ソードアートオンライン~過去からの転生者~   作:ヴトガルド

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お気に入り、感想、評価までありがとうございます。
第10層まではオリジナルとなります。色々と原作にはないソードスキル等でますがご容赦いただければと思います。
※10月2日修正済み


第四層攻略戦

俺達攻略組は第四層に着いて4日目には既にフロアボスの部屋へとたどり着いた。

前の層よりもより早く攻略が進んでいるのはこの層のキャンペーンクエスト“翡翠の秘鍵”第四層版がたったの3行程で終わってしまったからだろう。

 

内容(俺達は正規とは別なので正規ルートでは何をしたかはしらないが……。)は先ずはティルネルと合流する為に霊樹の門へ行き襲われていたティルネルを救出、そのままティルネルを連れて砦に着いたら指揮官から作戦(森エルフから秘鍵を奪う本隊のための陽動。)に参加するよう言われ、敵部隊と交戦し、作戦成功後、ティルネルを本隊に連れて行く任務を行った所で第四層翡翠の秘鍵クエストは終了した。

 

ちなみにまたもやキズメルとはすれ違ってしまい、ティルネルはキズメルを追って第五層に先に行ってしまった。

 

そんなこんなで初日の深夜にクエストを終えた俺達は同じくクエストを終えたキリト、アスナと再会し、手に入れたフロアボスの情報を交換した。それによるとこの層のフロアボスに変更はほとんどなく、以前との違いは防御力が高いという情報だけだった。

その後は俺達も攻略に尽力した。その結果二日目にはフィールドボス戦を終え本日の夕方、キバオウ率いるアインクラッド解放軍がフロアボスの部屋を見つけたのだ。

 

そして恐らくはこの後ボス戦へ入るだろうが1つ懸念がある。

二日目に終了したフィールドボス戦での事だ……。

 

 

 

 

四層フィールドボス“シャドー・ザ・ヒューマン”

 

討伐パーティーの数だけ増えたそのボスを今回7パーティーで相手どったのだがメンバー全員と全身が黒い以外は全く同じ姿、動きで襲いかかってきたボスに全員混乱し、大部隊戦は混沌の中で進む。

かなりのステータスと厄介さを持つボスだったがソードスキルを一つしか使えず、プレイヤーと違い応用は効かない所と、ボスにしてはとても低いと言えるHPが救いだった。

とはいえコピーしたプレイヤーと同じレベルの回避や攻撃速度の速さ、体裁きは十分すぎる苦戦を攻略部隊に強いている。

 

 

 

ほとんどの者はそれぞれ自分とは違う敵を相手取る事で戦闘スタイルの隙をつくようにしているが、それでもリンドやキバオウのような強いプレイヤーの影には特に手こずっているようで押され始めていた。

 

そんな中、自分自身を相手にしているプレイヤーが3人、キリト、アスナそして俺は他のプレイヤーへ自分の影がいかぬように闘いを進めていた。恐らくはこの3人の影を放置すれば他のプレイヤーへの被害を多大に出してしまうだろう。

 

元々アルゴの攻略本やキリトの情報ではこのボスはパーティーの中で一番レベルの高い者1人にしかコピーをしない為、多人数での攻略が推奨されたのだが……。

 

「これではフロアボス以上だな……。」

 

「アオシさん!ナーザさんがクフーリンさんのシャドーにやられそうです!どうしますか!?」

 

「ユキナはナーザと2人でクフーリンシャドーを倒せ。その間は俺がオルランドシャドーを受け持とう!」

 

パーティー内で唯一手のいらなそうなのは後方支援タイプのナーザシャドーを相手をするクフーリン位だろう。ベオウルフ、オルランドは指示される前にペアを組んで対処しているようだ。

 

ちらりと辺りの様子を見ると他のプレイヤーも同じようにペアで対処しているようだ。2対2の戦闘ならば安全性は増すだろう。

キリトもアスナも手こずってはいるようだが2人が組み始めてからはかなりの連携精度を発揮して高レベルの応酬を繰り返しているようだ。

 

 

逆に俺は2人を相手にしては勝ち目はない。ユキナとナーザが早く倒してくれる事を祈るしかないな……。そう考え目の前の敵に集中する。どうやら俺のコピーはソードスキルを曲刀カテゴリー基本剣技“リーバー”しか使えないようなのでワザと発動させて隙をつきつつ、もう一体に攻撃を加えていく。こちらのプレイヤースキルは出来るだけ隠したかったが使わなければ確実にHPを削られてしまう。

 

流水の動きで実体をくらませつつ通常攻撃を放ち少しずつオルランド・シャドーのHPを減らすがやはり自分の影だけあり、俺のコピーは流水の動きに対しても的確に攻撃を当ててくる。

恐らくはあのソードスキルを使ってもオルランド・シャドーを倒すまでに全体の七割は持って行かれるだろう。いや……もし俺の影がこちらのソードスキルに対してソードスキルを合わせてくれば倒す前にやられる可能性も……。

 

そう考え極力防御に徹する事にした。武器を上手く使うことで攻撃を逸らし、弾く。とはいえかなりまずい状況だ。このままではいずれ……。

 

そう考え始めたとき、俺の背後から隙間を縫うかのように肉厚の槍が放たれオルランド・シャドーのライフを大きく削る。

更に俺に攻撃しようとしていた俺のシャドーも飛んできた武器に腕を捉えられ中断される。その隙をねらい俺は素早く四度の斬撃を撃ち込んだ。

 

体勢を崩したアオシシャドーを追撃の技が襲う。ユキナの放つ槍のソードスキル“インパクトストライク”だ。彼女はセッカロウ固有のソードスキルであるストライク系のソードスキルを操る。

それの威力は斧並み、更に刺突の速度はアスナのリニアーに迫るほどのものを持つ。

しかし単発ソードスキルですら硬直時間が長く、おおよそ1秒程のシステム的硬直を要するため前衛としては戦い辛い技だがパーティー戦でのフォローでその真価を発揮する。

 

俺は後ろからユキナに斬りかかるオルランドシャドーの攻撃をはじき、それと同時にナーザがアオシシャドーへ投剣スキル基本技“シングルシュート”でトドメを刺した。

残るオルランドシャドーもまた硬直の解けたユキナの現在もつ最強のソードスキル、3連撃技“ストライク・バースト”を放つ。硬直時間3秒という長いデメリットを受けるがそれに見合う威力を誇るその技は残り七割近くあったオルランドシャドーのHPを削り切った。

 

「よし、ナーザはオルランド、ベオウルフの援護にいけ。ユキナは辺りの様子を見つつ押されている所だ。俺も辺りを援護する。……ナーザ、他のパーティーメンバーにも倒し次第フォローに入るように指示を頼むぞ。」

 

指示を聞いた2人は即座に行動を開始し俺も辺りを見る。流石にこの層まで前線で戦うメンバーはしっかり連携しているようだが恐らくこの層から攻略組に加わったパーティーとキリト、アスナが加わったドラゴン・ナイツ、アインクラッド解放軍の混合パーティーも苦戦しているようだ。

 

ユキナが新規のパーティーの方に向かうのを確認した俺はキリト達のパーティーの加勢に入った。

 

キリト、アスナは恐らくは問題ないだろうと考え、他の四人が相手取っている所に加勢し一気に形勢を変える。

その結果ものの5分程で敵シャドーを倒しきった。

 

その頃には約半数のシャドーを倒しこのまま犠牲0で終わるだろうと思っていた時に異変に気付く。

キリト、アスナのHPが黄色まで削られている。確かあそこにはドラゴン・ナイツ、アインクラッド解放軍のメンバーが加勢しに行ったはず……。

様子を見ていると加勢に入った2人は何度かの攻防の途中でキリト、アスナへ攻撃を当てていた。恐らくは敵の射線上に重なったときに通常攻撃がたまたま当たっているだけだろうが2人のHPを見る限り一度や二度では無いだろう。

 

俺は即座にそちらに救援に入るべく動き出したが入る間際に敵シャドーはポリゴン片へと姿を変えていた。

……加勢に入った2人も何もいわずに他へ行ってしまった。

 

「2人とも大丈夫か?」

 

「あぁ……なんとか。あの2人連携を知らないんじゃないか?」

 

「そうね。途中キリト君が私へ当たる攻撃を防いでくれなかったら危なかったかも……。」

 

見れば2人とも危険域ギリギリだ。恐らくはアスナもまたキリトをフォローしたのだろう。どうにか全損は免れた2人にポーションを渡すと2人は礼をいってそれを飲み干した。

 

「2人はとりあえず回復するまでは休んでいろ。この戦況ならば後は問題有るまい。」

 

事実その5分後には全てのシャドーは倒しきり第四層フィールドボス戦は犠牲者0で終わったがその戦闘の中で攻略組に巣くう毒の可能性のあるものが見つかった。ジョーとジン。この2人のことは調べる必要がある。

 

 

 

 

 

 

そうしてアルゴに調べさせた情報は未だPoHとは繋がってはいないが今回のフロアボス戦で動く可能性は十分にある。

警戒しておく必要はあるだろう。

 

攻略会議では今回も翡翠の秘鍵クエストの報酬で得た情報とアルゴの攻略本を参考に行われたがやはり特に変更点は無く、ボスのステータス、特殊攻撃も無しとのことだ。

最もだからといって手を抜いたり油断する事は厳禁だろう。

 

今回も8パーティー48人集まり討伐に当たる。

リンド、キバオウ共にギルドメンバーを増やしていたがそれらのプレイヤーはまだ前線で戦うには心許ないらしく今回は参加させないらしい。

恐らくフィールドボス戦で新規参加でのパーティーがかなり危なくなった事が影響しているのだろう。

今回のボス“ザ・ジャイアントタートル・ロード”の討伐は明日の朝10時から行われる事に決定し会議は終了となった。

 

 

 

 

翌日、俺達ギルド御庭番衆からは俺、コタロー、ユキナ、オルランド、クフーリン、ベオウルフの6人が攻略戦に参加することになった。

このメンバーになった理由は単純に火力の問題だ。ナーザは主に投剣スキルによる敵の攻撃の中断を目的にした能力構成の為今回のボス戦には不向きということでパーティーを外れてもらったのだ。

 

 

第四層フロアボス“ザ・ジャイアントタートル・ロード”は高さ7メートル、横幅5メートル、長さ10メートルと過去に類を見ない程の巨大ボスだったが変わりに同時攻撃可能パーティー数も6パーティーと多く攻撃力こそ高いが動きは遅く、唯一警戒すべきスピン攻撃もほとんどの者が受けることなく順調に攻略は進んだ。

 

 

 

トスッ

 

 

「なに……?」

 

ボスの放たれた体重をかけた一撃が俺を襲う。突如背後から放たれた細い鉄矢は正確に膝間接に刺さっている。

結果後ろに跳ぼうとした動作に失敗し転倒してしまった。

そこに放たれたボスの一撃は俺のHPを一気に七割以上削り取る。

今までかわしていたその一撃にはさらにもう一つ、追撃の特殊攻撃が存在する。水棲系モンスター特有の必殺技“ダイダルウェーヴ”

手足と頭を引っ込めそこから噴射される高圧の水を纏いながらスピン攻撃を繰り出し辺り一面を吹き飛ばす。おおよそ食らうはずの無い攻撃パターンにレイド全体が焦りを浮かべる。

この攻撃の最大の対処法は抵抗しないことであるが、抵抗しないというのは命懸けの状況では意外と難しいのだ。

 

打ち合わせ道理対処できた者は大したダメージを受けずに吹き飛ばされだが数名の者が慌てて盾を使って防御姿勢をとり、そのライフを全損させた。

 

第一層以来の死者は2名、共にアインクラッド解放軍からだった。

この攻撃を引き出すことになってしまった俺はなんとか一割弱のHPを残し生き残る事になった。

 

その後は問題無く攻撃しコタローが最後の一撃を食らわせて第四層フロアボス、ザ・ジャイアントタートル・ロードはその身体をポリゴン片へと変えて爆散した。  

 

 

「く……なんでや!事前に万が一の時には耐えずに受けるゆうとったやないか!……バリー……ブラッド……クソッ!」

 

涙ながらに地面を叩くキバオウに皆が沈黙していた。いや……悼んでいるのだ。死んでしまった2人、バリーとブラッドを……。

 

「オレ、オレ知ってる!アイツはワザと攻撃を食らったんだ!!だってよけれないわけ無いだろ!?」

 

沈黙を破る金切り声が俺を指さしている。ジョーだ。……いや、本名ジョニー・ブラックと言ったか。

彼はキーキーと大声で喚き、他のプレイヤーもざわめき始めた。

一度会った光景だ。第一層でキリトが責められたら時と同じ流れ。そういえばあの時もジョニーは同じように叫んでいた。

 

「……ジョー、黙っとき!……アオシはん。ちとこっちにきてんか?リンドやアオシはんのパーティーメンバーもや。」

 

素直に全員がキバオウに連れられボス部屋の端に行き他のメンバーから距離をとる。

 

「アオシはん……あんとき何があったんや?アンタほどのプレイヤーがあんな所で転倒しとるんはおかしいやろ。」

 

「そうだ。ジョーさんじゃないがあれでは故意にやったと見られてもおかしくはないんじゃないか?」

 

「……あの時避けようとしたら後ろから鉄矢が飛んできた。恐らくは……」

 

「飛んできた方向にあったのはD隊でした。恐らくはその中の誰かだと思います。」

 

「鉄矢……だって?」

 

訝しげな顔をするリンドに俺は刺さっていた鉄矢を渡す。……D隊はリンド率いるギルドドラゴン・ナイツで構成されるパーティーだ。

 

「……分かった。こちらで調査しておこう。」

 

「どうするんや?ここでやるっちゅうんはマズいやろ。下手に動けばリンドはんのギルド自体が崩壊してまうやろ。」

 

「キバオウにリンド、ついでだ。我ら御庭番衆としては今PoHと繋がっている可能性の有る者を調べている。」

 

「私達が今可能性の高いと考えているのはドラゴン・ナイツのジンさん。それにアインクラッド解放軍のジョーさんです。」

 

「無論確定してはいない。とはいえ2人ともフィールドボス戦では危うくプレイヤーを殺しかけている。警戒するのには充分な理由だろう。」

 

2人は苦虫を噛み潰したかのような表情を見せるもすぐに表情を隠し、頷いた。

 

 

「ここはわいが許すゆうんが一番波風立てないやろな……。」

 

そう言いキバオウは他の攻略組の待つ場所に戻っていった。

 

「君達の見解では今回の件はやはり……?」

 

「あぁ。俺達の見解ではジンだろうと考えている。」

 

「そうか……」

 

リンドも多少思うところがあるようで複雑な表情を浮かべてからそう言った。そして本隊に戻りメンバー達に何かを伝えていく。

 

やがて本隊のメンバーを見るとほとんどの者がキバオウ、リンドに連れられ次の層へと向かっていった。

 

残っているキリト、アスナ、エギルに今回の事の顛末を伝えるとエギルからキバオウ、リンドの説明を聞かされた。

 

彼等は単純に俺がたまたま足をもつれさせたと言う説明で通したのだ。

多少の反論もあったようだが他ならぬ俺自身が死にかけている事もあり大半は納得したらしい。

 

恐らくは次層以降は当たりが強くなることは覚悟せねばなるまいな……。

そんなことを考えながら新天地、第五層の地面を踏みしめた。

 

 

 

 

 

 

 

 




更新の間開いてしまい申し訳ありませんm(_ _)m末から月初めは仕事の関係で遅れることもありますが極力更新しますのでよろしくお願いしますm(_ _)m

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