転生先生テリま   作:物書き初心者

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吸血鬼、薬味を襲う計画を受ける

 

 明日から新学期、アスナたちは三年に上がり俺の契約は後残すこと一年となった。

 

 その間に俺達には大きな事件などはなかったがネギは大なり小なり事件を起こしていて、タカミチとユエがやきもきしていた。

 

 特に印象的だったのは期末テスト前の図書館侵入事件だろうか。

 

 これには少なからず学園長も関与していたが、それは後で話すとしよう。

 

 概要としては、学園長が魔法ばかりに頼るネギに魔法以外の解決法を模索させる為の試験を課す事から始まる。

 

 試験内容としては学年順位の向上だったとか……。

 

 そうなった理由としては大抵の事は魔法に頼るネギだが流石に生徒に対して安易に魔法を掛けないじゃろう。と、学園長は思ったからだそうだ。

 

 もしも掛けようとした場合、タカミチの幻影を使い説教する予定だったらしいが、委員長やまき絵がいいタイミングで割って入り使わなかったそうだ。

 

 そして、試験を課すと決めて学園長は難易度調整の為、二つの噂を流した。

 

 一つ目は、効率よく学習ができる場所が図書館島にある事。

 

 二つ目は、この頃の学生の学力低下を学園長が嘆いていると言うものだったらしい。

 

 一つ目はネギが生徒を誘って勉強会を開くことを狙って、二つ目は少しでも生徒のやる気向上を狙ったそうだが、……愚策と言うか、悪手だった。

 

 なんせ、この噂は生徒に耳に入る頃にはかなり捻じ曲がって伝わってしまったのだから。

 

 まず、一つ目は図書館島深部には読めば頭のよくなる本がある。二つ目は学園長が怒っていて学力の低い生徒を集めたクラスを編成するという具合に噂が変異していた。

 

 それを聞いた学園長は机に突っ伏し長い頭を抱えたそうだ。

 

 で、悩んだ末に、もう発してしまったものはどうしようもないという事で、急遽、学園長と、とある古本な司書が大慌てで図書館島を整備したとか。

 

 それで生徒に噂が流れてきて特に慌てたのが三羽烏(さんばがらす)ならぬ三バカ烏の長瀬楓(ながせ かえで)、クーフェイ、佐々木まき絵だった。

 

 元々はこれにユエが加わりバカ四天王だったのが一年の時にユエが抜けた事によりこう呼ばれる事になった。

 

 その際、周りからどんな勉強をして抜け出したのか聞かれていたがユエは顔に縦線が入って、ガタガタ震えるだけで一切話さないそうだ。

 

 それもそのはず、中間で赤点を取ったことを知って黒くなったエセルがユエを調きょ・・・、もとい、拷も・・・、独自の勉強法でしばらく面倒を見ていた。

 

 何でもアレイの元にいる人間がそんな事では困るという理由で。

 

 その事を知ったアスナ達は絶対悪い点だけは取るまいと誓い合ったとか……。

 

 そんな感じでパルにそそのかされ、図書館島に本を取りに行く潜入部隊が編成された。

 

 内訳は三バカ烏に、連絡員として噂の大本のパルことハルナ、まき絵に巻き込まれたネギとパルに説得され保護者として付いて来た暴走委員長、そして、地上班のユエとのどか。

 

 この後は基本的に原作通りに話は流れて行く。

 

 ちなみにツイスターは某古本の趣味だったとか……。

 

 その後、ネギ達が行方不明になり何故かアレイまで一緒にクビになるという話が出てまた学園長が血の海に沈む事になったのは別の話。

 

 その際、学園長のそばにはバットやトンカチ、広辞苑が落ちていたそうだ。

 

 その後もネットアイドルバレ事件やらもあったが、ネギはもう一つ大きな失敗をした。

 

 まあ、これはネギの所為ではないのだが魔法学校のネギの従姉妹からの手紙が委員長の部屋宛で来てしまい、それを委員長が見てそこから魔法バレに発展。

 

 更に手紙の中身を一緒に見て委員長がパートナーに立候補したり、寮内でこの話が広まり大騒ぎになってしまったりと事件に事欠かなかった。

 

 そう言えば事件と言うほどの事ではないがエヴァが珍しく学園長からの依頼を受けた。いや、依頼として受ける事になった

 

 その依頼内容はネギにパートナーの重要性と実戦とはどういうものかを教えてやってくれんかと言うものだ。

 

 だが、この依頼は、元々は依頼などではなく、とある愚かな教師が持ってきたMM本国からの指令が発端(ほったん)だった。

 

   ◆

 

 この依頼を受けた際、アレイ立会いの下、タカミチも含め4人と一冊で話し合いの場がもたれたのだが……。

 

 今回の件はどうも学園長が預かり知らぬ所で新参者の魔法教師が本国とやり取りしていたらしい。

 

 しかもつい先ほどその教師が本国から指令書を預かってきたらしく、得意げに持ってきたそうだ。

 

 その内容というのがネギに協力して吸血鬼エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルと対決させよと言うものだったらしい。

 

 タカミチ曰く、それを見た学園長は余りの事に真っ白になっていたそうだ。

 

 教師が言うにはエヴァは<女子供は殺さない>と言う話を本国が目を付け、ならばネギと軽く対決させて生き残らせて『凶悪な吸血鬼と引き分けた』と、喧伝する気なのだとか。

 

 実際はこの教師が本国の議員に取り入り適当な事を言っていたらしい事が後々分かった。

 

 このバカな考えには色々と穴があるが本国は本気らしい。

 

 ちなみにこの策が上手く行けば教師は本国に栄転できるとかで張り切ってお膳立てしたそうだ。………事後承諾で。

 

 まあ、要するに桜通りの吸血鬼の噂はこいつの所為という事だ。

 

 この噂には俺達も気付いていたのだがエヴァが何かしている訳でなし、ただの噂だろうと高をくくっていた。

 

 もっとも、幾人かの過激派はエヴァの事を疑いだしたらしいが……。

 

 その所為もあって、事の次第を話す学園長の煤けた顔がすごい事になっていたが此方の知った事ではない。

 

 ちなみに、その教師が言う女子供を殺さないと言うのは事実だが真実ではない。

 

 この話は昔、エヴァに襲い掛かってきた賞金稼ぎが男ばかりだっただけの事で、今でも襲われたら老若男女関係なく返り討ちだそうだ。

 

 要するにエヴァに襲い掛かればネギだろうが何だろうが命はない。

 

 特に此処の所、エヴァは満ち足りた生活をしていて大人しくしていたのだ。

 

 それを破ろうと言うのだから命だけで済めばいい方といった感じだろうか……。

 

 ただ、幸いだったのがこのタイミングでこの話を持ってきた事だ。

 

 なんでも学園長の持ち物で個人的に欲しい物があるとかで先の依頼内容でなら依頼として受けてもいいとエヴァが言ったお蔭でこの話は丸く収まった。

 

 本当ならば、契約違反という事で色々出来るのだがエヴァとしても今の生活が気に入っているのか余計な波風を立てたくない。と、言うのがエヴァの本心だろう。

 

 ちなみに報酬は学園長秘蔵の幻の日本酒『魔王・極』と『びようじょ』だそうだ。

 

 まあ、要するにネギの命は日本酒二本で助かったと言う事に……。

 

 一本前払いで渡していたがその際の無念そうな学園長が印象的だった。

 

 後日、アレイと二人きりで温泉で飲んだそうでかなりの美味だったと惚気と共にエヴァに聞かされ学園長がいろんな意味で打ちひしがれていたそうだ。

 

 

   ◆

 

 

 現在、とある昼下がり、ログハウスのリビングでお茶をしているのだが。

 

 その際、今夜クラスメイトの誰かを襲い、明日にでもネギを誘き出して、取り敢えずパートナーの重要性を教えようと考えているとエヴァが言い出した。

 

 要するにそこで誰を襲うべきだろうかと相談を持ちかけてきたのだ。

 

 アスナと木乃香、ユエは流石にクラスメイトを襲わせる訳にはいかないと自分を襲えといっているのだが、エヴァ本人としては刹那が気に食わないから襲いたいらしい。

 

 何でも幸せが目の前にあるのにウジウジ悩んでいるのが気に食わないとか。

 

 それ理由を聞いてアスナ達は苦笑していたが木乃香は冗談で「せっちゃん!にげて~!」と叫んでいた。

 

 そんな中、俺は美空とのどかを推す事にした。

 

 それに対して、ユエが「なんでなのですか!」と噛み付いてくるので理由を解説する。

 

「のどかに関してはただのお節介、もし襲われればネギの人柄的にお見舞いに行くだろう。何かしら恋に発展もありえるかもしれないぞ」

 

 悪魔の囁きの様に然(さ)も魅力的な事のように語るアレイ。

 

 アスナ達も実際には危険がない事が分かっているが精神的のどうなの?と、少々渋い顔をするが、乙女的には看病されるのもいいかも、と仕切りとうなずいている。

 

 その時のユエは頭を抱え色々考えているのかコロコロ表情が変わって面白い。

 

 のどかを推した本当の理由はこうしてユエを弄ぶ為だったりする。

 

 まあ、ネタにする報酬として微量のお節介が混じっているかもしれないが……。

 

「美空を推したのはただの仕返しだ」

 

 少々黒さが目立つ笑み浮かべるアレイがそう語る。

 

 この理由を聞いた瞬間、全員小首を傾げの頭の上に?マークが飛び出す。

 

「美空は俺やネギに悪戯をよくして来るのだが大事(おおごと)が嫌いなのかネギを避けている節がある。それで仕返しにエヴァをけしかけて見ようと思ってな」

 

 要するに仕返しの為だけにこの男は「魔法世界のナマハゲ」をけしかけ様としているのである。

 

 エヴァはそれを聞き少々考えた後、それはそれで面白そうだとニンマリ笑った。

 

 アスナ達もそれを見て、「ああ、これは本決まりだ」とここにはいない美空に黙祷をささげた。

 

 余談だが、この時、教会に居た美空は言葉に出来ないような悪寒に襲われたとか……。

 

   ◆

 

 エヴァ達の方針が決まりすぐさま学園長から、美空に今晩桜通りに行くように指示が出された。

 

 その際、学園長の声が心地弾んでいたらしいが恐らく勘違いではないだろう。

 

 なにせ、遊びが多分に含んでいると聞いて嬉々として見学に行くと言っていたぐらいだ。

 

 ちなみに指示の内容は噂の調査。

 

 その際、美空には時間が指定され特殊な人払いの結界が張ってあるが気にせず調査するようにと注意される。

 

 この結界は確かに人払いの効果もあるが主要目的は特定人物が入ったら空間をずらして異空間へと隔離するというものだ。

 

 簡単に言ってしまえばどこぞのループ空間の様な物だ。

 

 そして今、俺達は上空から結界に入ってきた美空が俺達の下を何か呟きながらビクビクしながら歩いているのを観察している。

 

「さて、そろそろ行って来るとしよう」

 

 言葉を残しエヴァが俺達から離れ下りていった。

 

 ちなみに今のエヴァの格好は大人モードである。

 

 これは茶々丸の調べで、怪談のように語られているエヴァは美女なのだそうだ。

 

 さらに余談だが、エヴァはこの大人モードに抵抗があるらしい。

 

 この世界のエヴァはアレイの本妻の年恰好があれな所為か幼女姿のほうが良いと思ってる節がある。

 

 まあ、実際所、アレイは容姿自体にそこまでのこだわりは無いらしいのだが……。まあ、この話は置いておくとしよう。

 

 そうこうする内にエヴァが美空と接触した。

 

 影から静かにエヴァがせり出し、美空の後ろに立ったのだ。

 

「ほ~う、今夜の獲物は一段とイキが良さそうじゃないか……」

 

 後ろから掛けられた、その声に美空がビクッと反応し恐る恐る振り返る。

 

 そこにはニィィィとばかりに頬を吊り上げ目の色が反転している伝説の吸血鬼の姿があり、それを見た美空は余りの恐怖に凍り付いてしまった。

 

 その美空を見たエヴァはゆっくり手を伸ばしながら面白そうに声を掛ける。

 

「…どうした、逃げないのか」

 

 そして、エヴァが一歩踏み出した瞬間。

 

「ぎゃぴぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

と、なんとも乙女に有るまじき叫び声を上げ美空の足元が光ったと思ったら尋常じゃない瞬発力と速度で逃げていった。

 

 その余りの速さにエヴァはおろかアスナ達でさえポカーンとしている。

 

 おそらく靴のアーティファクトなのだろうが走る事に関して凄まじい性能だ。

 

 もっとも、いくら走って逃げようが学園を再現したこの異界からは抜け出す事はできない。

 

 しかも、エヴァは先程使ったように影を使った転移が使える。

 

 何処に逃げても変わりはしないだろう。

 

   ◆

 

「…なんなんスか。あれは」

 

 学園長から直接指示された時点でなんか嫌な予感してたけどこれはないっスよ。

 

 吸血鬼の噂調査って、……アンタあれマジもんの吸血鬼じゃないっスか!

 

 あれの前じゃシスターシャークティーが可愛く見え…、いや、どっちも怖いか……。

 

 取り敢えずあれだけ離れれば直ぐには、

 

「……なんだ、もう終わりか」

 

 追ってこれないとかちょっとでも思った私はアホでした。

 

「神様!いったい私がなにをした~~!!」と、心の中で叫びつつ私は本日第二の激走を開始した。

 

   ◆

 

「それにしても、ものすごい逃げっぷりね、美空ちゃん……」

 

 引きつった笑みを浮かべちょっと気の毒そうな声を出すアスナ。

 

「あれはしゃーないって、エヴァちゃんがノリノリで脅しに掛かっとるんやし」

 

 それに対しいつもの通り朗らかなコノカ。

 

「マスター、楽しそうですね」

 

と、茶々丸はどこか嬉しそうに言う。

 

「まあ、脅かす側としてはあれだけ反応してくれれば面白いでしょう。美空さんには同情するですが……」

 

 表情的にいつもの通りなのだが少々気の毒そうに美空とエヴァを観察しいているユエ。

 

 その後、逃げ回る美空を追い掛け回し精根尽き果てた所で吸血したのだが……。

 

「……うっ、マズ!」

 

と、言うのがエヴァの久しぶりの吸血行為の感想だったとか。

 

 日頃はアレイの血に手を加え、ワインで薄めて飲んでいて、それと比べるとドブ水なんじゃないかと言う位酷かったらしい。

 

 その言葉が美空に聞こえていたかどうか分からないが、涙を滂沱の如く流し、真っ白に煤けて気絶していた。

 


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