ソードアートオンライン~過去からの転生者~   作:ヴトガルド

6 / 30
お気に入り登録、感想までありがとうございます。
今後も呼んでいただけるよう精進させていただきます。

※10月1日修正済み


エキストラスキル

なぜこのようなことに……。俺は先程エギルの誘いに乗ったことに激しく後悔していた。

 

まぁ50000コルもの大金を手に入れたのだからと無理やり納得し、今の状況もその依頼の一部と思い込むことで無理矢理納得する事にする。

 

「ここからなら戻った方が早いのかしら……。それとも進んだ方が……?」

 

俺は悩んでいるアスナに目をやると溜め息混じりにメニューを呼び出した。

メニューを操作し、フレンド登録しているプレイヤーの現在位置を見る。

 

どうやらキリトはゆっくりと歩いて主従区に向かっているようだ。

 

「今のキリトの位置なら急いでいけばギリギリだがアクティベート前に捕まえられるだろう。行くぞ。」

 

走り出す俺をアスナは急いで追いかける。

キリトがモンスターに捕まるのが前提だが流石に何度かは捕まるだろう。後は俺達がうまく避けながら行ければ……。

 

そうこう考えているといつの間にかアスナは俺の横を併走していた。

全力ではないとはいえ敏捷に多くポイントを振っている俺に追随して来るとは……。

 

少し気になり彼女の走り方を見てみるとその理由に納得した。彼女は最短で走っているのだ。障害物や割れ目などをごく自然に避け、無駄をなくしている。

 

まぁ流石に全速力で走った場合は追いつけまい。なにせステータスポイントの八割は敏捷に振っているのだから。

 

「……アオシ君、さっきは言いそびれたけどボス戦の時のこと、お礼を言っておくわね。」

 

追随しつつも話が出来る余裕を見せたアスナだが、礼をいわれた俺は正直あまりピンとはこない。

恐らく窮地に陥った時のことを言っているのだろうがそんな事はお互い様だろう。

 

「特に礼を言うほどの事ではない。戦いに置いて味方同士の連携は何よりも大切であると同時に当たり前のことだ。」

 

一瞬微かな笑い声が聞こえた気がしたが…………。

 

「それもそうね。」

 

と極めて冷静な返事が返ってきた事から考えるに気のせいだろう。

 

 

走ること20分、主従区が見えてきたがまだキリトの姿は見えない。

なぜか出てこないモンスターのせいで間に合うかが微妙なのだ。

 

 

「見つけた!前にいる!!」

 

アスナが指さすとちょうどキリトが主従区に入ったところだった。

これならギリギリ間に合うか……。

 

そう考えたせいで反応が少し遅れた。

モンスターだ。いや……牛か……?

 

一応逃げようと間をすり抜けようとしたが見た目に反して反応が速い。後方からならばともかく正面にいるこいつらを抜くには少々分が悪そうだ。

 

現れた牛は3体。とりあえず2体を俺が引きつけてアスナに残る1体を狩らせるか……。

 

「アスナ、2体は俺が引きつける。その隙に残る1体を出来るだけ早く倒せ。」

 

アスナは無言で頷くと、即座に高速のリニアーを放って牛型のモンスター、トレンブリングカウのHPを三割削り取る。

 

俺は手早く残り2体の牛、トレンブリングオックスを斬りつけ、二匹に0.5割程のダメージを加えて2体のタゲをとる。

 

無事に2体共俺をターゲットにしたようだ。初日に戦ったリトルペネントと違い現実に居る生物や人型に近い敵は目線や筋肉の動きで大体の攻撃は読める。

 

俺は2体に少しずつダメージを与えながら攻撃を回避していった。

やがて(時間にしてみれば一分もなかっただろう。)1体を相手にしていたアスナがこちらに合流し、俺が相手どっていた2体はあっという間にポリゴン片へと変わっていった。

 

 

その後、一気に主従区に入るとちょうどキリトがアクティベートしたところだった。

キリトに話をするべく近づこうとするも、それよりも早くキリトは近場の建物へと駆け込み、同時に転移門から一斉にプレイヤーが出てきて広場は人で溢れかえってしまった。

 

プレイヤー達の顔は喜びが多くしめているように見える。

ほんの少し、そんなプレイヤー達の顔を見ながら俺達が行ったボス戦の意味をより深く実感できた。

 

 

俺がそんな感慨に浸っていると転移門からすごいスピードで飛び出る黄色い影とそれを追う2つの影。

 

アルゴとプレイヤーだろうがなんだか穏やかではない。

アスナも同じ考えのようで追おうとするが、3人ともすさまじいスピードで俺達の視界から消えてしまった。

 

どうしようかと悩んでいたが、急に隠れていた建物から飛び出し屋根を走るキリトの姿を見つける。

どうやらキリトも今の一幕を見ていたのだろう……アルゴを追跡しているようだ。

 

キリトがアルゴ達を追跡するなら好都合だ。キリトの敏捷力ならば追跡する事も可能と見た俺達2人はキリトを追った。

 

指針のない俺たち2人はキリトよりも多少遅れながらアルゴ、そして追跡していたであろう2人を見つけた。

 

「なぜ逃げるのでゴザる拙者たちはただこのフロアに隠されているエキストラスキル“体術”の情報を売ってほしいだけでゴザるぞ!言い値で買うと言っていると言うに……おぬし、よもや独占する気ではゴザらんな!?」

 

「だからオレっちは情報を売って恨まれるのはゴメンだって言ってるだロ!この情報は売らないんダ!!」

 

「なぜ拙者たちがお主を恨むのでゴザるか!?あのスキルは拙者たちが完成するために絶対に譲れないスキルでゴザる!今日という今日は絶対に譲れないでゴザるぞ!」

 

「わっかんない奴らだナー!あの情報は絶対に売れないって言ってるでござ……じゃない、言ってるだロ!」

 

 

面白い奴らだが様子を見てるのもここらが潮時か……俺がそう思っていると俺達よりも早くキリトがアルゴの後ろから現れた。

どうやら彼ら3人を中心に挟んでいたようだな。

 

……面白くなりそうだ。もう少し様子を見るか……。そう考え、同じく飛び出そうとしているアスナを手で制する。

 

「何奴!?他藩の透波か!?」

 

……奴らいつの時代の設定だ……。幕末の頃でも透波などほとんど使われないぞ……。

 

事実、キリトは良く意味の分かっていないような表情をしている。恐らく隣に居るアスナもそうだろう…………いや、訂正しよう。この少女は理解しているな。苦笑いしながら見ている表情には俺と同じ感想を抱いていそうだ。

 

「あんたら確か……フーガ……じゃなくてえっと……?」

 

「風魔忍者のイスケとコタローでゴザる!よもやお主、我らからエキストラスキルの情報を奪いに来たのではなかろうな!?」

 

…………あれが忍……正直心外だ……忍足るもの目立つわけにはいかないだろうに……。

 

流石に自分と同じ隠密のイメージがアレというのは堪えるな……。

キリトも困り始めているようだ。流石に出るか……。

 

俺は全くの無音で奴らの背後に回り、素早く喉元に曲刀を突きつけつつ抑えつけた。

 

正面から見ていたキリトとアルゴは流石に気付いていたが、2人は気づかぬうちに組み伏せられ喉元には曲刀、更に顔の前には片手剣アニールブレードと細剣ウインドフルーレが突きつけられている。

 

「貴様ら下手な抵抗はするな。前の2人はともかく俺は斬る事に何の抵抗も無いぞ。」

 

2人にしか聞こえないほどの小さな声に凄みを乗せて囁き、2人の手足を縛り上げた。

  

「さて……アルゴ、先程この2人が聞いていた件について聞きたいのだが体術とは何だ?」

 

「あ、それは俺も気になる。体術っていうとやっぱり武器なしの攻撃とかなのか?」

 

アルゴは俺達の顔を見渡した後、溜め息を1つついたが、やがてしゃべり始めた。

 

「おそらくナ。実際にはβ版でも習得者は居ないようだから分からないけど、おそらくは武器なしでの攻撃手段だろうと思ってル。七層でその情報は出ていたからこの2人もそこで二層に有るという情報だけ手に入れたんだロ。でもオレっちは情報を売って恨まれるのはゴメンなんダ。」

 

「なぁアルゴ、さっきメッセージで何でも一つ情報をくれるって言ってたろ?あれ、やっぱりおヒゲの理由じゃなくて体術を売ってくれないか?」

 

ウグッ!そんな声がアルゴから聞こえ、アルゴはなにかを考え出した。

そして怪しく目を光らせながら言う。

 

「確かにキー坊には約束したからナ。教えなるのもやぶさかじゃないけど……アーちゃんとアー坊にはそれ相応の情報も貰わないとナ~。」

 

ニヤニヤ笑いながら聞いてくるアルゴの顔には、暗にあの情報を教えろと書いてある。

 

「ふむ……しかしあの情報には俺達2人分の対価を頂くことになるが?」

 

「ちょっ!?アオシ君!?」

 

アスナが慌てるも俺が耳打ちし、何をする気か伝えると色々表情を変えたが納得した。

 

「ん~……ま、いいカ。……それでそれデ!?どんなことがあったんダ!?」

 

目を輝せて詰め寄るアルゴにアスナと俺が近づき小声で伝える。

 

「アスナがキリトが自分の名を知っている事をキリトに問いただし、パーティーを組んだときに名前がどこに書いて有るのかを聞き出した。」

 

「ふむふむ……それデ?」

 

「それだけだ。」

 

「いやいや、もっと事細かに教えてヨ」

 

「あら、相応の情報でしょう?後々手には入る情報にはこれでも多い位だと思うのだけど?」

 

………………………………………………

 

 

「え?だってあんなに隠していたのに……てっきりキー坊とアーちゃんがキスぐらいしたんだろうと思ってたのに……詐欺だロ?どうなんだヨ!?キー坊!!」

 

「え、いや……それだけだけど………」

 

そのとき、実は後ろで睨みを効かせていたアスナがいたのだが、幸いアルゴは気付かなかったようだ。アルゴが気付いたら面倒だろうな……などと考えていたが、アルゴはそのまま地面に突っ伏したのだからこちらの勝ちだろう。

 

「仕方ない……良いだロ、でも2つ条件がある。一つはオレっちを恨まないこと、もう一つはオレっちから買った事は口外しないことだヨ。それで良いカ」

 

俺達3人は頷くとアルゴに着いていく。

……もちろんイスケとコタローは解放しアルゴを狙わぬよう一言だけ言葉を贈る。

 

「ここで解放するがこの情報を聞く事は許さん。索敵を使用して警戒するからな。いいか、お前達が隠密だと言うならば隠密らしく情報を仕入れろ。」

 

それだけ言うと2人は頷き、索敵範囲外へと姿を消していった。

 

「アー坊にしては珍しく気にかけているみたいだナ。」

 

「……気にするな。ただの気まぐれだ。それに、今のでわからぬようではどのみち奴等には隠密は向くまい。」

 

「言うネ。オネーサン、アー坊の秘密にも興味が湧いてきたヨ。」

 

「探った所で何もないがな。」

 

俺達3人はアルゴの後についてしばらく歩き、おそらくは二層の東端だろう場所にそびえ立つ岩山の頂上付近にたどり着いた。

そこには泉と一本の樹、そして小さな小屋があり、その小屋の脇に1人のNPCが立っている。

長い白髪の長髪を後ろに細く三つ編みにして束ね、鼻下にヒゲをはやした男はこちらを見ると一言いう。

 

「入門希望か?」

 

途端にウィンドウが開き、クエストタブが表示された。

それのイエスボタンを押す。

 

「流派東方不敗の道は険しいぞ。まずはその岩を拳で割るのだ!」

 

途端に現れた岩に触れてみるとその硬度たるやまず無理だろうと思えるほどだった。

 

「いやこれは……」

 

「無理でしょう……」

 

NPCに向かい振り返ると俺達3人の横を一陣の風が吹く。

それと同時に頬に違和感が…………。

 

「修業が終わったら消してやろう。」

 

そう言い、こちらをみるNPCの手には筆が……。

いやな予感がしてキリトとアスナを見るとそこにはコミカルなヒゲが………。

ちなみにアスナはフードケープを被っていたが、さっきの風で剥がされ素顔をさらしている。

そんな3人の沈黙を破ったのは

 

「ニャハハハハハハハ!!……一個だけサービスで教えたげるヨ。その岩……鬼だヨ!!」

 

俺達3人は体術だけでなく、ちゃっかりとアルゴのおヒゲの理由もしれたのだった……。

 

 




多少オリキャラ出させていただきました。原作から少しはずれますがご了承ください。

※9月5日修正済み

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。