転生先生テリま   作:物書き初心者

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獣、再会す

 ゲートで大暴れした後、先に旧世界に行っていたアスナとエセルに合流しエヴァの待つログハウスに帰って来た。

 

  ◆

 

「ただいま、エヴァ」「ただいま戻りました」

 

と、俺たちは何のためらいも無くリビングに入って行く。

 

 エヴァは驚いたのか目が点になってポケーとしていたがすぐに再起動して此方に飛びついてきた。俺はそれを優しく受け止める。

 

「・・・あぁ、久しぶりのアレイの匂いと感触だ・・・・・。予定より大分早いではないか?調査とやらは済んだのか?」

 

 俺も久しぶりのエヴァ感触を楽しみながら頬や頭を撫でてやる。

 

「ああ、終了した。後は(紅き翼と造物主の)経過待ちといった所だ。用事が無い限り前のように此処で暮らせる」

 

 それを聞いて凄く嬉しそうな笑みを見せてくれるエヴァ。

 

 さて、そろそろお土産を紹介するとしよう。

 

「エヴァ、お土産を紹介しようと思う・・・」

 

 抱きしめていたのを離し俺は後ろを向く。

 

「・・・紹介?・・・」と、エヴァが呟いているが気にせず後ろに隠していたアスナを抱き上げる。

 

「エヴァ、この子が土産のアスナだ・・・ほら、アスナも挨拶しろ・・・」

 

「・・・アスナ・ウェスペリーナ・テオタナシア・エンテオフュシア・・・です・・・」

 

 エヴァは始め呆然としていたが途中から「・・あ・・・・ああた・・」と言葉が出てこないようだ。

 

「今日から此処で一緒に暮らすことになる。仲良くしてやってくれ」

 

 そう言いまたエヴァを撫で始める。そうすると落ち着いたのかエヴァがボソリと、

 

「・・・新しい女か・・・」

 

と、涙目で此方を見てくる。

 

「・・・いや、そんな心算で連れて来た訳ではない。・・・・詳しい事は後で話す。今後どうなるかは分からないが今はその心算は無い」

 

「・・・そうか」

 

と、一応エヴァも納得したようだ。

 

 その後、ソファーでアスナを膝に乗せ抱きしめながらエヴァを横に座らせ、向こうで何があってどの様な事をしてきたか語った。

 

 一から十まで全て隠すことなく語って聞かせる。

 

 

  ◆

 

 

「なるほど、調査と言うのは魔法世界その物を調べていたのか。しかし、2000年以上も前の火星に人造異界を作り出すとは・・・・・・・造物主もすごい奴だな・・・・・・」

 

 エヴァは軽く呆れ顔をしていた。

 

「それだけでなく、戦争に介入するのも目的ではあったんだが。・・・・・昔、世界樹の地下に遺跡があると言った事を覚えているか」

 

「うん?・・・確かMMにこの土地を貸すときに言っていたな・・・それがどうかしたのか?」

 

と、可愛く小首をかしげているエヴァ。アスナが俺の手を弄りながらも一応自分も無関係ではないので真剣な様子で聞いている。

 

「多分だがあの遺跡を作ったのは造物主だ。そして、あれが地球と火星をつなぐ重要な命綱の様な役割をしているらしい。だから、MMは必死にこの土地を死守したかったのだろう」

 

「・・・・・なるほどな、自分達の立っている世界の命運が他人の手にある・・・・・ゾッとせん話だ」

 

 ニヤニヤと悪い笑みを浮かべるエヴァ。アスナもこの話には多少驚いたようだ。

 

「今後、何かあった場合は『遺跡を破壊しつくす』と言う魔法の言葉で全て通りそうだな」

 

と、俺が真顔で言うとエヴァとアスナが驚愕の表情でこちらを見ていた。

 

  ◆

 

「それにしても戦争で英雄とは大暴れだな。・・・・しかも、ファンクラブなんぞ作りおって」

 

 何が気に入らないのか膨れて拗ねたようにエヴァが言う。

 

「ファンクラブについては俺は直接は関与してないから分からん、エセルに聞いてくれ。・・・まぁ確かに大暴れしたな。戦争の英雄なぞ唯の大量殺人者と言うだけだからな、今更俺の呼び名が替わろうと本質は変わらん」

 

 そんな感じに戦闘の内容などの話をしだしたら不意にアスナが何か聞きたげにこちらを見上げてきた。

 

「どうした、アスナ?」

 

「わたしは・・なにもの・・・英雄・兵器・大量殺人者・化け物??」

 

と、感情が無い声色で訊いて来る。

 

「全部ではないのか?」

 

 俺が間髪入れずに答えるとアスナは珍しく目を丸くしていた。エヴァは苦笑している。

 

「全部?」

 

「オスティアを守護していた英雄であり、防衛兵器とも言える、ゆえに大量殺人者なのも確かだ。まあ、化け物かと言われれば・・・・・・どうだろうな、俺たちに比べれば魔力完全無効果能力者なぞ可愛い物だが。・・・・・アスナが何ものかは。・・・そうだな強いて言うならアスナが名乗りたい者だろうな」

 

 それを聞いたアスナは俺の膝の上で対面する様に座り直し俺の服をギュッと掴んで俺を見上げてくる。俺はそんなアスナを撫でてやる。

 

「名乗りたい者・・・・アレイとエヴァンジェリンは何者?」

 

「ふむ、・・・・・魔術師・黒き魔術の皇・外法の担い手・魔術の真理を求道する者・元半邪神・現半旧神・マスターテリオン・(教育上省くがロリコン)・・・・この全部が俺、アレイ・クロウと名乗る男が生きて来て得た物を表した一部だろうな」

 

 俺がそう言うと、次は私だという感じにエヴァが胸を張る。

 

「アスナ、私はエヴァと呼んでくれて構わん。それで自分が何者か、か・・・・魔法使い・闇の福音・闇魔法の担い手・魔法の真理を求道する者・神祖の吸血鬼・アンチクロス・(同上、アレイの所有物)こんな所か」

 

 アスナは困惑したようで、

 

「アレイは英雄じゃあないの?」

 

と、聞いてくる。

 

「あれは、魔法世界の有象無象が勝手に呼んでるだけで俺自身は一度たりとも認めていない」

 

「呼ばれているだけ・・・じゃあ私は・・・・」

 

と、うつむきながら呟いた。

 

 おそらく自分には何も無いと感じたのだろう。それは仕方の無い事だ。今まで道具のように扱われてきたのだから。

 

 先ほど、俺とエヴァが名乗ったのは長い年月を生きて自分で自身を表現した二つ名でしかない。俺は俺、エヴァはエヴァ、それが本質だ。

 

 だがアスナは100年生きて来てはいるが、人生経験で言えば5歳以下のはず。それなのに思考能力は大人とそう変わらない。

 

 だからこそ、不安なのだろう。だがこればかりは時間でしか解決できないだろう。だが人格の骨子となる物は与えられる。

 

「・・・・まぁアスナは暫らく真っ当な生活をして考える事だ。暫らくすれば何かしら分かる事だろう。取り敢えず今は唯のアスナと言った所か」

 

「唯のアスナ・・・アスナ」

 

と、かみ締めるように名前を繰り返すアスナ。

 

 暫らくしたら自分で自我を組み上げて行くだろう。そうしたら自分が如何したいか決められる様になる。

 

 暫らく時間が掛かるだろうが、まだまだ時間はある。

 

 今は1983年、原作まで約20年だが最早原作知識は有って無い様な物で、今後どうなるか分からないが俺は俺で楽しむとしよう。

 

 取り敢えずはアスナの健康診断と最低一人でも生きて行けるくらいには鍛えてやらないと。

 

 そう考えていたら、厨房に居たエセルが料理を運んで来たので久しぶりに大人数で食卓を囲んだ。

 

 

 

 ◆これよりまた、原作までダイジェストでお送りします◆

 

 

 

<アスナ超スーパー育成計画 その1>

 

 

 

 旧世界に俺たちが帰還してから数日たって、アスナの健康診断をかねた身体検査を行った。

 

 そこで判明した事は、アスナの成長を阻害して肉体年齢を止める呪いが掛けられていた事と実年齢が100歳を超える事。

 

 実年齢は置いとくとして、呪いの方は一定期間が経ったら重ね掛けしなければいけないタイプらしく暫らくしたら解けることが分かった。

 

 成長を開始するのが何時かは分からないが無理をする必要も無いので自然に解けるのを待つ事にする。

 

 それらの事と同時に、今後否が応にも魔法(裏社会)に係わる事が予想される事もアスナにきちんと伝えられた。

 

 これらを踏まえ今後どうするかアスナに考えらせるが、これまで人に利用され続けてきたアスナが直ぐに自身の意思で答えられるとは俺も思っていない。

 

 なので大まかな選択肢を用意した。

 

 それは魔法に『積極的に係わるか・極力係わらないか』

 

 係わるのなら、戦う力を・・・・・係わらないのなら、逃げる力を・・・・・主に鍛えてやる事にしていた。

 

 アスナの生い立ちを考えれば将来どの様になったとしても力は必要だ。

 

 そう考えていたのだが、暫し考えてアスナは選択肢を選ばずに、

 

 「ねぇ、アレイたちとずっといるならどうすればいいの?」

 

 と、訊ねて来た。

 

 俺としては、自分の意思できちんと決められるようになってから、俺たちの下に居るか、去るかを決めさせる心算でいた。

 

 これからのアスナの人生を無理に捻じ曲げる心算は無い。

 

 俺の手元を離れたとしても最悪監視して造物主たちの手元にさえ行かなければ、アスナの選択に干渉する気はなかったのだが、今現在のアスナはここにずっと居たいらしい。

 

 「ふむ、ずっとか・・・・・・昔、エヴァにも言った事があるが身体も心も魂さえも鍛え上げる必要がある。アスナならそれこそ人をやめるくらいにな」

 

 アスナはかなり特殊な身体をしている。それこそ、人外に片足を踏み込んでいるぐらいだ。その気にさえ成ればエヴァと同じ寿命になることも可能だろう。

 

 地獄のような修行を行えば・・・だが・・・・・・

 

 今すぐに選択しなければいけない訳でもないので取り敢えず保留にしておく事にする。

 

 アスナがもうすこし大人になった時にでも訊いてみる事にしよう。

 

 アスナはそんな事を考えている俺を数日前よりも生気が宿る目で、

 

 「きたえてほしい」と、しっかり言ってくる。

 

 なので、まずは予定通り一人で生きて行ける程度に鍛える事にした。


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