転生先生テリま   作:物書き初心者

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閑話 6

 <おちる哲学少女>

 

 

 私、綾瀬夕映(あやせ ゆえ)は今落ちているです。ええ、落ちているのです、物理的に・・・・・・。

 

「いやぁぁぁぁーーーー」

 

  ◆

 

 私は先日、中学に上がり図書館探検部に所属したです。そこで私は親友と言っていい友達と出会ったのです。

 

 おじい様が亡くなってこの世界がどうでも良く、くだらないと感じていた私にこの世界はくだらなくないと教えてくれた友達。

 

 今日もその親友の宮崎のどか、早乙女ハルナ、近衛木乃香と図書館探検部の練習をする予定だったですが、のどかは委員会、ハルナは自費出版の〆切、木乃香さんは家で用事があるそうです。

 

 正直残念ですが、仕方ありません。そうして時間が空いてしまったので図書館島で何か面白い本はないかと本棚を見ながらウロウロしたのですが・・・それが拙かったのです。

 

 気付けば自分が何処にいるかも分からなくなっていました・・・。

 

・・・うぅ、何たる醜態、この年で迷子とは・・・猛省せねば・・・・・・。

 

 それから30分は歩いたですが一向に見知った道に出ないです。むしろ奥へ奥へと行っている様な気がするです。

 

 更にもう一時間位歩いたです。もう完全に日が落ちたようで・・・・・・ぐす、寂しさと心細さで涙が出てきそうです。

 

 更に尿意まで催して来ました。

 

うぅ、先ほど自販にあった『ドリアンペッパー』という不思議ドリンクを飲んだ所為でしょうか・・・・・・。

 

 こ、この近くにトイレはないのですか!?先ほどから脂汗が・・・、・・・うぅぅぅぅ、も、もるです~~!

 

 焦っていたのがいけなかったのでしょう。普段なら気付けていたであろうブービートラップに足をとられ、底の見えない本棚の谷に頭から落ちてしまったのです。

 

  ◆

 

 ここで冒頭に戻るです。要するに今までの事は回想です。

 

「いやぁぁぁ・も・もるですぅぅぅぅぅぅ」

 

 先ほどからかなりの速さで本棚の谷をまっ逆様に落ちているが先が未だ見えないです。

 

 と言うより地面より先に私の我慢の限界が先に来そうです。でもこのままでは地面に落ちた熟れたトマトみたいになってしまいます。

 

な、何かないですか・・・。

 

・・・・・・え!・・あ、あれはなんですか?

 

・・・本と・・人が浮いている!?

 

 崖の様な本棚の中間で金髪の黒い服を着た人が『空中に浮かんで』本を探しているようです。

 

 ・・・ま、幻です!あ、余りの恐怖で幻を見ているのです!退屈な日常を脱し刺激的で非日常的な物を求める私の願望です!!

 

 あっ、こっち見たです。金色の瞳が凄く印象的です。・・・・・・ってそんな事を思っている時ではないのです。

 

 このままでは直撃してしまうです!

 

「よ、避けるです!!危ないですよぉ!!」

 

 ここまでの大声を出したのは産まれて初めてかもしれません。

 

 金髪、金色の瞳の青年は私の叫びを聞いても涼しそうに此方を見ているだけで避ける素振りすら見せません。

 

「・・ほう、そんな状態で助けて、でなく、よけろか・・・」

 

 そんな涼やかな声で言われ何の衝撃も無く受け止められてしまいました。お姫様抱っこで・・・・・・。

 

 あぅ~、か、顔が近いですぅ~~。・・・・・・はっ、今はそれ所ではありません!

 

 下を見てみますが床があるようには見えません。というか、彼の足、爪先立ちと言うか、完全に加重が掛かっていません!!

 

「・・・どうした?浮遊術がそんなに珍しいのか。この区間に来れる魔法生徒なら知識としてなら知っているだろう」

 

 ・・・はい?今なんと、・・・浮遊術?・・・魔法・生徒?・・・・

 

「・・・あなたは・・・・・・魔法・・・使い・なんですか?・・・」

 

「・?・・いや、俺は魔術師だ。それでなんでこんな時間に中学生がここにいるのだ」

 

 ほ、ほ、本物ですぅぅぅ~!マジもんの魔術師ですぅぅぅ~!!ああ、神様今ほど貴方に感謝した事はありませんです!!!

 

 こ、こ、ここは落ち着いてじっくり話を聞かなくては・・・・・・し、深呼吸です。

 

 スゥ~、ハァ~・・・・・・あれ・・・私何か忘れているような・・・・・・・・・。

 

 ・・・はうっ・・尿意でしたか・・ま、拙いです・・・・・。

 

「先ほどからどうした?深呼吸しかと思えば、涙目でプルプル震えだして?」

 

 く、口を開く事すら出来ないです・・・。・・げ、限界ですぅ・・・。・・も、も、もるですぅぅぅ~~~・・・・・・・・ 

 

 

 

  ◆  暫らくお待ちください。  ◆

 

 

 

 しかし、まさか助けた相手が腕の中で失禁するとは・・・・・・取り敢えず、綺麗にはしたが、完全に真っ白になっているよ。この子・・・。

 

 アスナ達と同じ制服という事は多分寮生だろうが、・・・流石に放り出すのは少々酷か・・・。

 

 ふむ・・・確か、近くに休憩所があったな・・・・・・。

 

  ◆

 

 ああぁぁぁぁ~~~!私はなんて事をぉぉぉぉぉ~~~!!

 

 初対面の男性に失禁姿を見られたなんて乙女としてどうなんですか!!

 

 いえ!それ以前に人としてどうなのですか!犬ですら助けてくれた相手に恩を返すというのに、私は・・・・・・ぐすっ・・・・・・

 

「・・・取り敢えず、これでも飲んで落ち着くといい」

 

 その優しさが今の私にはすこぶる痛いのです・・・・・・。

 

「・・ぐすっ・・・ありがとうございますです・・・・・・」

 

  ◆

 

「落ち着いたか・・・」

 

「はいです。・・・すみません、粗相をしてしまい・・・・・・」

 

 うぅぅ・・・一生物の恥です・・・。

 

「気にするな・・・助かって気が抜けたのだろう」

 

 ち、違うのです。自業自得なのです。

 

「それで何故ここに居るのだ」

 

 うぅ、そう言えば私、今迷子なのでした。・・・更に恥を掻かないといけないですか・・・・・・。

 

  ◆ 

 

「要するに唯の迷子で罠に掛かってただ単に上から落ちただけだと・・・」

 

「はいです」

 

「しかも、魔法も魔術も裏も知らない一般人」

 

「そうです」

 

 ・・・・・・やってしまったらしい。

 

 あの区間は禁書指定された本が多く普通の人間は入れないと思っていたがどうやら紛れ込んで来てしまったらしい。

 

 さて如何するか・・・・・・

 

 しかし、何でそんな期待を込めた瞳でこっちを見ているのだろうか、この娘は・・・・・・

 

「・・・しかたないか」

 

 俺がそういうと彼女は身を乗り出して目をキラキラさせているが・・・そんな目をされると少々苛めたくなってしまう。

 

「・・・古来より、無関係の人間に知られてしまった場合――」

 

 俺の様子が変なのに気付いたのか彼女の顔色が曇るが俺は其のまま続ける。

 

「――残念なことだが、消すのが習わしだ。怨むなら自身の運の無さを怨むといい・・・・・・」

 

 そう言い右手に自然界に存在しない闇色の炎を点す。

 

 彼女は涙目になって座っていた椅子から落ち、はゎゎと壁まで這ってあとじさってのを俺はゆっくり追いかける。

 

 壁にもたれ掛かってイヤイヤと首を振る彼女の前まで来てゆっくり炎を掲げるアレイ。

 

  ◆ 

 

 はわわわぁ・・・もっと注意すべきでした・・・彼は魔法、魔術といった後に裏と言ったのです。

 

 それにこういう処置をして置かないと世界中に魔法が自明の物となっているはず、少し考えれば分かった事です。

 

 自分の迂闊さが恨めしい・・・・

 

 彼が恐ろしげな黒い炎を掲げます。

 

 余りの恐怖に目をギュット閉じると、のどか、ハルナ、木乃香さんの顔が脳裏に過ぎりました。

 

 そうです!こんな所で死んでたまる物ですか!!

 

 私はそう決意して彼を睨みつけようと彼の顔を見ると私を面白そうに見ているです。

 

 な、なんですか!その顔は!怯える私はそんなに面白いですか!!

 

「――と、消したい所だが今回は俺にも非が有る。・・・だから、選ばしてやろう」

 

 そう言い彼は炎を握りつぶしました・・・・・・。

 

 あ、あれ、ならさっきまでの事はなんだったのですか・・・・・・。

 

「ただ苛めて遊んだだけだ。中々に面白い見世物だった」

 

 も、弄ばれたのです!!いい人だと思ったのに私弄ばれました!!

 

「憶えておくといい。基本、魔術師にいい人はいない」

 

 そうなのですか。勉強になります・・・って、さっきから私の思考が読まれてませんか!?

 

「その思考が口からダダ漏れだ・・・」

 

 はわぁっ・・ダダ漏れ・・・・もれ・・・・・・うぅ、ぐすっ・・・。

 

 嫌な事を思い出す言葉なのです・・・・・・。

 

「先程の事がトラウマになっているようだか、話を進めてもいいか・・・」

 

「・・・うぅ・・・お願いします」

 

  ◆ 

 

 彼が言うにはこの世界には魔法や魔術、神などの神秘の存在が隠されているそうなのです。

 

 そして、それらは裏社会と係わりがあり、これらに係わるのは紛争中の外国に行く程度の決意を持った方がいいと言われました。

 

 彼は何も言いませんでしたが私を脅すような真似をしたのは、私が魔法や魔術に憧れを持っていたのを察したからかも知れません。

 

 きっと彼なりの優しさだったのです。

 

 そして、彼は私に3つの選択肢を提示してきたです。

 

 1つ目・・・魔法の事を忘れ日常に戻る。記憶消去の魔法を使うそうです。もっとも安全で平穏を享受出来るそうです。

 

 2つ目・・・魔法の事を忘れずに日常に戻る。何もせずにこのまま帰るだけだそうです。もしかしたら彼以外から魔法を習うことが出来るかもしれないそうです。

 

 3つ目・・・彼に代価を払い魔法に完全に係わる。どんな代価かはその時に教えてくれるそうです。

 

 ただ、3つ目を選んだ場合のみ、彼の所属している一派以外から目の敵にされるそうです。

 

 その理由というのが目の前の彼、4000万ドル、日本円で31億7798万円の賞金首だそうです。

 

 いったい何をしたらそんな額を掛けられるのですか・・・・・・。

 

 これは彼としては3つ目の選択肢は選んで欲しくないのですかね?そんな感じがするくらい悪い情報しか出てこないです。

 

 きっとまだ何かあるです。

 

 その後、根掘り葉掘りと言うほどではありませんが色々聞いてみました。

 

 彼はそんな私を楽しそうに観察しつつも私の質問は基本的に全て答えてくれたです。

 

 例えば、所属名に活動内容、自身の地位に力量、何故賞金首なのか、何故麻帆良に居るのか、などなど、正直、半神半人だと言われた時は我が耳を疑いましたが・・・。

 

 嘘は言ってないのでしょう、多分ですが・・・。

 

 その後、彼が選択するのは最低半年くらい悩んでからにしろと言われたです。

 

 この先の一生が決まる選択になるのだからと、・・・・・・悪人なのか善人なのか分からない人?なのです。

 

  ◆ 

 

 予断ですが、寮には彼に抱えられ転移と言うもので送ってもらったです。しかも、お姫様抱っこで・・・心臓が破裂するかと思ったのです・・・・・・。

 


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