転生×HUNTER   作:オガルフィン

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旧5話と6話の一部を纏めてみました。


第4話ーようこそ200階クラスへ♣ー

「くっくっく♦ようこそ200階クラスへ。待ってたよ君が来るのを。」

 

エレベーターを降りて受付へ向かうと、 そこには悠里の一番会いたくない人物がいた。

もしや悠里のことを待ち伏せしていたのだろうか。

試合が終わってから先回りするために急いでエレベーターに乗り、200階に着いたら廊下に座り、それっぽい雰囲気を出しなら待機するヒソカ...その光景を想像してしまうととてもシュールである。

 

「随分と遅かったじゃないか♣僕の期待はずれだったかな...!」

 

悠里が色々と想像し引き気味で距離を取っていると、唐突にヒソカが腕を伸ばしながら禍々しいオーラを叩きつけてきた。

威圧感に思わず後ずさってしまう悠里だが、

 

(ビビるな、俺も今は「纏」を使えるし「練」も出来る。)

 

踏み留まりながら己を奮い立たせ、お返しとばかりにオーラを噴出し「練」をしながらヒソカを睨みつけた。

 

「へえ...見事な“練“だ♦確かに”纏”が使えるだけで粋がっているのは5流だね。今までは修行でもしてたのかい?」

 

「まあね、お前にこの力に目覚めさられてからは大変だったよ。それにしても前は聞いても全く教えてくれなかったのに、今日は随分とお喋りじゃないか。」

 

そう、以前に師匠のいない悠里はヒソカに念について聞きに行ったことがあった。

しかしその時は笑みを深くしてこちらを見てくるだけで、何も教えてもらうことは出来なかったのだ。

 

悠里が言い返せば、ヒソカは「ククッ」と笑いながらも満足そうな顔をして悠里を見やる。

上から下まで舐め回すように見た後、再び視線を戻した。

 

「あれはテストさ♠だからあそこで君が念を使いこなせなければそれまでだったけど、君は随分と優秀な青い...いや黒い果実だからね、今はつい応援したくなっちゃうんだ♥」

 

(黒い果実...?)

 

ニヤリと笑いながら意味のわからない事を言うヒソカ。

聞き返しても良かったが、その流れで試合でも組まされては修行計画に支障が出る。

そもそも「発」が未完成であったし、現時点の悠里ではヒソカとは渡り合うのは不可能だ、間違いなく何も出来ずに殺される。

 

「それは光栄なことだけど...まだ“必殺技“が未完成なんだ。だからこのクラスで戦うのは期限ギリギリの90日後近くになると思うよ。」

 

「それは残念だ♦まあ僕もまだ君と戦う気はしない...ヤるのはもっと君が熟してから...」

 

悠里がそうして先んじてヒソカを牽制すれば、どうやらヒソカも同じ思いであったらしい。

それから二、三言交わすとヒソカは早々に立ち去っていってしまった。

とりあえずの危機は脱したらしい。

 

だがヒソカとの戦いは回避しても、そこまで余裕が無い事実は変わらない。

原作開始まで後1年、それまでに「発」を形にして自在に使いこなすまで成長できなければ、この世界でハンターとして暮らすには厳しいだろう。

 

ゴン達主人公組がハンター試験に参加してからがこの世界の物語の始まりと捉えるならば、悠里もそれに合わせて自身を万全の状態にチューンナップしておかなければならない。

 

(それにしてm「ユーリ様ですね。あちらに受け付けがございますので、今日中に200階クラス参戦の登録を行ってください。今夜の0時をすぎますと登録不可能になりますのでご注意ください。ちなみに200階クラスには――」...)

 

少しボーっとしすぎていたようだ。

物思いに耽っていた悠里に受付嬢が声をかけてきた、ここでは原作と同じ説明がなされる。

あの物憂けな美人お姉さんじゃないのが残念だ、と密かに気落ちする悠里だが、聞きたいことがあったのを思い出し口を開いた。

 

「参戦登録は行いますが、試合登録はまだでお願いします。確か90日は猶予がありましたよね?」

 

どうやらそれは正しかったようで、受付嬢は笑顔で答えてくれる。

 

「はい、可能です。では参戦登録だけしておきますね。お部屋はこちらの2237号室をお使いください。」

 

そういって部屋の鍵を渡されたが、その鍵も100階クラスの民宿の鍵のような物から高級ホテルで見るような物に見た目が進化していた。

ゴン達が使っていた部屋もスイートルームのような部屋だったので、これは期待ができそうである。

 

そして部屋に行ってみれば、やはりというか用意された部屋は十分すぎるくらいに良い環境だった。

かなりの広さがあるので、ある程度は部屋の中でも修行が行えるだろう。

 

「では早速」、と悠里は以前から「発」について書き出していた紙を机の上に置いた。

その内容は、

 

一つ、狂気の蔓延(スプレッドインサニティ)―能力発動中に自分の“オーラに触れた相手に”負の感情を植え付ける。

 

一つ、狂気の視線(インセインゲイズ)―能力発動中に自分の“目を見た相手に”更に強い負の感情を植えつける。

 

一つ、狂気の接触(インセインコンタクト)―能力発動中に自分の“体が触れた相手に”最大限の負の感情を植え付ける。

 

思いついたのはざっとこの3つだった。

まだ漠然としてはいるが、大枠は出来上がっている

 

ただ、この能力を使うにあたってもう一つ課題が出来てしまった。

それは相手をオーラに触れさせるためには自分が近づく以外ではオーラを飛ばすか広げるかしかなく、高度なオーラ運用の技術が要求された。

 

理想的なイメージとしてはネフェルピトーの「円」。

オーラに触れているというのは自身の「円」の中でも可能なので、それが出来れば悠里の「発」がかなり使いやすくなるはずだ。

 

さらにそれと平行してオーラ量も増やさなければならない。

そのために悠里は今後の修行メニューを「発の修行→限界まで円を展開しそのオーラを動かす修行」というルーチンでやっていくことにやっていく事を決めた。

「練」を限界まで行うより「円」を限界でやった方がオーラを使い尽くすのは早いだろうし、時間短縮になる。

 

この1年はかなり精神と肉体を酷使することになるだろうが、悠里は止まれない。

自由と冒険を掴み取りたいからだ。

 

そして善は急げと、早速修業に入った。

 

まず相手に感情を植えつけるにしろ操作するにしろ明確なイメージがなければならない。

実際に感情や体調によって能力が上下する過程のサンプルを集める必要がある。

 

蟻編ではユピーとプフのオーラを吸収し覚醒したメルエムが、「“円“で触れた者の感情が読みとれるようになった」とウェルフィンに言っていた。

敵意についても「眼を凝らすだけで見える」などとバランスブレイカーの超絶チートと化していたが。

 

ただその理屈で行けば、ある程度の域にならば修行で到達できるという事だろうと悠里は思っていた。

ならば悠里もまず“円“で相手の感情を読み取り、自分のオーラにそれらを馴染ませる。

そうすれば逆に自分のオーラからそれを相手に植え付けることも可能なはずだ。

 

やるべきことは決まった。

 

「そうと決まれば“人体実験“が必要だな...」

 

思わず物騒な事をつぶやいてしまう悠里だが仕方がなかろう。

期間はあと一年、最も効率の良い方法を取るほかないのだ。

 

この街やその周辺にももちろん犯罪者や賞金首はいる、そういった連中を使い一刻も早く発を完成させなければ。

 

悠里は実験のために部屋を飛び出していった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「ハァハァ...ゼェゼェ...」

 

「...」

 

人の居ない静かな路地裏に、二人分の足音と男の荒い息遣いがやたらと大きく響いている。

 

今悠里は一定の距離を保ちつつある男を追跡していた。

男の名前はローグ、C級の賞金首だった。

毎回ケチな窃盗しかしないが、目撃者を皆殺しにするのでタチが悪い。

塵も積もれば何とやら、今では立派な賞金首である。

 

一応念は使えるらしいが、先程の戦闘で「発」を使ってこなかったことから、覚えたてか、師匠のいない不完全な能力者だろうと悠里はあたりをつけていた。

 

その予想からある程度余裕があると見た悠里は円を展開しながらオーラを高濃度に練り上げローグに集中させた。

今使ったのは、ネフェルピトーの「円」の濃度を上げて、範囲を狭くしたようなものだ。

一部分を突出させて展開する事も出来る「円」の高度操作で、「練」と「円」の複合技のようなものである。

 

暫くそうしていると、確かに感じる「焦燥感」や「恐怖」。

 

(こいつは今死を恐れてる。)

 

度重なる修行によって悠里のオーラはローグの感情を正確に読み取っていた。

何せ修行の生贄はこの男で10人目になる、慣れたもので後は捕まえて少し拷問に掛けながらいつもと同じ作業をするだけだ。

 

そのおかげで狂気の蔓延(スプレッドインサニティ)に至っては完璧に使いこなせていた。

 

そろそろ捕まえて能力を試さねばと、手始めに狂気の蔓延(スプレッドインサニティ)を発動させた。

 

悠里の体から相手に伸ばされていたオーラの質が激変する。

 

狂気の蔓延(スプレッドインサニティ)!)

 

「うっ...!?」

 

能力を発動するとローグは急に立ち止まり小刻みに震えながら、顔から脂汗を噴出させた。

威力の上がった今の悠里の発ではこのレベルの使い手ではオーラを練る事どころか、まともに体を動かす事も出来なくなるようだ。

 

悠里は大きく頷き自分の能力に感心しながら、前に回り込み狂気の視線(インセインゲイズ)を発動させた。

 

悠里と目が合った瞬間、ローグはそのまま口から泡を吹き出し失神してしまう。

狂気の接触(インセインコンタクト)まで発動させれば相手の精神は完全に破壊されただろう。

 

やはりどの能力も相手に大きな影響を与えられるまでに成長している。

悠里は確実に強くなっていた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「発」の修行を開始してからはや260日。

最初は試合をする予定の悠里であったが、修行に興が乗ってくると登録だけして試合には出なかった。

そのせいで2敗がついてしまったが、悠里の目標は天空闘技場でのし上がることではない。

しかし失格になるのも本意ではなく、出来るだけ長くこの良い環境で修行をしていたかったので、失格になるギリギリ10日前の今日に試合の登録に来ていたのだった。

 

「すいません、試合登録をお願いしたいんですが。」

 

悠里が尋ねれば、「希望日はありますか?」とにこやかな表情で聞き返してくる受付嬢。

それに答えようと口を開きかけるが、

 

「希望日は、...」

 

(・・・!)

 

ふいに嫌な気配を感じ、言葉を止め振り返った。

 

(アイツらは...?まさか新人狩りのギドとサダソにリールベルト?)

 

後ろに視線を向ければ、そこにはどこかで見た事がある三人組がいた。

特徴のある独楽型の義足に車椅子、間違いなくゴンとキルアに負けた新人狩りの3人組だろう。

正直悠里は新人ではなかったが、ずっと試合に出ていなかったので勘違いしているのかもしれない。

 

まさかの人物の登場に思わずこんな時期からいたのか、と呆れてしまう悠里。

確かに原作でのこの連中は既に7戦程度はしてたいし、単純計算でも二年前程前からいた事にはなる。

 

思わぬ原作の登場人物との邂逅だった。

ただいつまでも見つめ合っていては埒が開かない、先んじて悠里が問いかけた。

 

「そこで見てる3人組は何か用?」

 

悠里が声をかければ、下卑た表情を浮かべ白々しくも答えてくる。

 

「いや、俺たちも登録しようと思ってさ。」

 

原作と同じ流れだ。

間違いなく悠里と試合日を合わせようとしている。

悠里は一瞬だけ考えたが、そのまま登録することにした。

 

「そっか、じゃあ俺はいつでも良いです、ただなるべく早めに組んでください。」

 

考えてみれば念を覚えたての「発」を使えないゴンに「練」だけで押し切られていたような連中だ。

丁度良い練習相手だろう。

 

「承知しました。では明日の放送で発表されると思いますのでご確認ください。」

 

受付嬢にわかりました、と短くいって悠里は素早くその場から立ち去った。

長くいると実力がバレる可能性があったからだ。

 

部屋に戻ると悠里は200階に来るまでに稼いだファイトマネーの合計を確認―

戸籍を持たない悠里は銀行口座を作る事が出来ず、部屋の金庫に現金でそれを保存している―していた。

何故そんな事をしているかといえば、次の試合の相手が絶対に自分の勝てる相手だとわかったため、ギャンブルで全額自分に賭けるつもりだからだ。

200階クラスの選手は“名誉のみの戦い“といってファイトマネーが全く出ない。

なので仮に勝ち越していても、ただ試合をしているだけでは金は無くなる一方だ。

 

そんな所にあの雑魚三人組である、笑いが止まらない悠里。

ニヤつきながら巨額の利益を得る未来に思いを馳せ、ベッドに潜り込んだ。




今回出来た主人公の能力については「※主人公の人物像・能力まとめ(改訂済み)」に詳しく書いてあるので、良ければ見てみてください。

次回はギド戦です。

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