今、俺達は大きな町にある小奇麗な宿で食事をしながら今後の事について如何したいか意見出し合っていた。
と言っても、
エセル曰く、マスターの御心のままに。
エヴァ曰く、あたしはアレイさんの物なんだから、アレイさんの好きにして。
結局、俺に意思しだいらしい。なので、確認と注意と今後の予定をいう事にする。
「俺達は、人外でこれから永い時を共に生きていく。俺達の外見は、基本変わらないから必然的に旅をしながら生きていく事になる。当てのない旅は精神的に辛い物があるから、基本東に行こうと思っている。ここまではいいか。」
と二人を見ながらいう。二人も頷いた。
「旅の道中は、危険も多いはずだ。俺とエセルは大丈夫だが、問題はエヴァだ。俺の物になると言うのならエヴァにも強くなってもらいたい。如何するエヴァ、嫌なら別の手段を考えるが」
「あたしを強くしてください!自分を守れるだけじゃなく、アレイさんを守れるくらいに」
とエヴァが俺の目を見つめて言ってくる。
その返事に嬉しさを感じながら、
「クククッ・・・そうか、なら覚悟しろ。身体も心も魂さえも鍛え上げてやる。そして、魔法を取得してもらう、かなりキツイだろうが頑張って貰うぞ。」
とエヴァの頭を撫でてやる。エヴァが顔を柔らかくしながらも、
「はい!」
と力強く答えてくれた。
俺はエヴァの頭から手を離しつつ(エヴァは少し残念そうな表情だが)、エヴァの方を目を三角にして見ているエセルの方を向きながら、
「俺とエセルは、エヴァの修行と平行して、厄介事請負業をしながら、各地に使い魔を放ち情報収集と客との仲介をしてもらう。」
「イエス、マスター。」
とエセルが頷き、使い魔に準備をしだす。
「エヴァさっきも言ったが、本名は2,300年は名乗らない様にしてくれ。それと俺達以外には茶色の髪と瞳の褐色の女の子に見えるはずだ。気に留めておいてくれ。」
「わかりましたぁ」
と幸せそうに、ホニャッと答えてくれた。
「さて食事が終わったら、旅に支度をして明日の朝にはここを出るからな」
「はい」
「イエス、マスター」
とみんなで食事をする。
《はてさて、これからどうなるやら。
取り敢えずは日本を目指すとして、今は1411年、可能なら1540年には、日本の三河国(愛知県)に着いて置きたい。後の徳川家康や,天皇家に取り入ってやれば楽に日本を裏から支配できるはずだ。
それにエセルの中(図書館)には、未来の知識が詰まっている。それを小出しにしながら行けば、2000年には大国になっているだろう。
色々楽しみではあるが、取り合えずは130年掛けて日本まで行きますか》
と今後に思いをはせながら、食事をする俺であった。
ここからはダイジェストでお送りします
<エヴァの修行 その1>
そのは森の中の開けた広場・・・・
「さてエヴァ、君は真祖の吸血鬼だ。一般人に比べたらだいぶ強い。優れた身体能力、魔力、回復力に生命力、基礎はすでに出来ていると見ていい。」
俺は白衣に指示棒を持って講義をする。それを真面目に聞くエヴァ、
「ならどう訓練するか。普通なら技術を磨き、心を磨くだろう。だが我らは人外だ!、永き時を生きるうちに自然と身に付く。ならどうするか・・・・古人曰く、『習うより、慣れろ』『百の訓練より、一の実戦』と言う訳で・・・」
徐々に熱が入っていく俺、だんだん不安になるエヴァ、
「エヴァ、紹介しよう。彼が今後講師をしてくれる先生だ!!」
バッと右手を広げ。
俺の影が闇色に染まりながら右手側に移動し穴のような形になり、そこからズブズブと、マッスルポーズを決めるムキムキなガーゴイルがせり上がって来た。
エヴァは目が点になり、口を開け呆然としていた。
俺は白衣からカンペを出し読み上げる。
「なになに、・・・彼は<SSS講師>鍛えてナイトゴーント君、通称ゴン君。夢魔の一種です。
身長170cm、体重??。身体能力、魔力共にエヴァより、常に少々上を行くように設定してあります。
ゴン君の身体は可能な限り人に似せました。なので、<刺したり、斬ったりの>手応えは、かなりリアルに再現されているはずです。
私が、丁寧に魔心込めて組んだ術式です。エヴァこれを使って効率よく強くなってください。
ps、SSSの意味は、スーパー、スパルタ、サディストの略です。
では、くれぐれも、死なないように、いいですか、死なないように頑張って下さい、大事なので二回言いました。それでは、良い訓練を。・・・
エセルの奴、えらい気合の入ったのを組んだな・・・」
俺がカンペを読み上げている間、ゴン君は次々にポージングを決め、徐々に黒い炎のようなオーラを纏いだした。
エヴァはそれを見て徐々に顔色が悪くなり、最後には冷や汗を流しながらガクガク震えていた。
「じゃあ実戦、逝ってみようかエヴァ、心の準備は良いかい」
「え・いやちょ!!」と慌てふためくエヴァ
「じゃあ、スt」
と俺が言い出した頃には、ゴン君はエヴァの顔を鷲掴みにして、サイドスローで思い切り斜め下に投げつけた。
「あぶぶぶぶぶぶ、」と情けない悲鳴を上げ、頭を軸にスピンしながら地面を滑って行って
「ぎゃふん!!」と最後は中々の太さの立ち木にめり込んでいた。
ゴン君は、ボーリングの投げ終わりのように残心して、満足そうな雰囲気を出しながら俺の横に戻ってきた。
俺は取り敢えず、ゴン君を影に戻し、《いや~この世界の伝統芸を見たぜ》と言う電波を無視いて、エヴァを助け出す。
よほど怖かったのか、「おうち、かえる~~」と言い出すぐらい幼児退行していた。
如何にか説得してもう一度やらせて見たが、実戦というより、リアル鬼ごっこになっていた。
なんとか逃げ切っていたので今後に期待という感じだ。
<初仕事>
厄介事請負業、いわゆる何でも屋である。
ただ俺の場合、戦闘系それも名前売れるような物を優先しようと思っている。
初仕事は山賊退治。
被害のあった村々で集めたなけなしのお金で頼んだが、高名な使い手は報酬が少ないと断られたそうだ。確かに少なかった。これで命掛けろとは酷である。
まあ俺は初めから受け取る気がないが。
エセルが言うには、山賊の頭に賞金が掛かっているらしい。それに良い訓練になる。
今の俺の格好はマギウス・スタイルといい。
金髪がひざ裏まで伸び、目の白い部分が黒に反転し、白いボディースーツの各所に本を模した鎧が付いている物を着ている。
このマギウス・スタイルは、ナコト写本(エセル)を纏っているような物で、魔力のブーストや、魔術行使の分担化・補助魔術によるパワードスーツ化・翼を出したり・翼を刃に変えたり・ドリルに変えたりと魔術師にとっては、万能決戦戦闘服である。
でも悲しい事に、魔術師が高位に成れば成るほど、意味を成さなくなって来る。
今回の姿も偶像として、後々まで語られるようにこんな格好をしてきたのだ。
そして、顔がばれないよう、自作の口元だけ出した黒い仮面を着けている。そして、この仮面、顔に同化するように付いており、俺が取ろうとしない限り取れない。
しかも、視界や触覚などの感覚を一切阻害しないし付けてる感覚がない。正直言われないと解からない位だ。
今、俺はマスコット化したエセルに案内されながら、山賊の根城に向かっている。
ちなみに、エセルは犬耳にくきゅう手袋をして、手の平サイズにデフォルメされて俺の頭上にいる。
まだ、肉眼では確認できないが、洞穴が根城にしているようだ。
その洞穴を中心に大きく結界を張りまるで漁をするように徐々に結界を狭めていく。そして半径1㎞で停止させる。
洞穴の前は広場みたいに成っていた。そこには、汚らしいガタイの良いオッサンどもが、50匹位たむろしていた。
俺は隠れもせず堂々と広場に歩いて出て行く。あちらも気付いたのか、錆びた武器を持って半包囲してきた。
俺はある程度の近さにまで近づき無言で止まった。
すると、オッサン等が『死にたくなければ、有り金・・・とか、身包み・・・とか』色々言っていたが無視して、頭を探しだす。奴には生きていてもらわないと困るのだ。なので開戦早々寝ててもらう。
下準備が終わる頃、一番下っ端ぽいのがじりじり寄って来た。功を焦ったか、命令されたか、どちらでも構わない。
俺は先ほどから無言で、自然体のまま動いていないのだ。普通の山賊には、美味しい獲物に見えるだろう。
結界をさらに狭め広場の外周位に張りなおす。
その時、近づいてきた山賊が雄叫びを上げながら飛び掛て来た。
俺は細心の注意を払って、相手の右側に自分の右足を一歩出し、相手の胸に右手を優しく突き出した。
そして、手が胸を突いた瞬間、赤錆のような臭いが辺り一面に広がり、俺の横を先ほどまで山賊だった物が通り抜ける。
先ほどまで煩かった場が、耳が痛いほど静まり返った。
その間、俺はエセルに5段階でリミッターを掛ける様に指示し、頭がちゃんと安全な場所で寝ているか確認する。
その後山賊は3種類に分かれた。
一つ目は悲鳴を上げ一目散に逃げる奴ら。二つ目は茫然自失の状態で突っ立てる奴。三つ目、これは少なかったが俺に向かってくる奴。
俺は今度は何も意識せず向かってくる奴を迎撃した。やはり、血霞に変わる。
更にリミッター追加で茫然自失な奴に殴り掛かる。やはり、血霞、埒が明かないので、もう10段階追加。ようやく、思いっきり殴っても蹴っても即死しなくなった。
エセルにこの状態でオンオフ自在に出来きるようにしてくれと伝え、俺は身体に力を廻らし生きている奴に突っ込んでいった。
あらかた殲滅し終わり、もういないかとエセルに聞いてみると
「マスター、洞穴の奥に3人います。後は総て殲滅しました。」
と答えが返って来た。
「洞穴か」
と呟きながら、足音を立てて洞穴の奥へ足を進める。
エセルがこの洞穴の形を教えてくれた。
この洞穴は、奥に行くにしたがって狭くなり奥の広間に入るには、2人がぎりぎり通れる隙間しかないらしい。前方後円墳みたいな感じだ。
狙うなら其処しかないだろう、と俺は広間に入る。すると斜め前から、2人の男が音もなく心臓に短剣を突き付けて来た。
俺は短剣を弾き、逆に手刀で相手の心臓を突き潰す。その際2人を支える形になった。
奥のほうから「ひゃ・・・ひゃははは、死にやがった。化物が死んだ。ひゃははは・・・・」と耳障りな音がしたので、その方向に向かって支えていた物を思い切り投げつけた。
奥のほうから、壁に熟れたトマトを思い切り投げつけたような音がして静まり返った。
俺は音がしていた方に、足音を立てながらゆっくり進んだ。とたん男が命乞いをしだした。俺は後一歩で間合いに入るところで立ち止まった。
男はチャンスと見たのか、一気に喚き出した。
俺は男を醒めた眼で見ながら、
「知ってるか、悪人に人権はないらしい」
そういいながら、ゆっくり手を上げていく。そして、上げた手を手刀にして霞む様な速さで振り下ろした。
「ま、俺は人じゃなんで知ったこっちゃないんだが」
といいながら、山賊のお宝を亜空間の倉庫に放り込み。村々から出た報酬の入った袋に村の数分宝石を入れ、賞金首を換金しに町に向かって転移した。
村に戻るとわらわらと村人が寄って来た。その中に村長がいたので依頼の報告をした。
「村長、依頼道理もう二度と絶対に悪さが出来ない様にして置いた。」
村長たちは喜んでくれた。
俺は、もう山賊がいないか様子を見るため1週間ほど泊めてくれるよう村長に頼んだ。
1週間後、俺は『宿泊代だ、出来たら依頼した村々で分けてくれ。 ギルド、ブラックロッジ、リ-ダー、マスターテリオン』と村々から出た報酬の入った袋と書置きを残し姿を消した。