ソードアートオンライン~過去からの転生者~   作:ヴトガルド

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※10月2日修正済み


第三層攻略会議

翌日、俺達は駆け足でギルド結成クエスを済ませた。

幸運なことにユキナはβ出身で以前もこのクエストを行っており、前日よりも遥かに速いペースでクエストをこなせた。

おかげで攻略会議開始の一時間前にはギルドを結成する事が出来たのだ。

 

ギルド名“御庭番衆”

 

その理念は“人々と共にあり人知れず守護するもの”だがまぁそこは後々に行うしかないだろう。

人数を増やせばいいが下手なものは入れられないし入れたくはない。

少なくとも俺が見定めねば……。

 

メンバーは8人だがイスケには入団をしないように頼んだ。

このゲームでは所属するだけでHPバーにギルドアイコンが付いてしまうからだ。

 

イスケには本当の意味で隠密・御庭番衆として動いて貰いたいのだ。

おおよそ真っ当なプレイヤーでは取らないスキルを持ち情報収集をきっちりして貰う。

本当の意味で最重要なものだ。無論レベリングも大事なのでボス戦に参加しない分他のメンバー以上にして貰うことになるが……。 

 

ズムフトで装備を整えている際に知ったがユキナの装備している武器はこの層ではあり得ないほど強い武器だった。

固有名“セッカロウ”

他のメンバーの装備している武器のゆうに倍はあるそのスペックはレベルの低いユキナの攻撃力をギルド内で、もっとも高い物にするほどだ。

 

「ユキナ殿、その武器はどこで手に入れたのだ?我らの使う武器もそれぐらいの物に出来ぬだろうか?」

 

「えっとですね……この層から始まる大型キャンペーンクエストで《翡翠の秘鍵》って言うのが有るんですけどそこの鍛冶屋さんが低確率ですごく強い武器を打ってくれることがあるらしいんですよ。」

 

「ふぅむ……アオシ殿、会議の後に我らもそのクエストをやってみるのはどうだ?戦力は高いに越したことはあるまい。」

 

「……ユキナ、それは個人クエストなのか?」

 

「あ、いえ、私とパーティーを組めば後五人は参加できます。それにパーティーメンバーの入れ替えも一応効くと思いますよ。」

 

「ならば俺達も参加してもかまわぬか?」

 

ユキナはこくこくと頷き、オルランド達はかなり喜んでいるようだ。まぁ実際戦力は強化するに越したことはない。やつらへの対抗戦力として機能させなければギルドを発足させた意味がないからな。

 

攻略会議の時間となり俺達はズムフトの広場へと向う。

 

広場につき会議が始まる前にキリト、アスナ、エギルと再会を果たした。

どうやらこの層でもキリトとアスナはコンビを組んでいるようだ。

久々の再会で情報交換を出来るかと思っていたのだが……

 

「こ、攻略組唯一の女性プレイヤー!!あなたがアスナさんですか!?私、あなたの噂を聞いて前線で闘うことにしたんです!握手してください!!」

 

「え、えぇ!?あ、アオシ君この子どうしたの!?」

 

ユキナに手を握られ困惑の表情を浮かべながらこちらをみるアスナに両手をブンブン振るユキナ、更にはそれをほんわかと見ているキリトにエギル……。

 

「うちでしばらく匿いながらレベリングする事になったメンバーのユキナだ。」

 

「ん?……ギルドアイコン……ってことはギルドを作ったのか?」

 

「その事にも関係するのだが後で話がある。かまわぬか?」

 

「ん……あぁ、まぁ構わないけど……」

 

ちょうどそこでリンドが広場の中央に立ち会議を開始したのだ。

 

今回の会議の内容は単純にリンド、キバオウが率いていたドラゴン・ナイツとアインクラッド解放軍が正式にギルドになったという報告と募集だ。

 

「さて、現状この場に居るのは皆、うちのやキバオウさんのギルドの募集条件は満たしていると思う。どちらに所属して貰ってもかまわないが少し条件がある人たちがいる。」

 

リンドはそういい放つとこちらに視線を向けた。

恐らく……キリトの事だろう。

 

「キリトさん、アスナさん、それにアオシさん。あなた達3人が我々のギルドに入るなら……いや、より正確にはキリトさんは個人で、アスナさん、アオシさんはペアでしか我々は受け入れられない。キリトさんは一層や二層でLAをとっている上にプレイヤースキルやレベルも最高クラスだし、アスナさんも同じだ。LAをどちらがとっているのか分からない以上同じギルドに入られては拮抗している二つのギルドに偏りが出てしまう。アオシさんに関してはオルランドさん達と組んでいるしね。」

 

……何故俺にも話が飛ぶのかはよくわからないが恐らく今回はキリト、アスナの二人を分けたいのが本音だろう。俺の理由はエギルにも通じているのだから。

 

「えっと……そもそも俺はギルドに入るかつもりはないよ。それにアスナはLAはまだとっていない。だからその前提はおかしいんじゃないか?」

 

「いや、やはり攻略組の中で2人の実力は頭一つ抜けているだろう。だから入るなら2人は別々のギルドに所属して貰いたい。……だが、入らないならば確かに問題はない。ちなみに何故ギルドに所属しないのか理由を教えて貰えないか?」

 

「理由……っていってもなぁ……単に性に合わないってだけなんだけど……。」

 

「性に合わないとは団体行動がか?では自分で立ち上げる気もないと?」

 

「いや、メンバーですらやっていけるかわからないのに自分で立ち上げるなんて無理だよ。」

 

……なるほど。要はキリトがギルドを立ち上げないように釘を刺したいのか。

だがリンドよ、お前は分かっていないんだろうがキリトはともかく隣のアスナを怒らせているぞ。

 

彼女の纏うオーラが今まで感じたことのない程までに剣呑になっているのが少し離れている俺にもわかるのだ。キリトは流石に気付いているだろう。

何とかしてくれればよいが……。

 

「アオシさん、エギルさん達は所属しないのか?」

 

「悪いが俺も俺のパーティーメンバーもパスだ。俺達も性に合わないんでね。」

 

巨漢のエギルがそう答えるとリンドは頷きこちらを向く。

俺はリンドの方へ歩き出し中央に向かった。

無論他のギルドに属する気は無いがせっかくの機会だ。俺達、御庭番衆の意味を知らしめておくのも必要だろう。

 

「すまないが少し時間をいただこう。かまわないだろう?」

 

「なんや、急に出張りよって……ギルドアイコンやと……?」

 

「お前たちが宣伝しているのに俺のギルドが何も宣伝しないというのもおかしいだろう?」

 

正論で返した事もあり、2人は何も言い返さない。多少表情に面白くないと書いてはいるようだが……。

 

「つい先程発足したギルド“御庭番衆”だ。この場を借りて宣言しておこう。我々は人の道を踏み外す者達に対抗するために結成したギルドだ。故に募集条件も俺が信用できる者のみにさせていただく。もしも所属したい者は少なくとも俺に認められるようにこの世界を生きてくれ。以上だ。」

 

まばらな拍手を受けた後俺はリンド、キバオウの方に歩いていく。

幸い今は2人だけが広場の中央に居るので都合がいい。

2人にしか聞こえ無いほどの小声で2人に囁きかける。

 

「攻略組に鼠が紛れている。後で詳細を伝えるから内密に俺の宿屋に来い。」

 

そして自然に見えるよう3人のギルドマスターが並びそのまま会議はつつがなく終了した。

 

俺は2人にフレンド申請をしその場から離れ、キリト達の方へ向かう。

アスナのオーラが消えているところを見るとキリトはうまくやったのだろう。

 

そしてキリト、アスナ、エギルにも情報を共有しようと声をかけるとキリトが街の外まで来るように言うのでとりあえず着いていく。

 

ユキナを除くメンバーは狩りに行くようなのでキリト、アスナに俺が声をかけ同行しているエギルとなぜか着いてきたいというユキナが着いてきた。

 

 

 

 

しばらく歩きズムフトからでて少しだけ森を進んだところでキリトは止まりこちらを振り向く。

 

「ちょっと、どうしてここなの?別に話を聞く位の時間はあったじゃない。」

 

そういうアスナに何かキリトは耳打ちをし、アスナは一瞬目を見開いたが少し辺りを見渡して頷いた。

 

「それで情報っていうのはなんなんだ?」

 

「黒ポンチョの男の件だ。昨日の深夜俺達は奴らを発見し、ある程度の情報を得た。まず奴の名は“PoH”だ。デュエルを使って名前を確認したから間違いない。それに奴の目的だが恐らく攻略組の壊滅、もしくは疑心暗鬼にして攻略そのものの継続不可だろう。」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ。それで奴に何のメリットがあるってんだ?いくら何でも……。」

 

キリトが声を挟むのと同時にエギルも頷き続く。

 

「そうだな。デメリットの大きさに対してメリットが余りない。単純に愉快犯とかの方が現実的じゃないか?」

 

「既に第二層ボス戦の際に奴らは動いている。正直あの時おまえ達が無理を押して動かなければ壊滅していただろう。」

 

「え……!?それって……まさか!?」

 

「そうだ、奴の仲間が既に攻略組の中に最低でも2人、ひょっとしたら3人入り込んでいる可能性がある。」

 

「バカな……ここにはいるほどの高レベルな人間がそんな奴の仲間になっているのか!?」

 

アスナの問いに答えた俺に今度は信じられないといった顔をしたキリトが問い詰める。

 

「事実だ。それにPoHの方もプレイヤースキル、レベル共に確実にトップクラスだろう。実際奴が引かなかったら俺が死んでいたかもしれん。」

 

今度は3人が3人ともに驚愕の表情を浮かべる。レベルでいえば俺も攻略組の中でもトップクラスの人間だ。それを殺せる程の敵と言うのは脅威以外の何者でもない。

 

「だが……お前さんを殺そうとまでしたのなら奴のカーソルはもうオレンジだろう?それなら装備やアイテムの補充も出来ないしはずだ。それならその内力尽きるんじゃないか?」

 

「いや、今のところ奴らは殺す時はデュエルか第二層ボス戦のようにモンスターに襲わせる手法をとっているようだ。事実、俺とデュエルをしてお互いに相手を殺せる状態になった。」

 

「厄介ね。私達対人戦には慣れてないもの。でも……それならデュエルを受けなければいいのだし攻略組に紛れているのを見つけたらそれで終わるんじゃないの?」

 

「いや、アスナ、これはもっと深刻だよ。今後いずれはオレンジの回復手段が出るはずだ。そうなればヤツらはプレイヤーを狩り始めてしまう。更に仲間を増やしでもしたら……。」

 

「うむ。そうゆうことだ。無論、奴のプレイヤーネームは晒すつもりだが問題はキリトの言うように奴らがオレンジを気にしなくなった際にほとんどの人間が奴らに勝てないことが問題なのだ。」

 

「となると対策としては組織間の連携強化、それにプレイヤースキルの向上ってとこか?」

 

そう、奴らの狙いの一つ、攻略組の瓦解というのは組織間が争っている構図があるからこそのものだ。

組織同士が一丸となれば自ずと鼠も見つりやすくなるし、奴らも手を出せなくなってくる筈なのだ。

 

「この後リンド、キバオウとも話し合いの場を設けている。その場で現状を伝えるつもりだ。」

 

「でも……彼らが簡単に和解するというのは想像がつかないわ。多分躍起になって奴らを捕まえようとするんじゃないかしら?」

 

……確かにあり得る。

 

「いや、そんな事をして攻略を疎かにはしないだろう。彼らは良くも悪くもディアベルの影響を強く受けている。攻略での競い合いはしてもプレイヤーを追い回すのに本気にはならないはずだ。まして自分たちの懐にスパイがいるんじゃ尚更だよ。」

 

「ふむ……伝え方には考慮しよう。後は……ユキナ、お前の武器を彼等に見せてくれ。」

 

「あ……は、はい。」

 

ユキナは、背中に背負っていた盾ほどの大きさの金属板を取り出し柄に当たる場所を引き抜くと肉厚で刃の大きな槍へとその姿を変えた。

そしてその槍のスペックを披露する。

 

それをみたエギルは感嘆の声をあげる。

しかしそれをみたキリトとアスナはお互い目を合わせて頷き合いアスナは腰の細剣を取り出す。

 

固有名《シバルリック・レイピア》

 

ユキナの槍“セッカロウ”と変わらぬ性能を誇る武器のようだ。

 

「貴女もこの槍はエルフの野営地の鍛冶屋さんで?」

 

「は、はい。でも稀にって話だったからまさか他にも持っている人が居るとは思いませんでした。」

 

「私達も検証は出来なかったのよね。何でも頭ごなしな依頼や不心得な依頼だとなまくらしか作らないらしいし。」

 

「とりあえず俺のギルドの者が全員作る予定だ。多少は確率もわかるだろう。」

 

確かに出来れば検証は必要だろう。だが情報についてはあまり広めることはしたくはない。

 

「本当ならさっきの会議中にその話もしたかったんだけどな。悪いけどアオシ達に任せるよ。」

 

「……すまないが広めることはあまりしたくはない。敵の武器の強化にも繋がるのでな。」

 

「そこは俺が見極めよう。これでも人を見る目は多少はあるつもりだからな。」

 

 

とりあえずの情報交換を終えた俺達はそれぞれ帰路に着いた。

 

ちょうど帰路に就くところでキバオウやリンドからメッセージが届いた。どうやらこれから宿屋に向かうそうだ。

少し急ぎながら宿屋に戻るとまだメンバーは戻っていなかった。

 

「俺は今からリンドとキバオウとの打ち合わせをするがお前はどうするのだ?」

 

「じ、邪魔じゃなければご一緒しても大丈夫でしょうか?」

 

「ふむ……ならば着いてこい。長くならなければその後レベリングを行うとしよう。武器のスペックのみではボス戦には心許ないのでな。」

 

 

宿屋につくと既にリンドとキバオウが待っていた。

2人で言い合いでもしたのか少し険悪なムードが漂っている。

俺は2人を部屋に招き入れ、同席したいというユキナについても被害者として紹介し、今は俺達が匿っていることを伝えた。

 

そして俺からの情報を伝えると2人は少しの間黙っていたがやがて口を開いた。

 

「つまりは現状では誰かわからないっちゅうことなんやな?せやったらまずはPoHに警戒して攻略戦で炙り出すしか無いんやないか?」

 

「現状ではキバオウさんの意見に同意するしかないな。俺達のギルドをぶつけようっていうのも今となれば炙り出すきっかけにしかならない。逆に聞きたいんだがアオシさんはそもそも奴らの話を信じるのか?アオシさんの仲間が聞いたと言っても疑心暗鬼を強めるために奴らがわざと話したかもしれないじゃないか。」

 

「ふむ……確かに可能性は0では無いだろう。しかし無視するわけにはいくまい。それゆえにお前たちや個人として狙われている者にしか伝えていないのだがな。」

 

「せやなぁ……かんがえとぉないっちゅうんが本音や。とはいえアオシはんの言う通り無視はできひんやろ。」

 

「ならば仲間割れの可能性のある際にはコイントスとかの決めごとは必要かだろうな。」

 

 

ある程度ではあるがお互いの譲る部分を提案した2人はそれで話を終え、部屋を出ようとした。しかし……

 

「あ、あの!まだもう一つあります。1人だけ私に無理矢理デュエルを仕掛けた男の名前何ですけど……“モルテ”って名前でした。お二人のギルドには……?」

 

その名を聞いた2人の表情は一気に青くなった。……このゲーム、顔色の表現は流石に過剰だと思うな。

 

2人はウィンドウを開くと何かを調べていた。

 

「やられた!ワイのフレンドに居たのに消されてもうてる!」

 

「俺の方もだ!くそっ!」

 

……どうやら両陣営を衝突させる為の伏兵だったようだ。

捕まえられなかったのは残念だがこれでPoHの手が少し遅れるのはありがたい。この2人も流石に現実にこんな事が起きれば事の重要さを真剣に考えてくれるだろう。

PoHの手を潰すためにも出来るだけ情報を仕入れ流す事を2人に伝え、リーダー会議は幕を閉じた。

 




次で三層は突破予定です。
更新遅くなり始め申し訳ありません。

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