転生先生テリま   作:物書き初心者

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グレート=ブリッジ撤退戦

<グレート=ブリッジ要塞司令室>

 

 俺はもうじき開戦を控えた要塞の司令室に来ていた。司令官が如何言う命令を受けているか確認と、それいかんでは、皇帝から出して貰った指揮権委任状を使う為である。

 

「これはアレイ・クロウ殿!この司令室にどういったご用件でしょうか」

 

 司令官らしき人物が俺に気付き用件を聞いてくる。

 

「皇帝からの依頼だ。今どの様な命令を受けている」

 

「ハッ、この要塞を死守せよと上から言われています」

 

 上は兵たちを見殺しにする心算の様だ、戦力比的に勝てないだろう。司令官も分かっているのか、苦い顔で俺に告げて来た。

 

「其の命令は変更された。直ちに今から言う作業を完了させ次第随時撤退を開始しろ」

 

 ポカンと呆けている司令官に委任状を渡し、今後の指示を出す。そして、俺は開戦の狼煙を上げにグレート=ブリッジを後にした。

 

 

 

 

 side ナギ

 

 紅き翼はグレート=ブリッジ奪還作戦に参加する為輸送船に乗っていた。

 

「なぁ、アル。ほんっとぉに、オスティアの時の奴が出て来るんだろうな」

 

「ええ、彼はヘラスの王家に雇われた傭兵らしいので私たちを止める為に帝国は彼をぶつけて来るでしょう」

 

 俺はアルに何度目になるか分からない確認をした。あの時の借りを返す為に参戦するんだ、出て来て貰わなくちゃ困る。グレート=ブリッジは次いでだ、次いで。あの後、お師匠に師事して魔法を教えて貰ったしアンチョコも戦闘では止めた。次はぜってぇあいつをぶっ飛ばす。

 

「オイッ、オスティアの時の奴ってぇのはなんなんだ、アル」

 

 ラカンが興味深そうに聞いてきやがった。俺はあの時の事を思い出してイラついて来た。

 

「貴方やゼクトに会う前に一度彼アレイ・クロウに会って軽くあしらわれたんですよ」

 

「オイオイ、今売り出し中の『金色の魔人』じゃねえか」

 

「なんじゃそれは」

 

 アルとラカン、お師匠はアレイの話で盛り上がってるみたいだ。アルはローブから雑誌を取り出して皆に見えるようにあいつが乗ってるページを開いた。

 

「彼は一度しか戦闘に参加しては居ませんが、其の戦闘で300からなる艦隊を壊滅して見せました。其の戦果と見た目から付けられた彼の字ですよ、ゼクト」

 

「なるほどのぉ、それでこの戦艦の数なのじゃな。わしらが奴を足止めしている間に要塞を落す気なんじゃろうな」

 

「ナギを軽くあしらうか。ハッかなり面白い戦になりそうじゃねぇか」

 

 俺たちはそんな感じに騒ぎながら開戦の時を待った。

 

 

 もうそろそろ、戦闘が開始される。俺たちは出撃する為に甲板に出ていた。その時、グレート=ブリッジの方からスゲェ魔力を感じたと思ったら、雷の暴風を軽く越す太さの魔法の矢の様な物が飛んできて5本に分裂して、護衛艦を避けて突き進み旗艦を含む5隻の超弩級戦艦を貫いた。

 

 貫かれた戦艦は徐々に高度を落としていって最後は大爆発した。

 

「派手だなぁ、オイ」と、剣を構えるラカン。

 

「あそこに彼がいそうですね」と、何時もの胡散臭い笑みを見せるアル。

 

「前のように勝手に突っ走るなよ。ナギ」と、小言を言う詠春。

 

「わしに師事したんじゃ。成果を見せてみぃ、バカ弟子」と、檄を飛ばすお師匠。

 

「野郎ども、行くぜぇ!!」と、俺も気合を入れ飛び出した。

 

 

 奴の位置は直ぐに分かった。此方を誘うかのように力を垂れ流しにしているのだ。

 

 今、俺達は奴の前に立ている。奴はまるで俺達が来るのと待っていたと言わんばかりに腕組みをして目を閉じていた。 

 

「よぉ、借りを返しに来たぜ」

 

「ふむ、何かを貸した記憶は無いが」

 

 俺は魔力が自然に高まるのを感じながらアイツと会話する。他の奴らは直ぐに動けるように準備しているようだ。

 

 アイツは不敵な笑みを浮かべつつ目を開き自然体になって此方を見てくる。たった其れだけで凄まじい威圧感が身体を襲ってくる。俺は其れを跳ね除けるように自身の魔力を更に高めてく。

 

「俺は『千の呪文の男(サウザンド・マスター)』のナギ・スプリングフィールド!テメェをぶっ飛ばす男の名前だ!覚えとけ!!」

 

「本当に千の呪文を使えるのか気になる所だが、他の面子も名乗るのか?其れ位は待ってやる心算はあるが」

 

 何とも萎える様な親切なような事を言ってくる。

 

「紳士だねぇ。俺様は『千の刃』のラカン!いっちょ派手に戦ろうじゃねぇか!!」

 

と、ラカンは闘気を高めて名乗りを上げた。他の奴等はやら無い様だ。

 

「他は良いようだな、一応名乗っておこう。ブラックロッジが一人、アレイ・クロウだ。さて、死にもの狂いで来い!そうしないと直ぐ死んでしまうぞ!!」

 

 俺達は襲ってきた殺気に弾かれるように動き出した。アレイは全く動かず其の場でジッとしている。

 

 俺、アル、お師匠はすぐさま詠唱に入った。其の間、ラカンと詠春の二人が左右から襲い掛かる。アイツは詠春に前俺に食らわした魔力の塊を投げつけた。

 

「神鳴流に飛び道具は効かん!!」と、魔力の塊を切り伏せる。

 

 其の隙にラカンが剣で袈裟懸けに斬り付けようとした。アイツは投げつけた時の動きを止めず、そのまま回し蹴りにつなげラカンの剣を蹴り砕いた。

 

「ちょっマジかよ!!」とラカンは剣を捨てつつ呟く。

 

「其の程度かラカン」と言いつつアイツは先ほど廻し蹴りした足を下ろさずラカンの腹に蹴りを突き刺した。ラカンは「ぐふっ」と漏らしながら後ろに飛ばされる。

 

 そのラカンを飛び越えるように詠春が飛び掛かって行った。

 

「雷鳴剣!!」と己の刀に雷を纏わせながら上段から振り下ろす。

 

 霞む様な速さで振り下ろされる雷を纏った刀をアイツは眉一つ動かさずに白刃取りを決めた。詠春は驚き一瞬硬直してしまった。其処にアイツは前蹴りを放つ、詠春はラカンに向って一直線に飛んでった。

 

 ラカンが体制を立て直した所に丁度詠春が飛んできて其れを受け止めた。其の瞬間前蹴りした直後にはなった魔力弾が二人に直撃した。

 

 其の直後に俺達の呪文が完成した。

 

「まずは私が行きます」と、アルが言いお得意の重力魔法を放つアイツは避ける素振りも見せず直撃した。

 

「ふむ、重力による捕縛か・・・」と、アイツが言う。

 

 アルは冷や汗を流しながら、「・・・圧殺する心算で放ったんですがね」と呟いていた。

 

 俺とお師匠が同時にそれぞれ最大の魔法を放つ。

 

「千の雷!!!」「燃える天空!」

 

 凄まじい爆音と余波、そして、煙が周りに撒き散らされる。アイツに確実に直撃させ、手応えも有った。

 

 だが煙が晴れて見ると其処には、見た事の無い術式の障壁に守られた傷一つ無いアイツが立っていた。

 

 

 side out 

 

 

 

 最後の魔法は凄かった。特にナギの放った千の雷、内包された魔力はエヴァの終わる世界を超えいていた。一応障壁を張ったがもしかしたら防禦陣だけだったら抜かれたかもしれない。

 

「先ほどの魔法は中々の物だった。此方も其れ相応の物を返礼しよう」

 

 ナギに魔術を放とうとした瞬間、ボロボロになったラカンが猛然と瞬動で突っ込んできた。咄嗟に左手を突き出し組んだ術式をラカンにぶつける。

 

「ABRAHADABRA<アブラハダブラ>『死に雷の洗礼を』!」

 

 雷光と雷がラカンに襲い掛かる。

 

 ラカンは体中から煙と血を噴き出させながら耐え切りアレイの左腕を握り締めた。そして、其の影からアレイの右側にボロボロの詠春が躍り出た。

 

「斬魔剣 弐の太刀」と詠春はアレイの脇腹を切って来る。 

 

 アレイは防禦陣と身体に魔力を行き渡らせたが、其の技は防禦陣をすり抜けアレイの身体に小さな傷をつける。アレイは技の撃ち終わりの隙を衝いて詠春に拳を打ち下ろし下の海に沈めた。そして、ラカンを潰そうと術式を組む、其れと同時にラカンの左手が水月に押し当てられた。そして、同時に放たれた。

 

「ゼロ距離ラカンインパクト!!」「ン・カイの闇よ!」

 

 凄まじい衝撃が身体に掛かり数m後ろに下がらせられた。この程度で如何にかなる身体では無いが常人では確実に消し飛んでいただろう。

 

 ラカンは高重力の波に揉まれボロ雑巾のようになって海に落ちて行った。 

 

「詠春!ジャック!!こっの野郎!!」とナギが吠えながら自身の杖に魔力を集中させだした。其の隙を見逃すはずも無く、3個の重力球を作り出し撃ち込もうとする。

 

「ワシらを忘れておらんか『燃える天空』」「そうですよ『雷の暴風』」

 

 アルとゼクトが両脇から此方に突っ込んで来ながら魔法を放つ。

 

「すまない忘れていた。だが、これで許せ」

 

 重力球を大きくしながら二人に向けて放つ。漆黒の玉はそれぞれ放たれた魔法を問答無用に飲み込みながら二人に直撃した。

 

 ナギはその間に準備し終えたのか紫電が迸る、光る槍の様な物を掲げていた。其処から感じる魔力は先程の比では無く、ナギ自身の全魔力を凝縮したようであった。

 

「くらいやがれぇ!これが俺の全力だ!!」

 

 放たれた其れは光のような速度で一直線にアレイへと突き進んで来るが、アレイは其れ無視し重力球をナギに撃ち込んだ。

 

そして、それらは同時に着弾した。

 

「・・・へへっ・・今度は・・勝っ・・たぜ・・・」

 

 ナギは飛べているのが不思議なくらいズタボロだった。だがそれでも如何にか堪えて浮いている。それに引き換えアレイは腹にナギが投げた槍が突き刺さり口からは止め処なく血を吐いていた。

 

 そして、他の紅き翼のメンバー達もズタボロながら肩を貸し合いながらナギの元へ集まってきた。 

 

 

 この戦い、誰の目から見ても紅い翼の勝利のようだった。


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