転生先生テリま   作:物書き初心者

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獣、薬味に会う

 

 

 俺が赴任してから約二年の時が過ぎた。

 

その間に特に大きな事件も無く二度の学園祭と体育祭も乗り越え、明日、ナギの息子である<ネギ・スプリングフィールド>(数えで10歳)が赴任してくる。

 

その件で先週、学園長から話が来た。

 

 本国から生徒の近くに住まわせるよう通達が来たそうだ。

 

 要するに寮に住まわせて親密な関係が築きやすいように取り計らえという事らしい。

 

 学園長は憤慨してはいたがメリットが無いわけではない。

 

学生寮はこの学園で一、二を争うほど堅牢な造りになっている。

 

まぁ、暗闘が繰り広げられている学園だ。大事な子供ということでそれがベストなのかもしれない。

 

 生徒のことを考えると迷惑この上ないかも知れないが。

 

 それで誰の部屋に預けたらいいかと相談がきた。

 

 学園長としては、何もなければ孫娘の木乃香に頼むだろうが今は俺の所にいる所為か何所に預けるか決め兼ねているらしい。

 

 俺としてはあの非常識が常識化しているクラスの誰に預けようと変わらないと思っているが、子供を預けるなら那波といいんちょしかいないというのがアスナと木乃香の意見だった。

 

 そういう事で二人を推しておいたがいったい当日どうなる事やら……。

 

   ◆

 

 そういう訳で、学園長室前で委員長と那波に手を引かれて来たネギと軽く対面したのだが……。

 

 いい意味でも悪い意味でもナギに似ていなさそうな雰囲気の子供だった。どちらかと言えばアリカに似ている雰囲気だろうか。

 

 変に大人びているというか歪んでいるというか…。

 

ただ、第一印象としては型にはまってつまらなそうというのが俺の感想だ。

 

 正直、九割方興味は失せたが…。副担任として係わらねばならん。

 

 そんなことを考えていたらネギの指導教員を任された、源しずながやって来て一緒に学園長に呼ばれた。

 

 部屋に入ってまず目がいったのは狂喜乱舞して変な舞を踊っている委員長だった。

 

 那波の方を見ると、あらあらまあまあと片手を頬に当てて驚いているようだ。

 

 大方ネギが教師をすることを聞いての反応だろうが那波はともかく委員長のこんな反応は二年間で始めて見た。

 

 アスナはいいちょはショタコンだと言っていたがどうやらその通りらしい。

 

 その二人は取り敢えず置いておいて俺としずなを学園長が紹介して、その後、委員長たちの部屋にネギを預かってほしいと伝えていた。

 

 二人は快諾していたが……、いいのだろうか。確か委員長たちは三人部屋だったような……。

 

 そして、変なテンションの委員長が先導するように全員が学園長室を後にしようとしたが、俺の学園長が呼び止める。

 

 そして、学園長が俺以外全員出たのを確認して口を開いた。

 

「どうでしたかの、アレイ殿」

 

と、ちょっと期待を滲ませ顔の学園長が感想を聞いてくるが、

 

「興味は失せた。手を出してこない限りはそちらに干渉せんよ」

 

 そういい俺も職員室に向かう為、学園長室を後にした。

 

   ◆

 

 昼休み、ログハウスのメンバーに時たまユエが加わるのがこの頃の昼食風景だ。

 

 勿論、話題は今日来たネギ一色である。

 

 そのネギだがなんでもタカミチが「歓迎してほしい」と、頼んでいたらしく盛大に悪戯トラップを仕掛けられたらしい。

 

 そして、初っ端の黒板消しトラップを常時展開型の魔法障壁で止めてしまい、慌てて消していたとか……。

 

 更に自己紹介で担当教科を魔法と言い掛けたとかでエヴァとユエが「隠す気あるんか!!」とキレ気味の反応をしていた。

 

 アスナと木乃香も苦笑である。

 

 魔法使いとしてはどうかと言う感じの意見だが人間としては中々に好印象だそうだ。

 

 トラップに掛けられても文句一つ言わなかったそうだ。

 

 多分、言わなかったのではなく、言えなかったの間違いのような気がするが…まぁいい。

 

 それで放課後、俺にしたのと同じような歓迎会をするから忘れずに来てほしいそうだ。

 

その際、俺に「サービスするえ」と、木乃香は言っていたがネギの歓迎会であって主役は俺ではない筈なのだが……。

 

 そう言えばパパラッチがこの前、取材と言って俺たちの関係を聞いてきた。

 

 噂話によると、俺と木乃香は夫婦で、アスナは恋人、エヴァはファザコン娘(母親は茶々丸)、ユエはブラコン(妹)のように見えると言われているらしい。

 

 それで全員に聞いて回っているそうだが一様に顔を赤らめ手痛い突っ込み(トンカチ)や、はぐらかされたり逃げられたりで真相が分からないから俺に直接訊きに来たそうだ。

 

 その行動力は認めるが公衆の面前で訊くか普通……。もっとも俺もお構いなく話すからどっちもどっちなのだろうが。

 

 その際、「朝倉君の想像通りだ」と答えておいた。

 

 朝倉はパパラッチを自称しているくせに常識人だ(あのクラスでは)。

 

 案の定、本当にしても嘘にしても色々まずいと思ったのか、この噂に関しては自粛すると言って去っていった。

 

 ただ、何処かで聞いていたのか噂拡散機の漫画家が次の日には尾ひれ、胸びれ更に翼まで付けて広めていた。

 

 その内容というのが何でも俺は超大金持ちの外国の貴族、そして、四人は愛奴隷だそうで身も心も俺なしじゃ生きて行けない様に調教されているとか何とか・・・。

 

 もっとも、この噂はすぐさま立ち消えた。

 

 噂が流れた放課後、寮の玄関先に噂を流した首謀者が簀巻きにされて一晩中吊るされていたそうだ。

 

 その頭には、自慢の触覚をしんなりさせ巨大なたんこぶが6つあったとか。

 

 そして、張り付けてあった紙に「あの噂は私が流したデマです」とデカデカと書いてあったそうだ。

 

 そんな事があった所為なのか、何故か学園では半ば公認の関係と思われてしまっている。

 

   ◆

 

 放課後、予定通り歓迎会が行われた。

 

 その際、宮崎のどかが助けてもらったとか言ってネギに御礼をしていた。

 

 それを心配そうにユエが見ていたが色々と思うことはあるだろう。

 

 その後、のどかに触発された委員長が銅像を出してアスナに文句を言われじゃれ合ったりと何時のクラスのノリになっていた。

 

 そんな時、珍しくタカミチから念話がきた。

 

『あの、アレイさん相談と言うか、聞いてほしいことがありまして』

 

『…ふむ、でなんだ』

 

 タカミチが言うには先ほど、ネギがのどかを助けた際に生徒に魔法バレをしてしまったらしい。

 

 何でも魔法を使った瞬間を買出しに出ていた春日美空(かすが みそら)と佐々木まき絵に見られていたそうだ。

 

 幸いだったのが美空は(あまりの影の薄さに忘れていたが)魔法生徒ですぐさま杖とネギを抱えて物陰にダッシュしたそうだ。

 

 物陰に下ろされたネギは錯乱にしていたのか自分から魔法使いの事を暴露して秘密にしてほしいと懇願したらしい。

 

 美空はその際、自身も魔法使いだと言いたくないが、言おうとしたらしいのだが後ろからの、

 

「へ~、ネギ君って魔法使いだったんだ」

 

と、言う声に止められたそうだ。

 

 美空が錆びたブリキの玩具の如く後ろを振り返ったらまき絵がたっていた。

 

 不幸だったのは美空の常人離れした健脚について来れる運動能力が一般人のはずのまき絵にあった事だろうか…。

 

 まき絵自身は秘密を守ると快諾していたそうだが…。

 

 そこにタカミチが来て、ネギ達を言いくるめて取り敢えず三人を教室に行かせたそうだ。

 

 その後、タカミチは学園長に報告。

 

その際、学園長はそれぞれの自由にさせなさいと指示したそうだが、こんなに早く魔法バレするとは思ってもいなかったらしく声が引きつっていたそうだ。

 

 それで美空はたっての希望でネギに係わらない様に記憶を消して貰ったと伝えてくれと頼まれたそうだ。

 

 まき絵の方は取り敢えず様子見ということで秘密が漏れないことを祈るばかりという感じか。

 

 それでタカミチの相談というのはこのまま何も知らない生徒たちを巻き込んでいいのだろうかというものだった。

 

 今になって迷いが生じてきたらしい。

 

『良いも悪いも、それは本人が決める事だろう。お前がどうこう言う話じゃない』

 

『ですが、本国の計画で!!』

 

『選ばれたのも、そいつの運命であり人生の一部、その後どうするかは本人しだいだ』

 

 タカミチは納得したかどうか分からないがそこで念話が切られた。

 

   ◆

 

 歓迎会も終わり食事の準備もできた頃、ログハウスにユエが飛び込んできた。

 

 何でものどかがネギに恋をした?らしく私は如何すればいいのですかぁと俺に言ってくる。

 

 取り敢えず俺は落ち着かせるために軽くユエの額を小突く。

 

「あぅっ!」と頭を仰け反らした後、額を両手で押さえて口をぺけ印にして恨みがましくこちらを見てくるユエ。

 

「それで、どうした」

 

 ユエ曰く、男性恐怖症ののどかが興味をしめし、恋する乙女の表情をしていたそうだ。

 

 人間としてはまだ分からないが、ネギは魔法使いとして未熟すぎて親友の恋を応援していいものだろうか。

 

と、いうのがユエの想いだそうだ。

 

「…本人の好きにさせてやれば良いだろうに」

 

と、いう俺の答えにユエが噛み付いてくる。

 

「ですが、この前、赴任してくる先生は魔法世界の政治に関係が有ると言っていたではないですか。このままではのどかが―――」

 

 要するに俺達から事前情報を聞いていた限りでは、後々厄介事に巻き込まれていくのが目に見えている。

 

 だが、子供で未熟な魔法使いのネギでは親友を守れないと言う事だろうが。

 

「お前が言えた義理ではないだろうに…」

 

 俺はそういいながらユエを抱き寄せキス手前まで顔を近づけ頬を撫でる。

 

 自身の考えをずっと口にしていたユエは抱き寄せられ顔をリンゴの様に真っ赤になり、「あぅあぅ」言いながらもしっかり俺の服を掴んできた。

 

「…ユエ。…ネギよりも何倍も厄介な俺の所に自分の意思で来ておいて友の事をどうこう言える資格があるともう思うか」

 

 俺の腕の中で真っ赤になっていたユエが途端にしゅんとして、

 

「・・・ないのです」

 

 そう口にしたユエが今にも泣きそう顔になり目に涙を溜めだした。

 

 どうせこいつの事だ、自分の中でネガティブな方向にまっしぐらと言った所だろうか。

 

 ユエのこういう表情は中々にそそるものがあっていいのだが余りこのままにして置くと使い物にならなくなる。

 

 故にそこそこで切り上げる為、ある程度堪能してから精神を引き上げてやる。

 

「…そんなに不安なら有事の際に手を貸してやればいい」

 

「いいのですか」

 

と、さっきまでの泣きそうな顔が嬉しそうに微笑んでいた。

 

「ユエの好きにするといい」

 

余談だが、俺達の会話と言うか体勢を羨ましそうに数人が見ていたとか、いなかったとか……。

 


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