転生先生テリま   作:物書き初心者

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吸血鬼、薬味をいたぶる

 

 週明け、ネギは何故かすこぶる元気になっていた。

 

 元気なのは別にいいのだが、朝、クラス全員の前でエヴァに果たし状を叩き付けるのは如何なのだろうか……。

 

 しかも、「僕が勝ったらお父さんの事を教えてください」って大声で言ってしまった物だからクラスは騒然としてしまった。

 

 エヴァはポッカーンとしてしまい、その隣にいた茶々丸もオロオロとして俺にすがる様な視線を向けてくる。

 

 仕方ないので俺と委員長で収集をつけたが変な噂が蔓延する事になった。

 

 例えば、エヴァがナギの娘だったり、後妻だったり、中には真実に限りなく近い物もあったが…。

 

 その所為でエヴァは機嫌が悪い。

 

 あのノーテンキなクラスでもアレイ達以外近づかないくらいに不機嫌なオーラが充満している。

 

 昼休み屋上で何時も通りのメンバーで食事をしていたのだが食べ終わったとたんエヴァがアレイの足の上に乗り甘えて抱きついて来た。

 

 普段ならアスナ達のけん制が入るのだが流石に今日は苦笑して見ているだけにしたようだ。

 

「なんなんだ!あれは、ほんとに隠す気はあるのか!」や、「日本酒二本じゃ割に合わん」などなど、猫の様に顔やらをアレイに擦り付けながら愚痴るエヴァ。

 

 その後、委員長たちに連れられた少し萎れたネギがエヴァに謝罪しに来て、後日の大停電の日に決闘する事が決まったのだが……。

 

 アレイの上から退かないエヴァとネギの掛け合いを見て全員ホッコリしていた。

 

 

   ◆

 

 

 そして、大停電の晩 麻帆良大橋

 

 そこには魔法薬などで完全武装したネギと委員長とまき絵。

 

 それに相対するように白いゴスロリドレスのエヴァとチャオ謹製の軍用服を着た茶々丸が立っていた。

 

 エヴァと茶々丸は大人気ない位に本気モードである。

 

 それもそのはず、決闘が決まった日の晩の事、エヴァが「これで勝利と美酒は私の物だ」と高笑いしていたのをエセルに聞かれ、

 

「では、少しでも不甲斐無い結果になれば再教育です」

 

と、黒い笑みを浮かべたエセルに通達されたもんだから気合の入り方が違う。

 

 俺、アスナ、コノカ、ユエは大橋の最上部に立って観戦する事に。

 

 その中でも特にコノカは治癒魔法要員として頑張ってもらう予定である。

 

 心配そうなアスナが委員長の方を見て、

 

「それにしても気合は入りすぎじゃない。あれじゃ下手したら殺しちゃうんじゃ…」

 

と、言うがコノカがいつも通りの朗らかな顔で、

 

「うーん。だいじょぶやろ、うち等の中じゃ手加減が上手いんやし。それに何かあってもうちが治したるえ」

 

と、宣言する。

 

「確かにエヴァさんは私達と比べ技量がずば抜けて高いですから……」

 

 ゴーヤ青汁オ・レなる物を啜(すす)りながらつぶやいているユエ。

 

 そんな事を言っている間に開戦。

 

 エヴァは詠唱を開始しながら中空に飛び上がり、茶々丸は委員長たちに向かって駆け出す。

 

 ネギ達は、まず三人で茶々丸を無力化する積もりなのか、ネギは魔法薬を投げ付け、魔力充填されたあやかとまき絵が突っ込んでいく。

 

 茶々丸がその程度で止まる訳も無く魔法薬を掻い潜りあやかとまき絵の腕を掴んで遠くへ投げ飛ばし自身も追いかける。

 

 ネギも「いいんちょさん!まき絵さん!」と叫び追いかけようとするが目の前に氷の壁が立ち上がり追いかけられない。

 

「さて、これで一対一だ…。覚悟はいいか小僧…」

 

と、エヴァが眼の色を反転させ壮絶な笑みを浮かべる。

 

 そこからはただの虐めである。

 

 始めは魔法の射手の打ち合いになっていたが早々にエヴァが本数を増やしていった。

 

 10が20に、20が50に、50が100にという具合だ。

 

 そして最終的には千に達した。

 

 しかも、あえて深手を負わさず猫が獲物を弄ぶようにかすらせていく物だから最後の方ネギは体中に血が滲み凍傷だらけになっていた。

 

「見習いとしてはよく持ったほうだ…。褒美にいいものを見せてやろう」

 

 エヴァが片手を掲げ莫大な魔力を集中させる。

 

 ネギの顔が絶望に染まりながらも魔法の射手で止めようと試みるも、その程度の魔法でエヴァの常時展開している障壁が貫けるわけも無く。

 

『リク・ラク ラ・ラック ライラック

 

 契約に従い 我に従え 氷の女王

 

 来れ とこしえのやみ

 

“えいえんのひょうが”』

 

 エヴァがそう唱えるとネギを中心に約45m四方が瞬間的にほぼ絶対零度となった。

 

 そして、ネギが氷柱の中に封じられる。

 

「アハハハハッ!どうだ小僧!広範囲完全凍結呪文の味は!!」

 

と、空の上で高笑いするエヴァの下で二つの涙声に気付きそちらにゆっくり降りていく。

 

「ねぎく~ん。死んじゃだめ~」「このままではネギ先生が」「ア、アニキー」

 

と、二人と一匹が氷柱にすがり付いている。

 

「…何をやっているんだ。お前たちは……」

 

 一斉にそれぞれエヴァの名を呼んだ後、ネギを開放してくれと懇願してくる。

 

「ああ、開放してやるとも…。ちゃんと報酬を受け取ったらな」

 

『報酬?』と二人が首をかしげているとエヴァが声を上げた。

 

「おい!じじぃ!近くにいるんだろ!さっさと報酬をよこせ!!」

 

「……うむ。にしてもまた派手にやったのう。エヴァ」

 

と、言いながら現れた呆れ顔の学園長が手に持っていた一升瓶をエヴァに渡す。

 

「ふんっ!こっちも成り行きで(精神的な)命がけになったんだ。手加減する気などさらさら無いわ」

 

 エヴァは渡された一升瓶を確認してから指を鳴らす。

 

 するとネギを捕らえていた氷柱がくだけて気絶したネギが転がり出てきた。

 

 二人と一匹は冷たくなった冷凍ネギに抱きついて介抱するがエヴァは一顧だにせず学園長に跡片付けを頼み早々にアレイの下へ去って行った。

 

 学園長は、その後ネギの治療と事情説明に片付けにと大忙しだった。

 

 その頃、エヴァはアレイと別荘にこもって温泉で酒盛りをして楽しんでいたとか……。

 

   ◆

 

 次の日、エヴァと茶々丸とアレイで買い物に出ていたのだが、そこでばったりネギパーティーに出くわした。

 

「こ、こんにちは」

 

と、少々怯えが混ざっている物のアレイ達に挨拶してくるネギ。

 

 委員長とまき絵も挨拶してくるが学園長がどう説明したか知らないが後腐れはなさそうだ。

 

 ネギの反応を見ていじめっ子の本能がうずくのかエヴァの目がランランと輝いている。

 

で、ネギ達はどうやらアレイ達を探していたらしい。

 

 それでネギはアレイに話があるらしくお茶でもどうですかと誘ってきた。アレイ達は断る理由も無いので付いて行く事にした。

 

 とある喫茶店で注文した商品が全部出揃いアレイは軽くコーヒーに口を付ける。

 

 そして、アレイはエヴァの認識阻害の結界が発動したのを確認してから話し出した。

 

「それで、話とはなんだ」

 

 やはり雰囲気が違うのに戸惑いつつもネギが質問してくる。

 

「あ、あのクロウ先生も魔法使いなんですよね?」

 

「正確には違うが、……それがどうした」

 

「いえ、エヴァンジェリンさんが僕の父さんの事を知ってるのならクロウ先生も知ってるかなと思って……」

 

「要するにエヴァに負けて、エヴァから聞けないから知っていそうな俺に訊きに来たと」

 

「……はい」

 

と、ばつの悪そうに返事をするネギ。

 

 それを、紅茶を啜りつつジと眼で見ているエヴァ。

 

「―――普通なら何の対価もなしに人からモノをもらう事はできないという事を理解しているか」

 

 まき絵は理解していないのか頭の上に?マークが浮かんでいる。

 

「要するにですね、まき絵さん。物を買うのにお金を払うようにクロウ先生は情報を貰うんだから何を払うのかと聞いていらっしゃるのですわ」

 

「えーー情報ってただじゃないの!!」

 

「いや、まき姐さん情報ってのには、色々価値があるんスよ。しかも、この旦那、あの闇の福音の保護者ですぜ。きっと貴重な情報を知ってますよアニキ」

 

「あの僕に払える物があるなら払いますから、父さんの事を教えて下しい」

 

 ネギは深々と頭を下げて訊いて来る。

 

「ナギの事か…。で、ナギの何が知りたいんだ」

 

「その、クロウ先生と父さんの関係を訊いていいですか?」

 

「敵、協力者、飲み友達、好きなのを選ぶといい。全部事実だ」

 

と、ニヤニヤしながら答えてやる。

 

「え、え~と、父さんとは複雑な関係で、いいんでしょうか?」

 

 難しい顔をして確認してくるネギに対してアレイは、

 

「それで実際は何が知りたいんだ。俺の事が知りたい訳じゃないのだろ」

 

と、さっさと本題に入れと促す。

 

 それを受けネギが少し期待した顔をしながらたずねる。

 

「えっと、父さん居場所を知りませんか?」

 

「ふむ…(予想はつくが)…、知らんな。たしか今現在、行方不明だったか」

 

「…そうですか。……でも、クロウ先生は父さんが死んだとは言わないんですね」

 

と、少々不思議そうに訊いて来る。

 

「うん?たしか死体は出ていないはずだが…」

 

「そうなんですか。大人の人はみんな僕が生まれる前に死んだって言うんですが、僕、六年前に父さんに会ってこの杖を貰ったんです」

 

「で、居場所を探していると…」

 

「はい」

 

「フー…」

 

 何でこいつは俺に所に来たんだ、もっと先に訪ねる場所があるだろうに。と、ため息はきつつ考えるアレイ

 

「あの、どうしたんですか」

 

 本当に不思議そうに訊いて来るネギ。

 

「危険を冒して俺に訊ねに来ずとも、学園長とタカミチに訊きに行けばいいものをと思ってな」

 

と、いうアレイの呟きに、何を勘違いしたのか、

 

「学園長先生とタカミチですか。分かりました!訊いてみます!……それとクロウ先生と会うのが危険なんですか?」

 

 元気に返事をした後にまた不思議そうに訊いて来るネギ。

 

 エヴァが何言ってんだこいつはという顔でネギを凝視するが、昨日、学園長が上手くはぐらかしたのだろう。

 

「ふむ、昨日、学園長は俺達についてなんと言っていた」

 

「えっと…、実戦の厳しさを教える為に外部組織の人間に頼んだと言っていました」

 

「なるほど、一応、俺達が関東魔法協会に属してないという事は知っていると言う事か…」

 

 エヴァの事が知れたのだ。ここで名乗るのも一興か……。

 

「ふむ、下等妖精。貴様、ブラックロッジという組織を知っているか」

 

「か、下等…。オレっちこれでも由緒正しきオコジョ妖精なんですが…」

 

「そんな事はどうでもいいことだ。で、知っているのか」

 

「ど、どうでも…。…そ、そりゃ、知ってるっスよ。世界を裏から操っている悪の秘密結社で『偉大な魔法使い』の仇敵っスよね」

 

「今はそんな風に言われているのか…。他には何を知っている」

 

 ネギ達はそんなのがあるんだと驚いて憤慨したりしていたが、それをエヴァは面白そうに眺めていた。

 

「他っスか…。トップがマスターテリオンって言う魔王で、幹部も悪魔の様な奴だって事位っスかね。基本的に分かんない事だらけの組織っスから。…あ、あと、幹部に闇の……」

 

と、そこで解説していたカモが凍り付き、ガクガク震え、脂汗をダラダラ流しだした。

 

「理解はしたようだな。後は学園長にでも聞くといい」

 

 そう言い残しアレイ達は去っていった。

 

 

 




衝動的に「魔法少女リリカルなのは」を原作に新作を書いてしまいました。

よければ、そちらもお読み頂けると嬉しいです。

ちなみに題名は『死神少年リリカルライム』です。よろしくお願いします。

あと、可能なら評価を頂けるとありがたいです。作者のモチベーションが上がりますので。

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