ある大作戦が発動した。
『AL/MI作戦』である。
この報告書は、本作戦の目的は『敵味方双方の作戦、及びそれによって発生した進行状況の整理』である。
※本作投稿現在発動中の夏イベント『AL/MI作戦』のシナリオを個人的に考察したお話となっております。
2014/08/09_
日本海軍総司令部は、海軍の総戦力を傾けた大作戦の発動を宣言した。
『AL/MI作戦』である。
深海棲艦の出現より奪われたミッドウェーを奪還する待望の作戦であった。
現在、世界には深海棲艦とよばれる正体不明の“敵”が出現していた。
その出自は不明、その目的も不明。
ただ海を支配し、時には陸にすらも侵攻してくる“人類の敵”。
――人類は有志以来、初めて結束せざるを得ない状況においこまれた。
それから数年。
現在、世界の海の半分は深海棲艦の支配下にある。
彼女たちの何より厄介な点は、その数。
こちらの現代艦艇と同等の火力を有する存在が、無限にも思える数存在するのだ。
対して現代艦艇はその無限の敵に対し、あまりにいい“的”であった。
かくして人類の英知は敗北した。
人類は何とか陸を守るのが精一杯となり、その人口を大きく減じていた。
唯一の救いは、彼女たちが空に対しては大した脅威ではなかったということか。
特に宇宙にまで進出すれば、深海棲艦に脅える必要はほぼ無いと言って良い。
故に、人類はほそぼそと、何とか死守したエアラインを通しての物資のやりとりで、その生存を許されているのだった。
――反撃が始まったのは、今からちょうど一年と少し前の事になる。
ある時それはあるいくつかの国にて建造された。
およそ七十年前の艦艇の名を背負った人型の“それ”。
どれらも見目麗しい少女の姿をしており、その正体は“不明”。
一説によれば、撃破した深海棲艦の残骸を解析、改造したものだと言われる。
ただ、それにはある特徴があった。
“意思を持つ”という特徴である。
艦の名を背負い石を持つ美少女たち。
彼女たちは、“艦艇娘”――略して、“艦娘”と呼ばれることとなる。
最初の反撃は日本から始まった。
当初は駆逐艦、軽巡洋艦のみで編成された水雷戦隊であったが、みるみるうちに戦力を拡充、反撃とほぼ同時に日本近海の領域を深海棲艦から奪いとった。
更には南西諸島一体に進出、その頃には戦艦クラスの艦種も艦隊の中に見られるように成った。
あ号艦隊決戦。
敵前線泊地強襲。
北方海域艦隊決戦。
カスガダマ沖海戦。
艦娘達の戦闘は、あまりに順調と言ってよい快進撃であった。
人類の反撃――少しずつ取り戻される人類の海と大地。
――世界が湧いたことは、想像に難くないだろう。
そんな彼女たちの快進撃も、ある時暗礁に乗り上げる。
ついに艦娘は、深海棲艦の本拠地の一つである南方海域――かつての帝国海軍に因縁名高きアイアンボトムサウンドである。
前哨戦、南方海域強襲偵察。
本格攻略作戦――珊瑚海海戦、第一次サーモン海戦。
そして――鉄底海峡を抜けた先に待つ、敵の最深部への殴り込み。
激戦の末、それに艦娘達は勝利する。
その後、南方海域に襲来した敵の有力機動部隊迎撃を目的とする第二次サーモン海戦。
更には南西海域を舞台とした海戦に勝利した日本海軍は、ついにある作戦を打ち立てる。
それが、本作戦、『AL/MI作戦』である。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
――まず、本作戦の結果はこの報告書をお読みの諸兄もご存知の通り、日本海軍の完全勝利であったことを明記する。
その上で本報告書の目的は『敵味方双方の作戦、及びそれによって発生した進行状況の整理』である。
つまり、複雑な推移を見せた本作戦の解説が、この報告書の全体的なあらましだ。
ではまず、味方側――日本海軍の作戦を説明する。
一つ、AL方面へ進出し、その中心である港湾基地を強襲、ここを確保する。
二つ、上記侵攻作戦を『陽動』とし、航空機動部隊を中心とした連合艦隊により、本命のMI方面を攻略する。
大きく分けてこの二つだ。
お気づきの物はいるだろうが、大凡これは七十年前の大戦にて行われた『ミッドウェー海戦』のあらすじをたどったモノだ。
――結果は言うまでもなく、帝国海軍の大敗北。
これが、当時の大日本帝国敗北の、一つの大きな要因となったことは、語るまでもないことだ。
では、何故それと同じ作戦を司令部が立案したか。
簡単だ、既に同じ行動を取っているために、ミスの原因が非常に明確であるからだ。
まず当時の帝国海軍にあった慢心。
これはほぼ存在しないと行って良いだろう。
何せ今戦場を駆ける艦娘達は、当時の艦艇達の記憶を有している。
――ミッドウェーには因縁があり、尚且つそれを悔しく思っているからだ。
力みすぎることはあっても、力を抜きすぎることはない。
また、こうして“雪辱の機会”を得ることでの士気の高揚も、作戦の狙いに含まれていた。
以上が日本海軍の作戦骨子である。
単純であるが、それゆえに明瞭な作戦といえるだろう。
対する深海棲艦側の作戦はこうだ。
一つ、ミッドウェーに侵攻してきた敵艦隊を迎撃、徹底的な防衛を行う。
二つ、敵をミッドウェーにひきつけている間に、敵本土――つまり日本を狙う。
大まかに分けてこの二つ。
ミッドウェーへの侵攻は、世界の制海権を取り返すために必要不可欠なもの。
故に、その攻撃は想定されたものであった。
しかし、おどろくべきことは、その『ミッドウェーへの侵攻』を敵が逆手にとったことだ。
つまり一大拠点を完全な囮――陽動の餌としたのだ。
恐るべきはその大胆さ。
そして何よりも、深海棲艦が“明確な作戦を打ってきた”ということだ。
これまで深海棲艦は拠点の防衛、もしくは単純な侵攻を目的とした攻撃のみを行ってきた。
つまり、それは単純な戦闘行為であり、そこに戦略、もしくは戦術的意図は存在しなかったのである。
それがこの『AL/MI作戦』において――
――よりにもよって大日本帝国の転換点であった『ミッドウェー』で行われたことは、あまりに皮肉であると言えるだろう。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
まず作戦の経過を語る前に、それぞれ敵味方の艦隊を軽く説明しておこう。
日本海軍は二つの艦隊を編成した。
一つは重巡洋艦、軽空母を中心としたAL方面攻略艦隊。
もう一つはMI方面を攻撃するための“航空機動部隊”及び“護衛艦隊”からなる連合艦隊。
念のため、最低限の戦力は本土に残された。
対する深海棲艦側の艦隊は分けて三つ。
一つはAL方面の護衛艦隊。
もう一つはMI方面の護衛艦隊。
そして本命、本土強襲のための攻撃舞台。
ただこの内、日本海軍はこの艦隊を十全に使用することができた。
対して深海棲艦は艦隊を上手く運用できなかった。
これがこの海戦の、決定的な明暗を分ける原因となったことは間違いない。
では、作戦の推移を結果を追って説明していこう。
まずAL作戦。
こちらはあくまで陽動であるが、この方面に敵の港湾基地があることは、作戦上、それなりに目障りとなる状態である。
故に、ここの攻略は陽動であっても必要不可欠であった。
投入されたのは主に重巡洋艦や軽空母などの中でも、特に練度の低い艦隊。
それもあってか、ALの作戦は見方によってはMI以上に困難を極めることとなった。
ただし、こちらの海域は陽動である。
迅速な攻略が必要というわけではなく、腰を据えた海域攻略により、最終的には敵を打破することに成功する。
――ここで触れて置かなくてはならないのは、AL方面への陽動作戦は、敵深海棲艦にとって『完全に寝耳に水』であったことだ。
何せ深海棲艦は『ミッドウェーを囮とした』作戦を前提としていた。
そのため、AL方面の守備は『ごく最低限』であったのだ。
なお、日本海軍が本土に残した艦隊は相応の戦力を有している。
コレに関しては後に触れることとなるだろう。
――とまれ、まずこれがひとつの誤算。
深海棲艦は『ALへの攻撃はない』と踏んでいた。
何故か。
“敵もまた旧帝国海軍の艦艇であるため”、だ。
これは考察となる。
MI方面作戦において新たに発見された深海棲艦、通称『中間棲姫』と『空母棲姫』。
これらはそれぞれ日本海軍の正規空母『赤城』、『加賀』に似た特徴が指摘されている。
つまりこれは、“深海棲艦のルーツは艦娘と同じ七十年前の大戦で沈んだ艦艇達ではないか”という説を裏付けるものとなるだろう。
これは南方海域の作戦にて存在が確認された『南方棲戦姫』に、日本を代表する超弩級戦艦『大和』の特徴が指摘されることが起因となっている。
また同時に、彼らは“大戦における米国の艦艇”を元としている面も存在する。
結論はこうだ。
深海棲艦とは『旧帝国海軍と当時の米国海軍の“連合艦隊”ではないか』。
そうした仮定の上で語るが、彼女たちは『ALへの攻撃はない』と踏んだ。
現在、『ミッドウェー海戦』において、『ALへの陽動は下策であった』という意見がある。
これを深海棲艦たちも同様に考えていた。
だから当時の記憶を持つ艦娘達は、『AL方面』へ攻撃しない。
そういった“慢心”があったのだろう。
ここからはそれを、MI作戦の経過を併せて語る。
MI作戦に投入されていた深海棲艦の防衛艦隊は、非常に手薄と言ってよいものだった。
というのも、敵は“連合艦隊”を想定した艦隊を用意してはいなかった。
加えて、突如として侵攻を受けたAL方面の援護のため、一部艦隊が離脱していたことも要因といえる。
ALにMI方面の艦隊が援軍を出していたというのは、ある事実から言えるだろう。
今回の海戦、敵艦載機に新型が確認された。
それをAL方面の空母ヲ級が使用していたのだ。
おそらくこの艦隊は北方に援軍としての任務を帯びてやってきたMI方面の艦隊だろう。
かくしてMI方面の防衛は、かなり手薄な物となった。
そこを日本海軍の総力とも呼べる艦隊が強襲したのだ。
戦闘は決して容易とは呼べないが、順調かつ派手な物となった。
MI方面の中核、『中間棲姫』を護衛する『空母棲鬼』を撃破し、そのまま返す刀で『中間棲姫』を、連合艦隊は撃破する。
深海棲艦にとって、これは大きな誤算となる。
何せ彼女たちはミッドウェーを『囮』とするつもりはあっても『捨て駒』とするつもりはなかった。
それはAL方面へ出撃した艦娘たちと同じように、あくまで目的は陽動。
故に、これほどのスピードでミッドウェーを攻略されることは、完全な想定外。
――そこで、深海棲艦がとった行動は、言ってしまえば火消しのようなもの。
ここで動かせる艦隊――つまり、日本本土への強襲を行う艦隊から、一部が離脱。ミッドウェーの残骸の回収に向かったのである。
これがミッドウェー海戦三戦目に登場した、緊急の増援部隊である。
彼女の目的は二つ。
ミッドウェーに取り残された自軍を回収すること。
これは艦隊の中に輸送ワ級が存在したことがその証明である。
そして、ミッドウェーに連合艦隊を釘付けにすることである。
――つまり、時間稼ぎ。
彼女は、本来であれば用いる必要のなかった駒――つまり、『捨て駒』である。
とはいえ、その作戦は結果的に功を奏した。
本土強襲部隊は無事、本土周辺に到着、その間、連合艦隊はミッドウェーに釘付けとなった。
しかし、
――だが同時に、それが深海棲艦側の作戦を、破綻させる結果となった。
前提として、現在日本の守備は万全だ。
深海棲艦としてもそれに手出しができず、そのための作戦がこの『ミッドウェー陽動作戦』である。
故に、本土強襲とはいっても、それを容易に行うことはできない。
時間稼ぎのために、“本土強襲が可能な艦隊”から一部を切り離した本土強襲艦隊は、結果として日本海軍とのにらみ合いを余儀なくされた。
下手に動けば戦闘に発展する一触即発。
――やがて連合艦隊が帰還し、その膠着は終了するが、その際は海軍工廠などに、多少の損害が出ることは想像がつく。
結果として敵の作戦はほぼ失敗と言って良いのだが――それでも、ここで邀撃以外の選択肢は、日本海軍には無いのであった。
かくして最後の戦いが始まる。
そこに投入されるのは、日本海軍の最終兵器、『大和』を始めとする超弩級戦艦郡。
そしてここ最近、要所の海域に参加することが減っていた重雷装艦であった。
激戦の末、日本海軍は邀撃に成功した。
これにより敵の目論見は完全に潰えることとなる。
――波乱のAL/MI作戦は、コレにてその状況が終了することとなる。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
さて、先述の通り、この戦いは日本海軍の勝利である。
その大きな要因は何よりも、『敵の慢心』であろう。
敵は二つのミスを犯した。
『ALへの陽動はありえない』という慢心。
そして、その上で『MIを陽動とした強引な作戦』を打ち立てたことだ。
――それは、どこか既視感を覚えるものがある。
そう、敵は“かつての帝国海軍のミス”をそのままそっくり犯してみせたのだ。
この作戦はかなり複雑な経過を追うわけであるが、最終的には、敵深海棲艦の被害はひどいものだ。
一気に二つの基地を失ってしまった。
――とはいえ、敵深海棲艦が“戦略”ないしは“戦術”を使い出したこと。
本土付近にまで敵の大艦隊を接近させてしまったという事実。
幾つもの懸念は存在している。
決して手放しに喜ぶことはできない勝利だ。
結論として、我々が教訓とすべきことは、この勝利を慢心としてはならない、というごくごく当たり前の事実である。
というわけで、今回の夏イベのシナリオ的な考察でした。
因みに一応E5で攻略が終わった場合に関しても特に問題ない、としていますが、ALでイベントを終えた場合、そもそもAL攻略しにいっただけ、で話が終わります。
MIなんて無かったんや……