転生先生テリま   作:物書き初心者

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獣、京都に発つ

 

 

 修学旅行の時期が来た。

 

 取り敢えずウチのクラスからは古都『京都・奈良』が良いと満場一致で決定したが、その理由がなんとも善人と言うか真面目と言うか。

 

 俺やネギ、留学生に日本文化をもっと知ってほしいからだそうだ。

 

 この事で最も喜んでいたのはネギとエヴァだろう。

 

 エヴァはこの頃行っていなかった京都へ行けると見た目相応の喜び様でアスナ達がそれを温かい眼で見ていた。

 

 ネギがどうしてそこまで喜んでいるかは定かでないが、おそらくナギが日本に居た時に使っていた別荘が京都にあるのを学園長かタカミチにでも聞いたのであろう。

 

 ちなみに、ブラックロッジの事を仄めかせた後のネギたちの反応だが。

 

 どうやら学園長とカモはネギに伝えなかったようだ。

 

 現にネギとまき絵は変わった様子が無くブラックロッジと俺達を繋げられないでいる。

 

 おそらく世界樹が発する認識阻害結界の所為もあるだろうが、ネギは魔法使いの暗い面を教わらずに育ったのだろう。

 

 その所為か、魔法使い?の俺=善人と思っている節がある。エヴァの方に対しては未だおびえているようだが。

 

 委員長は個人で色々動いているようだ。

 

 今まで通りの態度を崩さないがブラックロッジの事を調べたり、アスナにそれとなく聞いたりしている。

 

 雪広財団も一応はブラックロッジの下部組織に当たる。

 

 その所為という訳ではないがブラックロッジの情報は集まってない様である(使い魔、調べ)。

 

 カモに至っては触らぬ神に祟り無し、と言わんばかりに俺達を避けているようだ。

 

 だからと言って何も変わらないが……。

 

    ◆

 

 何故か俺とネギが学園長室に呼び出された。

 

 学園長曰く、修学旅行先の京都が受け入れ拒否しているとの事だ。

 

 正確には関西呪術協会が、であるが。

 

 まあ、要するに、……茶番だ。

 

 毎年数人の魔法教師も生徒も修学旅行として京都に黙って行っているし、あちらも黙認している。

 

 もっとも、決して魔法を使わぬように言い含められるが……。

 

 ただ今年は訳が違う。

 

 ナギの息子の未熟なネギもそうだが一番のネックはコノカである。

 

 未だ一般人と思われているコノカは向こうの過激派にとって格好の標的にされているだろう。

 

 そうすると魔法的なトラブルが予想される。

 

 そのけん制の為に担任、副担任が魔法使いと言ったらしいが、案の定あちらは難色を示したようだ。

 

 もっともそれで予定が変わるわけでもないのだが、学園長がいらない事を言った所為で修学旅行先が変わるとネギが絶望。

 

 その後、学園長がネギに関西呪術協会の事などを話し、ネギが特使になる事になった。

 

 これについては事前に聞いていた話だと特使と言うよりもただ単にネギを詠春に会わせる口実作りらしい。

 

 この話だけならネギ一人でも良かったのだが此処からが今回の話の本題だ。

 

「あ~それでじゃなアレイ君。孫のコノカの事なんじゃが」

 

「詠春と木乃美からすでに話が来ている」

 

「……あの、僕の生徒のコノカさんの事ですよね。何かあるんですか?」

 

「うむ、京都にコノカの生家があるんじゃが、今、御家騒動でごたごたしとるから『アレイ君に』護衛を任せたのじゃよ」

 

「そうなんですか。(御家騒動??よく分からないけど、僕は教師なんだ。生徒に何かあったら助けないと)」

 

「うむ、じゃから何かあってもアレイ君は手伝えんということを頭に入れとくように(思ったより素直に聞き入れてくれたの、ネギ君の性格的に手伝うと言ってくるかと思っとったが)」

 

「(あの様子ではネギが邪魔しそうだが・・・、邪魔になれば排除すればいいか)話が済んだのなら帰るが」

 

「うむ、ご苦労じゃった」

 

 

    ◆

 

 

 修学旅行当日、教師として普通はアスナ達より早く出なければならないのだがその必要がなかった。

 

と、言うのもエヴァに叩き起こされたアスナ達も一緒に駅に行くと言い出したからだ。

 

 そんなこんなで駅に着いてみると教員だけでなく何故か3-Aの生徒が数人到着していた。

 

 なんでも待ち切れずに早々に駅に来たそうだ。

 

 その後、学年主任の新田教諭達と今後の予定などの確認をしていると生徒が集まりだし点呼などを終え新幹線に乗り込んだ。

 

 ちなみに班分けはエヴァと茶々丸が加わった為、原作と違い6班あるが人員は変わらない。・・・by作者

 

 今、諸注意事項などを伝え終え生徒をみまわっているのだが、他のクラスの数倍3-Aの生徒は騒がしい。

 

 その途中でいろんな生徒に捉(つか)まり話をしていたりしているが今はアスナとコノカ、それと図書館組に捉まっている。

 

 座席に座らせられたが配置はアスナとコノカに挟まれ、対面にユエ達図書館組という具合だ。

 

「ほい、アレイさん。お茶どーぞ」

 

と、コノカがお茶を俺に手渡し甲斐甲斐しくお茶菓子などの準備を始める。

 

「でもホント、コノカってアレイ先生の奥さんみたいだよねー」

 

と、言うハルナの言葉にノドカも同意する様にうんうんと頷いている。

 

「いややわー、ハルナ」

 

と、言いつつも嬉しそうに微笑んでいるコノカ。

 

「そこんとこ、娘としてどうお考えですかにゃ~。アスナさん?」

 

 パルがどこぞの童話に出てくる猫のようにニンマリしながらアスナに訊いて来た。

 

「誰が娘よ!誰が!!」

 

 憤慨しながらパルの頬を掴むアスナ。

 

「いひゃい!いひゃい!!」と、実際痛いのかどうか判らない悲鳴をパルが上げる。

 

「懲りないですね、ハルナは。それでなくてもこの前、酷い目にあったばかりなのに」

 

 腹黒コーヒーなる物を飲んでいるユエが二人のじゃれ合いを見てそう呟いた。

 

 確かに、寮の前にハルナが吊るされていた事件は記憶に新しい。

 

 まぁその程度で懲りるようなハルナはハルナじゃないと言うのが全員一致の認識だが……。

 

「う~、酷い目にあった」

 

と、ボヤキながら頬を擦りながらハルナにコノカが、

 

「乙女にむこうて、そんな事ゆうたらあかんえ」

 

 メッと言わんばかりにコノカが人差し指を伸ばしてハルナに注意していた。

 

「ごめんね~。でもさー友人としてはあんた達の恋愛模様が気になるわけよ」

 

「嘘いいなさい!殆どパルの趣味でしょーが!!」

 

「あっ、ばれたー?という事でアスナとコノカとの馴れ初めを教えて♪」

 

と、その言葉を聞いてかクラスの何人かがこちらにやってきて騒ぎ出した。

 

『なんかアスナ達とアレイ先生の出会いが聞けるらしいよー!!』

 

と、遠くから聞こえてくる。

 

 どうすんのよ、と言わんばかりに俺の方を下から覗き込んで来るアスナ。

 

 勿論、本当の事を言える訳ないので適当に脚色して騙(かた)る事にするが、少し協力しろとアスナに目配せする。

 

 少し不安そうにコクリとアスナが頷いたのを確認してから真面目そうな顔を造り俺は騙り出す。

 

「ふむ、あれは俺がまだフリーの傭兵だった頃『えっ!傭兵!!』とある組織に拉致された少女を救い出したのがアスナとの出会いだったか―――」

 

 周りの反応は始め、また冗談かという具合の反応だったがアスナが昔を思い出してます、と言う感じにどんよりした空気をかもし出したから真実味が増してきた。

 

「―――その後、組織の所為で家族を失ったアスナを俺が引き取ったと言う具合だ」

 

 取り敢えず騙り終えたが、この話を聞いて涙ぐんだクラスメイトに取り囲まれ、なぐさめられているアスナが助けを求めるような表情をして此方を見ていた。

 

「あ、あの~、これホントの話なんですか?…冗談とかじゃなく」

 

と、すこぶる気まずそうなハルナが訊いてきた。

 

「ふむ…、確かにこの話はかなり脚色されてはいる」

 

 それを聞いた、涙ぐんでいた全員が『えぇぇぇーーー!!』と驚愕の表情で此方を見る。

 

 対照的に安堵の表情をするハルナ。

 

「が、嘘は言っていない。そもそも、血のつながりのない俺が引き取っている時点で訳有りなのは言うまでもなかろう」

 

 そう言うと確かにと全員が納得顔になった。

 

「要するに、いくら親しい友といえど言いたくない事もあるし、言えない事もあるという事だ。特に早乙女は良く考えて口を開いた方がいい」

 

と、説教じみたことを言いつつ、この場は解散となった。

 

 ハルナとしては恋の馴れ初めを聞いたはずなのに、いつの間にか説教になっていて納得いかないと言う感じの顔をしている。

 

 ハルナには悪いがこう言って置けば、今後、不用意にアスナ達の過去を聞いては来ないだろうという打算で話を騙ったのである。

 

 この二年、良くも悪くも遠慮と言う物が無くなってきていたので丁度良かったのだ。

 

 その後、コノカを除いた図書館組がゲームに誘われて席を離れていった。

 

「良かったのかあんな事を言って?」

 

 エヴァと茶々丸が空いた席に座りながら訊ねてきた。

 

「構わん。今回の件で裏の表舞台に立つのは確実だ。情報の隠匿に意味が無い」

 

 そもそもが隠していないのだから正規の手順で調べていけばアスナはともかくアレイの方は魔法関係者なら調べがつく。

 

「確かにそうだが、私としてはこのクラスでそんな事を言って、後でどう歪んで周りに伝わるかの方が心配なんだが」

 

と、憂鬱そうな顔をするエヴァ。

 

「エセル曰く、かく乱に丁度いいらしい」

 

「そうなのか?そういえば先程から陰陽術らしき魔力が飛び交っているがあれは放置でいいのか?」

 

「ああ、物を蛙に変える、という呪だった。ただの洒落と嫌がらせだろう」

 

「まあ、いくら魔法使いが憎いからって、わざわざ一般人巻き込む事も無いものね」

 

と、うんうんと納得しながらアスナが何でもない風を装って俺によってくる。

 

「そうやね。でも、みんなに迷惑掛けるんは忍びないえ」

 

 コノカが俺の服をキュッと握り憂えた瞳で見上げてくる。

 

「恐らくこれはコノカの所為ではなく、ネギを中心に呪が配置してあるので特使の親書が本命でしょう」

 

と、俺の頭の上のプチ・エセルが言い出した

 

「あと、周りがどう反応するか観察しているのだろう」

 

「イエス、マスター。恐らくコノカの護衛の確認も兼ねていると推察できます」

 

「なるほど、だからあえて桜咲刹那を見逃したな」

 

「どういうこと、エヴァ?」

 

「先程、勝手に呪の大本を探りに桜咲刹那が車両を出て行った。これをアレイは囮として使う気なのさ。コノカの護衛が一人も居ないと言うのは不自然だからな」

 

 どうだ、と言う感じに此方をエヴァが見てくる。

 

「えぇー!せっちゃん、だいじょぶなん?」

 

「結果的にはエヴァの言う通りなのだが、此処では手荒なことが出来んから放置しているだけだ」

 

 そう約時速200kmで走っている此処で暴れて何かあったら目も当てられない。

 

 だからこそ刹那を放置している側面もある。

 

 その後、騒ぎが起きネギが親書を盗まれるも丁度居合わせた刹那が取り返し事なきを得た。

 

 その際、ネギが不振そうに刹那を見ていたが俺が態々なにか言う訳も無く放置である。

 


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