2014年12月26日12時25分―東京湾沖‐トゥアハー・デ・ダナン発令所
「んっ…」
光に眩んだ目を瞬かせるとテスタロッサは周囲に目を向ける。
マデューカスや他のクルーが船体にダメージが無いか各所に確認を取っている。
「相良さんと神崎さんは大丈夫かしら…」
それを横で見ながらテスタロッサは呟く。
『ちら…こちらはウルズ7…、ダナン応答せよ…』
それと同時に宗助からの通信が入る。
「相良さん、神崎さん無事ですか?」
『ああ、大丈夫だ』
『こちらも大丈夫です』
二人の言葉にテスタロッサはホッと胸をなで下ろす。
『だが、同時に気になものも見つけた』
その言葉と共にアーバレストのメインカメラが上空に浮かぶそれをモニターに映し出す。
「これは…」
驚愕したように目を見開くテスタロッサ。
カメラが捉えていたのは空に浮かぶ白い月だ。
本来ならば丸い形であるその表面は半分近くが抉られ、周辺には砕けた欠片が幾つもの浮いていたのだ。
同日 12時45分―東京湾沖・トゥアハー・デ・ダナン食堂。
「さて、今私達が置かれている状況について皆さんの意見を聞かせていただきたいのですが…」
アーバレストとクレイモアの回収を終えたトゥアハー・デ・ダナン内―。
宗助と和哉、テスタロッサ、千紗の4人は食堂に集まって先ほどの謎の光と抉れた月について話し合っていた。
「…ここは私達がいた世界とは異なるものだと考えます」
顎に手を当てながら言ったのは千紗であった。
「つまり異世界であると」
テスタロッサの言葉に千紗が頷く。
確かに、そうでも無ければ説明が出来ないような事も多々あった。
世界規模の大戦が起こったとしても月の半分が抉られるような事は考えられない。
更に、位置情報を確認を確認したところメリダ島から離れた東京近海であることから何らかの原因でテスタロッサ達が異世界へと飛ばされた可能性が大きい。
「原因はやはり…ユニゾンシステムを使用してラムダ・ドライバを作動させた事でしょうか…」
「正確にはユニゾンシステムを使い、ラムダ・ドライバを起動。
それによって発生させた力場を干渉させあった事でしょうね…」
テスタロッサの言葉に千紗が頷いて答える。
「問題は何故…こうなったかよりも…。
今我々が、どうすべきかと言うことだな」
先ほどから黙って千紗とテスタロッサな話を聞いていた宗助が呟く。
「それについては情報を集めてからにすべきですね」
『館長』
テスタロッサのその言葉と共に食堂に備えられたモニターにマデューカスの姿が映る。
「マデューカスさん、もう情報が集まったのですか?」
いくらなんでも早すぎるだろうと思いながら問うテスタロッサ。
『いえ』
マデューカスは首を横に振って話を続ける。
『情報収集中に気になる音声を拾いまして…』
「解りました、流してください」
いつもは冷静なマデューカスにしてはどこか焦っているようにも思える。
その様子に何かを感じたテスタロッサは頷き、促す。
『アイマム』
『我らがアセイラム姫の切なる平和への祈りは、悪辣なる地球人どもの暴虐によって無惨にも踏みにじられた。
我らヴァース帝国の臣は、この旧人類の非道に対して断固正義の鉄槌を下さねばならない。
誇り高き火星の騎士達よ、いざ時は来た。
歴代の悲願たる地球降下の大任。
火を持って今こそ放つべし』
マデューカスが敬礼をすると同時にノイズ混じりに流れた音声には聞き慣れない国名などが混じっていたがどう考えても宣戦布告であった。
文言から察するに停戦協定を結ぶ大使として訪れたお姫様が暗殺され、宣戦布告っということになったのだろう。
だが、何か頭に引っかかるのを感じる。
他の面子もテスタロッサと同じものを感じているのか考え込むような表情をしている。
「…あれっ?」
っとそこでエレベーターに乗って下降しているような感覚を覚え、声を上げる。
トゥアハー・デ・ダナンが潜航しているのだと気づくと共に大きな衝撃が艦を襲った。
更新がかなり遅くなりましたが第二話のアップしました。
次回は火星カタフラクトとの戦闘を予定していますー