アレイは血を吐きながら紅き翼を睨み付け、腹に刺さった槍を握り砕いた。
「さすがの魔力だな、ナギ・スプリングフィールド」
「・・まだ・・やる気か・・アレイ・クロウ、死んじまうぞ」
「・・・不思議なことを言う。これは戦争だ。死んで当たり前、殺して当然」
アレイはさも当然と言わんばかりに頬を吊り上げながら言って来るが、ナギは苦笑しながら、
「出来るなら死んでほしくねぇ」
アレイは不思議な物を見るような目でナギを見る。他の紅き翼メンバーはまたかと言う顔をしている。一人ニヤニヤしてるラカンがいたが如何でもいいだろう。
「・・・ふむ、一応理由を聞いておこうか」
「あ~~・・・なんとなく・・・・」
アレイは呆れた顔でナギを凝視する。
「あのバカは・・・」「バカ弟子・・・」「まぁナギですから」「ハハhイテェ」
ナギの後ろから野次が飛んでくる其れに対して「うっせ、うっせぇー」と返しながらアレイの方に向き直り照れた様な、真剣な様な顔をして頭を掻きながら、
「其れとあんたほどの使い手が協力してくれたら、この戦争を終わらせられるんじゃないかと思ったんだ」
「要するに、死にそうだから紅き翼の軍門に降れと、そして、戦争を終わらせるのを手伝えとそう言う訳か」
「ああ」とナギは真剣に頷いた。
他のメンバーをアレイは見たが、ナギが言うなら仕方ないと言う感じの諦めと納得の中間のような顔をしていた。
アレイは少し考える素振りをして、
「このまま遊んでやろうと思っていたが、気が変わった」
アレイがそう言うと、ピシッとガラスに皹が入るような音がした。そして、紅き翼たちはアレイの体中に皹が入るのを見た。
「おいっ・・ちょ、お前!!」「なっ!!」「なんじゃと!」
などと紅き翼が驚愕の声を上げるが、其の皹は無数に入り、最後には盛大にガラスが割れるような音をさせながらアレイ・クロウは砕け散ってしまった。其れを見て紅き翼の面々は凍り付く。
「・・・おい、まさか・・・死んだ・・のか・・・」
と、呆然としながらナギが呟くが何処からか返事が返って来た。
「勝手に殺すな、ナギ・スプリングフィールド」
ナギたちの前ににじみ出る様にアレイ・クロウは現れる。
「へっ・・・え、でも・・え・・」
混乱した様子で先程までアレイ・クロウが居た場所と俺とを交互に見やるナギ達。そんなナギに乳白色の小さな玉を投げ渡す。
「話せる状況になったら誰も居ない所でそいつを地面に投げろ」
アレイはそう言い残し先程と同じように徐々に消え様としていた。
「ちょっと待ちやがれ!!」
ナギの叫びと同時にグレート=ブリッジの方から無数の爆発音が響いたが俺は気にせず其の場を去った。
皇帝やテオに粗方の報告を済ませて部屋でエセルと寛いでいたらあの玉が割られた反応があった。俺は其の反応に向って転移する。
転移した先はどこかのホテルの一室だろう其処には紅き翼メンバーが揃っていた。
「お、ほんとに現れやがったぜ」
と、なぜかミイラ男の様なラカンが目の前に居て、それぞれ応急処置の後が見えるメンバーがやさぐれたナギを宥めていた。
「ケッ、呼ばなくても良いってのによ」
「ナギ、私達が何と戦っていたのか気になるじゃありませんか」
「ワシも同感じゃ。それにナギが呼んだような物なんじゃ。最後まで確りせんか」
「俺も事と次第によっては問い詰めようと思うがまず話しを訊かん事には」
などラカンの後ろから聞こえてくる。
「あれはなんだ」
「あ~~なんだ・・・借りを返せて気分良く仲間に誘ってみたら、そいつが偽者で其の後出てきた本物は説明も無くすぐさま消えちまって、色々裏切られた気分らしい。っで小僧は拗ねちまってんだよ」
「ふむ、そうなのか」
と、俺が答えると「すねてねぇ!」と後ろからナギが吠えているがラカンが更に色々言っていつの間にか殴り合いになっていた。身体はボロボロの筈なんだが元気のいいことだ。
其の所為か手の空いた、前名乗らなかったメンバーが近付いて来てそれぞれ挨拶をしてきた。
「名乗るのは初めてだったな、近衛詠春だ」
「ワシはフィリウス・ゼクト」
「アルビレオ・イマです。御見知り置きを。早速で悪いのですが、今回の事を説明して頂けないでしょうか?」
アルがそう言い出したらナギとラカンも殴り合いを止めて此方の話を聞く体制になった。俺は近くのソファーに座り全員に座るように促した。
「で、何が聞きたいんだ。アルビレ『アルで結構です』アル、俺はナギ・スプリングフィールドの勧誘の答えを返しに来ただけで、質問に答える心算は余り無いのだが」
「全部だ全部!!後、俺はナギで良い。一々フルネームじゃなくて名前で呼べ!」
「まぁ、バカ弟子は無視するとして、ワシ等の戦った物は何じゃったのかと、今回の勧誘ともゆえん様な話の答えを態々返しに来る経緯など話してくれても罰は当たらんと思うが、どうじゃ?」
「・・・・ふむ・・・・・お前達が戦ったのは、特殊な方法で作り出した俺の写し身だ。作ったは良いが限界性能や能力などどれだけ写し取れているか測れなくてな、貴様ら紅き翼にぶつけて見たんだ。まさか敗れるとは思ってなかったが」
ほんとなら写し身を砕いた後蹂躙する気だったが・・・・いう必要はなかろう。
「写し身ですか。と言うことは、貴方はあれより強いという事になりますね」
「じゃろうの。自分より強い物はそう作れる物じゃないからの」
二人のセリフを聞いて色めき立つ他のメンバー。ナギやラカンは「もういっぺん勝負しろやぁ!!」と言って来るがスルーする。
「確かにあれよりは強いが、壊されてしまたのだ其の時点で今回は此方の負けだ。それで此処に来た経緯だが、今の依頼主がこの戦争を止めたがっていてな。ナギも戦争を止めたいと言っていたので勧誘の返事ついでに話を聞きに来たのだ」
俺はナギを見ながら訊いてみる。他のメンバーもナギに注目する。
「あんなんは勝ったとはいわねぇ」とナギは呟きながら全員が注目しているの気付いたのか少し見渡して、
「あ~~どうゆうことだ?」
「要するにナギはどうやって戦争を止める気なのかとアレイは訊きに来たのですよ」
と、アルはナギに微笑みながら教えている。其れを見て詠春は目頭を揉んでいて、ゼクトはバカな孫を見る目している。ラカンは戦争の話になった途端興味が失せたのか我関せずである。
暫しナギが頭を抱えて考えていたが次第に頭から煙が出てきて、「あーわかんねぇ!!」と叫んだ。
「ふむ、ナギは戦争は止めたいが手段がまだ分からないといった感じか」
「ああ、そんな感じだな」
まぁ、この年齢(14,5歳)ならこんなもんだろう。それに参謀役たちも政治には明るそうではないしな。
「次に仲間にするなら世事に明るい奴にすると良い。そういう奴ならこの戦争を止める手段も思い付くだろう」
「やはり貴方は仲間にはなって下さらないのですね」
「へ、そうなのか?」とナギは疑問そうな顔をする。
「俺は今護衛として雇われているんだ。其れなのに連合所属の紅き翼に参加できるわけあるまい。それ以前に俺の所属はブラックロッジだ」
「そいやぁ、ブラックロッジだったんだよなぁ」とナギが思い出したように言ってくる。
「忘れてたのか鳥頭!旧世界じゃ禁忌に近い名前だぞ!其れをお前は!!」
と、これまで沈黙していた詠春がナギに小言を言い出す。
「へぇ、ブラックロッジってぇのはそんなにヤべぇのか?」と、ラカンはまた興味が湧いたのか話しに入ってきた。
「ヤバイなんて物じゃない!名前を騙っただけで次の日には消されてる!ただ噂があるだけでどんな組織かも実際の所分かってない!」
と、興奮気味に詠瞬が言っている。
「それはすごいのう」とゼクトは呆れ顔のなっていた。
「でしょうね。あのエヴァンジェリンが所属しているぐらいです。相当大きな組織なのでしょう?」
アルは此方に説明してくれとばかりに言って来る。
「そうだな、一応旧世界では一番厄介で巨大な秘密結社だ。故に俺は仲間にはならない」
「そっか、それならしかたねぇよなぁ」
と、ナギは残念そうだが納得はしてくれた。
「だが、戦争を止める為なら協力はしよう。依頼主が了承すればだがな」
俺は立ち上がりながら言った。
「ああ、そん時は頼む!」とナギは笑いながら言った。
俺は其の声を聞きながらヘラスの自分の部屋に転移する。アレイの転移した後にはナギに渡された玉が再生されて床に転がっていた。
俺が帰ってみると何処かの馬鹿がこの部屋に侵入を試みている所を捕らえたとエセルが報告して来た。
「マスター、どういたいますか、一応重力結界で捕縛していますので、このまま圧殺する事も可能ですが?」
何故か少々不機嫌そうなエセルがそう訊いてきた。俺は取り敢えず捕らえられたのがどんな奴なのか見に行く事にした。そして、そこには地面に這いつくばった白い髪の学生服のような物を着た青年が居た。