球連邦軍ノヴォタリスク基地‐クレイモア コックピット内。

 

「こちら、メサイア1。

ウルズ4と共に配置についた」

 

『了解、指示あるまで二機ともその場で待機』

 

氷上で膝をつき、ラムダドライバを作動させたアーバレストが同じくラムダドライバを作動させたクレイモアに支えながら構えるのは超大型の砲であった。

 

アワード・アーセル165mm多目的破砕・榴弾砲ー通称・デモリッションガン。

 

本来は建築物や構造物に対して使用される工兵用の破砕砲を転用したもので、ラムダドライバを作動させて撃った時の威力はデューカリオンの主砲を上回る。

 

裕也と宗介が抱いていた疑問は数々の戦場を渡り歩いていたトゥアハー・デ・ダナンの乗組員の全員が抱いていた。

 

そして、稲穂もまた裕也達が抱いていたものと同じような…則ちアセイラムを狙った火星騎士がここノヴォスタリスクへと仕掛けてくる事を考えていたのだ。

総力戦となり、敵が揚陸城を降下させてくることを想定し、ラムダドライバの試験運用時に使用する予定だったデモリッションガンを持ち出したのである。

 

「目標を確認」

 

宗介が短く言い、裕也の目にもモニターに映る巨大な揚陸城が見えていたー。

 

『距離は100km、時速200kmってところか…』

 

着脱式の砲身を装着した長距離射撃状態であるガンハウザーモード、その最大射程は50km。

 

落下時の衝撃から防御の体勢を取らなければならないため、撃てて二~三発といったところだろう。

 

そんな事を考えていると揚陸城の距離はみるみるうちに近づいてくる。

 

そして、裕也の耳に凄まじい轟音が響いたー。

 

2014年12月24日13時32分―ザーツバルム城

 

「何が起こった!」

 

地面へと降下しつつある揚陸城を立て続けに衝撃が襲い、ザーツバルムが声を上げる。

 

『地上からの砲撃です!

一番、二番橋頭堡に被弾、各部で火災発生!!』

 

「消火作業を急がせろ!」

 

慌てた様子のオペレーターにザーツバルムは声を上げる。

 

『報告にあった地球のカタクラフトか!』

 

スレインやフェミーアン城の内通者からの報告を思い出すザーツバルム。

 

だが、彼自身も落下中の揚陸城が攻撃を受けるとまでは考えてなかったのである。

 

「予定通り着陸と同時にバンカーバスターを発射、私も出る!」

 

予想外の敵の反撃に面食らいながらもザーツバルムは声高らかに叫んだ。

 

 

2014年12月24日 13時40分―ロシア地球連邦軍ノヴォスタリスク基地。

 

『やっぱり、デモリ砲を使っても完全に揚陸城を破壊するには至らないか…』

 

橋頭堡に当たる部位を大きく欠損させ、煙を上げながら落下する揚陸城。

 

『とりあえずは、第一目標はクリアといったところだな…』

 

ラムダドライバで衝撃波を防ぎながら裕也はモニター越しに揚陸城を見上げる。

 

同時に展開した橋頭堡からミサイルが発射され、地面へと着弾する。

だが、何故か爆発は起こらない。

 

『バンカーバスターか!』

 

その疑問に答えたのが宗介であった。

バンカーバスター、地中貫通爆弾ともよばれるもので硬化目標や地下施設を攻撃する際に用いられるものだ。

 

だが、そちらばかりを気にしていられない。

揚陸城から黒いカタクラフトが戦闘機が二機と共に発進したからである。

 

『ちっ!』

 

宗介が舌打ちをするとアーバレストがデモリッションガンを戦闘機へ向けて放つが、次の瞬間には機体の表面が波打ち、弾丸が消滅する。

 

『バリアだと!』

 

声を上げる宗介。

揚陸城を撃ち落とし、その衝撃波を防いだ状態でバリアを突破するほどの精神力はない。

『それでも戦闘は可能だ…』

 

戦力的には三対二、厳しい状況ではあるが裕也はにはまだ余裕があった。

 

 

 

『さてさて、ラスボスさんは他にどんな武装を使ってくるだろうね…』

 

漆黒のカタクラフトが肩部から発射したミサイルを回避しながら裕也は前世のーゲーマー時代の独特の高揚感を味わっていた。

転生してから久しく感じていない感覚である。

 

「っと!」

 

爆煙から唐突に現れたカタクラフト、ミサイルを放った機体とはまた形状の異なる機体が腕部に展開したビームサーベルを回避。

 

「飛行能力にバリア、更にビームサーベル、それにレーダーに反応が無いということはステルスか…。

いくら何でも盛りすぎだろ…」

 

『それに、この機体には生体反応が感知されないことから無人機だと思われます』

 

苦笑する裕也に答えるフレイヤ。

 

『流石にこれ以上の武装は無いだろうな…』

 

等と考えながる裕也。

それと同時にクレイモアは単分子カッターを構えたー。

 

 

轟音とともにがアーバレストが発射した散弾が敵機体に着弾するもバリアを展開しているのかダメージを与えることが出来ずにいる。

裕也同様に宗介も無人機相手に苦戦していた。

 

こちらもラムダドライバの起動限界時間に達した為にダメージを与えることが出来ずにいるのだ。

 

ミサイルを放った機体は地球連邦軍のカタクラフト部隊が頑張っているが、それも長く持たないだろう。

 

 

『だが、時間は稼げた』

 

宗介がそう思うと同時にに基地格納庫のハッチが開き大型のロケットブースターを装着したデューカリオンが猛スピードで発進した。

 

2014年12月24日 11時00分―ロシア地球連邦軍ノヴォスタリスク基地。

 

「お二人はどう、考えてますか?」

 

時を遡ること、一時間。

伊奈帆が裕也達の所へ相談にやってきた頃へと戻る。

 

「正直言って、あれだけ姫の命に固執してきた火星騎士がここで何もしてこないとは言い難い」

 

「俺も同じ意見だ」

 

「やっぱりそうですか…」

 

伊奈帆の問に裕也と宗介が答える。

 

「それぐらいならこの司令部のお偉いさんがたもわかってるだろう?」

 

「はい、もし敵が揚陸城で仕掛けてきた場合。

ブースターを装着したデューカリオンが成層圏まで上昇、デコイをばら撒いた後に強襲隊が降下。

上陸に成功した強襲隊は対空兵器を破壊。

反撃が衰えた所でアセイラム姫を載せたカタクラフトを揚陸城上陸させ、揚陸城のアルドノアドライブを停止させようと考えています。

ただ…」

 

「ただ?」

 

「デューカリオンの発進までに、少し時間が必要なためお二人に時間稼ぎをお願いしたいのです」

 

伊奈帆は二人を見据えるとそう言った。

 

 

2014年12月24日 14時00分―ザーツバルム専門カタクラフト コックピット内。

 

「何だと!」

 

地球連邦軍、ロシア基地で、カタクラフトの大部隊と戦闘を行っていたザーツバルムは思わず声を上げた。

 

デューカリオンが基地を発進したのだ。

アセイラムが揚陸城へと赴き、アルドノアドライブを停止させるつもりだろう。

 

『くっ…』

 

二体の小型カタクラフトと地球連邦軍の大部隊が陽動であることを見抜けなかった事に悔しげに呟く。

 

「我が宿願…このような所で諦めてなるものか…」

 

同時にザーツバルムは無人機にその場を任せるとデューカリオンを追う。

 

敵に背を向けるのは騎士としての矜持に反するものではあるが、今はそんな事を言っている場合ではない。

 

 

「見えた!」

 

高度二万メートル地点、後部ハッチからカタクラフトが降下しているのを見てザーツバルムは声を上げる。

 

先程、小型カタクラフトによる砲撃により対空兵器の半分が削がれた状態では迎撃するのは難しいだろう。

 

『いくら対空防御が半分潰れた状態とはいえ、姫を乗せたカタクラフトを降下させるとは思えん…』

 

などと考えていると 一旦は閉じていた後部ハッチが開いていくのを確認、ミサイルを発射したー。

 

 

2014年12月24日 14時40分 クレイモア コッピット内。

 

「なっ!」

 

先ほど発進したデューカリオンが墜落していく様子に裕也は声を上げる。

先ほど戦域から離脱した黒いカタクラフトの攻撃によるものであることは明白だ。

 

『杉崎!』

 

「つっ!」

 

揚陸城に気を取られていた裕也は無人機がレーザーブレードを振り下ろそうとしていたのを宗介の声で気づく。

 

「しまっ…!」

 

ラムダドライバが停止している今の状態で喰らえば確実に死ぬ。

回避するにも間に合わない。

目を瞑るも予想していた熱や衝撃は無い。

 

「…?」

 

恐る恐る目を開くと無人機がその動きを止めていることを気づく。

一瞬後には頭部のセンサーに光が点滅、戦闘機へと変形すると揚陸城へと飛び立っていった。

 

2014年12月24日 15時00分―ザーツバルム専用カタクラフト コックピット内。

 

「お覚悟を、アセイラム姫殿下」

 

コッピット内でザーツバルムは言うと揚陸城へと上陸したカタクラフト部隊に向けてミサイルを発射、着弾と同時に自信も着陸する。。

先ほど撃墜した、デューカリオンから既にアセイラムを載せたと思われるカタクラフトが揚陸城へと上陸しているのは確認済みある。

そして、その機体は護衛の機体と共に揚陸城へと入っていき。

現在、ザーツバルムの前にはミサイルポッドや推進剤などの付いた大型バックパックを装着したオレンジ色のカタクラフトが立ちふさがる。

 

「蛮勇だな、地球の兵士。

だが、容赦はせぬ!」

そう言うとオレンジ色のカタクラフトへとミサイルを放つ。

オレンジ色のカタクラフトもミサイルを放ち、迎撃。

続けて放たれた無誘導ミサイルが着弾、爆発する。

 

「いい気になるなよ!地球人!!」

 

そう叫ぶと共にザーツバルムの乗るカタクラフトは呼び寄せた無人機とフライトユニットと合体を行う。

 

鎧武者を思われる機体の名はディオスクリア。

 

飛行能力の他に三つのアルドノア兵装を保有する機体である。

 

オレンジ色のカタクラフトがディオスクリアに向けて、銃弾を放つが着弾と同時に機体に波紋のようなものが広がり弾丸は消滅する。

 

ディオスクリアが有するアルドノア兵装の一つ、次元バリアである。

 

「エネルギージョイント接続、フィールドジェネレータ始動、ブレードフィールド展開……抜刀」

 

静かに言い放つと同時に左手に光の刃が展開される。

 

レーザーブレードである。

 

それを振り下ろすと同時に背後に銃弾が着弾、消滅する。

 

敵の援軍による銃撃だ。

 

「愚かな…」

 

そう言い放つと同時に次元バリアを展開した右腕で薙払う。

 

 

「飛べ!我が眷属よ!」

 

次いでもう一体に飛行する拳を放ち、オレンジ色の機体にもそれを向ける。

それを回避した所にレーザーブレードを振り下ろした。

 

 

2014年12月24日 15時15分―タルシス コッピット。

 

「補助動力装置スタート動くか…」

 

鹵獲されたタルシスのコッピットでスレインは呟く。

 

アセイラムを探して上空をスカイキャリアで飛行していた所を撃ち落とされ、この機体へと逃げ込んだのだ。

「駄目か…アルドノアドライブが停止している。

起動権を与えられたら人でなければ動かすことが出来ない…。

どうすれば…」

 

しかし、機体を動かすことが出来ずに途方に暮れる。

 

瞬間…。

コッピット内に光が溢れたー。

 

2014年12月24日 15時20分―ディオスクリア コックピット。

 

「アセイラム姫殿下、お命頂戴します」

 

揚陸城内の監視カメラでザーツバルムはアセイラムの現在地を割り出し再び彼女の乗る地球型カタクラフトと相対していた。

 

鳶色のカタクラフトが放つ銃弾を銃弾を次元バリアで消滅させると眷属を放ち機銃ごと腕をもぎ取る。

 

返す拳でアセイラムの乗るカタクラフトを破壊しようとしたところで衝撃が走る。

 

眷属を使用する際にはスラスターが干渉するために一旦、バリアを解除する必要があり、そこを狙われたのである。

 

「くっ!」

 

呻きながら再度バリアを展開しようとした瞬間に再び、機体に衝撃が走る。

 

飛ばした腕を遠隔操作するアンテナ部を撃たれたのだ。

 

「小賢しい真似を!」

 

叫びながらレーザーブレードを構えようとする。

 

だが、それよりも早く間接部を撃ち抜かれ無効化される。

 

全ての武装が破壊されてもなお、ザーツバルムは機体を立ち上がらせる。

 

「地球人め…」

 

憎しみを込めて口を開くザーツバルム。

 

そこに何を感じたかオレンジ色のカタクラフトは持っていたライフルを地面へと投げる。

 

「…?」

 

困惑するザーツバルムに拳を固めたようなポーズを取るオレンジカタクラフト。

 

まるでどこからでもかかって来いと言わんばかりの動作がザーツバルムの精神を逆撫でした。

 

「き、貴様ぁぁぁ!」

ブースターを吹かしてオレンジカタクラフトへと殴りかかるも回避され、背面にアンカーを打ち付けられて無様に転倒する。

 

「解るまい…貴様らには!」

 

バックパックの近接用ナックルを装置するオレンジ色カタクラフトにザーツバルムは声を上げる。

 

「植え付けられたら地球人への羨望と憎しみが。

いつまでも我らの魂を濁らせ続け、人としての生き方を奪った。

豊かな地で漫然といきるものに我らの思いは解りはすまい。

憎しみを植え付けられた恨み、それに気づいたときの虚しさ。

 

愛するものを守れなかった無念。

 

解りはすまい!」

 

叫びながらオレンジ色のカタクラフトを押し倒し、拳を繰りだそうとした所でナックルがカウンターで繰り出され、機体が激しく揺れる。

 

「我は…憎むすべてを倒し、憎しみの連鎖を…絶つ」

 

崩れ落ちたザーツバルムのカタクラフトに向けてオレンジ色のカタクラフトが拳を振り上げた。

 

2014年12月24日 15時40分―タルシス コッピット。

 

「伯爵!」

 

アルドノアチャンバーへと向かいながら、スレインはザーツバルムのカタクラフトに向けてナックルを振り下ろしさうとするオレンジカタクラフトに向けてタックルを仕掛ける。

それと同時に揚陸城内の電気が全て消える。

アセイラムがアルドノアドライブを停止させたのだ。

 

「伯爵…」

 

明かりの消えた薄闇の中、 スレインはザーツバルムの姿を探す。

 

「伊奈帆さん!大丈夫ですか!伊奈帆さん!!」

 

そこで聞き覚えのある声が響きそちらを見るとオレンジ色のカタクラフトのハッチを開けパイロットと何かを話している。

 

『アセイラム姫…』

 

彼女の無事な姿にホット胸をなで下ろすスレイン。

 

だが次の瞬間に銃声が響きアセイラムが崩れ落ちる。

 

「ザーツバルム…伯爵…」

 

銃を下ろすザーツバルムにスレインは呆然として呟く。

 

「我を助けたな…スレイン…

よくやった…」

 

「あ…あああああああああ!」

 

その言葉にスレインは銃口を向け、叫びを上げながら引き金を引く。

 

崩れ落ちるザーツバルム。

それと同時に背後から聞こえた物音にスレインが振り向くとオレンジ色のカタクラフトのパイロットが倒れて動かないアセイラムへと這いよろうとしていた。

 

「よせ、そこまでだ…姫に触るな、オレンジ色」

 

パイロットへ向けて拳銃を向けるスレイン。

 

「蝙蝠…」

 

一方のパイロットもそう呟く拳銃を向ける。

それと同時にスレインの放った銃弾がパイロットの身体を貫いたー。

 

 

 

 

2014年12月24日 地球連合本府に強襲をかけたザーツバルム伯爵の揚陸城が陥落。

戦いは地球連合軍の勝利に終わった。

敵味方双方に死傷者多数。

 

ヴァース第一王女、アセイラム・ヴァース・アリューシア姫の消息は知れず。

 

裕也達が元の世界へと戻るすべも未だに見つかっていないー。

 

 




灰音です。

随分と遅くなりましたが四話目のアップですー。

次の話はアニメの二期が始まるまでお待ちくださいm‐‐m

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