ソードアートオンライン~過去からの転生者~   作:ヴトガルド

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※10月2日修正済み


翡翠の秘鍵

リンド、キバオウが去った後、約束通りユキナを連れレベリングを行いにギルド結成クエストで訪れた事のある蜘蛛モンスターの巣の洞窟に訪れた。

 

彼女の戦闘はヘラヘラした男、モルテとのデュエルしか見ていなかったがなかなかに身のこなしも良く、槍の攻撃力とあいまって危なげのないレベリングを行えている。

 

「ふむ……その身のこなしならばもう少し先にいるネームドボスを狩るのもいけそうだな。」

 

「はい!よろしくお願いします!」

 

いい返事をして付いてくるユキナと共にこのダンジョンのボスを狩る。

ボス戦でも俺はさほど手伝う必要はないようだ。元々βテスターだったこともあり、動きに無駄がない。これならばボス戦でも十分な戦力になるだろう。

 

俺達はちょうど1づつレベルを上げ宿屋に戻った。

ナーザ達も同じく狩りを終えたようで宿屋で合流し、明日はユキナのパーティーとして翡翠の秘鍵クエストに参加することになった。

そして深夜……俺はまだメンバーに話していないスキル《創始者の心得》の熟練度上げを行う。

このスキルについてはアルゴに検証を頼みはしたが俺のようにソードスキルを使わずに前線で戦うような者は居ないため1から検証するそうだ。

またこのスキルの熟練度上げは自らが作ったソードスキルを使用しないと上がらないようで熟練度が上がるとどんな効果が有るのかも未だ不明だ。

 

今、俺は曲刀を二本装備している。この世界では両手に武器を装備することそのものは不可能ではない。その代わり一切ソードスキルが使用できなくなると言うデメリットが発生する。

俺はこのスキル《創始者の心得》で過去に使っていた小太刀二刀流が使用できるのかを試したかったのだ。

もっとも肉体的スペックの問題で“回転剣舞・六連”は恐らく無理だろうが……。

 

試した技は“呉鉤十字”二本の小太刀を鋏のように使い、相手を斬り付ける技だ。過去の自分の技に比べればやはり瞬間的速度が遅い。

そして体感した感覚と同じ様にソードスキルの発動はなかった。

一応他の技も試してみるもやはり不発。肉体的スペックのせいなのかそれとも熟練度か、はたまたシステム上不可能なのかは分からないがとりあえず現在俺が使用できるソードスキルは片手武器一本、つまりは回転剣舞、回転剣舞・朧、回転剣舞・剛の3つのみになるようだ。

3つとも元々使用していた技の上、スキルのおかげでシステム上の硬直は無く、充分実戦に使えるができる限り奥の手は隠しておきたい。

 

深夜も遅く熟練度も10程は上がったところで宿屋に戻る。

そして約三時間ほど睡眠をとった。

 

 

 

次の日の朝、ユキナの案内で黒エルフの野営地に来た俺達はユキナと行動を共にするというエルフに引き合わされた。

そのエルフが敵であるらしい森エルフの鷹使いに襲われていたところを助けた所このクエストが始まったらしい。

何でも本来は黒エルフと森エルフの2人の剣士の戦いに介入する事で始まるクエストらしいが何故か違ったルートからの参加してしまったらしくおかげでβ時代の知識も役に立たず苦労しているらしい。

ただその代わり黒エルフ“ティルネル”が仲間に加わり、ダメージを無制限に回復するポーションを格安で売ってくれるとの事だ。また戦闘中にも回復や解毒を行ってくれるらしい。

 

ならばそのポーションの転売で儲かるのでは?と考えたがこのポーションはエルフのまじないで本人にしか効果はなく売ることもトレードする事も出来ないそうだ。

 

とはいえ恐らくかなりの上層でしか手に入らないだろう全快復のポーションはかなり重要だ。少なくとも買えるだけ買っておく方が良いだろう。

 

ティルネルが加わり、ユキナ、オルランド、クフーリン、ベオウルフ、ナーザ、そして俺の7人はまずは素材をしっかりと集めていたことを確認し鍛冶屋に向かう。

 

「す、すいません……あの、僕のこのチャクラムをインゴットにして貰えますか……?」

 

かなりずんぐりとしたまるでドワーフのようなエルフの鍛冶屋はフンッと鼻息を一つしナーザからチャクラムを受け取る。

 

受け取ったチャクラムをインゴットに変えた後にナーザから残りの素材を受け取り、武器の生成に移った。

どうやらチャクラムから作ったインゴットを使えば同じくチャクラムを作れるらしい。

 

やがてかなりの鎚音が響いて出来上がったチャクラムはアスナやユキナの武器ほどではないもののかなりの強さであろう武器のランクになった。

 

その後も特にすごく強い武器ではないがそこそこ強い武器を手に入れた。

ちなみに俺の曲刀は作成された中では一番低いスペックではあったが形が気に入った。

刀に比べれば若干反りは強いが他の曲刀に比べれば遥かに刀らしい。

固有名“サムライブレード”名が示すように刀をモチーフに作られた曲刀なのだろう。しかも基礎スペックこそ低いが強化枠は20とかなり多い。聞けば本来強化枠とスペックは比例するらしいので特殊武器に分類されるそうだ。

 

多少の強化を終えた俺達はそのままユキナ版の翡翠の秘鍵クエストを始める。

 

何でもユキナの話では次は七つ目らしく後4つのクエストでクリアできるらしい。

クエスト内容は収集、ポーションの材料をそれぞれ50ずつ収集するソロでやるにはかなり面倒な内容のものだ。

最も今回はフルパーティ、一時間程度で片付ける。

 

続く8つ目は護衛だった。ティルネル達薬師がポーションを作る為に向かう洞窟間での往復の道のりを護衛するといった内容だ。薬師達はHPがとても低くかなり難易度の高いものだった。実際、10人居た薬師のうち3人を戦死させてしまった。

残る薬師達は気丈に振る舞いポーションを作ってクエストはクリアとなった。

 

9つ目は戦闘だった。ポーションを盗むために来る森エルフの大部隊を野営地に入れさせずに殲滅するというクエスト。正直大部隊の人数も50人と普段では有り得ない敵の数からかなりの激戦となる。

 

黒エルフの偵察部隊によると敵の構成は鷹使いが主力で回復部隊が10人だそうだ。

鷹使いはアルゴの攻略本ではイベントエンカウントしかしない三層最強のモンスターらしい。

名前の通り鷹を第2の武器として扱い空と地上からの連携攻撃が厄介な敵だ。

この敵の対処としてアルゴが上げているのは鷹を投剣スキルで落とす事となっている。

鷹は攻撃力は最低クラスだがこちらの攻撃やソードスキルを中断させる特殊能力を持つ。無論独立してはいないので鷹使い本人がやられれば一緒に消えはするが1対1ならともかく多数を相手にするならリスクが高すぎるだろう。

鷹をナーザにまかせるのが最も危険が少ない。よってこちらの作戦はナーザを残り4人でガードしその隙に鷹を潰す。

俺は一度に全ての敵がこないよう遊撃しつつ出来るだけ回復部隊を潰す作戦になった。

 

 

戦闘は作戦通りに進み、こちらの損害は0に抑えつつ敵の大部分を倒すことに成功した。

残り10人程になると奴らは撤退したのだ。正直此方も壁に慣れてないユキナがHPを危険域まで落としたことがあり追撃は行わなかった。

それでもクエストはクリア、俺を除く全員がレベルを上げ、ユキナに至っては2レベルも上がっていた。

 

 

そしてこの層の最後のクエスト内容は宅配系クエストで作成したポーションを他の野営地に届けると言うものだった。

 

一緒に付いてくるティルネルと共に後二つ有るという野営地へ赴く。

 

1つ目の野営地に半分、そして2つ目の野営地では俺達は知り合いに遭遇した。

 

「ア、アオシ!?なんでこのインスタントマップに!?」

 

「キリトか……翡翠の秘鍵クエストをしていてな。ここに全快復ポーションを宅配してクリアなんだ。」

 

「アオシ君達もこのクエストしてたのね。私達はちょうど今この層のクエストを終わらせたの。次の層ではまたやるけどね。キズメルと再会の約束もしたんだし。」

 

「……待ってください。キズメルってまさかダークエルブンロイヤルガードのキズメルですか!?」

 

「そうだけど……君は?」

 

「私の名前はティルネル、キズメルの双子の妹です!姉上はどちらにいるんですか!?」

 

「ティルネルさん!?アナタが!?だって……あ、そうね、キズメルは第四層の黒エルフの砦に行ったわ。なんでも森エルフとフォールンが手を組んでいるのを見て焦りがあったみたい。」

 

アスナは何かを言おうとしたがキリトが無言で遮り、ティルネルの聞いてきたキズメルという黒エルフの行き先を教えた。それを聞いたティルネルは黙り込み暫く考えたかと思ったら急にこちらを向く。

 

「すいません、皆様。私はこれよりこちらの司令官とお話をして残りのポーションを上層の砦に届けます。皆様には申し訳ないのですがその事を私達の野営地の司令官に伝えていただけますか?きっと報奨が頂けるはずですから。」

 

「あ、はい!でもティルネルさん。1人じゃ危ないんじゃ……?」

 

「大丈夫です。それに上層に上がるための霊樹の門はリュースラの民にしか使えませんから。」

 

そういうとティルネルは司令官のいる建物に入り、その後すぐに光の柱の中を通っていった。

 

「キリト、先程アスナの言わんとしたことはなんだ?おまえ達は何に驚いた?」

 

「俺達と一緒に行動したキズメルの話ではこの層に降りて最初の戦でティルネルさんは鷹使いに殺されてしまったらしいんだ。」

 

「……つまりゲーム内での矛盾ですか。」

 

本来ならばひと月前に死んでいたはずの妹が助かるフラグがたつ。というよりも恐らくは繰り返し行われることなんだろう。現実との違いがここをゲーム内と強く思わせる。

そう、ここはリアルではあるがやはりゲームなのだ。だが、だからといってそう考えるのは危険しかない。……現実と同じく死ねば死ぬのだから。

 

キリトから予定では今日の夕方攻略会議があり、早ければ明日にはフロアボス戦が有ることを伝えられる。

俺達はしばらくの間野営地にこもり、抜けているコタロー、イスケにもPoHの動向調査を依頼していた為、その情報は知らず、かなり助かった。

 

 

キリト、アスナと別れた後俺達も翡翠の秘鍵クエストをクリア、報奨のコル、経験値の他にマジックアクセサリー“翡翠の指輪”を人数分もらう。スキル熟練度の上昇に僅かにボーナスが付くものでかなりのレアアイテムである。

さらにフロアボスの情報をもらう。

 

ボス固有名

“ネリウス・ジ・イビルトレント”

巨大な樹木型のモンスターでHPが減ると広範囲毒化スキルを使用する。

また取り巻きは居なく、防御力が高いが身体の至る所に有るコブが弱点だそうだ。

 

 

俺達はコタロー、イスケ分の武器も鍛冶屋に作ってもらい野営地を後にした。

作成された武器は攻撃力もそこそこな上にコタローは毒の付加効果、イスケは麻痺の付加効果付きというかなりのものに仕上がった。

 

続く攻略会議ではキバオウからキリトに情報提供の促しがあり、キリトは毒に気を付けるよう言われたことを伝えた。

 

そこに付け足す形で俺もフロアボスの情報と翡翠の秘鍵クエストの特殊版について、更にエルフ野営地での作成武器の有用性についての情報提供を行い、会議は終了。

 

会議後コタローからPoHの動きについて報告があったがそっちに関しては進展はなくイスケもモルテという男がキリトとデュエルしたことの報告のみだった。

 

ボス戦は会議の翌朝に開かれ、特に危険な場面もなく一時間足らずで攻略し、第四層への扉が開いた。

……今回の攻略戦でも不穏な動きをする者が現れるものと考えていたが杞憂に終わり全く問題無く攻略戦は終了。

 

……恐らくは今回表に出たことで暫くは身を潜めようと考えたのではないかと推測する。

不安を残す形のまま俺達は第四層へと足を踏み入れるのだった。




ティルネルさんの生存ルートは作ってみましたがよくよく考えると秘鍵の秘鍵は一度もみれてないですね。
四層以降はオリジナルの想像と今までよりも一層辺りの話数は減らそうかと考えています。
とりあえずどこまで飛ばさずに書いていけるかは自信有りませんがお付き合いの方よろしくお願いします。

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